絶えてなく(2021.6.12)

 毎朝、妻と愛犬と一緒に散歩に出る。
時間的には、午前7時前に家を出て約20分くらいの散歩である。

その散歩コース沿いの、ある1軒の住宅の軒先にツバメが巣を作っていて、
床に白い鳥の糞が落ちているのを見つけてから、
毎朝そこを通るたびにその巣を見上げるのが、ここ1ヶ月ほどの楽しみになっている。

最初見上げた時に、数羽のヒナが見えた。
たまに親燕がすーっと飛んできては餌を与えている。
その家の奥様とは、会えば朝の挨拶を交わしているので、
 「また、今年もツバメが来ましたねぇ、、」と挨拶すると、
『ええ、4羽ひながおっとですよぉ』 ってな挨拶である。


【 ツバメのヒナは可愛い 】

 「燕が巣を作る家には幸運が訪れますよ!」と、
私が根拠も何もないそんなお世辞を言うと、奥様は、
『そうだといいんですけどねぇ、ハハハ』 なんて返されて、笑いあって通り過ぎる。

先日の朝も、いつものように軒先を見上げると、
4羽のヒナが3羽になっていた。ちょうど奥様が玄関先の掃除をしておられたので、
 「3羽になっていますね、カラスとかにさらわれたとかでは?」と聞いてみたら、
『1羽巣立ったんだと思いますよ』との返答に、
 「ああ、よかった!」と思わずつぶやいたものだった。

そして2日後の朝の散歩時にまた軒先を見上げたら、
何と巣はもう、もぬけの空だった。


【 えーっ! と思って見上げた巣 】

ヒナも親ツバメも、みんな居なくなって、巣だけが残されていた。
きっと元気に巣立って行ったのだ。
おめでとう!ヒナたちよ元気にスクスク育ってね!
お母さんツバメ、今まで子育て大変だったね!
そんなめでたい門出なのだろうけど、
少し寂しい気持ちになった。
いつか巣立ちの日は来るものであるから、しょうがないのだが。
「明日からの楽しみが無くなってしまったなぁ、、、、」と呟いた。



散歩コースには、かなり大きくて立派な家が多く、
このあたりは昔から裕福な地主が多かったのだろうなと思う。
結構おおきな構えの家ではあるが、
玄関や窓の様子、庭の草の生え方などを見ると、
ああーっ、住んでた方が亡くなったか何かで、
空家になったんだろうなぁ、、、
そう思える家が何件かある。

そんな住宅を見ると、
巣立ち後のツバメの巣ではないが、
これも少し寂しい気持ちになる。


発生からやがて1年半になるコロナ禍のため、
私らが趣味でやってきたボランティア活動の一環である
♪童謡コンサート♪なども、ずーっと出来ない状態が続いている。
依頼を受けて何度もコンサートのために出かけて行った
あの老人ホームのお年寄りたちは元気でおられるのだろうか、、、、
そんな事もふと思ったりする。

 ♪幾年ふるさと 来てみれば 咲く花 鳴く鳥 そよぐ風
   門辺の小川の ささやきも なれにし昔に 変らねど
    あれたる 我が家に 住む人 絶えてなく・・・・♪

熊本県は人吉市が生んだ偉大な音楽家
犬童 球渓 先生の♪故郷の廃家♪の一節を思い出す。

しかしながら、しかしながら
もう少し、あと少しでコロナ禍も収束するだろう。
みんな待っててね、コンサート活動
必ず再開して出かけて行くからね!


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