狛犬紀行・29 三宅稜威夫 |
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落語の普及活動を始めて25年、主宰する「浦和市民寄席」は325回を超えた…日本一継続している市民落語会である。円丈師匠とは初期からの縁である。 この会で「大山詣り」が時々演じられる。 時間をみつけて大山に出かけた。 大山は伊勢原市にあり雨乞いに霊験あらたかということで古代から信仰されてきた霊山である。 山頂(1,252m)にある大山阿夫利神社上社までは行けない(徒歩)のでケーブルカーで下社に詣で、その足で大山寺、日向薬師、比々多神社などを訪ねた。 江戸の男たちは旧暦6月27日から7月17日の期間に、講を組み、両国橋東詰で水垢離をした後、納め太刀をもち「六根清浄」を唱えながら大山街道を経て大山詣をした。 そして江ノ島に下り、生きた弁天様を相手に精進落としをした。 聖性混合の三泊四日の旅である。 |
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この中に「和合狛犬」がいる |
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下社では四対の狛犬に出合った。 この中で大山名水洞穴に鎮座する「和合狛犬」に心ひかれた。 社伝によれば作は元禄期、以前は山頂登拝門前にあったらしい。 風化がすすみ先代に近いが今は屋根付で安住。 社文に「登拝門守護の大任を全う…今は人の和平を念じつつ永遠の鎮護につく」とある。 ブッシュにみせたい狛犬と思った。 それにしても、この峻厳な山を江戸から歩いてきて登った江戸人の強足…生きた弁天様に会う目標があったからかもしれない。 2003年34号より (写真;阿由葉) |