プラスチックハウスと人間形成

 早くて、安くて、便利かつ見た目がきれいで施工容易、変形に強くメンテナンスも容易―このような要素をもったプラスチックの性能上、戦後の貧しい一時期を過ぎて日本が急速な工業化社会へ突入すると“プラスチックハウス”が住宅市場を征服するのは当然のことでした。

 今でもそれが続いており、例をあげればユニットバスなどは水栓金具や補強金具を除けばプラスチックのかたまりのようなものであり、磨耗に強いフローリング塗装を施している合板フローリングは、材料が呼吸せず、その肌ざわりも、もはや木ではなくプラスチックの床のようです。

 このようにテクノロジーが発達した社会では、あらゆるものをプラスチックに替えたり、プラスチックを混入させようとしています。木、壁紙(ビニールクロス)金属、花、衣類、家具、家電、食器、カーテン、ジュータン、オモチャ等。それらについて科学的に解りつつあることは、燃える可能性のあるものなら何にでも添加されている「難燃材」やプラスチックの可塑性を高めるための「柔軟材」などから長期にわたり揮発するガスは、比較的低濃度でも、子供達の発達障害を起こしたり、大人の体調不良の原因になることもあるのだという。経口で体内に取り入れられるものはもっと人体に対する影響が大きいでしょう。そうした人体に対する科学的な問題と共に、外部環境を遮断し空気調節されプラスチックに囲まれた子供たちは、どのように育っていくのでしょう。人間として一番大切なこと、生を感じて、生を楽しむ生き物としての部分を忘れて“生”の仮想のものに夢中になったり、まともな感覚を麻痺させてしまうのではないでしょうか。


犬に遊んでもらっている知人の少女

 もういいかげんに、テクノロジーの社会に振り廻されず、子供たちが"自然"や"本物"が持っている豊かさ、複雑さ、素晴らしさを感じとっていけるような家づくりをわれわれはすべきで、そうした家づくりは資源の循環を目指す未来社会ともかかわっていると思います。


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