狛犬はなし-01 寄子中のキツネ
 狛犬はなし(その1) 〜 寄子中の狐


新宿花園神社(新宿区新宿5-17-3)に嘉永六年(1853)に建立された狐がいます。
子狐が可愛い逸品です。
石工は四谷浄運寺横町の本橋吉兵衛、奉納は槌屋久兵衛寄子中となっています。


寄子とは何だろう?
幕府には新築を担当する作事方と建物の維持と小修理をする小普請方とがありますが、時代と共に新築が減って維持修理が主な仕事となっていきます。
幕府指名で小普請奉行扱いの工事が決まると石高に応じて旗本へ人夫を割り当てます。
割り当てられた旗本は常時人夫となる家来を抱えていられないので、その時だけ割元
(わりもと)と呼ぶ親分に頼み人夫を出してもらう。
その割元は
常時若い衆を沢山抱えておりこれを寄子(よりこ)と云った。


あの有名な幡随院長兵衛は侠客としてのみ知られているが本来の仕事は割元で、今風に云えば長兵衛は人材派遣会社の社長であり、寄子はその社員と云うところなのだ。
でも
槌屋とはいかにも土建屋を思わせるような屋号だが鳶職(とび)の頭だろか、そして寄子はこの槌屋の人足達なのだろう。
文字数は多くはないが
石に残された文字は歴史や文化を知る大きな手がかりと言えます。

                                      参考「鶯魚 江戸生活辞典」


                                     2004年10月 44号より
                                        山田敏春