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少年よ、大志を抱け

北海道大学の前身である札幌農学校の初代教頭を勤め、同校を去るにあたってクラーク博士が教え子の学生たちに贈った言葉――Boys, be ambitious. は余りにも有名な言葉です。
 このsentence の後ろにlike this old man (あるいはlike an old man という説も)という続きの句があったことを知っていましたか。恥ずかしながら私はこの歳で、しかも選りによってゴルフコースのスタート前の標識で初めて知ったという次第で、「下手なゴルフばかりしていて、こんなことも知らなかったのか」と、ゴルフの精に当てつけられた思いでした。



 北海道の千歳市と札幌市のほぼ中間あたりに、そこそこ有名なクラークというゴルフ場があります。おそらくクラーク博士の名をとつて命名したのでしょう。倶楽部ハウスからコースに出ようとしたら、コース案内とともにこの言葉が書かれた標識が目の前にありました。
 Boys, be ambitious. Be ambitious not for money or for selfish aggrandizement, not for that evanescent thing which men call fame. Be ambitious for the attainment of all that a man ought to be. (少年よ、大志を抱け。金や私欲のためや、名声などと呼ばれる虚しいもののための大志ではない。人間としてまさにかくあるべき全てのことを達成せんとするために大志を抱け。)本文はこのようになっていて、like an old man は抜けています。
 この言葉には諸説あって本当にクラーク博士の言葉かどうかと疑問視されていた時期もあったようですが、少なくてもこれに近い言葉を残したことは間違いないようです。「ambitious」という言葉は「野心のある」とか「野望のある」などの意味を表わしていて、今日では日本語の「野心」もそうであるように必ずしもよい意味で使われているわけではありません。明治初期に訳語されたので「大志」となってしまったのでしょう。クラーク博士の言う「ambitious」は、おそらく「頑張れよ」「夢を追いかけろよ」「志を持てよ」という程度の訳語が適当と考えます。
 人間はいつかみな必ず死にます。命の期限があるからこその人生です。その命の期限が間近に感じることのできる老人のように、一日一日を人間として大切に、確実に刻みながら生きなさいと言いたかったと理解します。すなわち「老人のように死生観を持って1日1日を大事に生きていきなさい」ということでしょう。そうは言っても、若い頃にはなかなか理解できないことです。多くの人間にとって青春は、後になって追憶する自分が主人公の物語にしかなりません。昔の歌にも「青春時代が夢なんて、後からほのぼの思うもの」という一節があります。
 実はこの言葉に近いことを、あのアップル社の創設者のひとりで、3年前56歳の若さで亡くなったスティーブ・ジョブズがスタンフォード大学でのスピーチで言っています。「人間はいつかみんな必ず死ぬ。このことを心に留めて自分の志を通す人生を送れ。今日が人生最後の日かもしれないと考えれば、いつかその考えが正しい日が来る」と。偏屈者でも有名であったジョブズですが、さすがに世界を変える人間の心の底は違います。

おまけの話 日本ほど多くの苗字がある国はそれほどないと聞いたことがあります。実際私自身もこの60年で、珍名、難読の苗字の人に両手の指ぐらいは出逢ったと思います。合衆国は「人種のるつぼ」と言われ、いろいろな国からやってくる苗字が集まって100万種以上は優にあるらしいのですが、単一人種(民族)では日本名が30万種以上あって世界一だと言われています。
 2012年の本屋大賞「舟を編む」の主人公も「馬締(まじめ)」という苗字でしたが、クラークカントリークラブで私たちについた20歳くらいのキャディーさんの苗字は「アマシタ」でした。漢字で書くと「天下」です。彼女の話ですと、やはり親類縁者しか聞いたことがないとのことでした。その人に言っておきました。「結婚して男の子が生まれたら、『ハジメ』がいいよ」漢字で書けば「天下一」(笑)

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