雪 の 日
シューベルト「冬の旅」を聴く



今日は節分。久しぶりに建長寺に節分祭を観にいこうと思っていたが、
遅く目覚めたら外は雪。この雪では尾根を越えて鎌倉に入るのは難しい。

 再びベッドから起き上がり、カーテンの隅から外を覗いたら随分と積って
いるようだ。先日の雪は積る間も無く融け去ったが、今回は昼近くなっても
降り続き、5〜6cmは積っているように観える。                .

隣家の屋根も、その奥の林も雪景色でモノトーンの世界だ。       .

 起きぬけに、無性にコーヒーが飲みたくなった。ミルを回す時間も惜しく、パックのコーヒーとクラッカー、そしてラム・レーズン入りチョコレートで遅い朝食とした。
 コーヒーの苦味と酸味、そして口中に広がるラムの薫りが私を覚醒させた。

外は雪。雪の日に谷戸の坂を下り、外出するのは気が重い ・・。



 プレーヤーのトレイに何枚目かのディスクを載せた。屋外の
白い雪を見ているうちに、ふと、聴いてみたくなった曲だった。

シューベルトの「冬の旅」である。この歌曲集は1828年に
シューベルトが短い生涯を終えようとする前年に作曲された。

   ’20年以降、シューベルトは体調を崩し、入退院を繰り返していたという。
苦しく暗い生活の中で生まれたのが、この「冬の旅」と云われている。



時には自分の死期をも悟ったかもしれないこの時期。
「絶望感」の漂う陰鬱なイメージの歌詞の連なる歌曲集。
     

    冬の旅    Winterreise(D 911)

凍 結

僕は雪の中、ただいたずらに彼女の足跡を探している。
いつか彼女が僕の腕をつかんで
緑の野原を歩き回った、あの足跡を。

〜 (中略) 〜 

僕の心は死にそうだ、冷たく彼女の姿が凍り付いているんだ。
いつかこの心がまた融けたなら彼女の姿も流れ去るんだろう。

           ヴィルヘルム・ミュラー(Wilhelm Muller)の詩




       しかし、この歌詞の女々しさはなんだろ〜か。      .
女の腐った様な ・・。男の泣き節か〜ぁ。      .

 ・・・と、若いうちは思ってきた。しかし、50過ぎた頃から、
何故なのだろうか ・・ この曲の魅力、美しさが解る様になって
きたのである。勿論作詞したのはミュラーでありシューベルト
自身が女々しい男だったとは微塵も思ってはいない。     .

しかし、この歌詞はシューベルトの旋律と出会って生きた。

シューベルトの歌の美しさが、この歌曲集の中に溢れている。



  以前は名歌手ディートリヒ・フィッシャー・ディースカウの歌った
     「冬の旅」が1番だと思っていたが、最近では、エルンスト・ヘフリガー
の歌唱がお気に入りです。                    .
 イェルク・エヴァルト・デューラーのハンマーフリューゲルによる
 伴奏も渋くて「最高!」です。                      .

女の方には同性の、ナタリー・シュトッツマンの歌うものが
お薦めかと ・・・ 。                           .


コーヒーを啜り                          .
ふと、窓の外に眼をやれば、先程まで止んでいた雪、
何時の間にか、また、降り始めていた。            .

今日はこのまま沈殿か ・・・                .
      また、・・・ 膝の関節が痛みだしてきた。




   つ ん
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