旅と酒の詩人(2000.5.1)

「幾山河越えさり行かば寂しさの、終てなむ国ぞ今日も旅ゆく」(若山牧水)

「旅」という言葉を聞くと、私は、ほとんど反射的にこの歌を思い出す。

小生、43歳の頃、熊本から福岡に単身赴任をしていた折、JR九州の情報誌である、プリーズ誌にて、
4ページ程度の若山牧水の特集記事を目にした。
記事の中に、牧水の生家と牧水記念館が宮崎にあるとの文字を読み、次の週末、車をとばした。

宮崎県東臼杵郡東郷町である。
耳川の支流、坪谷川がゆるやかにカーブを描くあたりに牧水の生家があった。
静かな、夕暮れがせまっても、いつまでも遊んでいたいと思えるような、そんなゆったりとした場所であった。

こよなく、旅と酒を愛した歌人、若山牧水。
医者とか教諭とか、本来の生業がありながら歌人でもあるという歌人が多い中、
牧水は、歌人以外の生業をもたなかった。
牧水こそ、真の歌人である。


【若山牧水】

故郷への帰省時、どうしようもない苦悩の中で、
「ふるさとの尾鈴の山のかなしさよ、秋もかすみのたなびきており」
と詠んだ牧水。
度重なる酒、旅のせいであろうか、享年、43歳はあまりに若い。

牧水の歳を、3歳も上回ってしまった。
歌はできないが、牧水のような旅をしてみたい。


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