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これからの日本は 〜後編〜

 読解力のある優秀なMPS卒業生のみなさんには、稚拙な、しかも一貫性のない文章でも、前編・中編から、すでに結論を導き出してもらえていると思う。
 参院選も近かったこともあり、このシリーズの前編を書き始める前に、現在の日本国の抱えている諸問題を、数日間の猶予を持って箇条書きにしておいた。それが下記の33項目である(見逃している点もあると思うが)。

環境・社会・家庭
 東日本被災地復興
 放射能汚染・原発事故の処理
 クリーンエネルギーの開発
 地球温暖化・異常気象
 学校教育への不信
 治安悪化
 社会規範崩壊
 メディア・報道への不信
 スポーツ界の不正
 高齢化・少子化
 食糧自給率
 格差社会
 インフラの老朽化
政治
 憲法96条改正
 累積債務・財政再建
 年金破綻
 投票率の低下
 政治力の低下
 行政改革
 検察・官僚・行政への不信
 政治家・公務員の質の低下
 地方分権・道州制
 税の無駄と増税
経済
 地方経済崩壊
 国内産業空洞化
 地域産業の不振
 不景気・経済危機
 経団連・経営者の質の劣化
国防・外交
 自衛隊・憲法9条
 中国・韓国の反日
 沖縄米軍基地
 TPP
 民族・宗教の戦争と内紛

 これだけ多くの政治的、経済的、社会的問題を現代日本は抱えている。あまりにも多くの問題がありすぎて、7月の参院選にしても、個人的にプライオリティの高い問題を主たる政策にしている政党や立候補者を選ぶしか方法はなかった。結果的に、選挙は投票率の低さから、組織票の多い自民、公明、共産党が議席数を伸ばし、維新とみんなの党は橋下氏の慰安婦発言で選挙協力が御破算になって伸び悩み、民主党にいたっては、期待され政権を取らせてもらってもあの体たらくで、解党もありうる惨敗となった。
 自民党が安定政権を手にしたが、果たして日本の将来はよい方向に進むのかという問いに、国民の何割がYESと答えるだろうか。業界団体や利益団体の族議員が動き出し、不必要な公共事業が増え、官僚政治の復活が危惧される。自民党の過去を知る者には、名声、傲慢、偽善、利権、しがらみ、密室、世襲という体質イメージが消えない。「悪くしないから」と言う人に、悪い人が多い。「儲かりますよ」という人は、「自分が儲かります」の裏返し。これらの言葉を借りて言うなら、「抜本的な改革…」を口にする政治家は、まず自己改革を抜本的にする必要がある。
 上記にまとめた30項目以上にも及ぶ日本国の抱える諸問題の中に、これを解決したら他の問題もリンクして解決できるという問題は少ない。そうなると、遠廻りでも日本人の精神と日本国の環境をよくするという基本的な方法しかない。地道に働き、正直に生き、人様に迷惑をかけない人々の集合体にするしかない。童話のような話と笑われるかもしれないが、50年かかっても100年かかってもそのような日本を造っていくべきである。それが子供たちやこれから日本人として生まれてくる子供たちへの責務である。何しろ一番いけないのは、自分たちの借金を次世代に残すということである。
 明治維新(1868)から約60年周期で日本は変遷しているという記事を読んだことがある。明治維新(1868)⇒満州事変(1931)⇒バブル崩壊(1991)⇒そして今日。これらの出来事はそれまでの歪みの開放(是正)だという。2050年頃が次のエポックになるが、それまでのあと40年間に新生日本を創造しなくてはいけない。バブル崩壊から20余年。それまでの歪みがデフレという形で現れた。当然、国の税収は減り、選挙の票集めのために国債を乱発して累積債務はついに1000兆を超え、自然からの罰として2度の大地震も受けた。国民の生活は苦しくなり、凶悪犯罪も多くなり、高齢化で医療介護費は増加の一途である。
 バブル崩壊までの歪みは何であったのだろう。そのきっかけは1985年9月の「プラザ合意」で、それまで1ドル=24O円台だった為替レートが、2年後には1ドル=12O円台にまで円高ドル安が進んだ。アメリカのドル安に協力して、円高になってしまった日本政府は、不況対策に力を入れた。円高不況は脱して景気は回復したが、むしろ過熱気味になってしまった。そこから企業、個人の多くがマネーゲームに走り、バブルがはじけたということである。アメリカのポチである日本政府は、アメリカの要求に従うことしかできなかった悪政に対しても目を向けるべきである。1980年頃からの政治は安定せず、2か月しか持たない政権も2度あった。しかも、政権欲しさにイデオロギーの全く違う自民党と社会党が手を組むという掟破りの連立もあった。
 しかし、しかしである。それ以上に変わったのは日本の社会と日本人の心である。バブルによって日本人の精神は変わった。努力しない。我慢できない。面倒なことはしない。義務は果たさない。責任は取らない。権利は主張する。バブル全盛の時、旦那は朝早くから夜遅くまで一生懸命会社で働いた。一方、専業主婦の奥方は、家事の合間にへそくりを元手に株を始めた。それから2年間ほど、株をやっていた主婦の月収のがよかったという。嘘のような本当の話である。宝くじで1億円当選したら人生が変わってしまうとよく言われているが、楽にカネが入ることを知ってしまったら、カネで便利を買えることを知ってしまったら、人間の価値観や精神状態は変わってくる。
 日本人の精神の後退、腐敗が進む中で、小手先の政策や各論の対応だけでは日本はもはや良くならない。産業、政治、行政の改革と浄化、そして日本の文化・慣習・風土、日本人の精神を、根本的に見直すことから始める必要がある。換言すれば、「社会規範の構築」と「公的人間と上に立つ人間の品位確立」である。国民の社会規範の欠如と精神構造の未熟、そして政治家、公務員の信頼失墜を回復するしかない。特に政治家と公務員はしっかりした人間性という土台が備わっていなくてはならない。
 現代は「欲望の社会」である。科学技術、ITなどの先端技術によって、面倒なことをしなくてもよい社会を作り上げてきた。便利な社会になってきた。人々の生活を安全にしたこと、行動や作業を合理化、利便化させたことは素晴らしいことだ。しかしその反面、面倒なことはしない、好きなことだけをする、したくないことはしない、という精神構造も助長してきた。社会の秩序を考えずに暴走する個人主義者が多くなったことの一因にもなっている。
 軟弱な精神の根底にはもうひとつ、子育て、躾という元凶がある。拝金主義、利便主義、快楽主義に染まりきっている親に、心の教育はできない。自分の子どもを直視できないバカ親に、心の教育はできない。「子は親の背中を見て育つ」というが、親の背中には、金と楽しか書いてない。子供の教育で一番大切なのは、親の生き様である。心である。心の豊かさが人生を豊かにする。家庭がその土台は築き、その精神を子どもは引き継ぎ、友人、先輩、書物、環境などから学び、人格は出来上がっていく。
 MPSの草創期に「四無主義の否定」をキャッチフレーズにしていたことがある。すなわち無気力、無関心、無責任、無感動である。そして「心・知・体のバランスのとれた個性」。まだ20代であった若造は、このことが社会と人生の健全な発達に必須であると考えたのだろう。それから年月が過ぎ、社会モラルの崩壊が進む中、「law compliance(法令順守)とnuisance to others(他人への迷惑)」の感覚も必要と考えるようになった。
 小学校入学から高校卒業までの12年間で、各領域、すなわち学問、スポーツ、芸術、精神、環境などにおいて、子供たちは大きな格差を生じる。たとえば、学校の勉強も小学校入学時では、ひらがなの書ける子と書けない子、簡単な足し算・引き算のわかる子とわからない子くらいの差くらいしかなかった。それが高校卒業時にはセンター試験で各科目90%以上取る高校生がいる一方、簡単な分数もわからず、漢字も読めず、一般常識用語も知らず、日常生活に支障をきたす高校生もいる。駆けっこやキャッチボールなどの運動においても、それまでの経験の有無や活発な子が多少優れているという程度の差であったものが、12年後には100mを10.1秒で走ったり、160Km/時の剛速球を投げたりする高校生が出てくる。そして悲しいことに、それ以上に精神や環境の格差は広がってしまう。
 近年、選挙の投票率が下がり続けている。7月の参院選は53%まで落ち込んで、有権者の2人に1人は棄権している。これには2つの理由が考えられる。ひとつは、誰がやっても同じだ、どの党に1票を入れても裏切られるだけだ、という諦め。このことは私の若い頃から言われてきた。もうひとつは、若い人を中心に政治に無関心ということ。いろいろ不満はあっても、平和ボケしているのである。徴兵制度を復活させるとかという話になれば、びっくりして投票率も跳ね上がるだろうが…。そんな日本にならないためにも、若者たちは自分たちの未来のために政治があることを肝に銘じ、たとえ白紙投票でも投票所へは行こう。最近この種の無効投票が増加しているそうだが、無効投票が増え続けたら政治家は何かを感じてくれるだろうか。いずれにせよ、政治に参加できる権利、参政権は民主主義の根幹をなす権利であり、投票に行かないことは民主主義を放棄していることになる。日本国がこれ以上悪い方向にいかないことを願い、筆を置く。

 最後に:三編にわたって長々とした竜頭蛇尾の駄文をご静聴ではなく、ご精読くださり、ありがとうございました。「社会規範の構築(心の問題)」と「公的人間と上に立つ人間の品格」についてズルズル述べてきたしたが、それらに加えて「逆転の発想」と「地球環境とグローバル化」も、これからの日本にとって重要だと考えています。生きていたら、書く気になったら、また書かせてもらいます。私の人生は「社会と人間 watching」だった気がしています。あと10年くらいは健康で自力で生きられたらと思っていますが、次のエポックの2050年は102歳で絶対に無理です。2050年の地球が、日本がどのように変わっているのか、とてもとても知りたいです。

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