朝の台所と食堂

みなさんの台所は、家の中のどのような位置にありますか?昔は冷蔵庫がなかったので、家の北側がほとんどだったようです。
音楽家小澤征爾夫人のお母さんで料理家の入江麻木さんは、年代は解らないのですが、そのむかし家をリフォームした時、台所の位置を“北側に”と頑固に主張してゆずろうとしなかった大工さんとけんかしてまでも”東側に”作った、とのことでした。

そのことを彼女は料理の自著で「東に大きな窓を開け、朝日がいっぱい入る台所で朝のコーヒーをわかし、一日を気持ちよく始めたかったのです」と書いていました。「一日を気持ちよく始めたかった」など、とてもいい言葉ですね

朝出勤その他で時間に余裕のない人は、ゆったりした気分でお茶やコーヒーなど飲んでいられないかもしれません。ですが休日の日とか、他に退職したあと日ごろ時間に余裕のある人などは朝日の入る部屋でお茶やコーヒーを入れ、食堂などでその日一番の新鮮な日を浴び外を眺めたり、朝刊を読みながら飲む時間は、至福の時といえるでしょう。そうはいっても、その人の気持ちの持ちよう次第ではありますが。

家の設計を依頼された場合、台所は必ずしもその時の条件により東側に取れない場合があります。それでも私は出来るだけ朝一番で始まる台所は東側に、連続する食堂は南東に取れるようクライアントにお推めしています。

自分の生活のことをいえば、私は数年前自分の家をリフォームした時、もともと東側だった台所の窓を左右の壁いっぱいに広げ外の景色を最大限眺められるようにしました。次ぎに、壁で仕切られていた隣室東南の和室を板の間の食堂に変え、仕切り壁を取り除き台所に繋げました。
その結果は、春から秋にかけての台所と食堂は、天気の良い日には木の葉のすき間から朝日が差し込み、落葉した季節には日がいっぱい入ってきます。ここでの朝はそのような台所と食堂で、外の景色や小鳥たちの活動を眺めて始められるようになりました。晴れた朝と曇天か雨雪の朝とでは、東側の部屋という効果は薄れますがそれでも私は麻木夫人のように、東側の台所と食堂にこだわっています。

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