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Ludwigsburger Jazztage (1990) [Oregon] 音源 |
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Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass
Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer
Trilok Grutu : Tabla, Drums, Percussion
[1st Set]
1. June Bug [Towner] 14:02
(Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion)
2. King Font [Towner] 6:11
(Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums)
3. Opening (Improvisation) [Oregon] 12:46
(Whistle, Bass Clarinet, Soprano Sax, Synthesizer, Bass, Percussion)
4. Pepe Linque [Glen Moore] 5:31
(Soprano Sax, Bass Clarinet, Synthesizer, Piano, Bass, Drums)
5. Hand In Hand [Towner] 6:28
(Bass Clarinet, Oboe, 12st. Guitar, Piano, Synthesizer, Bass, Percussion)
6. Janet [Towner] 4:21
(C. Guitar)
7. Ecotopia [Towner] 8:00
(Soprano Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Percussion, Drums)
[2nd Set]
8. Les Douzilles [Towner] 8:41
(Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion)
9. Witchi Tai To [Jim Pepper] 9:54
(English Horn, Soprano Sax, 12st. Guitar, Piano, Synthesizer, Bass, Percussion,
Tabla, Drums)
10. Yet To Be [Towner] 7:05
(Oboe, Soprano Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Drums)
11. Opening II (Improvisation) [Oregon] 11:02
(Whistle, Bass Clarinet, Oboe, Synthesizer, Bass, Percussion, Voice)
12. Waterwheel [Towner] 12:18
(Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla)
13. Leather Cats [Glen Moore] 15:17
(Soprano Sax, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion)
[Uncore]
14. Paschas Love [Unknown] 8:00
(Whistle, Soprano Sax, Synthesizer, Bass, Percussion, Voice)
15. Silence Of A Candle [Towner] 5:06
(English Horn, C. Guitar, Bass, Percussion)
写真: CD・配信 「Treffpunkt Jazz Oregon Ludwigsburg」表紙
注: CDでは 1〜8がCD1、9〜15がCD2に収録
Recorded at Forum, Ludwigsburg, Nov 27, 1990
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ドイツ南部、フランスとスイスの国境に近い町ルードヴィスブルグで毎年11月に開催されるジャズ・フェスティバル 1990年の音源。1.「June
Bug」のみ、ドイツで発売されたオムニバスCDで1993年に公式発売されている(D31を参照ください)。2010年頃に1〜10の音源を聴くことができ記事を作成したが、2024年フルセットと思われる1〜15を収録したCDが発売され配信もされたので、全面的に書き直すことにした。
CDのタイトルにある「Treffpunkt」とは、ドイツ語で「集合場所」、「中心地」という意味。著作権表示にある「SWR」は南西ドイツ放送のことで、シュトゥットガルトに本拠地を置く公共放送局。この事から本音源が放送用に録音されたものであることがわかる。ただしSWRは、1998年にバーデン=ヴェルテンヴェルク州のSDRとラインハルト=プファルツ州のSWFが統合したものなので、本音源録音時の1990年は、ルードヴィヒブルグが属していた前者SDRによる録音ということになる。音質最高のサウンドボード録音かつフルセットという完璧な内容。
1.「June Bug」は、スタジオ録音「Roots In The Sky」1979 O11に比べるとテンポがとても速く、めまぐるしい感じがする。それにしても、よくこんなに早く弾けますね〜。オーボエのソロのバックで聞こえるベースは、スタジオ録音や他のライブとは全く異なるリフで演奏されており、それがこの音源をユニークなものにしている。トリロク・グルトゥのタブラ、パーカッション・ソロが物凄く、本当に一人で叩いてるとは信じ難い。彼のリズム感の強靭さがよく表れていると思う。以前聴いた音源では、ここでポールの曲紹介が入り、「(この曲は)年ごとにどんどん速くなる」と言っていたが、CD・配信版ではカットされている。2.「King
Font」は、本音源のなかでは最もオ−センティックなジャズ演奏。テーマ部分でラルフは、右手でシンセサイザー、左手でピアノを弾いている。ここでのトリロクのドラムスはパワフルだ。3.「Opening」(コンサートの始めに演奏するインプロヴィゼイション。アップテンポのリズムに乗せたスリリングなプレイで、シンセサイザの使い方は大胆。メドレーでベースの独奏になり
4.「Pepe Linque」に移ってゆく。5.「Hand In Hand」は、テーマ演奏の部分でラルフが派手に間違えているのが面白い。その分シンセサイザーのプログラミングをバックにした12弦ギターのソロは気合が入っている。この後のポールのアナウンスは、CD・配信版ではカットされている。6.「Janet」はラルフのソロ。7.「Ecotopia」は当時得意としていたレパートリーで、シンセサイザーが前面に出たきらびやかなサウンド。ポールのサックスソロには、スペイシーな広がりがある。この後ポールによるメンバー紹介と休憩のアナウンスがあるが、CD・配信版ではカット。
セカンド・セット最初の曲 8.「Les Douzilles」は、ラルフがサンバ風のリズムを刻んでいる。常連曲 9.「Witchi Tai To」で、メンバーは楽器を持ち替えて演奏、ピアノ独奏の後の後半では、シンセサイザーとサックスで大いに盛り上がる。10.「Yet
To Be」は最初に聴いた音源で 4.「Pepe Linque」の後に入っていたが、CD・配信版では10曲目に配置されている。もかなり早いテンポでの演奏で、ポールはテーマではオーボエを吹いているが、ソロの部分ではソプラノ・サックスに持ち替えている。ベースソロの部分では、トリロクのリズムがいったん止まり、しばらく後に再び加わる構成。この音源では、ラルフのソロがいつものピアノではなく、シンセサイザーで行われているのが珍しい。それにしてもアグレッシブなプレイだ。
ここから今回のCD・配信版で初めて聴く曲になる。11.「Opening II」とCD・配信版は曲名をつけているが、オレゴンがコンサートまたはセットの冒頭に行う即興演奏に付けるタイトルなので、そういう意味でこの曲名は正しくない。何らかの規律(リズム)がある場合は「Improvisation」、自由なプレイの場合は「Free
Piece」とすべきであるが、ここはCD・配信の名前に従った。ホイッスルとパーカッションの対話から始まり、シンセとバスクラが加わってカラフルな色彩を帯びる。トリロクがヴォイス・パーカッションを入れ、カリンバのようなシンセをバックにオーボエとシンセが舞うようなプレイ。リズムが止まってフリーになって終わる。12.「Waterwheel」はトリロクのタブラ・ソロがハイライト。グレンのベース独奏から始まる13.「Leather
Cats」は、テーマ演奏に入る所でオーディエンスから拍手が起きる。ベースのリフに乗ったシンセイザーの派手なプレイ、それに絡むドラムスの演奏も面白い。
アンコールの14.「Paschas Love」は、カリブ調のメロディー、リズムによる曲で、これまでの公式・非公式音源になかったもの。敢えて言えばラルフがゲイリー・バートンと共演したアルバム「Slide
Show」1986 R12の「The Donkey Jamboree」の雰囲気に近く、おそらくラルフの作曲だろう。トリロクの超早口によるヴォイス・パ-カッション・ソロが圧倒的で、オーディエンスも熱狂的に反応する。最後は15.「Silence
Of A Candle」で厳かに終わる。
ラルフが、シンセサイザーをかなり大胆に使用していた頃のライブで、フルセットかつ高音質で聴けるのは貴重。
[2024年3月 内容書き直し]
過去のオレゴンのコンサート音源が発掘され、CDなどで発売された場合は 「オレゴンの作品」コーナーに掲載していましたが、音源録音時の年に遡るためRef.
Noを入れ替える必要があり、かなり大変な作業になります。今後この手の発売が増えることが予想されるため、本ケースの場合は「その他 映像・音源(オレゴン)」の部に掲載することにします。
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Glassboro State College (1991) [Oregon] 音源 |
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Paul McCandless : Oboe, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer
Jaimie Haddad : Drums, Percussion
[Set 1]
1. June Bug [Towner] 11:33
(Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion)
2. King Font [Towner] 6:17
(Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums)
3. Opening [Oregon] 11:50
(Bass Clarinet, Soprano Sax, Whistle, Synthesizer, Piano, Bass, Drums,
Percussion)
4. Beppo [Towner] 8:28
(Bass Clarinet, Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums)
5. Hand In Hand [Towner] 6:52
(Bass Clarinet, Oboe, 12st. Guitar, Piano, Synthesizer, Bass, Percussion)
6. Big Fat Orange [Walcott] 3:23
(Bass)
7. Ecotopia [Towner] 7:35
(Sopranino Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Drums)
[Set 2]
8. Guitarra Picante [Towner] 6:33
(Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums)
9. Witchi - Tai - To [Jim Pepper] 10:03
(English Horn, Sopranino Sax, 12st. Guitar, Synthesizer, Bass, Drums,
Percussion)
10. The Glide [Towner] 7:40
(Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums)
11. Janet [Towner] 4:40
(C. Guitar)
12. Leather Cats [Moore] 13:35
(Soprano Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Drums, Percussion)
13. Aurora [Towner] 5:22
(Oboe, Piano, Bass, Drums, Percussion)
Recorded at Glassboro State College, Glassboro, New Jersy, Apr19, 1991
注: 6.はラルフ非参加
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ニュージャージー州グラスボロー郡は、ペンシルヴァニア州フィラデルフィアの南に位置し、コンサート会場のグラスボロー・ステート・カレッジは、その後1992年の組織改編により、現在はローワン大学という名前になっている。本音源の資料を見て驚いたのは、打楽器奏者がジェイミー・ハダッドという名前になっていたこと。当時はトリロク・グルトゥがメンバーだった時期(彼の脱退は1993年後半)でもあり、オレゴン、ラルフ・タウナーに関するいかなる資料にも彼の記録はなく、今回(2022年1月の執筆時)初耳だったからだ。ポール・マッキャンドレスのホームページにおける演奏記録から、この人は、おそらく4月初旬〜下旬のアメリカ国内ツアーに参加したものと推定した。ちなみに同年9月のヨーロッパ・ツアーは、トリオ編成またはトリロクが参加した音源が残っている。当時彼は、ジョン・マクラグリン等他のミュージシャンとの仕事が多くなっていた時期で、オレゴンのスケジュールに合わせることができなかったのだろう。4月のジェイミー・ハダッドの参加が、一時的な代役としてだったのか、それともメンバー交代を想定した試用期間だったのか、真相は不明。
ジェイミー・ハダッド(1952- )はレバノン系のアメリカ人で、ジャズ・ドラム以外に中近東、インドや中南米の打楽器の素養もあるハンド・ドラムの名手。本音源の後は、ポール・ウィンター、デイブ・リーマンのグループに在籍し、2000年代以降はポール・サイモンやエスペランサ・スポールディング等のバックを務め、現在は音楽学校で後進の指導にあたっている。個人的には2007年のポール・サイモンを讃える「The
Liberty Of Congress Gershwin Prize For Popular Music」で、ドラムスのスティーヴ・ガッドと一緒にパーカッションを演奏していた様が印象深い。
サウンドボード録音で音の分離は良いが、インターネット配信特有の雑音が少し聞こえるのが残念。年を経る毎に早くなると紹介される 1.「June Bug」では、オーボエ、クラギ・ソロの後で、パーカッションのソロを聴くことができる。「Roots
In The Sky」1979 O11に収録された「Vessel」のなかで、コリン・ウォルコットが叩いていたアフリカのドラムのような面白い音で、奏者の個性がはっきり出ている。2.「King
Font」でジェイミーが叩くドラムは、マーク・ウォーカーのプレイよりパワフルな感じ。3.「Opening」は即興演奏であるが、ポールが「Opening
という曲です」と紹介している。ここでも様々な打楽器を駆使するジェイミーとラルフのシンセサイザーとの絡みが聴きもの。ほぼ切れ間なく続く 4.「Beppo」の曲の後で、ラルフはこの曲名は3才の時に飼っていた犬のことで、列車に轢かれてしまったというエピソードを紹介している。6.「Big
Fat Orange」はポールの紹介では「Introduction By Glen Moore」とあり、資料でも「Introduction Improvisation」とあるが、最初の部分は即興っぽいけど、途中からは
「Always, Never, And Forever」 1991 O18に収録された「Big Fat Orange」の旋律が出てくる。それにしても本音源でのベースの録音は素晴らしい。切れ目なしにラルフのピアノのイントロが入り始まる7.「Ecotopia」は、ソプラニーノを吹きまくるポールのプレイが凄い。ジェイミーのドラムスの乗りが、トリロクやマークと異なることが良く分かる。
9.「Witchi-Tai-To」はテンポ早めで、12弦とベースの演奏がとてもリズミカルだ。特に12弦の切れ味が最高で、ジェイミーのハンド・ドラムの妙技も楽しめる快演。10.「The Glide」あたりになってくると感じるのが、マーク・ウォーカーとオレゴンとの相性がいかに良かったかという事実だ。本音源でのジェイミーは、短期間の参加という慣れない演奏の割にはかなり頑張っていると思うが、繊細さ・柔軟さ・しなやかさの面ではマークのほうが優っていると思う。11.「Janet」は、愛らしいラルフの独奏。ここでラルフがメンバー紹介で「Jamie Haddad」と言っているが、淡々と名前を述べるだけ。カットされているかもしれないが、今回聞いた音源には、彼の名前以外のコメントはなかった。12.「Leather Cats」は、エフェクトを効かせたベース独奏のイントロがかっこいい。ジェイミーのドラム・ソロもあるぞ。ヘビーでダークなプレイの後に演奏されるアンコール曲 13.「Aurora」は、一転して透明感に満ちた演奏。
トリロク・グルトゥでもマーク・ウォーカーでもない打楽器奏者が参加した、いつもと異なるグルーヴが楽しめる貴重な音源。
[2022年2月作成]
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Willisau Jazz Festival (1991) [Oregon] 音源 |
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Paul McCandless : Oboe, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer
Trilok Grutu : Tabla, Drums, Percussion
1. June Bug [Towner] 11:46
(Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion)
2. King Font [Towner] 6:59
(Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums)
3. Improvisation [Oregon] 9:30
(Whistle, Bass Clarinet, Sopranino Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Percussion)
4. Ecotopia [Towner] 6:28
(Sopranino Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Drums)
5. Hand In Hand [Towner] 7:22
(Bass Clarinet, Oboe, 12st. Guitar, Piano, Synthesizer, Bass, Percussion)
6. Big Fat Orange [Walcott] 5:01
(Bass)
7. Yet To Be [Towner] 6:59
(Oboe, Soprano Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Drums)
8. Janet [Towner] 4:27
(C. Guitar)
9. Leather Cats [Moore] 12:16
(Soprano Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Drums, Percussion)
Recorded at Festhalle, Willsau, Switzerland, September 1, 1991
注: 6.はラルフ非参加
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ヴィルゾウは、スイスの中心部にある人口約8千人の古い街で、1970年より毎年9月初めに開催されるジャズ・フェスティバルが名物になっている。1991年9月1日、オレゴンはジョー・スコフィールド・バンドとの2本建でメイン会場であるフェスティバル・ホールに出演、その模様が地元のFMラジオ局から放送された。
演奏は1.「June Bug」から飛ばし気味で、2.「King Font」も早いテンポのプレイ。シンセサイザーを多用したパワフルな3.「Improvisation」から、切れ目なく4.「Ecotopia」に移ってゆく。5.「Hand
In Hand」におけるラルフの12弦ギターのソロは何時になく饒舌で、絶好調だ。グレンの独奏によるコリン・ウォルコット作の6.「Big Fat
Orange」のイントロは、サウンド・エフェクトを使用してシンセサイザーのような音を出している。凄まじいテンポで演奏される7.「Yet To
Be」のラルフのピアノソロも完璧で、興奮したオーディエンスが大きな拍手と声援で応えている。ラルフが独奏による 8.「Janet」の後、9.「Leather
Cats」で大いに盛り上がる。拍手と最後のメンバー紹介を背景に、アナウンサーの語りが入って番組は終了する。
ジャズ・フェスティバル特有の高揚感があり、オレゴンの連中の張りきった演奏を高音質で楽しむことができる。
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Internationale Jazzfestival Viersen (1991) [Oregon] 音源 |
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Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass
Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer
1. King Font [Towner] 6:39
(Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass)
2. Improvisaion [Oregon] 9:18
(Bass Clarinet, Soprano Sax, Synthesizer, Piano, Bass)
3. Yet To Be [Towner] 7:07
(Oboe, Piano, Bass)
4. Hand In Hand [Towner] 7:10
(Bass Clarinet, Oboe, 12st. Guitar, Piano, Synthesizer, Bass, Percussion)
5. Big Fat Orange [Walcott] 3:50
(Bass)
6. June Bug [Towner] 10:38
(Oboe, Piano, Bass)
6. Janet [Towner] 5:47
(C. Guitar)
7. Free Piece [Oregon] 7:20
(Whistle, English Horn, C. Guitar, Synthesizer, Bass)
8. Ecotopia [Towner] 7:57
(Soprano Sax, Synthesizer, Piano, Bass)
Recorded September 21 1991, Festhalle, Internationale Jazzfestival. Viersen,
Germany
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フィアゼンは、ノルトライン・ヴェストファーレン州デュッセルドルフの西に位置する町で、1969年から毎年秋にジャズ・フェスティバルが開催されている。本音源は、トリロク・グルトゥ抜きの3人による演奏。オレゴンにおけるトリロク最後の演奏は1993年で、それ以降しばらくの間オレゴンはトリオでの演奏となったが、1991〜1992年についても、トリロクがヤン・ガルバレクやジョン・マグラフリンとの共演など、グループとは別の活動をしていたため、その間についても彼抜きとなったようだ。
1.「King Font」のドラムス無しの演奏を聞くと、この人達のリズム感の凄さは、打楽器が無くても平気なんだなと納得してしまう。シンバル、ハイハットの無いスペースだらけの演奏は、真っ白なキャンバスを背景に残して書いた絵画のようで、それなりにユニーク、かつ室内楽的な響きが新鮮。ラルフのピアノ、シンセサイザー演奏が、よりはっきり聴き取れる。2.「Improvisation」(資料では「Queen
Of Sydney」とされているが、誤り)は、シンセサイザーとサウンドエフェクトを効かせたベースに、ポールのバスクラリネットが絡む。途中からラルフがシンセでパーカッションのようなリズムを入れている。ピアノが入り、ベースとの対話の後にメドレーで
3.「Yet To Be」に入る。この曲のような疾走感がある曲を打楽器無しで演奏するなんて本当に大胆だ!いつものプレイとは、全く異なる雰囲気になっていて、新しい世界が広がっていると言っても過言でないほどだ。ラルフのピアノがいつもよりリズムカルな伴奏をしているのがわかる。ポールのオーボエ、グレンのベースに続く、ラルフのピアノソロはいつも通りスリリングで、聴く者の心を熱くさせるエネルギーに満ちている。それにしてもクリアーで力強いタッチで、彼のピアノプレイの魅力満開。ソロが終わるとオーディエンスから拍手と歓声が起きる。4.「Hand
In Hand」は、曲が持つ透明感が一層強調されている。プログラミングされたシンセをバックに演奏される12弦ギターのソロは、綺麗な音で録音されており、その繊細な響きはとても気持ちが良い。
5.「Big Fat Orange」は、オレゴンのアルバム「Always, Never, And Forever」1991 O18にも収められたグレンのベースによる独奏曲。コリン本人によるこの曲の生前の公式発表はないようだ。少しユーモラスなメロディーが、どちらかというとグレンの作風に近い感じがする。6.「June
Bug」も、ブラジル音楽風のリズミカルな曲を敢えて3人で演っていて、リズムが効いた部分と静かな牧歌的な趣の部分が入れ替わり、カラフルなプレイになっている。グレンのソロはエフェクトをかけた弓弾きでシンセのような音を出している。曲が終わった後のオーディエンスの歓声が大きく、ドイツでの人気の高さを物語っている。6.「Janet」は、当時ラルフが好んで演奏していた美しいギターソロ曲。7.「Free
Piece」は、ブリッジに紙をはさんでミュートさせたギターによるパーカッシブなサウンドをバックに、ポールのホイッスルがアフリカ風なソロを展開する。途中で楽器が変わり、イングリッシュ・ホルンとシンセにベースが絡むクラシックの現代音楽のような曲想になる。短いピアノの独奏が入り、そのまま8.「Ecotopia」に突入する。この録音では、プログラミングされたシンセの音が控えめなため、ラルフのピアノがより強調され、打楽器が入らない演奏をより静謐なものにしており、それがとても面白い感じを生み出している。
お馴染みの曲のドラムス、パーカッションなしの演奏の妙味が味わえる。こうも違うもんなんですね〜 !
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Umea, Sweden (1993) [Oregon] 音源 |
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Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass
Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer
Trilok Grutu : Tabla, Drums, Percussion
1. Waterwheel [Towner] 13:36
(Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion)
2. Beppo [Towner] 10:12
(Bass Clarinet, Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion)
3. Free Piece [Oregon] 9:02
(Whistle, Bass Clarinet, Oboe, Synthesizer, Bass, Percussion)
4. Hand In Hand [Towner] 7:34
(Bass Clarinet, Oboe, 12st. Guitar, Piano, Synthesizer, Bass, Percussion)
5. King Font [Towner] 6:10
(Soprano Saxc, Synthesizer, Piano, Bass, Drums)
6. The Silence Of A Candle [Towner] 6:51
(English Horn, C. Guitar, Bass, Percussion, Tabla)
7. Leather Cats [Moore] 5:53
(Soprano Sax, Synthesizer, Bass, Percussion)
Recorded June 9 1993, Umea, Sweden
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トリロク・グルトゥがオレゴンを離れる少し前の音源。この頃のトリロクは、ジョン・マクラグリンとのトリオ活動を始めていたため、知名度が大いにアップした時期だった。そういう意味で、彼のプレイは、「コリン・ウォルコットの代役」というレッテルを完全に克服した自信が感じられる。ウメオは、ストックホルムの北約400キロ、ボスニア海に面した人口8万人の小さな町で、1968年から毎年、著名アーティストを招いてジャズ・フェスティバルを開催している。
トリロクは、1.「Waterwheel」の始まりではパーカッション、途中からタブラを演奏する。ギターソロに続くタブラの独奏は、よくここまで細かな音を刻めるものだ驚嘆するほど繊細なプレイだ。2.「Beppo」は当時のライブでの定番曲で、ラルフのソロは、よく弾き込まれた感がある。3.「Free
Piece」は、エフェクトを効かせたベースとバスクラリネットの重低音をバックに、シンセサイザーが積極的に音を入れる。そのうちに12弦ギターとピアノが入り、メドレーで4.「Hand
In Hand」に移る。テーマはラルフのピアノと、エレクトリック・ピアノ風のシンセをバックに、ベースとバスクラリネットがテーマを演奏する。12弦ギターのソロではプログラミングによるシンセの音がバックに聴こえる。5.「King
Font」は、スタジオ録音よりもテンポが速めで、本音源では最もジャズらしい演奏だ。ラルフは、6.「Silence Of A Candle」では、クラシック・ギターを弾いている。グレンのメロディックなベースソロもいい感じ。最後の曲として7.「Leather
Cats」が演奏されるが、ラジオの放送時間の関係か、ソプラノサックスのソロの部分でフェイドアウトしてしまう。
録音も良く、当時のオレゴンの演奏をたっぷり楽しめる。
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International Jazz Festival Munster (1993) [Oregon] 音源 |
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Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass
Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer
Trilok Grutu : Tabla, Drums, Percussion
1. Waterwheel [Towner] 14:08
(Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion)
2. Mariella [Towner] 10:53
(Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums)
3. Nightfall [Towner] 15:49
(Sopranino Sax, 12st. Guitar, Bass, Percussion)
4. Free Piece [Oregon] 12:30
(Whistle, Bass Clarinet, Oboe, Synthesizer, Bass, Persussion)
5. Ecotopia [Towner] 7:32
(Sopranino Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Drums)
6. Beppo [Towner] 9:44
(Bass Clarinet, Soiprano Sax, C. Guitar, Bass, Tabla, Drums)
7. Balatho [Grutu] 17:22
(Soprano Sax, Whistle, Synthesizer, Piano, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion,
Voice)
8. Hand In Hand [Towner] 7:10
(Bass Clarinet, Oboe, 12st. Guitar, Piano, Synthesizer, Bass, Percussion)
Recorded June 26 1993, Munster, Germany
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ミュンスターはドイツ中西部ノルトライン・ゼストファーレン州にある都市。同市では1979年からジャズ・フェスティバルが開催されており、本音源は1993年のもの。オレゴン・ファンには有名なシュトゥットガルト・ジャズ・フェスティバルの4日前のステージなので、内容はほぼ同じで、サウンドボード録音によるきれいな音で楽しめる。1.「Waterwheel」は、30日の音源・映像にはない曲で、トリロクによるタブラの超人プレイ(「的」という言葉はここでは全く不要)に圧倒される。続くメドレーは、資料では「Apology Nicaragua」、「Rainland」と表示されるが、4.「Free Piece」、5.「Ectopia」が正しい。後者でもトリロクのパワフルなドラムスが全開。ハイライトは 7.「Balatho」で、トリロクのパーカッション、ヴォイス、ドラムスがこれでもかと押し寄せてくる。アンコールで演奏されたものらしい 8.「Hand In Hand」は、本音源のなかでは珍しく、落ち着いた感のある演奏だ。
内容的にはシュトゥットガルト・ジャズ・フェスティバルと重複するため、説明を省いたが、シュトゥットガルトにはない曲もあるし、演奏のレベルが非常に高い(トリロクが浮いている感があるが)ので、十分な価値がある音源だ。
[2016年3月作成]
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Stuttgart Jazz Gipfel (1993) [Oregon] 音源 & 映像 |
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Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass
Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer
Trilok Grutu : Tabla, Drums, Percussion
1. Mariella [Towner] 9:12
(Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums)
2. Nightfall [Towner] 11:27
(Sopranino Sax, 12st. Guitar, Bass, Percussion)
3. Beppo [Towner] 7:11
(Bass Clarinet, Soiprano Sax, C. Guitar, Bass, Tabla, Drums)
4. Free Piece [Oregon] 9:14
(Whistle, Bass Clarinet, Oboe, Synthesizer, Bass, Persussion)
5. Balatho [Grutu] 13:33
(Soprano Sax, Whistle, Synthesizer, Piano, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion,
Voice)
6. The Silence Of A Candle [Towner] 7:06
(English Horn, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion)
Recorded June 30 1993, Stuttgart, Germany
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ドイツ南西部の都市シュトゥットガルトでのジャズ・フェスティバル(「Gipfel」はドイツ語で「頂点、頂上」という意味)に出演したもので、1993年6月に
3Satというドイツのサテライト・チャンネルで放送されたものらしい。トリロク・グルトゥがオレゴンを離れる少し前の映像で、彼がメンバーだった時期のオレゴンのライブ演奏は、公式アルバムが発表されなかったため映像・音源ともに大変貴重なものだ。
1.「Mariella」は、1994年のオレゴンによる公式録音「Troika」O19はトリロク脱退後のトリオでの演奏になるので、彼のドラムス入りの演奏を聴けるのは本当に有り難い。彼は椅子に座らず、片膝をついてドラムセットに向かうため、左足でハイハットを動かすことはできるが、通常のドラマーのように右足でバスドラを叩くことができない。しかしそのハンディは両手の素早い動きでカバーされ、全く遜色はない。この曲ではシンバルワークを多用したジャズ的なプレイで終始しており、オレゴンの演奏に繊細かつパワフルなアクセントを加えている。ラルフのピアノもビル・エバンスをモダンにした感じのプレイで、オレゴンのレパートリーの中で最もオーセンティックなジャズ曲だ。2.「Nightfall」では、ラルフ・タウナーの12弦ギターの演奏風景を観ることができる。ソロはソプラニーノ・サックスとギター。特にリフを刻みながらインプロヴァイズするラルフのプレイはとてもクール!
右手でシェイカーを振りながら、左手でドラムを叩くトリロクは本当にタフ。「ラルフが昔飼っていた犬の曲です」と紹介される 3.「Beppo」は、ベース、バス・クラリネット、クラギの順番でソロが回る。それにしてもグレンが持つ1715年製のコルツ・ベースは、塗装が剥げ落ちていて一見してボロボロ。特にラルフのギターソロが快調で、奔放かつ躍動的だ。ここではトリロクのタブラ演奏を見ることが出来る。4.は画面には「Apology
Nicaragua」と表示されるが、オレゴンがコンサートで最低1曲は演奏する「Free Piece」が正しい。イントロでのグレンの弓弾きプレイは、サウンド・エフェクトが施され、シンセサイザーのような音だ。各人がいろんな楽器を持ち替えて演奏するが、トリロクが毬のようなものや小さなゴングを叩きながら、水を入れたバケツの中に入れたり出したりして音程を変える工夫が視覚的にとても面白かった。5.「Balatho」(映像では「Punch」と表示されるが間違い)は、トリロクのショーケース・チューン。ビュービュー唸る風の音が出る仕掛けや、ジューイッシュ・ハープみたいなものを弾きこなし、マイクを付けてヴォイス・パーカッションを披露する。ラルフはクラギのブリッジ付近に紙を巻き、パーカッシブな音で伴奏を付ける。テーマはピアノ、ソプラノサックス、ベース、ドラムスによるストレートな演奏。その後のトリロクのヴォイス・パーカッションのソロは、圧倒的な早口とリズム感が超人的。その後はミュート・ギター、ドラムソロを経てテーマに戻り終わる
13分超の大作となった。ラルフのギターに汗が滴り落ちる様が生々しい。最後は、6.「The Silence Of A Candle」で静かに終わる。イングリッシュホルンの低めで落ち着いた音、メロディックなベースソロが美しい。ラルフはクラシック・ギターを弾き、トリロクはタブラを叩きながら、時々指でシンバルを鳴らす。
全体を通して、各ミュージシャンの調子がすこぶる良く、集中力・緊張感に溢れ、パワフルでいながら繊細なオレゴン・サウンドの醍醐味をたっぷり味わうことができる、お勧め音源・映像。
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Debrecen, Hungary (1993) [Oregon] 映像 |
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Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Sopranino Sax
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer
Trilok Grutu : Tabla, Drums, Percussion
1. June Bug [Towner] 13:18
(Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion)
2. Mariella [Towner] 9:20
(Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums)
3. Witch Tai To [Jim Pepper] 12:34
(English Horn, Sopranino Sax, 12st. Guitar, Bass, Tabla, Percussion)
4. Aurora [Towner] 8:37
(Oboe, Piano, Synthesizer, Bass, Tabla, Persussion)
Recorded July 4 1993, Debrecen, Hungary
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ハンガリーのブタペストを本拠地とする衛星テレビ Duna TVが製作・放映した映像で、資料によると1993年7月4日、ハンガリー第2の都市デブレツェンでのコンサートを収録したもの。番組は、ラルフとトリロクに対するインタビューから始まるが、彼等の答えに現地語の吹き替えが被さっているので、残念ながら何を話しているのか解らない。
ストットガルトでのライブ映像についても言えることであるが、ここではトリロク・グルトゥの成長が顕著。彼がコリン・ウォルコットの後継者としてオレゴンに加入した1987年と比べて、自信に溢れた力強いプレイを展開している。オレゴンでの活動と並行して1988年から始めたジョン・マクラフリン・トリオでの演奏の他、様々なセッションに参加して知名度を上げ、インド音楽との融合を目指したソロアルバムも高い評価を受け、本音源が収録された1993年頃には、ジャズ音楽界を代表するパーカッションとしての名声を確立したと言える。その分、コリン・ウォルコットの影であり続ける事を運命付けられたオレゴンでの演奏は、彼および他のメンバーにとっては重くなったはずで、同年をもってトリロクがオレゴンと決別するのも、避けようがない成り行きと思われる。現在のトリロクのホームページにおけるバイオグラフィーのページを観るによると、経歴面の記述でラルフまたはオレゴンに関する言及が一切ないので、彼の脱退について、いろいろあったのかもしれない。
ラルフのギターから始まる 1.「June Bug」。グレンはいつになくカラフルなシャツ、ラルフは黒地きれいな白い模様が入った綺麗なシャツを着て登場、斜め上から撮影するカメラアングルがあったり、奏者の手元のクローズアップや下から見上げるショットなど、変化に富んだ面白い撮影だ。ストットガルトに続き
2.「Mariella」を観ることができるのもうれしい。3.「Witch Tai To」は、軽快なリズムで演奏される。ラルフの顔から汗が滴り、ギターのボディーに落ちるのが見える。4.「Aurora」はテンポが早めでピアノソロもエキサイティング!
トリロク・グルトゥが暴れまわるオレゴンの演奏を楽しめる。
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Stravangar, Norway (1994) [Oregon] 音源 |
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Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Sopranino Sax
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer
Stravanger Symphonie Orchestra (7,8,9,10)
Alexsandr Dmitriev : Conductor
1. Waterwheel [Towner] 9:10
(Oboe, C. Guitar, Bass)
2. Nightfall [Towner] 11:06
(Sopranino Sax, 12st. Guitar, Bass)
3. Free Piece [Oregon] 8:32
(Whistle, Bass Clarinet, Synthesizer, Piano, Bass)
4. Charlotte's Tangle [Towner] 6:34
(Soprano Sax, C. Guitar, Synthesizer, Bass)
5. Mariella [Towner] 6:52
(Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass)
6. Witch Tai To [Jim Pepper] 8:18
(English Horn, Sopranino Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Percussion)
7. All The Mornings Bring [McCandless] 7:07
(Oboe, C. Guitar, Bass, Orchestra)
8. Free Form Piece For Orchestra And Improvisors [Towner] 13:06
(Oboe, B. Clarinet, C. Guitar, Piano, Bass, Orchestra)
9. Acis And Golatea [Towner] 9:34
(Oboe, C. Guitar, Bass, Orchestra)
10. Firebat [Moore] 11:09
(Oboe, B. Clarinet, C. Guitar, Bass, Orchestra)
Recorded May 25 1994, Stravanger, Norway
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トリロク・グルトゥが抜けた後、1997年までオレゴンは3人で活動を続ける。その間「Troika」1994 O19, 「Beyond Words」
1995 O20の2枚のアルバムを発表している。本音源は、私の知る限り、トリオのライブ演奏の中で最も初期のものであり、またオーケストラとの共演という意味で貴重なものだ。スタヴァングルはノルウェー南西部にある人口約10万人の港湾都市で、漁業・造船と北海油田が主な産業だ。第1部がトリオによる演奏、第2部が地元のオーケストラとの共演で、その一部が地元のFMラジオで放送されたもの。そのため、音質はとても良い。
コンサートは2部構成だったようで、最初はトリオでの演奏。1.「Waterweel」はリズムがない分、「間」を生かした演奏で、グレンの弓弾きソロが光っている。2.「Nightfall」の12弦ギターのリフは、スティール弦の鋭角的な音が切れ味抜群で、リズム楽器がない事を逆手にとったようなプレイだ。3.「Free Piece」では、シンセサイザーがパーカッションのような音を出している。4.「Charlotte's Tangle」のテーマ演奏では、ラルフが少しとちっている。
第2部の冒頭で、地元の司会者がノルウェー語で長いアナウンスをするが、その中に「アレクサンドル・ディミトリフ」という名前が出てくるので、スタヴァングル・シンフォニー・オーケストラの記録と照合して、彼が本コンサートの指揮者であることは間違いないだろう。オレゴンは2000年にチャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラと共演した「Oregon In Moscow」を発表しており、本コンサートはアルバム制作 6年前の演奏であるが、オーケストレイションはほぼ同内容。彼らは、アルバム収録まで長い時間をかけて、自分達の曲のオーケストラアレンジを少しづつ書き溜めたという。オーケストラとの共演は、通常の営利目的のコンサートでは費用面で難しく、本音源のような放送目的や特別イベントで、スポンサーが着いたケースに限って行われたものだろう。
7.「All The Mornings Bring」は、クラシカルな雰囲気が強いポールの曲。テーマ部分のオーケストラはほぼ同じ演奏であるが、ラルフのギターのみが異なりジャズっているのは流石。ソロはオーボエとギターの順番。スタジオ版ではオーケストラによるブリッジの後マークのパーカッション・ソロになるが、ここではグレンのベースの独奏が入る。8.「Free
Form Piece For Orchestra And Improvisors」の紹介で、「オーケストラは、指揮者がラルフが予め書いた断片を任意につなぎ合わせることで
"インプロヴァイズ"する」とポールは説明している。スタジオ版と比べてみると、確かにオーケストラの演奏は、断片的には同じでありながら、異なっている。また、ここでのラルフピアノとギターの持ち替え順が異なっており、オレゴンの連中は自由に演奏しているようだ。この曲のアイデアの面白さは、聴き比べてみて初めてわかる!9.「Acis
And Golatea」は、オーケストラのイントロが異なっていて、後で書き直したのだろう。10.「Firebat」は、オーケストラによるテーマの後は、ドラムスの独奏に続いてオーボエのソロが入るが、ここではギターとベースをバックしにたオーボエソロになっており、ドラムスがない分かなり違った雰囲気だ。この曲では、ソロイストの独奏が入るが、特にポールのバスクラ、グレンのベースのインパクトが凄い。最後のオーケストラのテーマ演奏は圧倒的で、グレンのダークな雰囲気を得意とする作風が見事に発揮されている。
珍しいオーケストラとの共演によるコンサートで、スタジオ版との比較が面白い音源。
[2017年12月作成]
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Symphony Space, New York, NY (1994) [Oregon] 音源 |
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Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Sopranino Sax
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer
Glen Valez : Percussion (5,6,7,8)
1. Waterwheel [Towner] 8:26
(Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion) 2. Nightfall [Towner] 11:28
(Sopranino Sax, 12st. Guitar, Bass, Percussion)
3. Mariella [Towner] 7:15
(Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums)
4. Charlotte's Tangle [Towner] 5:05
(Soprano Sax, C. Guitar, Synthesizer, Bass)
5. Free Piece [Oregon] 7:54
(Whistle, Bass Clarinet, Oboe, Synthesizer, Bass, Persussion)
6. Witch Tai To [Jim Pepper] 9:11
(English Horn, Sopranino Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Percussion)
7. Pepe Linque [Moore] 5:26
(Bass Clarinet, Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion)
8. Ecotopia [Towner] 7:19 (Sopranino Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Percussions)
Recorded May 26 1994, Symphony Space, New York, NY
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シンフォニー・スペースは、マンハッタンのアッパーイーストにある席数760の多目的ホール。5月26日のオレゴンのステージは、メキシコ系アメリカ人の打楽器奏者グレン・ベレス(1946-
)との共演となった。彼は、フレイム・ドラム(片面太鼓)の名手で、アイルランド、ブラジル、アラブ、アフリカ等各地の楽器奏法を学び、それらを融合させて独自のスタイルを確立した人だ。ポール・ウィンター・コンソート、スティーブ・ライヒやパット・メセニー等の作品に参加し、オレゴンとはグレン・ムーアと親交があったらしい。本音源は良質のサウンドボード録音で、5.〜8.を除きニューヨークのFMラジオ放送局WNYCの番組「New
Sounds Live Concert」で放送された。番組中のインタビューで、彼らはノルウェーのオーケストラとのコンサートを行った後に帰国したばかりと言っている。また「どうしてそんなに長く、飽きずに一緒にいれるのか」という質問にたいし、ラルフが「目がとても悪いからだよ」と答えて笑わせている。1.〜3.は打楽器奏者のいないトリオ演奏でのお馴染みのレパートリー。4.「Charlotte's Tangle」は、同年発表されたアルバム「Troika」O19に収められていた室内楽的な曲で、本曲のライブ音源は珍しい。
グレン・ベレスがゲスト参加する5.以降は放送音源ではなく、マスターテープからのものらしく、出回ってる音源が司会者のアナウンスとインタビュー付きの1.〜4.と、それらがない1.〜8.の2通りあることが、事実を物語っている。ちなみに彼のソロ演奏によるコンサート前半の音源も残っているそうだ(私は聴いたことはないけど.........)。彼は楽器を素手で打っており、シンバルやハイハットを使用しないため、オレゴンの他の打楽器奏者と異なるスタイルとなっている。5.「Free
Piece」ではその味がフルに生かされ、オレゴンの即興演奏のなかでは個性的な出来となった。切れ目なく演奏される6.「Witch Tai To」や7.「Pepe
Linque」においても、いつもと違うグルーヴ感が面白い。一方 8.「Ecotopia」は、コンピューターのプリセットによるリズムとグレン・ベレスの打楽器が合わず、曲が本来持ってるピュアな響きが阻害されており、この曲にはドラムスとシンパルが合っていることを再確認させられる。
トリオ時代の打楽器奏者との共演音源として一聴の価値あり。
[2017年11月作成]
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Osher Marin Jewish Community Center, San Rafael (1994) [Oregon] 音源 |
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Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Sopranino Sax
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer
Nancy King : Vocal (8,9,10)
1. June Bug [Towner] 9:26
(Oboe, C. Guitar, Bass)
2. Nightfall [Towner] 11:39
(Soprano Sax, 12st. Guitar, Bass)
3. Mariella [Towner] 9:27
(Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass)
4. Free Piece [Oregon] 7:52
(Oboe, Bass Clarinet, Whsitle, Synthesizer, Bass)
5. Ecotopia [Towner] 7:35
(Sopranino Sax, Piano, Synthesizer, Bass)
6. Janet [Towner] 5:43
(C. Guitar)
7. Hand In Hand [Towner] 6:20
(Bass Clarinet, 12st. Guitar, Piano, Synthesizer, Bass)
8. Little Bronco (Pepi Linque) [Samamtha Moore, Glen Moore] 6:21
(Vocal, Soprano Sax, Bass Clarinet, Piano, Synthesizer, Bass)
9. Silence Of The Candle [Towner] 4:13
(Vocal, C. Guitar)
10. Witch Tai To [Jim Pepper] 9:09
(Vocal, English Horn, Sopranino Sax, Piano, Synthesizer, Bass)
Recorded July 23 1994, Osher Marin Jewish Community Center, San Rafael,
California
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オシェ・マリン・ジューイッシュ・コミュニティ・センターは、サンフランシスコの北ノースベイのマリン・カウンティにあるユダヤ人の会員制クラブ(NPO)で、プール、フットネス、イベントホール、アートギャラリー等の施設があり、コンサート、講演会、子供向けサマーキャンプなどの各種文化イベントが開催されているそうだ。本音源は、当時3人編成で活動していたオレゴンにゲストが加わることで、特別な音源となった。
1.「June Bug」は、本来はタブラやパーカッションが大活躍する曲なんだけど、3人のみでも全然へっちゃらなのが凄い。特にオーボエのソロが終わると、クラギとベースのデュオ状態になるんだけど、演奏の合間にぽっかり空く間を逆手にとって生かすような対応が巧みだ。その傾向は
2.「Nightfall」で一層顕著で、12弦ギターの透明感あるアコースティック・サウンドが素晴らしい。抑え目のプレイが効果的であるが、最後のテーマ部分で、ラルフがちょっとだけとちっているのが微笑ましい。新曲と紹介される3.「Mariella」は、ポールのソプラノサックスのアドリブはエンディングのみで、その分ラルフの伸び伸びしたピアノ演奏が楽しめる。ポールが「Opening」と紹介している
4.「Free Piece」は、コンサート序盤に演奏する即興曲。ラルフのシンセがパーカッションのような音を出している。シンセの音の位置が左右微妙に変化しており、しっかりミキシングを施したサウンドボード録音であることがわかる。演奏はメドレーで5.「Ecotopia」になる。6.「Janet」は、ラルフによるクラシック・ギターの独奏。7.「Hand
In Hand」は、プログラミングによるシンセの和音をバックにラルフが12弦でソロをとっている。ベース、バス・クラリネット、シンセのアンサンブルによるオーケストラサウンドがカッコよく、特にベースの重低音の役割の大きさがよくわかる。
ここでポールが2日後のサンタ・クルーズでのライブと、彼が8月27日にキーボード奏者のスペンサー・ブリュワーと共演する予定をアナウンスし、ゲストのナンシー・キングを紹介する。彼女はオレゴン生まれ・育ちで、学生時代からグレン・ムーアと親交があったらしい。1970年代は子育てをしながら地元オレゴンで音楽活動を展開していたが、その時にラルフと共演していたそうだ。オレゴンのアルバム「45th
Parallele」1989 O17では、ゲストとしてグレンの曲「Chihuahua Dreams」を歌い、グレンとは「Impemding Dream」1991、「Potato
Radio」1992、「Cliff Dance」1993の3枚の共演盤を発表している。ナンシーが現れないため、オレゴンの連中からは笑い声が聞かれ、ポールはふざけて女の声色を使って彼女を呼びだしている。8.「Little
Bronco」を始める前に、ポールは原曲の「Pepe Linque」は、異なる家に別の名前で出入りする猫のこととで、グレンの奥さんが歌詞をつけて「Little
Bronco」になったと紹介する。ナンシーの歌とスキャットが入った演奏は素晴らしく、最後ははちゃめちゃな感じで終わり、メンバーは大笑い大騒ぎしている。オレゴンの演奏としてはここでしか聴けないお宝音源(グレンとの共演では前述の「Potato
Radio」に収録)。
アンコールで演奏される、9.「Silence Of The Candle」は、ラルフが初期のポール・ウィンターのアルバム「Icarus」1972
D7で、彼自身が歌っていた歌詞で、ラルフのクラギのみの伴奏で淡々と歌われる。ナンシーとラルフによるこの曲の録音が1993年にナンシー名義の「Perennial」というタイトルのアルバムで発表されたようで、私は長らくその存在を知らなかったが、2011年になってCDで再発されている
(D40参照)。最後の曲10.「Witch Tai To」も、ナンシーのハミング、スキャットが入り、一層ソウルフルに盛り上がる。ポールのソプラニーノ、ラルフのピアノソロも煽られたかのように素晴らしい出来。後半パーカッションの音が入るが、ラルフのシンセによる音だろう。
バンドとゲストの魂の連帯感を、ひしひしと感じることができる稀有な音源だ。
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Stadtgarten, Colonge (1994) [Oregon] 音源 |
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Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Sopranino Sax
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer
1. June Bug [Towner] 11:27
(Oboe, C. Guitar, Bass)
2. Nightfall [Towner] 12:37
(Soprano Sax, 12st. Guitar, Bass)
3. Mariella [Towner] 8:16
(Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass)
4. Renewal [Towner] 8:36
(Oboe, C. Guitar, Synthesizer, Bass)
5. Free Piece [Oregon] 9:47
(Oboe, Bass Clarinet, Piano, Synthesizer, Bass)
6. Ecotopia [Towner] 6:59
(Sopranino Sax, Piano, Synthesizer, Bass)
7. Alpenbridge [Towner] 7:33
(Oboe, C. Guitar, Bass)
8. The Glide [Towner] 9:16
(Soprano Sax, Piano, Bass)
9. Beppo [Towner] 8:19
(Bass Clarinet, Soprano Sax, C. Guitar, Bass)
10. Free Piece [Oregon] 12:01
(Whistle, Soprano Sax, Synthesizer, Bass)
11. Hand In Hand [Towner] 6:27
(Bass Clarinet, 12st. Guitar, Piano, Synthesizer, Bass)
12. Yet To Be [Towner] 10:25
(Oboe, Piano, Bass)
13. Witch Tai To [Jim Pepper] 10:47
(English Horn, Sopranino Sax, Whistle, 12st. Guitar, Piano, Synthesizer,
Bass)
14. Waterwheel [Towner] 8:53
(Oboe, C. Guitar, Bass)
Recorded October 14 1994, Stadtgarten, Cologne, Germany
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ケルン市内の緑地にあるスタットガルテンは、年間400以上のコンサートや会議等をこなすイベントスペースで、ここで収録されたオレゴンの音源は、残響音の少ない自然で生々しいサウンドになっている。オーディエンス録音なんだけど、非常にきれいで、狭い空間で聴く感じだ。
「オレゴン・トリオ」による演奏で、ステージアナウンスから、アルバム「Troika」1994 O19発売直前のステージだったことがわかる。当時はリズム奏者がいないことに違和感を覚えたが、2014年の今の時点で聴くと、物足りなさはなく、音の隙間を埋めるリズムがない分、室内楽的な静けさ・瞑想感があって、それなりに楽しめるのだ。メンバー3人の抜群のリズム感覚がなす技だろう。早いテンポの
1.「June Bug」から飛ばしているが、間奏部分の最初はベースの動きが大人しく、ぼっかり空いた間のなかでポールがオーボエソロを展開、後からベースランが入っていく様は、とても新鮮に響く。グレンの弓弾きによるベースソロもくっきり目立っいる。2.「Nightfall」は、ラルフの12弦ギターが冴えているが、ポールがそれ以上に切れ味鋭いソプラノ・サックスを聴かせてくれる。
3.「Mariella」は、ピアノがまき散らす泡粒のような和声が静謐さに満ち、心を落ち着かせてくれる。4.「Renewal」は、プログラミングされたシンセサイザーによる和音とパーカッションのようなリズムを背景に配しての演奏。5.「Free
Piece」は、当時シンセサイザーを多用していたラルフがカラフルで多様な音を出しており、ピアノとシンセサイザーの独奏による序曲的なパートを経て、メドレーで6.「Ecotopia」に移ってゆく。ここではプログラミングされたシンセが前面に出て、ラルフはピアノとシンセを同時に弾き分けている。ここでのポールのソプラニーノ・サックスを使用したソロが、イマジナティブで素晴らしい。
セカンド・セットは淡々とした演奏の7.「Alpenbridge」、洗練されたジャズ・テューン8.「The Glide」と続く。9.「Beppo」におけるラルフのプレイは、ソロやデュオの時よりも、より自由奔放な感じがする。2曲目の10.「Free
Piece」とメドレーで続く11.「Hand In Hand」もシンセサイザーを多用した演奏で、後者でラルフが12弦ギターでソロをとる際、背景でプログラミングによるシンセの和音がしっかり鳴っている。12.「Yet
To Be」はアップテンポの激しい曲なんだけど、リズム奏者がいなくても何のその、強靭なプレイに終始しており、ラルフの力強いプレイが聴きもの。アンコールで演奏された13.「Witchi
Tai To」で、ラルフは12弦、ピアノと楽器を持ち替え、エンディングのテーマではシンセサイザーでオーケストラのような効果を演出している。ラストは14.「Waterwheel」だ。
感覚的な印象であるが、ポール・マッキャンドレスのプレイがとても冴えていて、切れ味・メロディーともに最高。音質・各楽器のバランスともに申し分なく、オーディエンス録音としては最上レベルだと思う。
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Petofi Hall, Budapest (1994) [Oregon] 音源 |
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Paul McCandless : Oboe, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass Clarinet
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer
1. June Bug [Towner] 9:47
(Oboe, C. Guitar, Bass)
2. The Glide [Towner] 7:48
(Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass)
3. Nightfall [Towner] 13:56
(Soprano Sax, 12st. Guitar, Synthesizer, Bass)
4. Renewal [Towner] 6:54
(Oboe, C. Guitar, Synthesizer, Bass)
5. Hand In Hand [Towner] 6:24
(Bass Clarinet, 12st. Guitar, Piano, Synthesizer, Bass)
6. Alpenbridge [Towner] 7:47
(Oboe, C. Guitar, Bass)
Recorded October 30, Petofi Hakk, Budapest, Hungary
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ペトフィ・ホールはハンガリー・ブダペストにあったコンサート会場で、収容人員は4,500名。ポップ・ロック音楽の会場として使用されたが、2017年に再開発のため解体されたそうだ。
大変クリアーなサウンドボード録音で、ラルフのギターのピッキングの微妙なタッチを味わうことができる。語りやチューニング等の曲間はカットされ、演奏とオーディエンスの拍手のみのため、音楽により集中できる。ただし静かな場面では、PAのブーンというヒスノイズが少し気になるのが惜しい。各曲におけるメンバーの演奏は素晴らしく、すこぶる体調が良い状態での演奏だったと思われる。2.「The
Glide」におけるグレンのぶっ飛んだベースソロは最高。ここでは最後のテーマ演奏部分で、珍しく和音のミストーンがあるのが面白い。3.「Nightfall」でのラルフの12弦ギターは剃刀のような切れ味だ。ポールは全編にわたり冴えわたったプレイを展開している。プログラミングを駆使して、5.「Hand
In Hand」ではシンセサイザーを流して12弦ギターを弾いたり、6.「Alpenbridge」ではギターのアルペジオを背景にラルフがソロをとったりして、打楽器なしのトリオ編成に音の厚みと彩りを付け加えている。
曲目は少ないけど、録音良し、演奏良しのお勧め音源。
[2021年12月作成]
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Romans d'Isonzo (1994) [Oregon] 音源 |
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Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Sopranino Sax
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer
1. Les Douzilles [Towner] 11:16
(Oboe, C. Guitar, Bass)
2. Mariella [Towner] 9:55
(Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass)
3. Nightfall [Towner] 13:06
(Soprano Sax, 12st. Guitar, Bass)
4. Pepe Linque [Moore] 7:26
(Bass Clarinet, Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass)
5. Renewal [Towner] 7:03
(Oboe, C. Guitar, Synthesizer, Bass)
6. Free Improvisation [Oregon] 9:43
(Oboe, Bass Clarinet, Whistle, Piano, Synthesizer, Bass)
7. Ecotopia [Towner] 8:33
(Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass)
8. The Rapids [Towner] 5:11
(Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass)
9. Hand In Hand [Towner] 7:37
(Bass Clarinet, 12st. Guitar, Piano, Synthesizer, Bass)
10. Beppo [Towner] 9:38
(Bass Clarinet, C. Guitar, Bass)
11. Yet To Be [Towner] 9:28
(Oboe, Piano, Synthesizer, Bass)
12. Alpenbridge [Towner] 9:49
(Oboe, C. Guitar, Bass)
13. Witch Tai To [Jim Pepper] 12:25
(English Horn, Soprano Sax, Whistle, 12st. Guitar, Piano, Bass)
14. The Silence Of A Candle [Towner] 6:20
(Oboe, C. Guitar,Bass)
15. Icarus [Towner] 7:23
(Oboe, Piano, Bass)
Recorded November 5 1994, Romans d'Isonzo, Italy
注:ポールが吹く Soprano Sax, Sopranino Sax は区別が難しいため、ここでは一律前者で表記しました。
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ロマンス・ディゾンツォは、スベロニア国境に近いイタリア東部にあるトリエステから40キロ北西、ゴリツィアから15キロ南西に位置する小さな町。トリロク・グルトゥが抜けたオレゴンは、1993年から1996年頃まで、打楽器奏者なしの3人のみで演奏活動をしていた。その間、彼らはスタジオ録音によるアルバム
「Troika」1994 O19と、ニューヨークの教会で製作したオーバダビングなしの「Beyond Words」1995 O20 を発表している。3人によるライブ演奏は、後者のアルバムを聴くことで想像できるわけであるが、本音源で当時のコンサートの全貌をうかがい知ることができる。ドラム、パーカッション奏者がいないため、各奏者はリズムに注意しながら演奏する必要があり、プレイヤーの負担が大きいように思えるが、3人ともソロまたは少人数での演奏を数多くこなしてきた人達で、各人の楽器演奏の上手さがより際立っているといえる。またリズムを刻む音がない分、音に空間があり、その「間」を生かした演奏になっているともいえる。その室内楽的な落ち着いた響きは、疲れている時に聴くと、とても心地よく響くのだ。
1.「Les Douzilles」は、ラルフがソロでも演奏している曲なので、3人だけでも遜色のないプレイだ。本音源全般でいえることは、曲のテンポがいつもより速めなこと。リズム担当の奏者がいない場合は、そのほうが演奏しやすいのかな?少し荒っぽいが力強いプレイだ。ポールが吹かない間は、ラルフとグレンのデュオになるため、背景が省略された絵のようなストレートな感じになるのが、それなりに面白い。
2.「Mariella」を始める前に、ポールが前日はトリノ、翌日はローマでコンサートがあること、この曲名はラルフの奥さんのこととアナウンスしている。ラルフはピアノとシンセサイザーを同時に演奏する。3.「Nightfall」では、12弦ギターによるスペースを生かした演奏が効果的。4.「Pepe
Linque」では、変則チューニングによるベースプレイの妙が楽しめる。低音弦を弾きながら高音弦を爪弾く、ベースのフィンガーピッキングだ! ドラムスがなくても強靭なリズム感は変わらず、ラルフのピアノとシンセを駆使したプレイもさることながら、リズムを刻みながらソロをとるグレンが圧倒的!5.「Renewal」では、プリセットによるシンセサイザー(パーカッションの音も入る)をバックにラルフがクラシックギターを弾く。おなじみの即興演奏
6.「Free Improvisation」は、ラルフによるシンセサイザーがカラフルな音を出している。7.「Ecotopia」も、プリセットによるリズミカルなシンセサイザーの伴奏が全面的にフィーチャーされるが、以前観た映像によると、コードの変わり目にシンセの鍵盤を1回打鍵するので、そういう意味では完全なカラオケ状態ではないということですね。パーカッション風の音も入り、3人プレイによる演奏が陥る単調さを救う曲として位置付けられる。ここでファーストセットが終わるが、オーディエンスの一部は英語の意味が分らず、アンコールの拍手をする。そこでラルフが最初はドイツ語で、次にイタリア語で「休憩です」と述べているのが面白い。
8.「The Rapids」は、ピアノとシンセの同時演奏がフル回転する演奏。この時代になると、シンセの性能がかなり向上していて、奥深く透明感あふれるサウンドを聴くことができる。9.「Hand
In Hand」でラルフは、プリセットによるシンセサイザーをバックに、最初はエレキピアノで音を加え、途中から12弦ギターでソロを取り、テーマを弾く。10. 「Beppo」ではイントロと中間のソロが、ラルフによるクラギの独奏となり、その冴え渡ったプレイは、この曲の数あるライブ音源のなかでも最高だ。ラルフの調子の良さは、11.「Yet
To Be」でも続いていて、ピアノソロはグルーヴィーそのもの!少しクールな感じの 12.「Alpenbridge」の後、スピリチュアルな 13.「Witch
Tai To」が始まり、ここで展開されるポールのホウィッスルのソロは圧巻だ。ここでアンコールになり、14.「The Silence Of A
Candle」では、ラルフはクラギを弾く。オーディエンスは更にアンコールを要求し、最後に15.「Icarus」を演奏する。ここではラルフはいつもと異なり、12弦ギターでなく、終始ピアノを弾いているのが大変珍しい。
3人編成による貴重なフルセットのライブ音源だ。
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Studio 10, NDR Funkhaus, Hamburg (1996) [Oregon] 音源 |
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Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Sopranino Sax
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer
1. Waterwheel [Towner] 10:14
(Oboe, C. Guitar, Bass)
2. Take Heart [Towner] 7:26
(Soprano Sax, C. Guitar, Bass)
3. Nightfall [Towner] 12:53
(Soprano Sax, 12st. Guitar, Bass)
4. Pepe Linque [Moore] 5:59
(Bass Clarinet, Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass)
5. Claridade [Towner] 7:31
(English Horn, C. Guitar, Synthesizer, Bass)
6. Raisa Point [Towner] 12:20
(Soprano Sax, C. Guitar, Bass).
7. Yet To Be [Towner] 6:22
(Oboe, Piano, Bass)
8. Joyful Departure [Towner] 8:14
(Oboe, C. Guitar, Bass)
9. Fortune Cookie [Towner] 7:01
(Oboe, Bass Clarinet, Piano, Bass)
10. Free Piece [Oregon] 10:12
(Whistle, Bass Clarinet, Oboe, Synthesizer, Keyboards, Bass)
11. Ecotopia [Towner] 6:53
(Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass)
12. Green And Golden [Towner] 7:26
(Oboe, C. Guitar, Bass)
13. L'Assassino Che Suono [Moore] 8:35
(Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass)
14. Witch Tai To [Jim Pepper] 11:02
(English Horn, Soprano Sax, Whistle, 12st. Guitar, Piano, Synthesizer,
Bass)
15. Icarus [Towner] 5:20
(Oboe, Piano, Synthesizer, Bass)
Recorded December 11, 1996, Studio 10, NDR Funkhaus, Hamburg, Germany
注:ポールが吹く Soprano Sax, Sopranino Sax は区別が難しいため、ここでは一律前者で表記しました。
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トリロク・グルトゥが抜けた後の3人オレゴンの活動は1994年から1996年までの約3年間になるが、ポール・マッキャンドレスのサイトの「Past
Performances」によると、その間のコンサート数は多くはなかったようだ。特に1996年は11〜12月のスウェーデン、ドイツ、イタリアのツアーのみとなっている。本音源はその終盤に録音されたもので、ドイツの公共ラジオ局
NDRが放送用に録音したスタジオ・ライブなので音質最高、かつ2時間超にわたる演奏をたっぷり楽しむことができる。
1.「Waterwheel」のラルフの目まぐるしく早いピッキングを聴いていると、パーカッションがない編成での彼の負担はかなり大きく、長時間の演奏は大変だなと心配してしまうほど。途中のギターソロ独奏は、それだけで独立したソロ・ピースになり得るレベルだ。曲の終了後スタジオに招かれたオーディエンスの拍手が入る。2..「Take
Heart」は翌1997年の「Northwest Passage」O21の収録となるので、この時点では未発表。同アルバムではArto Tuncboyaciyanのパーカッションが入っっていたが、ここでの室内楽的な静けさに満ちた演奏は素晴らしい。打楽器なしでも完全に大丈夫な人達なんだね。ここでポールのアナウンスが入り、「1974年にここで最初の演奏をしました」、
「"Take Heart"は出来立てのほやほやで楽譜を見ながらです」、「次の曲"Nightfall"はラルフのソロアルバム(注
"Open Letter" 1992 R14)からの曲です。ここではピッコロ・サクソフォーンを使います」など話している。3.「Nightfall」はラルフの短い独奏からのスタート。間奏のベースと12弦ギターによる真剣勝負の掛け合いがスリリングで、ラルフがギターのボディーを叩いてリズムを打ち出すシーンもある。
5.「Claridade」は、予めプログラミングされたシンセサイザーをバックにした演奏。ホーンの音が低いのでイングリシュ・ホルンだろう。6.「Raisa
Point」は資料によるタイトルでラルフ作とのこと。これまで聴いた事がなく、インターネットで調べてがヒントも見つからなかったので、未発表曲なのかな?ラルフの短い独奏から始まり、3人によるテーマ演奏、ポールのサックスソロの後、ラルフによる長い独奏がある。グレンの弓弾きによるエフェクトを使用したシンセっぽい音が入り、ソプラノが戻ってテーマで終わる。7.「Yet
To Be」はラルフとグレンによるスローなイントロから。このような急速調の曲を打楽器のリズムなしにやるなんて凄いなあ〜。演奏の狭間に生じる「間」がとても新鮮に感じる。続く2曲は「Northwest
Passage」1997 O21からの曲で、8.「Joyful Departure」は打楽器がないほうが、むしろ良いくらいだ。グレンのベースソロ中にカリブっぽくなる所が面白いね。9.「Fortune
Cookie」はオーセンティックなジャズチューン。ここでポールが8.を「Joyous Arrival」と紹介しているのが面白い。この時点ではまだ曲名が固まっていなかったのかな?
10.「Free Piece」は恒例の即興演奏。エフェクトを効かせたベース、シンセとホイッスルから始まり、バス・クラリネットが加わり、オーボエに代わり、切れ目なく11.「Ecotopia」に繋がってゆく。12.「Green
And Golden」はもともと室内楽的な曲なので問題なし。グレン作の 13.「L'Assassino Che Suono」も「Nothwest
Passage」に収められる新曲。打楽器なしでの演奏は貴重。エンディングでポールがガーシュインの「Rhapsody In Blue」の一節を吹く場面がある。最後の曲というアナウンスで演奏される14.「Witch
Tai To」はメンバーが楽器を持ち替えての自由な演奏。12弦ギター、ベース、ホイッスル、ピアノ、ソプラノ・サックス、どの
ソロも聴きごたえ満点の素晴らしいパフォーマンスだ。アンコールは 15.「Icarus」で、ラルフがピアノを弾く珍しいバージョン。
トリオとして演奏した時期の最後にあたり、行きつくところまで行った円熟の演奏を、最高の音質でたっぷり楽しめる。
[2024年9月作成]
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Miller Theater (1999) [Oregon] 音源 |
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Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Bass Clarinet
Ralph Towner : Classical Guitar, Piano, Synthesizer
Glenn Moore : Bass
Mark Walker : Drums, Percussion
1. Yet To Be [Towner] (Fade In ) 2:55
(Oboe, Piano, Bass, Drums)
2. Joyful Departure [Towner] 9:10
(Oboe, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
3. Fortune Cookie [Towner] 5:43
(Soprano Sax, Piano, Bass, Drums)
4. Claridade [Towner] 8:05
(English Horn, C. Guitar, Synthesizer, Bass, Percussion)
5. Green And Golden [Towner] 6:36
(Oboe, C. Guitar, Bass, Drums)
6. Pepe Linque [Moore] 6:17
(Bass Clarinet, Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion)
Christpher O'Reiley : Piano
8. Acis And Galatea [Towner] 5:55
(Piano)
9. Obelon's Blessing [Towner] 3:10
(Piano)
Recorded May 20 1999, Miller Theatre, Columbia University, New York
Broadcast August 4, 1999 WNYC
Re-Broadcast August 8, 2006 WNYC
Christpher O'Reiley : Piano
10. Simulacrum [Towner] 17:20
From "The WNYC Commissions Volume One" [2002] (CD、写真)
注) 8〜10はラルフ非参加
実際の放送では、8は1と2の間、9は3と4の間の曲順となっている。
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ミラー・シアターは、マンハッタンのコロンビア大学構内にある 1988年創設、席数688のコンサートホール。ニューヨークのラジオ局WNYCは、1999年5月20日同コンサートホールでオレゴンの公開録音を行い、その模様は同年8月4日に「New
Sounds Live」という番組で放送された。私が聴いたのは、ずっと後の2006年にアーカイヴとして当時の音源を使用して放送(またはWebcast)されたものだ。
1999年当時は、アルバム「Northeast Passage」1997 O20の発表後、マーク・ウォーカーをメンバーに迎え、新たなカルテットで再スタートを切った時期にあたる。またコンサートが開かれた5月20日は、彼等がロシアに渡り「Oregon
In Moscow」O22を録音する6月の直前にあたり、番組中のインタビューのなかでも新作についての話が出てくる。1.「Yet To Be」は、アナウンサーによる導入部分の話の途中で、ラルフのピアノソロの終盤からフェイドインされ、テーマの演奏に戻って終わる。2.「Joyful
Departure」におけるラルフのクラシック・ギターはとても自然な音で録音されている。「Northeast Passage」O20に収録されたスタジオ録音では、ポールはソプラノ・サックスを吹いていたのに対し、ここではオーボエに持ち替えている(この後のライブ演奏も同様)。ホーンの楽器が異なるだけで、曲の雰囲気が変わるのが面白い。マークはインタビューで、グループ加入以前からラルフの曲やオレゴン風の音楽を演奏していたので、自然な感じで演奏できると答えている。3.「Fortune
Cookie」は、オーセンティックなムードのジャズチューンで、ラルフのピアノが張り切っている。4.「Claridade」は、ポールが吹くイングリッシュ・ホルンの暖かみのある音色が気持ち良く、プログラミングされたシンセサイザーの和音をバックにラルフがギターを奏でる。6.「Pepe
Linque」は、グレンのベースソロから始まり、ここではラルフはシンセイザーを控えめにして、ピアノ主体の演奏を繰り広げている。
本番組の特別な趣向として、クラシック・ピアニストのクリストファー・オライリーによるピアノソロ演奏がフィーチャーされる。8.「Acis And
Galatea」、9.「Obelon's Blessing」は、いずれもラルフが自作曲をピアノソロにアレンジしたもので、前者は「Oregon
In Moscow」O23、後者は「Music For Midsummer Night's Dream」1998 O22 がオレゴンによるオリジナル録音だ。クリストファー・オライリーは1956年シカゴ生まれで、現代音楽を得意とし、ラジオ番組の司会者としてクラシック音楽の若者への普及に貢献している。また彼は、ロック音楽のファンであることを公言し、レディオヘッド、エリオット・スミス、ニック・ドレイクの楽曲をアレンジし発表している。それらを収めたCDは、単なる興味本位の企画ではなく、芸術作品としてクラシックの批評家からも評価されている。そんな彼が弾く上述の2曲は、両者ともラルフの作品のなかでは情感溢れる曲で、抑制が効いた演奏が素晴らしい。
番組には収められなかったが、当日彼が演奏したラルフのピアノ曲は他にもあったことがわかった。後の2002年に発売されたCD「The WNYC Commisions
Volume One」は、WNYCの依頼により作曲された現代音楽作品集で、そこにはスティーブ・ライヒ、フィリップ・グラスといった錚々たる作家達の曲に混じって、クリストファー・オライリーの演奏によるラルフの作品「Simulacrum」が収められている。CDの解説によると、その初演は1999年5月20日のミラー・シアターとあり、このCDの録音がその時に収録されたかは不明であるが、本音源収録時に演奏されたことがわかる。10.「Simulacrum」は17分におよぶピアノソナタで、早朝の薄明かりの中、モノトーンの景色に色がつき始める際の微妙な感覚を思わせるような旋律・和声が印象的な作品。叙情的な色合いが出てきたなと思ったら、さっと無色に変わるような繊細な曲で、サラサラとした冷たい水の流れを思わせる部分もある。ということで、本コーナーはコンサート音源の特集なんだけど、特別に本CDも紹介することとした。
本音源はWNYCのホームページ内、音楽の部 「New Sounds」のアーカイヴ・コーナー、エピソード番号 1691で聴くことができる。
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