+  当日  +


 タイザンは苦虫を噛み潰したような顔で、出勤途中に押し付けられた大漁の義理チョコを抱えて闘神士たちの集まるフロアを突っ切っておりました。
 当然ながら、押しの強い女子社員らからチョコを受け取らないなどとということは不可能だったのです。
 ここミカヅチビル上層階でも、バレンタインならではの光景が展開されておりました。
「モズ〜、これ」
「おやカンナさん、私にチョコレートですか。もしかして本命というやつですか?」
「いや、義理」
「……そこで『か、勘違いしないでよ!』とでも言えばかわいいものを……」
 タイザンはそんな雰囲気に辟易し、足早に部長室に向かいました。逃げ込むようにドアを閉め、デスクの上に抱えたチョコレートを放り出します。
『大漁ですねェ、ダンナ』
「こんなものいらんと言うのに……もういい、面倒だ。全部お前にやる。返礼はお前が手配しろ」
 オニシバは目を瞬きました。
『へェ、くれるんですかい。ちょこれーとを。あっしにねェ』
「? ……か、勘違いするなよ! 純粋に返礼が面倒だからでバレンタイン云々は関係ないからな!」
 妙に必死になって主張するタイザンを、オニシバはたいそう面白く眺めたのでした。

08.2.14



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