タンザニアを旅して考えたこと
工藤 繁

1 旅する前に考えたこと
 もう忘れた頃かなあ、昨年8月22日ごろトウエンデ・タンザニアスタディーツアーというハガキが
届きました。アフリカ?と思ったぐらいではじめはほとんど関心がなかった。なにしろ重度の知的障害
者(息子、35歳M君と呼ぼう。)のいる家族であり、過去海外旅行2回計画するも全てパーになった。今
回も初めから無理であろうと思っていました。しかし、アフリカと言う言葉に引っかかるものがあり
徐々に惹かれていく気がし、8月31日にYさんとHさん等自宅に来てもらいMくんのことを一諸に相談し
ました。そんなこんなで、結局メンバーとして参加することを9月中旬ごろ決めましたが気分的にふ
らふらしていたようです。

 その後、東アフリカのタンザニア、ケニア方面のいろんな情報を入手するも私たち夫婦の心は振り
子のように揺れる毎日でした。一度手をあげておきながら「やーめたー」はないだろうと、しこしこ、
イライラしながら約3ヶ月間の準備を続ける中で一番の難題はMくん対策であった。60歳過ぎの老夫
婦?が無事に旅行できるのかなあーと・・
食事、トイレ、病気、発作、ストレスからくる異常行動奇声などいろいろ頭をよぎりましたが、まあそれ
なりに手をうったつもりなのであとは天にまかせようと腹をくくっていました。出発まで約一週間前
にマラリア予防薬を飲んだその夜のこと、妻が極度の緊張からのストレスにより12月12日早朝I医大へ
「ピーポー、ピーポー」と鳴らしながら運ばれて行きました。「あーこれで万事休止か」とHさんへ不参
加の電話をした。しかし、女性の執念なのか一日後には回復し晴れて参加決定!

 ところで、危険なリスクを負いながら旅する目的、思いは何であるのか?夫婦間で自問したことに
ふれたいと思います。アフリカというと最初に大自然をイメージしますが他に、黒人差別、奴隷、植民
地、内戦、エイズ等々あまりよいイメージが浮かんでこない。西洋文明に虐げられグローバルな経済
戦争に取り残された貧国扱いされている国々と思われています。一方「心の豊かさ」「ほんとうの自
然」など残っているような気がしています。障害者のいる家族はいつも裏側、弱い立場におり何か共
通の思いを探しあてることが出来るのではないかと、好奇心から手をあげたのかなあーと考えてい
ます。この好奇心とはどこからくるのだろう?未知なものへの憧れ、冒険心からか、または現状から
の逃避からか・・・いろいろありますね。

 21世紀の生き方はスローリズム、頑張らないいわて、いわての風土自然のありがたさを再認識する
ためかもしれない。

 真の自然とは、人間以外の自然界(動物、植物、虫、目にみえないもの・・・水、空気、山、川、海・・・)と
共存、共生しバランスがとれた姿をイメージしますが、そこにはあらゆる5感を研ぎ澄まし、自己防衛
する「わざ」を学ぶことが出来るのでないかと考えました。私の年代で約60年位前か?裸足の子供
たちがおおぜい遊んでいた時代を思い出されます。

 また、大自然の動物たちと接することにより、Mくんの心に何か変化が起こるのでないかと期待感
をいだきながら・・・・。

2 旅をしてから考えたこと
 さて、いろんな思い、好奇心をもってタンザニアへ出かけたがどうであったか。
 第一印象は厳しい自然環境の中で暮らしているなあーと、飛行機から眺める大自然やンゴロンゴ
ロの自然公園はそれなりに感嘆したが、タボラ近傍の田舎の原風景は乾いた赤茶けた土地で特に水
の確保に大変苦労しながら、農業、畜産を営んでいる姿がありました。以前、東京都墨田区にある雨
水資料館を見学する機会がありました。世界各地の年間降水量などを展示しているコーナーがあり
ましたが、日本の春夏秋冬の季節変化による雨水がいかに多いか、その恵みに感謝しなければなら
ない。(参考;ペルー10ミリ/年間、沖縄約2000ミリ/年間)その日暮らしの生活スタイルの住民が多く、
これと云った付加価値を生む鉱工業もないため、細々とした流通サービスをして生計を立てている
ようです。しかし、経済的に貧しくても何か楽天的、スローモーション、且つしたたかな一面もあり根底
には宗教心による心の癒し、豊かさをもっているのかなあーと・・・。

 住民へのセキュリティー、医療保健、福祉、行政サービスなど立ち遅れているため、まあ、自然界の
真中、自分で身を守る以外にないのか。日本では必要としない5感を全開せざるを得ない状態にあ
ることをあらためて感じました。原始社会ではないが、ねむっていた人間の本質を呼び起こされた感
じであり、これからの生活に役立てたいね。唯、Mくんと動物たちとの接する機会が少なかったのが残
念でしたがまたのチャンスをみつけよう。

3 タンザニアの印象あれこれ
 項2とダブリますが別の視点から考えてみました。
 今回の旅はタボラを中心に見聞しましたが、住民の食料事情(市場、家庭、レストランなど)保健衛
生面で病院、町の治安、交通事情、住宅環境、いわゆるインフラ整備です、また学校教育、福祉行政、
就労(都市部、農村部)文化余暇活動、宗教など駆け足で観て回りました。一番深刻と思ったのは、こ
れという仕事がないことです。なぜなのであろうか?品質管理の手法の特性要因図を使い、なぜ、
なぜ・・・・と分析しなければ問題点がわからないが、直感的だが、住民が貧困に慣れてしまい受身の
心になってしまい挑戦する意欲が薄れたのでないかと心配です。意欲があっても資金がないの
で・・・、教育の場がないので・・・・?

 育英資金を募り将来リーダーとなる若者を10年~30年位かけて育成すべきなのか。勿論、今でき
るバザーや物品の援助も必要ですが、長い目で自立心、自尊心プライドを育てる必要があると思い
ますが、皆さんはどう考えていますか?

ダルエスサラームのホテルにて



 アフリカの雄大な大自然を観て楽しむ観光がある反面、ミクロ的にみると水不足で土地が肥えて
いないようで、万年的に食料不足が続いているのではないか、また自然破壊もゆっくり進んでいる
のではないかと心配だ。特に観光地にそれが出ているようです。唯、救いなのは、ある農家のお母さ
んの例ですが、自立心、4S、コスト意識、子供への教育など立派にやりこなしているモデルがあること
です。また、人間関係も大変純真、素朴な面あり信頼感、絆が強く、あかるさ、真のやさしさなど残っ
ており日本人が忘れてしまった人間性のゆたかさがあることです。

≪タンザニアの国民性とは、こんなものか? まとめ≫
●ゆったりした流れの中で、食事もシンプル(基本的に自給自足)太陽が昇ると皆一諸に外へ出てボ
ー・・・?おしゃべりが好きな民族か。
●子供たちは、真に子供らしさが残っている。(注;日本の子供達は物質に侵されているため、感情ま
で侵食されているのではないか?そのため人間らしさが希薄になっている。)例えば、カリムさんの
奥さんやママさんなどは離別する時、真から涙ぐんでいたことや、Yさんと青年たちの再会劇、信頼
感と絆の強さを感じました。
●好奇心が強く、知恵を研くとおもしろい人々と出会うのでないかと。井戸堀やカリムさんの奮闘。
●文化・芸術力もありそうだ。
●宗教心にねざした家族、生き方など。

≪トピックス≫ 思い出としてふれておきたい事
①旅の途中、合間を見つけてスケッチして来たが自然の豊かさに感動した1つにンゴロンゴロにあるロ
ッジの窓から12月26日午前2時ごろ満天の星空のきらめき、何ともいえない大自然の神秘さを観た。
②カリムさんのサファリ-車一台にわれわれを入れ14名詰め込み、ワーワーキャーキャー悪路?を走
る。警察署の前を平気で?
③日中、目が合うと誰となく「ジャンボ」と陽気に挨拶をかわす。
④ケニア大統領は西欧文明を積極的に導入し、国作りを急いでいるようだがそこには貧富の差が出
てきたのかなあ?一方、タンザニア大統領はあくまでも自立心を育てることが第一歩で、教育や農
業などに力点をおいているようです。遅いけれども確実かなあ。
⑤Yさんが教鞭を執った学校を見学しましたが、あいにくクリスマス休暇で寮生数名と教頭さん、先生
と、それにしても教頭さんの服装は文化の違いであろう、日本ではちょっときざなやくざぽいなあ?
それにしても教室内の汚れ方どうしたことか。
⑥タンザニア国際ミュージアムの建物は年季ものだが、中庭の巨木にはおどろいた。Mくんとパチリ
 ・・・この木なんの木・・・日立のコマーシャルか

本多注記:印度菩提樹(クワ科 学名:Ficus religiosa)。菩提樹は常緑の高木で、高さは30m位にな
ります。葉先が細長くなっているのが特徴です。先端が細長いのは雨の多い地帯に特有の形で、雨を
スムーズに受け流すように発達したといわれています。インドの菩提樹もクワ科です。同じクワ科でも
葉先が細長くないものは、ベンガル菩提樹と呼ばれています。こちらもやはりインドでは聖木とされ
ているそうです。

4 日本へ着いてから雑感
とにかく関西空港へ12月30日午後4時過ぎ着陸、Mくんを真中にして着陸前約15分間は例のボケ上
がる彼を飛行機の床面に正座させたまま、両親が抱きかかえるようにして何とか日本へ着いた。「や
っと無事帰れたなあ」と妻と顔を見合わせた。ホテルが準備してくれたバスに乗り、大阪空港まで一
路吹っとばし・・、ホテルの客室へたどり着いたらMくんは正座し、彼なりにホッとしたことであろう。午
後7時30分ごろから、酒のみグループと食事グループにわかれ、それぞれ旅の話題をさかなにした
ことであろう。今回のツアー参加者はそれぞれ好奇心が強く、個性のある20代から60代と幅広くキ
ャラクターや話題も豊富なメンバーで、毎日が何かが起き、楽しいツアーでした。

 12月31日ホテルの朝食は和食でしたが、そのうまさ、味を久々に感じた瞬間でもあり日本の物質的
豊かさを実感しました。話が前後するが、12月30日午後7時のニュースを久々に見ていたら吉野家が
米国のBSE(牛海綿状脳症)騒ぎで牛丼を廃業するとか?イランでは大地震があったり、またイラクは
相変わらず泥沼状態であるとか・・・

 一方、12月31日の朝大阪空港のラッシュを感じたり、あちこち正月料理を買い求める人々の波波が
テレビで放映されていたが・・・・今まで当たり前と思っていたことを反省したり、感謝したり忙しい。

 盛岡の我が家へたどり着いたのは12月31日午前11時30分ごろかなあ、「やれやれ」と正月料理ら
しいものをちょっと買い年越しをした。

 最後にYさんが花巻空港でツアーご苦労さんの挨拶をされた時、「今回の目的は今の生活そのも
のを見直し、実践することだ」と、しかし、物質の豊かさになれた「ゆでガエル」のわれわれ日本人は
もう逆戻りは不可能であると思うが、『心の豊かさ』を取り戻すことは可能であろう。と思いたい。

5 さて、これから何をすべきか? -課題がおおきすぎて、一個人では押し潰されます-
(1)タボラの住民は(全部とは云えないが)援助なれのためか?受身型の生活スタイルが残っていそ
うだ。(勿論一部のエリート集団は別だが)そのため労働意欲、自立心を向上させようとするパワー
不足か。(それはあまりにも貧しいため、資金力がないため,上級教育(高校大学など)を受ける機会
がないためであろうか)
※タボラ市その周辺も含めた地域の若者(小、中学生)を対象に10年~30年先をみて、人づくりのた
め育英資金作りをスタートさせたら、将来、カリムさんと協力しNGO組織へ発展させたらよいなあ・・・

(2)私たちファミリーとしては、タンザニアの良さを生活信条に取り入れたいが、さて?
○シンプル・ライフ、循環型自然農業をやってみるか
○真の人間性、人間愛の追求(かっこいいなー)
○語学力
○障害者の乗り物に対するテーマ
 3輪車の改造型と原価低減
     国際線クラスの飛行機トイレのバリアフリー
     (例えば車椅子の移動がスムーズに出来る体制など)
※今回のツアーをきっかけにアフリカ大陸に関心を持つようになったのでいずれまた出かけるので
はないかなあ・・・・?
なぜアフリカの現状はこうなのかと問題点を理解しようか。
また、彼らともっと人間関係を作るためにはどうすべきか?
いろいろテーマがあるね
(3)トウエンデのタボラへのかかわり方も見直しが必要でしょう。
   組織力の強化やフォローアップなど含めて、難しいなあ・・・・・・。



 
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