燕 岳
タイミングを逸すると


第2ベンチを通過


暮れから、私の誕生日でもある元日を雪の燕岳で過ごそうと思い、
年末の喧騒の中、家の玄関を出た。

大糸線・穂高駅からタクシーで冬季の登山口となる宮城に向かった。
山行第一日目は宮城のゲートから所々凍結している舗装道を歩き
中房温泉に向った。そして晩はゆったりと温泉に浸かり、静かな夜を過ごした。

大晦日は夜明けと共に宿を出た。
合戦尾根は殆ど樹林帯のため風に晒されず、のんびりと
高度を稼げる。このため、正月を燕岳で過ごす人は多い。

しっかりとトレースは付いており大変歩きやすい道を行く。
第1、第2ベンチ、更に第3ベンチを通過し徐々に高度をあげる。


樹林帯が切れる

槍ヶ岳を背に
半ば雪に覆われた合戦小屋を過ぎると、
まもなく樹林帯も切れ、笹の葉先が雪面より
飛び出している合戦の頭に到着した。

森林限界を越え一挙に展望が利くようになった。
しかし、それと同時に頬に吹付ける風が肌を刺す。

気持ちの良い歩行を続ける。餓鬼岳、東沢岳そして燕岳から
大天井岳へと続く稜線の後方には槍も良く見えるようになってきた。

正面に見える燕山荘まではもう一息である。

尾根伝いに燕山荘直下の急斜面を直登して小屋前に飛び出した。
小屋前からはこれから燕岳を目指そうとしているパーティも見える。

燕岳を目指すパーティー 
しかし、天気は良いものの物凄い風である。ヤッケのフードは強風のため
先程から唸り声をあげている。フード付サングラスを掛けていても風の強さと
寒さのため涙が出て止まらない。ゴーグルを持参しなかったのが悔やまれる。

オーバ・グローブを通し寒気が沁み込み掌が悴んだ。
堪らず小屋に飛込む。そして、そこは別天地だった。
暖かい穏やかな空気が小屋の中には充満していた。

受付にいた若い女の子と会話を交わしているうちに登頂への意欲は
急速に萎えてしまった。後はビールそして日本酒の世界へと一足早く
正月・屠蘇モードにシフトしてしまった つん なのである。
しかし、これが失敗だった。


煙る稜線

無人の山頂と三角点標識(右)

元日の朝は二日酔い気味だった。
小屋で出された雑煮の椀も汁のみ馳走になり小屋を出た。

風はあるが昨日より随分と暖かく感じる。ただ天気は悪く視界も良くない。
おまけに時折、横殴りの風に乗って雪も降ってくるのである。


昨日登頂すべきであった。晴天の好機を見逃した判断ミスである。
タイミングを逸するとはこの事である。反省 ・・・・ 反省

結局、地吹雪に煙る稜線を山頂まで往復して、
無人の山頂で三角点標識を確認し戻ってきたと云う
情けない事になってしまった。

燕山荘に帰着(背後はテン場)

小屋に戻り、しばらく空模様をうかがっていたが
天気の回復まで少し時間が掛かると判断し、
即刻の下山とし元日の夜には帰宅した。


   あの日の山