小さな、小さな一泊の旅(その1日目)(2001.1.15)


 懸案になっていた仕事のひとつに、足掛け3ヶ月にわたるお客様クレームがあったが、
原因が判明し、2001年1月11日に一応決着した。
そこで、「よし、今から本当の正月休みだ。旅に出よう!」とばかり、
寝袋と着替えを車に積み込み、出発した。
女房も誘ったのだが、唐突なのと、この厳冬に車内に寝るのと、
子供の世話がある、などの理由であろう、「行かない」という。
「そりゃ、そうだ」と私も思う。ただし、子供の世話に関しては、
たまには留守にして、親の有難さを感じてもらうには、いい機会なのだが・・・
と、勝手に思うが、まあ、行かないという者を連れて行ってもしょうがない。
意気洋々と一人で、しゅっぱ〜つ。

熊本市 → 宮原町 → 五木村 → 相良村 → 人吉市 → えびの高原 → 霧島 → 志布志港(一泊)

志布志町 → 都井岬 → 日南市 → 宮崎市 → 綾ワイナリー → 日向新しき村 → 北郷村 →  高千穂町 → 熊本市 

わずか1泊2日の旅である。(1月12日〜13日)
宮原町から、 五木村に向かう道すがら、
早朝の、霧がかった山間の谷に小川が流れる。
その小川に石橋がかかっている。
車を止め、その橋の上に立ってみた。
名匠石工が造った橋だろうか、アーチ型の橋の上に立ち、大きく深呼吸した。
肺臓の奥深くまで、新鮮な空気がしみわたった。
あまりの新鮮さに、肺がびっくりしたのだろう。咳が出た。
2度目の深呼吸でも咳が出た。
3度目の深呼吸でやっと肺が慣れたのか、咳は出なくなった。


【五木の里は、渓谷が深い】

昼前、相良村を通り過ぎようとしていると、道路沿いにある「茶湯里」(さゆり)というノボリが目に入った。
名前がしゃれて、いいではないか。
お茶と、お湯の里と書いて、「茶湯里」(さゆり)!
温泉にでも入って、ゆっくりすっかあ〜
1時間ほどゆったりと、温泉につかった。入浴料、300円也!安い。

人吉市から東へ、国道219号線を約15キロほど走ったところにある、上村(うえむら)という村。
上村役場のすぐ裏にあるラーメン屋で、ラーメンを食おうと思いついた。
ちょうど昼時に、そのラーメン屋についた。
赤い布に、白い文字で「ラーメン」と書かれた1本のノボリが、店の前に立っているだけで、
どう見ても食堂とか、ラーメン屋という造りの建物ではない。
一般の民家そのものである。
その民家の玄関を入ると、右の部屋に4人かけのテーブルが4卓、
左側を見ると、農家の台所といった感じの調理場。
その調理場の暖簾を片手で上げ、
「ラーメンば1杯、よかですかあ」と言ったら、
たった一人で、既に居る10人ほどのお客のラーメンを、忙しそうに作っているおばさんが、
ちらっと、こちらを見て「はあ〜い」と、言ってくれた。

私は、玄関から見て右の部屋が混んでいたので、
靴を脱ぎ一段高いところにある正面に位置する座敷に上がった。
その座敷も、大き目の座卓が4つ置いてある事を除けば、
何かしら自分の実家の居間という感じである。
4つの卓の内、2卓が、お客で埋まっていた。
昼時を少しずらせばよかったかな、などと思いながら待つこと10分。

来た、来た、来た、ラーメンが。
とんこつと、塩だけで造ってあるという、ややコッテリしたスープに、少し太めの麺。
さらに圧巻は、親指の頭くらいの太さのニンニクが生のまま、2〜3個入っているのである。

この生のままのニンニクは、少しずつかじりながら麺やスープと一緒に食べないと、
舌を火傷して、ヒーヒー言うことになる。
けっして、ニンニクだけ口にほおりこみ、ガリガリ食べない事!!

ラーメン1杯500円也!!
たぶん、上村役場の職員向けのラーメン屋としてほそぼそとやってきたというイメージ。
そのうまさが評判になり、私のような類の人間もおじゃまするようになったのだろう。
ラーメン好きの方、一度、ご賞味あれ、
上村(うえむら)役場のすぐ裏にあり、オレンジ色の屋根瓦の家である。
重ねて言うが、看板も何も出ていない。


【えびの高原には、いたるところ、野生の鹿がいた】
えびの高原には、いたるところ、野生の鹿がおり、
ドライブインで、かりんとうを買って鹿に与えてみたら、よく食べた。
ふと、近くの立て札を見ると、「野生の鹿に、餌を与えないでください」と書いてあった。


【池めぐり自然探求道。アカマツ林のあたり。雪が残っていた】
えびの高原には、約20個ほどの火口湖があるという。
その火口湖を見たくて、少し歩くことにした。
えびのビジターセンタから、えびの高原展望台、アカマツ林を経て、
白鳥山南登山口を越えると、底が見えるほど澄んだ白紫池。
10分ほどで六観音池の展望台に着く。
モミ、ツガ林を抜けて硫黄山北登山口へ。
不動池を眺めて、えびのビジターセンタへ戻る。


【白紫池。水がきれいだ】


【六観音池。コバルトブルーの色がまぶしい】


【不動池。これは、国道沿いにあるので有名】

3つの池をめぐる自然探求のコース。全行程で約1時間30分と、ガイドブックにはあったが、
私の足では1時間5分であった。
車を降りて、ゆっくり歩くのもいいもんだと、コースを歩いた後、ジュースを飲みながら思った。

えびの高原から、、霧島経由の国分市あたりを走っていたら、
夕方になり、都城市へ向かう国道10号線を走っている途中で、夜になり、夕食を取ることにした。
パーキングに比較的多くの車が止まっているお店がおいしいと思い、「かごしまラーメン」と
書かれたドライブインに入った。
ラーメン屋かと思ったら、比較的大きいレストランであった。
ずいぶん迷ったあげく、カツカレーを注文した。
メニューの表紙に、「厳選した素材を、手を抜かずにキチンと料理する。当たり前のことですが、
当店の姿勢です。一振りの塩、一滴の水にもこだわりました」と、書いてあった。
私は、個人的に、トンカツのカツは、厚さ5ミリ以上であってはならないと思っている。
そのとおりのトンカツが、ごはんの上にのせられて出てきた。

厨房が見えるカウンターに座った私は、私のカツカレーを作っているコックの動作が見えていた。
そのコックは、最後にカレーをかけるとき、
「このカツカレー!うまいんだぜ!おれが食いてぇーや!」
とでも言っているように、腰を折り、ゆっくりと、なでるように、丁寧に仕上げてくれたのが見えた。
さて、そのようにして作られて、出されたカツカレー、諸君はうまかったと思うか?
そう!それでいい!正解だ!・・・・・・(山口瞳さんの文体になってしまった)
出されたカツカレーは、確かにうまかった。
私の家の近くに、このお店が越してこないかなとも思った。

すっかり暮れて暗くなった夜道を、志布志港まで走った。
港の岸壁あたりで、夜釣りでもしている釣り人はいないかなと、探してみたが、
あまりにも寒いせいか、残念ながら見あたらなかった。

その港の岸壁の隅で、車中泊することに決めた。
シートを倒し、フルフラットにし、その上に緩衝ビニールシートを敷いた。
緩衝ビニールシートとは、菓子折りなどに入っている、プチプチと爪でつぶしたりする、
あのシートである。
これを敷くことにより、底から攻めてくる寒気を防いでくれるので、
結構暖かいと、釣り人のホームページに書いてあった。
結果は、そのとおり、暖かく寝れた。
夜、9時ころから、明くる朝の3時くらいまで、子供の頃に帰ったようにグッスリ寝た。

歳も50歳近くになって、何もくそ寒い真冬に、車の中で寝るこたあねえじゃないか〜たって
だって、貧乏だからしょうがねえじゃないか。
「貧乏もまた、楽し!」とやせ我慢してみた。



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