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偏差値の話

偏差値教育」とか「偏差値偏重」という言葉ですっかり悪いイメージになってしまった偏差値ですが、その表す意味を正しく理解しておくと、とても便利な数値です。それは受験競争の中での自分の学力を知るという意味で、株価指数、不快指数、知能指数などと同じで、状況把握の手段の一つとして活用できる数値です。
 貧しくても心根のきれいな人はいます。お金や生活の安定を追いかけすぎて偏った考え方をしてしまっている人もいます。一芸に秀でた人の中に風変わりな人をよく見かけます。学校の勉強ができて優れた高校、大学に行ったからといって魅力に乏しい人はたくさんいます。
 人間、学力がすべてでないことは十分わかっています。長い人生を豊かにするのは健康と環境と人間性です。決して学力だけが人間を決定するものではありません。しかし、お金もないよりあったほうがいい、料理もまずいより美味しいほうがいい、知識・知恵も少ないより多いほうがいい、汚いものより美しいほうがいいと同程度に、学力もないよりあったほうがいいと、私は考えています。
 私の学生時代から「偏差値」という言葉はありました。当時、高校受験は校内の成績のよい順に志望高校に入れるという、いわゆる「輪切り」指導をしていましたので、偏差値という文字を目にした記憶はありません。しかし大学受験のときは、推薦制度も殆どなく入試の一発勝負でしたので、予備校の模擬試験を受け、自分の偏差値と大学の学部ごとの偏差値を照らし合わせ、学力に合った受験校を選び受験しました。
 それでは、偏差値についてなるべく易しく説明します。テストの得点を例に取って進めます。試験には何百、何万という生徒が参加します。それを母集団といいます。受験者全員の平均点を出し、それをまず50点とします。だから偏差値50は真ん中になります。さらに得点の散らばり具合を数値化します。これを標準偏差といい、受験者の得点の散らばりが大きくなると、数値は大きくなります。
 当然ながら、これらの平均値、標準偏差の値は試験の難易度よって異なります。そのため受験者は、得点だけでは自分の学力が受験者(母集団)全体のどのあたりか判断できません。そこで各受験者の得点を全体の平均値が50、標準偏差を10倍に修正したものを公式
    (得点−平均点)÷標準偏差×10+50
に当てはめ算出したものが学力偏差値です。これによって受験者は自分の学力が受験者全体のどのあたりか、過去の試験と比べてどのように変化したかを客観的、相対的に比べることができます。
 偏差値は母集団の分布が正規分布(富士山のようなコニーデ式火山で山頂が緩やかな丸みの形)に近い分布をしていることが必要です。正規分布の場合、偏差値と上位からのパーセンテイジは【表1】のようになります。計算上、偏差値は0未満100以上になることもあり、私も過去に某高校の校内実力模試の英語で104と96を見たことがあります。この二人は平均点が20〜30点のテストで、80点くらい取っていました。
 このように極端な変形の分布、またピークが2つ3つあるような分布、すなわち正規分布から大きくかけ離れている場合、誤差が大きくなりすぎて当てにならないこともあります。大手予備校では実施した模擬テストの母集団全体の得点の分布を公表していますが、公表されていない場合は指標としての信頼性が低くなることも知っておいてください。
 このように母集団の質(受験生の学力)によって偏差値は大きく変わります。中堅高校の校内テストで偏差値65をとっても、進学トップ高校の中では50も取れないかもしれません。また大学、高校の難易度も予備校、塾などのテスト業者によって異なります。あるテスト業者の学校別の偏差値が低いなら、そのテスト受験者の質は高いということになります。また、学校の難易度ランキングも、業者によってA学校が上だったりB学校が上だったりすることもよくあります。だから私は難易度表を作成するとき、必ず3社以上の資料を参考にしています。
 要するに、偏差値とはある母集団で当該数値(得点)がどこに位置しているかを示すもので、たとえば子どもから「テストで80点とった!」と言われても、「みんなが100点とれる程度の簡単なテストだったのか」「80点以上とれた子が誰もいないくらい難しいテストだったのか」を把握し、「80点」が相対的に良い点なのか、悪い点なのかを知るのに役立つものと理解しておくといいと思います。また、志望する学校の合格期待値は、必ず受験した模擬テストの業者の学校別偏差値と対比することを勧めます。

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