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結婚?それとも独身?

涯未婚率という言葉をご存じだろうか。50歳の時点で一度も結婚したことのない人の割合である。右表がそれである。一生を通して結婚しない人の割合を示すものではないが、それに近い統計指標としてよく使われている。最新の男性の数値は2005年調査時の15.96%。40年前の1.50%と比べると、実に10倍にも増えている。10年前の8.99%と比べても約2倍。生涯未婚率は確実に急上昇している。男性は6人に1人、一方、女性は男性の半数の13人に1人が一度も結婚しないで人生を送っている。
 次に、図2も参照していただきたいが、若者世代の未婚率も急上昇中である。この数値も年を追うごとに右肩上がりで増えている。たとえば、ほぼ30年前には21.5%だった30〜34歳男性の未婚率は、05年には47.1%にもなっている。35歳になっても、ほぼ2人に1人が独身でいるということである。女性も05年には32.0%になっていて、ほぼ3人に1人が独身という現状である。今後、若者世代の未婚率がこのまま上昇していけば、必然的に生涯未婚率も上がっていく。男性の3人に1人が生涯未婚者になるとの予測もある。政府やマスコミは少子化ばかりを話題にしているが、結婚率が上昇しなければ必然的に子供の数は増えていかない。


 さらに現代は、結婚した夫婦の3組に1組が離婚している。離婚することによって、その後「結婚は懲り懲り」と再婚せず独身を通す人も多い。子供のいない人たちはまた単独(独身)生活者に戻り、老後をひとりで暮らす人の割合は生涯未婚率以上に多いことになる。
 私自身20代後半であった頃(35年前)の未婚率が低かった大きな理由は、成人したら結婚する、子供を作る、定職に付くという強い社会通念があって、そうしないだけで、何か悪いことをしているような、欠陥人間のような目で見られる雰囲気があったからだと思う。自分の生き方をさせてくれない、まわりが放っておいてくれない世間の目があった。30歳を過ぎると、親からも友人からも「結婚しないのか」と言われる時代であった。その頃は、コンビニもないし、家電製品も今ほど便利にはできていなかった。男性が仕事に専念するには、家事全般を引き受けてくれる妻の存在が必要であった。女性の側も社会進出が低く、経済的な理由や世間体から、結婚したほうが幸せになれると信じていた面もあった。
 それにしても、なぜこれほどまでに日本人は結婚しなくなったのか。好景気時代にも未婚率が上がり続けてきたところを見ると、経済的理由だけではなさそうである。結婚したくてもできない人もいるが、未婚者の増加は日本人の人間性と人生観の多様化、そしてsocial standardの喪失にあるように思える。高い生涯未婚率と高い離婚率に共通するfactorは社会規範にあるように思えてならない。
 現代の若者の心理を、ある専門家はこう分析している。
「本音は、いい結婚しかしたくない、ということではないか。人生は山あり谷あり。そんな苦しみや悲しみに出遭ったとき、良きパートナーがいたらいいということは百も承知している。しかし、そんな人生を一緒に歩んでいけると確信できる相手、しかも自分にプラスになる相手でなければと考えると、なかなかいない。現に、給料が男性より多いという女性も増えていて、結婚したはいいが、家事は倍化し、子供を産んだら子育てのために仕事を辞めなくはならない場合も多い。また子供が学校に行くようになると、亭主の収入によっては家計のためにまた働かなくてはならない。だから、女性はなかなか結婚に踏み切れない。一方、20代の男性は、結婚したいと答える人がほとんどであるが、今の自分の生活を大切にしつつ、恋愛の先に結婚があったらいいなくらいの、ゆるい結婚願望のようだ」と、言っている。
 現代人のストレスの多くは人間関係の軋轢であると言われている。風変わりな人間、腹黒い人間が多くなった。これだけいろいろな人間がいれば、隣人とのトラブルも多くなるし、学校や会社で奇人、変人を見かけることも多い。このような日常的な付き合いの中で違和感を覚える人間とは接することを避けるが、仮に仕事の上や地域の中で付き合わなければならない場合でも、多くの場合、自分の感性とは合わない人間であることを確認するだけである。
 実はこれ以上に困ることがある。本性を現さない「猫かぶり」の人間である。良かれと思っても、夫婦になると箸の上げ下ろしまでわかってしまう。知らなかった部分まで見えてくる。かと言って、お互いを完全に知り合って一緒になることもできない。完全に知り合うことを待っていたら老人になってしまう。夫婦は一種の妥協で一緒になり、それを承知している夫婦は、忍耐によって婚姻生活を継続している。
 ある期間の交際を経て結婚しても、こんなはずではなかったという夫婦が多くなり、また、このような状況の夫婦を近くで見ている子供や若者は多くなっている。そのことが若者の結婚願望を薄れさせている。「世間の目」が無くなったことによるsocial standardの喪失、さらに政治、人間への不信などの複合的要因が絡み、生涯未婚率を上昇させてきたと考えられる。政府は少子化を問題視しているが、むしろ未婚率に焦点を当てるべきだと考える。
 こんな時代、あなたは結婚派ですか、それとも独身派ですか?

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