命の旅(2007.11.15)


 職場の隣りのビルが、デパートだということもあり、
昼休み、よくそのデパートの6階にある本屋へ行く。

 好きな作家に関する本があると、ついつい手に取ってしまう。
この3月に亡くなった、城山三郎さんに関する本があったので買い求めた。

 太平洋戦争の終戦間際、純粋な軍国青年の心を踏み躙ったものは軍隊という組織だった。
氏の終戦後の活動のテーマは、一貫して「組織と人間」というものではなかったか。
さらに氏の心の奥深い部分に、消そうとしても消せない戦争という大きな大きなものがあったと思う。

お孫さんも含めたご家族での旅行先の、カラオケルームで、氏が歌われた軍歌。
うつむき加減でマイクを握る氏の目に、涙が滲んでいたという。
 「海ゆかば」、「月月火水木金金」、「同期の桜」

氏が亡くなる少し前の病院で、何か言いたそうにされていたので、娘さんが耳を寄せると、
亡くなった軍隊仲間の名前などをポツポツと挙げられ、「どうして僕だけここにいるのかな・・・・」
また、氏が若いころ、珍しく深酒をされて、「なんでボクだけ・・・・・」と叫ばれたという。

戦争とは、これほどまでに長く、深く、人が亡くなる間際まで、その個人を苦しめるものなのか・・・・
今回、買い求めた本、「城山三郎 命の旅」を読んでそう感じた。

氏が繰り返し言われた言葉。
 「戦争の真の勝者は戦わなかった者だ」
   「戦争で唯一日本が得られたものは憲法九条だ」
氏が、全ての日本人に課した大きな宿題だと、本当にそう思う。
 時あたかも、新テロ特措法案が・・・・・

  
  【 城山三郎氏 お別れの会 】

このエッセイは、「ニュース」に掲載したものと同じものです。
最近、あまりにも旅にうとい生活ばかりで、重複掲載してしまいました。


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