長後天満宮(藤沢市長後1,412)
姉妹の名を刻んだ1600年代の「はじめ狛犬」
ここには神奈川県でも数少ない1600年代の狛犬がいる。
狛研初期の頃に訪れた時その狛犬に出合い、さっそく円丈師匠へ報告したところ、「狛犬の杜」で紹介して頂いた思い出がある。

その1600年代の狛犬にもう一度会いたくて、10年ぶりに訪れてみた。
ところが、「いない!」…
多分、最近頻発している狛犬盗難事件を恐れて、見えないところへ隠してしまったのであろう。
確かに、その気になればすぐ持って行けるサイズ…
残念だが、賢明な措置かもしれない…

と言う訳で、今では見ることの出来ないこの狛犬を紹介することにした。

参道入口には平成3年建立の新しょうわタイプの狛犬がいる。
参道を進むと、拝殿前にこの江戸狛犬がいる。
上の拝殿写真でも分かるように、植栽に隠れていて全身の写真は撮れない。
吽像のアゴが少し破損していて、技巧的ではないが、小さくて(約40
cm)感じが良い。
建立年
 大正14年9月
石 工
 無刻
奉 納
 願主 諸節照蔵
そして拝殿の裏へ回ると本殿がある。
塀に囲まれていて、気が付かないと通り過ぎてしまうが…
覗き込んでみると、2対の狛犬がいる!

現在は階段上の狛犬を見ることが出来ない

階段下にいるのがこれ。
阿吽逆置きになっているが、この場所に似合っている。
そんなに古くは無さそうだが…と、遠くから必死に読んだ銘はこれ。
建立年
 昭和8年
石 工
 未確認
奉 納
 下長後 井上マチ

そして、最後にご紹介するのがこれ。
今は見ることが出来ない、1600年代の「はじめ狛犬」。
奉納年は背中に刻まれ、胸(全面の彫り残し部分)には2人の女性の名が
あるという。(藤沢市教育委員会の説明版)
この説明版にも記されているが、確かにこの時代で
「おせ世」「支むら」という女性の名が刻まれているのは珍しい。
この二人の女性は中村氏の女(むすめ)とあるが、中村氏とは桓武平氏中村氏族の流れなのか?
詳しく調べてはいないが、この地域には古くから中村氏の名はあるようだ。
女(むすめ)〜姉妹(?)の名を刻み、その息災を祈願した…というのは
狛犬ファンにとっては何だかウレシイ気がする。
奉納年
 貞享3年3月25日(1686)
石 工
 不明
奉 納
 中村氏の女(むすめ)おち世
           支むら
 市指定重要文化財(有形民俗文化財)

(本殿前2対の撮影は 1997.8.26)