Paul Winter: Soprano Sax, Vocals David Darling: Cello, Vocals Ralph Towner: Classical Guitar, 12-String Guitar, Steel String Guitar, Piano, Regal. Bush Organ, Vocals Paul McCandless: Oboe, English Horn, Contravass Sarrusophone Collin Walcott: Tabla, Conga, Surdos, Traps, Kettledrums, Bass Marimba, Sitar Herb Bushler: Fender Bass Andrew Tracy: Resonator Guitar, African Drum (9) Billy Cobham: Traps (4,6) Milt Holland: Ghanaian Percussion (6) Larry Atamanuik: Traps (1) Barry Altschul: Randam Percussion (8) Andrew Tracy, Janet Johnson, Paul Stookey, Bob Milstein, David Darling, Pauk McCandless: Chorus (9) [Side A] 1. Icarus [Towner] 3:02 O12 O16 O23 R2 R3 R25 D4 (Horn, 12St. Guitar, Cello, Bass, Drums, Percussion) 2. Ode To A Fillmore Dressing Room [Darling] 5:32 (Horn, C. Guitar, Cello, Bass, Percussion) 3. The Silence Of A Candle [Towner] 3:22 O2 O5 O20 R2 D27 D40 (Vocal, Piano, Cello, Bass, Percussion) 4. Sunwheel [Towner] 4:52 (Horn, 12 St. Guitar, Cello, Bass, Drums, Percussion) 5. Juniper Bear [Towner, Walcott] 3:10 (12St. Guitar, Tabla) [Side B] 6. Whole Earth Chant [Winter] 7:42 (Horn, 12 St. Guitar, Organ, Cello, Bass, Drums, Percussion, Voice) 7. All The Mornings Bring [McCandless] 3:48 O23 (Horn, 12 St. Guitar, Cello, Bass, Drums, Percussion) 8. Chehalis And Other Voices [Towner] 5:26 (Horn, C. Guitar, Cello, Bass, Percussion) 9. Minuit [Keita Fodeba, Adaption By Winter] 3:06 (Guitar, Percussion, Sitar, Vocal, Voice) George Martin: Producer 注)上の写真: オリジナルのレコード盤、 中の写真: CD再発盤の表紙、 見開きレコード・ジャケット内部(使用楽器の写真) 下の写真: レコード中袋 |
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ニューエイジ音楽の先駆け、古典として位置付けられる作品で、ポール・ウィンターの自然志向のイメージを決定付けた作品でもある。海辺の地で、グループ合宿しながら時間をかけて音作りを行い、ビートルズの仕事で名声を得たジョージ・マーチンをプロデューサーに迎え録音。ジョージ・マーチンは当時、「私が製作した最高の作品」と表明したという。世界各地の様々な音楽を取り入れている点で、ワールド・ミュージックの原点とも言える。50年も経った今聴くと、アンサンブルなどをキッチリ作り込んだ分、後に展開されるオレゴンの自由な音楽に比較すると窮屈な感じがするが、発売当時は野心的な作品であり、新鮮な音楽に聞こえたはずで、現代の視点から本作に対して文句を言うのはアンフェアーだろう。この作品ではグレン・ムーアの名はなく、ジャズ界でサイドマンして活躍し、トニー・ウィリアムス、ギル・エバンス、デビッド・サンボーン、マイケル・フランクスなどのセッションに参加していたハーブ・ブッシュラーがエレクトリック・ベースを担当している。 アルバムはラルフの不朽の名作 1.「Icarus」から始まる。ここでの演奏は、特定の楽器のソロはなく、各メンバーの合奏による交響曲のような演奏だ。おなじみの12弦ギターのイントロからチェロがテーマ・メロディーを演奏し、ホーンのアンサンブルがスペイシーな上昇イメージを展開する。ここでドラムスを演奏しているラリー・アタマニークは主にカントリー音楽界で活躍している人で、シートレイン、リンダ・ロンシュタット、エミールー・ハリス、アリソン・クラウスなどの録音で名を見つけることができる。エンディングでチェロの弦を擦る音がシンセサイザーのような音を出している。2.「Ode To A Fillmore Dressing Room」は弦楽器とホーンのアンサンブルによる導入部から、コリンのシタールとラルフのギターが哀愁を帯びたメロディーを奏でる。後半はシタールがドローン弦をフルに鳴らしながら大活躍するのが聴きもの。最後にアンサンブルのテーマが再演される。3.「The Silence Of A Candle」はラルフがリードボーカルを取る珍品!!お世辞にも上手くはないけど、ピアノの伴奏に合わせて一生懸命歌っている。曲自体としてはサラッとした出来だ。4.「Sunwheel」は、エコロジーに対するスピリチュアルな思いが伝わってくる曲。フュージョン音楽界最高のドラマーの一人であるビリー・コブハムがドラムス、パーカッションを担当し、スケールの大きいパワフルな曲に仕上がっている。途中の間奏で、ラルフによるオルガンソロが楽しめる。5.「Juniper Bear」は、ラルフの12弦ギターとコリンのタブラが中心で、エキゾチックな雰囲気の曲だ。ハーモニクスの多用や、テクニカルな演奏は当時からお手のものだった事がわかる。 6.「Whole Earth Chant」は、色々な世界の音楽が交じり合ったサウンドで、オルガンと思われるシンセサイザーのようなメロディーとそれに続くチェロ、ホーンのソロ、後半のコレクティブ・インプロヴィゼイションによる怒涛のサウンドが凄い。エンディングのアフリカっぽい打楽器の響きが不思議な印象を残す。7.「All The Mornings Bring」はポール・マッキャンドレスの曲で、テーマ、ソロとも彼のソロがたっぷりフィーチャーされる。本作のなかでは最もオレゴンらしい曲であるが、ビリー・コブハムのドラムスとハーブ・ブッシュラーのエレキ・ベースによるリズム・セクションが独自のムードを醸し出している。8.「Chehalis And Other Voices」は、クラシックギター中心の曲。アンサンブルとの掛け合いの後、途中でギターによる独奏のパートがある。現代クラシック音楽的な曲。9.「Minuit」は、ポールウィンターによるボーカルとバックコーラスがメインの曲で、アフリカ調のメロディーが面白い。当時としては画期的だったはず。コーラスにはポール・ウィンターと親交があった、ピーター・ポール・アンド・マリーのポール・ストゥーキーの名前が見られる。 ポール・ウィンター名義であるが、作曲・演奏・アレンジの重要な部分をラルフ・タウナーが担当している作品。 [2022年1月追記] 本LPの初期販売分には、レコードを収める所定の中袋がついていたことが分かりました。表面には 3.「The Silence Of A Candle」の歌詞と、フランス語で「Midnight」を意味する 9.「Minuit」は、西アフリカのギニアの音楽が元になっていて、「真夜中は胸中のよう、真夜中は安らぎ」という歌詞で、胸の中で感じる内なる光と夜の安らぎを歌った曲という、ポール・ウィンターのコメントが掲載されている。裏面には、見開きジャケットの中の使用楽器の写真の説明があり、そこには各楽器のモデル名が記されていて、ラルフの使用楽器では、クラシック・ギターがホセ・ラミレス、12弦ギターがギルド、スティール6弦ギターがマイケル・グリアン製となっている。 |
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D8 I Sing The Body Electric (1972) [Weather Report] Columbia | |
Ralph Towner : 12st. Guitar Josef Zawinul : Keyboards Wayne Shorter : Horns Miroslav Vitous : Bass Eric Gravatt : Drums Dom Um Romao : Percussion 1. The Moors [Wayne Shorter] 4:41 (12st. Guitar, Synthesizer, Horn, Bass, Drums, Percussion) Recorded November 1971 |
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マイルス・デイビスの革新的な作品「Bitches Brew」(1970)に参加したジョー・ザウィヌル(1932-2007)とウェイン・ショーター(1933- )が中心となり、1970年に結成されたグループ、ウェザー・レポート初期の作品に、ラルフが1曲ゲスト参加している。このグループは、当初マイルスの音楽の流れを汲むコレクティブ・インプロヴィゼイションを音楽スタイルとしていた。後年ジャコ・パストリアスやピーター・アースキンの加入により、アーティスティックなレベルを落とさずに商業的成功を収めることになるが、本作の発表当時は難解で気難しい音楽を志向していた時期だった。オレゴンは、デビュー当初はアコースティックな楽器にこだわったのに対し、ウェザーレポートは初めからシンセサイザーやエレキベースなどの電気楽器を積極的に取り入れていたが、両者の音楽性の根底には共通点があったと思う。オレゴンはその後も地道な活動を続け、「知る人ぞ知る玄人受けのグループ」となり、一方ウェザー・レポートはアルバム「Heavy Weather」や曲「Birdland」の大ヒットにより、「フュージョン音楽界トップのスーパーグループ」となったわけで、音楽界における陰日向の関係と言えるだろう。 ラルフ・タウナーがゲスト参加した1.「The Moors」は、彼の12弦ギターの独奏から始まる。少し荒っぽい感じもするが、若さと意気込みが感じられる演奏。途中からバンドがフィルインして、コレクティブ・インプロヴィゼイションとなるが、そこでもラルフはコード、メロディー演奏でしっかり弾いている。でも当時のシンセサイザーの音が古臭く感じられ、何だか野暮ったい感じがするのは、ここ30年の電子楽器の驚異的な発展を考えると、しようがないだろう。 ラルフのインタビューによると、グループ結成前、ミロスラフ・ヴィウトスとジャムセッションしたことがきっかけで、彼の紹介でウェイン・ショーターと知り合い、後のレコーディングに招待されたという。スタジオでのラルフは緊張のため、最初はうまく弾けなかったが、休憩時間中に練習で一生懸命弾いた演奏が知らずに録音され、それがそのまま使われたというエピソードが語られている。また愛用の12弦ギターが盗まれたばかりだったので、借りたギターを使用したとのことで、そのためかいつもと異なる音になっている (2021年追記)。 作品自体は、東京でのライブ演奏とスタジオ録音からなり、今ひとつまとまりに欠けるため、同グループのなかでもあまり評価が高くない作品となった。エイリアンの解剖図のようなジャケットのイラストが不気味。 |
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D9 Add A Little Love (1972) [Gerri Granger] United Artists | |
Gerri Granger : Vocal Ralph Towner : Classic Guitar Michael Horowitz : Acoustic Guitar Wally Richardson, Carl Lynh, Joe Beck, Rotchie resnicoff : Guitar Coleridge T. Perkinson, George Butcher, Richard Tee : Piano Her Bushler : Bass Billy Cobham, Jimmy Johnson : Drums Omar Clay, Susan Evans, Warren Smith : Percussion Dollette McDonald, James Harris, Janice Key, Yvette Glover : Back Vocal David Horowitz : Producer 7. Peace Train [Cat Stevens] 4:42 |
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ゲリ・グランジャーは、ニューヨークやニュージャージー州などで活動したノーザン・ソウル歌手。1960年より1970年代まで様々なレーベルからシングル盤を出し、ジョニー・カーソン・ショーやエド・サリバン・ショーなどのテレビ番組にも出演したが、全米100位以内にチャートインすることがなく終わった。しかしR&B、ソウル音楽界では一定の成果を上げていたようで、1962年の「Don't Want Your Letters」 (エルビス・プレスリーの「Return To Sender」のアンサーソング)や、フランキー・ヴァリとは異なるソウルフルなムードの 「Can't Take My Eyes Off Of You」 1975等がある。一方全英では1978年に 「I Go To Pieces (Everytime...)」 が50位を記録している。現在は当時の作品が再評価されているようだ。 本作はそんな彼女が残した唯一のアルバム。ソウル歌手でありながら、バックを務めるミュージシャンがジャズ畑という面白い取り合わせで、トム・パクストン、ピーター・アレンなどのフォーク、ポップスや、ランディ・ウェストン、ジョー・ヘンダーソン、トニー・ウィリアムス、ギル・エバンス、エンリコ・ラヴァなどのジャズの両領域で、キーボードの演奏やプロデュースの仕事を残したデビット・ホロウィッツのなせる技だろう。 ソウルの定型に拘らず、自由な精神で制作されたアルバムらしく、フォークやビートルズのメンバーの曲が取り上げられている。そのなかでキャット・スティーブンス (後にイスラム教に改修して現在の芸名はユスフ・イスラム)1971年全米7位のヒット曲のカバー 7.「Peace Train」 は、フォークロック調の原曲に対し、アコースティックな響きを残しながらソウルフルなアレンジを施しており見事な出来。ラルフのクラシック・ギターは、最初全く目立たないが、歌が終わりエンディングの演奏部分から前に出てきて、短いながらソロをとっている。 ラルフが有名曲の歌伴をしている珍品。 他の曲についても簡単に説明しよう。 [Side A] 1. Add A Little Love [Gerri Granger] 2. Imagine [John Lennon] 3. Till I Find You [David Horowitz] 4. I'll Be Your Baby Tonight [Bob Dylan] 5. Remember I Said Tomorrow [Jerry Williams Jr,. Troy Davis] 6. After St. Francis [Bob Kessier, Bobby Scott] [Side B] 7. Peace Train [Cat Stevens] 8. Isn't It A Pity [George Harrison] 9. Hard Times [Gerri Granger] 10. Times A Gettin' Hard [Lee Hays] 11. Jacob's Ladder [Traditional, Adapted By David Horowitz] 1.「Add A Little Love」、9.「Hard Times」は、ゲリ本人による作詞作曲。本作の前後に出されたシングル盤はすべて他人の作品だったので、彼女の作品はこの2曲のみ。ジャズ・ミュージシャンがソウルをやりました、といったサウンドをバックに生き生きと歌っていて、なかなか良い出来。前者は「ジーザスを心にもって、少し愛を付け加えたら」というゴスペルっぽい内容だ。2.「Imagine」はご存じジョン・レノン 1971年の大名曲。当時このオリジナルを最初に聴いた時、「シンプルな曲だなあ」という印象を持ったことを覚えているが、時代を経てこんなに愛される曲になるなんて、想像もしなかった。ここでは原曲のシンプルさを残しながらもソウルフルに歌っていて、クリアーな発声がこの人の持ち味だということがよくわかる。3.「Till I Find You」はプロデューサーの作品で、1970年代のシンガー・アンド・シングライターによるソウルっぽい作品といった感じで、ブラスセクションとサックスソロがフィーチャーされる。 4.「I'll Be Your Baby Tonight」は、ボブ・ディラン 1967年のアルバム「John Wesley Harding」に入っていた曲で、カントリーフレイバー溢れる作品を、ゴスペル風に調理していて、間奏とオブリガードでソプラノ・サックスが入り、とても良い出来。5.「Remember I Said Tomorrow」は スワンプ・ドッグ (Swamp Dogg 1942- ) 1971年の録音がオリジナル (アルバム「Rat On !」 1971に収録)。 彼はヴァージニア州生まれで、サザンソウルのカルト的存在。作者のジェリー・ウィリアムス Jr.は彼の本名だ。6.「After St. Francis」 は、シカゴ生まれのナイトクラブ・シンガー、女優のバーバラ・マックネアー (Barbara McNair 1934-2007) による1969年の録音が最初のようだ。 8. 「Isn't It A Pity」はジョージ・ハリソンの傑作ソロアルバム「All Things Must Pass」1970に入っていた曲。10.「Times A Gettin' Hard」は、 トラディショナルをベースにリー・ヘイズが作曲したもの。リー・ヘイズ (1914-1981) はフォークシンガーで、ピート・シーガーがいたウィーヴァースで低音声を担当した人。ピート・シーガー、トム・パクストン、ハリー・ベラフォンテ等が歌っている。11.「Jacob's Ladder」 は黒人奴隷が歌っていたスピリチュアルで、ピート・シーガーの録音がある。 ソウル歌手、ジャズ・ミュージシャン、ポップス、フォークという異色の取り合わせが、それなりに個性的なサウンドを生み出している。知名度の低い歌手による売れなかったアルバムとして、現在は忘れ去られた存在であるが、捨てがたい魅力があると思う。 [2023年9月作成] |
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D10 ECM Special (1973) [Various Artists] Trio (Japan) | |
Ralph Towner: Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano Glenn Moore: Bass Collin Walcott: Tabla 1. Brujo II [Towner] 6:21 O6 R1 (12st. Guitar, Bass, Tabla) Produced By: Manfred Eicher Recorded At November 28, 1972 |
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1969年にドイツで設立されたECMレーベルの作品は、日本では1970年代から1980年代前半までの間、トリオ・レコードから配給された。同社は、「ECM Special」という日本独自の企画シリーズで、所属アーティストによるオムニバス盤やベスト盤を製作した。それらのレコードに収録された曲は、すべて既存のアルバムで発表されたものと思っていたが、1973年に発売された同シリーズ最初のアルバムのみ、別テイクならびにアウトテイクを収録したものだった。そこには、チック・コリア、キース・ジャレット、ヤン・ガルバレク、ポール・ブレイ、ポール・モチアンなどと共に、ラルフのトラックが1曲含まれている。 1.「Brujo II」は、ラルフ最初のソロアルバム「Trios/Solos」1973 R1に収められていた「Brujo」の別テイクだ!こちらのほうが演奏時間が1分ほど長く、ラルフのギターはよりリズミックかつメロディアスで、オリジナル版よりも気さくな感じになっている。個人的には本作のバージョンのほうが好みであるが、アルバム収録バージョンは創造性・独創性の見地で選ばれたのだろう。グレンのベースプレイについて、ここでの彼のソロは弓を使ったプレイになっているのがオリジナルと大きく異なる点。 本アルバムはCD化されておらず、かつ日本のみでの発売だったため知名度が低く、一部のファンの間でしか知られていないコレクターズ・アイテムとなっている。ただし量的には当時かなり売れたようで、中古市場で普通に見つけることができる。他のアーティストでは、チック・コリア・アンド・リターン・トゥ・フォエバーの「Captain Marvel」 (「Light As A Feather」1972に収録された同曲の別テイクであるが、同アルバムについては1999年に別テイクを加えた「完全盤」が発売されたが、そこには収録されなかった)、チック・コリアのピアノ・ソロアルバム「Piano Improvisation」1971の別テイク「Noon Song II」や、キース・ジャレットのピアノ・ソロアルバム「Facing You」1972 のアウトテイク「Counterphonymic」などが面白い。特にキース・ジャレットのトラックは、彼のファンにとっても貴重な録音のはず。ECMの倉庫にはこのような未発表音源がたくさん眠っていると思われるが、同社はこの手の別テイク、アウトテイクを滅多に発表しないので、ファンとして残念。いつか将来まとめて聴くことができるといいね! 発売後40年が経過、曲によっては古臭く響き、時の移ろいを感じさせるものもある。そのなかでラルフのトラックは、当時の光を失うことなく燦然と輝いている。 [2011年2月作成] |
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D11 There Is A Breeze (1973) [Michael Johnson] Atco | |
Michael Johnson : Guitar, Vocal Ralph Towner : Second Guitar, 12st. Guitar Russell George : Bass Ron Zito : Drums Airto : Percussion 1. On The Road [Carl Franzen] (Vocal, C. Guitar, 12st. Guitar, Bass, Drums, Percussion, Strings, Chorus) Peter Yarrow, Phil Romone, Chris Dedrick : Producer |
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マイケル・ジョンソン(1944-2017)のファーストアルバムに1曲参加。彼は1978年の「Bluer Than Blue」(全米12位)を始めとして、同年の「Almost Like Being In Love」(同32位)、79年には「This Night Won't Last Forever」(同19位)のヒットを飛ばし、アダルト・コンテポラリー・スタイルのシンガー・アンド・ソングライターとして脚光を浴び、その後は主にカントリー音楽の世界で活躍を続けた人だ。なので彼に対するイメージは、優しい声で切なく歌うAOR歌手というものだったが、しかし彼のデビュー作である本作を聴くと、フォーク音楽をルーツとするシンプルでストレートな音作りがなされている。その一方で、R&B風のアレンジや、クラシックギターのインスト曲もあり、幅広い音楽性を窺わせる選曲が、アーティストの個性や作品自体のインパクトを薄味にさせた感も否めない。作品全体にわたって特筆すべき点として、彼のギターの上手さがある。21才の時にスペインに渡り、そこでクラシックギターをみっちり習ったそうで、音の正確さ、リズムの切れ味の鋭さは、弾き語りのアーティストのなかでも群を抜いており、プロデューサーはその点に注目して、ギターの名手をゲストに呼んだものと思われる。本作発売にあたり、当時人気絶頂のレオ・コッケの参加が大いに話題になった 「In Your Eyes」では、彼のマシンガンのようなピッキングがフィーチャーされるが、それに対するマイケルのギターも大したもので、全く引けを取らないプレイを展開しているのがスゴイ。ちなみにマイケルは後に、レオ・コッケのソロアルバム「Dreams And All That Stuff」1974 の録音に参加し、「Mona Ray」という素晴らしいインスト曲で共演している。 ラルフが参加した 1.「On The Road」はシングルヒットを狙って製作されたようで(実際にはヒットしなかったが)、明るいメロディーと歌唱が軽やかな曲だ。クラシックギターによるスリーフィンガーの伴奏でマイケルが歌い、ラルフがセカンドギターで伴奏を付け、たまにメロディーを爪弾く。後半は12弦ギターの開放弦を鳴らすストローク奏法でのプレイとなる。パーカッションのアイルート・モレイラは、ブラジル人で、世界有数のパーカッション奏者。ベースのラッセル・ジョージは、スタンレー・タレンタイン、アストラッド・ジルベルト、ジュディ・コリンズ、ポール・サイモン等のセッションに参加している。当時ラルフはそれほど有名ではなかったはずで、彼の参加が話題作りになることはなかったと思われるが、プロデューサーのピーター・ヤーロウ(ピーター・ポール・アンド・マリー) やフィル・ラモーンといったポール・ウィンター・コンソートの人脈の関係で参加したのではないかと推測される。もう一人のプロデューサー、クリス・デッドリックは、通好みのコーラスグループ、フリーデザインのメンバーだった人。 ラルフがポップな曲の伴奏を担当した珍しいトラックだ。 [2009年5月作成] |
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D12 Tribe (1973) [Horace Arnold] Columbia | |
Horace Arnold : Drums, Percussion David Friedman : Vibes, Marimba Joe Farrell : Flute Ralph Towner : 12st. Guitar George Muraz : Acoustic Bass Ralph McDonald : Percussion 1. Tribe [Horace Arnold] 10:15 [12st. Guitar, Vibes, Marimba, Flute, Bass, Drums, Percussion] 2. Forest Games [Horace Arnold] 2:26 [12st. Guitar, Vibes, Marimba, Flute, Bass, Drums, Percussion] |
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ホレス・アーノルド(Horaceeと表記することもある)は、1937年生まれのドラム奏者で、チック・コリア(初期のリターン・トゥ・フォエバーを含む)、ビリー・ハーパー、ソニー・フォーチュン、アーチー・シェップの作品に参加、ジャズとクロスオーバーの両方の分野で活躍した人だ。正統的なジャズ・ドラムに飽き足らず、アフリカ、アジアなど様々な地域の音楽とリズムを研究、サウンドクリエイトのためにラルフ・タウナーから作曲を習ったという。本作は初めてのソロアルバムで、ラルフが2曲にゲスト参加したのはその縁だろう。 1.「Tribe」での、アフリカ音楽を取り入れたアンサンブルの中にソリストによるインプロヴィゼイションを混ぜ込んでゆくスタイルは、当時の流行だったもの。初期のウェザー・リポートに近いサウンドであるが、アコースティックな楽器による演奏の分だけ、古臭くなるのを免れている。ドラム奏者がリーダーのアルバムだけあって、アンサンブルによる背景のサウンドはよく出来ていると思う。12弦ギターのカッティングによるイントロが「他の曲と違うな?」という印象をもたらし、マリンバとフルートがエキゾチックなテーマを奏でる。ヴァイブも演奏するデビッド・フリードマンは、パーカッション奏者としても有名で、ヒューバート・ロウズ、ホレス・シルヴァー、ウェイン・ショーター等のジャズアルバム以外に、ローラ・ニーロ、ビリー・ジョエル、ベス・オートンなどのアルバムにも参加、自身ソロアルバムも発表している。フルートのジョー・ファレルは、サイドマン、リーダーとして無数の作品を残しているリード奏者だ。これまた無数のセッションに参加している売れっ子ジョージ・ムラツのベースとドラムスが入り、インテンポとなってフルート、マリンバ、ヴァイヴがソロを展開する。その間ラルフは12弦ギターで鋭いリズムの切り込みを入れる。彼がソロを取る際、12弦ギターの録音がオフ気味で、かつ演奏時間も短いので、少し物足りない。 2.「Forest Games」も、ラルフの12弦から始まる。ここでは作曲面で凝った感じのテーマに続く、フリー・インプロヴィゼイションが主体の曲。 |
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D13 At The House Of Cash (2017) [Chris Gantry] Drag City | |
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Chris Gantry: Recitation Ralph Towner: C. Guitar, Trumpet Paul McCandless: Oboe, Bass Clarinet Collin Walcott: Sutar, Tabla, Percussion, Clarinet Glen Moore: Bass, Violin, Piano 1. Tear 4:04 [C. Guitar, Sitar, Violin, Piano, Oboe, Clarinet, Bass Clarinet, Trumpet, Bass, Tabla, Percussion] Recorded on 1973 at, Johnny Cash's Studio Released on 2017 注: 上記の演奏楽器は、演奏からの聴き取りにより推測したものです。 |
カントリー音楽界においてアウトロー的な存在のシンガー、ソングライターのクリス・ガントリー(1942- )が 1973年に録音して、お蔵入りになっていた音源が2017年に発掘され、CDリリースされた。その中の1曲にオレゴンが参加している。 彼はナッシュビルにおいて主に作曲家として名を成した人で、1968年グレン・キャンベルによるヒット曲「Dream Of The Everyday Housewife」(カントリーチャートで大ヒットし、全米では33位)が代表曲。クリス・クリストファーソン、ジョニー・キャッシュと親交を深め、1968年、1970年にアルバムを発表した。1970年代後半からは小説、戯曲、詩作、童話の創作に没頭したが、2010年代以降は音楽活動にも注力し、アルバムを発表している。 そんな彼が 1973年にジョニー・キャッシュと契約し、彼のスタジオで好きなようにしてよいと言われて、思うがままに録音したのが本作に収められた曲で、カントリー臭さはなく、フォーク、ロック音楽に近いスタイルだ。歌詞の内容が飛んでいて、Peyoteという、昔インディアンが儀式に利用していた幻覚作用のあるサボテンと、メキシコ人の導師によるスピリチュアル体験に根ざしたものという。その歌詞と音楽があまりにラディカルだったため、当時はどのレコード会社も食指を動かさず、そのままお蔵入りとなった。そして2010年代になって40年以上行方不明だったテープが発見され、再評価により 1997年マイナーレーベルからアルバムとして発表された。 その後様々なスタイルの音楽が現れ、多様性が認められる時代となった現在の耳で聴くと、ビート世代によるアシッド・フォークとして、エキセントリックであるが十分面白く聴くことができる。オレゴンが参加した 1.「Tear」は中でも異色の詩の朗読で、それに彼ら得意の即興演奏を付けている。まずはクラギ、シタール、ピアノ、オーボエから始まり、各人が次々と楽器を持ち替えてゆき、全員がマルチ奏者である彼らの持ち味が存分に発揮されている。クリスが作った詩は、水が滴から水蒸気、そして涙に変遷してゆく様が独特の世界観をもって語られていて、イメージの奥行き・拡がりが素晴らしい。そして詩の朗読と現代音楽的な即興演奏は見事に調和している。なおクリスは、2010年以降のコンサートにおいてこの詩を好んで朗読しているようで、その様の映像をYoutubeで観ることができる。 本アルバムはカントリー音楽の作品として発売されたため、オレゴンが参加していることはあまり話題にならなかった。批評の中には彼らの伴奏につき名前を出さず、単に「シタールと室内アンサンブルの中で」と述べているものもある。 オレゴンの即興演奏は数あるが、詩の朗読にバックを付けたものはこれのみで、貴重な初期の演奏の発掘のみならず、演奏と詩の良さにより大いに価値のある作品となった。 [2021年8月作成] |
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D14 Tales Of The Exonerated Flea (1974) [Horace Arnold] Columbia | |
Horace Arnold : Drums, Percussion David Friedman : Vibes, Marimba Art Webb : Flute, Alto Flute Ralph Towner : 12st. Guitar Jan Hammer : Keyboard Rick Laird or Clint Houston : Electric Bass Dom Um Romao, Dave Bash Johnson : Percussion 1. Sing Nightjar [Horace Arnold] 11:10 [12st. Guiutar, Marimba, Synthesizer, Horn, Bass, Drums, Percussion] |
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ホレス・アーノルド2枚目のソロアルバム。またもやラルフの12弦で始まる。ここでは録音時のサウンド処理で、エレキギターのようなサウンドになっている。インド音楽風というかエキゾチックな音使いで、ウェザーリポートとのセッションでの「Moore」に近い雰囲気だ。インテンポになりテーマの演奏となるが、マリンバとベースによるリフが、ガムラン音楽のような呪術的な感じで迫ってくる。フルートに続きラルフがソロを取るが、ここでも最初はエレキ・ギターの音に聴こえる。独特の音使いですぐにラルフだとわかるけどね。かなりアグレッシブでハードな演奏だ。後半はヤン・ハマーによるシンセサイザーのソロだ。彼は1948年チェコスロバキアの生まれで、1968年のソヴィエトのチェコ侵攻の際にアメリカに移住し、マンハッタンのジャズ・グループで仕事をした後、ジョン・マクラグリン率いるマハヴィシュヌ・オーケストラに加入して、フュージョン中心で活躍。多くのセッション作品にも参加した。1980年代はテレビ番組「Miami Vice」の音楽を担当し、大成功。その後もテレビやゲームの音楽も数多く手がけている。このシンセ・ソロを聴くと、当時のシンセサイザー独特の無機的な音色に懐かしさを覚えてしまう。サウンド的に少し古臭い感じもするが、演奏レベルは高いので、今でも十分に価値があると思う。 |
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D15 Atmospheres (1974) [Featuring Clive Stevens & Friends] Capitol | |
Clive Stevens : Electric And Acoustic Tenor, Soprano Sax, Percussion Ralph Towner : Electric Piano Steve Khan : Electric Guitar, 12st. Guitar John Abercrombie : Electric Guitar Harry Wilkinson : Percussion Rick Laird : Bass Billy Cobham : Drums [Side A] 1. Earth Spirit [Clive Stevens] 5:30 [Tenor Sax, Electric Guitar, Electric Piano, Bass, Drums, Percussion] 2. Nova '72 [Clive Stevens] 5:52 [Tenor Sax, Electric Guitar, Electric Piano, Bass, Drums, Percussion] 3. Yesterday, Today & Tomorrow [Clive Stevens] 6:40 [Soprano Sax, Electric Guitar, Electric Piano, Bass, Drums, Percussion] [Side B] 4. A Stral Dreams [Clive Stevens] 9:21 [Soprano Sax, Electric Guitar, Electric Piano, Bass, Drums, Percussion] 5. All Day Next Week [Clive Stevens] 6:50 [Soprano Sax, Electric Guitar, Electric Piano, Bass, Drums, Percussion] 6. The Parameters Of Saturn [Clive Stevens] 5:47 [Tenor Sax, Electric Guitar, Bass, Drums, Percussion] Martin Stevens : Producer 注)6.はラルフ不参加です。 |
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ラルフ・タウナーがジャズロックのスタイルで、全編エレキピアノを弾くまくるという珍しい作品。彼は本作ではギターを弾いていない。 1968年に発表されたマイルス・デイビスの「Bitches Brew」は、ジャズ音楽側からロックにアプローチした革命的な作品で、その後の音楽界を一変させるインパクトがあった。そしてこのアルバムに参加したジョー・ザヴィヌル、ウェイン・ショーターのウェザー・リポート、ジョン・マクラグリンのマハヴィシュヌ・オーケストラ、チック・コリアのリターン・トゥー・フォエバー等のグループがジャズロックと呼ばれる新しい音楽を発展させてゆく。その初期のサウンドは、ジャズ、ロックにアフリカ音楽をブレンドさせたコレクティブ・インプロヴィゼイションといえるスタイルで、一定のテーマの後は、即興的に気の赴くまま演奏するスタイルだった。その後1970年代後半、ブラジルやラテン音楽を取り入れて技術的・音楽的に洗練度を深め、フュージョンと呼ばれる耳当たりのよい音楽に進化してゆくが、1980年代になると初期のスピリチュアルな純粋さを失い、マンネリズムに陥って行き詰まり、衰退する。 本作はその流れの過渡期に製作されたもので、初期のゴツゴツしたサウンドのジャズロックは、今聴くと古臭い感じがするが、当時新しい音楽に挑戦していたミュージシャンのピュアな意気込みが十分に伝わってくる意味では面白くもある。レコード中袋に印刷されたクライブ・スティーブンス本人のノーツによると、自然発生的な即興を重んじる東洋音楽の精神を取り入れ、同じ曲を演奏しても毎回異なる雰囲気「Atmosphere」になるとのことで、それがグループ名の由来となったようだ。イギリス生まれの彼はアメリカに渡りジャズを勉強し、本作で有力ミュージシャンをバックにデビューを果たした。その後はトップシーンから姿を消すが、地味ながらも世界のいろんな地で活動を続け、現在も自主レーベルからCDを発表し続けている。他人の作品にはジェネシスのギタリスト、スティーブ・ハケットや、パーカッションのナナ・ヴァスコンセロス等の作品に参加している。ギタリストのスティーブ・カーン(1947- )は作詞家のサミー・カーンの息子で、本作がスタジオ録音に参加した最初のレコードのようだ。その後はビリー・コブハム、ラリー・コリエル、ブレッカー・ブラザース、デビッド・サンボーン、ブラッド・スウェット・アンド・ティアーズ、デビッド・マシューズ、スティーリー・ダン、ボブ・ジェームスなど多くのセッションに参加した技巧派ギタリスト。自身も多くのソロアルバムを発表している。ハリー・ウィルキンソンは、ラリー・コリエルの作品で名前を見つけることができる。リズムセクションは、当時解散直後のマハビシュヌ・オーケストラの連中が加わっている。ベースのリック・レアード (1941-2021) は、若い頃はイギリスのロニー・スコッツ・ジャズクラブのハウスベースシストとして、イギリスに来訪した多くのミュージシャンと共演、ジョン・マクラグリンと出会い彼と行動を共にし、当時のクロスオーバー界の頂点に立つ。他にバディ・リッチ、ラリー・コリエル等の作品参加しており、もともとはウッドベースのジャズが本職だった人。ビリー・コブハム(1944- )は、この手の音楽では最高のドラム奏者の一人で、マイルス・デイビス、ジョージ・ベンソン、フレディー・ハバード、デオダード、グローバー・ワシントン Jr.等の作品に参加、また多くのソロアルバムを発表、ピーター・ガブリエルの作品にも顔を出している。この二人が叩き出すリズムは大変強靭で、プログレッシブ・ロックに通じる厳しさがあり、それがこの作品の魅力のひとつとなっている。 1.「Earth Spirit」のサックスとエレキギターのユニゾンによるテーマの伴奏から、ラルフのアグレッシブなプレイが聴ける。この伴奏パターンは本作全編を貫くもので、彼が非参加の6.以外はラルフのピアノが鳴り続ける。ライブ演奏風の録音でかつシンプルな編成なので、バックの演奏を全て聴き分けることができるのが良い。二人のギタリストの演奏は左右のチャンネルから聞こえ、ソロやリズム・カッティングの応酬がスリリング。サックスのソロは途中からワウワウ・ペダルを使用したものになる。2.「Nova'72」ではジョン・アバークロンビーがロック色の強いソロを弾く。その後に登場するラルフのエレキピアノ・ソロはとてもガッツがあるグルーヴィーなプレイだ。タッチの強さに加えて、フェンダー・ローズピアノにリング・モジュレーターを繋いで、ディストーションがかかった迫力ある音を作り出している。3. 「Yesterday, Today And Tomorrow」は、ギターやサックスのソロが入り乱れるかなりヘビーな曲。4.「A Stral Dreams」は本作の中では比較的洗練されたサウンド。アップテンポのしなやかなリズムをバックに、ラルフの長いエレピソロを味わうことができる。5.「All Day Next Week」は、テンポを落とした曲でラルフをはじめとするプレイヤーのソロも抑制が効いたものだ。最後はフリーフォーム調の曲で終わるが、これだけラルフのピアノが聞こえない。 リーダーの知名度がイマイチなので、現在本作は忘れられた存在となっているが、ラルフがこんな感じでエレキピアノを弾いている作品は、本作と次作の他にはなく、キーボード奏者としてのラルフが好きな人にとっては是非聴いて欲しい作品。 [2008年11月作成] |
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D16 Voyage To Uranus (1974) [Atmospheres] Capitol | |
Clive Stevens : Electric And Acoustic Tenor, Soprano Sax, Alto Flute Ralph Towner : Electric Piano, Clavinet, 12st. Guitar John Abercrombie : Electric Guitar, Acoustic Guitar David Earle Johnson : Percussion Stu Woods : Bass Thabo Michael Carvin : Drums [Side A] 1. Shifting Phases [Clive Stevens] 6:55 [Soprano Sax, Electric Guitar, Electric Piano, Bass, Drums, Percussion] 2. Culture Release [Clive Stevens] 6:50 [Soprano Sax, Electric Guitar, Electric Piano, Clavinet, Bass, Drums, Percussion] 3. Inner Spaces And Outer Places [Clive Stevens] 5:15 [Tenor Sax, Electric Guitar, Electric Piano, Bass, Drums, Percussion] 4. Un Jour Dans Le Monde [Clive Stevens] 4:43 [Soprano Sax, Electric Guitar, Electric Piano, Bass, Drums, Percussion] [Side B] 5. Voyage To Uranus [Clive Stevens] 5:52 [Soprano Sax, Electric Guitar, Electric Piano, Bass, Drums, Percussion] 6. Electric Impulse From The Heart [Clive Stevens] 4:15 [Tenor Sax, Electric Guitar, Electric Piano, Bass, Drums, Percussion] 7. Water Rhytms [Clive Stevens] 8:44 [Tenor Sax, Electric Guitar, Electric Piano, Bass, Drums, Percussion] 8. Return To Earth [Clive Stevens] 5:15 [Flute, Electric Guitar, Acoutic Guitar, 12st. Guitar, Electric Piano, Bass, Drums, Percussion] Martin Stevens : Producer |
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前作と同じ年に発売され作品で、音楽的にほとんど同じ内容だ。リズムセクションが変わっているが、それなりに上手い人たちなので、見劣りはしない。ドラムのターボ・マイケル・カルヴィンは、ジャズドラムの分野で活躍した人で、ハンプトン・ホーズ、ジャッキー・マクリーン、ファラオ・サンダースの作品に参加、教師としての実績もある。ベースのステュ・ウッズは、ジャズよりもポピュラー音楽のスタジオセッションでの活躍が顕著で、アル・クーパー、ボブ・ディラン、ジム・クロウチ、トッド・ラングレン、バニー・マニロウ、ジャニス・イアンなど幅広いミュージシャンの作品に参加している。パーカッションのデビッド・アール・ジョンソンは、オレゴン1977年のアルバム「Friends」 O6にゲスト参加していた人で、ヤン・ハマー、ビリー・コブハムとの演奏歴が長い。自己名義のアルバムも数枚出し、1998病没。また本作ではギタリストがジョン・アバークロンビーだけになったので、彼のプレイをじっくり楽しむこともできる。 1.「Shifting Phases」から聞こえるラルフのエレピ伴奏は、前作と同じ雰囲気。ここではエレキギターのソロのピッチを人工的にずらすなどのスタジオ処理で、同じプレイが左右のチャンネルから聞こえるように加工しており、前作よりも凝ったプロデュースだ。2.「Culture Release」では、当時流行った電子チェンバロ、クラヴィネットのソロが聴ける。アップテンポの細かなリズムのなかでのサックス、エレキギター、キーボードのソロの6小節交換はスリリングだ。3.「Inner Spaces And Outer Places」では、テーマ部分のエレピの図太い音が印象的。4.「Un Jour Dans Le Monde」は、スローな曲で、エレピのアルペジオがミステリアスな雰囲気を高めている。 5.「Voyage To Uranus」もスローな曲で、哀愁あるテ−マのメロディーと優しく落ち着いた感じのソロが、このグループの中では異色の演奏。ラルフのエレピソロも抒情性とクールさが同居したプレイ。7.「Water Rhytms」は、テーマのR&B風リフが強力で、エレピの長いソロがハイライトだ。かなりファンキーなプレイを展開しているが、同時期のハービー・ハンコックのプレイと比較すると、洗練度では格下かなという感じもする。このグループでは8.「Return To Earth」で初めてラルフの12弦ギターのプレイを聴くことができる。よく聞くと2台のアコギの音が聞こえるので、片方はジョンの演奏と思われる。エレピも聞こえるので、ギターはオーバーダビングだろう。フルートをフィーチャーした静かな曲でいい感じなのだが、アコギの録音が薄っぺらいのが残念。このグループは、ライブ演奏が重視され、彼の12弦ギターのサウンドの斬新さが生かされなかったようだ。 後のソフィスティケイトされたフュージョン音楽に繋がる部分も見られるが、いい意味でも悪い意味でも、曲・演奏面の粗っぽさもあり、時代の流れに生き残れなかった作品と言える。でも前作でも述べたが、ラルフのエレキピアノのばりばりのプレイを聴けるだけでも幸せというもんだ。 [2008年11月作成] |
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D17 In The Light (1974) [Keith Jarrett] ECM | |
Ralph Towner : C. Guitar Sudfunk Symphony Orchestra : String Section Keith Jarrett : Conductor Keith Jarrett, Manfred Eicher : Producer 1. Short Piece For Guitar And Strings [Keith Jarrett] 3:52 [C. Guitar, Strings] |
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キース・ジャレットが作曲・指揮を担当したクラシカルな作品集。彼の名声を確立した「Solo Concert」 1974 が発売される少し前で、これらの作品の製作に応じたマンフレッド・アイヒャーの慧眼には驚嘆するしかない。確かに当時のキースの創造力はかなり旺盛だったようで、色々なスタイルの作品を次から次へと発表し、「向かうところ敵なし」といった感じだった。その頃ジャズを聴いていた人ならば、好き嫌いは別として、誰しもが彼の音楽を聴いたはずだ。そしてそれらの作品群がECMレコードのイメージを決定付ける事になったとも言える。 本作に収められた音楽は、大変真面目で誠実なものであると断言できるが、残念ながら音楽で本質的に必要な「面白み」に欠けているような気がする。ラルフ・タウナーがギターを弾いた1.「Short Piece For Guitar And Strings」は、キースによると「息抜きに書いた」とのことで、他の曲に比べると、とっつき易い感じがするが、それでも曲自体の魅力にイマイチ欠けていると思う。ラルフは譜面の通りに神妙に弾いているようで、そのためか自作を演ずる時のようなダイナミックさがなく、こじんまりとした出来になっている。さらに、いつものECM作品と異なり、ギターの音が深みのない痩せた感じで録音されているのも不満。キースはピアノは弾かず、指揮に専念している。 とは言え、キース・ジャレットとラルフ・タウナーの共演盤(ギター奏者と指揮者という関係ではあるが)という意味で、ラルフ・タウナーのファンには無視できない作品だろう。 |
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D18 The Restful Mind (1975) [Larry Coryell] Vangard | |
Larry Coryell : Electric Guitar, Acoustic Guitar Ralph Towner : 12st. Guitar, Clasical Guitar, Piano (5) Glen Moore: Bass Collin Walcott: Tabla, Conga, Percussion Dannu Weiss : Producer [Side A] 1. Improvisation On Robert De Visee's Menuet II [Coryell] 8:13 (A. Guitar, Electric Guitar, 12St. Guitar, Bass, Tabla) 2. Ann Arbor [Coryell] 5:01 (A. Guitar, 12st. Guitar, Bass Tabla) 3. Pavane For A Dead Princess [Ravel] 5:40 (A. Guitar) [Side B] 4. Improvisation On Robert De Visee's Salabande [Coryell] 5:20 (A. Guitar, 12 St. Guitar, Bass, Percussion) 5. Song For Jim Webb [Coryell] 3:15 (A. Guitar, E. Guitar, Piano, Bass, Percussion) 6. Julie La Belle [Coryell] 4:07 (A. Guitar, C. Guitar, Bass, Conga) 7. The Restful Mind [Coryell] 3:12 (A. Guitar) 注) 3. 7.はラルフ・タウナー非参加 |
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ラリー・コリエル(1943-2017)は、ジャズ・ロックのギター・スタイルの創始者の一人だ。かつては保守的であったジャズ・ギターの世界に、ハードで切れ味の鋭いサウンド、ロック的なチョーキング奏法などを持ち込み、その後のフュージョン音楽への道を切り開いたといえる。ジャズギター奏者としてチコ・ハミルトン、ゲイリー・バートン、ハービー・マンのグループでプレイするうちに演奏スタイルが先鋭化し、1970年代前半に、ジョン・マクラグリン、チック・コリア、ビリー・コブハム等をバックに自己名義のアルバムを製作する。1975年頃より主にアコースティック・ギターを演奏するようになり、いろいろなミュージシャンと共演するが、特に1979年にジョン・マクラグリン、フラメンコ・ギターの天才パコ・デ・ルシアと共演した「The Guitar Trio」は名高い。その後も、ジャズギターの他に、ステファン・グロスマンの監修でギター・ソロ作品の製作、ストラヴィンスキーのクラシック曲「火の鳥」のギターソロ・アレンジや、教則ビデオの製作など、非常に幅広い活動を続けた。以上のとおり長いキャリアを誇る彼が、当時所属レーベルが同じだったオレゴンのリズムセクションと製作したアルバムが本作である。 1. 「Improvisation On Robert De Visee's Menust II」は、ロベール・デ・ヴィゼー(1655-1732)の曲をモチーフにしたもの。彼はフランス生まれのギター奏者・作曲家で、多くのバロック・スタイルのギターやリュートの名曲を残した人だ。イントロはラリーのアコースティック・ギターによるテーマの独奏。続いてバンドが加わり、エレキ・ギターによるインプロヴィゼイションのパートとなる。リズムに専念するオレゴンの3人をバックに、ワンコードでラリーがソロを弾きまくる。その早弾きは、当時の耳には先鋭的なものに聞こえたはずであるが、今聴くとフレーズが単調で、古臭い感じがするのは否めない。進歩が著しいこの手の音楽の場合は、そういう傾向は仕方がないと思う。そう考えると、当時発表されたオレゴンの初期作品が、今聴いても全然違和感がなく、輝きを失っていないのは、驚異的なことであると断言できる。ラルフの12弦ギターはバックながらも、切れ味の良いフレーズや合間に入れる鋭いパッセージで、しっかり目立っている。バンド演奏のフェイドアウト後、またアコギの独奏に戻って終わる。2.「Ann Arbor」は、カントリー調のアコギの独奏から現代音楽、クラシック風に発展し、バックが加わって急速調の賑やかな演奏となる。間奏におけるコードの早弾きによるソロは圧巻だ。ラリーが持つ音楽性の広さが出た作品。3.「Pavane For A Dead Princess」は、フランスの印象派クラシック音楽の作曲家ラベルの作品で、邦題は「亡き王女のためのパヴァーヌ」。この曲はラリーの独奏でオレゴンの連中は参加していない。 4.「Improvisation On Robert De Visee's Salabande」も初めはラリーのアコギの独奏。ここではバンドがフィルインした後もアコギを弾いている。スローなバックでソロを弾くラリーのプレイは強いタッチでありながら、同時に繊細さも持ち合わせ、本作の中でも一番の出来だと思う。この曲を聴いていると、彼が後年アコギ中心のプレイに移行していった理由が分かる。5.「Song For Jim Webb」は、作曲家のジム・ウェッブに捧げた曲だろう。彼はフィフス・ディメンションの「Up, Up And Away (ビートでジャンプ)」、グレン・キャンベルの「Wichita Lineman」、「By The Time I Get To Phoenix」、アート・ガーファンクルの「All I Know」など、芸術性の高いヒット曲を書いた人だ。彼独特のコード進行を取り入れたポップな雰囲気のこの曲は、このアルバムの中では異色の存在。6.「Julie La Belle」もラリーの独奏で始まり、クラシック調、現代音楽、バックが加わったブルージーな演奏、最後はラルフのアルペジオをバックにしたソロと、目まぐるしく曲調が変わる不思議な曲。最後の曲7.「The Restful Mind」はオレゴンは非参加であるが、瞑想的なアルペジオがとても印象的な曲だ。 時代の波に洗われて色褪せてしまった感もあるが、オレゴンとラリー・コリエルという面白い顔合わせの作品。 [2007年3月作成] |
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