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開聞岳 余談

路、錦江湾のフェリーの中で同年輩風の名古屋からの人と話す機会があった。小柄な体型は開聞岳で話した72歳になる人と同じで、余分な肉は一切ない鍛えられた身体をしていた。もちろん見ず知らずの人で、デッキから桜島の噴煙を眺めていたら、「あれが桜島ですか」と声を掛けられた。
「はい。旅の方ですか? それにしては身軽な出で立ちですね」
「今朝、名古屋から来ました。明日、佐多岬マラソンに出るので、その移動中です」
「服装と身体を拝見して、山登りとかマラソンを趣味にしている方のようにお見受けしました。日本中のマラソン大会に出ているんですか?」
「ええ。今までに2、300回ぐらい出ていると思います。40歳頃から走ることを始めて、退職してからは時間もできたので、競技のあとは名所旧跡巡りをして楽しんでいます。昔はそこの東国原知事ともよくいっしょになりましたよ。ところで、標準語ですね。あなたはどちらから?」
「昨日、箱根から来ました。指宿に泊まり、あの山に登ってきました」開聞岳を指差して言った。
「いいですね。私もリタイアしてから、楽しみながら走れるようになりました。若い頃から競技志向で走り続けてきた人は、体のどこかを痛めて40歳になると走らなくなる人が多いんです。自分のライフスタイルの中に組み込んで接していると趣味は長続きするような気がします」
「同感です。実は私の趣味はゴルフで、私も40歳くらいから本格的に始めたんです。自分の飛距離なり技なりが通じる範囲の中での競技を楽しんでいます。趣味との係わり方でその人の生き方がわかるような気がします。そういえば、開聞岳の5合目あたりで駆けるように下って来る30歳代の人とすれ違いましたよ。まさに韋駄天のようでした。」
「一部の愛好家の間で登山マラソンが流行っていますから、その鍛錬の一環ではないですか。もう私には無理ですが」
 話しはなぜ開聞岳に登ることになったのかの流れになった。
「日本中のプレーしてみたいコースを巡ることが旅の目的の一番なんですが、今回はゴルフではなくあの開聞岳に登りに来たのです」
「どうしてですか?」
「学生時代に気まぐれで登った山で、いつかもう一度登ってみたいと思い続けていたんです。40年経ってしまいました」
「そうですか。夢が叶ったわけですね」
「天気もよくて、あの時もこんな日和でした。頂上に立ったら感慨深いものがありました」
 初対面同士の会話にそれ以上の深入りはない。名前を聞くなどは無粋の極み。旅人の会話はその人の肩書きや過去を知らないからいい。その時のお互いの心の素が会話の流れを作る。
「明日、頑張ってください。」そう言って別れた。

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