拍手お礼画面のヘンな小噺過去ログページです。
サモンナイトの小噺もまぜこぜにアップしてますが、
こちらははるかと陰陽のもののみなので、番号がとびとびです。





+  その40 謹賀新年編 陰陽大戦記 天流 初詣とご一行  +

 ヤクモさんにはひそかな夢がありました。
 初詣に行くことです。
 というのも、ヤクモさんのおうちは社なわけで、毎年元旦には初詣客につめかけられる側なのです。ヤクモさんも小さい頃から手伝いに駆り出され、大忙しに動き回るうちに三が日がすぎていくような有様でした。
 初詣、俺も行ってみたいなあ、というのがヤクモさんの本音でした。
 大晦日の夜、シマムラやヒトハたちと待ち合わせて除夜の鐘をつきに行き、そのまま年を越しておめでとうを言い合って、場所を変えてご来光でも見に行って、それから屋台が出るような大きな社に初詣に行くのです。
 おみくじをひいて盛り上がったり、ふるまいの甘酒を飲んだりも楽しいでしょう。
 ですが、そんなことを考えたところでヤクモさんは社の子どもなのです。
 大晦日の夜は明日の準備で目の回る忙しさ、年が明ければ初詣客の対応で目の回る暇もない忙しさ、というのが例年のことなのでした。
 それは分かっているのです。分かっているのですが、やっぱり行ってみたいなあ初詣、とヤクモさんは思うのでした。
「行ってくればいいよ、ヤクモ!」
とタンカムイが言いました。
「父上のお手伝いはわれらがするであります!」
とブリュネも胸を叩きました。
「腕が4本ありますからね! 甘酒だってどんどん渡せますよ!」
 リクドウが腕を振ってみせます。
「よっぱらいが暴れたとて、我らがすぐさま鎮圧してみせましょうぞ」
 タカマルは自負心をこめて胸をはるのです。
「まろがしっかり統率するから心配ないでおじゃる」
 サネマロが飄々としめました。そして皆にこにことヤクモさんを見るのです。
 ヤクモさんはイメージしてみました。
 初詣客でにぎわう新太白神社で、小袖に袴姿の5体があっちでうろうろこっちでうろうろ。
『お参りしたいものはきちんと整列するであります! そこ、はみだしているでありますぞ!』
『はいどーぞどーぞどーぞどーぞ。えっ甘酒はいらない? そんなこと言わずどーぞどーぞ』
『このタル、水が入ってるね。ボク浸かりたいな』
『境内でタバコを吸う不届きものどもめ! 覚悟!』
『ブリュネ、これは軍隊ではないでおじゃるよ。
 リクドウ、いらないと言う者に無理に渡す必要はないでおじゃる。
 タンカムイ、それは水ではなくお神酒でおじゃるから泳いではいかんでおじゃるよ。
 タカマル、翼の風圧で飛んでいった人を助けてくるでおじゃる(と言いつつ自分は一切動かない)』
 百歩譲って、百歩譲って参拝客が彼らの風体を気にしなかったとしても……。
 ――――無理っぽい。うん、無理っぽいな。
「ありがとう。でも、これも俺の役目の1つだからな。気持ちだけもらっておくよ」
 ヤクモさんは微笑んで言いました。
 せめてツクヨミさんとこのコタロウとか、ナギさんとこのオニシバならなあ。
 と思わないこともなかったのですが。







+  その38 謹賀新年編 陰陽大戦記 地流 ミカヅチ日記リターンズ  +

      ○月○日

 わがミカヅチグループも本日から仕事始めだ。出社してきた重役たちがそれぞれ年始の挨拶にやってくる。
 もちろん例の神流もやってきた。
 意地悪く「実家には帰ったか」と聞いてやったら、「実家はもうありませんので」と帰ってきた。
 確かにこやつの実家は平安時代だからもうあるまい。
「ではお年玉はもらえなかったか、残念だったな」と軽口を叩いたら、
 真顔で「私はやる側です」と言っていた。
 そういえば弟がいるという話だったか。本当かうそかわからんが。
「ならば、お前には私からやろう」
 とあらかじめ用意してあった、子供向けポチ袋に入った500円玉を渡してやった。
 私を小学生だとでも思ってらっしゃるのですか!とキレるだろうと思ったのだが、
 予想に反して神流はかなり動揺した顔になり、
 やがて「……はあ、ありがとうございます」と間抜けな返事を残して、
 ポチ袋を両手で持ったまま退出していった。
 よく考えると、平安時代には現代のようなお年玉はなかっただろう。
 あの神流にとって、生まれて初めてもらったお年玉だったのかもしれない。
 もう少しマシなものをやればよかったろうか。
 ……とも思ったが、その30秒後に猛スピードで入ってきたオオスミに
「宗家! タイザンにお年玉を下さったんですって?
 私にもいただけますね宗家の大降神のデータで結構ですから!」
 と鼻息荒く迫られた瞬間『神流にお年玉などくれてやるのではなかった』に変わった。









+  その36 謹賀新年編 陰陽大戦記 神流  +

『ダンナ、ずいぶん寂れた社に初詣に来ちまいやしたねェ』
「確かに参拝客が私だけだな……まあいい、お参りしておくか(ガランガラン)」
「(ぴかーっ)わしはこの社の神じゃ……特別に願い事を一つだけかなえて進ぜよう……」
「願い事一つ?! オニシバを本物の犬にしてくれ柴犬じゃなくスピッツで頼む!」
「よかろう……(ぺかーっ)」
『ダンナ本物の犬にしてくれはともかく柴犬不可ってそりゃいくらあっしでも傷ついてキャンキャンキャンキャン!』

   著しくすいません。






+  その31 陰陽大戦記 ミカヅチ社健康診断編  +

「あらタイザン。今日は健康診断だからサボるかと思ってたけど、ちゃんと来たじゃない。感心ね」
「人を小学生のように言わないで下さい、オオスミ部長。こちらも忙しいのです。さっさと終わらせていただきたい」
「はいはい。ちょっとそこのあなた、先にタイザン部長の採血をやってくれるかしら」
「はい、オオスミ部長。わかりました」
「え? まだあれだけ順番待ちがいるようですが」
「タイザンが忙しいのは良く知ってるもの。特別に横入りさせてあげるわよ。特別だから言いふらさないでちょうだいよ?」
「え……。あ、ありがとうございますオオスミぶちょ…………ちょっと待て。採血は確か35歳以上限定ではなかったか?」
「あら、気づいた? 意外とだまされないわねえ」






+  その29 陰陽大戦記 ゴールデンウィーク編  +

『はい、こちら高速上空です。えー、ご覧のように渋滞が、下り方面に30キロ続いています。車が動く様子は全くありません』
「ふん……」
 テレビから流れてくるリポーターの声に、タイザンは冷たく鼻で笑った。
『えー、ゴールデンウィークのラッシュは今日がピークとなり、例年と同じく、高速には長い長い車の列ができています』
「見ろ、オニシバ。これでは遊びに出かけたのか、渋滞を作りに出かけたのか分からぬではないか。骨折り損のくたびれもうけとはこのことだ。しかもこれが毎年のことだというのに、分かっていて渋滞にはまりに行くとは、知性のある人間のすることではないな」
「……へい」
 あまり熱心さのない返事だったがタイザンはかまわず、コーヒーを一口飲み下して言葉を続ける。
「勝ち組だの負け組だのという品のない言葉があるようだが、こうして渋滞に並んでいる連中は間違いなく負け組のほうだな。そう思わぬか?」
『はい、こちらは空港です。こちらにはキャンセル待ちの長い列ができています。ちょっとインタビューしてみましょう。すいません、どちらに向かわれるんですか?』
『海外でゆっくりしようかと思って』
『沖縄でーす!』
『家族でハワイに。やっとチケットが取れましたよ、はは……』
 疲れた顔でインタビューを受ける男性の後ろでは、子供が2人、リュックサックを背負ってはしゃいでいる。
「ふん、行く前から疲れきっているではないか」
 もう一口、コーヒーを飲み干し、
「行ったところで人間がうじゃうじゃいて疲れるだけだろうな。まったく、こんな時に行楽に出かける者の気が   
「ダンナ」
 オニシバが口を挟んだ。
「休憩はこの辺にして、そろそろ仕事に戻ったらどうですかい。今日中になんとか片をつければ、明日1日くれェは休めるんでしょう?」
 タイザンの掌中で紙コップがぐしゃっとつぶれた。
『CMの後はゴールデンウィークのお薦めスポットで〜す! ゴールデンウィークも休みが取れないお父さんお母さんお姉さんにお兄さん、お仕事がんばってくださいねv』
 アナウンサーの弾んだ声に、
「うるさい、余計な世話だ!」
 紙コップを思い切り自販機横のくずかごに投げつけ、タイザンはミカヅチ本社休憩室を後にした。






+  その30 陰陽大戦記 ゴールデンウィーク編つづき  +

『明日一日は休みにできてよかったですね、ダンナ』
「ああ。必死でやった甲斐があった。さて、明日はどうするか……」
『ひとまず、朝寝でもしてゆっくりしちゃァどうですかい。どっか出かけるのも悪くありやせんが、今のダンナはちょいと疲れすぎてらァ』
「そうだな。今日は目覚ましを掛けずに寝て、久々の朝寝坊を満喫するか」

 * * * * * * * * * * * * *

 ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン……
「……なんだ、この音は……」
『あ、起きちまいやしたかい。誰か来てるみてェですぜ』
「……まだこんな時間ではないか……」
(トコトコ、ガチャ)
「おっはよータイザン! ガシンさんが京都みやげ持ってきてやったぜ!」
「京都……みやげ?」
「寝てたのか? ぼーっとした顔だな。ま、これ食って目ぇ覚ませよ。じゃじゃーん! 京都限定スペシャルハモ丼2人前でございます!」
「……雅臣。京都土産とは何だ」
「京都土産って京都の土産だよ。この連休を使って、京都まで原付旅行してきたんだ〜。(がさごそ)ほら、特製料亭のタレも付いてるんだぜ! 早く食べ……。タイザン? 何で傘なんて握ってるんだ?」
「…………無職のきさまと連休に何の関係がある!!」
「ちょっ、痛い痛い傘で殴るな傘で!」

 ……すぺしゃるハモ丼とやらは奇跡的にお気に召したようで、まァよかったかなとあっしは思うんですがね。(オニシバ談)






+  その28 陰陽大戦記 春の地流幹部編  +

 出社する社員達の群れにまぎれてミカヅチビルの正面玄関を通り抜けながら、
タイザンはつい小さなあくびをした。
「眠そうねタイザン」
 背後から含み笑いの声が聞こえる。
「いえ、違いますオオスミ部長」
 すぐさま否定したタイザンの言葉を無視し、
「春先の眠気はビタミンの不足が原因よ。
 ところでここにとっておきのビタミン注射があるんだけど」
「結構です」
「遠慮しなくていいわよ」
「していませんのでお気遣いなく」
 互いに切り口上で応酬する。
 その間にも一ミリでも距離をとろうとするタイザンは足を速め、1ミリでも距離を縮めようとするオオスミがそれを追うため、2人は相乗効果でものすごい早歩きになっていた。彼らに追い抜かされながら、ヒラ闘神士の制服を着た男が大口を開ける。
「ふあ〜あっと。あ〜あかったりぃ。今日もテキトーにサボるか」
「あらイゾウ眠そうねいいビタミン注射があるわよ!」
「ひぃっ! タイザン部長助けてください!」
 イゾウの悲鳴を黙殺し、タイザンは更なる早足で、上層階直通エレベーターに乗り込んだ。
 即座に『close』ボタンを押し、ドアが閉まるとようやく安堵のため息をつく。
「……危ないところだったな。ちょうど良いところにイゾウがいたものだ」
『ま、あの黒鉄使いの兄さんにしちゃ、上出来ってとこですかね』
「全くだ」
 言ってから、忘れかけていた眠気がよみがえってきて、タイザンはまたあくびをかみ殺した。






+  その25 陰陽大戦記 時事ネタふたたび編  +

「今年は雪が降らなかったな……」
 窓にもたれ、タイザンはぼんやりとつぶやきました。背後でオニシバが「へい」と応じます。
「先に春一番が吹いちまったそうで。どうなっちまってんでしょうかねェ。大鬼門を開くまでもなく、節季が狂っちまってやすぜ」
「そうだな……。冬には雪が降るものだ。降って、一面積もらねばならぬ。雪の降らぬ冬くらい非情なものはなかろう」
 オニシバは楽しげに笑いました。
「ダンナがそんなに雪が好きだとは、知りやせんでしたぜ」
 ―――私に気を使って明るく振舞っているが、オニシバは無念の思いで一杯に違いない。
 タイザンは胸のうちでそう思うのです。
 ―――もうしばらく待っておれ。大鬼門を開くことに成功すれば、節季はひととびに冬となり、雪がどっさり降るだろう。
 ―――そうしたら気の済むまで、喜び庭かけまわってもよいのだからな。
 その場合、豊穣族はやはりコタツで丸くなるのか? 素朴な疑問を胸に湧き上がらせながら、タイザンは一人決意を新たにしたのでした。






+  その21 陰陽大戦記 『軍人青龍と17歳』の余談編  +

「……ってわけで尻尾巻いて逃げてきたわけだけど、ホント困るよな、瞬間沸騰機能付きの奴には」
 勢いのあるため息とともに吐き出した雅臣に、伏魔殿の東屋で束帯のまま書類を広げたタイザンは顔も上げず、「ふん」と気のない返事を返した。
「まあよい。ショウカクのそういう性格も計算の上だ。
 逃げてくるだけの分別はあるようだしな」
「そりゃあんたはいいだろうけどさ、付き合う俺の苦労は……まあいいか」
 雅臣はもう一度のため息とともに立ち上がった。
「愚痴ってても面白くないか。外に出て牛丼でも食ってくる。行こうぜ、キバチヨ」
「All right,マサオミくん!」
 あずまやを出ようとした雅臣の背に、「ところで」とタイザンが声をかけた。
 相変わらず書類から目を上げようともせず、
「サングラスをはずしたヤタロウの顔は、どのようなものだったのだ? ……特に目」
 雅臣はぴたりと足を止めた。
「……それがさ。俺も一瞬だったんで見えなかったんだよ。……正直、悔しいぜ」
「そうか。ならばやはり、この手しかあるまいな」
 タイザンは神操機を袂から抜き出した。「式神、降神」の声とともにオニシバが現れる。
「霜花のオニシバ、見参。何ですかいダンナ」
 名乗ると同時にオニシバは、契約者とその義弟が自分を取り囲む配置で身構えていることに気づいた。
「悪いのは雅臣だぞ、オニシバ。ちゃんとヤタロウの素顔を見ていないから……」
「いや、悪いのはそもそも天流だと思うね、俺は。
 あいつらがヤタロウに変な手出ししなければ、俺たちだって『メガネをはずすと3』なのかどうかここまで気になることはなかったんだ」
「いや、だからあっしにそういう期待を抱かねェでくだせェって……」
 完全に及び腰のオニシバをよそに、神流トップ2人は、じりじりとその包囲網を狭めつつあった。






+  番外編 07バレンタイン小噺 陰陽大戦記編  +

「なぜダメなのだタイザン! 昨日は頼まれてやると言っていたではないか!」
「そんな用事だと知っていたら誰が引き受けるか! お断りだ!」
「俺は一晩中今日を楽しみにしていたのだぞ! 約束を破るつもりか!」
「そーだぞタイザン。お使いくらい行ってやれよ」
「ならば貴様が行け雅臣! 私は絶対にいやだぞ! よりによってなぜバレンタインデーに男が1人でチョコレートを買いに行かねばならぬ!」
「天流討伐部の部下でも使えばいいんじゃないか? 使い走りくらいさせられるんだろ」
「そんなことを命じてみろ! 『タイザン部長、自分で準備したチョコレートをもらったかのように見せかけて見栄を張る気だなプ』とか思われるのがオチだ!」
「バレンタインデーとはチョコレートを食べる日なのだろう? なにがおかしいのだ?」
「黙っておれショウカク! 貴様に現代で生きる苦労がわかってたまるか!」





+  その20 陰陽大戦記 季節はずれの花火編  +

『もしもしタイザンか? 今日帰ったら花火しようぜ!』
「……それがヒトの職場まで電話して仕事を中断させた挙句言う言葉か」
 左手のボールペンをへし折りそうなほど握り締めつつすごんだ声を出したタイザンに、雅臣はしれっとした調子で返した。
『職場にかけないといつ帰ってくるかわからないだろ?
 そんなことより花火するからな、8時までには帰って来いよ』
「いいか貴様」
 タイザンは言い、とりあえず手のひらに食い込んであざを作りそうなボールペンを机にばんとたたきつけ、
「年中ぶらぶらしてられる貴様の食い扶持を稼ぐために、私は毎日毎日仕事に追われてるんだ。
 下らん用事ならかけてくるな。
 大体なんだ、節季はすでに白露だというのに、いまさら花火など……」
まで言ったところで、売れ残り花火一掃セールで買ってきたのだろうと感づいて叱る気をなくした。
『まーまー、ふだん仕事に追われてるからこそ、こういった娯楽が大事なんですよ』
「まだ言うか貴様は」
『とにかくできるだけ早く帰って来いよ。伏魔殿で花火しようぜ。……ショウカクとか誘ってさ』
 その一言に、タイザンは言いかけた小言を中断した。しばらく考える。
「わかった。定時に帰る。……ねずみ花火はあるのだろうな?」
『当然』
「派手に火の粉の出る手持ち花火もあるな?」
『ご用意してございます』
「よし。たしか夜のフィールドもあったはずだな。あずまやで待っているようショウカクに伝えろ」
『了解』
 電話を切ったタイザンは、先ほどたたきつけたボールペンを手に取り、ばりばりと仕事を再開した。
『……ダンナ』
「何か用か、オニシバ」
『用ってェほどたいそうなことじゃありやせんが』
「なら黙っていろ、定時までに仕事を終わらせねばならんのだ」
『ショウカクさんのりあくしょんがそんなに楽しみですかい』
「当たり前だ」
 にやりと笑い、サインした書類の束を軽くそろえてボックスに放り込む。
 そして思いついたように、
「……聞き忘れた。線香花火を買って帰らねばな」
 そうひとりごちてから新しい書類に手を伸ばした。





+  その16 陰陽大戦記 コミックス3巻入手記念編  +

オニシバ「おやダンナ、何を読んでいなさるんで……ってそいつァまさかコミックス第3巻!」
タイザン「先ほどガシンが持ってきてな……。ぜひカバーを外してみろというからやってみたら……」
オニシバ「(目が据わってますぜダンナ……)」
タイザン「……私を差し置いておまえだけ表紙か」
オニシバ「いやその……」
タイザン「しかもこんないい位置で表紙か」
オニシバ「ダンナだってDVDのじゃけっとになってるじゃありやせんか」
タイザン「あからさまな悪役笑いを浮かべてな……。
     しかもど真ん中はガシンめだ。
     ……おまえはいかにもヒーロー的な位置だな」
オニシバ「いや、このあっしはあっしであってあっしじゃねぇといいやすか、
     ほら、みてくれだって随分とちがいやすでしょう?」
タイザン「自分は悪くないと主張したいわけか?」
オニシバ「……………………」

 それ以来ダンナが口を利いてくれやせん。
 あっしはどうしたらいいんでしょうか(東京都・式神)

+  続き その18 陰陽大戦記 続・コミックス3巻入手記念編  +

オニシバ「そういえばダンナ、あっしァさっき思い出したんですがね。
     こないだ随分な絡まれ方をしやしたが、
     ダンナだってあっしをほっぽりだして1人でおーぷにんぐに出てるじゃありやせんか。
     忘れたとは言わせませんぜ」
タイザン「……だから何だ。抜けがけは一緒だとでも言うつもりか?
     新オープニングの私の出番など、たった1カット、一瞬だ。
     しかもガシンの反対側の薄暗いところで、無表情に立っているだけ。存在感もない」
オニシバ「自分でそこまで言わなくてもいいんじゃありやせんかい。
     それにダンナ、あっしァ無理に悪役ぶってるダンナより、
     あのくらいの隙だらけのお顔のほうが、ダンナらしくていいと思いやすぜ」
タイザン「……無理に悪役ぶってなどいない」
オニシバ「そうですかい? 総大将を復活させたはいいけど正直寝不足でボーっとしちまって、
     なんとか目を開けてるだけってな悪役はいねェと思いやすぜ。
     ま、ほんとのところはあっし一人の胸におさめときやす」
タイザン「……前日まで仕事の後始末をしてたんだ、仕方なかろう。
     だというのにガシンのやつめ、一人で生き生きとした顔をしおって。
     だいたいあやつは私の苦労を半分でもわかっているのか?
     あれほど言ったのに結局自炊を覚えず外食ばかりで済ませているしそれに(以下略)」
オニシバ「そんな生活感あふれる愚痴がいくらでも出てくる悪役ってのもいねェと思いやすぜダンナ」






+  その15 陰陽大戦記 例の49話 部長の野望編  +

「これで終わりだ、ガシン!」
 そう叫んで右手の闘神機を掲げる。
 ふと、思った。ガシンが持っているのは神操機なのだから、ここでキバチヨを倒したらヤツは記憶を失うことになるなと。
 ……どこまで戻るんだ?
 つらつら考えると、ガシンがキバチヨと契約したのは例の天地の襲撃後だ。
 ということは姉を失った直後の、あの素直で可愛かったころのガシンに戻るわけか。
 そういえば自分とウスベニが仲良くなり始めた頃、何を思ったかガシンがいきなりやってきて、
『僕は兄上なんてほしいと思ったことないからな!』
 それだけ叫んで全速力で逃げていったことがある。
 あのときはあっけにとられただけだったが、ガシンめ、まだこちらがそんなことを考えてもいないころから、ウスベニと夫婦になることまで想定してやきもちを焼いていたとみえる。今思えば可愛いものだ。
 戦いが終わったあと、記憶を失った状態で目を覚ましたら最初は驚くだろうが、自分はあまり外見も変わっていないからすぐタイザンだとわかるに違いない。
 ウスベニを助けるため動いているのだと言い含めて(けして嘘ではない)符でも持たせて適当なところに避難させておこう。
 首尾よく行ってウスベニを助けられたら、またあの穏やかな日々が帰ってくるのだ。
 闘神機の契約は生きているからたぶんウスベニはキバチヨと再契約できるだろう。
 皆であの里に戻り、まあ紆余曲折はあるだろうが最終的にはウスベニと二人で所帯を持って、そうしたらウスベニのことだからガシンに『ちゃんと兄上と呼びなさい』と言い含めるやもしれぬ。
 生意気に育ったこのガシンでは絶対に呼ばぬだろうが、幼い頃まで記憶が戻った素直なガシンならばテレながらも『兄上』とか呼ぶだろう。
 そしてオニシバとキバチヨがそれを見て笑っているのだ。
 ……あ。なんだかすごく幸せかもしれん。
 落ち着け私。いまからぽやっとなっていてどうする。
 やることは山積みなのだ。
 とりあえず目の前のガシンを倒して、里の者が安心して暮らせる世の中を作り上げ、それからガシンを再教育だ。
 今度こそ牛丼がどうのと騒ぎ立てない大人に育てなくては。
 ウスベニたちを復活させるのはその後だ。
 もう少しだけ待っていろウスベニ。
 必ずおまえと、あの穏やかな日々と、素直だったガシンを取り戻してみせるからな。






+  その14 陰陽大戦記 誰もが考える正月準備ネタ編  +

「面倒くさいが、これも当世のしきたりというヤツだな。しかたあるまい」
 重々しくそう言って契約者はコタツの上に白い年賀状の束をどんとのせた。そして、
「オニシバ、手を出せ」
 さらに重々しく告げる。黙って差し出したオニシバの手をつかみ、黒のスタンプ台に二度ほど、ぽんぽん。
 ぺた。と年賀状に押し付けた。それからそーっとその手をどかし、
「……足跡型にならぬではないか! どういうことだ、オニシバ!」
「ダンナ……足跡型になるような形の手で、銃が撃てますかい」
「黙れ! わかっているのか来年は犬年だぞ! ナンカイさんに『期待しておるぞ』とか言われてしまったんだぞ!
 いまさら既成のイラスト入り年賀状なぞ送れるか?!」
「お得意の書でさらさらっと書くだけでも見栄えがするじゃありやせんか。去年みたいに」
「せっかくの犬年にそんな手が使えるか! オオスミさんも『タイザンの年賀状が楽しみね』とか言っていたのだぞ?! どう責任を取るつもりだ!」
「ダンナ、姐さんや親分のことはおいといて、単にダンナがやりたかっただけじゃ」
「うるさい! 始末書を書け始末書を! もういいおまえなぞ降格処分だ!」
「あっしァ下ろされるような格は持ってませんぜ?」
 言うとタイザンは少し考えた。そして、
「スタンプ係から、宛名書き係に降格だ。
 とりあえず名簿のここからここまで、ひたすら書け。その間に絵柄をどうするか考える」
と言いながら自分も左手にペンを持った。






+  その13 陰陽大戦記 続・ミカヅチ日記編  +

  ○月×日
 監視しやすかろうと思って天流討伐部長にしてやった神流のスパイだが、意外にもちゃんと働いているようだ。
 気性の荒いものが多く、元部長のクレヤマが随分とてこずっていたが、あの神流はそれ以上の気性の激しさで部下をきっちりシメている。
 クレヤマを伏魔殿捜索部長に異動させたのも合っていた。落ち着いた者の多い捜索部をよくまとめている。
 働きやすくなったという声が、捜索部討伐部両方からあがっているようだ。ますますわが流派が栄えるというもの。
 あの神流には感謝しなくてはならぬかもしれんなどと、皮肉にも思う。

  ○月○日
 クレヤマと神流が社員食堂で向かい合わせに昼食をとっていた。
 珍しいこともあるものだ。神流が先に食べていたところにクレヤマが通りかかり、相席を申し出たらしい。
 無論私も混じってやった。神流のあの、食事中まで演技をしなくてはならないのかという嫌そうな顔は、思い出すだけで笑いがこみ上げる。
 しかし3人で話していると、なかなかに面白い人間関係が見えた。
 クレヤマのほうは神流を露ほども疑わぬ様子で、
「私があれだけ苦労した天流討伐部の闘神士をまとめ上げるのだからたいしたものです。
 こんな若い者を部長に抜擢して大丈夫だろうかと思っておりましたが、さすが宗家の眼力。
 感服しました」
「いや、クレヤマ部長が土台を作ってくださったから何とかやれているだけで……」
「謙遜するなタイザン。部長としての事務仕事も、俺よりずっと早いではないか。ただ、凝り性なのが玉に瑕だとオオスミ部長がこぼしていたな。
 読みやすい書式にこだわるのもほどほどにしろよ、ハハハ……」
「はあ……気をつけます」
 どうも神流はクレヤマのまっすぐな気性に、多少の苦手意識をもっているようだ。大方罪悪感が刺激されるのだろう。

  ○月●日
 あの神流をまた飲みに連れ出した。そろそろ情報収集をしなくてはならない。今度は加減して飲ませ、酔いつぶれさせないようにした。
 薄い酒を少しずつ飲ませていると、だんだん酔ってきたらしいが、予想に反して饒舌にはならず、思い切りぐちっぽくなってしまった。
 聞いてみればずいぶんと複雑な家庭環境にいたようだ。推測するにこやつは平安時代の貴族の生まれか。
「両親から学んだのは、いかにして権力者に取り入るか、ライバルを欺いて殺めるかだけです。それ以外何も教わらなかった。
 それがおかしいことだと気付いたのは大きくなってからです」
 涙目でそんなことを言い、ぐいっと薄い酒をあおる。こやつもそれなりの苦労をしてきているらしい。霜花が霊体で出てきて、
『ダンナ、あんまりグチばっかじゃ酒がまずくなりやすぜ』
 そう言って黙らせようとしたくらいだから本当のことなのだろう。そして、私のほうも酔っていたらしい。
「許してやれ。きっとおまえの両親は、おまえが生き残るためにはそれこそが必要だと思っていたのだろう」
 そう言ってなぐさめてやってしまった。少しは思うところがあったらしく、神流は涙目でうなずいていた。
 霊体の霜花が『すいやせんねェ、ミカヅチの親分』などと言っているうちに、神流はもう一杯薄い酒を空け、ふらふらになってしまう。
 結局たいした情報収集にはならなかったが、悪い酒ではなかった。

  ○月●+1日
 二日酔いで出て来れぬかと思ったが、神流はかなり頭の痛そうな顔でちゃんと出勤してきた。
 しかも(本人は忘れたふりをしているが)どうやら昨日の醜態をしっかり覚えているようだ。私にあいさつする目が泳いでいた。
 まあいい。今日ばかりは欺かれてやるとしよう。そのうちクレヤマやナンカイらとともに飲みにつれだしてやるのが楽しみだ。






+  その11 陰陽大戦記 神流会議編  +

 ある日のことです。神流の3人は京都の某所にて作戦会議を行っておりました。
 というのも、ずっと探していた天流宗家がついに見つかり、計画を実行に移す必要が出てきたからです。
「天流宗家はまだまだひよっこだな。戦いっぷりをちょっくらビデオに撮って来た。ま、見てくれ」
 そう言って雅臣さんがテレビを点けます。ぱっと映った映像に、ショウカクが驚きの声を上げました。
「『目』の符と同じことが、符もなしに出来るのか。すごいものだなこの時代は」
(………………チッ……)
 雅臣さんとタイザンは同時に胸中で舌打ちしました。
 『箱の中に小さな人間が!!』とかいうベタな驚愕を期待していたのです。
 しかし言われてみれば闘神符でも同じことはできるわけで、そういえば自分たちが初めてテレビを見たときの感想だって似たようなものだったのでした。
「つまらんな……。雅臣、さっさと映像を流せ」
「はいよ」
 雅臣さんは白々とした表情でビデオをセットします。タイザンも白々とした表情でコーヒーカップを手に取り口元に運びました。
 と、
「なにをしておるのだタイザン!」
 悲鳴のような声をあげ、ショウカクがタイザンの手からコーヒーカップを張り飛ばしました。
 コーヒーが部屋中にはねとんで障子に真っ黒い染みを作ります。
 ビデオから振り返った雅臣さんが目を丸くしています。
 タイザンだって驚きに呆然としているのでした。
 そんな仲間をショウカクは声を荒げて叱りつけました。
「墨汁を飲んでどうする! 体を壊してしまうだろうが!」

 (…………ああ、癒されるなあ……)

 温かい笑みを満足げに浮かべる仲間二人を前に、ショウカクは熱をこめて説教を継続するのでした。





+  その9 陰陽大戦記 ショウカク日記編  +

  ○月○日
 今日、伏魔殿のあずまやで奇妙な妖怪を見つけた。
 震えながら哀れな声でびいびいと鳴く姿に、ガラにもない仏心がでて、衣の袂に入れてやり、自分の部屋に連れ帰ってきた。
 部屋に着くころには鳴き止んでいたが、水を与えても飲もうともしない。どうしたものか。

  ○月○日
 朝方、またあの妖怪が細い声で鳴きだした。おびえているのかひどく震えて哀れなばかりだ。
 撫でてやっているとそのうち静かになったので安心したが、やはり水も、とってきた果実や魚、穀物も食べようとはしない。
 ……まさかと思うが、人肉しか受け付けぬというのではなかろうな。

  ○月○日
 今日もあの妖怪は朝早くか弱い鳴き声を上げただけで、あとは静かにしている。
 一つ目を光らせる様は威嚇しているようだが、ぴいぴいという鳴き声は甲高く助けを求めているようでいじらしい。
 おそらくは金行の妖怪の赤子だろう。
 いかにあやかしといえど、こんな小さなものを退治してしまうのは、あんまりなことで、ウツホ様もお喜びにはなるまい。
 そう言うとヤタロウも珍しく同意してくれたが、だがあの二人はそうは思わないやもしれぬぞ、と言う。
 その通りだ。特にタイザンには、ここに妖怪の赤子がいるとは絶対にばれぬようにしなくては。

  ○月○日
 朝から騒がしい。タイザンとガシンが二人して何を探しているようなのだ。
 始めはこの妖怪の赤子のことがばれたのかと思ったが、そうではないようだ。
「他所で落としたんじゃないのか? 会社とかマンションとか」
「外はもうさんざん探したのだ。伏魔殿で落としたとしか考えられん。
 いつものあずまやか、この邸か。見当たらぬということは、どこかへ入り込んでしまったか?」
「ちょっと待ってろ、リクんちで電話借りて鳴らしてやるよ。呼び出し音を頼りに探したほうが早いぜ」
「バカ者、伏魔殿に電波が届くか。圏外に決まってる。
 ……ああ、だが、朝のアラーム設定は生きているな。6時に鳴るようにしてあるのだが」
「……毎朝6時から30秒だけで探すのか? 無理無理! いちぬけた!」
「よくわかった、小遣いはもう要らないのだな。ああショウカク、私の携帯を見なかったか?」
「ケ……ケータイ?」
「タイザン、ショウカクにわかるわけないだろ」
「……そうだな。ショウカク、何でもないから気にするな。
 ……しかしどう探したものか。携帯がないと、部下に連絡を取れぬから仕事にならぬ。
 新しいのを買うにも、アドレス帳を一から構築しなおさねばならんと思うとうんざりするな……」

 何か困っているようではあったが、外の世界のことは分からぬので自室にもどった。
 妖怪の赤子は布団の上で静かに眠っているようだ。なんとも平和な気分になってくる。
 あの二人がどたばたしている音は聞こえるが、俺は茶でもいれてのんびりと過ごすこととしよう。





+  その8 陰陽大戦記 マサオミさんの身の上話編(47話参照)  +

「……そして、キミの母上父上からいただいたドライブでキバチヨと契約しなおしたオレは、石に封じられていたタイザンを助けて、それからずっと一緒にウツホ復活のため働いてきたんだ」
「ずっと一緒に、ですか……。じゃあ、その人ならマサオミさんの本当の年齢を知ってるんですね。
 コゲンタ、その人に会いに行こう! マサオミさんが本当は何歳なのか確かめるんだ!」
「いや、オレは17だけど」
「マサオミさん、もうそんな風に自分を偽るのはやめてください。そうやって嘘をつくたびにマサオミさんが傷ついてるの、僕、よく知ってます」
「……年齢は本当のことなんだが」
「いいんです、マサオミさん。マサオミさんには丼のこととか丼のこととか丼のこととかでたくさんお世話になりましたし、年齢の十や二十、サバ読まれたって僕は平気ですから」
「怒ってるのか? だましてたこと怒ってるのか? リク!」
「ヘーイ、それならボクのほうがずーっとよく知ってるよ〜! 宗家専用って理由で返品されかけたのだって、ホントは知りすぎたせいだからね!」
「おまえも怒ってたのかキバチヨ!」
「横から失礼しやすがね、うちのダンナも怒ってやすぜ。
 ランゲツさんとキバチヨさんの戦いを止めたとき、おまえさん本気でダンナを疑ったでしょう?」
「……ま、タイザンは怒ってるのが普通だからな」
「なぜ私の時だけ温度がちがう!(マジギレ)」

   そして例のバトルへ(嘘)。





+  その7 陰陽大戦記 DVD4巻見ちゃったよ編  +

 むかしむかしあるところに、モズさんという少年とキクサキさんというお兄さんが住んでいました。
 2人は記憶喪失でしたが、とある大企業の立派な病院に入院中でしたので、それなりに不自由なく暮らしていました。
 同じ大部屋に同時に入院したため、二人はなんとなく仲良くなり、雑談をしたり暇つぶしグッズの貸し借りをしたりするようになりました。(病室の中で唯一キクサキさんだけが、モズさんのヘンなしゃべり方に耐性があったからかもしれません)
 少し元気になった2人は、買い物のため一緒に病院から外出することにしました。
 下町の商店街を歩いておりますと、不意にモズさんがぽろぽろと涙をこぼしたのです。
 驚いてどうしたのかと尋ねるキクサキさんに、モズさんはペットショップの店先を指差しました。
「自分でもわからないのですが……ウサギを見たら涙が止まらなくなってしまって……」
「モズさんはウサギを飼っていたことがあるのかもしれませんね」
 キクサキさんはそう言ってモズさんをなぐさめました。
 もう少し歩いておりますと、今度はキクサキさんがぽろぽろと涙をこぼしたのです。
 驚いてどうしたのかと尋ねるモズさんに、キクサキさんはキャバクラの店先を指差しました。
「自分でもわからないのですが……派手なお姐さんを見たら涙が止まらなくなってしまって……」
「キクサキさんは派手なお姐さんを飼っていたことがあるのかもしれませぬ」
「モズさん、そのなぐさめはおかしいんじゃないでしょうか」
「ではわたしはなんと言ってなぐさめればよいのですか」
「…………生暖かい目で見守ってもらえれば」





+  その6 陰陽大戦記 ミカヅチ日記編  +

  ○月×日
 新しい闘神士が入社してきた。
 契約式神は霜花で、模擬戦闘で中堅クラスの黒鉄使いに圧勝した実力の持ち主だ。
 久々の有望な新人。
 わが地流のますますの栄光に役立ってくれることだろう。

  ○月○日
 例の新人が、事務に書類をつっかえされていた。字が汚すぎてとても読めないと言われている。
 しまった、という顔をしつつも『下手な字』と言われたことに納得がいかない様子だった。
 秘書に命じて書類を回収させてきたら、『下手な字』というのは変体仮名まじりの見事な草書体だった。
 警戒が必要かもしれない。

  ×月○日
 例の新人、ナンカイの口走った「ナウい」の意味を理解していなかった。
 奴より若い女子社員はちゃんと理解し、死語だと言って笑っていたにもかかわらずだ。
 雑談のふりをして声をかけ確かめたが、奴は少なくとも「ドラミちゃん」と「ビートルズ」がわかっていなかった。
 警戒が必要だ。

  ×月●日
 例の新人が、天流討伐の月間トップ成績をたたき出した。
 その祝いと称して飲みに連れ出してやる約束を取り付けると、気が進まない様子だったが、タテの関係が染み付いているらしく異は唱えなかった。
 好きなものをおごってやるといったら、洋食は苦手で薄味の和食がいいと言う。
 いい年をして偏食かと笑ってやったら、明らかに機嫌を損ねていた。
 単純な奴だ。しかし警戒は怠らないほうがよいだろう。

  ×月△日
 例の新人を飲みに連れ出した。
 最初に行った焼き鳥屋で酔ったふりをし、続きはおまえの家で飲もうと強要してやったら、案の定激しく動揺する。
 タテの関係を振りかざして自宅に案内させた。
 なのだが、『散らかっているから片付ける』という口実で5分ほどドアの外で待たされてしまった。
 強引に入ってやったらいろいろ興味深いものが見れたかもしれなかったのに、私としたことが痛恨のきわみだ。演技のつもりが本当に酔いがまわっていたのかもしれない。
 入ってみると、外見は普通のマンションなのに、中は完全に和風に整えられている。
 ざっと見たところ怪しいものはなかったが、筆とすずりがしまい忘れてあったのにはもう少しで吹き出すところだった。
 酔わせていろいろ聞き出してやるつもりだったが、飲め飲めと勧めたら奴はあっという間につぶれて寝こけてしまった。惜しいところだ。
 そのまま押入れの中でも漁ってやろうかと思ったが、さりげなく出てきた霜花がなんだかんだ言いつつ監視していたので、それ以上の調査はあきらめざるを得なかった。
 霜花にも探りを入れてみたが、こちらはのらりくらりとはぐらかす。
 なかなかの曲者だ。せいぜい地流の役に立ってもらおう。
 ただし警戒は継続する。

  ●月○日
 例の霜花使いを天流討伐部長に抜擢することにした。
 泳がせておくよりも、くだらない書類作りや会議に呼び出して拘束してやったほうがいいだろう。
 他人に命令するのに慣れているようだし、実際に指揮能力にはなかなかのものがある。
 ますますわが地流を栄えさせてくれるに違いない。
 だが警戒を緩めるつもりはない。
 貴様たちの思う通りにはさせぬぞ、神流。





+  その4 陰陽大戦記神流編  +

 ……昨日、ダンナがドライブを持たずに出かけやしてね。
 ええ、あっしァ危ないって言いやしたよ。でも聞きゃァしねえ。で、帰って来たらいきなり降神だ。
 闘いじゃありやせんぜ、ただダンナが立ってるだけだ。で、仏頂面でなにか差し出すんですよ。
 見たら白くって、リボンがかかってやしてね。何かと思えばこれが犬用の骨ですぜ。
 あっしが困っちまった気持ちもわかるでしょ。
 『これをあっしにくれなさるんで?』
 聞いても答えねえんですよ、これが。
 でもじーっとあっしを見なさるし、なんか期待されてる気がしたもんで、ありがたくいただいて、
 ダンナによく見えるようにしながら伏魔殿のすみに大事にうめときやした。
 …プライドを捨ててる? そうかもしれやせんね。
 でも、あっしァダンナの式神ですからね。
 あんな期待をこめた目をされちゃあ、そのとおりにしてやるしかありやせんよ。
 それにね、あのダンナがあっしに……ぷれぜんと、って言うんですかい、このごろじゃ。
 そんなものをくれるなんざ、めったにあることじゃありやせんぜ。
 浮かれちまったあっしの気持ちもわからねえでもないんじゃありやせんか。どうです、キバチヨさんよ。

「……ってことがあったんだってさ。どう思うマサオミくん」
「へーえ、あのタイザンがねえ。特製デラックス牛丼の金をせしめるネタができたな」
「……ガシン、そうじゃなくてさ」
「え? なんだ?」
「……いいよもう」





+  その2 遙か3編  +

弁慶 「拍手ですか。遙かの歴代神子たちなら、慣れっこでしょうね」
景時 「なにしろ八葉と星の一族がこぞってほめたたえてくれるからね〜」
譲 「俺は八葉で星の一族ですからね、先輩のことだって二倍ほめたたえますよ!(胸張り)」
将臣 「けど、今回の望美は1や2の主人公とはほめ言葉の方向性が違うよな」
白龍 「1や2の神子は、どうほめられていた?」
リズヴァーン 「一番言われていたのは『清らか』という言葉だ」
九郎 「『清らか』ですか、先生。望美の粗暴なイメージとはまったくちがうな」
  (物陰からすさまじい殺気)
ヒノエ 「ふふ、オレの神子姫さまに似合う言葉は『漢前』だからね」
  (かろうじて和らぐ殺気)
敦盛 「……すると、1や2の神子たちは今とはちがうタイプの神子だったのか……?」
朔 「そうみたいね。どういう人たちだったのかしら?」
譲 「星の一族のコネで俺たち兄弟が調べてきました」
将臣 「先代の神子は京を救ったあと、龍神に3つの願いをしているらしいな」
白龍 「神子の願いなら、私もかなえるよ!」
景時 「先代はどんな願いをしたのかな〜?」
譲 「1つ目は、『これからも京を見守ってほしい』」
敦盛 「(……清らかだ……)
将臣 「2つ目は、『京以外の場所の人も見守ってほしい』」
ヒノエ 「(……清らかだねえ……)」
譲 「3つ目は、『深苑くんに天罰』」
八葉 「!!!」
白龍 「神子……私も神子の願いをかなえるよ。神子の願いは?」

神子: じゃあ、九郎さんに天罰。

九郎 「いちいち俺をオチにするな!」




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