お食事処 松ちゃん (2006.12.3)


 2、3週間前のことである。
熊本県の、天草上島の松島を車で通りかかったのは昼ごろであった。
天草五橋の五号橋を渡り終えて、右へ行けば有料道路という交差点を、
真っ直ぐ行けば、松島である。

少し下り坂になっている国道を走ると、
左手の海方面に大漁旗にも似た派手な暖簾めいたものが見える。
黄色い看板に、「お食事処 松ちゃん」とある。
ちょうど、松島−八代の不知火フェリー乗り場の手前に位置する。


【 派手な暖簾がかかっている 松ちゃん 】

車を止め、玄関を入ると、私よりいくぶん若い男の先客が一人、カウンター席に座っていた。
私は、その男の3席ばかり手前の、入り口に近いカウンター席に座り、
「ちゃんぽんばよかですかあ」といった。
『はーーい、ちゃんぽんですねえー』と、
きさくな感じのおばさんが奥から出てきて、お冷を置いていった。

若い先客は、昼だというのにコノシロの刺身で、焼酎のお湯割りをちびちびやっていた。
このあたりは、フェリー乗り場もある船着場になっており、海運関係か、漁師のようだった。
棚の上のテレビを見ながら、フフフと笑ったりしながら、一皿の刺身を前に焼酎をやっている。
実にうらやましい光景だ。

カウンターは、手造りの清潔なカウンターで、棚には「いいちこ」が何本か並んでいる。
お食事処でありながら、波止場のいっぱい飲み屋でもある風だ。

『お待たせしましたあ、ちゃんぽんでーす。熱いので気をつけてくださーい。』
「はーい、いただきまーす。」

具をよく見ると、普通、ムキエビなどが入っているが、ここのは違った。
なんと、ムキエビの代りに桜エビの乾物が入っているのである。
そして、乾物なので少し焦げている。


【 松ちゃんの、ちゃんぽん 】

何ということはないが、桜エビの乾物が入ったちゃんぽんを、私は初めて食った。
スープはしょうゆ味で、あっさりしていておいしい。
まあ、私はいわゆるグルメではないので、昼どき腹が減っていれば何だっておいしいと思うほうだ。

松ちゃんという店は、民家を少し改造したような造りで、上がり座敷もあり、卓もがいくつか置いてある。
カウンターも、トイレも、いかにも日曜大工で素人が造ったような雰囲気で、その素朴さと、清潔感が、実にいい。

この辺りは、以前は観光客でけっこう賑わっていた町である。
今は昔ほどの活気はないが、そのへんの旅館に泊まり、風呂上りにいっぱい飲みに立ち寄りたい・・・・
そんな感じのお店である。
地元でとれた新鮮な刺身で、日本酒などをキューッといっぱい。

乾燥した桜エビの入ったちゃんぽんをたべながら、ふとそんなことを思った。
ちゃんぽんを食べ終えた私は、額にうっすらとにじんだ汗を拭き、
仕事先である、牛深へ向かった。


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