+ はじめ +


 タイザンは、一人立ち尽くしていた。
 目の前には、大木がある。樹齢何十年になろうかという、見上げるばかりのもみの木だ。
 足元には、段ボール箱の山。きらきら輝く飾りがたっぷりと詰まっている。
 そして―――タイザンは一人だ。一人で、この巨大なクリスマスツリーの飾り付けをしなくてはならないのだ。


「いや、一人でやる義理はないな。式神降神」
「あっしはこういうことはあんまり」
「何か言ったかオニシバ」
 能面のような無表情のタイザンに、オニシバは「……なんにも」と小声で応えるのがやっとだった。
 場所はミカヅチ本社1階。受付前の、5階まで届く吹き抜けのちょうど真ん中である。毎年12月にはここに大きなもみの木を据え付け、飾りつけ、ライトアップして社員の目を楽しませているのだが、その飾りつけは1年ごとの持ち回りで各部署が行う慣習だった。それをタイザンはすっかり忘れていたのだ。
『10月にお知らせしましたとおり、今年の飾りつけは天流討伐部の当番です。タイザン部長、本日中にお願いします』
 今朝ミカヅチの秘書がそう言いに来るまでは。
「私以外はみな覚えていたということか?」
「そうでしょうよ。さもなきゃうちの部の連中がみぃんなどっかに出払っちまうなんてありえませんぜ」
「熱心に仕事しているものと思って感心していたというのに、あやつらめ……。年度末賞与は覚えておれ」
 今からでは12月のボーナスの査定は間に合わないのだ。
 とにかく、タイザンはただ1人。と1体。
 今日中にこの巨大もみの木を飾り付けなくてはならない。
06.12.9




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