HAPPY HAVOC PROJECT 08-09
ハボックのハッピー(?)とどのようなシチュエーションにハボックは報われるのかを追求する小話全9本です。ネタは以前メモにこっそり設置させていただいてましたハッピーハボック計画のアンケート結果からになっています。日頃、考えることの少ない(?)ハボックの幸せを考えてくださったみなさま、本当にありがとうございました!これからも参考にさせていただきます!

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08.

だって、美味しそうに見えたんだ。
ハボックは忙しい忙しいしか言わないし、こんなことホークアイには頼めないし、ブレダはやっと仮眠室に行ったところだったし、ファルマンには膨大な量の資料の探索を命じてしまったし、フュリーは研修に行かせてていないし。仲の良い女性仕官に私用を頼んだらホークアイが怒るし、下士官に命令したらハボックもブレダも怒るし…。仕事が一段落した私が一番、余裕があると思ったんだ。
それに、忙しいこんな時だからこそ価値があるような気がした。――真夏のスイカ。一つのものをみんなで分け合って食べることも好ましい、そんな真夏のくだもの。しかも、最近のスイカはあの馴染み深い緑色のものだけでなく、黒や黄まであるのだ!なんて興味深い。だからちょっと私服に着替え、フュリーの代えの黒縁メガネを少々拝借し、司令部を抜け出した。3時のおやつにみんなで食べるスイカを買いに行くために。―――たったそれだけのことだったのに、何故か今、『ちょっと、スイカを抱えたお兄さん。あんたも何か考えてよ』とか可愛らしいお嬢さんに言われてる…。



市内巡回中の軍人や憲兵にばれないようにと、ジーンズにTシャツを着て、髪をくしゃくしゃに乱し、フュリーのメガネをかけていた私は確かに自分でも恐ろしく思うほどロイ・マスタングには見えなかった。むしろ、その辺の本屋で立ち読みをしている内向的なただの学生と言えるだろう。
才能溢れる私が行った変装はあまりに完璧だった。完璧すぎたのだ。そう。このボロをまとった私がロイ・マスタングであることに気が付くものは皆無だった。街のお嬢さんたちも軍人も憲兵も、テロリストすら…。

私は順調に軍人たちの目を掻い潜り、市場で大きな黒いスイカを購入し抱きかかえて帰途についていた。しかし、あまりに暑い日差しに冷房が効きすぎた感のある銀行でちょっとだけ涼んでいこうと偶々目の前にあった銀行に入った、のがよくなかったと言えばよくなかった。あー、司令室より涼しい…、と思っていた矢先に、テロリストたちが威嚇射撃をしながら入ってきたのだ。あー、と横目で見ている内にリーダー各の2人が拳銃を片手にカウンターで1億を要求し、残りの4人がダイナマイトとライフルを持って、行内にいた人間を一箇所に集めて静かにしろと言った。行員は慄きながらも震える手で札束をカウンターの上に並べ始め、行内はすぐに緊迫感に包まれる。

現金を前にテロリストたちはご満悦に大声を張り上げた。
「諸君!我々は銀行強盗ではない!社会格差を無くすため、軍と軍に追従するものたちに天誅を下すべく結成された東方イデアの会である!この金は日々社会格差に苦しむ貧しきものたちの救済のために使われるだろう!」
今まで一度も聞いたことのない組織だった。新興の組織か、今まで全く目立ったことをしてこなかったのか。社会的弱者を助けたいと言うのなら、自分たちのできる範囲でしたまえ。そして、さっさと我々を解放して出て行け。その後でまとめて、この私自らの手によって、捕まえてやるから。

窓から続々と集まってくる軍用車両が目に入った。テロリストたちが入ってきた際に不用意に行った威嚇射撃のせいで、外にいた善意ある誰かが軍に通報したのだろう。テロリストたちは興奮に顔を紅潮させていったが、私は反対にどんどん血の気が引いていくのを感じた。
軍人がわらわらと銀行を取り囲んでいく。ここから軍人たちにバレずに抜け出せるか不安になってきた…。

テロリストがまた口を開いた。
「――さらに、我々はこの格差社会に指を咥えて見ているだけではない!この社会格差を拡大するために東方に送り込まれた悪の手先である、ロイ・マスタングに鉄槌を落とす準備がある!さあ!悪の手先を呼べ!」
行員が律儀にも受話器に手を伸ばした。
おい、ちょっと待て!電話をしてしまったら、司令部に私がいないことが奴らにバレてしまうじゃないか!
一般回線に繋がるとテロリストの1人が受話器を奪い取り、ロイ・マスタング、ロイ・マスタング、ロイ・マスタングと連呼した。
私はここにいる!電話する前に何故自分たちが人質にしているものの中にロイ・マスタングがいない確認しないんだ!粗忽ものめ!ああ、テロリストにご指名を受けた私が司令部内にいないことに気が付いたら、ホークアイやハボックはどうするだろう。

途端に、スイカを買いに司令室を抜け出したことがよくなかった気がしてきたその時、私の隣に座っていた近所のハイスクールの制服を着たお嬢さんが小さくも決意に満ちた声ではっきりと言った。
「マスタング大佐をこんな場所に来させてはだめよ!あの人はこの国にとってなくてはならない人なのだから。ちょっと、スイカを抱えたお兄さん。あんたも何か考えてよ!私たちのせいでマスタング大佐がこんな場所に来ることになったらどうするの!」
それはもう手遅れだから、とはきらきらした目をしたお嬢さんの前で何となく言えなかった…。いや、この姿では名乗り上げたところで誰も私がかのロイ・マスタングだとは信じまいが。
「マスタング大佐がここに来る前にあの銀行強盗たちを捕まえられないかしら…。実は私こう見えて錬金術が使えるのよ」
暴走しそうなお嬢さんの雰囲気に背筋が小さく震えた。

しかし、私とは反対に人質になっていた集団は俄然盛り上がった。誰かがペンを持っていると言うと、誰かがメモ帳を差し出すありさまで、しかも人質全体が彼女が錬成陣を描く姿を隠すために少しずつ場所を移動する。
彼女は止める間もなく考え込みながら錬成陣を描き始めた。
初歩的なミスに、根本的な間違い。そして、斬新で画期的な解釈…。恐らく練成は成功はしないが何も発生しないほど破綻しているわけでもない…。
「空気を薄くするわ。そうすれば強盗は身動き取れなくなるはず」
――そして、我々も突入してきた軍人も酸欠で倒れるのだろうか。しかし、その錬成陣なら空気を薄くすると言うより、一酸化炭素を合成してしまうだろう。そうしたら生存者0人を免れない…。
彼女が錬成陣に手を付いしまった。
「―――あ、……」
私は慌ててジーンズのポケットに手を突っ込んで錬成陣が描かれた発火布を握った。
対消滅、分解、干渉…。あまりに咄嗟のことでそんな高度なことはできない。同気体への練成ならばより練成構成が深いほうに支配される。私は気体分子の運動量を練成し室温を2℃上げることで彼女の死の練成を食い止めた。
冷や汗が背中を流れ落ちた。
僅かな錬成光は肉体の壁に阻まれ、テロリストたちに気付かれることはなかった。

「――あら、おかしいわ。誰も倒れないなんて…」
彼女は挫けなかった。私が胸を撫で下ろしている内に、またペンを動かして別の錬成陣を描き始める。
「じゃあ、今度は取っておきよ。銀行強盗の周りを壁を練成して塞ぐわ」
それは比較的失敗の少ない練成だ。しかし、彼女の描いた錬成陣では再構成の部分が破綻していて、床と言うよりこの建物全体を分解してしまうに留まるだろう。しかも中途半端な分解だ。練成したら、粉々にすらならなかったこの建物の瓦礫が我々の頭上に降ってくるぞ…。
また、彼女が錬成陣に手を掛けた。
「―――あ、……」
鈍い錬成光が室内全体に走った。
私はポケットに入れた発火布を強く握り、行内の建造物に含まれる水分をほんの僅か酸素と水素に分解するべく練成を…。鋭い練成光が走り、物質に対しより支配力の強い別の練成をもって死の練成を強引に消滅させた。辛うじて…。
あまりに唐突な練成に脳がオーバーワークを訴える。嫌な汗が額を伝い落ちた。
しかし、彼女はまた危険な錬成陣をメモ帳に描き始める…。

テロリストたちは何故我々をこうも放っておくのだ。
何故、人質にこうも好き勝手させている!
このとき私には予想される惨劇を防ぐために必死で周りを見ている余裕などなかった。もちろん、ここから軍人に見つからないように姿を消す余裕も。



――ホークアイ、私が悪かった。ハボック、本当にすまない。
だから、はやくなんとかしてくれ…。



一体いくつの練成を未然に防いだのだろうか。青い服の集団が突入してきたのは、意識が朦朧として、耳から煙が出る一歩手前だったと思う。

私は頭がちっとも働かない状態で、何となくテロリストたちが無抵抗に連れて行かれて、周りに座っていた人質が握手を交わし軍人に1人1人と手を取られて立ち去っていくのを何もせずただ、見ていた。すると別の軍人が私の肩にも手を置いて、優しい声でもう大丈夫ですよと…。――だが、すぐに慣れた紫煙が近づいてきて、この人はここに置いてといていいからと冷たい声で優しい軍人を追い払ってしまった。そして、その男はスイカを抱えて床に座ったままの私の前に立ち、軍人に小気味良く明確に指示を与えていく。

視界の端で錬金術を操る少女もまた去っていった。その顔は錬金術がことごとく不発に終わっても実に清々しく、自信に満ち溢れていた。マスタング大佐がご無事ならいいわ!と言われた気がしてまた背筋が震えた。
しかし、私はこの場にいた全員を彼女から守りきったのだ。細くて長い息を吐いた…。



「――で、アンタはこんなところで何をしてんスか。確かまだ勤務時間じゃなかったっスかね?」
もう、どうしようもなく眠かった。頭を使いすぎた気がする。
「見てわからないかね…」
「――見てわかんねえから聞いてんでしょ、もー」
「ああ、これだから頭が悪い奴の相手をするのは嫌なんだ…」
でも、この頭の悪さは良く知っている。この世に2人といない頭の悪さ。そうだ。こいつはハボックだ。間違いない…。
「ちょっと。それがわざわざ助けに来た人間に向かって言う言葉なんスか」
「ハボック……、…………」
「あー、こんなに頭ぐちゃぐちゃにしちゃって。フュリーのメガネとかないから。こんなんじゃ誰もアンタだってわからないっしょ。今回だって、何か変な光が銀行から漏れてるって報告されなきゃ、アンタがサボってこんなとこにいるなんてオレだって思いつきもしなかったし。ちょっと、オレの話、聞いてんスか?せっかくホークアイ中尉にはアンタがいるかもしれないことは黙って出てきたのに。根性のないテロリストたちはアンタの錬金術の光とか何だかにぶるって、隅っこで震えちまってるし。ねえ、ちょっと」
――凄いぞ。凄いぞ、ハボック…。
どうして私がここにいると分かった?
どうして変装している私が私だと気が付いた?
誰にもばれなかったのに…。

「――ハボック……、褒美をやろう……」
こんな状況の中でも離さなかった黒いスイカ。お前はこれを受け取るのに相応しい。
でも、ハボックは何の感動もなく、はあとだけ言って受け取り、近くにいた部下の1人にみんなで食っとけと言ってさらっと渡してしまった。私の、黒いスイカが…。

「――で、本当にアンタ何してたんスか?つうか、何でこんなとこにいるんスかね!」
「……………………」
私はスイカをみんなで食べようとしていただけだなんだ。
でも、今はもう眠くてそれどころじゃなかった。
私のスイカの行方も気になるが…。
眠気のままハボックに両手を差し出すと、ハボックは諦めたように大きなため息を付きながらも私を肩に担ぎ上げた。


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09.

朝、習慣的に目を覚まして体の異変に気が付いた。もしかしてと思って、ベッドサイドから自分のために用意したわけじゃない体温計を手に取った。
その時、計ったときはまだ38℃ぐらいだったと思う。それでも、出したことのない高熱に少しびびって、行けそうもないんスけどと司令室に電話をかけた。その後、トイレに行こうと立ち上がると、立っていることすら辛くてもう一度体温を計ってみた。
体温計は40℃だと教えてくれていた。こんな熱を出すなんてことは生まれて始めてで、体温計を握り締めたまま気絶するように意識を手放したことを何となく覚えている。



「――大佐?」
「そうだ。わかるか?」
「わ、わかりますよ…、匂いで…」
カーテンが引かれたままの薄暗い部屋の中で大佐のにおいを感じた。近づいてくる気配に笑みを浮かべる。ちゃんとした笑みにはならなかったけど、こんな苦しいときにさえこの人の存在一つでオレの気分は浮かれてしまう。

「ハボック、これは重要なことだ。よく考えたまえ。――子どもの頃、おたふく風邪にかかったか?」
「―――お、おたくふ風邪……?」
「そう、おたふく風邪だ。顔が腫れあがってしまうという、私のような顔が整った人間にとっては世にも恐ろしい病だ」
「……………」
「そこで黙り込むな、失礼な」
大佐が枕元にそっと腰を下ろすと安物のベッドがぎっと軋んだ。大佐がこのベッドをあまり使わないのはこのせいなのかもしれない…。やぱり買い変えた方がいいのかも。
ボーっとしてると寝癖でぼさぼさになっているだろう髪を引っ張られた。だけど、体が重くて口を開くことさえ億劫で、何の反応も示せない。

大佐が言葉を重ねた。
「―――時に、ハボック。睾丸がはれ上がっているということはないかね?そう。お前の握りこぶしよりも一周りも二周りも大きく、だ。そして、足を閉じることができないほど痛みを感じことはないかね?排尿の際に痛みを感じたりは?」
「な、何で…、――オレのタマタマ、気にするんスか…」
そんなものよりオレのことを気にして。おたくふ風邪とか、タマタマとかなんなんだ…。熱が高くって死にそうなのに。大佐…。
目の前の大佐の腰にぎゅっと抱きついた。つもりだった。なのに、大佐はオレの手をぺチンと叩き落して、ベッドから音もなく立ち上がる。また安いベッドがオレの思いを代弁して、軋んだ。
「熱が40度もあってお前の玉々にバイキンが入ったら、タネなしになってしまうのさ。それに風邪なんか引いたことがないと豪語するお前が本当に風邪なのか疑わしいだろう?感染症で高熱が出たと考えた方がしっくりするじゃないか。そうなると、こういう話を女性にさせるのは気が引ける。だからこそ、この多忙を極める私が来たのだ!さあ、ハボック!隠さずに言いたまえ。お前の玉々は3倍に腫れあがってないかね?」
訳が分からなかったけど、なんだか深く傷ついた。漸く焦点の合った目に見える大佐は好奇心丸出しの目で自分を見ていた。でも、そんなことより、ゴム手袋とマスクをしていることに気が付いてしまった…。

涙を堪えることができなかった。
頬を涙がつたって行くのを感じながら、自分の睾丸の大きさを確認するためにごそごそとパンツの中に手を入れた。

「――あ…、普通の大きさっスよ!」
思わず上半身を起こし、パンツに入れたその手を差し出したが、すぐに行き先を失って下に下に下がっていった。自分の息子を触った手をこの人が取ってくれることは特殊な状況でない限りないことはよく知っている。そして、もちろん、その手はベッド下に力なく落ちていった。
「ふうん。なんだ。じゃ、本当にただの風邪なのか?」
冷たい。しかし、この切なる訴えは口から漏れることはなかった。悲しみの中で再び眠りに落ちてしまったから…。



「大佐、この資料は明日には支部に返却します。いいですね。今日中に目を通しておいて下さい。決して、ファルマン准尉に読ませて要約を聞こうとかしては思わないで下さい。こっちの袋に入っている書類は3時に取りにきますからサインをしておいて下さい。――はい。これらの書類には不備はないようですね。持って行きます」
リアルなホークアイ中尉の声に急激に意識が浮上した。ここは司令部で自分は大佐のように居眠りしてしまったのかと焦ったけど、頬にはシーツの感触があって、腕には枕を抱いている感覚が確かにあるからやっぱり自分はベッドに寝ているんだと安堵したとき、自分の腹がぐーっと鳴った。
「あら、ハボック少尉はお腹が減ったようですね」
なんか無償に恥ずかしい。これじゃ子どもじゃないか。しかも、よしよしとばかりに頭を撫でる手があって、気持ちよくて振り払えない自分にますます恥ずかしくなる…。
「それでもまだ起きはしないんだな。どんな夢を見ていることやら…」
起きてるし!オレはアンタじゃない…。
呆れ気味の大佐の声に思わず反論したくって、口を開いた。――オレ、起きてますよ。目を開けてないだけっスから。目も開ければやっぱりオレは自分の部屋にいた。そう、確かに自分の部屋に寝ていたのだ。でも、そこにはオレの頭を撫でている大佐がいて、書類を抱えているホークアイ中尉がいた。何回瞬きしても2人は煙になって消えることはない…。ひりつく喉で息を飲み込んだ。

「なんだ、ハボック、気が付いていたのか?――どうだ?熱はだいぶ下がったと思うんだが。食欲があるなら何か持ってこよう」
枕だと思っていたのはベッドに腰掛けていた大佐の腰だった。
目を見張るオレを無視して、大佐は腰に巻きついたオレの腕を取り外して立ち上がり、キッチンに行ってしまう。ホークアイ中尉は慈愛の微笑を浮かべ大きく1回頷いてから、踵を返してキッチンに行った大佐に一声かけて去っていく。
「うん。すまないね、中尉。面倒をかける」
「ハボック少尉が元気になったら3倍働いていただくので構いません」
3倍はないからとか思いながら、呆然と軍靴が立てる音と玄関が開いて閉じる音を聞いていた。部屋には執務室のように大量に本とファイルと書類が積み重なっている。間違いなく自分のものではない…。これって一体、何なの?

「ほら、腹が減ったんじゃないのか?ハボック」
トレーに乗って運ばれてくるメシ。しかも運んでくるのは大佐さまだった…。
「――あの、これって…?」
「ん?」
大佐は不思議そうな顔でベッドに座り、トレーを膝に置いてスプーンを手に取り平皿から一匙何か白いものを救った。それをオレの口元に食べろとばかりに差し出す。でもオレは口を開けなかった。風邪で弱っているときに更にダメージを酷くするものを食べたいとは誰も思わない。
「レトルトのおかゆだ。私は暖めただけだから安心しろ」
「これはどういう遊びなんスか?」
思わず開いた口に強引にスプーンが差し入れられた。
飲み込んだのは確かにただのおかゆ…。

食事が終わった後も、大佐はずっとオレの部屋にいて書類にサインをして資料を読んでいた。その合間にオレのために水を汲んだりご飯を用意したりして。
ずっとこの部屋にいる大佐に騙されてる気がしながら、何となくこういうものいいなあと思った。具合が悪いのも悪くないのかもしれない。何をするでもなく、ただぼーっと大佐を見て過ごす一日。眠気に目を閉じるのがもったいなかったけど、きっと次に目を開けたときも大佐はまだここにいると確信があって、眠気に身を任せた。オレは寝てても絶対ベッドに座る大佐を離さないはずだから。

「ねえ、どうしてここにいんの?」
まどろみの中、聞いてみた。
大佐は振り返らない。足を組んだ膝の上に置いたファイルの上の書類にサインをする手を止めることはなかった。それでもじっと待つ。でも待ちきれなくて、ねえと甘えた声で答えをせかす。
「ねえ、ねえねえねえ…、ねえ…?」
こんなんじゃ大佐みたいだ。おかしい。へへへへへ、大佐みたいだ!
笑うと喉にも胸にも痛みが走ったけど、笑った。そうしたらやっと大佐が振り返った。
「――ハボック?熱が高くなったのか?」
「ねえ…、どうしてここにいるの?」
振り返った顔にはちょっと人の悪い笑いが浮かんでいて、やっぱり聞きたくないかもと思った時はすでに遅かった。
「そこまで言うなら教えてやろう。お前が行かないでって言ったんだ。良かったな。お前の恋人は権力者で」
「――はい…?」
「ホークアイにハボックの部屋から出れなくなったから、仕事を持ってきてもらったんだ。今日はここが仮設の執務室だな。――どうだ。大好きな私と一日中、一緒にいられて嬉しいだろう?ははははははっ!」
言うだけ言うと大佐はまた手元の書類に視線を戻してしまった。軽やかに笑いながら。

大佐の言ったことがウソか本当かなんてわからなかったけど、眠気が遠のくほど強烈に恥ずかしくなった。大佐の言うとおり、一緒にいられて嬉しいことは確かで…。
赤くなっているであろう顔を見られたくなくて、また目の前の腰にしがみ付くと動悸は激しくなる一方だった。これじゃいつまで経っても熱が下がりそうになかった。


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アンケートにご協力くださって、ありがとうございました!

08.■12/05//『(略)〜、結果、『部下として、もしくは恋人として、何がしかの言動を認められたハボが大佐から御褒美をもらう』でしょうか。ここで重要なのは、大佐が自発的にハボに御褒美を送る、というスタンスではないかと思います。少し色っぽいことが混じっていると、尚、いいのではないかと思います。〜(略)』とアンケートに答えて下さった方へ!
時間がかかってしまって申し訳ありませんでした!えー、頭は使わないとどんどんどんどん柔になってしまうので、私はありがたく感じました。どうもありがとうございます!でもインテでお話させていただいたネタじゃないものになってしまいました。(別の話に使ってしまいました。あわわわわ!)。――え−、大佐、無償の善意に完全に受身で窮地に陥ってしまいました。そんなときに颯爽と持ち前の野生的な勘でもって現れるハボ。大佐は改めてハボに惚れ直すこと間違いないです。でも大佐の御褒美は貰い損ねてしまいましたが!あへへへへ。ハボックはきっと部下から差し入れされて食べられる思いますが、大佐はちょっと難しいかもしれません…。



09.■鳶
ハボックが報われる状況は、自分がいつも行っていることをしてもらえることかなとやっと自分なりに結論に達しました。ハボックがいつも良かれと思ってしていることはマスタングにとって必ずしも良いことではないと思ったり。えー、はい。こういう感じになりました!でも、あんまりハボックがハッピーじゃない風なのが自分らしくておかしいです。これからもサイトでハボックが虐げられすぎていると思ったおねえさんはどうぞご一報下さい。また、ハッピーハボックの市を開かせていただきたく思います!ああ、楽しかった!
以上のような感じで小話にさせていただきました。すっごく楽しかったです!
重ねて、アンケートにお答えくださったみなさま、本当にありがとうございました!