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ゆれる「大人のこころ」

B会の参加者で一番若い人が41歳、自分も来年で50歳。世間的には”立派??”な「大人」。でも「大人」とはいったい何者だろう。できれば「大人」に成りたくなかった人もいるのでは。
 大学時代に所属していたゼミでは、「大人」をテーマに卒論を書いた人もいるくらい、心理学(特に精神分析学)の世界では大切な研究テーマ。「大人」について考察している著書も探せばいくつも見つかる。私が最近読んだ「大人のための精神分析入門」(妙木 浩之(みょうき ひろゆき)、1960年〜)でも、性愛、罪悪感、防衛(心の機制)など色々な観点から「大人」について考察している。OB会ネタと全く関係なくて事務局の方申し訳ありませんが、2013年の年頭に当たり、「こころ」の側から「大人」を少し考えてみたい。
 はじめに日常語からアプローチ。言葉は「意識」だけでなく「無意識」の世界に通じる「扉」のようなもの。字面の意味だけでなく、我々のイメージも表現している。現代医学の最新診断装置CTやMRIでは深層心理を診れないが、言葉を手がかりに探ることはできる。その1「大人気ない」=思慮分別に欠けている、「分別」=物事の善悪・損得などをよく考えること。つまり分別を欠いていない、善悪・損得を考えることが、「大人」か。その2「大人の事情」=公にしづらい事柄が発生した場合に、それを簡潔に説明するために利用される隠語。公にすることが憚られる事情を抱えるのが「大人」だ。「悪」とか「損」とか「公にできない」など、日常語から考えると大人イメージはあまりよくない。
 子供のころは「うそ、約束破り」はご法度。でも大人の場合「うそ」を上手につけないと円滑な人間関係が保てない。中堅シンクタンクの顧問と私と上司3人が打ち合わせをしていた。雑談タイムで、その顧問いわく「私、”かつら”なんですけど、秘書や部下はわからない、とよく言うんですよ」。私の上司「お会いした瞬間にわかりました」・・・。その後の凍りついた場の雰囲気は想像に難くないだろう。確かに「明らかに”かつら”」とわかったけど、正直に言ってしまっては、身もふたもない。別の話、ある商社の部長秘書いわく「上司の出張予定が変更になって飛行機の予約をキャンセルするのがすごくいやなんです。約束破るみたいで」。仕事だから仕様が無いけど、気持ちは分る。
 高名な精神分析学者メラニークライン(1982〜1960)によれば「乳児」は、ある対象(具体的には母)に「良い」「悪い」の両面が有っても、別々の対象(2人の母がいる)と思ってしまうそうだ。これを「妄想分裂状態」と説明した。それが「こころ」の発達過程で「統合」、つまり一つの対象(一人の母親)に両面があることを理解する。
 「大人」の一つの条件、あるいは、子供から「大人」になることは、自分や相手(人やその集団)が「清濁併せ持つ存在」「うそ、もつけば、約束も破る」と自分の「こころの中」で納得し、上手に付き合っていくこと、と考えられないだろうか。
 しかし、昨今、社長に向かって(上司でもいいけど)「あなたは裸の王様だ!」「部長の耳はロバの耳!」と叫んだら痛快な気持ちになると思ったことはないですか。結婚の約束(男の勝手な妄想でも)を破られれば、ストーカーになるのも無理ないか、と思うことがありませんか。つらい環境(これは主観的なもので、絶対的に過酷かどうかは別)に永くさらされると、人は「妄想」を抱きがち、と「こころの専門家」は言う。会社に行けば「コンプラ」、電車に乗れば「痴漢」と間違われ、家に帰れば勉強嫌いの子供にも受験を「迫る」・・・。今の時代「分裂妄想」気味、つまり「乳児」へ退行してしまう人が多いような気がする。
 許されるなら「子供」に戻ってしまいたい、いやいや、努力して「大人」に踏み留まるか、私だけかもしれないが、「大人」になればなるほど、こころは、揺れ動く。

(ゴルフができる幸せ男 ’64生まれ)

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