櫛ガ峰を登る
草紅葉と泥濘の南八甲田
八甲田というと普通は最高峰の大岳を擁する北八甲田をさす。これに対し、今回登る櫛ガ峰(櫛ケ峯)を盟主とする山域を南八甲田という。車道が山裾を環状にとりまき山へのアプローチが容易な北八甲田に対し、南八甲田は薮も濃く人影薄い山々からなっていて、原始の森の雰囲気を保っている山域だ。その中でも櫛ガ峰は行程が長くハイキングなどで気軽に行ける山とは少し違った趣を持っている。 |
猿倉岳(右奥は高田大岳〜雛岳) |
登山口となる猿倉温泉の奥にある登山者用駐車場に愛車のロッキーで到着したのは朝の7時前だった。早速身支度をし、駐車場を後にしたのは7:15だった。小沢に沿ってしっとりと濡れた道を登って行く。今日は天気も良く秋の日の山行が楽しめそうである。 事情があり8月末の大岳登頂以来、今日まで一ケ月以上山に入ってなかったので季節も大きく変わり登山道には晩秋の雰囲気が漂っていた。 8:20崩壊した矢櫃(やびつ)橋に到着、持参したホット・ティーにて喉を潤す。 |
しばらく進み登山道右側の林間に猿倉岳を望みながら歩くようになると、まもなく松次郎清水に到着。美味しい湧き水を頂く。なおも進み乗鞍岳分岐の湿原に到着。草紅葉が鮮やかだ。この先で望む猿倉岳は右奥に北八甲田の高田大岳と雛岳を従え今日は一段と綺麗に見える。登山道は泥濘の悪路となり、広い湿原奥に駒ガ峰が望める場所に到着。駒ガ峰は昨年の夏、七夕の日に苦労して登った山だ。この時期登山道脇にはシラタマノキの実も熟れており、その白い実を摘んで口に放り込むと僅かな甘み、そしてメンソールのような匂いと清涼感が口の中に広がった。 |
9:40黄瀬沼分岐に到着、奥の池塘を覗きこむと秋枯れの草紅葉の中に池塘は浮んで見えた。右に駒ガ峰、左に乗鞍岳を見ながら黄瀬萢を目指し泥濘の登山道を進む。登山道左手に大きな湿原。黄瀬萢に到着である。湿原の奥には広大な裾を広げた乗鞍岳が雄大である。今回の登山の対象となる櫛ガ峰の実質的な登山口はここである。猿倉温泉から3時間かけて着いた箇所には登山道分岐の標柱があり直進・御鼻部山、右折・櫛ガ峰、を示している。「御鼻部山かぁ〜〜 」 そう、八甲田から十和田湖へ抜ける道なき道がこの先続いているのである。右折し正面に櫛ガ峰を望みながら暫く登ると樹林の中に登山道は入って行った。泥濘の悪路を沢を越えつつ上り下りすると木道が敷かれ広々した草原へ出た。 | 黄瀬沼分岐 奥の池塘 |
ホッとした、先程オオシラビソ林の中で登山靴の中まで泥水が入ってきたので足元が気持ち悪くなっていたのであった。「あんなぁ〜に注意しながら歩ていたのになぁ〜 まいった、まいった。」広々とした黄金色に輝く草紅葉の先に、これから登る南八甲田の櫛ガ峰が大きい。ほんと〜にここから見る櫛ガ峰は雄大であり、そしてここの草紅葉も綺麗だ。 |
木道歩きも終わり、いよいよ山頂までのきつい登りとなる。途中で息を整え、振返り見ると猿倉岳や駒ガ峰そして黄瀬萢を従えた乗鞍岳方面の展望が素晴らしい。汗を拭きつつ登りつめると11:20南八甲田の盟主櫛ガ峰に到着である。360度の大展望、北八甲田が良く見える。山頂から俯瞰する南八甲田の草紅葉も鮮やかだ。風も無く穏やかな山頂には、山頂を示す標識と三角点が設置されていた。山頂には1パーティ(2名)の登山者がいた。話をしてみる、津軽弁で地元の人と直ぐ分かった。眺望を堪能した後下山にかかる。長い〜〜 長い〜〜 登山道を折り返し、猿倉温泉に辿りついたのは今朝駐車場を出でから8時間経った15:15だった。 |
櫛ガ峰 山頂直下にて |
櫛ガ峰をバックに |