NTTけいわん賃金差別事件
       4・「業務上災害」とはなにか

 

 「業務上災害」とは、業務が原因での傷害、疾病をいう。簡単である。

 しかし、NTTは次のようにいっている。
 「療養保障認定がされたことは承知しているが、業務上認定されたとは認識していない。会社判断は業務外で私傷病である。休業補償認定がされれないからである」

 会社のこの発言は、労災という意味を理解してないようなので、改めてはっきりとしておく。
 労災とは労働災害を略した言い方である。つまり、労働者が労働の中で、または労働が原因で生じた傷害、疾病のことをいう。「業務上災害」「公傷」も同じ意味である。

 労災の基本的考え方は、労基法第8章で述べられている。つまり75条は、「使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない」
 76条は「労働者の療養中平均賃金の百分の六十の休業補償をおこなわなければならない」としている。

 また、労働者災害補償保険法(以後、労災保険法という)では、企業の加入を義務つけており、労基法第84条で、労災保険から補償される場合は、企業の補償の責は免れるとされている。
 たとえ労災保険があるとはいえ、企業の補償責任はなくなったわけではなく、基本的には企業がその責任をおっている。これは自動車の事故で相手に傷害を与えた場合、自動車保険で補償するから自分の責任はないということはできないことと同じである。

 さて問題の本質である「業務上認定」の話に入る。

 3人は、労基署に対し「療養補償の労災保険適用」の申請をして、これが認められた。
 労基署は、3人の申請に対し、疾病が「業務に起因するかどうか」審査を行い、業務上の疾病と判断したからこそ、労災保険適用を認めたのである。
 NTTの言い分は「認定が療養補償であり、休業補償認定をされていないので、業務上災害とは認めない」といっているが、この言い分に道理はない。
 「業務上」とは、業務が原因で疾病にかかったという意味であり、「療養補償」とか「休業補償」は、業務上災害の補償の種類をしめしたものである。

 休業補償を要しない業務上災害もありうるのである。
 NTTの言い分がなりたたない例を示そう。
 三人のうちの一人、澤根さんの例である。
 彼女の疾病「けいわん傷害」は、彼女は時間単位での通院治療を行っているので休業補償の用件を満たさない。しかし、今回療養補償給付の業務上認定をされたのである。

 以上みてきたように、「業務上災害」という意味は、労災保険適用の「療養補償」でも「休業補償」でも、労基署がその申請により審査をし、「業務上災害」であれば労災保険適用をきめるのである。

 NTTの言い分は、見解の相違などというものではなく、単なる無知によるこじ付け以外のなにものでもない。
 なお、澤根さん以外の2人が休業補償申請をしなかった理由については別項で述べる。