Leverkusener Jazztage, Germany (2000) [Oregon]



Paul McCandless : Oboe, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, Piano, Synthesizer 
Mark Walker : Drums, Percussion

1. Raven's Wood [Towner] 12:28
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
2. Anthem [Towner]  5:57
 (Soprano Sax, C.Guitar, Bass, Drums, Percussion) 
3. I Remember August [Towner] 12:17
 (Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums) 
4. Claridade [Towner]  7:15
 (English Horn, C. Guitar, Synthesizer, Bass, Percussion)
5. Pepe Linque [Moore]  6:29

 (Sopranino Sax, Bass Clarinet, Piano, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion)
6. Free Piece [Oregon]  9:57
 (Oboe, Whistle, Bass Clarinet, Synthesizer, Bass, Drums, Persussion)
7. The Templars [Towner]  7:40
 (Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion)
8. Joyful Departure [Towner] 10:32
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion) 
9. Green And Golden [Towner] 8:04
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion) 
10. Fortune Cookie [Towner] 7:16
 (Soprano Sax, Piano, Bass, Drums) 

Recorded November 22, 2000 at Leverkusen, Germany


レバーキューセンは、ケルンの北、デュッセルドルフとの中間に位置する町で、ここで毎年11月にジャズフェスティバルが開催される。2000年は、ヤン・ガルバレク、ジョン・マクラグリン・アンド・シャクティ、マリア・ジョアオ、ミリアム・マケバ、ディーディー・ブジッジウォーター等とともにオレゴンが出演した。サウンドボード録音で音質はバッチリ!

1.「Raven's Wood」の間奏部分では、最初抑えめだったリズムがだんだん強くなってゆくあたり、緩急の付け方が絶妙。特にベースソロの最後にリズムがフィルインする所はスリリングだ。ポールによるメンバー紹介の後、リリースされたばかりという「Oregon In Moscow」O23から2.「Anthem」が演奏される。3.「I Remeber August」のテーマ部分では、ラルフがシンセサイザーのメロディーを弾き間違えているが、清涼感溢れるジャズ・チューンだ。アンニュイなムードの 4.「Claridade」、ひょうきんな5.「Pepe Linque」と続き、6.「Improvisation」は、早いテンポで細かな音が紡がれる。7.「The Templars」は前述の新作からで、難しそうなテーマなんだけど、オーケストラなしでも遜色ない。8.「Joyful Departure」、9.「Green And Golden」といったお得意のレパートリーの後に、ラルフの歯切れのよいピアノプレイが楽しめる10.「Fortune Cookie」がハイライトとなる。

ジャズ・フェスティバルという耳の肥えたオーディエンスに対する、張り切ったプレイを存分に楽しめる。

[2022年1月追記]
ポール・マッキャンドレスのホームページの「Past Perfomance」コーナーより、日付を訂正しました。


 
Gorizia Auditorium Via Roma (2002) [Oregon] 音源
 

Paul McCandless : Oboe, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass, Violin
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer
Mark Walker : Drums, Percussion

1. Joyful Departure [Towner] 8:09
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion) 
2. Anthem [Towner]  5:52
 (Soprano Sax, C.Guitar, Bass, Drums, Percussion) 
3. I Remember August [Towner] 9:17
 (Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums) 
4. Distant Hills [Towner] 8:37
 
(English Horn, Oboe, C. Guitar, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion) 
5. Short 'n Stout [Towner] 5:14
 
(Soprano Sax, Synth Guitar, Bass, Drums)
6. Free Piece [Oregon]  11:34
 (Oboe, Bass Clarinet, Whistle, Violin, Synthesizer, Piano, Bass, Drums, Persussion)
7. The Templars [Towner] 8:15
 (Soprano Sax, Bass Clarinet, Piano, Bass, Drums)

8. The Prowler [Towner] 9:37
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums)
9. Pounce [Towner]  9:50
 (Sopranino Sax, Frame Guitar, Bass, Drums) 
10. Green And Golden [Towner] 8:21
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion) 
11. Pepe Linque [Moore]  10:31
 (Sopranino Sax, Bass Clarinet, Piano, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion)
12. Improvisation [Oregon]  7:02
 (Oboe, Whistle, Bass Clarinet, 12st. Guitar, Synthesizer, Bass, Drums, Persussion)
13. Witch-Tai-To [Jim Pepper]  9:03
 (English Horn, 12st. Guitar, Bass, Drums)

Recorded March 9, 2002 at Gorizia Auditorium Via Roma, Gorizia, Italy
 

オレゴンの公式ライブアルバム「Live At Yoshi's」O24の収録日から約半年後、スベロニア国境の近くにあるイタリアの都市ゴリツィアで行われたコンサートの音源で、ポールのアナウンスでもそのことが語られている。そのため演奏内容・曲目が似ていて、一種の別テイクを聴く楽しみに近いものがある。「Live At Yoshi's」はライブ盤発売を前提としたもので、その場合は不特定多数のリスナーが公式録音として反復して聴くことを意識して演奏するため、無難な音選びになってしまい大人しいプレイになる傾向がある。一方本音源のような通常のコンサートの場合は、ソリストはその場限りの一発勝負に出るので、チャレンジングなプレイを聞く事ができる。その点はソロに限らず、サックスソロのバックにおけるラルフのギターなど、伴奏についても当てはまるから面白い。

資料によると最初の3曲はサウンドボードではなく、オーディエンス録音とのことであるが、音質が良いのであまり気にならない。1.「Joyful Departure」のエンディング・テーマの演奏で、ラルフが派手にやらかしているが、アドリブのように弾くことで上手く胡麻化している。ポールが5.「Short 'n' Stout」と9.「Pounce」演奏前のアナウンスでラルフの新しい楽器 Frame Guitarを紹介する。なお前者ではテーマ演奏でラルフの指がもつれる部分がある。6.「Free Piece」は各メンバーがいろいろな楽器を使っており、音色だけではなかなか特定するのが難しいものもあるが、後半で聞こえる弦楽器らしい音はグレンのバイオリンじゃないかな?8.「The Prowler」は「Live At Yoshi's」にはないグレンのベースソロが入る。11.「Pepe Linque」の前、グレンのないエレクトリック・アップライト・ベース(フレットだけでボディがないシェイプのモデル)の紹介がある。

1.「Joyful Departure」、2.「Anthem」、7.「Templars」、11.「Pepe Linque」など「Live At Yoshi's」に入っていなかった曲は、ライブ盤のアウトテイクを聴いているような感じでありがたい。曲間はオーディエンスの拍手の後にフェイドアウトが入りカットされるが、ポールのアナウンスがきちっと含まれているので、コンサートの臨場感は保たれている。

良好な音質で、かつ(恐らく)フルセットを聴くことができる有難い音源。

[2024年8月追記]
当初聴いた音源は8.「The Prowler」以降のセカンドセットのみでしたが、14年後になってファーストセットも聴くことができたので書き直しました。永く生きていればいい事もあるもんですね。


Timisoara, Romania (2003) [Oregon] 音源

Paul McCandless : Oboe, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, Frame Synth Guitar, Piano, Synthesizer 
Mark Walker : Drums, Percussion

[First Set]
1. Joyful Departure [Towner] 12:47
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion, Drums)
2. Anthem [Towner]  6:13
 (Soprano Sax, Bass Clarinet, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion ) 
3. Yet To Be [Towner] 9:42
 (Oboe, Whistle, Piano, Synthesizer, Bass, Drums) 
4. Distant Hills [Towner] 9:47
 
(English Horn, Oboe, C. Guitar, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion) 
5. Pepe Linque [Moore]  9:01

 (Sopranino Sax, Bass Clarinet, Piano, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion)
6. If [Towner]  6:34
 
(Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Persussion)
7. Free Piece [Oregon]  13:17

 (Oboe, Whistle, Bass Clarinet, Synthesizer, Bass, Drums, Persussion)
8. Mountain King [Towner]  7:39
 (Soprano Sax, Syn. Guitar, Bass, Drums, Percussion)

[Second Set]
9. Dark [Towner] 10:39
 (Soprano Sax, Syn. Guitar, Bass, Percussion, Drums)
10. The Glide [Towner]  8:44
 (Soprano Sax, Piano, Bass, Drums) 
11. Green And Golden [Towner] 7:52
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion, Drums) 
12. Tammriata [Towner]  9:07
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion, Drums) 
13. L'Assassino Che Suona [Moore] 8:16
 (Sopranino Sax, Synthesizer, Bass, Drums) 
14. Pounce [Towner]  8:45
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Percussion, Drums) 
15. The Silence Of A Candle [Towner] 7:27
 (Oboe, Piano, Synthesizer, Bass, Drums) 

Recorded October 19, 2003 at "Ion Vidu" Music College's Concert Hall, Timisoara, Romania


ティミショアラは、ブカレストの北西約400キロ、ハンガリーとの国境近くにある都市で、ポールによると、今回のツアーで初めてルーマニアを訪れたとのこと。当日のコンサートの全て(あるいはほとんど全て)を収録したものと思われる。

1.「Joyful Departure」から当日のバンドの調子がとても良いことがわかる。アンサンブル、各プレイヤーのソロの気合が相乗効果となり、グループ・サウンドとしての、大きなパワーを感じることができるのだ。ラルフのギターソロに続くマークのパーカッションソロは、ドゥンベックで行われる。中近東がルーツで、コンガよりも固めの音が特徴。マークはこの打楽器をよく使用する。後半のインタープレイは、カリブ風の乗りになり、ソニー・ロリンズの「St. Thomas」のような感じだ。2.「Anthem」は、クラシック・ギター、ベース、バス・クラリネットによる重厚なアンサンブルから始まるが、ソロの部分になると一転してレゲエのリズムになる変化の妙が楽しめる。それにしても各人のプレイは、本当に活き活きしていて、「Oregon In Moscow」2000 O23のスタジオ録音版よりもずっといい出来だと思う。3.「Yet To Be」は、即興演奏風のイントロから始まり、途中からラルフのピアノがいつものフレーズを弾きだす。ポールのオーボエ、グレンのベースソロも素晴らしいが、ここでのラルフのピアノの切れ味、疾走感は最高で、近年の彼のピアノプレイのベストと言えよう。そしてマークの強靭なリズムが、この曲を根底から支えているのは明らかで、これこそ現在のオレゴン・サウンドそのものと言い切れる。また曲の合間でラルフが効果音的にシンセサイザーを入れるのが面白い。

ポールによるメンバー紹介の後、4.「Distant Hills」は、「Live At Yoshi's」2002 O24の同曲と聴き比べると面白いぞ。シンセサイザーのプログラミングで音の厚みを保ちながら、ラルフがギターソロを展開してゆく。昔のライブでは、コリン・ウォルコットがギターを弾いていたが。ここではマークはパーカッションに専念し、様々なツールを駆使し、印象的な効果音を入れている。またラルフが新しいパートを書き加えたお陰で曲い広がりができたといえる。 5.「Pepe Linque」はコンサートの常連曲であるが、ここでの出来は最高。やはり音源の録音の素晴らしさも大きな要因になるだろう。毎回大きく異なる内容のグレンのソロを聴くのもこの曲の楽しみだ。6.「If」は、コンサートの時点では未発表だった曲で、2005年のオレゴンのアルバム「Prime」O26、翌年のラルフのソロ「Time Line」R24に収録された。ここでのアレンジは既に出来上がっていたようで、公式録音のものと違いはない。7.「Free Piece」は、彼らの即興プレイとしては、かなり長い演奏時間となっていて、内容の充実ぶりがうかがえる。弓弾きのベース、シンセサイザー、バス・クラリネット、オーボエ、パーカッション、ドラムスが音を切り込んでゆき、後半はガムラン音楽風な感じになり、一定のリズムが出てきて、コレクティブ・インプロヴィゼイションの様相を呈す。オレゴンによる即興演奏の中でも出色の出来だと思う。8.「Mountain King」も6.と同じく後に発表される「Prime」の曲。モントルー・フェスティヴァルで、この曲が初演された2003年9月20日から、約1ヶ月後の演奏となる。ラルフのシンセ・ギターが大活躍するが、ここでのシンセのかけ具合は後の演奏に比べると浅めだ。この曲の祝祭曲的なイメージは第1部の最後の曲に相応しい。

第2部最初の曲 9.「Dark」もラルフのシンセ・ギターがメインの曲で、ここでは始終クールなムードで押し通している。ラルフのピアノをフィチャーした軽快なジャズ・チューン 10.「The Glide」は、迸るようなラルフのピアノ演奏の他に、グレンの太い音色のベースラン、ソロが聴きもの。後半は4人のプレイヤーによる4小節毎のソロ交換があったりして楽しい。コンサートの常連曲で、「Live At Yoshi's」2002 O25にも収められた 11.「Green And Golden」は、クラシックとジャズが見事に融合している。12.「Tammriata」も「Prime」に収録される新曲で、クラシックのエチュードを思わせるストイックなテーマが印象的であるが、ソロのパートになると、さっとジャズの魂が出てくる変わり身の早さが鮮やかだ。13.「L'Assasino Che Suona」は、ベースの独奏から始まり、グレン独特のユーモラスでシニカルな雰囲が漂うリフが必殺の曲だ。途中フリースタイルのプレイになり、最後にテーマに戻って終わる。アンコールで演奏される 14.「Pounce」は、第1部の「Moutain King」と同じ高揚感がある曲で、ラルフのシンセ・ギターが曲の色を決めている。コンサートは、「もう1曲」と言って演奏される古いレパートリー、15.「The Silence Of A Candle」で厳かに終わる。

マーク・ウォーカーが加わった新生オレゴンの音源の中でも、質量の両面でベストの逸品。ただしこの頃からラルフは、オレゴンのステージでは12弦ギターを弾かなくなったようだ。1940年生まれで、60才を過ぎて体力面を考慮したためと思われる。


 
Umea, Sweden (2003) [Oregon] 音源 
 
Paul McCandless : Oboe, Soprano Sax, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, Frame Synth Guitar, Piano 
Mark Walker : Drums, Percussion

1. Joyful Departure [Towner] 11:40
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
2. Anthem [Towner] 6:17
 (Soprano Sax, Bass Clarinet, C. Guitar, Bass, Percussion) 
3. I Remember August [Towner] 10:59
 (Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums) 
4. Distant Hills [Towner] 7:13
 
(English Horn, C. Guitar, Synthesizer, Bass, Drums) 
5. Pepe Linque [Moore]  8:13

 (Bass Clarinet, Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums)
6. Dark [Towner] 9:00
 
(Soprano Sax, Synt.Guitar, Bass, Drums)
7. If [Towner]  8:13

 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
8. Free Piece [Oregon] 9:00
 (Oboe, Whistle, Snthesizer, Bass, Drums, Percussion)
9. Pounce [Towner]  8:36
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)

収録: 2003年10月25日、Vasaplan Umea, Umea, Sweden


ウメオは、ストックホルムの北約400キロ、ボスニア海に面した人口8万人の小さな町で、1968年から毎年、著名アーティストを招いてジャズ・フェスティバルを開催している。オレゴンとしては、トリロク・グルトゥ在籍時の1993年の音源があるが、これはマーク・ウォーカーが加入した2003年のものだ。当地で放送されたFM番組は、司会者による街とジャズ・フェスティバル、そしてオレゴンについての英語のプレゼンテーションから始まる。1.「Joyful Departure」は、ラルフのクラシカル・ギターの独奏から始まる。目の前で聴いているかのような音の厚みと臨場感ある録音が最高。オーボエのソロに続き、マークのドゥンベックのみによる伴奏でギターソロが展開、マークの独奏の後、バンドはソニー・ロリンズの「St. Thomas」のようなカリビアン・ジャズ調の曲調になり、最後のテーマに戻るあたりの展開の鮮やかさが面白い。2.「Anthem」では、間奏のインプロヴィゼイション・パートでは、レゲエのリズムになる。ポールが「「Live At Yoshi's」に収録された正統的なジャズ・チューン」と紹介し、3.「I Remember August」が演奏される。ラルフは、テーマ部分およびポールのサックスソロで、右手でシンセサイザー、左手でピアノを弾いている。ラルフのソロになると、ビル・エバンス・トリオを俄然モダンにした風になる。ラルフのピアノには、音の粒がキラキラ輝くようなタッチの強さがあり、この曲ではその美しさが際立っている。4.「Distant Hills」は、初期のバージョンにパートを書き加えたもの。ラルフがギターソロをとる際は、バックでアルペジオを聞こえるので、これはシンセシザーのプログラミングがループ処理によるものだろう。ポールは珍しく、音の低いイングリッシュ・ホルンでソロを取る。

5.「Pepe Linque」は、コンサートでの定番曲。ラルフは前半はシンセイザー、後半はピアノによるソロだ。次にポールが、「モントルー・ジャズ・フェスティバルから委託を受けて、ラルフが作った曲で、タイトルはまだない」と紹介して、6.「Dark」が始まる。ラルフのフレイム・ギター(シンセサイザー・ギター)が、グループに新しいサウンドをもたらしている。7.「If」のソプラノ・サックス、ベース、ギターのインプロヴィゼイション・パートいおけるバンドのグルーブ感は聴きもの。8.「Free Piece」では、ラルフのシンセサイザーが大活躍し、様々な音を出している。途中からポールがホイッスルを吹くと、ラルフも同じような音を出して反応する。後半はマークがドラムスでリズムらしきものを入れる。9.「Pounce」も、「Live At Yoshi's」2002 O24に入っていた曲で、ラルフのフレイム・ギターをはじめ、安定したパフォーマンスを楽しめる。

「Live At Yoshi's」2002 O24と同じ雰囲気の演奏。

[2022年1月追記]
ポール・マッキャンドレスのホームページの「Past Perfomance」コーナーより、日付を訂正しました。


 
Kuumbwa Jazz Center, Santa Cruz (2004) [Oregon] 音源 
 




Paul McCandless : Oboe, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass Clarinet, English Horn, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, Frame Synth Guitar, Piano, Synthesizer 
Mark Walker : Drums, Percussion

[Early Show]
1. Joyful Departure [Towner] (13:30)
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
2. If [Towner] (8:46)
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion) 
3. Mountain King [Towner] (11:18)
 (Soprano Sax, Synth Guitar, Bass, Drums, Percussion) 
4. Open Door [Towner] (9:23)
 
(Soprano Sax, Piano, Bass, Drums, Percussion) 
5. Pepe Linque [Moore]  (8:19)

 (Sopranino Sax, Bass Clarinet, Synthesizer, Piano, Bass, Drums, Percussion)
6. Free Piece [Oregon]  (7:32)
 
(Whistle, Bass Clarinet, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion)
7. Doff [Towner]  (12:06)

 (Soprano Sax, Synth Guitar, Bass, Drums)

[Late Show]
8. Raven's Wood [Towner]  (14:36)
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
9. Castle Walk [Towner]  (10:37)
 (Sopranino Sax, Synth Guitar, Bass, Drums, Percussion)
10. Yet To Be [Towner]  (9:02)
 (Oboe, Piano, Synthesizer, Bass, Drums)
11. Distant Hills [Towner]  (6:40)
 (English Horn, Synth Guitar, Bass, Drums, Percussion)
12. L'Assassino Che Suona (The Musical Assasin) [Moore]  (7:31)
 (Soprano Sax, Synthesizer, Bass, Drums)
13. Green And Golden [Towner] (9:00)
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Drums)
14. Free Piece [Oregon] (7:24)
 (Bass Clarinet, Whistle, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion)
15. The Templars [Towner] (8:20)
 (Soprano Sax, Bass Clarinet, Piano, Bass, Drums)
16. The Glide [Towner] (10:18)
 (Soprano Sax, Piano, Bass, Drums)

Recorded October 4, 2004 at Kuumwa Jazz Center, Santa Cruz, California

 
 
クゥーンブワ・ジャズ・センターは、サンフランシスコの南に位置する海辺の町サンタ・クルーズにあるNPO。収容人員200名の小さな会場でのコンサート開催に加えて、ジャズの教育振興活動を行っており、著名アーティストによる音楽、カフェ・レストラン、音響設備、雰囲気の良さで地元の名所となっている。

本音源は、「5th Anniversary Fan Appreciation Day」と銘打ったコンサートのオーディエンス音源で、大変きれいな録音だ。コンサートは、女性スタッフの魅力的な声によるアナウンスから始まる。ラルフのギター独奏によるイントロに続く 1.「Joyful Departure」は、コンサート最初の曲に相応しい、前向きなムード一杯の演奏で、テーマとポールのソロが終わり、ラルフのギターソロに入る前の時点で、オーディエンスの大きな拍手が入るのは、これからたっぷり味わうことになる音楽への期待感の表れだろう。ギターソロの後は、マークのドゥンベックによるパーカッションソロになり、カリビアン・ジャズ風のプレイになる。たたみかけるように同じ雰囲気の曲 2.「If」が演奏される。ポールのソプラノ・サックス・ソロの抑制の効いたプレイのバックにおけるリズムセクションの躍動感が凄い。ベースソロの音色も綺麗で、各楽器のバランスも申し分なし。ポールによるアナウンスが入り、以前バンドが当地にやってきたが、コンサートの手配がされていなかった手違いがあったエピソードがユーモラスに語られる。「モントルー・ジャズ・フェスティバルで、チェンバー・オーケストラとの共演のために書かれたが、カルテットでの演奏でも十分に楽しめる」と紹介された 3.「Mountain King」は、フレイム・ギターというシンセサイザー・ギターによる演奏。普通のギターより厚みのある音で、特にコード弾きの伴奏に威力を発揮、交響曲的なサウンドメイキングに貢献している。サックスに続き展開されるドラムソロにオーディエンスは大きな拍手を贈る。「出来たばかりでタイトルがない」と紹介される 4.「Open Door」は、少しぎこちなさも感じられる位新鮮な感覚でのプレイ。5.「Pepe Linque」は、個々の楽器のバランスと分離が良い録音なので演奏の精緻さが分かり、より一層楽しめる。恒例の 6.「Free Piece」は、シンセとホイッスルを中心としたインタープレイから入り、ポールはバスクラに持ち替える。リズムが付いたコレクティブ・インプロヴィゼイションの様相を呈したり、突如止まって幽玄な雰囲気の即興演奏になるなど、変幻自在。賑やかな 7.「Doff」では、ラルフのシンセギター・ソロの切れ味が抜群。ドラムソロも入り大いに盛り上がってアーリーセットが終了する。

レイトセットは、初期の名曲「Raven's Wood」から。マークがドラムを担当するようになってから、本曲のようなブラジル音楽風の曲の出来が俄然良くなった感じがする。9.「Castle Walk」も、2005年のアルバム「Prime」O26に収録された曲なので、3,.4と同じく本コンサートの時点では未発表だったもの。シンセギターの重厚な響きに乗せて展開されるグレンの弓弾きによるソロがいいね!10.「Yet To Be」は、イントロでピアノとシンセによる独奏が入るが、その後も伴奏で時々シンセの音を入れている。11.「Distant Hills」のアルペジオの音は、プログラミングによるシンセが混じっているようで、ラルフがギターソロは、それをバックに行われる。またテーマやソロの背景に聞こえるホルンのような効果音も、プログラミンによるものだろう。こういったテクノロジーを駆使することにより、このようなオーケストラ調の曲のライブ演奏が可能になるわけだ。11.「L'Assassino Che Suona」では、音源ではよくわからないけど、グレンの独奏中に何か起こったようで、演奏が中断し皆大笑い。途中ハチャメチャの間奏を含む、辛口でダークでありながら、どこかユーモラスなムードが漂い、ラルフの曲主体のセットにおける口直し的存在となっている。その後にながれる室内楽的な 12.「Green And Golden」は、前の曲との対比が鮮やかで、すがすがしい気持ちになる。14.「Free Piece」は、その場で決まる一定のリズムやリフにまかせて、皆が思いままに音を入れてゆく。切れ目なく始まる15.「The Templars」は、クラシカルなアンサンブルによるテーマが印象的な曲で、間奏のソロの部分でもバックの演奏は、予めしっかり練られたものになっている。ラストのテーマのアンサンブルでは、バス・クラリネットも聞こえる。一転して 15.「The Glide」は、リラックスして自由な感じのジャズ・テューンだ。この曲が最後の曲だったか、他にアンコールがあったかは、不明。

素晴らしい音質で、たっぷり楽しむことができる。


Buffaro, New York (2004) [Oregon With The Buffalo Philharmonic Orchestra] 音源 
 
Paul McCandless : Oboe, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass Clarinet, English Horn, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, Frame Synth Guitar, Piano, Synthesizer 
Mark Walker : Drums, Percussion
The Buffalo Philharmonic Orchestra : Orchestra (1〜6)
Claudia Hoka: Piano (4)

[1st Set]
1. Round Robin [McCandless] 8:37
 (Oboe, Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion, Orchestra)
2. Beneath An Evening Sky [Towner] 6:45  
 (English Horn, 12st. Guitar, Bass Drums, Orchestra)
3. Montery Suite III (Mountain King) [Towner] 6:26  
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Orchestra)
4. Spanish Stairs [McCandless] 5:53  
 (English Horn, Bass Clarinet, C. Guitar, Piano, Bass, Drums, Orchestra)
5. The Templars [Towner] 9:09
 (Oboe, Piano, Bass, Drums, Tympani, Orchestra)
6. Icarus [Towner] 5:22   
 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Drums, Percussion)

[2nd Set]
7. Joyful Departure [Towner] 10:24
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
8. The Glide [Towner] 8:20
 (Soprano Sax, Piano, Bass, Drums)
9. Anthem [Towner] 7:22 
 (B. Clarinet, Soprano Sax, C. Guitar, Syhthesizer, Bass, Drums, Percussion)
10. Pepe Linque [Moore]  7:51
 (Sopranino Sax, Bass Clarinet, Synthesizer, Piano, Bass, Drums, Percussion)
11. Free Piece [Oregon]  7:29
 
(Whistle, Oboe, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion)
12. Doff [Towner]  10:42

 (Soprano Sax, Synth Guitar, Bass, Drums)
13. Green And Golden [Towner] 9:24
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Drums)

Recorded October 15, 2004 at Kleinmans Music Hall, Buffalo, New York


ニューヨーク州内陸のエリー湖のほとり、ナイアガラ滝の近くにある都市バッファローのフィルハーモニック・オーケストラが、本拠地のクレインマンス・ミュージック・ホールにゲストを招いて共演したプログラムにオレゴンが参加した音源。ファースト・セットがオーケストラとの共演、セカンド・セットはオレゴン単独の演奏という構成だ。マイク近くの観客の話し声や咳払いが時折入るオーディエンス録音であるが、バランスがとれたきれいな音で、ギターやパーカッションなどの繊細な響きもしっかり聴きとることができる。

ファースト・セットは、2000年発表の「Oregon In Moscow」O23に収録された曲がほとんどで、オーケストラのアレンジはスタジオ録音と同じであるが、この編成によるライブを聴けることは大変貴重。1.「Round Robin」は、スケールの大きなアレンジが大変魅力的で、コンサートの最初の曲に相応しくリスナーに高揚感をもたらしてくれる。2.「Beneath An Evening Sky」は、12弦ギターによるリフ、アルペジオとストリングスの調べが耽美的な美しさを醸し出している。3.「Mountain King」は、ラルフが2003年のモンタレー・ジャズ・フェスティバルのために書いた組曲のパート3で、当日はMJF チェンバー・オーケストラとヴァイブ奏者のゲイリー・バートンとの共演だったという。このオーケストラがホーンを中心としたビッグバンドなのか、ストリングスが入ったものだったかは不明であるが、「Oregon In Moscow」O23製作時には作曲されていなかった曲で、それをオケとの共演で聴けるのは、私が知る限りここだけというお宝音源なのだ。このスタジオ録音が収録されたアルバム「Prime」 O26の発表は翌2005年なので、ここではまだ曲名がなかったようで「Monterey Suite Part 3」として紹介されている。バンドの演奏はいつものライブと変わる事はないが、ストリングが背景を作ることで壮大な雰囲気の音楽となっている。

4.「Spanish Stairs」では、ポールがピアノ奏者のクラウディア・ホカを紹介する。彼女は同オーケストラのソリストとして活躍していたが、2013年自動車事故による大怪我のために引退したようだ。5.「The Templars」は、交響的なアレンジが印象的な曲で、アンサンブルと間奏ソロの対比が鮮やかな曲。6.「Icarus」では、ラルフは12弦ギターに触れずにピアノ演奏で通しており、その点「Oregon In Moscow」O23と大きく異なる内容になっているのが興味深い。なおポールはこの曲の紹介にあたり、「オーケストラ・スコアは、1970年代にシンシナティ・シンフォニーとの共演のために書いたもの」とアナウンスしている。

セカンド・セットは、いつものカルテットによる演奏。曲目はいつもの定番曲なので、個々の説明は省略するが、オケとの共演の際の緊張感から解放されたような、自由でリラックスした感じのパフォ−マンスが楽しめる。

数少ないオーケストラとの共演音源で、「Oregon In Moscow」O23に収録されていない音源、ピアノ演奏による「Icarus」など、貴重な演奏が含まれたお宝もの。

[2016年3月作成]


Preluare, Bucharest, Romania (2005) [Oregon] TV映像

Paul McCandless : Oboe, Soprano Sax, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, Frame Synth Guitar, Piano 
Mark Walker : Drums, Percussion

1. Yet To Be [Towner] (部分)
 (Oboe, Piano, Bass, Drums, Percussion)
2. Drum Solo [Walker] (部分)
 (Drums) 
3. Pepe Linque [Moore] (部分)
 (Bass Clarinet, Piano, Bass, Percussion) 
4. Improvisation [Oregon] (部分)
 
(Whistle, Synth Guitar, Bass, Percussion) 
5. Yet To Be [Towner]  (部分)

 (Oboe, Piano, Bass, Drums, Percussion)
6. Toledo [Towner]  (部分)
 
(C. Guitar, Bass, Drums)
7. The Glide [Towner]  (部分)

 (Soprano Sax, Piano, Bass, Drums)
8. If [Towner]  (部分)
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums)
9. Green And Golden [Towner]  (部分)
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)

収録: 2005年3月25日、ブカレスト、ルーマニア
放送: 2005年 TVR1「Preluare」 


オレゴンがルーマニアのブカレストでコンサートを行った際に、現地の公共テレビが製作した番組。コンサートの演奏曲すべてが、フェイドイン、フェイドアウトによる部分的なもので、そういう意味では残念であるが、メンバー全員とのインタビュー等を見ると、番組制作者のオレゴンの音楽に対する愛着と尊敬が、ひしひしと伝わってくる内容で、ドキュメンタリー番組として見る限り大変満足できる内容になっている。

番組はコリン・ウォルコットのシタールがフィーチャーされた「Witch Tai To」(アルバム「Out Of Woods」1978 O9)をバックグラウンド・ミュージックとして始まり、ブカレストの都市の映像に続いて、バンドのプロフィール、コリン・ウォルコットの死などが写真付きで語られ、コンサート会場の機材のセッティング、サウンドチェック、リハーサルの模様となる。次にオレゴンの連中がインタビュー会場のビルに到着するシーンでは、「Always, Never, And Foever」 1991 O18の「Oleander」が流れる。撮影の前のセッティングで、グレン・ムーアがドウランを塗られて顔をしかめる様が面白い。イントロとテーマ演奏のみの1.「Yet To Be」の後、インタビューが始まり、アメリカとヨーロッパのオーディエンスの違いという質問に、「ヨーロッパは、音楽の幅が広く、教養深い。一方アメリカは音楽をジャンル分けして聴く傾向がある」という。2.「Drum Solo」は何かの曲の途中と思われるが、ここではマークはスティックを使わず、両手で叩いているのが面白い。さらにグレンが、「我々はヨーロッパの人々のおかげで長続きできた。ここには演奏する場がある。アメリカのライブハウスで演奏すると、オールナイトになり、質よりも量になるが、ヨーロッパで短時間の演奏でも集中して聴いてくれる」と答えている。アメリカ人が聞いたら、気を悪くするような答えであるが、様々な音楽を融合させたオレゴンの音楽が、アメリカよりもヨーロッパで、より好まれるポイントを言い当てている。3.「Pepe Linque」は、ベースの独奏からテーマ演奏の一部でフェイドアウトする。マークは、エレクトリック・パーカッションを叩き、タブラのような音を出している。ここでラルフがオレゴンの音楽につき、「ポール・ウィンターのグループで集まった仲間が、クラシック、ジャズ、オリエンタルなど、各人の経験と嗜好を持ち寄って作り上げたものだ」と答えている。

4.「Improvisation」は、ポールのホゥイッスル、ラルフのシンセ・ギター、グレンのアルコ・ベース、マークのエレクトリック・パーカッションという編成で面白い音を出しているが、僅かな時間でカットされてしまい残念。結成後 35年も長続きした秘訣について、ポールが「お互いに忠実であると同時に、各人が他の音楽活動も行うことで、リフレッシュされること。ラルフという素晴らしい作曲家がいるので、デューク・エリントンのように新しい曲がどんどん出てきて、同じ曲を演奏して飽きることがないため」とコメントしているのが興味深い。ここで5.「Yet To Be」のピアノソロからエンディング・テーマの演奏場面となり、インプロヴィゼイションについてのインタビューの後、6.「Toledo」のラルフのギターソロのシーンになる。彼の演奏シーンが超アップで捉えられており、迫力ある映像が楽しめる。新曲を演奏するにあたり、ラルフは各楽器のスコアを予め書かず、皆でアイデアを出し合ってプレイしながら決めてゆくと説明している。グレンは、コンサートでいつものコルツベース(ボロボロのボディで有名なヴィンテージ・モデル)を弾かない理由につき、「飛行機に積み込むことができず、ミュンヘンで留め置きになっている。最近はあのように大きな機材を運ぶことが難しくなった」と答え、ボディのないアップライトベースで 7.「The Glide」のソロを弾く彼のシーンとなる。

8.「If」のテーマの後、グレンが東ヨーロッパの歴史について、よく本を読んでいると答える。戦後長らくチャウシェスク社会主義政権のもとにあったルーマニアは、1989年の革命により民主化を実現したが、その後長らく経済不振にあえぎ、2000年代になってやっと景気が上向いて、社会が安定したという背景があり、その時代の流れの中で、オレゴンが東欧諸国でコンサートを行えるようになったというわけだ。同じヨーロッパの中でも国によって違いがあるかという質問に対しては、「ドイツは最初は大変人気があったが、コンサートをやりすぎたせいか、一時人気が下降したが、最近盛り返してきた。東ヨーロッパの国は、人々が純粋で、自分達の音楽を聴いて感謝してくれる」と答えている。最後に9.「Green And Golden」のラスト、そしてコンサートが終わり、並んで挨拶して退場するシーンの後、「Witch Tai To」が再び流れて番組が終わる。

オレゴンを芸術として、メンバーをアーティストとして扱い、尊敬の念をもって製作されたテレビ番組で、彼らのファンとして、観ていて大変気持ちが良い。ドキュメンタリーとして鑑賞する限り、曲のカットはそれほど気にならない(かなり質のよいライブ映像なんだけどね!)。オレゴンのヨーロッパにおける人気と評価の高さがよくわかる番組だ。


 
Leipziger Jazztage, Leipzig (2005) [Oregon] 音源 
 
Paul McCandless : Oboe, English Horn, Bass Clarinet, Soprano Sax
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, Frame Synth Guitar, Piano, Synthesizer 
Mark Walker : Drums, Percussion


1. If [Towner] 7:58
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
2. June Bug [Towner] 13:10
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
3. An Open Door [Towner] 8:59
 
(Soprano Sax, Piano, Bass, Drums, Percussion)
4. Pepe Linque [Moore] 9:215

 
(Bass Clarinet, Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion) 
5. Distant Hills [Towner]  6:36 

 (English Horn, C. Guitar, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion)
6. Free Piece [Oregon]  7:04 
 (Oboe, Bass Clarinet, Whistle, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion)
7. Doff [Towner] 9:21
 
(Soprano Sax, Synth Guitar, Bass, Drums) 
8. Green And Golden [Towner]  8:13 

 
(Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums)

収録: 2005年10月14日 Operhaus, Leigzig 


ライプチヒはドイツ中東部ザクセン州(旧東ドイツ)にある都市で、同地では1976年からジャズ・フェスティバルが開催されている。本音源は、オレゴン2005年のステージを収録したFM放送。会場のオペラハウスの音響のせいか、最高の録音で彼らの音楽を楽しむことができる。

1.「If」の豊かな音の広がりにうっとり。ポールのソプラノサックスの艶やかな音色と、バックのギター、ベース、ドラムスの歯切れの良いリズムが最高に気持ち良い。ラルフのギターも弦を爪弾く微妙なタッチまで伝わってくる。ライブ演奏におけるこの曲の本当の素晴らしさが味わえるのだ。2.「June Bug」はいつものライブ演奏と違う感じであるが、パーカッションがタブラでなく、マーク・ウォーカーがドゥンベック、ドラムスを叩いているため。オレゴンはこの時期以降ライブで本曲を演奏しなくなるため、珍しい音源と言えよう。この曲の後でポールのアナウンスとメンバー紹介が入る。私が聴いた音源は、「Der Leipziger Oper」というタイトルになっていたが、彼の言葉で、この演奏がジャズ・フェスティバルでのものであることが分かった。3.「Open Door」におけるくっきりしたラルフのピアノの透明感に聴き惚れる。4.「Pepe Linque」では、グレンのコシのあるベース音が聴きものだ。私が聴いた音源では、ポールが5.「Distant Hills」の曲紹介をした後、唐突に拍手が入り、彼が「That's Distant Hills!」と言っているが、曲が終わった後の拍手が入っていないため、編集ミスと思われる。文字通り、演奏毎に内容が全く異なる 6.「Free Piece」は、ライブ音源の醍醐味。7.「Doff」は、コンサート終盤に相応しい華やかな演奏で、ラルフの骨太なシンセギターのソロと、マークの切れ味鋭いドラムソロが楽しめる。アンコールで演奏されたものと思われる8.「Green And Golden」は、いつ聴いても厳かな気分になる名曲。

放送音源のため、コンサートの一部のみを収録したものではあるが、録音・演奏ともに最高のお勧め品。

[2016年3月作成]

[2022年1月追記]
ポール・マッキャンドレスのホームページの「Past Perfomance」コーナーより、日付を訂正しました。


Madrid, Spain (2006) [Oregon] 音源 
 
Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Sopranino Sax
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, Frame Synth Guitar, Piano, Synthesizer 
Mark Walker : Drums, Percussion

1. If [Towner] 8:55
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
2. June Bug [Towner] 12:15
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
3. An Open Door [Towner] 10:55
 
(Soprano Sax, Piano, Bass, Drums, Percussion)
4. Free Piece [Oregon] 6:17
 (Soprano Sax, Bass Clarinet, Whistle, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion)
5. Pepe Linque [Moore] 8:55

 
(Bass Clarinet, Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion) 
6. Distant Hills [Towner]  8:22 

 (English Horn, C. Guitar, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion)
7. The Glide [Towner] 10:19
 
(Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums) 
8. Improvisation [Oregon]  10:00 

 (Oboe, Whistle, Synthesizer, Piano, Bass, Drums, Percussion)
9. Ecotopia [Towner] 7:20
 
(Soprano Sax, English Horn, Piano, Synthesizer, Bass, Drums) 
10. Green And Golden [Towner]  8:12 

 
(Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums)

収録: 2006年7月15日 Madrid, Spain

 

スペイン、マドリードにおけるコンサート音源で、オーディエンス録音と思われる。メンバーのアナウンスから、屋外での演奏であることがわかる。時々、マイクがものに当たって擦れる音が入るが、音質はクリアーで良い。ただし、当日のサウンド・セッティングに問題があったようで、時々ハウリングの音が入る。これは演奏中に使わないマイクのボリュームを落とさなかったためと思われる。

1.「If」は、ラルフのギター独奏から始まる。屋外の演奏のためか、各楽器が発する音が空間の中を自然に広がってゆく感じで、マークが叩くドゥンベックの硬質な音も綺麗にとらえられている。 2.「June Bug」では、テーマの演奏でハウリング音が入る。パーカッション、ドラムスに加えて、ベースとギターの切れ味が良い分、リズム感がより際立ち、生々しい演奏になっている。マークのソロも鮮やか。ここでポールのアナウンスが入り、マドリードの公園での演奏であることがわかる。メンバー紹介の後に演奏される 3.「An Open Door」でのラルフのピアノ演奏は、かなりリラックスした感じだ。いつもはテーマに戻って静かに終わるのに、ここでは不思議に盛り上がって、バラバラになる感じで即興演奏になってゆく。ベースの独奏の後、メドレーで 5.「Pepe Linque」が始まり、熱のこもったプレイが展開される。ベースソロも十分飛びまくっている。シンセサイザーのプログラミング機能を利用したオーケストラルな 6.「Distant Hilld」は、重厚かつクールなサウンドだ。ポールがイングルッシュ・ホルンでソロをとるのが珍しい。7.「The Glide」は、一転して軽快で明るい感じのジャズ・テューンだ。ここでグレンによる会場でのCD販売についてのアナウンスメントが入る。8.「Improvisation」は、シンセサイザーによる効果音とベースの弓弾きから始まり、一定のリズムを背景にホイッスルが主導権を取り進行してゆく。ここでもハウリングの音が入る。後半はオーボエ(またはソプラノサックス?)とシンセサイザー、ベースが入り乱れた演奏となり、ブレイクしてラルフが「Green And Golden」のイントロを弾き出す。しかしポールのオーボエがすんなりと入らず、ハウリングが起こり演奏が中断。バスクラリネットのマイクが音を拾ったためと説明される。ここで9.「Ecotopia」の演奏に移るが、音源では編集が入っているかもしれない。シンセサイザーとイングリッシュ・ホルンによるイントロから、いつものプログラミングを含むシンセ、ソプラノサックスによるテーマが始まる。クリアーな録音のおかげで、迫力満点のパフォーマンスを楽しむことができる。メンバー紹介の後、アンコールで先程中断された 10.「Green And Golden」が演奏される。ここでのラルフのクラギの音も、とてもナチュラルで良いと思う。

野外コンサートでの音の広がりが自然に捉えられている。これがオーディエンス録音だとすると、録音機材の技術進歩は驚異的といえる。


 
Birdland, Neuburg an der Donau, Germany (2006) [Oregon] ラジオ音源 
 

Paul McCandless : Oboe, Bass Clarinet, Whistle, Soprano Sax, Sopranino Sax
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, Frame Synth Guitar, Piano, Synthesizer 
Mark Walker : Drums, Percussion

[1st Set]
1. If [Towner] 6:59
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
2. Joyful Departure [Towner] 13:58
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
3. An Open Door [Towner] 8:33
 
(Soprano Sax, Bass Clarinet, Piano, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion)
4. Hoedown [Moore] 6:42 
 
(Bass, Drums, Percussion)
5. Free Piece [Oregon] 5:34
 (Whistle, Oboe, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion)

[2nd Set]
6. Green And Golden [Towner]  7:13 
 
(Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums)
7. The Glide [Towner] 10:54
 
(Soprano Sax, Piano, Bass, Drums)
8. Castle Walk [Towner] 11:16
 
(Soprano Sax, Synth. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
9. Pepe Linque [Moore] 7:36
 
(Bass Clarinet, Sopranino Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Percussion, Drums) 
10. Improvisation [Oregon] 8:30 
 
(Soprano Sax, Whistle, Synthesizer, Bass, Percussion)
11. Anthem [Towner] 5:40 

 (Soprano Sax, Bass Clarinet, C. Guitar, Bass, Percussion)

収録: 2006年7月27日 Birdland, Nueburg an der Donau, Germany
放送: 1st Set 2006年11月17日, 2nd Set 2006年12月5日


Nueburg an der Donau (ノイブルグ)は、日本語に訳すと「ドナウ川の新しい城」という意味で、アウグスブルグの北、ドナウ川沿いにある城郭都市だ。バードランドは、古い建物にあるジャズのライブハウスで、多くのジャズミュージシャンによるライブがCDで発売されている。本音源は、地元のラジオ局 BR-KLASSIK(バイエルン放送)によるもので、資料によると放送日は1st Setが 11月17日、2nd Set が12月5日とのこと。最初は2nd Setのみだったが、その数年後にやっと1st Setも聴くことができた。

1.「If」を聴くと、狭い空間での演奏による残響音がとても自然で、聴きやすく気持ちの良い音だ。ピアノの透明感、ホーンの艶、ベースのバランス、ドラムス・パーカッションの切れも良い。2.「Joyful Departure」は、途中ギターとパーカッションによるカリブ海風音楽になり、マークの独奏を挟んだ後にオーボエ、ベースも加わって陽気な演奏が続き、最後にテーマに戻る。ここでポールによる曲とメンバー紹介のアナウンスが入り、ニューアルバム「Prime」2005 O26からと 3.「Open Door」が演奏される。最後のテーマ演奏で、ラルフがシンセサイザーの音を入れるのがいつもと異なっていて、その音に導かれた短い即興演奏を経て、ベースとドラムス、パーカッションによる 4.「Hoedown」になる。グレンの紹介の後の 5.「Free Piece」でファースト・セットが終了。

セカンド・セットは 6.「Green And Golden」から。7.「The Glide」で、ラルフは何故かシンセサイザーを弾かず、ピアノだけで通している。ポールのソプラノ・サックスの調子が良く、ラルフのピアノも頑張っていて、快演といえよう。8.「Castle Walk」は、他のライブ音源でこの曲を演奏しているものが少なく、珍しい音源といえよう。ラルフのシンセギターによるオーケストラのような厚みのあるサウンドが印象に残る。ゲレンのベースソロは弓弾き、ラルフのソロは抑制が効いた感じで、じっくりした感じが渋い。曲の最後は、自由な感じの即興演奏になる。9.「Pepe Linque」は、グレンの独奏から始まり、ここでもポールのソプラニーノ・サックスソロは好調だ。10.について、ポールは 「Free Piece」と紹介しているが、一定のリズム・パターンの中で演奏しているため、ここでは曲名を「Improvisation」とした。ホイッスル、シンセ、弓弾きベースとパーカッションが絡み合うが、比較的ライトでクールな演奏だ。ポールがホイッスルを2本同時に演奏するのに加えて、後半ではサックスの音も2本分聞こえるが、これはどうやって演奏しているのかな?昔、サー・ローランド・カークという人は2本吹いていたので、可能なんだろう。11.「Anthem」は、当初聴いた音源では、テーマの演奏が終わってラルフのギターソロの途中でフェイドアウトしてしまったが、後の音源は完奏版だった。

さらに後の音源は、ドイツ語のアナウンサーによるオレゴンの紹介と、ラルフとポールの英語のコメンが入っている。

[2024年7月追記]
別当初作成の記事で、「別の資料では、上記以外に前半にあたる"If"、"Joyful Departure"、"An Open Door"、"Hoedown"、"Free Piece"の音源が存在するというが、私は未聴だ。(中略)上記の未聴部分もいつか聴けるといいですね!」と書きましたが、前半部分(1st Set)も聴くことができました。めでたしめでたし.....。なので追記・書き直しました。


Clusone Jazz Festival, Italy (2006) [Oregon] ラジオ音源
 
Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Sopranino Sax
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, Frame Synth Guitar, Piano, Synthesizer 
Mark Walker : Drums, Percussion

1. If [Towner] 7:09
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
2. Joyful Departure [Towner] 13:30
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
3. An Open Door [Towner] 9:45
 
(Soprano Sax, Piano, Bass, Drums, Percussion)
4. Pepe Linque [Moore] 7:50
 
(Bass Clarinet, Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Percussion, Drums) 
5. Distant Hills [Towner]  6:41 

 (English Horn, C. Guitar, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion)

収録: 2006年7月30日 Corte Sant'Anna, Clusone, Italy
放送: 2007年2月13日 Rai Radio3 "Il Cartellone - Radio Tre Suite Jazz"


イタリアのロンバルディア州にある山間の小さな町、クルゾーネで開催されたジャズ・フェスティバルでのコンサートをイタリアのFMラジオ局 Radio3が放送したもの。曲数は少ないが、各メンバーの調子が最高で、録音も良い出来。

1.「If」は当時の定番曲であるが、オレゴンの演奏はとても活き活きとしている。2.「Joyful Departure」は、途中ギターとパーカションのみによる間奏部分が入り、マークのブラシによるドラムソロに続く、とてもクリエイティブなプレイだ。後半はコード進行が変わり、ソニー・ロリンズの「St. Thomas」のようなカリビアン・ジャズ風の演奏になるのがユニーク。ポールによるメンバー紹介の後の3.「An Open Door」は、透明感溢れるラルフのピアノが最高。エンディングではシンセサイザーを入れて音に厚みを出し、そのままメドレーで即興演奏に映ってゆく(切れ目がはっきりしないので、ここでは独立した曲として取り扱わなかった)。バスクラリネット、アルコ奏法によるベース、パーカッション、シンセサイザーによる音の万華鏡からベースが独奏で現れ、そのまま4.「Pepe Linque」のイントロが始まる様はスリリング。これもステージの常連曲であるが、グレンの間奏ソロは個性的でアイデアに満ちている。5.「Distant Hills」は、予めプログラミングされたシンセサイザとギターによるアルペジオがオーケストラのようなサウンドを生み出している。ポールは音の低いイングリッシュ・ホルンをテーマ演奏に使用することが多いが、本曲ではソロパートでも吹き続けているのが珍しい。

演奏・録音ともに1級品の音源。


Centralstation Darmstadt, Germany (2006) [Oregon] 音源 
 





Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Sopranino Sax
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, Frame Synth Guitar, Piano, Synthesizer 
Mark Walker : Drums, Percussion

1. If [Towner] 7:35
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
2. An Open Door [Towner] 10:05
 
(Soprano Sax, Piano, Bass, Drums, Percussion)
3. Redial [Towner] 10:57
 
(Soprano Sax, Synth Guitar, Bass, Drums)
4. Short 'n Stout [Towner] 5:46
 
(Soprano Sax, Synth Guitar, Bass, Drums)
5. 1000 Kilometers [Towner] 12:41

 (English Horn, Soprano Sax, Piano, Bass, Percussion, Drums)
6. Pepe Linque [Moore] 7:09
 
(Bass Clarinet, Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Percussion, Drums) 
7. Green And Golden [Towner]  7:30 
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Drums)
8. The Glide [Towner]  11:14
 (Soprano Sax, Piano, Bass, Drums)

収録: 2006年11月3日 Centralstation Darmstadt, Germany

ダルムシュタットは、フランクフルトの南約30キロにある郊外都市で、セントラルステイションは、1888年に建造された町の発電所を改装して1999年オープンしたイベント会場だ。2006年はオレゴンの音源が多く残されているが、「Prime」2005 O26、「1000 Kilometers」2007 O27の間ということで、いずれも本当に充実したパフォ−マンスを堪能できる。本音源も演奏、録音ともに素晴らしい出来だ。

この頃のライブ演奏の映像・音源は多くあるので、個々曲についての説明は不要と思われるが、本音源で特に面白いのは、6.「Pepe Linque」で、前半はマークのドラムス、パーカッションなしの演奏となっている。もともとリズミカルな曲なので、打楽器なしの演奏は新鮮に聴こえるのだ。そして後半でマークがフィルインする瞬間は、「来たーっ」という不思議な高揚感があり、オーディエンスも同じ気持ちだったようで、拍手で応えている。5.「1000 Kilometers」は、この時点では未発売の同名のアルバムからで、「新曲」と紹介されている。そのせいか、テーマ演奏は少しぎこちない感じがする。

私が聴いた音源には入っていなかったが、6 と7 の間で 「Free Piece 〜 Doff」のメドレーを演っているそうだ。


Leverkusener Jazztage, Germany (2006) [Oregon] TV映像

Paul McCandless : Oboe, Soprano Sax, Tenor Sax
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, Frame Synth Guitar, Piano 
Mark Walker : Drums, Percussion

1. An Open Door [Towner] 8:09
 (Soprano Sax, Piano, Bass, Drums, Percussion)
2. Redial [Towner] 8:29
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion, Drums) 
3. Short And Stout [Towner] 4:47
 
(Soprano Sax, Synth Guitar, Bass, Drums)
4. 1000 Kilometers [Towner] 10:13
 
(English Horn, Soprano Sax, Piano, Bass, Percussion, Drums) 
5. Doff [Towner]  10:12 

 (Tenor Sax, Synth Guitar, Bass, Drums, Percussion)
6. Witch Tai To [Jim Pepper]  7:40 
 (English Horn, Sopranino Sax, C Guitar, Piano, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion)
7. Green And Golden [Towner]  6:51 
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Drums)

収録: 2006年11月6日, Leverkusen, Germany

レバーキューセンは、ケルンの北、デュッセルドルフとの中間に位置する町で、ここで毎年11月に開催されるジャズフェスティバルの模様はテレビ放映され、多くのアーティストの映像が出回っている。2006年に出演したオレゴンの映像について、私はふたつのソースから合計6曲を観ることができた (これらには「Witchi Tai To」が含まれていなかったが、2014年に完全版を観ることができた。めでたし.........)。

1.「An Open Door」では、ポールとグレンが眼鏡(老眼鏡?)をかけていて、ピアノを弾く猫背のラルフも年をとったな〜という感じ。オレゴンのレパ−トリーのなかでも、ジャズらしいクールな作品で、ラルフの作曲のセンスが光る。ここでマークが叩く楽器は、ドゥンベックで、コンガよりも硬く金属的な音がする。インプロヴィゼイションから始まる 2.「Redial」のパーカッション・ソロは、マークがドゥンベックを叩きながら、足でバスドラの音を出している。ソロの終わりにサンバのリズムになると、ラルフがクラギでパーカッションのようなリズムを出し、合わせるのが面白い。3.「Short And Stout」でのラルフのシンセギターは、テーマ部分で少し指がもつれるが、ガッツ溢れるソロで取り返している。4.「1000 Kilometers」で、ポールはテーマ部分でイングリッシュ・ホルンを、ソロではソプラノ・サックスを吹いている。テレビ番組では、ここでラルフのインタビューが入り、「私はギター・フリークではなく、ギターは私の音楽、自分の曲を表現する楽器のひとつに過ぎない」と話している。ギターの運指を前提とした作曲・演奏をしないことが、彼のギタースタイルの秘密であることを語ったものだ。5.「Doff」では、マークのドラムソロが見もの。右手でシェイカーを振りながら、左手のスティックだけで叩きまくる様は壮観そのもの。ここではポールがテナー・サックスを吹いているのが珍しい。 ここでポールによるメンバー紹介が入る。 オレゴンのステージで12弦ギターを使わなくなったラルフは、6.「Witch Tai To」の前半でクラシック・ギターを弾いているが、それなりの面白さがある。後半の彼はギターを置いて、ピアノ、シンセサイザーを演奏、ポールのソプラニーノ・サックスのソロで盛り上がる。アンコールは 7.「Green And Golden」で、終了後メンバーがステージ前に出て挨拶をして終わる。

ステージのライティングに加えて、遠景・クローズアップによる撮影および編集・録音も素晴らしい。音楽のみならず、演奏者の動作や表情、グレンの1715年製クロツ・ベース、ラルフのジェフリー・エリオット・アンド・シンシア・バートン作のクラシック・ギターなどの愛器もしっかり写っており、映像作品として1級のものだ。

[2014年3月]
「Witch Tai To」が含まれた映像を観ることができたので、一部書き直しました。

[2017年3月]
2.「Redial」と3.「Short And Stout」の曲順を入れ替えました。


 
Sargfabrik, Vienna (2006) [Oregon] 音源 
 


Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Sopranino Sax, Tenor Sax, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, Frame Synth Guitar, Piano 
Mark Walker : Drums, Percussion

1. If [Towner] 7:51
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
2. 1000 Kilometers [Towner] 11:54
 
(Soprano Sax, Piano, Bass, Drums, Percussion)
3. Redial [Towner] 10:25

 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion, Drums) 
4. Distant Hills [Towner] 8:19
 
(English Horn, C. Guitar, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion) 
5. Pepe Linque [Moore]  7:53 

 (Bass Clarinet, Sopranino Sax, Synth Guitar, Piano, Bass, Drums, Percussion)
6. Improvisation [Oregon] 11:00  
 
(Whistle, Soprano Sax, Synth Guitar, Bass, Drums, Percussion)
7. Doff [Towner]  3:44 (Fade Out)
 
(Tenor Sax, Synth Guitar, Bass, Drums, Percussion)
8. Anthem [Towner]  6:34 
 
(Soprano Sax, Bass Clarinet, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
9. Joyful Departure [Towner]  13:29 
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
10. Hoedown [Moore]  5:19 
 
(Bass, Drums)
11. Free Piece [Oregon]  9:03 
 (Whistle, Bass Clariet, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion)
12. Witchi Tai To [Jim Pepper]  11:26  
 (Oboe, Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
13. Short 'N Stout [Towner]  7:01 
 
(Soprano Sax, Synth Guitar, Bass, Drums, Percussion)

収録: 2007年12月2日、Sargfabrik, Vienna, Austria

注: 10はラルフ非参加


サルガファブリックは、ウィーンにあった古い棺おけ工場を、再開発により住宅、レストラン、サウナ、プール、イベントホール等を備えた自治施設にリフォームしたもの(1991年完成)。ホールでは、様々なアーティストによるコンサートが行われていて、オレゴンが2007年12月に当地で行ったコンサートが本音源。自然で生々しい録音で、特にマーク・ウォーカーの打楽器の音の切れ・抜けが良く、躍動感溢れる演奏を楽しむことができる。

1.「If」では、マークのドラムスとラルフのクラギのリズムが完璧にマッチしていて、その相乗効果が、心地よいグルーヴ感を生み出している。3.「Redial」では、マークによるサンバのブラシワークが出色で、ラテンリズムが得意な彼の本領発揮の曲だ。早いテンポの曲でありながら、バンドの演奏はリラックスしていて、そのゆったり感はメンバーの力量の凄さを物語っている。4.「Distrant Hills」ではシンセ・ギターを使用。テーマでは、ラルフによるアルペジオ演奏をシンセサイザーに繋げて背景となるサウンドを作り上げている。彼がソロを取る部分では、ギター演奏のバックでシンセの音が聞こえるが、これは予めプログラミングされたものだろう。ベースの変則チューニングにより通常では弾けない音を出すと紹介される 5.「Pepe Linque」は、グレンのベースが縦横無尽に暴れまくる。ラルフのシンセサイザーの演奏も好調。6.「Improvisation」は、マークのパーカッションがリズムを刻む中で、各プレイヤーが音を刻み込んでゆく集団即興演奏で、メドレーで7.「Doff」につながるが、テーマが終わった後のポールのテナーサックス・ソロの最中でフェイドアウトしてしまう。

8.「Anthem」、9.「Joyful Deaprture」では、前者のレゲエ、後者のカリブ風といった間奏部分での工夫が楽しめ、11.「Free Piece」は、ラルフのシンセサイザーが様々な音を繰り出して飽きさせない。オレゴンのライブ音源を多く聴いていると、この手の即興曲を味わう楽しみが増してくるのだ。最初の頃は「何をやっているのかな?」という感じだったが、今は予想がつかない展開にウキウキするのだ。定番曲 12.「Witch Tai To」では、マークウォーカーの力強いビートのなかで、ラルフのギター、ピアノとポールのソプラノサックス(正確にはソプラニーノだと思う)が天を翔けるかのごとく雄大なソロを展開する。アンコールでの13.「Short 'N Stout」は、ラルフのシンセギターが少し歪んだ音を出し、R&B調のサウンドに色を添えている。

歯切れの良い録音、リラックスした演奏が楽しめる。


Belo Horizonte, Brazil (2007) [Oregon] 映像

Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Sopranino Sax, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, Frame Synth Guitar, Piano 
Mark Walker : Drums, Percussion

1. If [Towner] 7:37
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
2. 1000 Kilometers [Towner] 9:51
 
(English Horn, Soprano Sax, Piano, Bass, Drums, Percussion)
3. Redial [Towner] 9:50

 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion, Drums) 
4. Green And Golden [Towner] 7:35
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Drums) 
5. Pepe Linque [Moore]  7:01 

 (Bass Clarinet, Sopranino Sax, Synth Guitar, Piano, Bass, Drums, Percussion)
6. Free Piece [Oregon]  6:15 
 
(Oboe, Bass Clarinet, Synth Guitar, Bass, Drums, Percussion)
7. Doff [Towner]  12:30 
 
(Soprano Sax, Sopranino Sax, Synth Guitar, Bass, Drums, Percussion)
8. An Open Door [Towner]  10:50 
 
(Soprano Sax, Piano, Bass, Drums, Percussion)
9. Catching Up [Towner]  12:08 
 
(Oboe, Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
10. Hoedown [Moore]  5:17 
 (Bass, Drums, Percussion)
11. Catching Up [Towner]  12:08 
 (Oboe, Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
12. Free Piece [Oregon]  6:29 
 
(Whistle, Bass Clarinet, Synth Guitar, Bass, Drums, Percussion)
13. Witchi Tai To [Jim Pepper]  10:43 
 
(English Horn, Whistle, Sopranino Sax, Synth Guitar, Piano, Bass, Drums, Percussion)


収録: 2007年9月30日、Belo Horizonte, Brasil

注: 10はラルフ非参加


ベロ・オリゾンテは「美しい地平線」という意味の名で、リオ・デ・ジャネイロの北約300キロの内陸、海抜1000メートルの高原地帯にあり、鉄鉱石の採掘で発展したブラジル3番目の都市だ。ブラジル音楽界の英雄ミルトン・ナシメントの本拠地でもある。アルバム「1000 Kilometers」O28を発売した2007年8月直後のコンサートで、本アルバムからの新曲 (2,9)を聴くことができる。遠景のみのオーディエンス・ショットであるが、三脚を使用しているようで、途中カメラを動かす以外に手振れはない。カメラアングルが全く変わらないので映像自体は単調。音質はモノラルで決して良いとはいえないが、臨場感と迫力があり十分に楽しむことができる。

新曲 2.「1000 Kilometers」では、ポールの吹くテーマのイングルシュ・ホルンの低めの音色に暖かみを感じるが、ソロではソプラノ・サックスに持ち替えている。亡き友人(マネージャー)に捧げた曲ということで、ラルフのピアノプレイにも鎮魂の念が込められているようだ。3.「Redial」はブラジル音楽的な曲調で、地元ということで張り切った演奏だ。特にマーク・ウォーカーのドラムス、パーカッション・ソロには格段の気合が入っているような気がする。ソロの途中でサンバのリズムが出てくると、オーディエンスから歓声が上がる。5.「Pepe Linque」での創意に溢れたベースソロはいつ聴いても素晴らしい。本曲以降の数曲では、グレンはいつもの古いコルツのかわりに、ボディのないエレクトリック・アップライトベースを弾いている。この曲の前半におけるラルフの楽器は、音源だけでは鍵盤によるシンセサイザーに思えたが、画像からフレイム・ギター(シンセ・ギター)であることがわかった。後半ではピアノを弾いている。6.「Free Piece」では、メンバーは昔のように頻繁に楽器を持ち替えず、シンセ・ギターや弓弾きのエレクトリック・ベースのサウンド・エフェクトを駆使して多彩な音を繰り出している。7.「Doff」は長い演奏で、ポールのソプラニーノ・サックス(このライブではテナー・サックスを吹いていない。恐らく海外ツアーで持参する楽器が限定されたためだろう)、マークのドラムス、ラルフのシンセギターなど、かなりハードなプレイだ。8.「An Open Door」も気合が入った演奏で、聴く者を引き付ける魅力に溢れている。9.「Catching Up」で聴けるマークのドゥンベックのソロは、コンガとは異なり乾いた金属的な音で面白い。ポールはテーマではオーボエ、ソロではソプラノ・サックスを吹いている。10.「Howdown」は、グレンとマークのみの演奏。12.「Free Piece」と13.「Witchi Tai To」は、メドレーで演奏される。ラルフの前半のシンセ・ギターの重厚な音、後半のピアノプレイが印象的だ。

映像を観る限り、この頃のラルフのシンセサイザーはギターを使用し、鍵盤タイプのものはあまり弾いていないようだ。コンサートでは12弦ギターを持参しなくなった分、シンセギターのプレイが際立っている。


 
Hamburg, Germany (2008) [Oregon] 映像 


 

Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Sopranino Sax, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, Frame Synth Guitar, Piano 
Mark Walker : Drums, Percussion

[July 10]
1. Catching Up [Towner]  11:25 
 (Oboe, Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
2. Toledo [Towner] 8:57
 
(Oboe, Sopranino Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
3. The Glide [Towner] 9:02
 
(Soprano Sax, Piano, Bass, Drums) 
4. Distant Hills [Towner] 7:15
 (English Horn, C. Guitar, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion)

5. Hoedown [Moore]  8:11 
 (Bass, Drums, Percussion)
6. 1000 Kilometers [Towner] 10:51
 
(English Horn, Soprano Sax, Piano, Bass, Drums, Percussion)
7. Free Piece - Improvisation [Oregon]  15:22 
 
(Oboe, Soprano Sax, Bass Clarinet, Whistle, Synthesizer, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
8. In Stride [Towner]  9:40
 
(Soprano Sax, Synt. Guitar, Bass, Drums) 

[July 11]
9. If [Towner] 7:50
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)

10. Redial [Towner] 10:20 )
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion, Drums) 

11. 1000 Kilometers [Towner] 12:12
 (English Horn, Soprano Sax, Piano, Bass, Drums, Percussion)

12. Deep Six [Walker] 9:08
 (Tenor Sax, Piano, Bass, Drums, Percussion)

13. Green And Golden [Towner] 8:00
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Drums) 

14. Pepe Linque [Moore]  8:41 
 (Bass Clarinet, Sopranino Sax, Synth Guitar, Piano, Bass, Drums, Percussion)
15. Free Piece [Oregon]  11:15 
 
(Oboe, Bass Clarinet, Whistle, Flute, Synth. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
16. Doff [Towner]  12:02 
 
(Tenor Sax, Synth Guitar, Bass, Drums, Percussion)
17. Witchi Tai To [Jim Pepper]  6:38 
 
English Horn, Sopranino Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion) 

Recorded July 10 & 11, 2008, NDR Rolf-Liebermann-Studio, Hamburg, Germany
 

NDR (Norddeutscher Rundfunk、北ドイツ放送、ハンブルグを本拠地とする公共放送局)の放送音源で、7月10日と11日の二日にわたるコンサートの模様を収録したもの。両日とも最後にドイツ語によるアナウンスが入る。同じ日のコンサートを二日に分けて放送したのかなと思ったが、曲目を見ると「1000 Kilometers」のように同じ曲を演奏しているので、資料の通り別の日の演奏で間違いないだろう。繊細な録音で、ラルフのギターの微妙なタッチ、マークのドラムス、パーカッションの細かなニュアンスが良く分かるし、グレンのベースも自然な音ながら、バンドサウンドに埋もれない絶妙のバランスを保っている。一方、ポールのホーンの音が大人し過ぎて生々しさに欠ける点があるのが残念。きれいで聴きやすい音質であることは確かだ。

1.「Catching Up」でのポールは、テーマでオーボエ、ソロではソプラノ・サックスを吹いている。サックスのほうが、アタックが強く生々しい音が出るからだろう。間奏でのマークによる、ドゥンベックの乾いた音が面白い。3.「Glide」が終わった後、ポールが本コンサートがヨーロッパ・ツアーの初日とアナウンスし、メンバー紹介を行う。5.「Howdown」はグレンとマークのデュエットで、ラルフは非参加。6.「1000 Kilometers」は、透明感溢れるピアノプレイと、パワフルなドラムスが素晴らしい。マークの紹介で始まる 7.「Free Piece」は、最初はバイオリンを思わせるシンセの音色とオーボエによる即興演奏から、リズムが入ってバスクラとベースによるプレイに移る。最後はポールが2本のサックス(ソプラノとソプラニーノ?)を同時に吹いている。難しそうだけど、以前サー・ローランド・カークという人がよく演っていたっけ。シンセギターが活躍する8.「In Stride」で番組が終了する。

翌日は、10.「Redial」から始まる。ブラジル調の曲でマークのドラムソロが頑張っている。11.「1000 Kilometers」は、前日にも演奏していた曲で、ここでもポールはテーマでオーボエ、ソロではソプラノ・サックスを吹く。マーク作曲による12.「Deep Six」のライブ音源は珍しい。グラミー賞のジャズ作曲部門でノミネートされたというが、モーダルな曲想に個性があり、いつもと勝手が違うようで、ラルフのピアノソロが少しぎこちない感じがする。ここでポールがテナー・サックスを吹いているのも珍しい。運搬できる機材に制限があるため、通常のコンサートでこの楽器を手にすることはないからだ。室内楽的な気品に溢れた13.「Green And Golden」、その次の楽しくエキセントリックな14.「Pepe Linque」の対比が効果的。15.「Free Piece」は、前日と同じ楽器を使いながら、出来上がりが全く異なるのはさすがだ。フルートらしい音が聞こえるが、グレンが吹いているのだろう。そのまま切れ目なく 16.「Doff」に繋がってゆく。ここでのポールのテナーサックス・ソロ、マークのドラムソロは凄まじい。滔々と演奏される17.「Witch Tai To」が最後の曲。

大人しいオーディエンス、かっちりした演奏、きれいな録音による音源。


 
Alladin Theater, Portland, Oregon (2009) 音源  
 



Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, Frame Guiitar, Piano, Synthesizer 
Mark Walker : Drums, Percussion

[1st Set]
1. Redial [Towner] 12:27 
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion, Drums) 
2. Toledo [Towner] 8:34
 (Oboe, Sopranino Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)

3. The Glide [Towner] 9:41
 
(Soprano Sax, Piano, Bass, Drums) 
4. Distant Hills [Towner] 7:35
 (English Horn, C. Guitar, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion)
5. Hoedown [Moore]  10:02
 (Bass, Drums, Percussion)
6. From A Dream [Towner]  3:44 
 
(Oboe, C. Guitar)
7. Improvisation [Oregon]  10:57
 (Bass Clarinet, Whistle, Synt. Guitar, Synthesizer, Bass, Drums, Purcussion) 
8. In Stride [Towner]  10:51
 
(Soprano Sax, Flame Guitar, Bass, Drums) 

[2nd Set]
9. 1000 Kilometers [Towner] 11:05
 (English Horn, Soprano Sax, Piano, Bass, Percussion, Drums)
10. If [Towner] 7:50
 
(Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
11. Deep Six [Walker]  10:49
 
(Soprano Sax, Piano, Bass, Drums, Percussion) 
12. Green And Golden [Towner] 8:00
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Drums) 
13. Yet To Be [Towner]  9:11 
 (Oboe, Piano, Bass, Drums, Percussion)

[Encore]

14. Witchi Tai To [Jim Pepper]  8:29

 
English Horn, Sopranino Sax, Whistle, C. Guitar, Piano, Synthesizer, Bass, Drums) 

Recorded April 13, 2009, Alladin Theater, Portland, Oregon

オレゴン州ポートランドにあるアラディン・シアターは1927年にゲラーズ・シアターとしてオープンし、1934年に現在の名前に改称した。当初はボードヴィル・ショーをやっていたが、その後長期間ポルノ映画館となり、1991年に名画上映およびライブ会場にリノベされた。収容人員は620名。ポール・マッキャンドレスのサイトの「Past Performances」によると、2009年4月の前後にはオレゴンのツアーの記録がなく、ラルフとグレンの地元であるオレゴンでの開催が何か特別な意図をもって行われたものと推測される。メンバー紹介の際でも、この二人に対しひときわ大きな拍手と歓声が飛び、オーディエンスと演奏者の間にいつにない親近感が感じられ、その分彼らはリラックスして演奏しているようだ。サウンドボード録音と思われ、ベースが少しオフ気味であるが、その他は文句なしの高音質。

演奏曲の初出アルバムは以下のとおり。直近のアルバム「1000 Kilometers」2007と「Prime」2005からの曲が多く、コンサートの時点で未発表の新曲は 8.「In Stride」という構成。

1973 Distant Hills O3: 4
1974 Winter Light O4: 14
1975 In Concert O6: 13
1985 Crossing O14: 3
1987 Ecotopia O15: 1
1995 Beyond Words O20: 12
2005 Prime O26: 2, 5, 10
2007 1000 Kilometers O27: 6, 9, 11
2010 In Stride O28: 8

特記事項としては、マーク・ウォーカー作の11.「Deep Six」を演っていること。オレゴンにおける数少ない彼の作品のひとつで、グラミー賞「Best Instrumental Composition」にノミネートされたこの曲を演奏しているライブ音源は激レアだ。それと当時のライブでは珍しい13.「Yet To Be」かな。

オレゴンが地元で行ったコンサートのフルセットを高音質で楽しむことができる。

[2024年11月作成]


Internationale Jazzfestival Viersen (2009) 音源 

 

Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer 
Mark Walker : Drums, Percussion

1. If [Towner] 7:21
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
2. Redial [Towner] 9:49 (映像は途中でカット)
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion, Drums) 
3. The Glide [Towner] 9:30
 
(Soprano Sax, Piano, Bass, Drums) 
4. Distant Hills [Towner] 6:40
 (English Horn, C. Guitar, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion)
5. Hoedown [Moore]  8:14 (映像のみ)
 (Bass, Drums, Percussion)
6. Green And Golden [Towner] 6:55
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Drums) 
7. Improvisation [Oregon]  7:47
 (映像のみ)
 (Oboe, Sopranino Sax, Bass Clarinet, Whistle, Synt. Guitar, Synthesizer, Bass, Drums, Purcussion, Electric Purcussion) 

8. In Stride [Towner]  10:28 (音源のみ)
 
(Soprano Sax, Synt. Guitar, Bass, Drums) 
9. Witchi Tai To [Jim Pepper]  8:46 (音源は途中からフェイドイン)
 
English Horn, Sopranino Sax, Whistle, Piano, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion) 

Recorded September 18, 2009, Festhalle, Internationale Jazzfestival. Viersen, Germany

 

フィアゼンは、ノルトライン・ヴェストファーレン州デュッセルドルフの西に位置する町で、1969年から毎年秋にジャズ・フェスティバルが開催されている。今回の出演の模様は、ドイツを本拠地とする公共放送曲3satで放送された。それとは別に音源も出回っており、両者の曲目に微妙な相違がある。

ラルフのクラギの独奏から始まる 1.「If」は、ステージの照明が素晴らしく、光と影の部妙なコントラストの中で、各プレイヤーの姿を鮮やかなカラーで楽しむことができる。そして音質も素晴らしく、各楽器がクリアーに捉えられ、かつバランスも最高。そのためか、ラルフのリズミカルな伴奏、ポールのソプラノ・サックスの切れ味が、いつもより冴えわたっているように聞こえる。ブラジル音楽の香り高い 2.「Redial」も、マークのブラシによるドラムワーク、ソロにおけるドゥンベックの手叩き、足で叩くバスドラのコンビネーションによるサンバのリズムが鮮やか。この曲の映像は、マークのドラムソロが終わったところでカットされる。4.「Distant Hills」では、ポールが低めの音が出るイングリッシュ・ホルンを吹く様、プログラミングによるシンセサイザーをバックにラルフがソロをとるシーンを観ることができる。5.「Hoedown」は、グレンの指、弓による早弾き名人芸と、しなやかに反応するマークのパーカッション、ドラミングの妙が楽しめる。この曲は私が知る限り映像のみ出回っている。6.「Green And Golden」は、室内楽的な趣のある美しい演奏だ。7.「Improvisation」は、ラルフはシンセ・ギターとシンセサイザーを交互に弾き分けており、音源だけではどちらか判別が難しいので、この映像は非常に興味深い。途中でリズムが入り、スリリングなプレイになる。エンディングでは、ポールが2本のホイッスルをくわえて吹いたり、マークばエレクトリック・パーカッションを操作するシーンがあり、とても面白い。これも映像のみで視聴可能。音源では、ポールのアナウンスで「次の曲は即興曲です」と言っていることから、この曲順にした。8.「In Stride」は、フリーな感じのイントロの後、ラルフのシンセギターが大活躍して盛り上がる。9.「Wichi Tai To」は、ラルフgは主にピアノを弾き、後半で片手でシンセを弾き場面がある。イングリッシュ・ホルン、ホイッスル、ソプラニーノ・サックスを楽器も持ち替えて吹きまくるポールが圧巻。私が聴いた音源では、ピアノソロの途中かたフェイドインするものだったが、映像は完奏になっている。

映像・音源ともに最高の品質・最高の演奏を楽しむことができる。


Tangente, Eschen, Liechtenstein (2009)  音源 

Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Sopranino Sax, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, Frame Synth Guitar, Synthesizer, Piano 
Mark Walker : Drums, Percussion

[1st Set]
1. If [Towner] 7:51
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
2. Toledo [Towner] 8:16
 
(Oboe, Sopranino Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
3. The Glide [Towner] 9:28
 
(Soprano Sax, Piano, Bass, Drums)
4. Distant Hills [Towner] 7:48
 
(English Horn, C. Guitar, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion) 
5. Hoedown [Moore]  9:11 

 (Bass, Drums, Percussion)
6. From A Dream [Towner]  2:55 
 
(Oboe, C. Guitar)
7. Free Piece [Oregon]  11:21 
 
(Oboe, Bass Clarinet, Whistle, Synthesizer, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
8. Doff [Towner]  12:30 
 
(Soprano Sax, Sopranino Sax, Synth Guitar, Bass, Drums, Percussion)

[2nd Set]

9. Redial [Towner] 9:50

 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion, Drums) 
10. Green And Golden [Towner] 7:57
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Drums) 
11. Aeolus [Towner]  11:55 

 
(Soprano Sax, Piano, Bass, Drums, Percussion)
12. Witchi Tai To [Jim Pepper]  7:30 
 (English Horn, Sopranino Sax, Synth. Guitar, Paino, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion)
13. Silence Of A Candle [Towner]  7:43 
 (English Horn, C. Guitar, Bass, Drums)
14. Ecotopia [Towner]  9:35 
 
(Sopranino Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums)

収録: 2009 September 26, Tangente, Eschen, Liechtenstein

注: 5はラルフ非参加


エッシェンは、リヒテンシュタイン公国の北部にある人口約3,800人、面積20.3平方キロメートルの自治体。タンジェントは、主にジャズのミュージシャンが出演している会場で、オーディエンス録音による本音源を聴く限り、小さなライブハウスのようだ。1.「If」での録音は自然な感じで、各楽器の音もクリアーに捉えられているが、打楽器のレベルが高すぎたようで、少し割れ気味。ただしその問題は次の曲以降で改善されている。また本音源はノーカットと思われ、この時期のオレゴンのコンサートをありのままに楽しむことができる。2.「Toledo」は、ラルフの曲の良さが際立っていて、間奏のソロにおけるコード進行が聴く者を前向きな気分にさせてくれる魔術がある。3.「Glide」も切れ味良く、パンチが効いたプレイだ。ここでポールによるメンバー紹介が入るが、音が小さめで聴きとりにくいのが残念。4.「Distant Hills」では、ポールは音が低いイングリッシュ・ホルンを吹き、ラルフはコンピューターにプログラミングされたアルペジオをバックにソロを取る。5.「Hoedown」はラルフ非参加。ユーモラスなグレンのプレイもさることながら、ドラムスとパーカッションを駆使して多彩な音、リズムうぃ叩きだすマークのプレイが出色。ポールとラルフのデュエットによる 6.「From A Dream」は、ヨーロッパの伝統の小唄のような趣がある小品。7.「Free Piece」は、最初はシンセサイザー主体の即興演奏であるが、途中からリズムが入り、ドラムスがかなり激しい音を出す。この部分では音圧が強すぎたようで、タムタムを強打する音が割れている。曲はメドレーで 8.「Doff」に移ってゆく。

セカンドセットは、ブラジル風の9.「Redial」から。マークのドラムソロが圧巻で、フットペダルでバスドラを叩きながらサンバのリズムを一人で叩きだし、ラルフはギターの弦を擦ってクイーカのような音を出している。10.「Green And Golden」は、一転して室内楽的な優美さに溢れた演奏。11.「Aeoulus」は、「まだタイトルがない新曲」と紹介されているが、ここでの演奏は完璧!ライブらしく、スタジオ録音での陰影は影を潜め、ソプラノサックス、ピアノ、ドラムスとも大変アグレッシブなプレイだ。12.「Witch Tai To」で、ラルフはシンセギターを弾き、12弦ギターのようなシャープな音を出している。ここでのポールのソプラニーノのソロは切れ味抜群で素晴らしい。アンコールで演奏される13.「Silence Of A Candle」は、ラルフはクラギを弾くため、大人しい感じになっている。再びアンコールで演奏される14.「Ecotopia」は、昔のようにコンピューターのプログラミングによるリフが前面に出ず、ラルフの演奏によるピアノとシンセサイザーが目立つ演奏。ここでもポールのソプラニーノサックスは限界に挑戦するかの様なプレイで圧倒的。録音のせいか、マークのドラムスの音が大変生々しく、これまで聴いたこの曲のライブ演奏のなかでも、最も迫力のあるサウンドだ。

2009年におけるオレゴンのコンサートをノーカット、かつ総じて高音質(時々マイクの近くにいる人の会話が入ってしまったり、大音響の時に割れ気味になるが、しょうがないか..........) で楽しめる逸品。


   
Weltmusikfestival Grenzenlos, Murnau (2010)  音源  

 

Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, Frame Synth Guitar, Piano, Synthesizer 
Mark Walker : Drums, Percussion

1. On The Rise [Towner] 8:22
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
2. If [Towner] 6:57
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums)
3. Aeolus [Towner]  8:51 
 
(Soprano Sax, Piano, Bass, Drums)
4. As She Sleeps [Towner]  5:48 
 (English Horn, C. Guitar, Bass, Drums)
5. Pepe Linque [Moore]  6:25 
 (Bass Clarinet, Sopranino Sax, Synth Guitar, Piano, Bass, Drums, Percussion)
6. In Stride [Towner]  8:32
 
(Soprano Sax, Synt. Guitar, Bass, Drums)

収録: 2010 October 24, Weltmusikfestival Grenzenlos, Kultur und Tagungszentrum Murnau, Murnau, Germany
 
ポール・マッキャンドレスのサイト「Past Performances」によると、2010年のオレゴンは10〜11月にイタリア、ドイツ、ウクライナにツアーしたのみで、コンサートの数も少ない。本音源はその模様を捉えたもの。ドイツバイエルン州ミュンヘンに本拠地を置く公共放送 The Bayerischer Rundfunk (BR)に Klassikという主にクラシック音楽を放送するラジオ局がある。同局が同州にある小さな村ムルナウで行われたWeltmusikfestival Grenzenlos(ボーダレス世界音楽祭)におけるオレゴンの演奏を録音した放送音源で、アルプスの山々が見渡せる風光明媚な所にあるイベントスペースKultur und Tagungszentrum Murnau (ムルナウ文化会議センター)が会場。

放送音源とあって音質は最高であるが、全部で約54分ということで1時間番組に合わせたコンサートの抜粋という内容。しかも
最初、3.と4.の間、5.と6.の間に、各2分〜3分のドイツ語DJの解説とオレゴンのメンバーによるコメントが入る。ドイツ語は分からないが、コメントが面白いので判った範囲内で紹介しよう(意訳です)。

ラルフ: オレゴンはハーモニー、スウィング、メロディー、ベースが合わさった魔法だ
グレン: このバンドで演奏できることは幸せだ
ポール: 「As She Sleeps」のオーボエからイングリッシュ・ホルンのように、演奏楽器を変えてみると良い効果が得られる。アルバム「Northwest Passage」の「Joyful Departure」もアルバムではソプラノ・サックスだったけど、コンサートでオーボエを吹いてみたら素晴らしかったね
ポール: コールマン・ホーキンスは色んなキーで演奏できた。ここでは弦楽器と演奏することで、通常のジャズ曲とは異なるキーを使うことが多く、そこに新しい何かが生まれる

ポールのコメントが特に興味深いね。ちなみに2.と3.の間にはポールのステージアナウンスが入っている。

コンサートが少なかった2010年の珍しい音源で、選りすぐりの曲を良質のサウンドボード録音で楽しみましょう!

[2024年9月作成]


Colos-Saal, Aschaffenburg, Germany (2012)  音源  




 
 
Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, Frame Synth Guitar, Piano, Synthesizer 
Mark Walker : Drums, Percussion

[1st Set]
1. On The Rise [Towner] 9:37
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
2. If [Towner] 8:14
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums)
3. Tern [Towner] 10:05
 (Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums) 
4. The Hexagram [Towner]  8:13
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Drums)
5. Creeper [Towner]  7:31 
 (Bass Clarinet, Synt. Guitar, Bass, Drums)
6. Free Piece [Oregon]  10:50 
 
(Oboe, Whistle, Bass Clarinet, Synthesizer, Piano, Bass, Drums, Percussion)
7. Carnival Express [Towner]  10:23 
 
(Soprano Sax, Synthesizer, Bass, Drums)

[2nd Set]
8. Bibo Babo [Towner] 11:13
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
9. King Font [Towner] 9:45
 (Oboe, Piano, Bass, Drums)
10. Anthem [Towner]  7:15 
 (Soprano Sax, Bass Clarinet, C. Guitar, Bass, Drums)
11. Family Tree [Towner]  7:59 
 (Oboe, Piano, Bass, Drums)
12. Improvisation [Oregon]  10:03 
 (Soprano Sax, Whistle, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion)
13. In Stride [Towner]  11:18
 
(Soprano Sax, Synt. Guitar, Bass, Drums)

[Encore]
14. Witchi Tai To [Jim Pepper]  12:02 
 (English Horn, Whistle, Sopranino Sax, C. Guitar, Piano, Bass, Drums, Percussion)
11. Celeste [Towner]  6:41 
 (Soprano Sax, Piano, Bass, Drums)


収録: 2012 April 19, Colos-Saal, Aschaffenburg, Germany


アッシャフェンブルグは、フランクフルトから電車で40分ほどにある郊外都市で、人口は約7万人。ヨハンスブルグ城や古い町並みがある。コロス・ザール(「Saal」はドイツ語で「Hall」の意味)は、同地にある有名なミュージック・クラブ(1984年オープン)で、幅広い種類の音楽ライブを開催している。本音源は2012年4月、イタリア、オーストリア、チェコ、ドイツを回るオレゴンの欧州ツアーのライブの模様を捉えたもの。ポール・マッキャンドレスのサイトにある年表によると、ツアーは4月23日まで続き、直後の24〜28日にルートヴィヒスブルグで 「Family Tree」 O29の録音を行ったという。ということで、本コンサートではニューアルバムに収録する予定の曲(3,4,5,7,8,11) を多く演奏していて、録音のための肩慣らしを兼ねていたようだ。そのためか、いつものライブよりも演奏がソリッドでタイトな気がする。

おそらくコンサートの全貌を捉えたものと思われ、アンコール時の長い拍手も入っている。オーディエンス録音で音質は良いが、シンセザイザーなどが入って音量が大きくなると音が少し割れるのが残念。楽器のバランスでは、ベースの音がオフ気味であるが、ベースソロはしっかり聞こえるし、音楽として全体を聴くにはそれでいいかもしれない。音源によっては、グレンのベースランが大きく聞こえ、そのダイナミックなサウンドを味わうことができるものもあり、どっちのほうがいいとは言い切れないね。

3.「Tern」の後、ポールのアナウンスが入り、「このツアーが終わったらレコーディングする」と話し、4.「The Hexagram」をタイトルなしの「April Guitar Works」と紹介している。この曲の後で話す人はマークかな?ここでのオーディエンスは、オレゴンのコンサートとしては乗りが良い人達で、曲後の歓声も大きめ、曲中で合いの手の声を入れる人もいる。あと印象に残る点は、12.「Impovisation」(即興演奏でも、一定のリズムがなく出たとこ勝負のものを「Free Piece」、リズムに乗せて自由にプレイするものを「Improvisation」としています)で、後半に二つのホーンが同時に聞こえることだ。想像するに、ポールがソプラノ・サックスとソプラニーノ・サックスの両方を咥えて同時に吹いていると思われる。過去の記憶で、ジャズ奏者のローランド・カークが2〜3本のアルト、テナー・サックスを同時に吹く映像を観て、ビックリしたことがあったので、可能なのだろう。13.「In Stride」の演奏前の曲紹介で、ポールがツアー・マネージャーへの謝意を述べている。さらに 14.「Witchi Tai To」が終わった後、彼が「来年戻ってくる。それだけではなく、来春この地で hr ビックバンドと共演する予定がある」と語っている。ということは、2014年3月に行われた同バンドとの共演(下述 2013年3月13日の音源参照)の企画が、この時点ですでに進行中だったことだ。凄いね〜!

レコーディング直前ということで、メンバーの意気はぴったり合い、力強い演奏に終始している。2時間20分におよぶフルセットを聴ける音源としてもお勧め。

[2023年1月作成]


Kurhaus Bad Hamm (2013)  音源 

 



Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, Frame Synth Guitar, Piano, Synthesizer 
Mark Walker : Drums, Percussion

1. Bibo Babo [Towner] 9:03
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
2. If [Towner] 7:11
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
3. Turn [Towner] 9:46
 (Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums) 
4. As She Sleeps [Towner]  8:15 
 (English Horn, C. Guitar, Bass, Drums)
5. Crepper [Towner]  7:31 
 (Bass Clarinet, Synt. Guitar, Bass, Drums)
6. Aeolus [Towner]  9:29 
 
(Soprano Sax, Piano, Bass, Drums)
7. Free Piece [Oregon]  10:48 
 
(Oboe, Soprano Sax, Whistle, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion)
8. Carnival Express [Towner]  10:17 
 
(Soprano Sax, Synthesizer, Bass, Drums)

9. Redial [Towner] 10:15
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion, Drums)
10. The Glide [Towner]  9:22
 
(Soprano Sax, Piano, Bass, Drums)
11. The Hexagram [Towner]  7:26
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Drums)
12. Pepe Linque [Moore]  7:15 
 (Bass Clarinet, Sopranino Sax, Synth Guitar, Piano, Bass, Drums, Percussion)
13. Anthem [Towner]  8:55 
 (Soprano Sax, Bass Clarinet, C. Guitar, Bass, Percussion)
14. In Stride [Towner]  8:34
 
(Soprano Sax, Synt. Guitar, Bass, Drums) 


収録: 2013 March 14, Theatersaal, Kurhaus Bad Hamm, Germany

 

ハムは、ドイツ中西部ノルトライン・ヴェストファーレン州の都市。バッド・ハムは同地のクアハウス(kurhaus)で、療養、保養、健康増進施設があり、Theatersaalは構内にあるコンサートホール。2013年のオレゴンのヨーロッパ・ツアーは、最後のhr Big Band (ハイアール・ビックバンド)との共演がハイライトとなったが、本音源はその前日の公演。ということは、翌日の共演のためのリハーサルは、以前から十分に時間をかけて行ったわけではなく、当日の日中だけだったということになる。譜面さえあれば、すぐに完璧な演奏ができるというプロフェッショナルのなす技ですね。しかも本音源での曲目と、翌日以降のビックバンドとの共演での演奏曲とは、かなりの違いがあり、改めて彼らの演奏能力の高さを再認識させられた。

最初の曲は、前年8月発売のアルバム「Family Tree」 O29からの新曲「Bibo Babo」で、伸びやかでリラックスした演奏だ。間奏で、マークがドラムスとドュンベックを使用したソロを取る。曲後の拍手が収まってすぐに 2.「If 」が始まる。オーディエンス録音であるが、小さな会場でのリバーブ感が自然で、聴きやすい音だ。ここでポールのアナウンスとメンバー紹介が入る。「1960年代後半に作曲されたが、昨年まで録音されなかった」と紹介される 3.「Tern」は、いかにもジャズ修行中の若きラルフが書きそうなグルーヴ感溢れる曲だ。ラルフはテーマでピアノとシンセサイザーの両方を弾いてるようだ。マークのドライブが効いたリズムがエキサイティングで、各プレイヤーが気持ち良さそうにソロを展開する。後半のピアノ、ソプラノサックスとドラムスの4ヴァースのソロ交換がスリリング。室内楽的な 4.「As She Sleep」で、しっとりと落ち着いた感じになり。ポールが珍しくイングリッシュ・ホルンでじっくりソロをとる。5.「Creeper」もニューアルバムからのレパートリー。シンセギターのバックでポールがバス・クラリネットを吹きまくる重厚感あるプレイだ。ベースがちょっとオフ気味かなと思うが、全体的なサウンド・バランスとしては、そのほうが聴きやすいのも事実。ラルフのシンセギター・ソロは、時折コードを入れるので伴奏楽器の不足感はない。6.「Aeolus」は、吹きすさぶ風を想起させるマークの繊細なドラミングに注目。マークによるアナウンスの後の 7.「Free Piece」は、オーボエを中心とする即興演奏、ホイッスルによる一定のリズムをバックにしたインプロヴィゼイション、シンセサイザーによるリフとソプラノ・サックスのプレイなど、サウンドが目まぐるしく変わってゆく。7.「Carnival Express」はロック、R&B調の乗りの良い曲で、ラルフのシンセサイザーが、バック、ソロで大活躍する。

セカンド・セットはブラジル音楽の香り高い 9.「Redial」から。マークが叩きだすサンバのリズムが躍動的で、彼はラテンリズムが本当に上手い。10.「Glide」も、いつもながら洗練された軽やかなプレイだ。11.「Hexagram」はニューアルバムからで、最近のオレゴンに特徴的な室内音楽的なサウンド。思索的なムードの曲であるが、スタジオ録音に比べると、オーボエとギター・ソロがより自由かつ伸びやかだ。12.「Pepe Linque」は、グレンの変則チューニングによるベースプレイが冴える定番曲。アンコールは13.「Anthem」、14.「In Stride」の2曲。

オーディエンス録音による音質は、まあまあといったところ。マイクの近くにいる人が曲後に吹く口笛が大きすぎたりする難はあるが、しょうがないか.............。ビックバンドとの共演音源とセットで聴くと、オレゴン2013年のツアーの様子がわかる。

[2022年1月追記]
ポール・マッキャンドレスのホームページの「Past Perfomance」コーナーより、日付を訂正しました。




Oregon With hr Big Band in Germany (2013)  映像・音源 










Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, Frame Synth Guitar, Piano, Synthesizer 
Mark Walker : Drums, Percussion

Jim McNeely : Conductor, Big Band Arrangement

[Hr Big Band]
Tony Lakatos : Sax (Tenor)
Oliver Leicht : Sax (Alto)
Heinz-Dieter Sauerborn : Sax (Alto)
Steffen Weber : Sax (Tenor)
Rainer Heute : Sax (Baritone)

Peter Feil : Trombone
Gunter Bollmann : Trombone
Christian Jaksjo : Trombone (Baritone)
Manfred Honetschlaeger : Trombone (Bass)

Thomas Vogel : Trumpet
Frank Wellert : Trumpet
Martin Auer : Trumpet
Axel Schlosser : Trumpet


[Theater Ruesselsheim, Germany, 2013 March 15]

1. If [Towner] 8:09
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion, Big Band)
 Announcement : Paul McCandless
2. Short 'N Stout [Towner] 7:48
 
(Soprano Sax, Synth Guitar, Bass, Drums, Big Band)
 
Announcement : Jim McNeely
3. Tern [Towner] 8:14

 (Soprano Sax, Piano, Bass, Drums, Big Band) 
4. Lost In The Hours [McCandless] 6:23
 
(Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion, Big Band) 
 Announcement : Jim McNeely
5. As She Sleeps [Towner]  5:41 

 (English Horn, C. Guitar, Bass, Drums, Big Band)
 Announcement : Paul McCandless
6. Aeolus [Towner]  9:02 
 
(Soprano Sax, Piano, Bass, Drums, Big Band)

7. Redial [Towner] 8:07
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion, Drums, Big Band) 
  Announcement : Jim McNeely
8. Bayonne [McCandless]  7:15 
 
(Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Big Band)
 Announcement : Paul McCandless
9. The Glide [Towner]  7:13 
 
(Soprano Sax, Piano, Bass, Drums, Big Band)
 Announcement : Paul McCandless
10. Queen Of Sydney [McCandless]  10:20 
 (Oboe, Bass Clarinet, Piano, Synthesizer, Synt Guitar, Bass, Drums, Big Band)
 Band Introduction : Jim McNeely
11. In Stride [Towner]  10:55 
 (Soprano Sax, Synth Guitar, Bass, Drums, Big Band)
 Announcement : Jim McNeely
12. Leather Cats [Moore]  10:04 
 
(Soprano Sax, Sopranino Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion, Big Band)


[Stadttheater Aschaffenburg, Germany, 2013 March 16]

21. If [Towner] 8:08
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion, Big Band)
 Announcement : Paul McCandless
22. Short 'N Stout [Towner] 7:58
 
(Soprano Sax, Synth Guitar, Bass, Drums, Big Band)
 
Announcement : Jim McNeely
23. Tern [Towner] 8:25

 (Soprano Sax, Piano, Bass, Drums, Big Band) 
24. Lost In The Hours [McCandless] 6:35
 
(Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion, Big Band) 
 Announcement : Paul McCendless
25. As She Sleeps [Towner]  5:32 

 (English Horn, C. Guitar, Bass, Drums, Big Band)
 Announcement : Paul McCandless
26. Aeolus [Towner]  8:58 
 
(Soprano Sax, Piano, Bass, Drums, Big Band)

27. Redial [Towner] 9:27
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion, Drums, Big Band) 
  Announcement : Jim McNeely
28. The Glide [Towner]  7:12
 (Soprano Sax, Piano, Bass, Drums, Big Band)
 Annoucement : Paul McCandless
29. Bayonne [McCandless]  7:17 
 
(Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Big Band)
 Announcement : Paul McCandless
30. Queen Of Sydney [McCandless]  10:08 
 (Oboe, Bass Clarinet, Piano, Synthesizer, Synt Guitar, Bass, Drums, Big Band)
 Band Introduction : Jim McNeely
31. In Stride [Towner]  11:28 
 (Soprano Sax, Synth Guitar, Bass, Drums, Big Band)
 Announcement : Jim McNeely
32. Leather Cats [Moore]  11:53 
 
(Sopranino Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion, Big Band)

写真上: 
Theater Ruesselsheim
写真中・下: Stadttheater Aschaffenburg


素晴らしい!!! この音楽を聴く際に湧き上がる高揚感、恍惚感・幸福感は、滅多にないほど凄いものです。まずは「Arte Live Web」のサイトを検索してストリーミング配信のライブを観ましょう。ネタバレになるので、記事はそのあとで.... みなさんに是非観てもらいため、早めにアップしましたので、記事が荒っぽいですがご容赦くださいませ。

2013年3月1日から始まったオレゴンのヨーロッパ・ツアーは、オーストリア、ドイツ、ポーランド、デンマークの各地を回り、最後の2日間にあたる、フランクフルト近郊のリュッセルハイム(3月15日)、アッシャンフェンブルグ(3月16日)でのコンサートのみ hr Big Band (ハイアール・ビックバンドと発音)のブラスセクションとの共演となった。幸いなことに、前者は音源、後者は映像で聴く・観る機会に恵まれたが、映像による後者を中心に解説したいと思う。

Arte Live Web は、フランス・ドイツの共同出資による1992年設立のテレビ局が運営するインターネット・サイトで、質の高いクラシック、ジャズのライブを配信している。日本の自宅に居ながら本場のライブを観ることができ、特にクラシック音楽の愛好家達の評価が高いサイトという。初回はコンサートと同時進行で生配信され、その後しばらくの間、ストリーミングで繰り返し観ることができるようになっている。hr Big Bandの最初の2文字は、「Hessischer Rundfunk (ヘッセン放送協会)」で、フランクフルトを本拠地とするラジオ局専属のバンド。1946年にダンスバンドとして結成され、その後実力を磨き、近年は様々なプロジェクトによるライブ放送、CD製作により野心的な活動を展開している。取り上げる音楽は、ジョン・アバークロンビーやジョン・スコフィールド、マハビシュヌ・オーケストラ(トリビュート)などのジャズ、タニア・マリア、ルチアーナ・ソウザ等のラテン、スティーリー・ダン(トリビュート)やジャック・ブルース等のロックと幅広い。特に2008年からアメリカのジャズピアニスト、編曲家のジム・マクニーリー(1949- )が参加し、2011年に主席指揮者に就任してからは、バンドの演奏能力に彼の編曲能力が加味されて、よりクリエイティブなレベルに達したようだ。別途観ることができたインタビューで、ジムが「以前からオレゴンの音楽が大好きだった」と述べており、ポール・マッキャンドレスがコンサートの最後で、ジムのことを「Founder of the feast」と呼んでいることから、本プロジェクトの仕掛け人は、ジム・マクニーリーと思われる。それにしても、CDやDVD製作でない放送用のライブのために、当日演奏された12曲すべてに対し、13人の奏者からなるビックバンドのアレンジを施すことは、譜面作成などの手間がPC技術の進歩により 補えるとしても相当大変なはずで、採算がとれるのかなという気もするが、ドイツにおけるこの手のアートに対する理解と支援の厚さがうかがえるものだ。

ストリーミングの画面をスタートさせると、シャンデリアを背景に、コンサート告知のテロップが現れ、時間のカウントが始まる。オーディエンスのガヤガヤという音を聴きながら6分ほど経過すると、画面がステージに切り替わり、拍手とともにメンバーがステージに登場する。司会者によるドイツ語のアナウンスの後、21.「If」が始まる。ラルフの独奏からバンドのテーマとなり、途中からブラスの音が加わる。最初は控えめであるが、ソプラノサックス・ソロの後にビッグ・バンドによるアンサンブルのパートが入り、その厚みのある音は、聴く者の心をワクワクさせる魅惑に満ちたものだ。そのサウンドに触発されたせいか、オレゴンの連中のプレイも、いつもとは異なる感じで、新鮮な響きが随所で楽しめる。22.「Short 'N Stout」は、テーマからブラスが前面で出ていて、曲の良さがいっそう引き立っている。インタビューのなかでジムが「彼ら(オレゴン)は、自分達だけで十分な演奏をしてきたので、彼らの演奏・曲に害を与えないように編曲した」と言っているとおり、オレゴンの演奏が持つ「間合い」、演奏空間・透明感といった持ち味を残しながら、要所でホーンのパートを加えることにより、ダイナミックレンジを広げ厚みを与えることに成功していると思う。ビッグバンドは、多くのスタジオ、ライブで活躍してきた人達なので、譜面さえあれば初見で演奏でき、リハーサルも最小限で済むと思われるが、オレゴンのメンバーもここでは、譜面をめくりながら神妙にプレイしている。そういう意味で、いつものライブに見られる自由奔放な雰囲気は影を潜めているが、アンサンブルにおける緊張感、連帯感が強く感じられ、それが精神的高みに至っているのだ。まさにビックバンド・ジャズを聴く際に感じる独特なエモーションがここにある。なお、ここではポールのソプラノ、ラルフのシンセギターに加えて、ビッグバンドからトニー・ラカトスがエネルギッシュなテナーサックスのソロを披露している。彼はハンガリー出身で、1981年より活動拠点をドイツに移し、自身名義のアルバムも多く出している人だ。1994年のマーク・コープランドとの共演盤「Songs Without End」R17が初出で、2012年のアルバム「Family Tree」でオレゴンがカバーした 23.「Tern」は、ビッグバンドのアレンジが特に生きていて、目眩くダイナミックな音世界が展開される。疾走感溢れるポールのソプラノ、ラルフのピアノソロの後に、ビッグバンドからハインツ・ディエター・ザウアボーンがアルトサックス・ソロを入れるが、その溢れるように噴き出す澱みないプレイは誠に素晴らしく、チャーリー・パーカーが吹いているかのような錯覚にとらわれるほどだ。この人も、多くのレコーディングやライブ、教育活動で有名とのこと。エンディングにおけるドラムスと他の奏者との4ヴァースの掛け合いもスリリング。24.「Lost In The Hours」のテーマ部分で、テーマでラルフのギターとフリューゲルホーンがユニゾンでプレイするのが、はっとするほど新鮮。弱音器を付けたトランペットなど、繊細な音によるアンサンブルの美しさは格別だ。25.「As She Sleeps」のようなこじんまりした曲では、サックスの連中がフルートを演奏。彼らは、皆マルチ奏者で、曲毎にソプラノ・サックス、クラリネット、バス・クラリネット等、様々な楽器に持ち替えている。ポールにとっては、本コンサート唯一のイングリッシュ・ホルンによる演奏で、神妙に丁寧に吹いている。「風の神」というタイトルの26.「Aeolus」は、ジムによる絶妙な編曲により、不安定な雰囲気のテーマをより鮮やかに浮かび上がらせている。1976年生まれの若手プレイヤーで、自己名義のアルバムも出しているアクセル・シュロッサーがフリュゲルホーンのソロを担当。マークのドラムソロは、フェルト付きの太鼓のバチと木製のスティックを使い分けた繊細なプレイ。ここでファーストセットが終わり、ジムがオレゴンのメンバーを紹介するが、ポールの事を間違えて「ラルフ・マッキャンドレス」と呼んでしまい、あわてて言い直していることろが面白い。

休憩時間の間は、画面が当初と同じシャンデリアの背景となり、休憩の告知が表示される。オーディエンスのガヤガヤ音を聴きながら、休みがカットなしでそのまま流れるのが本当のライブっぽくて面白い。約27分後、メンバーが登場し27.「Redial」でセカンドセットが始まる。テーマの途中でブラスが加わる様を聴いていると、何とも言えない高揚感が湧き上がってくるのが、ビックバンドの醍醐味。ポールが「ラルフがオレゴンのために書いた最初のスウィンギーな曲」と紹介する 28.「The Glide」は、フルート、クラリネットによるスムーズなアンサンブルが気持ち良い。28.「Bayonne」は、ポールが「友人からブラジルのバイヨンのリズムと言われたが、実際は違っていたので、ニュージャージー州にある町の名前にしたと」言ってオーディエンスを笑わせる。ここではブラスがかなり積極的で前面に出ている。30.「Queen Of Sydney」は、カナダのヴァンクーバーで運航していた巨大フェリーで、今は廃船になって野ざらしになっていると紹介される。ラルフは本コンサートでは、鍵盤楽器としてのシンセサイザーをあまり使っていないが、ここで彼は初めてコンピュータープログラミングによるシンセのリフを操作、そのPC画面がばっちり写し出される。この曲もポールの作品で、コンサートで取り上げる曲の多さ、ジムと共にコンサートのアナウンスを担当していることから、本プロジェクトにおいてオレゴン側でのイニシアティブを彼が取っていることがわかる。ブラスセクションの連中を従えて吹きまくるという意味においても、彼のプレイに対する気合いの入れ方は凄く、彼のライブ・パフォーマンスの白眉といえる出来となっている。ここでのジムの編曲は大胆で、曲の持つ不思議な雰囲気を倍加させている。特に途中で入るラルフのピアノソロが、霧の晴れ間といった透明感にあふれる感じで、両者の対比が鮮やかだ。ラルフはシンセギターを抱えながらピアノを弾いている。ポールのバス・クラリネット・ソロもムーディーな感じで良い。ここでジム・マクニーリーがビッグバンドのメンバーを紹介。ちなみに上記のパーソネルは、画面左からの順番と一致している。31.「In Stride」は、祝祭感のある賑やかな曲なので、ビッグバンドのアレンジにうってつけだ。マークがパワフルなドラムソロを見せ、ブラスと掛け合いを演じる。短いアンコールの拍手の後に演奏される32.「Leather Cats」は、本コンサート唯一のグレンの曲。ラルフは、ピアノに対して直角にセットした小型のシンセサイザーを弾いている。ジムは、エキセントリックな曲調を楽しみながら編曲したようで、見事な計算による編曲により、ハチャメチャな感じを演出している。

アッシャンフェンブルグの1日前に収録されたリュッセルハイムのコンサートは、演奏曲目や各曲の構成は同じであるが、「The Glide」と「Bayonne」の2曲については、曲順が逆になっている。資料によると、ポールの他にグレンやラルフがアナウンスを担当したとあるが誤りで、正しくは指揮者のジム・マクニーリーが喋っている。ただし15日でジムが話していた部分につき、16日ではポールがアナウンスしている部分もある。同じ曲を演奏していても、ジャズなのでプレイヤーのソロは全く異なるので、聴きごたえは十分だ。


オレゴンの音楽に新しい世界を開いたもので、創造性と連帯感に富んだ名演となった。

[2013年3月作成]


 
Domicil, Dortmund, Germany (2014)  音源   
 




Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, Synth Guitar, Piano, Synthesizer 
Mark Walker : Drums, Percussion

[1st Set]
1. If [Towner] 9:10
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
2. Redial [Towner] 10:05
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion, Drums) 
3. The Glide [Towner]  10:07 
 (Tenor Sax, Piano, Bass, Drums)
4. As She Sleeps [Towner]  8:22 
 
(English Horn, C. Guitar, Bass, Drums)
5. Free Piece [Oregon]  9:09 
 
(Bass Clarinet, Whistle, Synthesizer, Piano, Bass, Drums, Percussion)
6. In Stride [Towner]  8:16 
 (Soprano Sax, Whistle, C. Guitar, Bass, Drums)

[2nd Set]
7. On The Rise [Towner] 8:47
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
8. The Creeper [Towner] 7:31

 
(Bass Clarinet, C. Guitar, Bass, Drums)
9. Tern [Towner] 8:14
 (Soprano Sax, Piano, Bass, Drums) 
10. Green And Golden [Towner]  9:50 
 
(Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums) 
11. Improvisation [Oregon]  7:58 
 
(Whistle, Synthesizer, Piano, Synth Guitar, Bass, Drums, Percussion)
12. Aeolus [Towner]  11:50 
 (Soprano Sax, Piano, Bass, Drums)

[Encore]
13. Witchi Tai To [Jim Pepper]  10:30 
 (English Horn, Whistle, Sopranino Sax, C. Guitar, Piano, Bass, Drums, Percussion)

14. Anthem [Towner] 8:09
 
(Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums)


収録: 2014 March 27, Domicil, Dortmund, Germany

  

ドルトムンドはドイツ中西部、ノルトライン=ヴェストファーレン州にある人口58万の都市。ドミシルはドルトムンド駅の近くにあるジャズクラブ。

内容的には、4月4日のフィアセンのコンサートとほぼ同じ。唯一異なるのは、13.「Witchi Tai To」の後に14.「Anthem」を演っていること。当日1曲多く演奏したか、4日の演奏が録音でカットされたか、どちらかは不明。極めて音質の良いオーディエンス録音(会場の音響と録音の両方が良かったものと思われ、マイクの近くにいる人の声や咳払いが時々入るので、サウンドボードではない。左右の分離もはっきりある)で、音の暖かみ、各楽器のバランス、オーディエンスの拍手など完璧。大音量で聴いても疲れず、あたかも現場に居るような気分になる。2.「Redial」の後で、ポールによる挨拶とメンバー紹介。 3.「Glide」で、ポールはいつも通りソプラノ・サックスを吹いている。4月4日のフィアセンでテナー・サックスに変わったのは何故なのかな? 5.での即興演奏は、リズムなど一定のパターンなしの自由なパフォーマンスなので、「Free Piece」とした。「Something we make up」と紹介したのはハスキーな声のグレン。

コンサートにおけるアナウンスは主にポールの担当となるが、8.「Creeper」の曲紹介はグレン。9.「Tern」で、ポールは「1969年に書かれたが、録音はつい最近となった曲」と紹介している。10.「Green And Golden」では、珍しくラルフが出だしをとちって、やり直している。11.は、マイクが「We product what we play」と言っているとおり、一定のパターンに基づいて演奏しているので、「Improvisation」とした。切れ目なしに12.「Aeolus」に続く。アンコールの13.「Witchi Tai To」が終わった後もオーデイエンスは満足せず、長めの拍手の後にメンバーが再登場。ポールが、昨日のウィーンから10時間かけて移動してきた旨を語り、クルーへの感謝の言葉と、会場販売のCDの宣伝をして、最後の曲 14.「Anthem」でコンサートは終了する。

ノーカット、最高の音質、演奏による素晴らしい音源。

[2023年3月作成]


 
Weberhaus Suchteln, Viersen (2014)  音源   

 



Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, Piano, Synthesizer 
Mark Walker : Drums, Percussion

[1st Set]
1. If [Towner] 8:59
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
2. Redial [Towner] 10:16
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion, Drums) 
3. The Glide [Towner]  9:44 
 (Tenor Sax, Piano, Bass, Drums)
4. As She Sleeps [Towner]  11:16 
 
(English Horn, C. Guitar, Bass, Drums)
5. Improvisation [Oregon]  7:59 
 
(Oboe, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion)
6. In Stride [Towner]  9:34 
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums)

[2nd Set]
7. On The Rise [Towner] 9:37
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
8. The Creeper [Towner] 7:42

 
(Bass Clarinet, C. Guitar, Bass, Drums)
9. Tern [Towner] 6:52
 (Soprano Sax, Piano, Bass, Drums) 
10. Green And Golden [Towner]  10:06 
 
(Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums) 
11. Free Piece [Oregon]  9:24 
 
(Soprano Sax, Bass Clarinet, Whistle, Synthesizer, Piano, Bass, Drums, Percussion)
12. Aeolus [Towner]  11:26 
 (Soprano Sax, Piano, Bass, Drums)

[Encore]
13. Witchi Tai To [Jim Pepper]  12:46 
 (English Horn, Whistle, Sopranino Sax, C. Guitar, Piano, Bass, Drums, Percussion)



収録: 2014 April 4, Weberhaus Suchteln, Viersen, Germany
 

ズーヒテルンはドイツ中西部、フランスとの国境近くフィアセン郡にある町。ポール・マッキャンドレスのサイトにある年表によると、2014年3月下旬から始まったヨーロッパ・ツアーの最終日が本コンサートで、その後オレゴンとしての同年中の公演はない。そして翌2015年のツアーは4月9日が初日になるが、そこにはパオリノ・デラ・ポルタが参加しているのだ。ということで、本音源はオレゴンにおけるグレン・ムーア最後の演奏を記録したものということになる。ポールのインタビューによると、グレンの脱退は4月のヨーロッパ・ツアーの少し前に決まったとのことなので、本コンサートが行われた 2014年前半の時点では、彼の脱退の話はなかったものと思われる。でもここでは「Leather Cats」など、グレンの曲を演っていないので、何かあったのかな?内容的には普通のもので、特に変わった点はない。といっても、これがグレン最後の演奏と思って聴いていると、なんかやるせないものがある。

2.「Redial」は、ドラムソロの後2分ほど、リズムが止まりフリーフォームになる部分がある。3.「The Glide」は通常と異なる演奏。いつもはソプラノ・サックスを持つポールが、ここではテナー・サックスを吹いているのだ。ライブで彼がテナーを演奏することは滅多にないので、これは美味しいトラック。5.は最初はフリーフォームで始まるが、途中からリズムが付くので、5.「Improvisation」とした。6.「In Stride」におけるラルフのフレイム・ギターのソロの終盤で、アルバム「Always, Never And Forever」 1991 O18に入っていた「Beppo」の旋律が出てくる。

10.「Green And Golden」が終わった後のオーディエンスの拍手がひときわ大きいのは、当地におけるドイツ人の音楽の好みを表しているようだ。11.「Free Piece」はリズムのない即興演奏で、メドレーで12.「Aeolus」に続く。音源は13.「Witch Tai To」で終わっているが、アンコールを求める拍手が続くなかフェイドアウトしているので、もしかするともう1曲(もしかして 「Leather Cats」!)演っているかもしれない。なんて想像を膨らませるのも面白いね。

グレン・ムーア、オレゴンとしての最後のコンサート。

[2023年2月作成]


 
Lisinski Concert Hall, Zagreb, Croatia (2015)  映像    
 
Paul McCandless : Soprano Sax,
Paolino Della Porta : Bass
Ralph Towner : Piano
Mark Walker : Drums

1. The Glide [Towner]  10:12 
 (Soprano Sax, Piano, Bass, Drums)

収録: 2015 April 9, Lisinski Concert Hall, Zagreb, Croatia

 
グレン・ムーアは2014年4月のコンサートを最後にオレゴンから脱退し、イタリア人のパウリオ・デラ・ポルタが後任となった(彼については「Weberhaus Suchteln, Viersen 2015」を参照のこと)。

新メンバーによるオレゴンのライブは翌2015年4月のヨーロッパ・ツアーから始まる。ポール・マッキャンドレスのサイトの「Past Performance」によると、その皮切りがクロアチアの首都ザグレブで行われた本公演であり、パオリオ・デラ・ポルタがオレゴンでベースを弾いた最初のコンサートの模様を捉えた映像ということになる。

曲はお馴染みの1.「The Glide」で、ラルフはこの曲が発表された1985年以降しばらくは、テーマ演奏の際にピアノとシンセサイザーを同時に弾いていたが、ここではピアノしか弾いていない点が面白い。ポールのソプラノ・サックスのソロの後、パウリノのベースソロになる。音使いやタッチなどアクが強かったグレンに比べて端正でメロディアスなプレイが印象に残る。

僅か1曲であるが、新ベーシスト加入後最初のライブの模様を観ることができる。

[2024年10月作成]


Weberhaus Suchteln, Viersen (2015)  音源 





Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass Clarinet, Whistle
Paolino Della Porta : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, Piano, Synthesizer 
Mark Walker : Drums, Percussion

1. If [Towner] 7:29
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
2. Anthem [Towner] 8:09
 
(Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums)
3. The Glide [Towner]  10:31 
 (Soprano Sax, Piano, Bass, Drums)
4. As She Sleeps [Towner]  9:18 
 
(English Horn, C. Guitar, Bass, Drums)
5. The Creeper [Towner] 6:17
 
(Bass Clarinet, C. Guitar, Bass, Drums) 
6. Aeolus [Towner]  10:38 
 
(Soprano Sax, Piano, Bass, Drums)
7. Queen Of Sydney [McCandless]  8:50 
 (Oboe, Bass Clarinet, Synthesizer, Piano, Bass, Drums)
8. Redial [Towner] 10:06
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion, Drums)
9. Tern [Towner] 8:01

 (Soprano Sax, Piano, Bass, Drums) 
10. Duende [Towner]  7:52 
 (English Horn, C. Guitar, Bass, Drums)
11. Free Piece [Oregon]  7:25 
 
(Bass Clarinet, Whistle, Synthesizer, Bass, Percussion)
12. In Stride [Towner]  14:19 
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums)
13. Celeste [Towner]  7:54 

 
(Soprano Sax, Piano, Bass, Drums)

収録: 2015 October 23, Weberhaus Suchteln, Viersen, Germany


2015年春、グレン・ムーアがオレゴンを脱退するという衝撃的なニュースが届いた。かねてから自分でやりたがった音楽活動に専念すること、家族と一緒にいる時間を増やすことが理由というが、1984年に事故で無くなったコリン・ウォルコット(パーカッション)は別として、40年にわたり活動を共にしたオリジナル・メンバーがいなくなるのは、何とも寂しいものだ。とは言え、どんなに結束の固いグループでも、それとは別に自分独自の世界を追及したいという欲求はあるはずで、オレゴンのメンバーはグループ活動を続けながらも、各自がある程度ソロ活動を展開してきたわけであるが、年齢による体力・気力の減退と、残された時間があまりないという現実が背景にあるのだろう。

後任のベース奏者は、パオリノ・デラ・ポルタという1956年生まれのイタリア人で、ベボ・フェラ(Bebo Ferra: Guitar)、ステファノ・ボタグリア(Stefano Battaglia: Piano)、お馴染みパオロ・フレス(Paolo Fresu: Trumpet)といったイタリア・ジャズ界のトップ・ミュージシャンと多く共演し、自らの名によるソロアルバムを発表している。オレゴンの関係では、ポール・マッキャンドレスが2002年に発表したアルバム「Isole」に参加している。

会場の音響調整に時間がかかったようで、予定より遅れてコンサートが始まったらしい。1.「If」は、ラルフの独奏から始まる。オーディエンス録音というが、パーカッションを含む各楽器がくっきり聞こえ、臨場感に溢れたきれいな音だ。デラ・ポルタ氏のプレイはグレンほどアグレッシブでなく、優しい音選びなため、ベースの音がオフ気味だけど、ちょうどいい感じ。上記のソロや参加アルバムでは自作の曲も多く、それなりの個性を発揮しているので、オレゴンでは意識して控えめにしているのだろう。2.「Anthem」で聴かれるベースソロは、メロディックで、グレンのような想定外の音の飛躍はなく、堅実で気持ち良いプレイに徹している。3.「The Glide」は、リラックスしたまろやかなプレイに終始し、ベースソロも優雅そのもの。4.「As She Sleeps」を始める前に、ラルフが音響スタッフにギター・サウンド調整の注文をつけている。ここではスタジオ録音と異なり、イングリッシュ・ホルン、ベース、ギターのソロがたっぷり入る。5.「Creeper」で、ラルフはいつもはシンセ・ギターを弾くが、ここでは普通のクラギのままの演奏。そのため、音がおとなしく優しくなり、曲の雰囲気が変わっているのが面白い。6.「Aeolus」は、風のイメージを見事に表現するマークのドラムス、パーカッションの繊細なプレイが見事に捉えられていて、ラルフの透明感溢れるピアノも素晴らしい。

休憩後最初の曲は、7.「Queen Of Sydney」。コンピューターによるシンセサイザーのループが全編にながれ、それを背景にアヴァンギャルドであるが、同時にメランコリックでもある不思議なプレイが展開される。最後のループが止まり、ピアノのみが残るのが印象的。8.「Redial」でのオーボエ・ソロ中に雑音が入る、PAの不調は続いているようだ。といってもドラムスとパーカッションのソロは綺麗な音で、シェイカーのみのプレイでギターと掛け合いする場面はスリリングで聴きもの。即興風な演奏からテーマに戻る様は鮮やか。9.「Tern」は昔のジャズを彷彿される演奏であるが、4ビートではないのがミソ。10.「Duende」は新曲と紹介されるが、その後2016年に発表されたジャビール・ジロットのアルバムのタイトル曲となった。マイナー調の室内楽風の曲で、雰囲気はヨーロッパそのもの。ここでのベースソロは良く歌っていて、曲のムードによく合っている。11.「Free Piece」は、朗読のようなヴォイスのサンプリングで始まる。シンセサイザーとバス・クラリネット、ホイッスルを中心とした静かめな演奏。この曲の後、ラルフは再びギターのサウンド調整に時間をかける。12.「In Stride」のラルフのギターは、5.と同じくシンセ・ギターを使っていないので、きれいでクリアーな音になっている。マークのドラムス、パーカッションの強弱を効かせたプレイが生き生きしている。アンコールは、ラルフのピアノが光る13.「Celeste」でコンサートは終了する。

新メンバー、パオリノ・デラ・ポルタの地味ながらも、メロディックなプレイが楽しめる。グレンの脱退により、オレゴンのサウンドは、リラックスしてまろやかに、よりヨーロッパ的になったといえよう。

[2016年9月作成]


 
Pancevo, Serbia (2015)  映像  
 
Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Bass Clarinet, Whistle
Paolino Della Porta : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, Frame Guitar, Piano, Synthesizer 
Mark Walker : Drums, Percussion

1. If [Towner] 7:50
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
2. Anthem [Towner] 7:54
 
(Bass Clarinet, Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums)
3. The Glide [Towner]  10:23 
 (Soprano Sax, Piano, Bass, Drums)
4. As She Sleeps [Towner]  7:27 
 
(English Horn, C. Guitar, Bass, Drums)
5. The Creeper [Towner] 7:14
 
(Bass Clarinet, Frame Guitar, Bass, Drums) 
6. Queen Of Sydney [McCandless]  10:08 
 (Oboe, Bass Clarinet, Synthesizer, Piano, Bass, Drums)
7. Redial [Towner] 9:39
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion, Drums)
8. Aeolus [Towner]  8:53 
 
(Soprano Sax, Piano, Bass, Drums)
9. Free Piece [Oregon]  8:21 
 
(Bass Clarinet, Whistle, Frame Guitar, Synthesizer, Bass, Percussion)
10. In Stride [Towner]  9:47 
 (Soprano Sax, Frame Guitar, Bass, Drums)
11. Celeste [Towner]  6:52 

 
(Soprano Sax, Piano, Bass, Drums)

収録: 2015 November 8, Pancevacki Jazz Festival, Pancevo, Serbia

 
 
パンセボはセルビア共和国の首都ベオグラードから18キロ郊外にある人口12万の都市。パンセボ・ジャズ・フェスティバルは、1998年より毎年11月に開催され、2015年はヘッドライナーのひとつとしてオレゴンが参加した。演奏内容は10月のヴィエルセンとほぼ同じであるが、ノーカットの映像から推測するに、ステージの時間割りの都合から「Tern」、「Duende」をカットした短めのセットとなっている。観客席のやや左上からの撮影で、演奏中前に座ったオーディエンスが移動して画面を遮るシーンがある。撮影中はカメラは動かず、ズームもないが、各人の演奏模様がよくわかるベストアングルなので、単調さは感じない。スマホなどによる画像らしく、画面の鮮明さに欠けるが色彩はきれいで、音質および各楽器がバランスがよいので、約90分のステージに引き込まれて楽しんでいるうちに、あっという間に終わってしまう感じだ。

10月のステージとの相違点のみ言及する。3.「Glide」までは無言で演奏され、ここで初めてポールによるアナウンス、メンバー紹介が入る。映像なので、楽器をとっかえひっかえして演奏するポールの姿が観ていて面白い。5.「The Creeper」は、ここではラルフがフレイム・ギターを演奏し、シンセサイザーのような音をしっかり出している。ベースの音がしっかり聞こえるので、デラ・ポルタ氏のソロプレイをじっくり楽しめるのが有難い。6.「Queen Of Sydney」では、ラルフによるシンセサイザー操作が見えるし、マークが電子パーカッションを使っているのも見える。

7.「Redial」では、マークが右手でシェイカーを振りながら、左手でドラムソロする様が見もの。9.「Free Piece」は、ラルフによるシンセサイザー、フレイム・ギターの使い分け、ポールが横笛を持つシーン(息を吹き込んで音を出すが右手で穴を抑えて音を変えることはしないのが不思議)、マークが電子パーカッションを使って様々な音を出しているのが分かるなど、映像ならではの醍醐味がある。10.「In Stride」で、ラルフはここでもフレイム・ギターを使用。アンコールは、11.「Celeste」をしっとり演奏する。

カットやズームアップがないステージの全景を常に捉えることで、彼らの演奏の様が手に取るようにわかる映像。

[2017年8月作成]


Oregon With hr Big Band in Germany (2015)  音源 

 



Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass Clarinet
Paolino Della Porta : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, Frame Synth Guitar, Piano, Synthesizer 
Mark Walker : Drums, Percussion

Jim McNeely : Conductor, Big Band Arrangement

[hr Big Band]
Oliver Leicht : Sax (Alto)
Heinz-Dieter Sauerborn : Sax (Alto)
Steffen Weber : Sax (Tenor)
Stefan Karl Schmid : Sax (Tenor)
Rainer Heute : Sax (Baritone)

Peter Feil (Probably) : Trombone
Gunter Bollmann : Trombone
Felix Fromm: Trombone
Jan Schreiner : Trombone (Bass)

Thomas Vogel : Trumpet
Frank Wellert : Trumpet
Martin Auer : Trumpet
Axel Schlosser : Trumpet


1. If [Towner] 8:20
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion, Big Band)
 Announcement : Paul McCandless
2. Short 'N Stout [Towner] 10:10
 
(Soprano Sax, Synth Guitar, Bass, Drums, Big Band)
 
Announcement : Jim McNeely
3. Tern [Towner] 9:10

 (Soprano Sax, Piano, Bass, Drums, Big Band) 
 Announcement : Jim McNeely, Paul McCandless
4. Lost In The Hours [McCandless] 7:23
 
(Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion, Big Band) 
 Announcement : Jim McNeely
5. As She Sleeps [Towner]  6:15 

 (English Horn, C. Guitar, Bass, Drums, Big Band)
 Announcement : Jim McNeely, Paul McCandless
6. Aeolus [Towner]  10:10 
 
(Soprano Sax, Piano, Bass, Drums, Big Band)
 Announcement : Jim McNeely

7. Redial [Towner] 9:57
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion, Drums, Big Band) 
  Announcement : Paul McCandless
8. Distant Hills [Towner]  7:55 
 
(English Horn, C. Guitar, Bass, Drums, Big Band)
 Announcement : Jim McNeely, Paul McCandless

9. Bayonne [McCandless]  9:02 
 
(Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Big Band)
 Announcement : Jim McNeely, Paul McCandless
10. Queen Of Sydney [McCandless]  12:16 
 (Oboe, Bass Clarinet, Piano, Synthesizer, Synt Guitar, Bass, Drums, Big Band)
 Band Introduction : Jim McNeely
11. In Stride [Towner]  14:35 
 (Soprano Sax, Synth Guitar, Bass, Drums, Big Band)
 Announcement : Jim McNeely

12. The Glide [Towner]  9:01
 (Soprano Sax, Piano, Bass, Drums, Big Band)

収録: 2015 November 13, Centralstation, Darmstadt, Germany


ダルムシュタットは、フランクフルトの南約30キロにある郊外都市で、セントラルステイションは、1888年に建造された町の発電所を改装して1999年オープンしたイベント会場。同所については、 2006年11月3日のオレゴンのライブ音源がある。

2013年3月に行われたオレゴンと hr ビッグバンドのコンサートは大好評だったようで、2年半後に再共演が実現した。前回との最大の相違は、グレン・ムーアの脱退によりパオリノ・デラ・ポルタがベースを弾いている点だ。オレゴンにおいて、サウンドの基盤作りとなる重低音のベースの役割は、ここではビックバンドのアンサンブルが担う形になっているため、ベース奏者の変更自体は全体のサウンドには大きな影響を与えていない。ベースソロの部分で両者の個性の違いがでる位だ。ただしグレン作の「Leather Cats」が曲目からはずされたため、その代わりとして「Distant Hills」のスコアを新たに書いて追加している。そして「Leather Cats」が最後のアンコール曲だったため、前回は9番目だった「The Glide」を最後に移すという曲順の変更を行っている。それ以外は曲順・ビッグバンドのアレンジは同じで、ビッグバンドのメンバーにつきトロンボーン、サックス奏者で若干の変更があるのみ。

1.「If」演奏後のポールのアナウンスで、今回のコンサートは、当地(11月13日ダルムシュタrット)と翌日のフランクフルトの2回行われたことがわかる。2022年のマーク・ウォーカーのインタビューによると、hr Big Bandと行ったレコーディングが正式発売されるかもしれないとのこと(それが当該コンサートか、別途スタジオで録音したものかは不明)。前述のとおり、ビッグバンドのアレンジや曲の構成が同じになっているが、演奏を聴く際に湧きあがる高揚感や各人のソロを聴くスリリングな快感は変わることなく、この上もなく素晴らしい。以下特記事項のみ述べるので、個々の曲および進行については、2013年の記事を参照してほしい。

ビックバンドのソリストについて。2.「Short 'N Stout」でのテナー・サックスはステフェン・ウェバー。3.「Tern」のアルト・サックスはハインツ・ディエタ・サウワボーン。6.「Aeolus」のフリューゲル・ホーンは、アクセル・シュロッサー。編曲・指揮者のジム・マクニーリーは、ポールと共にアナウンスを担当しているが、3.「Tern」の後のメンバー紹介で、パオリノの名前をうまく発音できず「Sorry, new guy」と言ってごまかしている。彼は名前を間違える癖があるようで、ラルフの曲をポール作と言って、あわてて訂正する場面もある。本音源の一番の謎は、 10.「Queen Of Sydney」の後に行われたビッグバンドのメンバー紹介で、トロンボーン奏者の一人を「Peter」と紹介したが、その後の姓を言い間違えてると思われる点。おそらく Peter Feilのはずなんだけど、そう言っていない。彼が発した「サッコー(と聞こえる)」という発音から、前回コンサートでメンバーだった Christian Jaksjoとの混同も考えられるが、その場で訂正していないので真相は不明。「ピーター・サッコー」という奏者が別に存在する可能性もあるが、同バンドのメンバーの履歴を調べた限りでは、見当たらなかった。西洋ではファースト・ネームで呼び合うのが普通なので、ここでは Peter Feilとし、「恐らく」の但し書きをつけた。また担当楽器の種類で、バストロンボーンはヤン・シュレイナーとわかっているが、残る3人のうちバリトン・トロンボーンを誰が担当したかも不明。

前回のコンサートになかった唯一の曲 8.「Distant Hills」について。ポールがアナウンスで、「ラルフが70年代初め書いた曲 (1973 O3) だが、後年"Live At Yoshi's"2002 O24収録にあたり、新たなセクションを書き下ろした」と語っている。今回のコンサートのためにジム・マクニーリーが書いたスコアは、エコーや霧がかかったような音の壁を作り、交響曲的な色合いを付与している。

素晴らしかった2013年のコンサートの2年半後の再演。

[2023年1月作成]


 
Teatro ABC, Catania Jazz (2018)  音源  
 
Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Bass Clarinet, Whistle
Paolino Della Porta : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, Frame Guitar, Piano, Synthesizer 
Mark Walker : Drums, Percussion

1. If [Towner] 6:51
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion)
2. Anthem [Towner] 7:32
 
(Bass Clarinet, Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Drums)
3. The Glide [Towner]  9:40 
 (Soprano Sax, Piano, Bass, Drums)
4. As She Sleeps [Towner]  5:41 
 
(English Horn, C. Guitar, Bass, Drums)
5. The Creeper [Towner] 7:14
 
(Bass Clarinet, Frame Guitar, Bass, Drums) 
6. Aeolus [Towner]  8:19 
 
(Soprano Sax, Piano, Bass, Drums)
7. Duende [Towner]  6:38 
 ()
8. Free Piece [Oregon]  9:04 
 ()
9. In Stride [Towner]  6:21 
 (Soprano Sax, Frame Guitar, Bass, Drums)
10. Witchi-Tai-To [Jim Pepper]  8:43 

 
(Soprano Sax, Piano, Bass, Drums)

収録: March 20, 2018, Teatro ABC, Catania, Italy

 
オレゴン最後から2番目のコンサート。

オレゴン2018年のヨーロッパ・ツアーは、3月18日のドイツ・ストットガルトから始まり、3月21日のイタリア・パレルモで終わった。ポール・マッキャンドレスが今後はオレゴンでのツアーはやらないとしたため、バンドとしての活動はこれが最後になった。ラルフも当時78歳ということで、体力的にハードなバンドのコンサートはこれ以上は難しかったものと思われる。ポールの公演記録によると以降のオレゴンのライブはない。その後二人ともコンサート活動を続けているが、2023年に83歳になったラルフは、コンサート中の体調不良が伝えられなど、年齢的にかなり大変になってきているようだ。

ということで、オレゴン最後のコンサートは3月21日イタリア・パレルモにあるTeatro Golden となるが、現在音源が出回っているもので、最後のものが前日3月20日のカタニア、Teatro ABCにおける本音源となる。

オーディエンス録音で、時々マイクの近くにいる観客の咳の音が入る。音質はとてもよく、コンサート会場にいるかのよう。曲間のアナウンスはカットされ演奏のみ。本音源(83分)は短めで、コンサートで演奏された曲の全てであるかは不明。高年齢バンドの一般的傾向として、コンサートの時間が短めとなり、曲目や演奏内容にあまり変化がなくなるが、オレゴンも例外でないようだ。野心的なプレイは影を潜め、淡々とプレイしているように聞こえるが、味わい深い枯れた演奏という見方もできるだろう。

ポールの意思表示のタイミングがわからないので、彼らがこのコンサートで演奏している時に、オレゴンが終わりであることを知っていたか否かはわからないが、音源上の46年間 (1972年からの2018年まで)の長い道のりに思いを馳せ、なんとも言えない感慨に浸ってしまう。