O11 Roots In The Sky  (1979)  Elektra


O11 Roots In The Sky

Paul McCandless: Oboe, English Horn, Bass Clarinet, Wooden Flute
Glen Moore: Bass
Ralph Towner: Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, French Horn, Trumpet
Collin Walcott: Sitar, Hammer Dulcimer, Tabla, Kalimba, Percussion, Esraj

[Side A]
1. June Bug [Towner] 3:55 D31 
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion)
2. Vessel [Towner] 7:42  R12
 (Bass Clarinet, Piano, Bass, Percussion)
3. Sierra Leone [Walcott] 4:00
 (Wooden Flute, French Horn, Karimba, Percussion)
4. Ogden Road [Towner] 6:25 R2
 (Oboe, French Horn, Trumpet, 12st. Guitar, Piano, Bass, Tabla, Percussion)

[Side B]

5. House Of Wax [Walcott] 4:31

 (Bass Clarinet, Flute, Sitar, Esraj, Piano)
6. Hungry Heart [McCandless] 5:30
 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Tabla)
7. Orrington's Escape [Towner] 0:49
 (Oboe, C. Guitar,Bass Bass, Tabla)
8. Roots In The Sky [Moore] 4:20
 (Bass Clarinet, Trumpet, 12st. Guitar, Sitar, Bass, Percussion)
9. Longing, So Long [Walcott] 6:49
 (Oboe, 12st. Guitar, Hammer Dulcimer, Bass, Tabla, Percussion)

Produced By Oregon
Recorded December 1978 at Longview Farms, North Brookfield, Massachusetts, April 1978 at Columbia Recording Studios, New York


オレゴン中期の名盤だと思う。クラシックを思わせる緻密なアレンジと、自由奔放なインプロヴィゼイションの絶妙なバランスが最高で、創造的なパワーに溢れ、年齢的・体力的にも油が乗ったメンバーのやる気に満ちている。ピーンと張り詰めた冷たさを感じるリアルな音を特徴とするECMとも異なる、エレクトラの何処か暖かみを感じる録音がとてもよいのだ。パーカッションの音の抜け方、12弦ギターの透明感などに奥行きが感じられ、それがサウンドに「間」をもたらしている。表紙の絵はハンナ・ケイのリトグラフ。彼女はイスラエル生まれで、ニューヨーク、シドニーで活躍した女流画家。シューレアルな木を描くのがスタイルだったようだ。

1.「June Bug」はラルフのギターがパーカシブな効果をもたらし、コリンのパーカッションの多重録音と相まってにぎやか。でもメロディーやアレンジは自体はラテンっぽくなく、クラシック的なのが面白い。ソロはオーボエのみ。2.「Vessel」はラルフの作品としては新しい傾向のもので、彼流ファンキー・サウンド系と命名するところかな。今までの真面目一辺倒ではなく、少しユーモアが感じられる、余裕たっぷりの演奏で新境地を開いた。コリン・ウォルコットが叩く Udu Drum(陶器の水壷に共鳴用の穴を開けたナイジェリアの打楽器)の響きがユニーク。「Udu」は英語で「Vessel」という意味で、曲名の由来もここにあるようだ。ポールのバス・クラリネットの低音が飄々としていて、曲に独特の持ち味を付加している。ラルフのピアノもいいが、ここではグレンのベースが素晴らしい。バックで音の間に切り込む短いフレーズもさることながら、ソロパートにおける奇想天外な音選びにはぶっとんでしまう。よくまあこんなスリリングな演奏ができるものだ。3.「Sierra Leone」のイントロは木笛とフレンチ・ホルンの牧歌的な雰囲気で、コリンのカリンバが入り、多重録音によるパーカッションの共演になる。アフリカ的なリズムなのに、黒っぽさがなく繊細で現代音楽風であるのが面白い。4.「Ogden Road」はラルフのアルバム「Diary」1974 R2 の再演だが、ここではメンバーの演奏楽器を総動員して、壮大なシンフォニーに仕上げられている。ピアノ、12弦ギターからスタートし、リズムセクションが加わり、テーマが進むにつれ、音の厚みがどんどん増してゆく。楽器が重なっても音が濁らず、クリーンなサウンドを保っているのは録音のうまさだろう。オーボエ、12弦ギターのソロの後に、フレンチホルンの多重録音によるファンファーレが鳴り響き、後半はベースによる印象的なリフが入り、急速調でエキサイティングなピアノソロが展開される。そして演奏楽器が減って音の厚みが引き潮のようになくなりブレイク、エンディングでテーマが再提示され静かに終わる。ラルフの作曲・編曲能力がフルに発揮された傑作である。

5.「House Of Wax」はコリンの作になる、ミステリアスな雰囲気の曲。ピアノとベースによるスローなリフにシタールが音をからめてゆく。遠くで弓弾きのエスラジャの音が聞こえる。フルートの演奏はポールとグレンのどっちかな?本作では曲毎のパーソナルはおろか、各人の演奏楽器の表示もないのが残念だ。6.「Hungry Heart」はポール好みのストレートなメロディーによるアップテンポの曲で、コード進行が美しい。そのためかここでのラルフのプレイは素晴らしく、切れ味の良い早いパッセージを連発し、歴代の12弦ギターによるソロのベストといえよう。何度聴きいても、頭のなかがアドレナリンでいっぱいになってしまう。7. 「Orrington's Escape」は不思議な雰囲気の不協和音を使用したファンキー風小品。8.「Roots In The Sky」はタイトル曲になるだけの価値がある作品で、その存在感は圧倒的だ。グレンお得意の強烈なベースのリフが中心にすえられ、少しシニカルでダークなユーモアが感じられるエキセントリックなムード。バス・クラリネット、トランペット、シタールが強力なバックを提供する。9.「Longing So Long」はコリンの曲。雅楽っぽいフルートの独奏から始まり、コリンのタブラが入る。明るく前向きな雰囲気で最後の曲にぴったりだ。ここでもラルフの12弦ギターの演奏が光っており、エンディングの残り火のような、線香花火のようなキラキラしたアルペジオが印象的。コリンによるダルシマーがフェイドアウトした後もしばらく余韻が残る。

ラルフの12弦ギターが多くフィチャーされ、各人の演奏レベルも高い。よい曲がそろっており、アレンジ・構成も繊細かつ丁寧。何度聴いても飽きない。オレゴンのなかでは一番の愛聴盤であり、多くの人にお勧めしたい作品だ。


 
O12 In Perfomance  (1980)  Elektra



Paul McCandless: Oboe, Bass Clarinet, Wooden Flute
Glen Moore: Bass, Piano (4), Violin
Ralph Towner: Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano
Collin Walcott: Sitar, Tabla, Karimba, Percussion

[Side A]
1. Buzz Box [Oregon] 10:43
 (Oboe, Wooden Flute, Piano, 12st. Guitar, Violin, Bass, Karimba, Percussion)
2. Along The Way [Towner] 6:45  O23 R6
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion)

[Side B]
3. Wanderlust [McCandless] 7:36

 (Oboe, Piano, Bass, Tabla, Percussion)
4. Deer Path [Moore] 6:05  O4
 (Oboe, Sitar, 12st. Guitar, Piano)
5. Waterwheel [Towner] 6:54  O9 O16 O23 R7
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion)

[Side C]

6. Drum Solo [Walcott] 4:37

 (Tabla, Percussion)
7. Arion [Towner] 11:06  R6
 (Oboe, Piano, Bass, Percussion)

[Side D]
8. Free Piece [Oregon] 9:22
 (Oboe, Bass Clarinet, French Horn, Wooden Flute, C. Guitar, Violin, Piano, Bass, Tabla, Percussion)
9. Icarus [Towner] 6:03  O16 O23 R2 R3 R25 D4 D7
 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Tabla)


Produced By Oregon
Recorded November 24, 1979 at Carnegie Hall, New York City,  November 29, 1979 at Saint Foy University, Quebec City, Quebec, Canada, November 30, 1979 at Outremont Theatre, Montreal, Quebec, Canada    


オレゴン2枚目のライブ盤で、レコード2枚組で発売された。ニューヨークのカーネギー・ホール、およびケベック州2ヶ所の3つのステージから収録されたもの。以前タウナーのソロアルバムでのみ発表されていた曲や、ポール・ウィンター・コンソート在籍時に発表され、オレゴンでの録音がなかった名曲「Icarus」が収録されている。ジャケット表紙写真はカーネギー・ホールでの撮影と思われる。

1.「Buzz Box」が始まる前のアナウンスはフランス語であり、カナダ・ケベック州での録音であることがわかる。コリンのカリンバのリフから始まり、グレンの演奏と思われる現代音楽風のバイオリン、ポールの木笛が加わる。ラルフは最初は12弦ギター、途中からはミュートしたピアノを演奏する。単一スケールによるフリーでシンプルな演奏が延々と繰り返される。後半はラルフのピアノのリフとコリンのパーカッションをバックに、オーボエとベースが活躍する。2.「Along The Way」はラルフのソロアルバム「Sound And Shadows」1977 R6に入っていた曲で、ギターの独奏から始まる。2コーラス目から他の3人がフィルインして、そのままオーボエ、ギター、ベースのソロに移ってゆく。少しメランコリックな雰囲気で、とてもいい曲だと思う。バックを担当するコリンのシンバルワークが繊細。3.「Wanderlust」はポール作らしいストレートな作風の曲で、なにかを求めるようなメロディーが「放浪癖」というタイトルになったのだろう。ここではラルフのピアノが活躍するが、やはりオーボエの哀愁ある音色が印象的だ。4.「Deer Path」はコリンのシタールの独奏から始まる。ここでの演奏は通常のインド音楽風ではなく、現代音楽っぽくて面白い。独特のムードを持ったテーマの演奏はオーボエ、シタール、ピアノ、12弦ギターの合奏。間奏は、4人によるコレクティブ・インプロヴィゼイションだ。5.「Waterwheel」は「Out Of Woods」1978 O9、「Batik」 1978 R7 でおなじみの曲で、ラルフによる表題音楽の名作。やはりコリンによるタブラ、パーカッションのリズムが凄い。特にギターソロの次に展開されるコリンのタブラのソロは最高。テンポをスローダウンして終わった後の拍手がスゴイ。

C面の最初はマネージャーのジョージ・シュワルツのアナウンスで、会場がカーネギー・ホールであることがわかる。6.「Drum Solo」はコリンのタブラその他のパーカッションの独奏。リズムの緩急をつけながら、本当に細かく繊細な演奏で、途中にヴォイスも飛び出す。そしてほぼ切れ目なく 7.「Arion」が始まる。2.と同じく「Sound And Shadows」1977 R6からの曲で、ここでのラルフのタッチの強い、開放感溢れるピアノ演奏が素晴らしい。伴奏ではベースの動きが特に面白い。オーボエのソロによる中盤の盛り上がる部分、テーマに戻る前の掛け合いが大変スリリングで、ベース、シンバルワーク、ピアノの一体感に惚れ惚れしてしまう。11分を超えるエキサイティングで透明感溢れる名演。8.「Free Piece」は4人による即興演奏で、まずはコリンと他のメンバーによるパーカッションの演奏。次にブリッジ近くに紙をはさんでミュートしたギター演奏がフィルインする。ベースによる不思議な感じのリフをバックに木笛のプレイ、リズムがなくなって、邦楽のような「間」を重視した演奏となり、コレクティブ・インプロヴィゼイションに移行する。フレンチ・ホルン、ピアノが加わり、東洋的な旋律が聞こえる。タブラの演奏が始まり、12弦ギターのアルペジオが始まり、切れ目なく9.「Icarus」となる。ここで聴衆から拍手が起こる。比較的ゆっくりしたテンポでプレイされ、間奏はオーボエと12弦ギターを中心とした浮遊感に富むスペイシーなもの。意外にサッパリした演奏で、もっと劇的にしてもよかったのではないかな?さすがに終わったあとの聴衆の拍手と歓声は大きいものがある。

一部地味な演奏もあるが、オレゴンの演奏としては他に聴くことができない曲が入っており、スタジオ録音では多重録音を多用する彼らがライブでも十分演奏できることを立証。コリン・ウォルコット在籍時代の絶頂期を記録した、貴重な作品となった。


O13 Oregon  (1983)  ECM
 


Paul McCandless: Oboe, English Horn, Soprano Sax, Tin Flute, Bass Clarinet, Musette
Glen Moore: Bass, Viola, Piano (8)
Ralph Towner: Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Prophet 5 Synthesizer
Collin Walcott: Sitar, Tabla, Tongue Drum, Bass Drums, Percussion, Voices

[Side A]
1. The Rapids [Towner] 8:25  O16
 (Soprano Sax, Piano, Prohet 5, Bass, Percussion)
2. Beacon [Oregon] 2:53
 (Oboe, Viola, Prophet 5, Percussion)
3. Taos [Oregon] 6:12
 (Tin Flute, C. Guitar, Prophet 5, Bass, Tongue Drum, Percussion)
4. Beside A Brook [McCandless] 4:20
 (Oboe, English Horn, Piano, Prophet 5, Bass)

[Side B]

5. Arianna [Moore] 6:20  O23
 (Oboe, English Horn, Sitar, 12st. Guitar, Prophet 5, Bass)
6. There Was No Moon That Night [Oregon] 7:20
 (Bass Clarinet, C. Guitar, Prophet 5, Bass, Percussion)
7. Skyline [Oregon] 1:18
 (Prophet 5, Bass, Percussion)
8. Impending Bloom [Moore] 7:52
 (English Horn, Musette, Prophet 5, Piano, Bass, Bass Drum, Voices)

Produced By Manfred Eicher
Recorded Febuary 1983 at Tonstudio Bauer, Ludwigsburg

 

オレゴンのECM移籍初作品にして、初めてのデジタル録音盤。エンジニアはECMのいつもの人とは異なり、「Solo Concert」 1980 R9も担当していたMarin Wieland。発売当時、大変期待した買ったのだが、何となくいまひとつで、少しがっかりした思い出がある。演奏自体は決して悪くはないのだが、ラルフの曲が1曲しかないこと、また即興演奏的な曲が多く、収録曲の魅力に欠けている感じがする。ジャケットデザインもいつものECMの作風と異なり、意表をついたものだった。

1.「The Rapids」は本作品唯一のラルフの作品。アップテンポの明るい感じの曲で、最初から彼のシンセサイザーが活躍する。イントロはピアノで、それに続くポールの音がいつもと違うなと思ったら、ソプラノサックスだった。オーボエ、イングリッシュ・ホルンなどの木管楽器とは異なる音感だ。オレゴンで、彼がこの楽器を録音するのは初めてじゃないかな。抜けが良く金属的でシャープな音は、よりジャズ的で、以降ポールはソプラノ・サックスも多用するようになる。ラルフはシンセサイザーを使ってオーケストラのようなバックを付けているが、オレゴンのサウンドにはまだピッタシ嵌っていないような気もする。ブレイクの後にスティール・ドラムスのようなサウンドが入り、ピアノがフィルインしてテーマに戻る。電子楽器とアコースティック楽器の取り合わせの妙が楽しめる曲だ。2.「Beacon」はグループによる即興演奏。ラルフのシンセサイザーをバックに、オーボエとヴィオラがフリーなプレイを展開する。3.「Taos」はコリンのパーカッションから始まる一風変わった雰囲気の即興曲。タオスとは、ニューメキシコにあるインディアン地域の意味らしいので、アフリカというかアメリカ原住民風の音楽だ。ラルフのギターも音をミュートしてパーカッシブな効果をあげている。シンセサイザーをバックにメロディーを奏でるのはベースと、ティン・フルートだ。ティン・フルートはアイルランド音楽で使われる、金属性のシンプルな縦笛で、安いのでペニー・ホイッスルとも呼ばれる。シンプルなだけ変化に富むプレイをするのは至難の楽器だ。4. 「Beside A Brook」では、お馴染みラルフの透明感あるピアノが楽しめる。ポールの演奏するテーマのメロディーに哀愁があり、コリンのリズムなして淡々と演奏される。

5,「Arinna」はグレンの曲で、スティール・ドラムスを思わせるシンセサイザーをバックにアルコ奏法のベース、シタール、オーボエがシンプルにテーマを演奏、12弦ギターのハーモニクス等によるリズムがつき、シタール、オーボエ、12弦ギターが交互に表に出て演奏、とらえどころのない一風変わった曲。6.「There Was No Moon That Night」は即興演奏。ラルフのギターの独奏から始まり、ポールのバス・クラリネットとシンセサイザーが加わる。ベース、パーカッションが加わりコレクティブ・インプロヴィゼイションとなって、少し賑やかになる。調性・リズムのないフリーピースである。7.「Skyline」はシンセサイザーをバックにしたベースの音が主体の短い曲。8.「Impending Bloom」はブラジル風のバス・ドラムとコリンのヴォイスをバックとした、独特な雰囲気があるオレゴン風サンバ・チューン。グレン得意のひねりの効いたサウンド作りのなかに飄々としたユーモアが感じられて、何度も聞き込むと悪くない。ポールが後半演奏するチャルメラのような音は「Musette」なのだろうか?通常ミュゼットというとフランスのアコーディオンのことなんだけど。ここでもラルフのシンセサイザーがオーケストレイション、効果音と大活躍している。ちなみにこの曲には、グレン・ムーアとナンシー・キングの共演盤「Impending Bloom」1991で歌入りのバージョンがある。

いい曲はあるけど、全体的にぱっとしない感じで、残念ながらあまり聴かない作品。



  
O14 Crossing  (1985)  ECM  
 
 
Paul McCandless: Oboe, English Horn, Soprano Sax, Bass Clarinet
Glen Moore: Bass, Flute, Piano (5)
Ralph Towner: Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Prohet 5 Synthesizer, Cornet, Percussion
Collin Walcott: Sitar, Tabla, Snare Drum, Bass Drum, Percussion

[Side A]
1. Queen Of Sydney [McCandless] 8:10
 (Oboe, Flute, Piano, Synthesizer, Bass, Tabla, Percussion)
2. Pepe Linque [Moore] 4:16   O20 O26
 (Bass Clarinet, Soprano Sax, Cornet, Piano, Synthesizer, Bass, Tabla, Percussion)
3. Alpenbridge [Towner] 6:22
 (Oboe, Sitar, C. Guitar, Synthesizer, Bass)
4. Travel By Day [Walcott] 4:16
 (Sitar, 12st. Guitar, Bass)
5. Kronach Waltz [Moore] 3:00
 (Bass Clarinet, Cornet, Piano, Snare Drum, Bass Drum)

[Side B]

6. The Glide [Towner] 7:07  O25 O30

 (Soprano Sax, Cornet, Piano, Synthesizer, Bass, Tabla, Percussion)
7. Amaryllis [McCandless] 7:49
 (English Horn, Oboe, 12st. Guitar, Synthesizer, Bass, Purcussion)
8. Looking Glass Man [Towner] 4:21
 (Soprano Sax, Piano, Bass)
9. Crossing [Towner] 3:13
 (Soprano Sax, C. Guitar, Piano, Synthesizer, Bass, Percussion)

Produced By Manfred Eicher
Recorded October 1984 at Tonstudio, Ludwigsburg

 
コリン・ウォルコットは本作録音の翌月 1984年11月8日、交通事故により39歳の生涯を終えた。オレゴンのヨーロッパツアーの最中、ベルリンから西へ100キロほどにある東ドイツ(当時はドイツ統一の前だった)のマグデブルグで、メンバーが乗ったバスが停車中の車に追突、その際前部にいたコリンは、バンドの友人でロードマネージャーだったジョー・ハーティングとともに死亡、他のメンバーは後部座席にいたために無事だったという。ジャケット裏面にはメンバーによるコメントが記され、ジョー・ハーティング撮影によるコリンのスナップ写真が添えられている。その控えめな姿勢から、残されたメンバーの悲しみと鎮魂の思いがひしひしと伝わってくる。本作は残念ながらコリンの遺作となってしまった。

ポール作の1.「Queen Of Sydney」は、ループ処理と推定されるシンセサイザーのリフが延々と続くなか、オーボエ、フルートとピアノによりテーマが演奏される。パーカッションは効果音的に使われている。タブラの演奏が始まり、メンバーによるフリーなインプロヴィゼイションが展開され、突然ピアノとベースがフィルインして、ピアノソロがフィーチャーされたジャズっぽいプレイとなる。と言っても、息を潜めたような淡々とした雰囲気の曲だ。2.「Pepe Linque」はグレンによる作品で、ベースによるリフが大変生き生きとしていて素晴らしい。今までの真面目一辺倒だった作風と大きく異なり、バスクラリネット、ピアノ、シンセなど、少しファンキーで淡いユーモアも感じられる名曲だ。この後も何度か再演されることになる。3.「Alpenbridge」はギターとシタールによるリフが中心となった曲。ソロはオーボエとギター。4.「Travel By Day」はコリン作の曲で、シタールを西洋的な感覚で弾きこなしている。ラルフの12弦との掛け合いがこれで最後と思うと悲しい。そういえば1983年のコリン、ドン・チェリー、ナナ・ヴァスコンセロスの3者による作品「Codona 3」には「Travel By Night」という曲があったな〜。5.「Kronack Waltz」はグレン作曲による奇妙キテレツなワルツ。彼がピアノを弾き、バス・クラリネットとコルネットが合わせる。コリンはスネアとバスドラムを持ち、街角の救世軍のような演奏だ。メロディーも「Sunrise Sunset」(ミュージカル「屋根の上のバイオリン弾き」の主題歌)のようなマイナー調。彼の作品群のなかでも摩訶不思議系の筆頭。でもオモシロイ!

6.「The Glide」はラルフ、オレゴンの作品のなかでも最も軽快で洗練されたムードの曲。フュージョン・ジャズといえるサウンドだが、コリンのタブラの軽やかなリズムがこの曲に素晴らしい息吹を与えている。1990年代の初め、ニューヨークのライブハウスにおけるオレゴンのステージでこの曲を聴く機会があった。まずラルフがシンセサイザーでワンコーラス弾いてスイッチボタンを押し、ループ状態にしてからピアノソロを始めたのにビックリした思い出がある。シンセとコルネットによる洒落たテーマメロディー、メリハリの効いたピアノ、ソプラノサックスのソロが抜群の出来。ちなみに2005年の新作「Prime」の発売にあわせ、この曲の新録音が iTuneのダウンロードで発表された(O25参照)。またオスンラデというハウスミュージックのDJ、プロデューサーが2009年に発表した「Rebirth」というアルバムに、本アルバムにおけるこの曲の演奏がサンプリングされ、電子楽器とボーカルをミックスしたトラックが収録された。

7.「Amaryllis」はシンセサイザーと12弦ギターから始まる本作のなかでは最もオレゴンらしい曲だ。12弦のアルペジオからポールがオーボエを吹き出すと、何だかほっとする。彼の作風がよく出た緊張感溢れる直球勝負の曲。8.「Looking Glass Man」はコリン不参加の曲で、後の作品「Troika」1994 O19 を彷彿させるリズム楽器のない室内楽のようなサウンドだ。ここでもラルフはピアノを弾く。本作でのシンセサイザー、ピアノの露出度は極めて高く、ギターの音があまり印象に残らないほどだ。ここではポールのソプラノサックスが活躍する。最後の曲 9.「Crossing」は淡々とした演奏で、コリンに対するレクイエムのように響く。いままでの曲で影が薄かった分だけ、クラシック・ギターのアルペジオが心に浸み込んでくる。そしてピアノによる単音のメロディーが心に刺さる。それに寄り添うように響くソプラノサックスと、ベース。そして背景で聞こえるコリンが演奏するタンバリンの音、効果音として挿入されるパーカッションの音が、リスナーに別れを告げているようだ。特にインプロヴィゼイションもなく、余韻を残して静かに終わる。

毎回聴く都度、亡くなったコリンの事を思う。もうあれから40年近く経ってしまったこと、その間の時の移ろい、現世に残された自分が年老いてゆくという実感を覚えてしまう。私にとっては、いろいろな感慨なくしては聴けない作品である。


O15 Ecotopia  (1987)  ECM 

 
 
Paul McCandless: Oboe, English Horn, Soprano Sax, Wind Driven Syhthesizers (3,8)
Glen Moore: Bass
Ralph Towner: Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer, Drum Machine (1)
Trilok Gurtu: Tabla, Percussion

[Side A]
1. Twice Around The Sun [Ralph Towner] 10:26
 (Oboe, Piano, Synthesizer, Bass, Percussion)
2. Innocente [Ralph Towner] 6:19  R12
 (Oboe, 12st. Guitar, Synthesizer, Bass, Percussion)
3. WBAI [Oregon] 1:59
 (12st. Guitar, Synthesizer, Bass, Percussion))
4. Zephyr [Ralph Towner] 5:51  O23 R26
 (Oboe, C.Guitar, Bass, Percussion)

[Side B]
5. Ecotopia [Ralph Towner] 3:00
  
O16 O20
 (Soprano Sax, Synthesizer, Bass, Percussion)
6. Leather Cats [Samantha & Glen Moore] 7:35  O16 O20
 (Soprano Sax, Synthesizer, Bass, Percussion)
7. ReDial [Ralph Towner] 5:55  R22 D34
(Oboe, C. Guitar, Bass, Purcussion)
8. Song Of The Morrow [Collin Walcott] 5:16
 (Oboe, Synthesizerf, Bass)

Produced By Manfred Eicher

Recorded March 1987 at Tonstudio, Ludwigsburg



交通事故で亡くなったコリン・ウォルコットの後任としてトリロク・グルトゥが参加した最初の作品。事故の後、グループを続けるか否かで、ずいぶん話し合ったが、結局新メンバーを迎えて続行することになったという。彼は1951年ボンベイ生まれで、シタール奏者の父、伝統音楽の歌手の母という音楽一家に恵まれ、若い頃からヨーロッパで活動、ドン・チェリーのバンドで売りだす。コリンとは生前に親交があったようで、オレゴンへの加入も自然だったようだ。結局彼は7年間在籍することになるが、彼のパワフルなドラミング、ジャズ・フュージョン志向の強いスタイル(ラルフのインタビューによると、コリンよりも西洋的だったという)はグループの音楽性に大きな影響を与えた。1991年の作品O18を最後としてオレゴンを離れた後は、ジョン・マクラグリンのトリオの他、ジョー・ザヴィヌル、パット・メセニー、ラリー・コリエル、ピンク・フロイドのデイブ・ギルモアなどと共演、一方自己名義では、ルーツであるインド音楽を取り入れた独自の音楽を創り上げ、今やジャズ界を代表するパーカッショニストに成長した。ニューヨーク在住時、オレゴンのステージで彼の演奏を目にするチャンスがあったが、床にあぐらをかいて、ハイハットを地面に置いて演奏するスタイルが独特だった。特に打楽器を叩く際の手の動きが余りに早いため、呆気にとられたことを覚えている。

1.「Twice Around The Sun」のイントロのシンセサイザーは、新しいオレゴンのサウンドを象徴するようだ。よく聴くと、その間にポールのオーボエ(イングリッシュ・ホルン?)が寄り添っているのがわかる。テーマはリズミカルで、トリロクの叩くシンバルとハイハットの音が今までにないリズムを構成している。ポールのソロでは一時リズムが止むが、マリンバ(シンセサイザー?)の音に導かれてシンセサイザーがリズムを刻み始め、次第にハイハットとタムタムが加わり疾走感溢れる演奏となる。こんなに強靭で躍動的なリズム感覚は今までのオレゴンにはなかったもので、新鮮な響きがある。続くベースソロはシンセサイザーをバックに展開され、電子音楽がオレゴンサウンドに完全に根付いた事を証明する。ラルフのピアノソロ、トリロクのお披露目的なドラムソロが曲の持つスケールを拡げている。2.「Innocente」は陰影のあるロマンチックなテーマで、ブラジル音楽のリズムでありながら、ラルフの曲に特徴的なヨーロッパ的な匂いを感じる曲。ポール、グレン、ラルフのソロはいかにもオレゴンらしく、じっくりと浸って聴ける。ここでもシンセサイザーが背景に聞こえる。3.「WBAI」はメンバーによるフリー・インプロヴィゼイション。4.「Zephyr」は1978年にO9で共演し、翌年病死したバイオリン奏者 Zbigniew Seifertへのリクイエムと思われる。ギターのアルペジオが印象的な瞑想感あるメランコリックな曲。

5.「Ecotopia」もシンセサイザーが全面的にフィーチャーされた、パワフルなフュージョン風の曲だ。ポールに続く、ラルフのソロもシンセサイザーによるもの。トリロクのシンバル、ハイハットが曲の屋台骨を作っている。6.「Leather Cats」はグレンお得意のダークな雰囲気のベース・チューン。ベースが奏でる執拗なリフに乗って演奏されるテーマとソロはシンセとソプラノ・サックスによるもの。7. 「ReDial」は 2.と同じ雰囲気の曲で、重々しい6.の後ということもあり、シンプルで美しい音使い、爽快感は格別だ。お気に入りのようで、その後何回もレコーディングされている。8.「Song Of The Morrow」はコリン1977年のソロアルバム「Gazing Dream」に収録されていた作品で、終始前衛的なムードの曲。コリンに捧げたリクイエムだ。

再生の意気込みに溢れた躍動的な曲と、死者への弔いの念を込めたスピリチュアルな曲が錯綜している作品で、コリンがいなくなった寂しさは否めないが、メンバーの想いが伝わってくる作品だ。


  
O16 "Live" At The 1987 Freiburg Arts Festival (1988)  Proscenium Entertainment  

 

Paul McCandless : Oboe, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer 
Trirok Grutu : Tabla, Drums, Percussion

1. Yet To Be [Towner] 7:25  O6 O21
 (Oboe, Piano, Bass, Drums)
2. Ecotopia [Towner]  7:36  O15 O20
 (Sopranino Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Percussion) 
3. Waterwheel [Towner] 10:49  O9 O12 O23 R7  
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion) 
4. Icarus [Towner]  6:21  O12 O23 R2 R3 R25 D4 D7
 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Persussion)
5. The Rapids [Towner]  8:38  O13
 (Soprano Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Drums, Percussion)
6. Witch-Tai-Too [Jim Pepper]  8:50  O4 O9 O20 O24
 (Sopranino Sax, 12st. Guitar, Piano, Synthesizer, Bass, Tabla, Percussion) 
7. Free Piece [Oregon]  4:18
 (Sopranino Sax, Bass Clarinet, Whistle, Synthesizer, Violin, Bass, Percussion) 
8. Leather Cats [Moore]  4:13  O15 O20 

 (Soprano Sax, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion) 

Recorded June 28 1987 at Freiburg ,Germany


フライブルグはドイツ南部のライン川上流、スイス国境近くの都市で、本映像は同地のジャズフェスティバルに出演した時のもの。当夜の屋外ステージは大変暑かったようで、特にラルフとポールは滝のような汗を滴らせながら演奏する。一方で鉄人グレンは、普段とあまり変わりなく、暑さに慣れているインド出身のトリロクは全然平気なようだ。音楽家にとって厳しい状況のせいか、本映像は全体的にミストーンが多く、荒っぽさが目立つ。オレゴンの連中が、このパフォーマンスに満足して、本作のリリースを許可したとは思えない。ビデオ作品としての製作面でも問題がある。曲名紹介の字幕にミスがあり、彼等の代表曲といえる「Icarus」の場面で「Leather Cats」、「The Rapids」では「Icarus」と誤って表示される。一方「The Rapids」と「Leather Cats」の演奏部分では曲名が表示されず、しかも前者は箱の曲目リストにも載っていない酷さだ。おそらく当時撮影されたテレビ映像を流用し、内容についての検証を全く行わずに、そのまま商品化してしまったものと推定される。これらのミスは、オレゴンの連中が本作の制作に関わっていないことの証拠だ。以上散々悪口を言ったが、オレゴン唯一の公式販売映像であり、しかもトリロク・グルトゥ在籍時のものであるため、彼等が動く姿を良質な画像で拝めるだけでも有難いという事実は変わらない。

1.「Yet To Be」の録音は、1975年の「In Concert」O5と 1997年の「Northeast Passage」O20があり、本作はそれらの中間点にあたる時期にあたる。ラルフのエキサイティングなピアノ演奏を聴くことができるのが有難い。グレンは、本コンサートでは愛用のコルツを使わず、胴体がないエレクトリック・アップライトベースを弾いている。トリロクは、ドラムスを叩く際は椅子に座らないため、足を使った演奏はハイハットのみで、バスドラを使わないスタイルとなっているのが面白い。2.「Ecotopia」におけるシンセサイザーの伴奏パートは予めプログラミングされたもので、映像を観てわかったが、ラルフはコードが変わる小節の頭の音のみ弾いている。その上でメロディーやソロのための別のシンセやピアノを器用に弾き分けている。トリロクのドラムスがとてもパワフルだ。3.「Waterwheel」では、テーマおよびソロのパートで、汗だくになったポールのオーボエが何時になく酷いミスを犯している。ここではトリロクのタブラソロが音楽・視覚の両面でハイライトとなっている。

4.「Icarus」は、テーマの演奏が終わった所で編集処理によりプレイヤーによるソロがカットされ、ソロが終わった後のオーディエンスの拍手とエンディングのテーマ演奏に繋げられている。テレビ番組の収録時間の関係でそうなったものと推測されるが、それにしても不自然な感じになってしまい残念。それでもラルフの12弦ギターのピッキングに目が釘付けになってしまう。5.「The Rapids」はシンセサイザーを多用した曲で、ラルフはスイッチをいじりながら演奏する。途中ソプラノサックスがソロを取る部分でも、ラルフがシンセでパーカッション的な音を出している。6.「Witchi-Tai-Too」では、ラルフの12弦ギター(カッタアウェイのギルドを使用)のプレイが素晴らしい。グレンのベースソロの間、ラルフはギターを置いてピアノを演奏し始める。ゴスペルを思わせるスピリチュアルなプレイは大変聴き応えのあるものだ。ソプラノ・サックスのソロとテーマの後、途切れずに即興演奏 7.「Free Piece」に移行する。様々な種類のパーカッションを駆使するトリロクが面白く、水を浸したバケツの中にプラスチックの毬やゴング、鈴を出し入れしながら叩き、音程を変化させるような工夫も見せている。8.「Leather Cats」は、グレンお得意のベースのリフが効いた曲で、ここでもラルフのシンセサイザーが大活躍。

ラルフがシンセサイザーを多く弾いていた頃の演奏。前述のとおり、ミストーンなどの粗っぽい部分もあるが、それでも内容的には十分楽しめると思う。「Icarus」の編集部分も含めて、全く同じ演奏の音源が出回っている(「その他音源」の部参照)。私はこのビデオは、発売当時は買い逃してしまい、なかなか観ることができなかったが、20年以上経った後にやっと入手できた。機会を与えてくれた神様に感謝したい。

[2009年6月作成]

[2021年10月追記]
本映像は、近年YouTubeなどで見ることができます。

 
O17  45th Parallel  (1989)  Portrait



Paul McCandless: Oboe, English Horn, Soprano Sax, Piccolo Sax, Bass Clarinet
Glen Moore: Bass
Ralph Towner: Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer
Trilok Gurtu: Tabla, Percussion
Nancy King: Vocal (6)

1. Pagent [Ralph Towner] 6:28  O17
 (Oboe, 12st. Guitar, Piano, Synthesizer, Bass, Percussion)
2. Hand In Hand [Ralph Towner] 6:01 R25
 (12st. Guitar, Piano, Synthesizer, Bass, Percussion)
3. King Font [Ralph Towner] 5:34
 (Soporano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Percussion))
4. Riding On The D Tarin [Trilok Gurtu, Ralph Towner] 2:31  
 (C.Guitar, Tabla)
5. Beneath An Evening Sky [Ralph Towner] 5:04 O23 R8 R12 R25
 (Oboe, 12st.Guitar, Bass, Percussion)
6. Chihuahua Dreams [Samantha & Glen Moore] 5:04  
 (Vocal, 12st. Guitar, Bass, Percussion)
7. Urumchi [Paul McCandless] 4:16  
 (Oboe, Synthesizer, Bass, Voice, Percussion)
8. Les Douzilles [Ralph Towner] 7:29  O20 R13 R19 D45
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla)
9. Bombay Vice [Trilok Gurtu] 4:53  
 (Oboe, Synthesizer, Bass, Percussion)
10. Pagent (Epilogue) [Ralph Towner]1:53  O17
 (Piano)

Produced By Oregon
Recorded August, September 1988 at Portland, Oregon


ECMを離れたオレゴンは、エピックレコードの傘下にあったポートレイトから本作を発売した。このレーベルはもともとは、ロックグループのハートやシンディ・ローパー、シェイディーなどが在籍していた所で、1986年にいったん活動を停止した後にジャズのレーベルとして一時期復活していたもの。私が購入したのは、エピックの親会社であるCBSソニーから発売された日本盤だった。当時レコードに固執していた私にとって、オレゴンの作品群のなかで最初のCDとなったのは、本作からアナログ・レコードが発売されなくなったからと記憶している。

1.「Pagent」はシンセサイザーを主体とした派手なアップテンポの曲。シンセによるカラフルで細かいリズムを背景に、泳ぎまわるピアノとホーンが軽快。トリロクのパーカッションも強力だ。間奏はシンプルな和音をバックに12弦ギターとベースがソロを展開し、その自由な雰囲気は爽快感に溢れている。最後のテーマはテンポをやや落として演奏され、最後にアップテンポに戻って終わる。2.「Hand In Hand」はミディアムテンポで淡々とコードが進行する曲。ソロは12弦ギター。パーカッションはインド風だが、タブラよりも低音の楽器だ。3.「King Font」はラルフのピアノとポールのサックスが主体で、テーマのみサックスとシンセのユニゾンだ。ここでのメンバー、とりわけトリロクのプレイはオーセンティックなジャズのタッチで、いままでのオレゴンにはなかったスタイル。こういうのも、なかなかいいもんだね。4.「Riding On The D Train」はタブラをバックに、ギターがリフを刻みながらメロディーとアドリブを織り込んでゆく即興的な曲。5.「Beneath An Evening Sky」はタイトルが曲の雰囲気を良く表している。12弦ギターのリフが織り成すストイックな美しさに溢れた曲で、何度もレコーディングされているが、私はこのバージョンが一番好きだ。

6.「Chihuahua Dreams」は何とボーカル入り! ナンシー・キングはオレゴン州生まれ。学生時代にラルフ・タウナー、グレン・ムーアの音楽仲間だったそうで、グレン・ムーアと2枚の共演作を残している白人シンガー。自己名義でも数枚の作品があるが、キャリアは地味。グレン・ムーアのダークでシニカルな世界を見事に表現している。奥さんのサマンサ・ムーアによる歌詞が解説書に掲載されているが、かなり前衛的で刺激的な内容だ。間奏におけるラルフの12弦ギターのソロのグルーヴ感が凄い。7.「Urumchi」はポール作の一風変わったエキゾチックなテーマを持つ曲で、オーボエの他に、ラルフのストリング・シンセサイザー、グレンの弓弾きベースとトリロクによるヴォイス・パーカッションが面白い味を出している。8.「Les Douzilles」は、トリロクがタブラを演奏していることもあり、従来のオレゴン・サウンドに最も近い感じで、聴いていてほっとする。ラルフのソロの切れ味はさすがだ。この曲には愛着があるようで、ラルフは1997年のR19で、独奏版まで披露している。9.「Bombay Vice」はトリロクの作品。当時オンエアされていた人気TV番組「マイアミ・バイス」のパロディーだろう。彼がグループに完全に溶け込んでいることを証明する曲で、パワフルなパーカッションとシンセサイザーによるロック色強い曲で、サウンド的にはウェザー・レポートに近い。ポールのインプロヴィゼイションも素晴らしく、オレゴンの作品群では異色の存在。最後の10.「Pagent (Epilogue)」は1.のエピローグとしてラルフのピアノソロによる演奏。その清々しさはなんとも良い後味を残してこの作品を終える。

オレゴンの諸作品のなかでも最もパワーを秘めた逸品だ。ポートレイトからの作品はこれひとつで、比較的すぐに廃盤となり、ちょっと入手しにくいのが残念。