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 たどり着いたサイジェント領主の城では、凄惨な光景が広がっていた。
「なんということだ……」
 レイドが呆然と息を吐いた。ガゼルが地面を蹴り、
「あの野郎……見境なしかよ!」
「助かるためならば、どんな犠牲が出てもかまわんつもりらしいな」
 エドスが苦い顔でこぶしを握った。
 見渡す限り、人々が地面に倒れている。
 おそらくはハヤトが逃亡のため放った召喚術に巻き込まれたんだろう。城を守る兵士だけでなく、ただの通りすがりらしい一般市民、年端もゆかない子どもまでもが、力なく地に伏していた。
 ……まあ、みんな幸せそうな寝息を立ててるんだけど。
「これ以上の狼藉を許すことはできない……」
 レイドがぐっと剣のつかを握った。
「サイジェントの騎士として、この街の市民の一人として、……ハヤトの仲間として、私は彼の暴走を止めてみせる!」
 力強く言い切った顔が、不意に曇った。
「たとえそれが……ハヤトを、絶望のふちに落とすことになるとしてもだ」
「レイド」
 エドスがその、剣を握り締めて震える手に、自分の大きな手を重ねた。
「思いつめるのはおまえさんの悪い癖だぞ。仲間はここにもいるだろうが。一人で何もかも背負うつもりにはならんでくれ。なあ」
 視線で僕らを示し、微笑む。ガゼルがそっぽを向いた。
「ケッ、お友達ごっこはごめんだぜ。
 ……ただ、」
 すっと、2人のほうへと足を踏み出した。
「あの馬鹿の始末だけはつけなきゃならねえからな。
 フラットのメンバーとして、それだけはするさ」
 レイドとエドスの手の上に、自分の手袋の手を重ねる。
 そのまま3人は、信頼のこもった視線を交わしあい、しばし停止していた。何かを待つかのように、だいぶ長い間。
「……お前も参加しろよキール! 俺が無性に恥ずかしいだろうがよ!」
「え? 何に?」
 突然キレたガゼルについていけず、きょとんとしていると、ガゼルは「あーっ、畜生! とっととハヤトを探すぞ!」と叫びながら城の裏手に走っていってしまった。
「……何か悪いことをしてしまったのかな」
「いや、おまえさんはそれでいい。それでいいんだ……」
「ああ、いつまでもそういう君でいてくれ」
 エドスとレイドに、肩などたたかれてしまった。完全に慰める調子だったのは気のせいだろうか。
 ともあれ、ハヤトを探さなくてはならない。
「捕まえる策がないわけじゃありません。見つけたら、とにかく僕を呼んでください」
「わかった」
 うなずいて2人は左右に散る。僕も少し考えてから、中庭につづく道に足を進めた。警戒しつつレンガの道を行く途中、ふとおかしなものを見た気がした。

10.09.16



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キールはフラットでそういう扱いだといいなーと。
セルボルトきょうだいは、全員天然だと思います。