本稿より順をおって、具体的に会社規則にてらして、会社の不当性を指摘していきたい。
発症から申請までの期間は、労災申請者にとっては、非常に過酷な時期である。症状の治療のために時間をさかねばならない時期であるが、同時に申請資料の作成のために膨大な時間を割かねばならないからである。
会社がその疾病は業務上であると証明してくれれば、申請書類は非常に簡単ですむ。しかし、会社がその証明を拒否した場合は大変である。
なぜ大変かというと、その疾病が業務に起因することを申請者本人が立証しなければならないからである。
3人はNTTの職場で104の電話番号案内のVDT作業を行っていた。この作業のなかで、腕・肩・首などの疲れやだるさなどが続き、主治医の診断で「頚肩腕傷害」(以後、けいわん障害という)とされ、職場を休んで休養したり、治療のために病院にかかったりしていた。
3人とも、この療養のなかで罹病している「けいわん障害」は業務が原因であると確信をもつようになり、労働基準監督署への申請にいたったのである。
鈴木は、発症より 3.5ヶ月後
米山は、発症より 4.5ヶ月後
(澤根は、1日単位の休業はしていない)
いずれも申請は、労災保険法で定める時効の2年以内である。
この間の勤務の形態は、年次有給休暇と病気休暇を取得して、その療養にあたっていた。
年次有給休暇は、年間20日支給され、取得による賃金の減額はない。
病気休暇は、本人の私傷病時、申請でき、賃金はその日数により昇給額の減額や、特別手当(夏期・年末)の減額がある。
申請前の段階では、休暇は前述のように年次休暇か病気休暇をとるしかない。
ましてや、労災申請をしてない段階では公傷休暇を問題にする時期ではない。
しかし会社は、「3人が病気休暇を申請したので公傷休暇を与えない」といっている。公傷休暇を与える時期は後の項で述べる。
3人の疾病が業務上かどうかは労基署に申請をしてそれから決められる。つまり業務上かどうかはまだわからない申請前の休業は私傷病の病気休暇を取るしかないのである。この病気休暇を理由に公傷休暇を与えないという会社の言い分は、就業規則をよく理解してないといえる。
結論を述べる。
申請までの休暇は、私傷病による病気休暇を取得する。賃金は病気休暇の規則により減額もありうる。(これは、労災認定後さかのぼって完全補償される)
この間の休暇が病気休暇申請であることを理由に公傷休暇を与えない理由とはならない。
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