+ 小話16 もちつき +


「なあ、タイザン、正月だし景気よく餅つきでもしないか? 神流をみんな集めてさ」
「餅つきか。そういえば隠れ里を出て以来やっていないな」
「そうなのか? 確か前に地流でもちつき大会があるって言ってなかったっけ?」
「あるにはあったが、全部クレヤマさんが一人でついてしまった」
「そ……そうか……」
「その上、祭りの雰囲気に浮かれたナンカイ部長が自分もつくと張り切って、案の定ぎっくり腰を起こして大変だった。
 どいつもこいつも符で治そうとして失敗するから、私が119に連絡して、救急車の誘導までしたのだ」
「そうだろうなあ……」
「ついでにつきあがった餅にオオスミが何か入れるのを見てしまったから私は食べなかった。
 案の定、振る舞いの日本酒を一杯飲んだだけだと言うのにみんなべろんべろんに酔っ払って、ものすごい馬鹿騒ぎになる始末だ。
 あれは絶対オオスミめの薬のせいだな。あやつら防衛本能が足りぬのだ」
「まあ、タイザンは犠牲にならなかったんだし……」
「だったらよかったのだが、酔ったミズキお嬢さんがいきなり服を脱ぎだして、私くらいしか正気の者がいなかったから必死で止めていたら、飛鳥ユーマが突然炎を上げて殴りかかってきたのだ。
 あの馬鹿者め、私がミズキお嬢さんを襲っていると勘違いしたのか、それまで酔ってふらふらだったのにいきなりしゃきっとしおって。近づくと熱いし必死で逃げ回る羽目になった」
「……はは……厄介だなああいつ……」
「しかし一番腹が立ったのは、ようやくユーマをまいて座り込んでいたら、ミカヅチがすたすた近づいてきて、
 『今日一番の余興だったぞ、タイザン』
と言って笑いながら去っていったことだな。
 ヤツめ、自分もシラフだったくせに、私とユーマの鬼ごっこを止めもせず見物していたらしいのだ!
 ふざけおって……次に餅つきがあったら、目にものみせてくれるわ」
「……ええっと……じゃあ、神流餅つき大会は中止ってことで……」

09.01.24



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いつの間にか松の内も過ぎてました。
あの面々をまとめてたミカヅチ様はすごいと思います。