NTTけいわん賃金差別事件
       6・問題点2・労災申請で会社は大混乱

 
 罹病している「けいわん障害」が業務上であるとして、労基署へ労災認定の申請をしたのは、鈴木さんと米山さんは1994年7月、澤根さんが1996年12月である。

 申請に先立ち、人はNTTへその証明を頼んだが、人とも所長が「それはできない」として書類を返してきた。予想していたことであったので、「なぜ疾病が業務上と考えるか」という文書を添付して浜松労働基準監督署長あてに、申請を行った。

  NTTの104番号案内の「VDT作業での労災申請」は、全国初の出来事であった。3人の所属する通信産業労働組合浜松分会は、記者会見を行い、問題の重大さを訴えた。新聞、テレビの報道機関が一斉にこれを報じた。番号案内の職場へも取材に入り、職場にあった番号案内の取り扱いを秘密録音する実態を記事にするなどで、社内には緊張が走った。

 3人の申請は回に分かれているが、鈴木さん・米山さんの場合も、澤根さんの場合もそうであるが、申請後、職場の責任者である情報案内センター所長に対し、労災申請をしたことを報告に出向いた。

 しかし、会社は人の挨拶を聞こうとせず、完全な無視の態度をとった。
 たとえ会社にとって気に入らない労災申請であろうとも、人の行為は法で定められた当然の行為である。普通の企業人であるならば、たとえ意見が異なっても社員の報告は聞くべきであろう。
 会社は、3人の労災申請によってNTTが行っているVDT労働の健康管理が問題となることを恐れた。そしてその告発者でもある3人を会社の敵として扱った。別項で詳細を記すが、会社は人の職場での孤立と徹底した差別を始めた。


 こうして会社は人への差別・攻撃を強めることで職場でのVDT労働見直しの声が大きくなるのを防ぐのに力をさくあまり、会社は3人に対しやらねばならない措置の重大な見落としをしたのである。