まん丸の目が、魚のように白目でふちどられている。
重量感のある作りなのに、顔が怖くない。
昔、絵本で出会ったような気がする。
桃太郎に退治されたオニの顔だったのか、もう降参、降参と言った善良なオニの風貌だ。
横顔だけ見ているとトトロにも似ている。
鮮やかな朱色で口の中を塗り直しているので漫画的だ。
台座の「れ組」の彫りが太く深い。
狛犬と同様に文字を朱色で塗り直して目立とうとしているのは江戸の火消しの負けん気か。
足も胴も太く力強い。
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西日暮里駅を見下ろす高台、諏訪神社の庫前の狛犬だ。
諏訪神社は、元久二年(1202)創建。
祭りの山車は都内でも有数のものだったらしい。
狛犬は文化六年(1809)だが台座には大正の大震災の再興の記載がある。
下町、谷中の鎮守としてこの地域を守ってきたのだろう。
被災地でもいずれ東日本大震災復興の狛犬が奉納されることになるのだろうか。
諏訪神社(荒川区西日暮里3-4-8)
大野久美子 2012年第89号より
写真;大野・阿由葉
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スペースの制限もあって、ここまでが本紙に載った部分。
しかし、この神社にはあと2対の興味深い狛犬がいる。
ここでは、本紙の拡大バージョンとしてそれらもご紹介することとする。
まずは拝殿前のブロンズ狛犬。
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昭和43年建立のブロンズ狛犬。
ご覧のように、大きく胸を張っている。
ユニークなのは、大きく後ろへ反り返ると共に、身体を左右に傾けている姿だ。
彫刻 荒川明照、石匠 岩城喜三郎
そして最大の注目は、その台座に「狛犬歴記」として、下記のように歴史が詳細に刻まれていることだ。
元この位置にあった狛犬=現在の神輿庫前の狛犬 の変遷が良く分かる。
江戸時代からの長い歴史を通して「れ組」の思いが強く伝わってくる。
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狛犬歴記
文化六己巳年
石彫狛犬壱對 れ組頭中にて奉納
大正十二年九月
関東大震災破損修理
昭和二十年五月
戦災の為破損
昭和四十三年四月
神輿庫前移転
昭和四十三年五月
明治百年記念として青銅狛犬再建
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3対目は末社末広稲荷前にあるこの狛犬。
どう見ても江戸期の狛犬に見える。
が、実は昭和生まれ…
大野さんが本当に書きたかったのは、この狛犬についてだったと例会で語っていました。
そこで、ここに再び原稿をお願いしました。
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小さいが、宝珠と角をもつたくましい狛犬だ。
彫りがしっかりとしていて一目で好きになった。
1700年代後半か1800年代前半くらいの狛犬かと思って近寄ってみると台には「昭和」の文字。
とっても意外だった。 明和と見間違えたのかと思い、もう一度撮った写真を見直したが、やはり「昭和」。
この出来の良い狛犬がまさか昭和?
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台座に新しい狛犬が載せられていて、台座の年度と狛犬作成年度が違うということはよくあるが、狛犬と繋がった石に彫られている以上、間違いなく昭和の奉納なのか?
昭和9甲戌年 町田久五郎 藤村勝司
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疑問を狛犬仲間にぶつけてみると、屋敷の庭に以前からあった狛犬を昭和になって奉納した可能性もあるとの説。一方で昭和に江戸狛犬を真似て作った可能性も否定できないと。
謎は深まるばかり…
でもこれが狛犬の奥深さか?
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