そうだ、自然素材で家をつくろう!

 「プラスチックハウス」が問題だ、良くないというのなら、そうだ、自然素材で家をつくろう。

 アポリジニやアメリカンインディアンの古老が「我々はみな土からやってきた・・・自然が我々の一部なのでなく、我々が自然の一部なのだ」と語る時、その言葉の中に地上の生物の"健全なる持続"のための根本的な知恵が潜んでいるように思われます。

 家づくりは、しばしば漠然とした生活での必要性やその中の機能、性能、経済、広告宣伝によるメーカー側が出す大量の情報からの選択―といった問題に片寄りがちです。ここで視点を少し増やし、家を成り立たせている材料(素材)そのものにも目を向けましょう。

 新建材(工場で化学加工した人工建材)によるシックハウス、いわゆる"病気の家"が問題になり、自然素材が注目されつつあります。工場で大量生産された素材で家づくりをしてきたハウスメーカーでさえ、この問題を無視できなくなってきたようです。しかしその事は外部から薦められたり、時勢だからというわけでなく、住む人自身が関心を持ち努力して資料を調べたりサンプルを手に取って肌ざわりや匂い、視覚上の問題(好みや飽き)、使いこなし(メンテナンスや耐久性)実例の見学に至るまで慎重に吟味されたら良いと考えます。リフォームであれ新築であれ、そこで長い年月に渡り具体的に生活していくのは設計者や建築会社の人、職人の人たちではなく家族であるみなさんです。

 ここでは個々の自然の素材について言及せず、私の長い間の経験からくる"自然素材に対する信頼"のことを問題にします。自然素材は、住む人と設計者が打ち合わせを積み重ね、サンプルで確認し、両者が納得する上で適切にデザインした上でしようすれば、飽きがこず、生理的にも精神的にもとても健康で気持ち良く生活できる家になるはずです。新建材を多く使った家より確かにメンテナンスに気を使い、そのために時間を取られます。しかしそれがどうしたというのでしょう。人が愛情を持って手入れし使い込んでいく物には、いつの時代にもそれだけの価値と親近性があったのではないでしょうか。世の中に数ある家の中で、たった一つの大切なあなた方の家ではありませんか。

 安易な便利さの追求と使い棄て文化の中で、私たちは"物"と"心"をつないでいた大切なものを忘れがちです。

 土そのものや土が生産してくれた自然素材を出来るだけ多く使い、最終的にはそれを土(自然)に戻してあげる―そうした家づくりをすることもまた、先に書いた住む人たち自身だけに止まらず、私たちに続く未来の世代の地球上での生存に深くかかわっていくことになるのだと考えます。世界の先住民の知恵に倣って、謙虚に「私たちもまた、自然の一部なのです」と。


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