「LOHAS」は Lifestyles Of Health And
Sustainability の頭文字をとったもので「ココロとカラダと地球にやさしい生き方」だという。スローライフやスローフードが成熟したヨーロッパ発なら、「LOHAS」は新天地のアメリカ発である。前者の根底には人生を「遊び心」を持って楽しもうとするのに対して(それが結果的に地球環境を守ることに役立つとしても目標ではない)、後者はアメリカだけあってアクティブだ。「LOHAS」は若者達を始めとして、ハイソサイティーや知的生産に携わる人たちに人気があるようである。彼らは人生を楽しむためにはゆとりを持った生活をすると共に、先ずもって健康でなくてはならないとする。生きている時は、いきいきと生きましょうというわけで食生活(食材やサプリメント)の改善に始まり、生活のリズムやヨガ、フィットネス、その他何らかの運動を生活の中に取り入れて、健康であることに相当積極的だ。(それはまるで若き日のバーンスタインとニューヨークフィルの演奏のようなサッソウとしたイメージだ)。
しかし現実は若い人でさえストレスにより体調や精神にダメージを負ったり、普通に、人は老いていくと共に表情、肌の色つや、体型、精神の活性などマイナスの変化をこうむることは避けられない。そこでLOHASの生き方はそれを出来るだけ防ぎ、元気溌剌で生きようとする。前で述べた生活の改善の他早起きを心がけ、生活を秩序づけるため一日の計画を立てる。実行の優先順位A・B・C、さらにそれをA1・A2・A3・・・と。(私などは嫌なことは後まわし、やりたいことを本能の趣くままに優先したり。窓の外で木の葉が陽の光に揺らいでいるのをボーと眺めているような、仕事を怠けがちで、できそこないな者には「LOHAS」のしっぽに並ぶのも無理かも知れない)。
そしてLOHASの究めつきは最後の深遠な思想にある。ヘルシーな生活の中で積極的に持続可能(Sustainable)な地球環境を考えた生活を、日々営むことにあるという。生活の仕方全般―食事、エネルギー消費、ショッピング。例えば食事では肉食文化から菜食文化へスライドする―同カロリーの肉を生産するためには10倍ほどの穀類が必要とか20倍ほどの水資源を使うとかいわれているので、環境のためには大変良いことだ。さらにSustainability
を考え実践している企業への投資などもその例である。
世界の国々の中で、個人あたり最大のエネルギー浪費国、使い捨て社会の代表国のアメリカで30%以上の人々がLOHAS的な生活をしていて、さらに増加するだろうという。あのアメリカで、信じ難いことである。アカデミー賞の授賞式にスーパースター達がリムジンの代わりにトヨタのハイブリッドカー「プリウス」で乗り付けたことがカッコ良く、彼らが典型的なLOHASピープルなのだという。
やあ、アメリカのセレブのみなさん「貴国がお為ごかしと言えそうなやり方でみなさんの税金を使ってでも、全世界に民主主義を広めようとする高邁なお考えは幾分理解しているつもりです。しかし貴国の世界一お強い軍隊を支えていて、やたらに他国に攻め込むことがお好きな人たち―資源浪費のトップバッターの軍需産業は、関係する会社の株を買わない程度で良いのですか?」と言ってみたいのですが。
願わくばLOHASが是非アメリカ全土に広まり、利害が雁字がらめになった巨大な産軍複合体―政・官・軍・産・学・一般選挙民とその子供たちを含めた家族―という全国民を巻き込んでいる抜き差しならない体制の改善にも役立って欲しいものだ。
さて、未来の地球環境に配慮した生活をベースにする「LOHAS」が、一時のファッションでなく、エリート意識や気取りを抜き去って「Sustainable」であって欲しいと、大まじめに思う。しかしいつもの通りこうした動きは既に金儲けの商業主義が食指を伸ばしていて、この動きを低俗化させてしまう可能性が大きいでしょう。「LOHAS」について興味をお持ちの方は、入門書ともいえる下記の本があります。著者はアメリカ滞在経験が豊富で、いま日本で子供を含む家族4人でLOHASを実践されているとのこと。私も大変学ぶこと多く、でした。
「いきいきロハスライフ」 イデ トシカズ 2005年 ゴマブックス
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