「カントリーの生命を管理することは、アボリジニの人々にとって最も重要で意義深い人生の目的の一つであり、彼らの日常生活の大部分をしめていた。」※(1)
アボリジニたちは「我々は、みな土からやってきた。大地はお前や私と同じように生きている。我々は、自然の一部なのだ」といい、何万年もの間大陸の生態系を維持する生活を大地に刻みつけて生きてきました。地上のあらゆる生物はお互いに依存し合い、養いあい、それぞれの役割を果たしていると考えていたのです。彼らは地上に、文明人たちのいう"立派な建造物"を何一つ残さずとも、"生活のしかた"そのものが"サスティナブルな文化"というべきものを持っていたのではないでしょうか?
「征服の文化」と「大地のバランスの文化」は、根本的に相容れないものです。アボリジニの人々は、必要なだけの狩猟採集と、定期的に適度な野焼きを行うことによって、広大な土地のメンテナンスを続けてきました。人間が自然に参加することによって、オーストラリアの生態系が保たれていたわけです。(昔の日本もそのようでした)その後かの大地で侵入者たちがしたことは、単にスポーツのために動物たちを撃ち殺したり、ウサギのような特別に繁殖力の強い動物を野山に解き放したり、近視眼的な牧場経営のため、大量の家畜がアボリジニたちがメンテナンスして豊かに維持してきた土壌を荒廃させ、痩せた土地に変え、アボリジニたちが聖地としてきた大切な泉を枯れさせたり、汚してしまったことでした。
『世界のどの地域でも、アボリジニの土地メンテナンスが何千年にもわたって一貫して蓄積された場所はオーストラリアの他にない。つまり世界のどの地域よりも、オーストラリアは生態系を再生させる可能性を秘めている。「カントリーを慈しむこと」は、この大陸に住むアボリジニと入植者双方にとっての社会精神(エートス)になる可能性がある。』※(1)
私たちの生活の多くは科学技術の成果に依存していて、現在も未来もそうであり、アボリジニたちの生活や内燃機関が発明される前の江戸時代以前に遡った生活をすることはできません。私たちは科学技術の成果を、循環型社会のあり方に指し向けて自然との共存をはかる時、アボリジニの人たちの生活の仕方は、私たちに多くのものを示唆していることになるのではないでしょうか。
※(1) 「生命の大地 ― アボリジニ文化とエコロジー ―」
著:デボラ・B・ローズ 訳:保苅 実 平凡社2003年
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