自分の山の杉で家を建てた吉田さん


伐採した杉林

 実例にある「能生の山の家」がその家です。国産の材木は輸入木材に価格面で押され続け、特に小規模の杉林などは荒れ放題になっているのが実状です。搬出が困難な雪国の中山間地では特にそうなのですが、そうした地域で、80才近い吉田さんのお父さんが若いときに植え、近年のこのような状態の中でもしっかりと管理されてこられました。吉田さんの家では、60年程かけて育ったその杉林を伐採して、自宅を新築されました。

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 杉の木による構造材や床板の利用のほか、ウルシ、クルミ、クヌギなど取りおいて乾燥させてあったもので、床のフローリングや家具もつくりました。コストの面では全部材木を買った場合と比較して、伐採、搬出、製材を含めてほぼ同程度という結果でした。ということは、杉林を維持管理したコストが出ないことになります。わが国の小規模林業が荒廃するのはその辺の事情にあるのでしょう。地産地消の原則と国の山を荒廃させないためには、国産材使用を奨励する何らかの政策が必要と思われます。 ※


ふるさとの木の家づくり
モデル住宅
この木造住宅は、糸魚川・西頚城
の山の木を、構造材の50%
以上に使用して建てられた優良住
宅です。
ふるさとの木の家づくり振興協議会

 

 ともあれ、都会からUターンして何年か経た吉田さんは、家族で育て守ってきた木で家を建て替えられ、過疎が進む中山間地で、子供たちに身近な海や川、山で生活することの楽しさを身をもって教えています。そして今回の家づくりは、この地に生きる誇りを子供たちに持たせることになれば、といっておられます。

 家はハウスメーカーなどがつくるものとは根本的に違うタイプのもので、地域の多くの職種の多くの職人さん達によって手作りされ、地域の産業や技術の育成に役立っていくはずです。

 吉田さんは「百姓舎」という名の事業をされ、ブルーベリーの農場を持ち手作りジャムの販売もされています。ホームページは下記の通りです。

 http://www.avis.ne.jp/ ̄soei/index.html


吉田さんご家族と棟梁の橋立さん(後列左)

※ 2005年10月2日の新聞報道(朝日)によると、現在全国の自治体(都府県)などが出資し、地権者から山を借りてスギやヒノキなどを育ててきた全国40の森林整備法人(主に各県の林業公社など)の借金が、2004年度末で計1兆2115億円に達しているとのこと。さらに国産材価格の低迷で経営改善の見通しが立たず、3法人が廃止の方針を決めるなどその他の法人も債務処理について、自治体側は国の支援を望んでいる状態だという。(私の住む新潟県の公社は約276億円の負債額とあった)

材木の市場調整してこなかった結果が、公にしてこの通りで、現状では生産者や利用者個人になど補助できる余裕があるとは思えない。国が森林のもつ公共性(国土の保全や地球温暖化防止の緑化)を考慮したうえで、長期的な国土政策をはっきり打ち出して、国が自然と資源の育成に真剣に取り組んで欲しいと思う。「自分の山は自分で守れ」といっても小面積の林業が多いこの国では難問をかかえたままである。私の住む地域では杉林など荒れ放題で、枝打ち、下刈り、間伐などは現在ほとんど行われていない。

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