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本、読んでいますか ?

なた方が中学生・高校生の時に「本をたまには読めよ」とよく言っていました。実は恥ずかしい話ですが、私自身、大学受験の現国長文読解の勉強を通して読書の重要性を知り、本格的に読み始めたのは大学生になってからのことでした。その反省の上に立って「本をたまには読めよ」と言ったり、新聞(MPS報)を定期的に発行して、あなた方に記事を書かせたりしました。その効果があったのでしょうか(?)、活発すぎたり、落ち着きがなかったりして読書とは縁遠い存在と思っていた少年(女子を含む)が、今では読書好きな大人になっているのを知ると、何故かとても嬉しくなります。
 私も今でも本を読むことは読んでいます。このように自分の考えをまとめるために文章も書いています。文字遊びの生活は、食事をする、風呂に入るなどの日常生活の一部のようになっていますが、読書に関しては隙間の時間、すなわち乗り物の移動とか、待ち時間とか、ブレイク時にしか本を開くことはしません。たまに面白くて夢中になって読み耽ることはありますが、長時間費やすことは滅多にありません。
 常に文庫本と老眼鏡をショルダーバックの中に入れて外出する(携帯電話は忘れても、本は忘れない)のですが、先日ついにその携帯本がrun out になり、なんとも言えない寂しさを味わいました。それにしても、最近は読んでよかった、面白かったという本が減ってきました。内容のないもの、クドイもの、読みづらいもの、奇天烈なもの、突飛なものなど、面白くないものが年々多くなっている気がしています。
 哀しいことですが、老化するということは意志とは関係なく身体も頭脳も感性も硬直化していくことです。若い頃に比べると読書の有用性はずっと低くなっています。若い頃の読書は今後の人生の滋養になるかもしれないと思って読んでいた面もありましたが、今では娯楽の一つとして寸暇を埋めてくれさえすればよいと思って読んでいます。それなのに「面白かった」「読んでよかった」という本が減ってきています。読みたいという衝動にかられるまで、本を読むのを止めようかなという思いが、近頃定期的に私を襲ってきています。
 文庫本も毎年少しずつ高くなってきています(書店員の話)。厚めの本は1000円します。そろそろ文庫本も1000円突入の時代になるそうです。文庫本でも数冊購入すると、3000円以上支払うこともあります。そこでネットからある程度の情報を得たり、店頭でじっくり調べて買うようにしているのですが、それでも「積ん読」本が3冊に1冊くらいは出てしまいます。30〜50ページ読んでも面白くならない本は時間の無駄と考え、途中で止めてしまうという若い頃からの持論が、余計にそうさせているのかもしれません。
 図書館で使われている日本十進分類法(NDC)は3桁で分表されていますが、文学は9、日本文学は91、さらに振り分けられて小説・物語は913に属します。その小説も政治・経済小説、恋愛・青春小説、推理小説、SF小説、官能小説、時代小説、歴史小説、私小説…、そしてどのカテゴリーに入れてよいのか判別できないと現代小説と言ってみたり、高校の近代文学史に記されているような作品を純文学と言ってみたり、いろいろなジャンルがあります。
 どんなジャンルであろうと、所詮、読書は個人的な好みの世界ですから、読み終わった後にどんな形であれ「面白かった」という感覚が残れば満足します。1000円の出費で5〜10時間の知性、感性の充実を得られるコスパ(cost performance)は他にそうはありません。現在、「この本、面白かったら読んでみる?」みたいなことを言い合っている10人前後の友人・卒業生がいますが、彼(女)たちから推薦されたり、手渡されたりした本が自分の好みにあった時はとても感激します。また私の場合、「雑食」ならぬ「雑読」なので、小説以外にも随筆、評論、広報的初心者向け専門書も読みます。お勧めする本がありましたら、是非ご一報ください。
 この数年間の私のTOP5の本を文末に付記しておきました。それらの本を参考に、あなたが読んで私の好みそうな本が頭に浮かんだら教えてください。最近の購入本は、この10年間の「本屋大賞」TOP10の中から(裏表紙の説明やネットの書評などを読んで)感性の赴くままに選んでいます。日本中の本好きな書店員が選んだ本ですから、無難な本であろうと考えて購入することにしたのですが、それでも「こんな本、どこがよくて推薦するんだよ」と思う本に出会うこともあります。
 最近、北海道の中央部にある砂川市駅前の書店経営者が「10000円であなたが満足する本を送ります」というネット・サービスをしていることが話題になっています。その経営者はかなりの本を読んでいて、アンケートに答えてくれたシートを見て送る本を決めているそうで、今は注文が多くて暫く順番待ちのようです。映像に押されて本が売れなくなったと言われて久しいですが、「最近の本はつまらない」と思っている人が結構増えてきているというのが、実態ではないのかと思っています。
 「映画化される」とか、「TVで連続ドラマ化される」とかのマスメディアの儲け主義の宣伝は実にナンセンスなことで、本の世界は行間から自分の世界が作れることに魅力があり、映像になってしまうと脚本家やカメラマンや監督の映像表現の技(プロの力)に圧倒されてしまいます。もともと人間は視覚的な動物で、映像に刺激を受け易くできています。アニメや漫画も同じです。私は映画も好きな少年でしたので、映像は映像でその価値を認めていますが、「映画は映画」、「本は本」であって、まったく別個のものだと思っています。その証拠に、映画を観た後に本を読んでごらんなさい。つまらない本だと分かるはずです。
 若い頃から、人間にとって読書は必要な知的行為と思って生きてきました。しかし、本を読むという受動的行為ばかりで能動的行為をしないことは、せっかく動物として生まれてきた意味がないとも思ってきました。また、読書ほど自慰的行為はなく、社会に還元しない(利己的)、非生産的行為はないという言葉もあり、読書も他のことと同様、度を過ぎてはいけないのです。
 ただ、活字を読む習慣を成人までに身につけておくことは必要です。できれば好奇心と感受性の豊かな小学校入学前までに、字を読めないうちは絵本などを読み聞かせしてでも、子どもや孫に文字に親しませ、言葉を覚えさせることです。言葉は感じること、考えることの基本ツールです。60余年の人間観察の中で、本を読んでいる人はすぐに会話すれば分かります。思考の幅と深さが違います。言葉を知っています。話の内容も論理的で、客観的です。ただし、運動馬鹿と同じで読書馬鹿になってもいけません。運動量と読書量の同等くらいの生活を理想と考えます。
 繰り返しになりますが、人間に限らず動物は、個体によって多少その速さは異なりますが、加齢に比例して身体、頭脳、感性は硬直化していきます。これは動物の宿命です。そして、人生の幕引きが見えてきて残る人生もいくばくも無くなると、自分のしたいことができる健康体でいられることが最大の歓びになります。健康寿命が長くなってピンピンころりで幕を閉じることができれば一番幸せなことです。そのためには、「読んでよかった」と思う本に出会うまでの無駄な時間を消費するより、その時間を身体と頭脳の老化を遅らせる行為に向ける方のが、老後には有意義であるのではないのかと考えるようになったのです。身の周りにいる読書好きな人から、「この本面白いよ。読んでみる?」と言われるまで、暫く本を読むのを止めてみるかもしれません。

私のTOP5 文庫本小説
TOP1 海賊と呼ばれた男(百田尚樹)上下で1000ページ
     2013年本屋大賞
TOP2 親鸞(五木寛之)4巻で1500ページ
     11月1日に完結編上・下巻(通算5、6巻)の文庫本が刊行
TOP3 永遠の0(百田尚樹)550ページ
TOP4 夜のピクニック(恩田睦)450ページ
     2005年本屋大賞
TOP5 下流の宴(林真理子)500ページ
個人的に満足した他の文庫本
幸福な生活(百田尚樹)
輝く夜(百田尚樹) 百田尚樹の本はほとんど読んでいます
博士の愛した数式(小川洋子) 2004年本屋大賞
家守綺譚(梨木香歩) 2005年本屋大賞3位
西の魔女が死んだ(梨木香歩)
中学入試の国語読解問題によく使われています
その日のまえに(重松清) 2006年本屋大賞5位
しずかな日々(椰月美智子) 小田原市在住
中学入試の国語読解問題によく使われています
日の名残り(カズオ・イシグロ) 英文で小説を書く日本人
小説以外の本では……
日本の名作あらすじ200本(宝島社文庫)
日本史有名人 男の生き方(新人物文庫)
人生の指針が見つかる「座右の銘」1300(宝島SUGOI文庫)
金子みすず名詩集(彩図社文庫)
漱石、鴎外、太宰、芥川、川端、三島、清張、司馬遼などのclassic作家の作品は除外してあります
文庫本以外の本では……
舟を編む(三浦しをん) 2012年本屋大賞
14歳の君へ(池田晶子)
中学入試の国語読解問題によく使われています
脳はここまで解明された(合原一幸)
ギリシャ哲学入門(岩田靖夫)
人生の岐路に立ったらやっぱり論語(井上宏生)
このように哲学、人生論、科学、趣味の本なんかも読んでいます
このように本当に自分でも「雑読」と思っています

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