+ 小話13 第2話編 +

 魔王の代わりにやってきた彼の監視を始めてから4日。今日も彼は朝から魚釣りだ。
 あんな粗末な釣竿で、また大物を釣り上げた。あ、まただ。あ、今度は宝箱。また大物。
 僕がすっぽり入るほどのびくを魚でいっぱいにして、アジトへ帰るらしい。
「またどっさり釣ってきたなあ。フラットじゃとても食べきれねえよ」
「そうだハヤト、これ市場で売ってきたらいいんじゃない?」
 言われるまま、市場の隅にござを敷いて始めた彼の露店は意外に繁盛している。
 あ、北スラムのごろつきたちがやってきた。予想通り彼に絡みだす。
 彼は武器を取り出した。やる気なのか?! と思ったらその剣ですいすいと魚をさばき始める。
 出来上がった新鮮な刺身をぽいぽいぽいっとごろつきたちの口に放り込んだ。
 そして残りの刺身を皿にのせ、ほっこら笑って何か言いながらごろつきの一人に手渡した。
 ごろつきたちは「きょ、今日はこのくらいにしといてやらぁ」とか言いながら引き上げていく。
 刺身はしっかり抱えて。何なんだいったい。
「そこでこっそり見てる人、いいかげん出て来いよ」
 ぎく。ぼ、僕のことか? いつからばれてたんだ?
「魚食べたいんだろ? 最初から言ってくれればあげるのにさ」
 僕のおなかが突然ぐーっと鳴った。なんてタイミングだ。
「別に代金はいらないぜ。追加の魚釣ってきたいし、ちょっと店番手伝ってくれればいいよ」
 そんなわけで、僕は今日も朝から魚屋の店番をしている。なんでこんなことになったんだろう。
08.05.11


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