ル・コルビュジェの「母の家」

道路側よりの全景

 建築家、ル・コルビュジェが1923〜24年にかけて、彼の30代半ばに生み出した"母の家"は、床面積60m2(18坪)という小さな家でした。両親のために設計した家だったのですが、父親はこの家に1年程生活して亡くなったために、実質"母の家"となったのです。

 当時60才だった母が、老後を快適にすごせるよう良く考え抜かれたプランで、その設計の計画がほとんど完成していて、それに合う土地を後から探したとのこと。彼らしい合理的なやり方です。

コルビュジェの母が住んでいた当時の
リビングと横長窓

 その計画の第1条件は太陽が南にあること、眺めがひらけて良いこと、第2は質素な中にも生活に必要な機能を全て備え、かつ、それが最小限に近いこと。各部分は融通性と回遊性を持ち室内の視界を見通せるようにして、小さい家ながら、そこに空間の広がりと豊かさを与えることでした。

 

コルビュジェによる母の肖像とイメージスケッチ

 北欧の片田舎の湖のほとりに、庭を持った小さな家が生み出され、かつてピアノ教師であったコルビュジェの母は、ピアノを弾いたり、陽のいっぱい当る大きな横長窓から湖や遠くの山々を眺め、穏やかな日々の暮らしを楽しみ、101才で亡くなるまで36年間その家に住まわれたとのこと。時は1960年でした。


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 老齢化社会がやってきて、年寄りの一人住まいが多くなる時代に、コルビュジェの質素で小さな"母の家"は、とても多くの示唆を与えてくれます。
 この家のことを詳しくお知りになりたい方は下記の本をお薦めします。

「小さな家」 ル・コルビュジェ著 森田一敏訳
 集文社 1980年
桐の大木を通して見たテーブル付きの額縁窓。湖とヨットが見える


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