フランスの片田舎で"マックの店"を破壊する
    − 反グローバリズムの英雄 ジョゼ・ボベ −

 その勇ましい事件は1999年8月、フランスで標高800メートルもあるラルザック地方はミョーの村で起こった。ジョゼ・ボベとその9人の仲間たちは事前に予告の上で、トラクターに分乗し、"整然"と建設中のマクドナルドの店を解体し、逮捕された。

ジョゼ・ボベ

 原因は、彼の生産するロックフォール・チーズが、米国がWTO(世界貿易機関)を使って不当な関税を引き上げたことに対する抗議であった。当時EU(欧州連合)がホルモン剤を使った牛の肉の売買を禁じたことに対して、米国が報復措置をとっていたのである。マックはアメリカ文化を代表すると共に、ヨーロッパや地方文化の破壊者であるとも考えたのであろう。

 その結果ボベたちは有罪判決を受け、44日間服役し、2002年8月南仏モンペリエ郊外の刑務所を出所した。服役中、ミッテラン元大統領の奥さんが激励して話題を集めたり、出所時には1000人以上の支持者がやんやの喝采で迎えた。その時彼は演説し「法に違反するか、被害をこうむるか、の二者択一を迫られた時には、また、法を破る方を選ぶ」と述べ、グローバル化で強まる「市場の力の論理」に対する抵抗の正当性を強調した。

 1999年の終わり、彼らの裁判が継続中、米国シアトルでのWTO会議を反グローバリズムのデモが包囲したいわゆる"シアトルの反乱"でも、ボベを筆頭とする"ミョー・10"は英雄だったとのこと。経済のグローバル化を旗印に、極度な効率優先ばかりが世界をおおい、各地方の生産基盤を破壊したり、文化を平均化してしまう動きに対して、彼らの運動は注目すべきである。そもそもWHOの本来の目的はフェアトレードであり、強者が勝手にルールをつくり押しまくることではなかったはずだ。

 2005年8月米国は日本に対して、関税等不当な圧力をかけていないが牛肉の輸入再開を強く迫り続けている。BSEに始まる"食の安全性"も、またどのような決着を迎えることか。目が離せない問題が続いている。


戻る