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Free Music Store, New York (1972) [Oregon]  音源



Paul McCandless: Oboe, English Horn
Glen Moore: Bass, Piano (4,15)
Ralph Towner: Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Esraj ? (6)  
Collin Walcott: Tabla, Sitar (6,11), Percussion, Violin (8), Clarinet (15)

1. Spring Is Really Coming [Moore] 5:24
 (Bass, Percussion)
2. Improvisation [Oregon] 6:34
 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Tabla,Percussion)
3. Ghost Beads [Towner] 9:14
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion) 
4. Land Of Heart's Desire [Moore] 7:46
 (Oboe, C. Guitar, Piano, Bass, Percussion) 
5. 1 x 12 [Towner] 2:19
 (12st. Guitar)
6. Aheer [Walcott] 14:37
 (Oboe, C. Guitar, Sitar, Esraj ,Bass)
7. Unknown Title [Unknown] 1:52
 (Oboe, C. Guitar) 
8. Free Piece [Oregon] 6:38
 (Oboe, C. Guitar, Piano, Violin, Bass, Percussion)
9. Icarus [Towner] 6:49
 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Tabla)
10. Unknown Title [Unknown] 3:45
 (English Horn, Bass)
11. Blue In Green [Miles Davis, Bill Evans] 9:46
 (Oboe, C. Guitar, Sitar, Bass) 
12. North Star [Towner] 7:01
 (Oboe, Piano, Bass, Percussion)
13. Tabla Solo [Walcott] 7:40
 (Tabla, Voice Percussion)
14. Recuerdos [Francisco Tarrega, Arr. Towner] 6:03
 (Oboe, 12st. Guitar, Piano, Clarinet, Bass) 
15. Free Piece [Oregon] 6:36
 (Oboe, 12st. Guitar, Piano, Clarinet, Bass) 
16. Canyon Song [Towner] 5:48
 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Percussion)

Recorded Febuary 9 1972, New York
Broadcast by WBAI New York


[2020年7月追記]
本音源は2000年代後半に初めて聴いたが、2020年になってSpotifyで公開されたバージョンを聴くことができました。そこには前者にはない曲と、それに続く司会者のアナウンス、およびメンバー紹介が含まれ、音質も良くなっています。ただしSpotifyの日付表示「2 Sep」は誤り。音源の最後で、アナウンサーが「2月9日録音」と明言しており、かつ10月9日の同所での音源(下述)と比べると、レパートリーがより古いことが証拠です。おそらく欧州式日付表示(DD/MM)と米国式(MM/DD)を間違えたものと思われます。


レコードデビュー前のオレゴンの演奏が楽しめる貴重な音源。WBAIはニューヨークを本拠地とし、昔から戦争反対を唱えるなど政治面では左派、新しいアーティストを積極的に支持してコンサートやドラマを放送するなど、芸術的では進歩的なFMラジオ局だ。当時のオレゴンは、ポール・ウィンター・コンソートから独立して地道な活動を続けていた時期と思われる。彼らが以前1970年に録音した音源(後に「Our First Record」として発売 O1)は、当時はお蔵入りとなり、レコードデビューは1972年の「Music Of Another Present Era」O2 だった。ここでの演奏曲目が、その後のスタジオ録音版とはアレンジが異なることを考えると、これらの演奏は、デビュー作の録音のためのサウンド作り中のものと推測され、音楽的にも前述の O1やポール・ウィンター時代のスタイルが残った過渡期的なものに聴こえる。

1.は、Spotifyで初めて聞くことが出来た曲。Spotifyでは「Set1」となっているが、前述のO2に入っていた「Spring Is Really Coming」が正しいタイトル。この曲のあとで女性司会者によるアナウンスが入る。その背景で緊急車両のサイレンが聞こえるのが興味深く、彼女は「ここは禁煙です」と言っていることから、コンサート会場が防音設備のない室内であることと推測される。そして彼女がラルフのことを「Roger Towner」と紹介するのを聞いて笑ってしまった。2.は雰囲気的には「Brujo」の間奏に近いが、テーマの部分がないので「Improvisation」とした。演奏は切れ目なく 3.「Ghost Beads」(後に「Winter Light」1974 O4に収録)に続くが、Spotifyでは2.3.をまとめて「Brujo」としている。各楽器の音はクリアーで、特にベースの音が生々しく、初期のグレン・ムーアのベースがいかに強靭であったか、よくわかる。4.「Land Of Heart's Desire」はピアノの独奏から始まるが、途中からギターが被さってくるので、グレンが奏者と思われる。途中からバンドがフィルインし、クラギのアルペジオをバックにオーボエがメロディーを奏でる。デビュー盤に収録されたものとはアレンジが全く異なるので聴いていて面白い。グレンの作品にしては哀愁あるメロディーだが、彼独特のストイックなムードがある曲。ラルフの間奏ソロを聴くと、その頃には彼のスタイルが既に完成されていたことがわかる。5.「1x12」はラルフによる12弦ギターの独奏。1972年という時期に、このような高度でかつパンキッシュなソロを弾いているとは、驚異的である。曲自体は彼の初ソロアルバム「Trios/Solos」1973 R1に収められているが、細部の演奏は異なり、インプロヴァイズ部分を含む変奏曲というべきか? ここで本音源で聞こえる「コンコン」という音は、ラルフがリズムを取るために、足を踏み鳴らしていたものと判る。曲終了後のオーディエンスの歓声・拍手が、この演奏を目の当たりにしたオーディエンスの驚きを伝えている。次はシタールがメインの曲で、長い音合わせ(チューニングマシンがない時代 !)の後に始まる演奏には、メロディーを奏でるシタール以外に、和音を担当するインド楽器が聴こえる。おそらくラルフがエスラジャ(?)を弾いているのではないかと思う。演奏はすぐにコリンの独奏になり、途中からは開放弦を目一杯鳴らしたプレイになる。いままでに私が聴いたコリンのシタール演奏のなかで最もエキサイティングなものだ。そしてバンドが入りテーマが演奏され、ギターとシタールの掛け合いに移ってゆく。オーボエソロの背後でもシタールは弾きまくり。ベースソロの後、グループによるコレクティブ・インプロヴィゼイションで大いに盛り上がり、最後は「Our First Record」O1でおなじみのリフが出てきて終わる。スタジオ録音盤では4分足らずの地味な曲だったが、ここでは14分を超える激しい演奏による大作に仕上げられた。既存のスタジオ録音にはない、オレゴンによる本格的なインド音楽演奏のお宝音源だ。7.はギターとオーボエのデュエットによるクラシック風の曲。その後のオレゴンは、ジャンルを取り去ったサウンドを志向し、「・・・調」と呼べる曲がなくなってゆく分、この手の曲は、彼らとしては黎明期、独自のスタイルを確立する前の過渡期のサウンドといえる。8.「Free Piece」は即興演奏で、コリンはバイオリンを演奏している。

名曲 9.「Icarus」は、ポール・ウィンターでの録音で評判をとっていた曲で、初期のオレゴンによる演奏を聴くのはこれが始めてだ。ラルフの12弦ギターは気合が入っているし、コリンのタブラ、特にグレンのベースのしなやかなリズムが素晴らしい。曲後のオーディエンスの反応も熱狂的だ。10.はポールのイングリシュ・ホルン(オーボエより音が低い)とベースのデュオで、ラルフは非参加。 11.「Blue In Green」は、ビル・エバンスが参加したマイルス・デイビスの大傑作「Kind Of Blue」1959に収録されていた両者による共作曲で、ラルフのソロやデュエットでの演奏はいくつかあるが、オレゴンによるこの曲の演奏を聴けるのは、私が知る限りここだけ。ここではシタールは単音のメロディーを奏で、西洋楽器的な演奏となっている。シタール、オーボエ、ギター、ベースとソロが入れ替わり、メンバーによる曲への愛着と尊敬の念が伝わってくる。12.「North Star」は、デビュー作に収録されたレコード版と異なり、タブラを使用せず、ドラムセットによるプレイに終始していため、大幅に異なるサウンドとなった。ラルフの若々しいピアノプレイが楽しめる逸品。次はコリンによるタブラの独奏。途中でタブラを叩きながら、早口ヴォイスによるパーカッションを披露してくれる。それにしてもなんであんなに早く、細かく叩けるのだろう? 14.「Requerdos」は、「Our First Record」O1の解説のとおり、フランシス・タルレガの曲をブラジル音楽風にアレンジしたもので、「・・・風にアレンジした」オレゴン黎明期の曲といえよう。ここでの人懐っこいメロディーと演奏は息抜きとなり、次の即興曲 15.への対比となるものだ。なお15.ではグレンがピアノ、コリンはクラリネットを吹いているようだ。最後は1970年の「Our First Record」O1が初録音で、「Distant Hills」1973 O3にも収録された16.「Canyon Song」だ。これは比較的オーソドックスな演奏で、最後に盛り上がりをみせて終わる。

私が聴いた音源では、以上のトラックに加えて、女性アナウンサーによる番組の締めくくりが入っていて、そこで本音源のソースや録音日を特定することができた。演奏されてから50年近くも経った今日、オレゴンの黎明期の演奏を110分の長きにわたり聴くことができる、夢のようなお宝音源。


[2023年9月追記]
ポール・マッキャンドレスのサイトにある「Past Performances」では、本コンサートが2月9日に行われたとあるが、ここでは番組アナウンサーの発言とおり2月2日としました。


Radio Bremen Sendesaal/Studio F, Bremen (aka "1974") (1974) [Oregon] 音源


Paul McCandless : Oboe, English Horn, Percussion (7)
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Percussion (7) 
Glen Moore : Bass, Piano (4, 5)
Collin Walcott : Sitar, Tabla, Percussion, Clarinet (5), C. Guitar (5), Bass (4)

1. Brujo [Towner] 8:28
 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Tabla)
2. Ghost Beads [Towner]  14:19
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla)
3. Dark Spirit [Towner]  14:21
 (English Horn, Sitar, C. Guitar, Bass) 
4. Ogden Road [Towner]  12:13
 (Oboe, 12st. Guitar, Piano, Bass) 

5. Distant Hills [Towner]  9:21
 (English Horn, Oboe, Clarinet, 12st. Guitar, C. Guitar, Piano, Bass) 
6. New Tune [Towner]  12:57
 (Oboe, C. Guitar, Piano, Bass, Drums) 
7. Raven's Wood [Towner]  17:49
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion)
8. Canyon Song [Towner]  10:41
 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Drums) 
9. The Silence Of A Candle [Towner]  3:21
 (English Horn, Sitar, 12st. Guitar, Bass)

Recorded March 14, 1974, Radio Bremen Sendesaal/Studio F, Bremen, Germany

2021年に「1974」というタイトルで突然CDと配信で発売されたオレゴン1974年3月のドイツ・ツアーの音源。ブレーメンのラジオ局が放送用に録音したもので、会場も同局の放送用ホール(Sendesaal)スタジオFとなっている。資料では同ツアー2番目のものとあったが、ポール・マッキャンドレスのサイト「Past Performamces」では、3月10日の初回ミュンヘンと3月14日のブレーメンの間に3月13日のハンブルグがあるため、正しくは3番目となる。音質最高の完璧な録音で、発掘されたテープを有名なエンジニアがラルフとポール監修のもとでマスタリングしたそうだ。グレンのうねるベース音がきちんと捉えられていて、彼の演奏はバンドにおいてオーケストラのストリングスのような役割を負っていたことがよくわかる。またポールのオーボエ、コリンのタブラの音に厚みがあって、異なる楽器の音に聞こえるほどだ。全部で約103分と演奏時間はたっぷりあるが、ここには常連曲の「Free Piece (即興演奏曲)」が含まれておらず、当日演奏しなかったのか、あるいは本作からオミットされたかのどちらかは不明。

1.「Brujo」は各楽器のインタープレイによるインプロヴィゼイションから始まり、途中でテーマに入った後、ポールの素晴らしいオーボエ・ソロが続き、最後はテーマに戻る構成。終了後に拍手が入るので、オーディエンスを招いたスタジオ・ライブということがわかる。2.「Ghost Beads」はコリンのタブラ独奏によるイントロの後にテーマになる。ここでもポールのプレイは切れ味抜群で本当に調子が良さそう。ラルフのギターも大変リアルに録音されていて、左手の押弦・右手のピッキングの感触まで伝わってくるようだ。3.「Dark Spirit」におけるコリンのシタール・ソロは狂おしいほどの熱演で、聴くものを陶酔させる魔力がある。続くポールのソロはいつもよりも音が低く、ソプラノ・サックスのようにも聞こえるが、当時彼はまだ使っていなかったはずなので、イングリッシュ・ホルン使用と推定した。グレンの弓弾きによるベースもコリンとポールに煽られたか、いつになくエキサイティング。4.「Ogden Road」は、今まで聴いたドイツ・ツアーのどの音源にも入っていなかった曲。ラルフのソロアルバム「Diary」1974が初出で、オレゴンでの正式録音は1979年の「Roots In The Sky」なので、同曲の最初期のライブ演奏ということになる。12弦ギターとオーボエのメイン楽器のバックでピアノ伴奏が聞こえ、その後にベースが入る。とするとピアノはCDのクレジットにある通りコリンが弾いていることになるが、この曲でのベースのピッキングと音がいつもと異なり、さらに後半で聴かれるピアノソロ・独奏があまりに上手く、他の曲でグレンが弾くピアノのタッチによく似ているため、私としてはグレンがピアノを弾き、コリンが代わりにベースを弾いているように思えてならない。ということで、上記のクレジットはグレンがピアノを弾いているものとした。フルボリュームでかき鳴らされる12弦ギターのアルペジオの豊かな響きも最高で、壮大なスケールで演奏される歴史的名演。

変則的な楽器編成は 5.「Distant Hills」でも展開される。ラルフの12弦ギターのアルペジオから始まり、テーマの演奏はポールのイングリッシュ・ホルンとユニゾンで演奏されるコリンのクラリネット。テーマ前半の演奏が終わり、ラルフの12弦にコリンのクラシック・ギターが加わって音の厚みが増す。ポールはオーボエに持ち替えてテーマ後半とソロを演奏する。いつしかグレンのピアノがバックのアルペジオに加わっている。道理でベースの音が聞こえないわけだ。ラルフが12弦ギターでソロをとる間は、ピアノの伴奏が前面に出てくる。そして最後はイングリッシュ・ホルンによるテーマに戻り曲が終わる。オレゴンのライブにおけるオーケストラルなサウンドは複数のマルチ奏者の楽器の持ち替えによるものであることがよくわかる。6.「New Tune」は、別の資料では曲名が「Embarking」になっていたが、インターネットで調べた限り、それを裏付ける情報がなかったのでCDでの表記に従った。濃霧の中を彷徨っているかのようなテーマのメロディー、ベースのリフが印象的な曲で、コリンが叩くスネアとシンバルの音が聞こえる。彼がドラムス・セットを使うのは珍しいね。ソロはラルフのクラシック・ギター、ポールのオーボエ、グレンのベースの順番。ブラジル音楽の香り高い7.「Raven's Wood」は、ギターの弦を擦ってパーカッシブな音を出すラルフとコリンの手叩き太鼓(コンガにしては音が緩めなのでインドの楽器なのかな?)のイントロから始まり、ここでもポールのオーボエが絶好調だ。ラルフのギターソロの後、ラルフとポールを加えた3人によるパーカッションをバックに行うグレンのベースソロが凄い!オーボエとベースのスリリングな掛け合いの後、テーマが現れ曲が終わる。8.「Canyon Song」はスタジオ録音版よりテンポを速くしての演奏。9.「The Silence Of A Candle」はアンコールでのさらっとした演奏。

全部聴いて不思議に思ったことは、本音源ではラルフがピアノを弾いていないことだ。4.「Ogden Road」の演奏でステージにピアノがあった事は証明されており、いったい何故だろう?

シンセサイザーやコンピューター・プログラミングがない時代に、アコースティックな楽器による4人編成のライブで、これだけ厚みのある音楽を生み出したことは驚異的。初めての海外ツアーの序盤ということで、体調万全やる気満々。最高の演奏と録音による衝撃の発掘音源!

[2024年5月作成]


Tour In Germany (1974) [Oregon] 音源



Paul McCandless : Oboe, English Horn, Bass Clarinet, Whistle
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Mellophone, Trumpet 
Glen Moore : Bass, Violin, Flute, Piano
Collin Walcott : Sitar, Tabla, Percussion, Clarinet, C. Guitar

Paul Bley : Piano (D-7,8,9)

(A) Munchen (1974/3/10)

1. Improvisation [Oregon]  10:06

 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Percussion, Tabla)
2. Summer Solstice [Towner]  12:44
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion, Tabla) 
3. Deer Path [Moore]  11:07
 (Bass Clarinet, Sitar, 12st. Guitar, Piano) 
4. North Star [Towner]  14:28
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla)
5. Free Piece [Oregon]  7:37
 (Bass Clarinet, Clarinet, Trumpet, Mellophone, Whistle, C. Guitar, Violin, Piano, Percussion)
6. Yet To Be [Towner]  9:04
 (Oboe, Piano, Bass, Percussion)
7. Icarus [Towner]  6:04
 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Percussion, Tabla)
8. Rainmaker [Towner]  7:07
 (Oboe, Piano, Bass, Percussion)


(B) NDR Funkhaus Studio 1, Hannover  (1974/3/15) 

1. Brujo [Towner]  9:09

 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Tabla)
2. Dark Spirit [Towner]  13:54
 (English Horn, Sitar, C. Guitar, Bass) 
3. Distant Hills [Towner]  9:42
 (English Horn, Oboe, Clarinet, 12st. Guitar, C. Guitar, Piano, Bass) 
4. Raven's Wood [Towner]  17:48
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion)


(C) Audimax, University Of Freiburg, Freiburg (1974/3/18) 

1. Dark Spirit [Towner]  15:13

 (English Horn, C. Guitar, Sitar, Bass) 
2. Aurora [Towner]  10:35
 (Oboe, Flute, Piano, Violin, Bass, Tabla) 
3. Song For A Friend [Towner]  3:18
 (C. Guitar, Bass) 
4. Free Piece [Oregon]  9:34
 (Bass Clarinet, Clarinet, Trumpet, Mellophone, C. Guitar, Violin, Percussion)
5. Distant Hills [Towner]  9:42
 (English Horn, Oboe, Clarinet, 12st. Guitar, C. Guitar, Piano, Bass)
6. North Star [Towner]  15:10
 (Oboe, C. Guitar, Piano, Bass, Tabla)
7. Unknown [Towner?]  13:15
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percusion)
8. The Silence Of A Candle [Towner]  4:13
 (English Horn, Sitar, Piano, Bass, Percussion)
9. Brujo [Towner]  11:09
 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Tabla)


(D) Leiderhalle, Stuttgart (1974/3/19) [With Paul Brey]

1. Ghost Beads [Towner]  13:19

 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla)
2. Canyon Song [Towner]  9:47
 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Percussion) 
3. Dark Spirit [Towner]  11:29
 (English Horn, Sitar, C. Guitar, Bass) 
4. Song For A Friend [Towner]  5:25
 (C. Guitar, Bass)
5. The Silence Of A Candle [Towner]  4:45
 (English Horn, 12st. Guitar, Sitar, Percussion)
6. Aurora [Towner]  10:22
 (Oboe, Flute, Piano, Violin, Bass, Tabla)
7. Free Piece [Oregon, Paul Bley]  6:15
 (Bass Clarinet, Oboe, Trumpet, Mellophone, C. Guitar, Violin, Bass, Percussion)
8. Icarus [Towner]  11:36
 (Oboe, 12st. Guitar, Piano, Bass, Tabla, Percussion)
9. Raven's Wood [Towner]  16:09  (Oboe, C. Guitar, Piano, Bass, Percussion)


(E) Forum der Volkshochschule, Koln (1974/3/21) 

1. Brujo [Towner] 8:20

 
(Oboe, 12st. Guitar, Bass, Tabla)
2. Ghost Beads [Towner]  15:58
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla) 
3. Free Piece [Oregon]  8:41
 
Oboe, Bass Clarinet, Clarinet, Trumpet, Mellophone, Violin, C. Guitar, Percussion)
4. Aurora [Towner]  11:11
 
(Oboe, Flute, Piano, Violin, Bass, Tabla)
5. Dark Spirit [Towner]  16:06
 (English Horn, Sitar, C. Guitar, Bass) 
6.
Free Piece [Oregon]  9:54
 
Oboe, Bass Clarinet, Flute, Mellophone, Violin, Piano, C. Guitar, Percussion)
7. Land Of Heart's Desire [Moore]  7:22
 
Piano, 12st. Guitar)
8. Distant Hills [Towner]  12:34
 
(English Horn, Oboe, Clarinet, 12st. Guitar, C. Guitar, Piano, Bass)
9. Raven's Wood [Towner]  17:19
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion)
10. The Silence Of A Candle [Towner]  7:53

 (English Horn, Sitar, Piano, Bass, Percussion)




本音源が録音された1974年春は、オレゴンのアルバム「Distant Hills」 O3と「Winter Light」 O4の間、ラルフ・タウナーの「Diary」 R2と「Matchbook」 R3の間にあたる。当時のオレゴンは気力・技力の両面で大変充実した時期であり、その若々しい演奏は大変魅力的だった。オレゴンの公式ライブ録音としてお馴染みの「In Concert」 O5は1975年4月の録音であり、したがって本音源はその約1年間前の録音ということになる。O5が公式発表を前提として録音されたスタジオライブであり、ミストーンのないきっちりとした演奏と、アルバムとしての全体的なまとまりを重視したため、こじんまりとした感じになったのに対し、これらの音源では自由奔放で、気の赴くままに演奏しているように思われる。オレゴンはヨーロッパでの人気が高く、とりわけドイツでの評価が高い。同地にはジャズ、クラシック、民族音楽を融和させた音楽スタイルを偏見なく受け入れる土壌があるようで、熱心なオーディエンスを前に気迫がこもったパフォーマンスを展開している。そのドイツ・ツアーから、5つのコンサート音源を聴くことができた。ここでは演奏・録音面でともにベストと思われるシュトゥットガルトでの音源を中心に解説する。

[Stuttgart 1974/3/19]
シュトゥットガルトはドイツ南西部にある人口約60万人の工業都市。1.「Ghost Beads」におけるラルフのギタープレイは、精神的・肉体的な強靭さに満ちている。ストレートであるが自己抑制が効いた演奏で、ソロはオーボエ、ギター、タブラ、ベースの順番。12弦ギターの独奏によるイントロから始まる2.「Canyon Song」はかなり激しい演奏で、コードカッティング、アルペジオともギターをフルに鳴らし切っている。コリンのパーカッションは迫力があり、通常のドラムセットを使用しているように聴こえる。3.「Dark Spirit」はコリンのアグレッシブなシタールの演奏が楽しめる。共鳴弦を鳴らしまくり、強いタッチで叩きつけるように弾くのが凄い。受けて立つラルフのギター、グレンによるアヴァンギャルドなベースの弓弾きソロも聴きもの。本音源は音質が大変良く、各楽器が豊かに、かつバランス良く捉えられている。本曲においては、その良さが最大限に発揮されており、他の音源での同曲の演奏と比較しても郡を抜く出来栄えであり、心に響く名演と断言できる。4.「Song For A Friend」は、一転してクラギだけの伴奏で、ベースがテーマをつま弾くストイックな演奏。5.「The Silence Of A Candle」は、1972年のスタジオ録音「Music Of Another Present Era」 O2よりも長く、1975年のライブ 「In Concert」 O5よりもあっさりしている両者の中間型で、聴き慣れたレコードと異なるインプロヴィゼイションが聴けるのは喜ばしいことだ。ラルフはここでは12弦ギターを弾いているが、他のコンサートではすべてピアノを弾いており、使用する楽器を使い分けていたことがわかる。オレゴンの代表曲 6.「Aurora」の初期演奏は貴重。テーマにおけるグレンのフルートとポールのオーボエによる輪唱風アンサンブルには、交響曲のような音の拡がりがあり、適度なラフさと繊細さとを兼ね備えたラルフのピアノの、光が沸き立つかのようなプレイが本当に素晴らしい。ピアノソロの途中、レコードに収録されたスタジオ録音版にないコード進行があり、とても新鮮に聴こえる。後半で前衛風バイオリンを担当するグレンのプレイも効果的。この曲のライブ演奏音源の決定版だ。

7.「Free Improvisation」からゲストのポール・ブレイ(1932-2016) のピアノが加わる。彼はカナダ生まれで、チャーリー・パーカーやソニー・ロリンズなどのバップ・スタイルのジャズから出発し、前衛的なスタイルまで芸域を広げ、高めていったジャズピアノの巨人の一人で、無数のリーダー作を発表している。また後年はプロデューサーとしてジャコ・パストリアスやパット・メセニーを世に送り出す功績も残している。本音源が録音された1974年において、彼はすでにビッグネームだったはずで、状況としてはオレゴンのコンサートにポールがゲスト出演したものと思われ、上記の曲以外に彼のピアノ・ソロやグレン・ムーアとのデュエット音源も残されている。前衛プレイでは筋金入りの彼が加わったことで、オレゴンの連中の切れ味も何時になく鋭く、この手の即興演奏のなかでは高水準の出来だ。ピアノが加わったオレゴンの 8.「Icarus」を聴くことができるのはここだけで、12弦ギターとの厚みのあるアンサンブルが楽しめる。ここでは各プレイヤーのソロ演奏もたっぷり入っていて、ポール・ブレイのソロもシンプルながら新鮮な内容。でもゲストが入っている分、オレゴンの連中の演奏は大人しい感じかな? 9.「Raven's Wood」は、ブラジル音楽のリズムに満ちたアレンジで、コリンのソロのパートでは、グループの誰かが一緒にパーカッションを演奏したり、ラルフがギターのボディーを叩いて、サンバの雰囲気を出している。ポ−ル・ブレイのピアノを含む各人のソロがたっぶりフィーチャーされる。オレゴンがゲストと一緒に演奏する珍しい音源だ。

[Munchen 1974/3/10]
この中で最初のコンサートと思われ、他のコンサートの日付と場所から推察して、ハンブルグなどのドイツ北部の都市で行われたものと思われる(その後、北部でなく南部のミュンヘンと判明)。ドイツ語によるアナウンスの後に始まる 1.「Improvisation」は、12弦ギターの独奏から、全員によるコレクティブ・インプロヴィゼイションになる。2.「Summer Solstice」は、「In Concert」 O5との比較で、リラックスした感じの演奏。長いチューニング(当時はマシンがなかったため大変だった)を経て、シタールの独奏から始まる 3.「Deer Path」は、テーマ以外はフリーフォーム。4.「North Star」は、ひんやりした感じの落ち着いたプレイで、各人のソロは熱みを帯びては冷めてゆく。初期のスタジオ録音と比べるとかなり洗練された感じがする。ここではコリンのリズムのグルーブが全体を覆っている。テーマに戻った後はアヴァンギャルドな 5.「Free Piece」に移行する。ピアノの独奏になり、しばらくして 6.「Yet To Be」のイントロが始まる所は、はっとするような魅惑に溢れている。「In Concert」 O5での同曲の演奏と同じ構成で、同アルバムで長年聴いてきた私にとっては、同時期の別音源でラルフのピアノソロを聴けるなんて夢のようだ。7.「Icarus」は12弦のソロがないさっぱりした演奏。「最後の曲です」という紹介で始まる8.「Rainmaker」は、スタジオ録音と異なり、ラルフが天を翔るようなスケールの大きいピアノソロを見せる。録音も良いよ!

[Hannover 1974/3/15]
ハノーファーはハンブルグの南約150キロに位置する人口約50万人の都市。1.「Brujo」は、12弦の独奏によるイントロの後はコレクティブ・インプロヴィゼイションの様相を呈し、最後に曲のテーマが出てくる構成。12弦ギターのリフに特徴がある。2.「Dark Spirit」は、他のコンサートのものと同じ構成ではあるが、各プレイヤーのソロの内容は全く異なるので、比較して聴くと面白い。スタジオ録音当時の 3.「Distant Hills」のライブ演奏が聴けるのも本音源のハイライトのひとつだ。最初のテーマはポールのイングリッシュ・ホルンとコリンのクラリネット、オーボエのソロの間はラルフの12弦のアルペジオにコリンのクラシック・ギターが加わる。オリジナル録音よりテンポが速く、リズミカルなピッキングにより曲の雰囲気が大きく変わり、よりアグレッシブになっている。そしてラルフの12弦がソロを取るときは、グレンがピアノでコリンのギターと一緒にアルペジオを奏で、各人が楽器を持ち替えてオーケストラルなサウンドを生み出している。ライブでこれだけやれるなんて素晴らしい。4.「Raven's Wood」は、ここでは18分にわたる完奏版で、コリンのしなやかで変幻自在のリズム感が曲全体を支配している。

[Freiburg 1974/3/18]
フライブルグは、スイス国境に近いドイツ南部の街で、コンサートの正確な日付は不明 (その後3月18日と判明)であるが、その位置関係からシュトゥットガルトとケルンの間の録音と推定した。90分に及ぶ音源であるが、残念なことに録音がイマイチで、楽器の音量バランスも悪い。1.「Dark Spirit」ではシタールとオーボエの音が小さいし、2.「Aurora」ではタブラとベースの音が大きすぎて、音が歪んでしまっているが、録音設定の調整により途中から比較的まともになる。ここでは6.「North Star」が面白く、曲中でギターの伴奏が鳴っているのにピアノソロが聴こえるのだ。その間ベースの音がしないので、グレンが弾いているのだろう。7.は未発表曲。クラシカルなテーマ・メロディーから、ラルフによる初期の作曲か、あるいはポールの曲と思われる。9.「Brujo」ではラルフの12弦によるリフはなく、コンサート毎に全く異なる演奏をしていたことがわかる。

[Koln 1974/3/21]
コロンはケルンとも呼ばれる大聖堂で有名な中部の都市。この音源の音質は良好であるが、楽器のバランスが若干悪い箇所があるのが残念。1.「Brujo」におけるラルフの12弦のリフは、他の音源のもとと異なっていてユニーク。曲のテーマは演奏の最後になって出てくるので、実質的には「Opening」と呼ばれる、コンサートの最初に演奏されるインプロヴィゼイションとのメドレーだ。2.「Ghost Beads」は、タブラの独奏から始まる。4.「Aurora」でのラルフのピアノアソロは、湧き出る泉のようで、本当に美しい演奏だ。6.「Free Piece」でパーカッシブなピアノを弾く人は、コリンと思われる(同時にバイオリンとギターの音が聞こえるため)。7.「Land Of Heart's Desire」は、グレンのピアノとラルフの12弦という珍しい組み合わせによるデュエット。グレンのピアノは、ジャズというよりは現代音楽的な感じで、切れ味鋭いプレイは印象的。8.「Distant Hills」は、ハノーヴァーと同じくラルフの12弦とコリンの6弦ギターによるアルペジオがアグレッシブで、オリジナルと全く異なる雰囲気になった好演。9.「Raven's Wood」は、ラルフがギターのボディと叩いてコリンのリズムに加わっている。アンコールにおける 10.「The Silence Of A Candle」は、ラルフのピアノとコリンのシタールを中心とした演奏。


初期の充実した演奏を、このようにまとまって聴くことができ、同じ曲の異なる演奏を聴き比べることもできるので、本当に楽しい音源だ。

[2013年4月追記]
1974年3月21日のケルン(Koln)の音源につき、コンサート完全版を聴くことができたので、書き直しました。

[2022年1月追記]
ポール・マッキャンドレスのホームページの「Past Perfomance」コーナーより、3月10日の場所、フライブルグの正確な日付、その他コンサート会場がわかりましたので、追記・訂正しました。

[2022年4月追記]
2021年に公式発売されたオレゴンのライブ盤「1974」O5 は、3月14日ラジオ・ブレーメンでのスタジオ・ライブなので、上記ミュンヘンとハノーバーの間の時期での収録ということになりますね。

[2023年1月追記]
1974年3月19日のシュトゥットガルトの音源の9.「Raven's Wood」につき、「ベースソロの途中でフェイドアウトしてしまうのが残念」(演奏時間 12:07)と書いたが、コンプリート版 (演奏時間 16:09、ベースソロの後のテーマ演奏) を聴くことができましたので、書き改めました。


Avery Fisher Hall, NY (1974) [Oregon] 音源

Paul McCandless : Oboe
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar
Glen Moore : Bass, Piano
Collin Walcott : Tabla, Percussion, Classical Guitar

[Early Show]
1. Ghost Beads [Towner]  7:12
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla)
2. Improvisation [Towner, Walcott]  3:42
 
(12st. Guitar, Tabla) 
3. Brujo [Towner]  7:02
 
(Oboe, 12st. Guitar, Bass, Percussion)
4. Distant Hills [Towner]  6:34
 
(Oboe, 12st. Guitar, C. Gutar, Piano) 

[Late Show]
1. Ghost Beads [Towner] 
7:12
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla)
2. Improvisation [Towner, Walcott]  4:39
 
(12st. Guitar, Tabla) 
3. Brujo [Towner]  5:39
 
(Oboe, 12st. Guitar, Bass, Percussion)
4. Distant Hills [Towner]  6:32
 
(Oboe, 12st. Guitar, C. Gutar, Piano) 

Recorded July 6, 1974, Avery Fisher Hall, New York, NY 


ニューポート・ジャズ・フェスティバルは、1954年からロードアイランド州ニューポートで開催されたが、1971年会場に入れなかったファンが柵を壊して乱入するというトラブルが発生したため、1972〜1980年は会場をニューヨークに移して実施された。会場のエイヴェリー・フィッシャー・ホールは、リンカーン・センター内にあるコンサート会場(観客席数2,738、1962年オープン)で、ニューヨーク・フィルハーモニックの本拠地になっている。1974年7月6日、同ホールで「Guitar Impressions」という企画のコンサートが開催され、オレゴンの他にラリー・コリエル・アンド・イレブンス・ハウス、ロイ・ブキャナン、ローリンド・アルメイダ、チャーリー・バード、タイニー・グライムズが出演、各20〜30分演奏した。当日は同内容のコンサートが2回行われたようで、「Early」と「Late」のふたつのバージョンが残っている。

アーリーセットでは、司会者が「オレゴンの演奏から始めます」と紹介しており、彼らの出番が最初だったことがわかる。コリンによるメンバー紹介の後、12弦の独奏から始まる 1.「Ghost Beads」は、会場とコンサートの趣旨を考慮したためか、かなり抑制が効いた演奏を展開している。また録音もきれいで、各楽器の繊細な響きが余すことなく捉えられている。2.「Improvisation」は、ラルフの12弦とコリンのタブラによるデュオで、当時ラルフが得意としていたリフを中心とした12弦ギターの即興演奏にコリンがリズムを付けた感じ。とても切れ味鋭くスリリングなプレイだ。3.「Brujo」は、途中の間奏はポールのオーボエとグレンのベースの掛け合いが中心となる。曲が終わった後、。おそらくポールが「20分よりも多く聴きたい人は、8月にカフェ・ホワでコンサートがあるので、ぜひ来てください」とアナウンスしている。4.「Distant Hills」は、ラルフの12弦、コリンの6弦ギター、グレンのピアノによるアルペジオが絶妙。異なる楽器の音の積み重ねと、音使いの微妙なずれが大変効果的で、スタジオ録音よりもはるかに速いテンポはアグレッシブで、原曲のクールな雰囲気とは異なり、聴く者に快感を覚えさせるようなサウンドとなっている。この演奏はオーディエンスに十分アピールしたようで、彼らのセットは、長く大きな拍手で終わる。

レイトセットでは、司会者が「4弦ギターの次は12弦ギターです」と紹介しており、オレゴンの出演が、テナーギターの名手だったタイニー・グライムズ(スウィング、R&Bから初期のロックンロール音楽で活躍した人)の次だったことがわかる。バンドメンバーの紹介は、最初の曲が終わった後。各曲の構成は、アーリーセットとほとんど同じであるが、各人のソロの内容が異なるのは、ジャズ演奏家としての面目躍如たるものがある。特に2.「Improvisation」の12弦ギターのリフは全く異なるもので、当時のラルフの演奏力とパワーの凄さを存分に味わうことができる。

オーディエンスに自分達の音楽を知ってもらおうという気概に溢れた演奏。同内容のセットが2回聴けることで、別テイクを比較して味わう楽しみがある音源。


 
SUNY Binghamton NY (1974) [Oregon] 音源 
 
Paul McCandless : Oboe, Bass Clarinet, Whistle
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Mellophone, Trumpet, Percussion
Glen Moore : Bass, Violin, Flute, Piano
Collin Walcott : Tabla, Percussion, Clarinet

[Early Set]
1. Brujo [Towner]  10:56
 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Tabla)
2. North Star [Towner]  18:16
 
(Oboe, C. Guitar, Piano, Bass, Tabla, Purcussion) 
3. Fond Libre [McCandless]  8:10
 
(Oboe, Bass Clarinet, 12st. Guitar, Sitar, Bass, Percussion)
4. Free Improvisation [Oregon]  7:48
 
(Oboe, Mellophone, Clarinet, Bass Clarinet, Flute, Whistle, Violin, Piano, Percussion) 
5. Song For A Friend [Towner]  5:01
 
(C. Guitar, Bass) 
6. Margueritte [Walcott]  13:14
 
(Oboe, Piano, Bass, Percussion)

[Late Set]
7. Rainmaker [Towner]  11:33
 (Oboe, Piano, Bass, Percussion)
8. Icarus [Towner]  14:42
 
(Oboe, 12st. Guitar, Bass, Tabla, Percussion) 
9. Ghost Beads [Towner]  12:41
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla)
10. Free Improvisation [Oregon]  14:07
 
(Oboe, Bass Clarinet, Trumpet, Mellophone, Piano, 12st. Guitar, C. Guitar, Sitar, Violin, Percussion) 
11. Raven's Wood [Towner]  13:37
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion) 

12. Aurora [Towner]  9:32
 
(Oboe, Flute, Violin, Piano, Bass, Tabla, Percussion)

Recorded September 24, 1974, State University Of New York at Binghamton, NY
 


「同じ録音で、もっと多くの曲が聴けるといいなあ」と書いてから十数年後の2022年になって、Early Show(1.〜 6.)を聴くことができたので、書き直しました。

SUNY(State University Of New York)は、ニューヨーク州にある大学および関連施設の綜合体で、ペンシルヴァニア州の境の近くの内陸にあるビンガムトンは、主要な4つの大学のひとつで、1946年創立。そこでのオレゴンのコンサートの模様を録音したのが本音源だ。当初聴いた音源の資料ではサウンドボード録音とあったが、今回の資料ではオーディエンス録音とのこと。当時の設備・技術からすると音が良すぎるような気がするし、隠し録音特有のマイクが擦れる音や、近くにいる観客の話し声も聞こえないので、サウンドボード録音か、ステージの前面にセットされたマイクから拾ったもののいずれかと思われる。

今回聴くことができたファーストセットから。最初の曲 1.「Brujo」の後、コリンによる紹介があり、チューニングが長々と続く。タブラの音を曲のキーに合わせるために張力を変えるもので、ピアノの音を便りに調性していて、なかなか大変。2.「North Star」では、ラルフのギター演奏と同時にピアノの音が聞こえるが、グレンが弾いているようだ。グレンは、ピアノでソロを弾いた後、楽器をベースに切り替える。後半のポールの独奏が聴きもの。3.「Fond Libre」は、ライブ音源としては大変珍しく、本音源の価値を高めている。コリンのシタール演奏をたっぷり聴けるのも面白い。シタールソロのバックでパーッカッションを叩いているのは、ラルフのようだ。 4.「Free Improvisation」は、何時聞いても楽しい。オレゴンが演奏する即興演奏を長年聴いている間にますます好きになった。ギターとベースの対話 5.「Song For A Friend」は、録音が良いので、ベースの音色が心に染み入ってくる。6.「Margueritte」もライブでで聴いたのは初めてのお宝音源。コリンのパーカッション(コンガ系)とラルフのピアノのスピード感が最高。特に途中でパーカッションのみとなる場面では、他のメンバーも加わり盛り上がる。その後でラルフによるゴスペル調のピアノが入り、テーマに戻るのが面白い。

以下7.〜12.のセカンド・ショーは、以前から聞いていた音源であるが、今回聴いたものには、曲間のチューニングやアナウンス等がカットされずに入っている(音楽鑑賞に必要か否かは別の話)。ただし音質に関しては、以前聴いたもののほうが良い。7.「Rainmaker」は、ニューアルバムからの新曲と紹介される。「Winter Light」の録音時期が、1974年の7〜8月なので、録音後間もない演奏だ。降り注ぐ雨のようなピアノプレイが印象的な演奏。 8「Icarus」は、イントロに短い即興演奏がつく。オーボエ→12弦ギター→ベース→パーカッションと、全員がソロをとる長い演奏。10.「Free Improvisation」の前半はシタールによる即興演奏が美味しい。11.「Raven's Wood」は、ブラジル風のリズムの曲で、途中ラルフがミュートしたギターで、パーッカシブな音を出す。12.「Aurora」では、グレンがフルート、ベース、バイオリンを頻繁に持ち替えて大活躍する。シンセサイザーがない当時の音楽環境で、これほど多彩なオーケストラ・サウンドを生み出している様は驚異的だ。

各人の調子、録音も良く聴き応え十分の名演。

[2023年9月追記]
録音日につき、9月24日、29日のいずれかとしていましたが、ポール・マッキャンドレスのサイト「Past Performances」により、24日としました。


Free Music Store, New York (1974) [Oregon]  音源 
 
Paul McCandless : Oboe, English Horn, Bass Clarinet, Whistle
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Mellophone, Trumpet 
Glen Moore : Bass, Violin, Piano
Collin Walcott : Sitar, Tabla, Percussion, Clarinet

1. Summer Solstice [Towner] 7:48
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion, Tabla)

2. Unknown Title 5:39
 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Percussion)

3. Deer Path [Moore]  3:54
 (Bass Clarinet, Sitar, 12st. Guitar, Piano) 
4. Sail [Walcott]  13:27
 (Bass Clarinet, Sitar, 12st. Guitar, Percussion) 
5. Brujo [Towner]  6:03
 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Percussion)

6. Ghost Beads [Towner]  12:51
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla)

7. Dark Spirit [Towner]  10:50
 (English Horn, Sitar, C. Guitar, Bass) 

8. Tide Pool [Towner]  9:32
 
(Oboe, 12st. Guitar, Bass, Percussion)
 
9. Free Piece [Oregon]  7:43
 (Oboe, Bass Clarinet, Whistle, Clarinet, Mellophone, Trumpet, Violin, Percussion)
10. Rainmaker [Towner] 7:26
 (Oboe, Piano, Bass, Purcussion) 


Recorded October 9, 1974, New York
Broadcast by WBAI New York

 

本音源は、「フリーミュージック・ストアー」というタイトルからニューヨークFMラジオ局のWBAIが1969年から1976年に行っていたコンサート番組の録音となるが、クリアさに欠ける音質なのが惜しい。もしかすると、エアーチェックやサウンドボード・テープからではなく、オーディエンスが会場で録音したものかもしれない。ギターがオン、オーボエがオフ気味であるが、ベース、タブラはバランス良くしっかり聞こえるし、珍しい曲もあり、何よりも演奏が素晴らしいので、引き込まれて聴いているうちに音の問題は気にならなくなる。

最初の2曲は、以前の資料には載っていなかったもの。そのためか他のトラックと比較して音質は良くない。2.「Unknown Title」は、これまで耳にしたことがないテーマの曲で、「Tide Pool」をより急速にした感じの曲想。オレゴンとして未発表でも、ラルフや他のメンバーのソロアルバムに収録されていたり、なんだかの原曲があるんだけど、この曲については私が知る限り本当の未発表曲と思える。グレン作曲の3.「Deer Path」のライブ音源は意外にもあまりなく、ここでの演奏時間が短めなのも変わっている。グレンが弾くピアノのエキセントリックな響きが面白い。4.「Sail」の生演奏も他になく、オレゴンのアルバム「Music Of Another Present Era」O2に収録されたオリジナルが、コリンによるパーカッションとアコースティック・ギターのコードストロークの多重録音が基調だったのに対し、ここではパーカッションが全面に出て、ラルフの12弦がリズムを担っている。ライブ演奏は難しいかなと思っていた曲だけに、スタジオ録音版との対比が大変面白い。5.は資料では「Ogden Road」とあるが、正しくは「Brujo」。

6.「Ghost Beads」はライブの定番かな。7.「Dark Spirit」は、今となっては聴けないコリンのシタールとラルフのギターとのコラボレイションが魅力的。8.「Tide Pool」のライブ音源は珍しい。スタジオ録音では淡々ととした雰囲気だった曲がオーディエンスの前ではこれだか生き生きとした感じに代わるとは驚きだ。9.「Free Piece」は、グレンのバイオリンと他のメンバーによる管楽器がメインの即興演奏。10.「Rainmaker」は、本音源で唯一ラルフがピアノを弾いている。

音質イマイチだけど、珍しい曲満載の音源。

[2018年3月作成]


Avery Fisher Hall, NY (1975) [Oregon] 音源

Paul McCandless: Oboe, English Horn, Bass Clarinet, Wooden Flute
Glen Moore: Bass, Flute, Violin, Piano
Ralph Towner: Classical & 12-String Guitar, Piano, Mellophone, French Horn, Trumpet
Collin Walcott: Tabla, Sitar, Percussion, Conga, Clarinet

1. Icarus [Towner] 7:44
 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Percussion, Tabla)
2. Summer Solstice [Towner] 8:57
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion, Tabla)
3. Undertow [McCandless] 4:18
 (Bass Clarinet, Bass)
4. The Silence Of A Candle [Towner] 9:24  
 (Oboe, Bass Clarinet, 12st. Guitar, Sitar, Bass)
5. Tryton's Horn [Oregon] 3:13
 (Oboe, Clarinet, Flute, Violin, Mellophone, French Horn, Trumpet, Piano, Percussion)
6. Yet To Be [Towner] 10:58  
 (Horn, Piano, Bass, Percussion)

Recorded July 3, 1975, Avery Fisher Hall, New York, NY 


日付から、当時ニューヨークで行われていたニューポート・ジャズ・フェスティバルのコンサートのひとつと思われる。また、オレゴンのライブ・アルバム「In Concert」1975 O5の録音日が4月8〜9日であり、その3か月後の演奏にあたる。コリンが「ライブアルバムがこの9月に発売される」とアナウンスしており、演奏内容は最初の曲を除いて非常に似ており、O5の別テイク的な乗りで楽しむことができる。

「In Concert」では、インプロヴィゼイションの雰囲気が強い
Become, Seem, Appear」から始まったが、ここでは代表曲の「Icarus」が演奏されている。録音的にはタブラの音が強すぎてアンバランス(その他の曲では調整されたらしく、そんなに気にはならない)なんだけど、もし公式ライブアルバムにこの曲が入っていたらという想像をめぐらすのも悪くない。2.「Summer Solstice」以降はアルバムと曲順が同じになるが、各人のソロの内容は異なるので、聴き応えは十分。5.「Tryton's Horn」は、実質即興ではあるが、序曲として似た雰囲気の演奏となっている。6.「Yet To Be」については、アルバムにおける名演の別バージョンとして大いに期待したが、ピアノソロに入る部分でテープの編集が入り、またソロの真っただ中で、何故かフェイドアウト・フェイドインになってしまう。演奏自体は素晴らしいので、とても残念だ。またオーボエとベースソロの間に、タブラの独奏によるソロが入る点が「In Concert」のバージョンと大きく異なり、その分演奏時間が長い理由のひとつとなっている。またコリンのタブラ、パーカッションの音が大きめなので、とても迫力があるサウンド。

録音が荒っぽいけど、「In Concert」O5 の別バージョンとして、とても楽しめるよ。


Clark University, Worcester (1975) [Oregon] 音源

Paul McCandless : Oboe, Bass Clarinet
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Mellophone
Glen Moore : Bass, Violin, Flute, Piano
Collin Walcott : Sitar, Guitar, Clarinet, Tabla, Percussion,

1. Tide Pool [Towner]  11:17
 
(Oboe, 12st. Guitar, Bass, Tabla)
2. Summer Solstice [Towner] 11:30
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion, Tabla) 
3. Drifting Petals [Towner]  5:04
 
(Oboe, C. Guitar, Piano, Bass)
4. 1 x 6 12 [Towner]  5:17
 
(12st.Guitar, Tabla) 
5. Free Piece [Oregon]  8:15
 (C. Guitar, Oboe, Bass Clarinet, Clarinet, Mellophone, Flute, Violin, Piano, Percussion)
6. Witch Tai To [Jim Pepper]  13:42
 (
Oboe, 12st.Guitar, Sitar, Piano, Bass, Tabla)
 

Recorded May 30, 1975, Clark University, Worcester, MA


マサチューセッツ州ボストンの西約30キロの内陸部にある都市ウォセスターの大学キャンパスで、1975年5月30日に行われたオレゴンのコンサート音源。地元のラジオ局 WCUW の放送用マスターテープからのもので、クリアーで厚みのある素晴らしい音質で楽しめる。各楽器が聴く者の目の前で演奏されているかのような生々しさがあり、特にラルフの12弦ギターの切れ味は特筆ものだ。それに加えて珍しい曲を演奏しているので、お宝のものとしての価値は十分。

1.「Tide Pool」は、アルバム「Winter Light」1974 O4に入っていた曲で、残されたライブ音源は少ない。水の流れを思わせる早いテンポの曲で、グレンが演奏するベースは、ピックアップの性能向上前の録音なので、よりアコースティックで生々しい強靭な音だ。ラルフの12弦ギターのソロも緊張感に溢れていて、当時のライブの凄さを堪能できる。ここでコリン・ウォルコットのアナウンスが入り、ニューヨークからの道を間違えたために到着が遅れ、コンサートの開始が遅くなったことをオーディエンスに詫びている。「昨晩、次作であるライブアルバムのためのミキシングを終えたばかり」と紹介される 2.「Summer Solstice」は、「In Concert」O5 とほぼ同内容の演奏で、別テイク的な感覚で楽しめる。アルバム製作用の録音というプレッシャーがない分、のびのびと演奏しているように聴こえるのは気のせいかな? 3.「Drifiting Petals」は本音源のハイライトで、ラルフがヤン・ガルバレクと組んだ「Solstice」1975 R4に収められていたが、オレゴンとしての録音はないので、ここでの演奏は大変貴重なものだ。ラルフのピアノがメインの演奏で、テーマ部分では誰か(おそらくコリン)がギターで、和音を一緒に弾いている。ポールのオーボエも、ソロはとらずにテーマのみを神妙に吹いている。間奏部分はシンプルなベースをバックに、ラルフがピアノソロを展開する。音が湧き出るような彼得意のスタイルが出ていて、大変聴き応えがあるものだ。4.「1 x 6 12」は、当時ラルフがよく演奏していた12弦ギターによる即興的な超絶技巧曲に、コリンがタブラでリズムを付けているのが珍しい。強弱のニュアンスに富む両者の楽器の音が鮮やかに捉えられており、最高の出来栄え。5.「Free Piece」では、各人が楽器を持ち替えて様々な音を出し合っている。6.「Witch Tai To」は、「Winter Light」が初録音で、その後何度も再録音され、現在に至るまでステージでの愛奏曲となっているレパートリーで、何回聴いても飽きることがない魔術のような雰囲気を持った曲。開始前、シタールの調弦に延々3分かかっているのは、チューニング・マシーンがない時代ならではの風景。「In Concert」には収められなかったので、ここでは新鮮な雰囲気に満ちた初期のライブ演奏を堪能できる。今は聴くことができない(と思うと感無量になる)、コリンのシタールそしてタブラの演奏が素晴らしい。

冒頭にも述べたが、珍しい曲を素晴らしい音質で楽しめる音源。

[2013年2月追記]
最初に聴いた音源は、厚み・クリアーさに欠けるなど音質がイマイチで、途中でフェイドアウトになる曲もあったが、2013年になって、良い音質でカットなしのものを聴くことができたので、書き直しました。

(お断り)本音源とは別に、Clark University, Worcester というタイトルで、1975年5月3日のコンサートを本ホームページに掲載していました。しかし資料の間違いで、正しくは上述 1974年3月のドイツ・フライブルグの音源と同じ録音であることがわかりましたので、削除しました。


 
Graz (1975) [Oregon] 音源 
 
Paul McCandless : Oboe, Bass Clarinet
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Trumpet, Mellophone
Glen Moore : Bass, Violin, Flute, Piano
Collin Walcott : Sitar, Guitar, Clarinet, Tabla, Percussion,

1. Free Piece [Oregon]  8:07
 (Oboe, Bass Clarinet, Flute, Clarinet, Trumpet, Mellophone, Whistle, Violin, C. Guitar, Percussion)
2. 1 x 12 [Towner]  5:19
 
(12st.Guitar, Tabla) 

3. Dark Spirit [Towner] (Fade Out) 8:21
 
(Bass Clarinet, C. Guitar, Sitar, Bass)
4. Tide Pool [Towner]  9:23
 
(Oboe, 12st. Guitar, Bass, Percussion)
 
5. North Star [Towner] (Fade Out)  14:29
 (Oboe, C. Guitar, Piano, Bass, Percussion)

Recorded July 8, 1975, Graz, Austria

注:ポール・マッキャンドレスのホームページにおける演奏記録では、7月9日になっている。
 

地元のFMラジオで放送された音源で、アナウンサーがドイツ語で、「グラーツ」、「オレゴン・オン・ツアー」と言っているのが聞きとれる。グラーツはオーストリア中部に位置する国内第2の都市。フェイドアウトする曲があるのが残念だけど、音質はすこぶる良い。

1.「Free Piece」は、管楽器による即興演奏で、ラルフがトランペット、メロフォーン、グレンがフルート、コリンがクラリネットを吹いている。途中からグレンがバイオリン、ラルフがクラシック・ギター、コリンがパーカッションに楽器を持ち替えている。2.「1 x 12」は、ミディアム・テンポで、タメを効かせたインタープレイが聴きもの。3.「Dark Spirit」は、シタールとクラシック・ギターの掛け合いがメインであるが、終盤に弓弾きのベースが前面に出て、狂おしく盛り上がる。ワンコードによる間奏が延々と続いた後、ギターソロのところで、和音を展開させる部分が鮮やかな印象を残すが、バス・クラリネットのソロのところでアナウンサーの声が入り、フェイドアウトする。4.「Tide Pool」のライブ演奏は珍しく、スタジオ録音よりもテンポが速くアグレッシブな演奏が楽しめる。グレンのベースソロがユニークで、その間ラルフはバックでギターのボディーを叩いている。5.「North Star」のライブ音源もあまりないね。このトラックで面白いのは、ラルフのクラシック・ギターに対し、グレンがピアノが弾いている点だ。グランたまに弾くピアノは現代音楽的な訥々としたプレイが多いが、ここでは饒舌ではないにしても、間奏でピアノソロをしっかり弾いており、オレゴンのライブ演奏で、この手の曲でギターとピアノの組み合わせが聴けるのは、私が知る限りこの曲のみという貴重なトラックだ。この曲も残念ながら、ベースに持ち替えたグレンがソロを始めたところで、フェイドアウトしてしまう。

珍しい曲のライブ演奏を聴くことができる。


   
Festival d'Avignon, Avignon (1975) [Oregon] 音源  
 




Paul McCandless : Oboe, Bass Clarinet
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Trumpet, Mellophone
Glen Moore : Bass, Flute, Violin, Piano
Collin Walcott : Sitar, Clarinet, Tabla, Percussion, 

1. Brujo [Towner]  5:38
 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Percussion)

2. Summer Solstice [Towner] 13:48

 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion, Tabla)

3. Aheer [Walcott] 9:22
 (Oboe, C. Guitar, Sitar, Bass)
4. Free Improvisation [Oregon]  7:11
 (Oboe, Bass Clarinet, Flute, Clarinet, Mellophone, Trumpet, Violin, Piano, Percussion)
5. Rainmaker [Towner] 10:13
 (Oboe, Piano, Bass, Purcussion) 
6. Ghost Beads [Towner]  16:48
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla)

7. Song For A Friend [Towner] 9:32

 (C. Guitar, Bass)

8. Deer Path [Moore]  9:36
 (Oboe, Sitar, 12st. Guitar, Piano) 
9. Yet To Be [Towner]  9:50
 
(Oboe, Piano, Bass, Percussion)
 
10. Icarus [Towner] 10:03
 (Oboe, Whistle, 12st. Guitar, Bass, Percussion, Tabla)


Recorded During Festival d'Avignon, From July 12 to August 9, 1975
At Cloitre Saint-Louis, Avignon, France

写真上: 2023年に Lo-Light Records から配信された音源の表紙
写真下: 1975年 Festival d'Avignonのポスター (右上に開催期間の表示あり)


「Cries And Whispers, The Avignon Festival Broadcast 1975」のタイトルで、2023年10月 YouTube, Spotifyなどに配信されたオレゴン1975年のコンサート音源で、アヴィニョン演劇祭(Festival d'Avignon)のアーカイヴがデータ元。同イベントは1947年から南フランスのアヴィニョンで夏期開催されていて、演劇の他にバレエ、ミュージカル、映画、コンサート、舞踏、パントマイム、人形劇、サーカス、大道芸など幅広い演目からなる。オレゴンは1975年のフェスティバルに出演、ポスターより開催期間が7月12日〜8月9日だったことが判った。ポール・マッキャンドレスのホームページにある「Past Perfomance」に当該コンサートの記録は載っていない(注:同資料はオレゴンのすべてのコンサートを掲載したものではない)が、7月初旬から8月中旬までオレゴンが欧州でコンサートを行っていた記録があり、フランスにおける当該コンサートはそれに符合するものだ。 これまで出回っていなかった放送用録音とのことで、素晴らしい音質のステレオ・サウンド。

3.「Aheer」では、1984年に亡くなったコリン・ウォルコットによるシタール演奏をたっぷり聴くことができる。4.「Free Improvisation」は、リズムパターンのない即興演奏なので、私の定義では「Free Piece」になるのであるが、配信のタイトルのままとした。ピアノの独奏になった後に 5.「Rainmaker」の迸るようなプレイに移ってゆく。6.「Ghost Beads」はタブラのチューニングの後始まる。6.「Ghost Beads」の後コリンによるフランス語混じりのアナウンスが入る。8.「Deer Path」ではグレンがフリーフォームなピアノを弾いている。再びコリンの曲紹介 (彼はフランス語がかなりできそうだ)、タブラのチューニングを経てスリリングな 9.「Yet To Be」が演奏される。そしてアンコールは 10.「Icarus」。

初期オレゴンの素晴らしい演奏を、最高の音質でたっぷり聴けるお勧め音源。

[2023年10月作成]


Molde Jazz Festival (1975) [Oregon]  映像  
 
Paul McCandless : Oboe, English Horn, Bass Clarinet, Percussion
Ralph Towner : 12-String Guitar, Piano, Percussion
Glen Moore : Bass
Collin Walcott : Sitar, Tabla, Percussion,

1. Nimbus [Towner]  7:40
 (English Horn, 12st. Guitar, Bass, Tabla, Percussion)
2. Rainmaker [Towner]  9:02
 
(Oboe, Piano, Bass, Purcussion) 
3. Witch Tai To [Jim Pepper]  11:31
 
(Oboe, Bass Clarinet, Sitar, 12st. Guitar, Piano, Bass, Tabla, Percussion)
4. Yet To Be [Towner]  9:47
 
(Oboe, Piano, Bass, Percussion)
 

Recorded July 1975, Molde, Norway
Brodcast August 18, 1975 NRK, Norway
 
 

40年の後に、ノルウェーの公共放送局のアーカイヴで観ることができた初期オレゴンの映像。同時期に公開されたラルフのソルスティスと同じ感じの撮影で、モノラルであるが音質は良く、映像は鮮明。自然な感じのライティングの元で、各プレイヤーのクローズアップも多く、若さと精気に溢れるオレゴンのステージが生々しく捉えられている。

1.「Nimbus」は、ラルフが1974年12月にアルバム「Solstice」R4に収録した曲で、オレゴンではライブ音源・映像のみで公式録音は残されなかった。本映像はその中でも初期の切れ味鋭い演奏が堪能できる。イントロのラルフの12弦ギターの独奏は斜め後ろからの撮影で、運指が見えないのは残念であるが、途中一瞬入る斜め前からのアングルは必見。それにしてもラルフの若々しいこと!テーマに続くグレンのベースソロは、指・弓を使い分けて緊張感を高めている。イングリッシュ・ホルンでソロを取るポールの長髪姿のギラギラとした雰囲気は、後のイメージと全く異なるものだ。2.「Rainmaker」でのラルフのピアノソロは、クールなムードから始まるが、次第に熱を帯びて大いに盛り上がる。汗だくのコリンのアップが印象的で、ベースソロの際ラルフはピアノの手を休めてタンバリンを叩いている。

3.「Witch Tai To」では、コリンのシタール演奏が観れるのがうれしい。ラルフは12弦ギターからピアノ、コリンはシタールからタブラ、ポールはバスクラからオーボエと各楽器を持ち替えてプレイしている。時折挿入される瞑想風のオーディエンス光景が効果的。「最後の曲です」とのアナウンスの後演奏される 4.「Yet To Be」は、1975年のライブ盤「In Concert」 O5での名演があるが、ここでのプレイはその3か月後とあって、当時の迸る熱気が余すことなく映像に収められており、これぞNational Treasureといえる素晴らしさだ!

その後は、コンサート後観客が退席した会場でのインタビューの模を観ることができる。ここで本コンサートが1か月に及んだヨーロッパ・ツアー最後のものであったことが語られる。ラルフが、「自分達は好きなように演奏しているが、自分はジャズ、コリンはインド音楽というように各々が一定の犠牲を払うことによって成り立っている」、「ソロ活動を行うことは、グループをより豊かにする」と答えているのが興味深い。

情熱と精気に溢れる若きオレゴンの姿を捉えた貴重な映像。

[2016年6月作成]


Amazingrace (1976) [Oregon] 音源 
 
Paul McCandless : Oboe, Bass Clarinet, Whistle
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Trumpet, Mellophone
Glen Moore : Bass, Violin, Flute, Piano
Collin Walcott : Sitar, Guitar, Clarinet, Tabla, Percussion,

1. Icarus [Towner] 12:21
 (Oboe, Whistle, 12st. Guitar, Bass, Percussion, Tabla)
2. Along The Way [Towner]  8:12
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion)
3. Three Step Dance [Moore] 9:26
 (Bass Clarinet, Bass,Percussion, Tabla )
4. Yellow Bell [Towner]  9:42
 
(Oboe, Flute, Piano, Bass, Percussion)
5. Raven's Wood [Towner]  8:29
 
(Oboe, C. Guitar) 
6. The Silence Of A Candle [Towner]  10:52
 (English Horn, Bass Clarinet, Piano, Sitar, Percussion)  

7. Brujo [Towner]  8:49
 
(Oboe, 12st. Guitar, Bass, Tabla)
8. Time Remembered [Bill Evans] 7:30
 
(English Horn, Piano, Bass, Percussion)
9. Night Glider [Walcott]  11:35
 
(Bass Clarinet, Sitar, C. Guitar, Bass)
10. Free Piece [Oregon]  16:53
 (Oboe, Bass Clarinet, Whistle, Clarinet, Trumpet, Mellophone, C. Guitar, Piano, Violin, Bass, Tabla, Percussion)
11. Summer Solstice [Towner] 15:14
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion, Tabla) 

Recorded July 6, 1976, Amazingrace Coffee House, Evanston, IL

 

アメイジングレイスは、1971年の学生達による反戦運動の最中、イリノイ州エヴァンストンにあるノースウェスタン大学構内にオープンしたコーヒーハウス、ナイトクラブで、後に収容人員の大きな場所に移転。主にフォークやジャズ音楽のライブ会場として有名になったが、1978年に廃業したという。小さな会場での演奏ということで、各楽器が自然な音で聞こえ、良い部分も多いが、全体的に録音の安定性に欠けているかな?

音源はいきなり1.「Icarus」から始まる、ホイッスルによるイントロから始まり、お馴染みのテーマになる。ラルフの12弦ギター、グレンのベース弓弾きが自由気ままな伴奏ので、各プレイヤーのソロだけの楽しみに終わらないジャズの醍醐味がある。コリンのタブラによる独奏を経て、切れ目なしに 2.「Along The Way」になる。この曲の公式録音は1977年2月のラルフのアルバム「Sound And Shadows」1977 R6なので、本音源は最も初期の演奏にあたり、演奏後にコリンが「タイトルなし」と紹介している。そのため少しぎこちない感じがするのは気のせいかな?3.「Three Step Dance」のイントロは、グレンの弓弾きによる独奏から始まり、ポールのバスクラが加わる。この曲は、ライブ音源として聴くチャンスが少なく、またスタジオ録音(「Together」 1976 O6)はエルビン・ジョーンズのドラムスが入っていたので、純粋なオレゴンの演奏として貴重なトラックだ。ラルフは、パーカッションで加わっているものと思われる。そのままラルフのピアノとグレンのフルートを中心した即興演奏のイントロから 4.「Yellow Bell」につながってゆく。この曲も公式録音は1978年の「Out Of Woods」O9なので、ここでは未発表の新曲としての端正な演奏。ラルフによる紹介の後始まる 5.「Raven's Wood」は、オーボエとクラギのデュエットによる演奏。間奏部分で、ラルフが伴奏とソロを同時にこなすプレイが巧み。6.「Silence Of A Candle」では、ラルフはピアノを弾いている。

7.「Brujo」は、各楽器の音の分離がはっきりしているので、ラルフの12弦、グレンのベースの妙技、コリンのタブラの繊細リズムを堪能できる。ビル・エバンスの曲で、「Friends」1977 O7でカバーした8.「Time Remembered」のライブ演奏を聴けるのは、本音源のハイライトだ。ここでは珍しくポールがイングリッシュ・ホルンでソロを取る。グレンのベース、ラルフのピアノのソロも途中倍速になるなど、十分気合いが入っている。9.「Night Glider」は、コリンのアルバム「Cloud Dance」1976に収録された曲で、オレゴンとしての公式録音はなく、この曲を演奏しているライブ音源も少ないので、貴重なトラックだ。シタールを中心としたミドルテンポのミステリアスな雰囲気の曲。ポールのバスクラの独奏から10.「Free Piece」に移り、マッチ箱を弦にはさんでミュートさせたクラシック・ギターとベース、タンバリンが加わり即興演奏となる。途中でラルフのミュートギターがアフリカ風のリズムを刻み出し、ポールのオーボエがアヴァンギャルドなソロを入れた後、ポールがホイッスル、グレンがバイオリン、コリンがクラリネット、ラルフがトランペットに持ち替える。ピアノを弾いているのはラルフとグレンのどっちかな? そのうちにラルフがメロフォーンを吹き始めるので、ピアノはグレンだ!という風に、オレゴンのフリーピースには、誰が何を演奏しているのか想像しながら聴く楽しみがある。ラルフのクラギの独奏をはさんで曲は、11.「Summer Solstice」になる。ここでの演奏は公式ライブ「In Concert」 1975 O5よりも自由で、伸び伸びとした感じで、間奏ではコリンによるタブラの独奏が入る。

公式録音にはない曲、ライブ音源があまりない曲を多く聴くことができる。


Cleveland (1976) [Oregon] 音源


Paul McCandless : Oboe, English Horn, Whistle
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano
Glen Moore : Bass
Collin Walcott : Sitar, Tabla, Percussion,

1. Timeless [John Abercrombie]  12:19
 
(English Horn, 12st. Guitar, Sitar, Bass, Tabla)
2. Ghost Beads [Towner] 13:12
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla) 
3. Free Piece [Oregon]  4:09
 
(Whistle, Oboe, Mellophone, Bass, Tabla, Percussion)
4. Nimbus [Towner]  7:54
 
(Oboe, 12st.Guitar, Bass, Percussion) 
5. Rainmaker [Towner]  8:18
 (Oboe, Piano, Bass, Percussion)

Recorded October 12, 1976, The Agora, Case Western Reserve University, Cleveland, Ohio


オハイオ州クリーブランドにおけるコンサート音源。観客の拍手からライブハウスのような狭い会場での演奏と思われる。音質の良し悪しは別として、各楽器が大変生々しい音で録音されており、精神的・肉体的に強靭な演奏が楽しめる。1.「Timeless」は、シタールのソロに演奏される12弦ギターのソロが力強い。コリンのタブラは、全体のバランス上録音の音が大きすぎるが、その分迫力満点だ。ラルフのギター独奏から始まる 2.「Ghost Beads」は、ポールがホイゥッスルを吹くあたりで即興演奏に移ってゆく。ラルフはメロフォンを吹いているようだ。そしてラルフの12弦の独奏になり、おやっと思ったら 4.「Nimbus」のテーマが始まる。12弦ギターをフルに鳴らし切っていて、その音数・音量は圧倒的だ。この曲はラルフがヤン・ガルバレクと組んだアルバム「Solstice」 1975 R4に収録されていた曲で、オレゴンとしての公式録音はない。なので途中からポールのオーボエとリズムセクションが加わると、何度聴いても、その都度感動を覚えてしまう。ベースやオーボエのソロも新鮮。5.「Rainmaker」はオレゴンの「Winter Light」1974 O4 に入っていた曲で、ここではテンポを上げた力強い演奏。特にラルフのピアノが饒舌・奔放で頑張っている。

オレゴンでは「Friends」、ラルフのソロ作品としては「Solstice」を発表した頃の音源とあって、珍しい曲を聴くことができる。

[2022年1月追記]
ポール・マッキャンドレスのホームページの「Past Perfomance」コーナーより、コンサート会場がわかりましたので、追記ました。



 
Cellar Door, Washington D.C. (1976) [Oregon] 音源
 
Paul McCandless : Oboe, English Horn, Whistle
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano
Glen Moore : Bass
Collin Walcott : Sitar, Tabla, Percussion,

1. Cloud Dance [Walcott]  10:41
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla)
2. Yellow Bell [Towner] 6:53
 (Oboe, Pianor, Bass, Percussion) 
3. Free Piece [Oregon]  9:04
 
(Bass Clarinet, Clarinet, Trumpet, Mellophone, Piano, C. Guitar, Sitar, Violin, Percussion)
4. Song For A Friend [Towner]  6:39
 
(Piano, Sitar, Bass) 
5. Nimbus [Towner]  7:46
 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Tabla, Percussion)
6. Three Step Dance [Towner]  6:12
 (Bass Clarinet, Bass, Percussion)



Recorded October 16, 1976, Cellar Door, Washington D.C.


セラー・ドアーは、ワシントンD.C.にあった163席の小さなライブハウスで、1965年から1981年の間に多くの有名アーティストが出演。ライブアルバムも多く製作され、特にマイルス・デイビスの1970年にステージは、「Live-Evil」というアルバムとして発表された。ここでのオレゴンのステージは、オーディエンス録音と思われる。モノラルで、ポール・マッキャンドレスのホーンの音が少しオフ気味ではあるが、各楽器の音がしっかり捉えられている。特にコリンのパーカッションとラルフのギターは自然な音で、聴いていて気持ちが良い。

1.「Cloud Dance」は、コリンのタブラによる強靭なリズムをバックに、オーボエとクラギが淡々とした演奏を繰り広げる。曲が終わった後にコリンのアナウンスが入るが、1976年発表の彼のソロアルバムの表題曲である本曲と、1978年発売の「Out Of Woods」O9に収録された 2.「Yellow Bell」の曲紹介が意外にあっさりしているので、もしかしたら録音時期が1976年ではなく、1977〜1978年頃であるかもしれない。ただし後者については、1977年1月のライブ演奏があるので、この時点でこの曲を演奏している事は決して不自然ではないが。

3.「Free Piece」はホーン主体の演奏から始まり、ラルフがメロフォンとトランペットを、コリンがクラリネットを吹いているようだ。そうすると同時に聞こえるピアノはグレンだな。途中で、ラルフはクラギ、コリンはパーカッション、グレンはバイオリンに持ち替え、様々な楽器が登場する。コリンがシタールを弾き始めてまもなく、メドレーで4.「Song For A Friend」に移ってゆく。1973年の「Distant Hills」のスタジオ録音と異なり、コリンのシタールの他、ラルフがピアノを弾いており、透明感溢れるソロが美しい。

繊細な12弦ギターの独奏から始まる 5.「Nimbus」は、バンドがフィルインすると一気に広がりを見せ、グレンの弓弾きソロやポールのオーボエソロの間、後ろで鳴り続ける12弦が緊張感を一層高めてくれる。続く 6.「Three Step Dance」は、グレンの奔放なベースとポールのバスクラによる低音主体の曲で、ラルフは参加していないようだ。

こじんまりとしたライブハウスでの演奏のせいか、比較的リラックスした演奏が楽しめる。

[2016年3月作成]


Vienna (1977) [Oregon] 音源 
 
Paul McCandless : Oboe, English Horn, Bass Clarinet, Whistle
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Trumpet
Glen Moore : Bass, Piano, Flute
Collin Walcott : Sitar, Tabla, Percussion, Clarinet

1. Ghost Beads [Towner]  16:45
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion)
2. The Silence Of A Candle [Towner]  10:09
 (English Horn, Bass Clarinet, Piano, Sitar, Percussion)  
3. Free Piece [Oregon]  8:02
 (Whistle, Oboe, Bass Clarinet, Clarinet, Trumpet, Flute, C. Guitar, 12 St. Guitar, Bass, Percussion)
4. Along The Way [Towner]  6:52
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion)
5. Yellow Bell [Towner]  5:53
 
(Oboe, Piano, Bass, Percussion)
6. Yet To Be [Towner]  3:30 (Fade Out)
 (Oboe, Piano, Bass, Percussion)

Recorded January 16 1977, Vienna, Austria,


1.「Ghost Beads」は、ラルフのギター独奏から始まる。テーマではオーボエの音が少しオフかなと思うが、2曲目以降はエコーが深めではあるが、それなりに良い音になる。 全体的にエコーが深めであるが、音的には悪くはない。各プレイヤーのソロが終わる毎に大きな拍手が起きる。2.「The Silence Of A Candle」は、公式ライブ盤の「In Concert」1975 O5と同じ構成の演奏なので、別テイクのような乗りで、両者を比較することで大いに楽しめる。冒頭のシタールソロは短めで、テーマ部分ではグレンのベースの弓弾きが大きくフィーチャーされる。テーマの後に演奏されるコリンのシタールはエモーショナルで、心にぐっとくる。その後のソロでポールが吹く楽器はバス・クラリネットと思われるが、テーマと同じイングリシュ・ホルンかもれない。3.「Free Piece」はシンセサイザーがない時代で、皆が頻繁に楽器を持ち替えている。ここではピアノ演奏がトランペットと同時に聞えるので、ここでのピアノ弾きはグレンだろう。メドレーで演奏される 4.「Along The Way」および 5.「Yellow Bell」は、「Sound And Shadows」 1977 R6、「Out Of Woods」 1978 O9で公式録音として発表される曲で、本音源の当時は未発表だったもの。そのためか、非常に新鮮な感じがする。プレイとなっている。 6.「Yet To Be」は、「In Concert」1975 O5における名演の別バージョンを聴けると大いに期待したが、大変残念ながらオーボエのソロの最中にフェイドアウトしてしまい、ラルフのピアノソロを聴くことはできない。


Rosie's New Orleans (1978) [Oregon] 音源



Paul McCandless : Oboe, English Horn, Whistle
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano
Glen Moore : Bass, Flute
Collin Walcott : Sitar, Tabla, Percussion,

1. Improvisation [Oregon]  10:30
 
(Oboe, Whistle, Piano, Bass, Tabla, Percussion)
2. Icarus [Towner]  9:18
 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Tabla) 
3. Yellow Bell [Towner]  10:45
 
(Oboe, Piano, Bass, Tabla, Percussion)
4. Raven's Wood [Towner]  18:36
 
(Oboe, Whistle, Flute, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion) 
5. Witch Tai To [Jim Pepper]  8:37
 (English Horn, Whistle, Sitar, Piano, Bass, Tabla)


Recorded Febuary 24 1978, Rosie's, New Orleans


写真: 2016年に発売されたCD 「Live In New Orleans」の表紙


ロージィーズはニューオリンズのミッシシッピー川の河岸近くにあったライブハウス。1970年代にオープン、1980年代半ばでクローズしたが、1995年にイベントスペースとして復活し、「Rosie's Jazz Hall」という名前になっている。

1.「Improvisation」は、オーボエとピアノを中心としたコレクティブ・インプロヴィゼイションで、途中からピアノが次の曲のモチーフを弾く。ラルフが12弦ギターを弾き始めてから、しばらくして2.「Icarus」の本格的イントロが始まる。ここでの間奏12弦ギターソロがかなり気合が入っている。その後タブラのソロを経てテーマに戻るが、そこでのベースとパーカッションの動きが同曲の他の音源と異なり、リズムセクションが自由な演奏をしていたことが伺える。3.「Yellow Bell」は、ホウィッスルとパーカッションによる即興演奏から始まる。笛の音色が日本の祭囃子のようだ。この曲におけるグレンのベースプレイを聴いていると、ピックアップの技術進歩によるベースの豊かな音が、バンドの演奏にオーケストラのような厚みを加えたようで、テーマ演奏のアンサンブルが実に素晴らしい。ラルフのピアノソロは、スタジオ録音「Out Of Woods」 1978 O9よりもアグレッシブだ。ここでコリンによる曲とメンバーの紹介が入り、長いチューニングの後に4.「Raven's Wood」が始まる。まずクラギとパーカッションのリズムを背景にホウィッスルが即興的なソロを取る。そしてギターがテーマを提示して曲の本格的な演奏に入る。オーボエのソロ、タブラの独奏の後に、グレンがベースを置いてフルートでソロを取る。その間はラルフのギターでベースをカバーしている。それから演奏される早弾きのベースソロはユニーク。愛奏曲 5.「Witch Tai To」ではシタールとピアノがスピリチュアルなソロを展開する。エンディングはルーツ音楽を思わせるホウィッスルのソロだ。

オーディエンスの反応も上々の米国でのコンサート音源だ。

[2021年8月追記]
2016年にHi Hatというレーベルから本音源がCDで発売された。といって音質は同じで、非公式音源につきもののノイズも残っていて、権利関係などの正規な手続きを踏んで発売されたものではないかもしれない。ただし、CD版には冒頭と最後にラジオのアナウンスのトラックが入り、本音源が放送録音であること、さらに裏表紙の解説で、WBUR Boston 90.9FMで放送されたものであることがわかった。なおCDでは、1.「Improvisation」と 2.「Icarus」がメドレーとして「Opening/Icarus/Free Piece」というタイトルになっている。ちなみに「Opening」という曲名は、オレゴンのコンサートで最初に演奏される即興演奏を、よくそう呼ぶため。


 
Moore Theater, Seatlle (1978) [Oregon] 音源 

 




Paul McCandless : Oboe, English Horn, Whistle
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Mellophone, Trumpet, Percussion
Glen Moore : Bass, Violin,
Collin Walcott : Sitar, Tabla, Percussion, Clarinet

[Early Show]
1. Improvisation [Oregon]  17:45
 
(Oboe, Clarinet, Mellophone, 12st. Guitar, Piano, Bass, Tabla, Percussion)
2. Yellow Bell [Towner]  9:00
 (Oboe, Piano, Bass, Percussion) 
3. Flagolet [Moore]  14:21
 
(Oboe, Bass Clarinet, Whistle, Clarinet, Trumpet, Violin, C. Guitar, 12st. Guitar, Sitar, Piano, Bass, Percussion, Calimba)
4. Land Of Heart's Desire [Moore]  4:18
 
(Bass Clarinet, 12st. Guitar, Piano, Percussion) 
5. Along The Way [Towner]  9:34
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion) 
6. Witch Tai To [Jim Pepper]  10:14
 (English Horn, 12st. Guitar, Sitar, Piano, Bass, Tabla, Percussion)

[Late Show]
7. Yet To Be [Towner]  10:22
 (Oboe, Piano, Bass, Tabla, Percussion)
8. Dust Devil [McCandless]  7:58
 (Whistle, Tabla)
9. Nimbus [Towner]  8:27
 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Percussion)
10. Waterwheel [Towner]  11:55
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla)
11. Free Piece [Oregon]  9:29
 (Oboe, Bass Clarinet, Mellophone, C. Guitar, Sitar, Violin, Piano)
12. Silence Of A Candle [Towner]  8:09
 (English Horn, C. Guitar, Sitar, Piano, Bass)
13. Fall 77 [Moore]  9:02
 (Bass Clarinet, Trumpet, Bass, Percussion)

Recorded October 25 1978, at Moore Theater, Seatlle, Oregon


シアトルのダウンタウンにあるムーア・シアターは、1907年にオープンした席数1,419の古い劇場。地元オレゴン州でのコンサートということで、ピリッとした演奏が楽しめ、オーディエンスの反応も上々。透明感と立体感にあふれた録音が素晴らしく、各楽器のアコースティックな響きが見事に捉えられている。

資料によるとアーリーショウの1曲目という 1.「Improvisation」の前半は、12弦ギターが同時期に発表されたラルフのアルバム「Batik」 R7のタイトル曲とよく似た感じのプレイだ。途中からタブラが入り、オーボエ、ベース、12弦ギターをソロをとる。リズムが止み、オーボエとパーカッションのデュオを経て即興演奏の様相を呈す。ラルフが吹くメロフォン(ホルンの一種)、ポールのオーボエ、グレンのバイオリンに加えて、もう一つの吹奏楽器が聞こえるが、これはコリンが吹くクラリネットと思われる。ピアノが入り、和音を提示した後に切れ目なく 2.「Yellow Bell」に移る。ラルフのタッチの強いピアノ演奏と、グレンのしなやかなベースプレイが印象的。3.「Flagolet」は、ブラスとベースによる現代音楽風の曲で、テーマを除きフリーピースの色彩が強く、各自が自由に音を出しているように聴こえる。コリンは途中でシタールを弾きだすは、バックで聴こえるパーカッションは、ラルフがやっているのだろう。この頃のオレゴンは皆いろんな楽器を演奏している。ブリッジ付近に紙をはさんでミュートさせたギターとシタールによる対話の後、コリンがカリンバ(アフリカン・ピアノ)を弾きだし、グレンのバイオリンとの掛け合いになる。ポールのホイッスルが加わると、俄然アフリカ音楽的なサウンドになる。次にラルフは12弦ギターに持ち替え、グレンがピアノを弾き、ポールがバス・クラリネットを吹き、そのまま4.「Land Of Heart's Desire」に移ってゆく。グレン独特のダークなムードに満ちた曲だ。5.「Along The Way」は、ラルフの独奏によるフリーなイントロに続き、テーマに入ってゆく。この曲は、ラルフのアルバム「Shoud And Shadow」1977 R6が初出で、オレゴンの正式録音はまだなく、1980年の「In Performance」O12にライブ演奏が収録された。この時点では既に完成度の高い演奏を聴かせてくれる。ラルフは、6.「Witch Tai To」の前半で12弦ギターを弾き、後半はピアノで力強いソロをとる。ポールはイングリッシュ・ホルンでソロをとっているので、少しおとなしいソロを展開。コリンがタブラを叩いている際に聞こえるタンブリンは、ラルフがやっているのだろう。

レイトショー最初の曲 7.「Yet To Be」は、1975年の「In Concert」O5よりも長い演奏で、その分オーボエ、ピアノのソロがよりエキサイティングで、オーディエンスも大きな拍手で反応している。8.「Dust Devil」は、ポールのホイッスルとコリンのタブラによるデュオで、ラルフは非参加。ポールは、オリジナル(「Moon And Mind」 1972 O10)よりも倍以上長い演奏を名人芸で吹き切っている。オレゴンでの正式録音がない 9.「Nimbus」をこのような録音の良い音源で聴けるには誠に貴重。この曲でのラルフの12弦ギターは名演と言えるだろうし、グレンやポールのソロも素晴らしく、緊張感に満ちた神秘的な音世界を見事に作り上げている。オーボエのソロの最中に一瞬ハウリングが入るのが残念。10.「Waterwheel」は、コリンのタブラの独奏から始まる。ギターがソロの後に戻ったテーマがデフォルメして、そのまま11.「Free Piece」になり、ギターとオーボエの対話が続いて、シタール、バイオリン、バス・クラリネット、メロフォン、ピアノが思うままの音を紡いでゆく。シタールの独演中に咳が聞こえるが、コリンがしているのかな?決め目なしに始まる12.「Silence Of A Candle」で、ラルフはピアノを弾いている。ポールはイングリッシュ・ホルンによる低めの音でソロを取り、ラルフのピアノがそれに続く。グレンのベースソロはいつになく叙情的で、途中からメロディーそのものを奏でていて、心に響くものがある。続くコリンのソローもスピリチュアルな奥深さが感じられる出来だ。グレン作曲の13.「Fall 77」は、弓弾きによるベースの独奏によるイントロから、変速チューニングのベースが奏でるエキセントリックなリフによるテーマに入る。バス・クラリネットソロでポールが絞り出すぎりぎりの高音が凄い。シンバルとタンブリンの音が同時に聞こえるので、後者はラルフが叩いているものとお思われる。この後ラルフがトランペット・ソロを披露するが、学生の頃マーチングバンドで吹いていた事があるだけあって、達者なものだ。

シンセサイザーを使っていない、純粋にアコースティックな頃のオレゴンの演奏を、良い音質でたっぷり楽しむことができる。


The Back Door, San Diego (1978) [Oregon] 音源  
 
Paul McCandless : Oboe, Whistle
Ralph Towner : Classical Guitar, Piano
Glen Moore : Bass, Flute
Collin Walcott : Tabla, Percussion,

1. The ELK [Moore]  10:28
 
(Bass Clarinet, Bass)
2. Free Piece [Oregon] 5:35
 (Whistle, Bass, Percussion) 
3. Raven's Wood [Towner]  12:06
 
(Oboe, Piano, Bass, Percussion, Tabla)
4. Along The Way [Towner]  9:22
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion)

Recorded November 10 1978, at The Back Door, SDSU, San Diego, California,

 
  

バックドアーは、サンディエゴ州立大学(San Diego State University)の構内にあるイベントスペースで、現在はミーティング会場として使用されているが、1970年代はロックやジャズのコンサートが盛んに行われていた。

1.「The Elk」は、「Moon And Mind」1972 O10に収録されたポールとグレンによるデュエットで、ラルフは非参加。バスクラと弓弾きベースのユニゾンによるイントロから始まり、グレンのベースをバックにポールがフリーなソロを展開する。途中は両者のインプロヴィゼイションの掛け合いとなるが、低音の出し合いといった趣を経てフリージャズの様相を呈す。2.「Free Piece」は、ホイッスル等の複数の吹奏楽器とクイーカ等のパーカッションによる即興演奏で、途中からベースが加わりリフを奏でだして、メドレーで 3.「Raven's Wood」に移ってゆく。この曲の演奏で特筆すべきこととして、普段はクラシックギターを弾くラルフがここではピアノを弾いている点が挙げられる。ブラジル音楽的なリズムの中で、ラルフは泉が溢れ出すごとく弾きまくっており、その乗りはオレゴンのライブ盤「In Concert」1975 O5における名演「Yet To Be」を彷彿させる素晴らしいものだ。コリン・ウォルコットとグレン・ムーアによる強靭なリズムも凄い。グレンのベースソロ、ポールのオーボエソロもクリエイティブ。4.「Along The Way」は、「今回のツアー最後の曲」と紹介される。ラルフの独奏から始まり、アンサンブルに発展してゆく構成はオーケストラのようにスケールが大きく、何度聴いても味わい深い曲だ。本音源は、資料によると、上記以外に「Canyon Song」、「June Bug」、「Sitar Solo」が残っているというが、私は未聴。

「Raven's Wood」でラルフがピアノを弾きまくるというレアトラックを含む音源。


  
Toad's Place, New Heaven, CT (1978) [Oregon] 音源 
 


Paul McCandless : Oboe, English Horn, Bass Clarinet, Whistle
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Mellophone, Trumpet, Percussion
Glen Moore : Bass, Violin, Piano
Collin Walcott : Sitar, Tabla, Percussion, Clarinet

1. June Bug [Towner]  9:10
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion)
2. Free Piece [Oregon]  6:06
 (Oboe, Bass Clarinet, 12st. Guitar, Sitar, Bass) 
3. Yellow Bell [Towner] 8:02
 (Oboe, Piano, Bass, Percussion) 
4. Hungry Heart [McCandless] 15:10
 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Tabla) 
5. Canyon Song [Towner] 7:59
 (Oboe, Whistle, C. Guitar, Violin, Bass, Tabla) 
6. Deer Path [Moore] 10:05
 (Oboe, Bass Clarinet, Trumpet, Piano, Sitar, Violin, Bass, Percussion) 
7. Interstate [Towner] 12:36
 (Oboe, Piano, Bass, Percussion) 

8. Timeless [John Abercrombie]  12:21
 (Oboe, 12st. Guitar, Sitar, Bass, Tabla)
9. North Star [Towner] 12:30
 (Oboe, C. Guitar, Piano, Bass, Tabla, Percussion)
10. Improvisation [Oregon] 8:05
 (Bass Clarinet, Whistle, Bass, Tabla)
11. Buzzbox [Oregon] 9:25
 
(Whistle, C. Guitar, Karimba, Percussion)
12. Vessel [Towner]  9:50
 (Bass Clarinet, Piano, Bass, Percussion)

13. Aurora [Towner]  35
 (Oboe, Piano, Bass, Tabla, Percussion) 

Recorded November 29 1978, at Toad's Place, New Heaven, Connecticut

 

トードズ・プレイスはコネチカット州ニューヘブンにあるライブハウスで、カエルのイラストがトレードマーク。本音源はオーディエンス録音であるが、音質の良さに加えて楽器のバランスが良く、ベース、パーカッション等しっかり聞こえる。唯一の欠点はタブラの音が少し小さめな点かな?

1.「June Bug」は、翌12月から録音された新アルバム 「Root In The Sky」 O11に収録された曲で、この時点では未発表であるが、レコードとほぼ同じ演奏で、既に出来上がっていたようだ。切れ目なくベースとバスクラ主体の 2.「Free Piece」に移る。そしてピアノが現れて、また切れ目なく 3.「Yellow Bell」になる。コリンのアナウンスの後演奏される 4.「Hungry Heart」も新しいアルバムからの曲。12弦ギターのソロが美しい。切れ目なくタブラのソロになり、クラギが加わって5.「Canyon Song」となる。2023年に聴いた音源の資料には「Summer Solstice」とあったが間違い。また同音源では途中で音切れが入るが、昔聴いた音源はノーカットでホイッスルのソロとなる。リズムが止んでホイッスルとバイオリンのみになると、フリーピース的な感じ。6.「Deer Path」は、シタールの独奏から始まり、テーマの後はフリーな演奏となる。学生の頃吹いていたというラルフのトランペットが聴ける。一瞬演奏が止まった後、ラルフのピアノが 7.「Interstate」のイントロを弾き出す。疾走感溢れるエキサイティングなプレイと、リズムが止んで静かになる部分の対比が鮮やか。

8.「Timeless」ではコリンのシタール、ラルフの12弦ギター・ソロをたっぷり聴くことができる。ポールは翌1979年の音源(Sherwood Hall) ではバス・クラリネットを吹いていたが、ここではオーボエで演奏している。同じ曲を異なる楽器で演奏できるなんて、本当に自由だよね。コリンが曲紹介して始まる 9.「North Star」は、クラギとピアノが同時に聞こえるのがユニーク。ピアノの演奏スタイルもいつもと異なり、ベースの音が聞こえないので、グレンが弾いているので間違いないだろう。演奏はコリンによるタブラ独奏を経て、即興演奏によるベース、ホイッスル、バスクラリネットのソロが展開される。切れ目なくカリンバが鳴り出し、11.「Buzzbox」につながる。ここではラルフにミュートギター(クラギのブリッジ近くの弦に紙を巻きつけたもの)が加わり。ホイッスルとバイオリンがソロをとり、終盤にはヴォイスも入る。ホイッスルの独奏の後、パーカッションがリズムを刻み、ピアノが入って12.「Vessel」に移る。ここではグレンの変態的ベースソロが聴きもの。

以前聴いた音源はこれでお終いになるが、今回(2023年)聴いた分には続きがあった。アンコールで演奏されるのは 13.「Aurora」。他の曲に比べて音量が小さく、音質がイマイチ、かつ時々音が一瞬途切れる箇所があるのが残念。今回の音源にはこの後「Canyon Song」が入っていたが、5.とは異なる演奏で、音質も異なることから、本コンサートではなく、他のライブのものと思われる。

曲間にフリーピースやインプロヴィゼイションを入れて切れ目なく演奏する、1970年代後半のオレゴンのコンサートの全貌が伺える音源。


Roots In The Sky Outtakes (1978) [Oregon] 音源

Paul McCandless : Oboe, English Horn, Whistle
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano
Glen Moore : Bass, Flute
Collin Walcott : Sitar, Tabla, Percussion,

1. Jug City (Vessel) [Towner]  9:02
 
(Bass Clarinet, Piano, Bass, Percussion)
2. Untitled Percussion (Sierra Leone) [Walcott]  3:05
 
(Karimba, Percussion) 
3. Reed Water [Oregon]  11:16
 (Piano, Violin, Flute, Whistle, Englih Horn, French Horn, Trumpet, Clarinet, Bass Clarinet, Percussion) 
4. Three x Four [Oregon]  3:04
 
(Piano, Violin, Bass Clarinet, French Horn, Trumpet, Bass, Percussion)
5. Untitled Wolf [Oregon]  3:26
 
(Violin, Whistle, Percussion)


Recorded December 1978 at Longview Farms, North Brookfield, Massachusetts, 


1979発売のアルバム「Roots In The Sky」O11の録音スタッフが持っていた音源。資料では「Out Of Woods Outtakes」とあるが、演奏内容、および彼が録音場所を「North Brookfield, Massachusetts」と述べていることから、アルバム名を勘違いしたことは明らかだ。

1.「Jug City」は、「Vessel」のこと(曲についての詳細はO11を参照のこと)。アルバムでの演奏時間は7分42秒であるのに対し、ここでは9分2秒のロングバージョンだ。ただし両方を聴き比べると、完全な別テイクではなく、各楽器のソロの大半は全く同じ演奏内容であり、バスクラリネットとベースのソロ部分の一部を編集したものであることがわかる。ともあれ、今まで聴いたことがない部分を耳にする時、新たな扉を開けたような不思議な感じがする。メンバーの会話から始まる 2.「Untitled Percussion」は、アルバム収録曲「Sierra Leone」のパーカッションの演奏部分だ。ここでの多重録音によるコリンの演奏時間は、レコードよりも少し長い。3.「Reed Water」は、吹奏楽器を主体としたフリーピースで、各メンバーが様々な楽器を持ち替えて思いのままに演奏する。後半にアルバムに収録された「Sierra Leone」のイントロ部分が出てきてビックリ。同曲が異なるふたつの曲を編集して作られたものであることがわかる。4.「Three x Four」は、弦楽器や管楽器による即興曲で、前の曲に比べてよりダークな雰囲気だ。5.「Untitled Wolf」は、邦楽のような笛の演奏から始まる。ここでの一部がアルバム収録曲 「Longing, So Long」に編集で取り入れられている。

「Roots In The Sky」には、フリーピースが収録されなかったが、実際は上記の曲が録音されていたこと。そしてその一部が編集されて、収録曲のイントロに使用されたことがわかった。アルバム用に編集される前の、ありのままの原型を楽しむことができる、お宝音源だ。


The Modern Theater, Boston Massachusetts (1979) [Oregon] 音源


Paul McCandless : Oboe, Bass Clarinet, Whistle
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Trumpet
Glen Moore : Bass, Piano (15)
Collin Walcott : Sitar, Tabla, Percussion, Clarinet

[1st Set]
1. June Bug [Towner]  14:21
 
(Oboe, Whistle, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion)
2. House Of Wax [Walcott]  9:17
 (Bass Clarinet, Sitar, Piano, Bass, Percussion) 
3. Icarus [Ralph Towner]  13:58
 
(Oboe, Sitar, 12st. Guitar, Bass, Tabla, Percussion)
4. Gloria's Step [Scott LaFaro]  9:02
 (C. Guitar, Bass) 
5. Buzzbox (Improvisation) [Walcott, McCandless]  10:01
 (Whistle, Karimba, Percussion)
6. Along The Way (Incomplete) [Towner]  7:19
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion) 
7. Free Piece [Oregon]  6:59
 (Oboe, Bass Clarinet, Clarinet, Trumpet, Piano, Bass, Percussion)
8. Interstate [Towner]  12:53
 (Oboe, Whistle, Piano, Bass, Percussion) 
9. The Silence Of A Candle [Towner]  8:39
 (Bass Clarinet, Sitar, Piano, Bass, Percussion)

[2nd Set]
10. Nimbus [Towner] 9:04
 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Tabla, Percussion) 
11. Waterwheel [Towner]  10:45
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion)
12. Improvisation [Oregon]  7:20
 (Bass Clarinet, Whistle, Trumpet, Bass, Carimba, Percussion) 
13. Fall 77 [Moore]  12:28
 (Bass Clarinet, Clarinet, Trumpet, Piano, Bass, Percussion)
14. Moon And Mind [McCandless]  11:03
 (Oboe, Piano)
15. At The Hawk's Well [Moore]  14:21
 (Sitar, Piano)
16. Yet To Be [Towner]  14:45
 (Oboe, Piano, Bass, Tabla, Percussion)
17. Deer Path [Moore]  5:26
 (Oboe, 12st. Guitar, Sitar, Piano, Bass) 


Recorded March 31, 1979 Modern Theater, Boston, MA


モダーン・シアターは、マサチューセッツ州ボストンのダウンタウンにある古い劇場で、2009年に内部が改装されて現在の姿になったというが、本音源はその前の録音ということになる。臨場感溢れる良質なオーディエンス録音で、テープ特有のヒスノイズはあるが、各楽器の音はクリアに捉えられている。サウンドボードといってもいいくらいの音なんだけど、オーディエンス録音と言い切れるのは、時折マイクの側にいる人の咳払いの音が入るため。

オレゴンとしては、「Out Of Woods」1978 O9発売後、「Moon And Mind」1979 O10発売前後、「Roots In The Sky」1979 O11発売前、ラルフとしては、「Batik」1978 R7と「Old Friends, New Friends」1979 R8の間の時期となる。1.「June Bug」は、10分過ぎた頃からベース弓弾きによる独奏を経て、ホイッスルとパーカッションを中心としたインプロヴィゼイションになる。そして即興演奏の中、ベースによるリフが出てきて 2.「House Of Wax」に移行する。最後はシタールの独奏が次の曲の導入メロディーを奏で、12弦ギターが加わって 3.「Icarus」が始まると、大きな拍手が起きる。タブラ、パーカッションの独奏の後にテーマに戻って37分におよぶ壮大なメドレーが終わる。拍手はカットされ、コリンのアナウンスが入るが、2.については「録音したばかりでタイトルがない」と紹介している。4.「Gloria's Step」では、珍しくグレンの4ビートのベースランを聴くことができる。といっても十分変態的なプレイなんだけどね。5.「Buzzbox」は、カリンバ、パーカッションとホイッスルによる即興的な演奏。6.「Along The Way」のみテープが伸びたか、あるいは録音機械の回転不調により、音がおかしくなる箇所が随所にある。そしてギターソロ、ベースソロが終わったところで途切れる。7.「Free Piece」は、リズムのないフリーな演奏の後、ピアノの独奏を経てエキサイティングな 8.「Intersate」に繋がる。テーマに戻った後、フリーな演奏になって拍手なしでカットされる。9.「The Silence Of A Candle」のイントロが始まると拍手が起きる。

セカンドセットは、オレゴンでの公式録音がない 10.「Nimbus」から。12弦ギターの独奏によるイントロは圧倒的で、弓弾きによるベースソロも凄い。11.「Waterwheel」は、ギターソロのバックで、コリンがタブラでなくパーカッションを演奏する珍しいケース。パーカッション独奏の後ホイッスルが登場して、リズムがある即興演奏 12.「Improvisation」に続き、そこではラルフのトランペット・ソロが楽しめる。そしてベースが 13.「Fall 77」のリフを弾き始める。ここでもラルフのトランペットが頑張っている。コリンの曲紹介のあと演奏される14.「Moon And Mind」は、スタジオ録音を遥かに上回る出来で、ポールのオーボエ・ソロ、ラルフのピアノ・ソロ(独奏)が素晴らしい。スタジオ録音ではグレンのピアノ独奏だった 15.「At The Hawk's Well」は、ここではコリンのシタールとのデュエットという大変珍しいお宝音源。コリンの「最後の曲です」というアナウンスに続く16.「Yet To Be」は、ラルフの湧きあがるようなプレイはお馴染み。摩訶不思議なソロを展開するグレンのベースが聴きもので、終わった後、盛大な拍手・声援が飛ぶ。17.「Deer Path」はアンコールということで短めの演奏。グレンはピアノを弾いている。間奏のフリー・インプロヴィゼイションの在り様が演奏毎に全く異なるのが面白いね。

オレゴンの精力的なライブを良質な音で3時間堪能できる、素晴らしい音源。


Portland, Oregon (1979) [Oregon] 映像

Paul McCandless: Oboe, Whistle
Glen Moore: Bass
Ralph Towner: 12-String Guitar 
Collin Walcott: Tabla, Sitar

1. Icarus [Ralph Towner]  7:12
 (Oboe, Whistle, 12-String Guitar, Bass, Sitar, Percussion)

Recorded: April 29,1979, The Earth, Portland, OR



資料によると、1979年オレゴン州ポートランドでの収録。撮影者のMike Lastraは、同地で活動するレコード・プロデューサー、エンジニアで、現地の音楽界の模様を撮影した映像作品を残している人。1台のカメラ(ビデオではなくフィルム)で遠くからの撮影のため、ズームやアングルの移動など素人臭いが、録音はサウンドボードから取ったらしく、しっかりしている。会場は大学の講堂みたいな所で、バンドの楽器や音響機材のセッティングもシンプルなもの。私にとって初めて観るコリン・ウォルコットの映像で、冒頭シタールを弾くシーンは感動的。みな若々しく髪もフサフサしている。イカルスの演奏としては、前半のシタール演奏(コリンは後半でタブラを叩いている)、ポールの瞑想的なソロなどで、いつもとは趣が異なるパフォーマンスとなっている。

当時の撮影機材の技術水準を考慮すると、このような映像が残されたことは幸運と考えるべきであろう。

[2022年1月追記]
ポール・マッキャンドレス氏のホームページの「Past Perfomance」コーナーより、正確な日付と会場がわかりましたので、追記しました。


 
Sherwood Hall, La Jolla, CA (1979) [Oregon] 音源

Paul McCandless : Oboe, English Horn, Bass Clarinet, Whistle
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Trumpet
Glen Moore : Bass, Violin,
Collin Walcott : Sitar, Tabla, Percussion, Clarinet

1. Buzzbox (Improvisation) [Walcott, McCandless]  10:01
 
(Whistle, Karimba, Percussion)
2. Yellow Bell [Towner]  9:17
 (Oboe, Piano, Bass, Percussion) 
3. Improvisation - Free Piece [Oregon]  17:03
 
(Oboe, Whistle, 12st. Guitar, Violin, Bass, Tabla, Percussion)
4. Odgen Road [Towner]  8:54
 (Oboe, Piano, Bass, Percussion) 
5. Roots In The Sky [Glen Moore]  10:01
 (Bass Clarinet, Trumpet, Sitar, Piano, Bass, Percussion)
6. Gloria's Step [Scott LaFaro]  5:37
 (C. Guitar, Bass) 
7. Cloud Dance [Walcott]  17:00
 (English Horn, C. Guitar, Bass, Tabla
8. Improvisation - Free Piece [Oregon]  8:48
 (Oboe, Trumpet, Bass Clarinet, Clarinet, Piano, 12st. Guitar, Sitar, Bass, Percussion) 
9. Timeless [John Abercrombie]  9:11
 (Bass Clarinet, 12st. Guitar, Sitar, Bass, Tabla)

Recorded May 6, 1979, Sherwood Hall, La Jolla, CA

注: 1.はラルフ非参加

ラ・ホイヤ(La Jolla)は、カリフォルニア州ロスアンゼルスの南、サンディエゴの近くの海沿いにある小さな町で、観光地として有名な所だ。本音源は、シャーウッド・ホールにおけるコンサートの良質なサウンドボード録音だ。

1.「Buzzbox」は、「In Performance」1980 O12 と同じカリンバ(アフリカン・ピアノ)の演奏パターンなので、そう名付けたが、ここではコリンとポールのデュエットによる演奏。スローテンポの曲 2.「Yellow Bell」は、ラルフのピアノが聴きもの。3.「Improvisation - Free Piece」は、最初はコレクティブ・インプロヴィゼイションから始まり、その後リズムがなくなってフリー演奏になる。鳥の鳴き声を思わせる音が飛び交い、笙(しょう)の演奏のような、明らかに邦楽を意識した部分もある。4.「Ogden Road」は、ラルフのソロアルバム「Diary」1974 R2に収録され、オレゴンのバージョンは、本コンサートの頃に製作中だったアルバム「Roots In The Sky」O11 1979に収められた曲。スタジオ録音では多重録音を駆使して交響曲のような壮大なサウンドを創り上げていたが、ここでは4人がフル回転で演奏しており、ライブでこれだけ出来るなんて驚異的だ。ラルフの力強いピアノ、コリンの芸術的なシンバル・ワーク、ポールの絶妙なオーボエ・プレイ、そしてグレンのベースの重低音は、バンドのサウンドにオーケストラのようなうねりを生み出しており、ベース・ピックアップの技術進歩がオレゴンの音作りに大きな変化をもたらしたことがわかる。 5.「Roots In The Sky」は、「録音したばかりでタイトルが決まっていない」と紹介される。グレンのベースがコクのある音で捉えられており、その独特なリフをバックにラルフのトランペットが大活躍する。

ラルフとグレンのデュオによる 6.「Gloria's Step」は、当時発売された「Moon And Mind」1979 O10から。ビル・エバンスとスコット・ラファロに対する思いが滲み出た演奏だ。7.「Cloud Dance」は、コリン・ウォルコットが1976年の同名のソロアルバムで発表した曲で、オレゴンとしての公式録音はない。曲はメドレーでコレクティブ・インプロヴィゼイションになり、タブラのソロの後、フリー演奏に移行する。そして12弦ギターとシタールが 9.「Timeless」を弾き始め、叙情的なテーマとソロの後、約35分に及ぶ長い演奏が終わる。

良い音質だし、ライブ演奏としては珍しい曲もあり、ファンにとって美味しい音源だ。


[2023年4月追記]
7につき、当初7.「Byonne」は長らく曲名不明だったが、約30年後の2007年に発売された「1000 Kilometers」 O27に、初めてポールの曲として公式録音が収録されたと書きましたが、誤りで、上記のとおり訂正しました。


Chapel Hill, North Carolina (1979) [Oregon] 音源 
 
Paul McCandless : Oboe, Bass Clarinet, Whistle
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Trumpet
Glen Moore : Bass,
Collin Walcott : Tabla, Percussion, Clarinet

1. Improvisation [Oregon]  15:04
 
(Oboe, Whistle, 12st. Guitar, Sitar, Bass, Tabla)
2. Yellow Bell [Towner] 14:56
 (Oboe, Piano, Bass, Percussion) 
3. Kupala [Towner]  9:40
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion)
4. Free Piece [Oregon] 11:26
 (Oboe, Whistle, Clarinet, Trumpet, Bass, Percussion) 

Recorded September 25, 1979 Chapel Hill, North Carolina

 

チャペル・ヒルは、ノースキャロライナ大学がある町。本音源はモノラルのオーディエンス録音で、ベースとパーカッションの音が大きく、音量が大きい場面では歪み気味で、音質的にはいまいち。

1.「Improvisation」は、ベースとパーカッションによる一定のパターン、リフのもとで、オーボエと12弦ギターが自由なソロを展開する。途中でリズムが止み、ベースのリフをバックにシタールとホイッスルがプレイ、アフリカ風のリズムが復活した後にベースの独奏となる。ピアノが入ると同時に、切れ目なく 2.「Yellow Bell」に移る。ミディアム・テンポであるが、ピアノソロには熱がこもっており、「Out Of Woods」1978 O9のクールな演奏とは雰囲気が全く異なる。ベースの音が大きい分、グレンのベースソロは迫力があり、聴きものになっている。3.「Kupala」は、ラルフのソロアルバム「Old Friends, New Friends」1979 R8に収録された曲で、オレゴンとしての公式録音はないため、貴重なトラックだ。ブラジル風のリズムによる軽やかなプレイで、後半のベースのリフが印象的。これも切れ目なく4.「Free Piece」となるが、正確な曲の切れ目がはっきりしないため、上記の演奏時間はタブラの独奏に入るところで区切った。ここでは、オレゴンの連中による管楽器の即興演奏を聴くことができる。同時に3種の楽器の音が聞こえるが、演奏楽器の正確な種類は特定しにくく、ここではポールがオーボエ、ラルフがトランペット、コリンがクラリネットと推定したが、多分他の楽器も使っていると思う。音源は途中でカットされている。

本音源は、上記以外の曲があるようであるが、筆者が聴いたのはこれだけだ。


 
Golden Bear, Huntington Beach (1980) [Oregon] 音源 
 


Paul McCandless : Oboe, Soprano Sax, Bass Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass, Violin, Piano
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Trumpet
Collin Walcott : Tabla, Sitar, Percussion, Clarinet

1. Improvisation [Oregon]  13:52
 (Whistle, 12st. Guitar, Piano, Bass, Percussion, Tabla)
2. Willow [McCandless] 12:34
 (Soprano Sax, Piano, Bass, Percussion) 
3. Longing, So Long [Walcott] 13:50
 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Percussion, Tabla) 
4. Free Piece [Oregon]  6:38
 (Oboe, Whistle, Bass Clarinet, Clarinet, Violin, Piano, Bass, Percussion)
5. Moon And Mind [McCandless]  9:36
 (Oboe, Piano)
6. At The Hawk's Well [Moore]  10:23
 (Piano, Sitar)
7. Juggler's Etude [Towner]  9:27
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla)

8. Vessel [Towner]  14:58
 (Bass Clarinet, Piano, Bass, Percussion)
9. Cloud Dance [Walcott] 27:43
 (English Horn, Oboe, Whistle, Trumpet, Violin, C. Guitar, Bass, Percussion, Tabla)
10. Deer Path [Moore] 6:53
 (Oboe, Piano)
11. Improvisation [Oregon]  9:15
 
(Sitar, 12st. Guitar)
12. Witch Tai To [Jim Pepper]  13:16
 
(English Horn, Oboe, Sitar, 12st. Guitar, Piano, Bass, Percussion)

Recorded April 7 1980, Golden Bear, Huntington Beach, CA


ゴールデン・ベアは、カリフォルニア州ロスアンジェルスの南東に位置するハンチントン・ビーチにあったライブハウス(1986年に閉鎖)で、ロック、フォーク、カントリー、ジャズ等、あらゆるジャンルのアーティストが出演した。本音源は、時間を気にする必要のない、こじんまりとしたライブハウスという環境で、ライブアルバムや放送用録音の場合の気張った雰囲気もなく、リラックスした普段着の演奏を楽しむことができる。ラルフがシンセサイザーの使用を始める前でもあり、会場の残響音も少なく、とても生々しいアコースティックな音で録音されている。グレンのベースは、ピックアップ・システムは洗練される前のせいか、音量的に少しオフ気味であるが、それがオレゴンの初期音源の特徴と言ってもいいかもしれない。この時期のひとつのコンサートで、これだけ沢山の曲が良質な録音で残されているのは大変有難いことで、珍しい曲もあって興味が尽きることはない。

1.「Improvisation」は、アフリカ風リズムをバックにポールがホイッスルを吹いており、コリンがカリンバを使っていることもあり、「In Performance」1980 O12の「Buzz Box」に似た感じの即興曲だ。ラルフの12弦によるハーモニクスを多用した独奏の後、グレンのベースとコリンのタブラによるインタープレイとなり、しばらく後にポールのホイッスルとラルフのピアノが入り、曲調は「Blue Sun」のようなメロディックな感じになり、そのまま2.「Willow」に移ってゆく。この曲は、ポール・マキャンドレスのアルバム「Navigator」 1981に収められていた曲で、オレゴンでの公式録音はない。ポールの切れ味鋭いソプラノ・サックス、ラルフの強いタッチのピアノプレイが存分に堪能できる。グレンの強靭なリズム、コリンによる繊細なシンバルワークも聴きもの。コリンの曲紹介の後に演奏される 3.「Longing, So Long」は、コリンの曲でラルフの12弦のプレイがいいね!曲自体は、コリンのタブラ独奏、グレンのベースソロの後は次第に自由な演奏となり、切れ目なくリズムのない 4.「Free Piece」となる。ここでは複数の鳥の鳴き声のような音が聞こえるので、誰かがバードホイッスルを吹いていると思われる。5.「Moon And Mind」は、レコードでの叙情性は影を潜め、ラルフとポールの情念の強い迸りに満ちたプレイに終始する。ラルフのピアノ独奏で、これほど強烈なものはないだろう。観客も大きな声援で反応する。オレゴンのもう二人による 6.「At The Hawk's Well」では、グレンはピアノを弾いていて、そのストイックなスタイルはラルフとは全く異なるのが面白い。最初はクールなコリンのシタールが中盤は狂おしいほど激しい演奏を見せ、フリーなプレイの後、最後は静かに終わる。コリンがファーストセット最後の曲として、ラルフの曲を初演するとアナウンスし、次にグレンは最新作の「In Performance」1980 O12のPRをして、いまここで演奏しているのと同じような内容と説明する。タブラのチューニングに時間をかかってイライラした会場の雰囲気を感じ取り、ラルフが冗談で「ツァラトウストラはかく語りき」のイントロを弾いて、オーディエンスを和ませている。新曲 7.「Juggler's Etude」は、後にジョン・アバークロンビーとのデュエット・アルバム 「Five Years Later」1982 R10に収録される曲で、オレゴンでは正式録音されなかった。テンポの速い難しい曲で、ラルフの作品のワン・オブ・ベストだと思う。人前での初めての演奏とのことで、少しぎこちなく荒っぽい感じはするが、新鮮さに満ちていることも確か。グレンの強靭極まりないベース・プレイが最高。

セカンドセットは 8.「Vessell」から。スタジオ録音の7分42秒の倍近い演奏時間で、各プレイヤーがたっぷりソロを展開する。コリン・ウォルコットが叩く Udu Drum(陶器の水壷に共鳴用の穴を開けたナイジェリアの打楽器)の響きが聴きものの他、グレンの珍妙なベースソロ、ポールのバス・クラリネットの極限に挑戦するかのようなプレイには脱帽。9.「Cloud Dance」はコリン1976年のアルバムのタイトルとなった曲で、かなりフリーな感じの演奏。パーカッション、バイオリン、バード・ホイッスル、トランペットによる密林の獣の鳴き声のような演奏から始まり、ラルフのトラペットがメインで吹く部分を経て、バンドによるテーマ演奏に入る。ラルフのクラギソロの後、ポールのオーボエソロはエキセントリックな音を出して迫る。コリンによるパーカッションソロ、クラギ、ベースとパーカッションによる(不思議な雰囲気の珍しいフォービート・リズム)からテーマに戻り、28分近くにおよぶ長い演奏が終わる。 10.「Deer Path」は、「In Performance」1980 O12とはイントロ、エンディングがかなり異なる、グレンのピアノとポールのオーボエによるデュエット。 ここでコリンが「明日はサンタ・バーバラで演奏する」とアナウンスし、キャンベル・ホールでのコンサートについて言及している。11.「Improvisation」は、ラルフとコリンによるジャムセッションのような演奏。こんな感じでゆったりシタールを弾いている音源はあまりないと思う。12.「Witchi Tai To」はシタールと12弦ギターの演奏にベースとイングリッシュ・ホルンが加わってテーマに入る。録音が良い分、シタールの繊細な音が楽しめるし、後半はテンポを早くする部分もある珍しいパターンの演奏で、エンディングはフリーなプレイで終わる。

ライブアルバムや放送音源には含まれないような曲・演奏がたっぷり詰まっていて、しかも極めて良質な録音というお宝もの。


Campbell Hall, Santa Barbra (1980) [Oregon] 音源
 


Paul McCandless : Oboe, Soprano Sax, Bass Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Trumpet, French Horn
Collin Walcott : Tabla, Sitar, Percussion

1. Free Piece [Oregon]  10:24
 (Oboe, Trumpet, 12st. Guitar, Piano, Bass, Percussion、Tabla)
2. Kupala [Towner] 8:00
 (Oboe, C. Guitar) 
3. Free Piece [Oregon]  9:30
 (Soprano Sax, Whistle, Trumpet, Sitar, Piano, Bass, Percussion) 
4. Interstate [Towner]  10:59
 (Oboe, Piano, Bass, Percussion)
5. The Juggler's Etude [Towner]  14:36
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla)
6. Beneath An Evening Sky [Towner]  8:12
 (Oboe, 12st. Guitar, Sitar, Bass, Percussion)
7. Ghost Beads [Towner]  14:45
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion, Tabla)
8. Celeste [Towner]  9:51
 (Soprano Sax, Piano, Bass, Percussion)
9. Brujo [Towner] 13:27
 (Oboe, Whistle, 12st. Guitar, Sitar, Bass, Percussion, Tabla)
10. Roots In The Sky [Towner]  9:09
 (Bass Clarinet, Trumpet, Sitar, Piano, Bass, Percussion)
11. House Of Wax [Walcott]  8:16
 
(Bass Clarinet, Sitar, Esraj ?, Piano, Bass, Percussion)

Recorded April 8 1980, Campbell Hall, Santa Barbara, CA


サンタ・バーバラ大学(UCSB)は、カリフォルニア州サンタ・バーバラの美しいビーチと自然豊かな山々に囲まれた場所にあり、1944年設立。その構内にあるキャンベル・ホールで行われたオレゴンのコンサート音源。公式ライブ盤「In Performance」1980 O12の少し後の録音で、シンセサイザー使用前のアコースティックなサウンドによる、油が乗り切った演奏を聴くことができる。

1.「Free Piece」は静的な演奏で、冒頭でラルフのトランペットを聴くことができるのがうれしい。ベースの弓弾きや12弦ギターのハーモニクスの中、コリンが弦で弾く楽器はエスラジかな?この後は拍手なしでメンバーのアナウンスになるので、編集されていると思われる。そこでは「「Kupala」のあと「Roots In The Sky」でコンサートを終わりにします」と言っているので、本音源の曲順はコンサート通りではないことがわかる。2.「Kupala」は、ラルフのアルバム「Old Friends, New Friends」1979 R8に収録された曲で、オレゴンとしての正式録音はなく、このような音源で彼等の演奏を聴けるのは大変有難い。ここではポールとラルフの二人だけのプレイになっているのが珍しい(他の音源では4人で演っている)。ギターソロの部分はラルフの独奏になるが、このようなテンポの早い曲を一人で弾き切っており、流石だ。(私にはよく判らないが)途中とちったらしく、彼は「Yeah !」という声を上げている。曲は途中でカットされるが、中途半端に終わった感はない。3.「Free Piece」はソプラノ・サックスとベースのデュエットから始まり、コリンのシタール、ポールのホイッスルのソロ、グレンの弓弾きベース、ラルフのトランペットが続く。ラルフがピアノを弾き始めると曲がリズミカルになり、曲調が俄然活き活きとして 、そのまま 4.「Interstate」に入ってゆく。躍動感溢れるコリンのパーカッション、グレンのベース、精気に満ちたポールのオーボエ、ラルフのピアノによるプレイは、「Friends」1977 O7のスタジオ録音に比べて段違いに素晴らしく、この曲のライブ音源は珍しいこともあり、とても貴重かつ美味しいトラックだ。この曲も最後のテーマ演奏に戻り、エンディングのところでカットされる。5.「Juggler's Etude」は最後にオーディエンスの拍手が入る完全版で、公式録音はラルフとジョン・アバークロンビーのデュエット盤「Five Years Later」1982 R10のみなので、これまた貴重な音源。原曲の素晴らしさもさることながら、難しい曲をさらっとこなす様は、彼等の演奏能力の高さが如実に出ている。間奏でのコリンのタブラ、パーカッション・ソロはいつもながら最高。6.「Beneath An Evening Sky」では、今では聴くことができないコリンのシタールを聴くことができるし、間奏部分のラルフの12弦のアルペジオ、ストロークの響きも心地良い。グレンのベースの響きの深さは、オーケストラのようだ。

7.「Ghost Beads」は初期の演奏に比べて、より洗練されたプレイになっているのが面白い。特にグレンのベースソロは凄い!アンサンブル、伴奏部分も含めての話で、ピックアップの技術的発達によりベースの音をより生々しく捉えることができるようになった点が大きいと思う。8.「Celeste」は、当時「Old Friends, New Friends」1979 R8が公式録音で、オレゴンによる録音はずっと後の「Troika」 1994 O19となる。美しいメロディー、コード進行とラルフのピアノ、ポールのソプラノ・サックスのプレイが心に染み入る好演奏。9.「Brujo」は、演奏の途中でそれらしきテーマ演奏が出てくるが、それ以外は全く別内容で「Free Piece」と呼んだほうがよいかも。といっても完全な即興演奏ではなく、12弦ギターのソロの部分等、一定のテーマ、ルールに基づいたグループ・インプロヴィゼイションというべきか。ここでもコリンによるタブラの独奏パートがある。ポールのホイッスル・ソロの後で編集が入り、グレンのベース演奏による 10.「Roots In The Sky」がいきなり始まる。ここではテーマ部分のラルフのトランペット、グレンのベースによる強烈なリフ、ポールのバス・クラリネット・ソロがハイライト。ラルフのピアノがオフ気味なのが残念だ。この曲は最後に拍手がしっかり入る。

一部を除き編集されているが、各曲とも最後まで演奏したという感のところでカットされているので、あまり気にはならない。拍手がない分、音楽に集中できるかも........。演奏レベルは高く、珍しい曲も演奏しており、音質も良い(楽器の音量バランスに難があり、ダイナミックレンジが広すぎるけど音自体はきれい)ので、とても有難い音源だ。前日のゴールデン・ベアーでの音源と演奏曲目がかなり異なっており、当時のオレゴンのパワーと演奏力がいかに凄かったかを示している。

[2022年8月追記]
その後別の音源で、11.「House Of Wax」を聴くことができた。曲間が編集されており、本曲がコンサートのどの部分で演奏されたかは不明のため、上記曲目では最後に表示した。

最初はエフェクトを効かせてシンセサイザーのような音を出す弓弾きのベースに、他の楽器が絡むフリーフォームなイントロから始まる。もう一つの楽器は定かではないが、当時のオレゴンはシンセサイザー未導入なので、コリンがエスラジ(インドの弓弾きによる弦楽器)をエフェクトに通しているのではないかと推定した。シタールの独奏を経て、切れ目なしに「House Of Wax」に移ってゆく。ポールの吹くバス・クラリネットの最強音とのダイナミックレンジが大変大きな録音で、最弱音に合わせてヘッドホンをしていると後で耳が破裂しそうになる。


 
Great American Music Hall, San Francisco (1980) [Oregon] 音源 
 



Paul McCandless: Oboe, Soprano Sax, Bass Clarinet, Whistle
Glen Moore: Bass, Violin, Piano
Ralph Towner: Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Trumpet
Collin Walcott: Tabla, Sitar, Percussion

[1st Set]
1. Timeless [John Abercrombie]  12:49
 (Oboe, 12st. Guitar, Sitar, Bass, Percussion, Tabla)
2. Free Piece [Oregon]  6:06
 (Whistle, Oboe, Trumpet, C. Guitar, Violin, Bass, Percussion) 
3. Along The Way [Towner]  9:09 
 (Oboe, Classic Guitar, Bass, Percussion) 
4. Cloud Dance [Walcott]  7:40
 (Oboe, Piano, Bass, Percussion)
5. Tabla Solo 〜 Free piece [Oregon]  5:51
 (Tabla, Bass Clarinet, Bass)
6. Hawaian Shuffle [Moore]  6:40
 (Bass Clarinet, Bass)
7. Untitled [Towner, Walcott]  13:10
 (Piano, Kalimba)
8. Free Piece [Oregon]  4:20
 (English Horn, Flute, Bird Whistle, 12st. Guitar, Percussion)
9. Celeste [Towner]  13:08
 (Soprano Sax, Piano, Bass, Percussion)
10. Waterwheel [Towner] (Fade In)  5:40
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla)

[2nd Set]
11. Distant Hills [Towner]  8:13
 (English Horn, Oboe, 12st. Guitar, C. Guitar, Piano, Bass)
12. Improvisation [Oregon]  5:34
 
(Whistle, 12st. Guitar, Piano, Bass, Percussion)
13. June Bug [Towner]  8:38
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion) 
14. Gazing Dream [Walcott]  7:39
 (English Horn, C. Guitar, Sitar, Bass) 
15. Tabla Solo [Walc
ott]  4:39
 (Tabla)
16. Willow [McCandles]  10:44
 
(Soprano Sax, Paino, Bass, Percussion)
17. Song For A Friend [Towner]  9:10
 
 (Soprano Sax, Piano, Sitar, Bass, Percussion)

Recorded September 21 1980, Great American Music Hall, San Francisco, CA


グレイト・アメリカン・ミュージック・ホールはサンフランシスコにある1907年建立の古いホールで、1972年に荒れ果てた建物を修復して現在の名前になった。装飾を凝らした内装が特徴で、バーレスク、ジャズ、フォーク、ロックをメインとする全米屈指のコンサート会場だ。本音源はサウンドボード録音で、各楽器の音が自然な感じで、かつクリアーに捉えられており、バランスも素晴らしい。

1.「Timeless」は、フリーフォームなイントロから始まる。ソロがシタール→ベース→12弦ギター→オーボエと続くうちに、狂おしいほどにエモーショナルに盛り上がってゆく。切れ目なしの 2.「Free Piece」は、息を吹き込むようなホイッスル、弓弾きのベース、ラルフのトランペットが入り、笛とパーカッションが邦楽のよう。クラシックギターの独奏の後、そのまま3.「Along The Way」に移る。同時期の公式ライブ「In Performance」O12の演奏に比べると、ワイルドで自由奔放なプレイで、大変魅力的。ここでコリンのアナウンスとチューニングの時間になるが、ラルフが弾くピアノは「Yellow Bell」の試しをしているようだ。しかし本音源ではカットされたようで、コリンの曲でオレゴンの公式録音がない4.「Cloud Dance」になる。急速調のブラジル風リズムの躍動感が心地良い曲で、途中からコリンによるタブラの独奏になる。即興風の演奏が続いた後、バスクラリネットとベースのデュオになって、これまたオレゴンの未発表曲 6.「Hawaian Shuffle」になる。変則チューニングの使用したベースの風変わりな響きがユーモラスな曲だ。次の曲は残りの二人によるデュオ 7.「Untitled」で、コリンのカリンバ(アフリカンピアノ)とラルフのピアノという珍しい取り合わせだ。超人的なカリンバのドライブ感が凄く、ラルフも煽られて迸るように弾きまくるお宝音源! 12弦ギターのハーモニクス、バード・ホイッスルなどによる 8.「Free Piece」に続き、ラルフのピアノが印象的な 9.「Celeste」になる。スタジオ録音のリリカルな雰囲気は消え失せ、テンポの早い、ピアノ、ベース、ソプラノサックス等による鋭いソロが入るエキサイティングなプレイだ。10.「Waterwheel」は、オーボエ・ソロの途中からフェイドインする。

セカンドセットの最初の曲11.「Distant Hills」は、12弦ギターとコリンによる6弦ギターのアルペジオが変化に富み、躍動感に溢れていて、テンポも速く、スタジオ録音と全く異なる雰囲気になっている。ポールはテーマでは音が低いイングリッシュホルンを吹いているが、ソロの時はオーボエに持ち替えている。またラルフの12弦ギターがソロをとる際は、グレンがピアノでバックに加わっている。12.「Improvisation」は、12弦ギターによるドローンサウンドから始まって、ラルフがギターの胴を叩いたり、ベースが激しくリフを刻む。メドレーによる 13.「June Bug」もオリジナルよりテンポがずっと早くなっている。一方で14.「Gazing Dream」は、シタールを中心とした落ち着いた感じの曲だ。16.「Willow」は、ポールの曲だけあって、彼のソプラノサックス・ソロの出来がすこぶる良い。ラルフのピアノソロもガッツが入っている。この曲では、最後のテーマの部分で残念ながらカットが入り、音が飛ぶ部分がある。エンディングはポールのホイッスルで静かに終わる。17.「Song For A Friend」でラルフは通常クラシック・ギターを弾くが、ここでは彼がピアノを弾いており、大変珍しいトラック。べースがメロディを奏でるのは同じであるが、全く異なるカラーになっているのが面白い。これもお宝音源だ。

珍しい曲、珍しい楽器による演奏がいっぱい詰まった音源で、編集によるカットが入る部分があるのが残念であるが、録音も良く、聴いた者にとって宝物になるだろう。


McCabe's Guitar Shop (1980) [Oregon] 音源






Paul McCandless: Oboe, Soprano Sax, Bass Clarinet, Whistle
Glen Moore: Bass, Violin, Flute
Ralph Towner: Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Trumpet, Percussion
Collin Walcott: Tabla, Sitar, Percussion

1. Opening [Oregon]  8:12
 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Percussion, Tabla)
2. Julian [Paul McCandless]  12:50
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Percussion) 
3. Free Piece [Oregon]  7:52
 (Sitar, Bass) 
4. Yellow Bell [Towner]  9:22
 (Oboe, Piano, Bass, Percussion)
5. Icarus [Towner]  9:50
 (Oboe, Whistle, 12st. Guitar, Bass, Tabla, Percussion)
6. Buzz Box [Oregon]  9:03
 (Whistle, Soprano Sax, Trumpet, Bass, Kalimba, Percussion)
7. Along The Way [Towner]  7:51
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion)
8. Vessel [Towner]  12:28
 (Bass Clarinet, Piano, Bass, Percussion)

9. Kupala [Ralph Towner]  10:31
 (Oboe, Bass Clarinet, C.Guitar, Bass, Tabla, Percussion)
10. Free Piece [Oregon]  7:49
 
(Soprano Sax, Whistle, Piano, Violin, Bass, Percussion)
11. Yet To Be [Towner]  9:43
 (Oboe, Piano, Bass, Percussion, Tabla)
12. Beneath An Evening Sky [Towner]  8:53
 
(Oboe, 12st. Guitar, Sitar, Bass, Percussion)
13. Will You Miss Me When I'm Here ? [Moore]  8:00

 (Bass Clarinet, Trumpet, Bass, Tabla, Percussion)
14. Moon And Mind [Paul McCandless]  11:59
 (Oboe, Piano)
15. Ghost Beads [Towner]  12:09
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion)
16. Free Piece [Oregon]  7:35
 (Whistle, Flute, 12st. Guitar, Sitar)
17. Witchi Tai To [Jim Pepper]  10:37
 (English Horn, Soprano Sax, 12st. Guitar, Piano, Sitar, Bass, Percussion)

Recorded September 23 1980, McCabe's Guitar Shop, Santa Monica, CA


18. Brujo [Towner]  10:34
 (Oboe, Whistle, 12st. Guitar, Bass, Tabla, Percussion)
19. Celeste [Towner]  8:58
 (Soprano Sax, Pinao, Bass, Percussion) 
20. Free Piece [Oregon] 8:19
 (Soprano Sax, Bass Clarinet, Whistle, Piano, Sitar, Bass, Percussion)
21. Contrarie Emotions [Moore]  6:53
 (Oboe, Piano)
22. Waterwheel (Cut) [Towner]  5:24
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion)
23. Buzz Box [Oregon]  7:48
 (C. Guitar, Kalimba)
24. Drifitng Petals [Towner]  11:12
 (Oboe, Piano, Bass, Percussion)
25. Willow [McCandless]  15:25
 
(Soprano Sax, Piano, Bass, Percussion)

26. Roots In The Sky [Moore]  10:45

 
(Bass Clarinet, Trumpet, Piano, Sitar, Bass, Percussion)
27. The Silence Of A Candle [Towner]  12:05
 (English Horn, 12st. Guitar, Sitar, Bass, Percussion)
28. June Bug [Towner]  14:02
 (Oboe, Whistle, C. Guitar, Bass, Percussion)
29. Rainmaker [Towner]  10:31
 (Soprano Sax, Piano, Bass, Tabla)
30. Longing, So Long [Walcott] 16:29
 (Oboe, 12st. Guitar, Sitar, Bass, Tabla, Karimba, Percussion)
31. Raven's Wood [Towner]  9:13
 
(Oboe, C. Guitar)
32. Witchi Tai To [Jim Pepper]  14:28
 (English Horn, Soprano Sax, 12st. Guitar, Piano, Sitar, Bass, Percussion)

Recorded September 24 1980, McCabe's Guitar Shop, Santa Monica, CA


ロスアンゼルスのサンタモニカにあるギターショップ、マッケイブスには小さなホールがあり、1958年の開業以来、現在に至るまで数多くの有名アーティストがライブを行っている。9月23日と24日の2日間で約326分という膨大な演奏時間のおかげで、レコード未収録の曲や、他の音源で聴けない珍しい曲が多く、代表曲以外も漏らさず拾ってくれた意義は大きい。それにしても 2日間で重複している曲は「Witchi Tai To」のみという驚異的なレパートリーの広さは、演奏力の限界に挑戦してるかのようだ。当時彼らが心身共に、如何に充実していたかを物語っている

1.「Opening」は、彼らがコンサート初めの曲として、ウォームアップを兼ねて行うコレクティブ・インプロヴィゼイションで、イントロはラルフの作品「Batik」 R7 1978を彷彿させるものがある。インテンポになってからは、ぴりっとした演奏になり、この手の曲としては良い出来だと思う。切れ目なしに続く 2.「Julian」は、ポール・マッキャンドレスのアルバム「Navigator」1981に収録されたクールな雰囲気の曲で、オレゴンとしての公式録音はない。ラルフがソロの真っ最中に、開放弦を派手に鳴らしてギターのチューニングを堂々と行っているのが傑作。150人収容という小さな会場、または制約のないコンサートの趣旨のせいか、オレゴンのメンバーはいつになくリラックスしており、プレイも自由奔放。フェスティバルや大会場でのコンサートでの緊張感溢れる演奏と全く異なる顔を見せているのが面白い。3.「Free Piece」はシタールとベースのデュエットで、ラルフは未参加。グレンが弓や何か他のものでベースの弦を擦って不思議な音を出している。演奏自体はアヴァンギャルドなスタイルだ。4.「Yellow Bell」は、ピアノ、ベース、シンバルの音が澄み切っていて、リスナーの心を透明にしてくれる瞑想感に溢れた演奏。5.「Icarus」は、ポールのホイッスル・ソロのイントロから始まるのが特徴。オーボエ・ソロはいつもより長く、ベースソロでリズムが止まり、テーマに戻らずにメドレーで演奏される 6.「Buzzbox」では、コリンがカリンバ(アフリカンピアノ)を弾いている間も聞こえるパーカッションは、ラルフが演奏しているようだ。またラルフのトランペット・ソロを聴くことができるのが貴重。切れ目なしにラルフのクラギの独奏になり、7.「Along The Way」になる。フリーフォームな演奏の後なので、この曲の室内楽的な美しさが一層際立っている。8.「Vessel」は、コリンのUdu Drum (ナイジェリアの打楽器で、陶器の水壷に穴を開けたもの)をフィーチャーした曲。

9.「Kupala」は、ラルフのアルバム「Old Friends, New Friends」1979 R8に収録されていた曲(会場ではコリンが「タイトルなしの新曲」と紹介しているが、私には「Kupala」をリアレンジしたものに聞こえる)で、オレゴンでの正式録音はない。ブラジル風のリズムが軽快で、間奏部におけるベース、クラギ、バス・クラリネットによるロック調のリフが印象的。後半リズムが止まり、メドレーで10.「Free Piece」、11.「Yet To Be」となる。後者でのピアノプレイは凄く、曲が終わるとオーディエンスは大きな拍手を贈っている。12.「Beneath An Evening Sky」は、ラルフの静謐な12弦ギターをバックにコリンのシタールが情感溢れるプレイを展開する。グレンが13.「Will You Miss Me When I'm Here」のタイトルを紹介すると、オーディエンスは大笑い。ハーモニクスを多用したベースのリフとバス・クラリネットのソロがユニークな曲。ここでもラルフのトランペット・ソロが楽しめる。何故かオレゴンおよびグレン・ムーアいずれのアルバムにも収録されず、未発表で終わった。コリンが次の曲として 14.「Moon And Mind」を紹介すると歓声をあげた客がいて、皆大笑い。私も同じ思いで、この曲ライブ演奏が聴けるのは最高! ラルフのピアノは、夜ひたひたと流れる川のように聴く者の心に押し寄せてくる。15.「Ghost Beads」は、初期のレパートリーからで、そのまま16.「Free Piece」へ。17.「Witch Tai To」は、12弦ギター、ピアノ演奏がドラマチックな盛り上がりを見せる。

2日目の最初の曲 18.「Brujo」は、間奏部分がコレクティブ・インプロヴィゼイションに近い感じの演奏なので、初日の「Opening」と相似しており、彼らにとってウォームアップ的な演奏といえる。ポールは後半からホイッスルを吹いている。19.「Cleste」は、ラルフのアルバム「Old Friends, New Friends」1979 R8に入っていた曲で、オレゴンでの録音は、1994年の「Torika」O19 とかなり後になる。ソプラノ、ベース、ピアノの情感溢れる美しいソロが素晴らしい。演奏はそのまま 20.「Free Piece」につながってゆく。ここではグレンが弓弾きで面白い音を出している。21.「Contrarie Emotions」は、グレンのピアノとオーボエのデュエットでラルフは非参加。グレンの初ソロアルバム「Introducing Glen Moore」1979に収められた曲で、ストイックなピアノがいかにも彼らしい。ここでグレンが「昨晩ここで2セット演奏した」と話し、22.「Waterwheel」を始めるが、音源はオーボエに続くギターソロの部分で途中カットとなり残念。23.「Buzz Box」は、資料ではそう表示されているが、実際はマッチ箱を弦のブリッジ近くに挟んでミュートさせたギターとカリンバのデュエットで、完全に異なる曲(むしろ「Roots In The Sky」1979 O11 の「Sierra Leone」に近い感じがする)。24.「Drifiting Petals」は、ラルフのアルバム「Matchbook」 1975 R3、「Solstice」1975 R4で演奏された曲で、これもオレゴンでの正式録音はない。テーマの表題音楽(花弁が落ちる様を描いたもの)と間奏のコレクティブ・インプロヴィゼイション風の演奏との対比が鮮やかだ。25.「Willow」は、ポールのアルバム「Navigator」 1981に収められていた曲で、オレゴンでの公式録音はない。ポールのソプラノ・サックスの独奏から始まり、急速調での間奏ではピアノとソプラノが大活躍する。26.「Roots In The Sky」は、グレンの強靭なベースリフをバックに、前半はラルフのトランペットとポールのバス・クラリネットが、後半ではラルフがピアノでソロを取る。27.「The Silence Of A Candle」は、スピリチュアルながらも美しい旋律に満ちた演奏だ。28.「June Bug」は間奏部分でベースが激しくリフを刻むバージョンだ。イントロのパーカッションで笑いを取っている。それにしても鳥や獣の鳴き声のような音は、どうやって出しているだろう? 29.「Rainmaker」は、オリジナル録音や初期のライブではオーボエによる演奏だったが、この頃はソプラノ・サックスを吹いており、その分パワーアップしている。ピアノ、ソプラノ、ベースのソロが本当にパワフルかつ自由奔放で、この曲のライブ演奏のなかでも最もワイルドな出来となった。30.「Longing So Long」は、コリンのタブラの独奏が聴きもの。31.「Raven's Wood」は、ラルフのクラシック・ギターとポールのオーボエによるデュエットという珍しい編成。この手のリズミカルな曲を、敢えてリズムセクション無しで演奏するなんて大胆極まり無く、ラルフが間奏で、リズムを取りながらメロディーを紡ぎ出すのが凄い。32.「Witch Tai To」は、上述のとおり2日間の演奏で唯一の重複曲(「Buzz Box」はタイトルが同じであるが実質的に異なる)。とは言っても、1日目とは異なる演奏内容であるのはさすがだ。

シンセサイザーを導入する直前の、生楽器のみによるオレゴンの演奏をたっぷり楽しめる。オーディエンス録音のように思えるが、その割には録音はすこぶる良く、小さな会場における楽器の自然な音が素直に捉えられている。未発表曲や、珍しい曲が多くあり、とても美味しく貴重な音源だ。

[2013年12月]
9月24日の音源を聴くことができましたので、全面的に書き直しました。


 
Workshop, Pick-Staiger Concert Hall, Evanston, Illinois (1980) [Oregon] 音源  
 
Paul McCandless: Oboe
Glen Moore: Bass
Ralph Towner: Classical Guitar, 12-String Guitar
Collin Walcott: Tabla, Percussion

1. Opening (Improvisation) [Oregon]  7:00
 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Tabala)
2. North Star [Tonwer]  8:18
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion) 

Recorded 1980, Pick-Staiger Concert Hall, Evanston, Illinois

 

イリノイ州ノースウェスタン大学での夜のコンサートの前に行われたワークショップの録音。まず各メンバーが個別にワークショップを実施して、その後にグループで開催したという。参加者(拍手の音からすると、そこそこの人数のように思える)に対し、オレゴンのメンバーが語り、質問に答え、デモとして演奏する約43分の音源で、主催者のノースウェスタン大学が録音・保存していたもの。コンサート前なので、P.A.のセッティングが未済の状態で演奏している。

私には会話の内容がよく聞き取れないので、以下あらましだけ述べる。メンバー紹介の後、グループの演奏スタイルの話になる。そこでは即興演奏に焦点が当てられ、Tonarity (調性)をもとにした演奏のデモとして1.「Opening (Improvisation)」が演奏される。ここではCの調性によるプレイで、ラルフ12弦ギターはCマイナーのオープン・チューニングであること、相手の動きを聞きながら自由に演奏すると言っている。その後グループ結成の経緯と、異なるスタイルのメンバーが互いに影響し合っている旨が語られている。次に予め作曲され、コード進行がある曲のデモとして、2.「North Star」が演奏される。P.A.なしの録音なので、ベースがオフ気味で、音質も少し粗い感じがするが、自分達の音楽に興味がある人々に対しているせいか、2曲とも力と心がこもった演奏になっている。

珍しいワークショプの録音で、演奏自体は録音時間の約3分の1であるが、良い出来だと思う。

[2021年12月作成]

[2022年1月追記]
資料によると1980年とあったが、1982年の同地におけるコンサートの前に収録された可能性が高い。


Town Hall, Sydney (1980) [Oregon] ラジオ音源

Paul McCandless: Oboe, Soprano Sax, Bass Clarinet
Glen Moore: Bass
Ralph Towner: Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Trumpet
Collin Walcott: Tabla, Sitar, Percussion

[First Concert]
1. Untitled (Fade In) [Towner]  8:35
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabala)
2. Free Piece [Oregon]  7:05
 (Oboe, Whistle, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion) 
3. Beneath An Evening Sky [Towner]  6:40
 (Oboe, Sitar, 12st. Guitar, Bass, Tabla, Percussion) 
4. Roots In The Sky [Moore]  8:13
 (B. Clarinet, Trumpet, Sitar, Piano, Bass, Percussion)
5. Celeste [Towner]  8:02
 (Soprano Sax, Piano, Bass, Percussion)
6. Nimbus [Towner]  9:27
 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Tabla)
7. Along The Way [Towner]  7:02
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion)
8. Hawaiian Shufflel [Moore]  7:24
 (Bass Clarinet, Bass)
9. Buzz Box [Oregon]  6:45
 (12st. Guitar, Karimba)
10. Free Piece [Oregon]  6:40
 (Oboe, Whistle, Flute, Piano, Bass, Percussion)
11. Tabla Solo [Walcott]  4:22
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion)
12. Rainmaker (Fade Out) [Towner]  9:33
 (Soprano Sax, Piano, Bass, Tabla)

[Second Concert]

13. Waterwheel [Towner]  11:50

 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla)
14. Free Piece [Oregon]  6:53
 (Bass Clarinet, Whistle, C. Guitar, Piano, Bass, Tabla, Percussion)
15. Willow [McCandless]  14:35
 (Soprano Sax, Piano, Bass, Tabla, Percussion)
16. Yet To Be [Towner]  2:02
 (Oboe, Piano, Bass, Tabla)
17. Free Piece [Oregon]  5:01
 (Bass Clarinet, Trumpet, Whistle, Violin, 12st. Guitar, Sitar, Percussion)
18. The Silence Of A Candle [Towner]  7:35
 (English Horn, 12st. Guitar, Sitar, Bass, Percussion)
19. June Bug [Towner]  7:20
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion)
20. Fall '77 [Moore]  12:40
 (Bass Clarinet, Trumpet, Piano, Bass, Percussion)
21. Deer Path [Moore]  7:11
 (Oboe, 12st. Guitar, Piano, Bass)
22. Witchi Tai To [Jim Pepper]  11:25
 (Oboe, 12st. Guitar, Piano, Bass, Tabla, Percussion)
23. Icarus (Fade Out) [Towner]  5:23
 (Oboe, Piano, Bass, Tabla, Percussion)

Recorded middle of September 1980, Town Hall, Sydney Australia

注) 8.はラルフ非参加


シドニーのFMラジオ放送用に録音された音源。時期的にはライブアルバム「In Performance」 O12の約1年後にあたり、サウンド的にはほぼ同じ。まだシンセサイザーを使用していなかった頃にあたる。1.〜3.のメドレー演奏が終わった後に、コリンから「タイトルなし」と紹介される 最初の曲は、ホーンとギターのソロの後、中盤のリフとベースソロの演奏部分からフェイドインする。ブラジル音楽風のリズミカルな演奏から、次第にリズムがなくなり、2.「Free Piece」に移行する。ここではラルフはギターのブリッジ部分に紙を挟んで音をミュートさせて弾いている。しばらく抽象的なプレイが続いた後に12弦ギターが現れ、3.「Beneath An Evening Sky」のリフを演奏し始め、シタールがテーマメロディーを奏で、ソロをとる。4.「Roots In The Sky」は、メインとなるベースのリフが、O11のスタジオ録音では多重録音だったのに対し、ここではグレン一人で頑張っており、それなりに味がある。ちなみに我が家の奥さんはこの曲を聴いて「同じ音がぐるぐる回っている。機械が故障しているんじゃないの?」と言っていました。ラルフのトランペットソロが聞けるのがうれしいね。後半ラルフはピアノを弾き、バスクラリネット、ピアノの順番でソロが回る。ラルフのソロアルバム 「Old Friends, New Friends」1979 R8 からの 5.「Celeste」は、ピアノが美しいバラード曲。コリンはシンバルワークに徹し、本音源のなかで最もジャズらしいサウンドだ。6.「Nimbus」は、ヤン・ガルバレクとのグループによる作品「Solstice」 1975 R4に収められていた曲で、オレゴンでは未録音の曲だ。最初の4分間がラルフの12弦ギターによる怒涛の独奏。その後にテーマ演奏にオーボエが加わり、リズムセクションが入りバンド演奏になる。ベースやオーボエのソロもきける貴重音源だ。7.「Along The Way」は、雰囲気的には「In Performance」 O12と同じ。各プレイヤーのソロの内容は勿論異なるけどね。

8.「Hawaiian Shuffle」はグレンの曲で、ベースとバスクラリネットのデュエット。グレンが1979年に出したソロアルバム「Introducing Glen Moore」に入ってた。9.「Buzz Box」は、「In Performance」 O12の演奏と比較すると、コリンによるカリンバのリフは同じだが、ラルフの12弦ギターのデュエットとなっている。ラルフのパートは、もともと即興演奏のようで、全く異なるメロディー、雰囲気での演奏であり、コリンのカリンバによるソロのパートもある。10.「Free Piece」は、ラルフによるピアノプレイがさらさらした水の流れのようで印象的。メドレーでタブラソロとなり12.「Rainmaker」につながってゆく。ここでは「Winter Light」 1974 O4 のオリジナルに比べてテンポがかなり速く、全く異なる雰囲気になっている。ソプラノサックス、ピアノ、ベースとソロが回った後の最後のテーマ演奏で、アンサンブルによる雨が降り注ぐような細かな音の粒が心地よい。

セカンド・コンサートの最初の曲 13.「Waterwheel」は、オーボエの独奏から始まる。ここでは、いつものライブ演奏と異なり、タブラのソロが入らない。メドレーで演奏される「Free Piece」は、ラルフの独奏からグループ・インプロヴィゼイションとなり、その後リズムがなくなってピアノとベースの対話になる。そしてポール・マッキャンドレス作の15.「Willow」(詳細は次の「Berliner Jazztage」を参照)に移ってゆく。曲の後半でベースとパーカッションが各独奏を披露し、そして切れ目無く 16.「Yet To Be」のテーマ演奏となるが、ソロ演奏がないまま 2分ちょっとで演奏を終えてしまうのが変わっている。17.「Free Piece」はバード・ホウィッスルと、ラルフのトランペットの音が面白い。切れ目なく始まる18.「The Silence Of A Candle」は、コリンのシタール、ラルフの12弦が胸にしみるエモーショナルな演奏だ。19.「June Bug」が終わったところで、ポールによるメンバー紹介がある。グレンの曲 20.「Fall '77」は、変則チューニングによるベースの開放弦とハーモニクスを多用したプレイがユニーク。ベースによる独特のリフをバックに、ラルフが演奏するトランペット・ソロが聴きもの。グレンがピアノを弾く 21.「Deer Path」の間奏部分は、公開ライブアルバム 「In Performance」1980 O12 のものと全く異なる内容だ。22.「Witchi Tai To」では、12弦ギターに続き、ベースがテーマのメロディーを奏でる。12弦の伴奏がアグレッシブでカッコイイ。23.「Icarus」では、ラルフが珍しくピアノを弾いているため、いつもと雰囲気がかなり違っている。オーボエのソロになったところで、フェイドアウトしてしまうのが残念。

すこぶる調子の良いオレゴンの演奏をたっぷり聴くことができる、最高の音源だ。

[2010年11月]
「Rainmaker」の完奏版と、セカンド・コンサートを聴くことができたので、書き直しました。

[2022年1月追記]
ポール・マッキャンドレスのホームページの「Past Perfomance」コーナーより、9月中旬に行われたことが判明しました。


Berliner Jazztage, Berlin (1980) [Oregon] ラジオ音源 & 映像







Paul McCandless: Oboe, English Horn, Soprano Sax, Bass Clarinet
Glen Moore: Bass, Violin
Ralph Towner: Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Trumpet (2) 
Collin Walcott: Tabla, Sitar (3), Percussion, Clarinet (1)

1. Willow [Paul McCandless]  14:40
 (Soprano Sax, Whistle, Clarinet, Piano, Bass, Percussion)
2. Will You Miss Me When I'm Here ? [Moore]  9:22
 (B. Clarinet, Trumpet, Piano, Bass, Tabla, Percussion) 
3. Beneath An Evening Sky [Towner]  8:40
 (Oboe, Sitar, 12st. Guitar, Bass, Tabla, Percussion) 
4. Vessel [Towner]  11:15
 (B. Clarinet, Piano, Bass, Percussion)
5. June Bug [Towner]  6:38
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabala)
6. Cloud Dance [Walcott]  7:57
 (English Horn, Oboe, 12st. Guitar, Bass, Tabla)
7. Buzzbox [Oregon]  3:18
 (Oboe, Piano, C. Guitar, Violin, Karimba, Percussion)
8. Waterwheel [Towner]  11:57
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion)

Recorded November 2 1980, at Berliner Philharmonie, Berlin

注) 写真上: 「Willow」のオリジナルが収録された、ポール・マッキャンドレスのアルバム 「Navigator」 1981

   写真下: 「Cloud Dance」のオリジナルが収録された、コリン・ウォルコットのアルバム 「Cloud Dance」 1976

  3.4.6.7.8.については映像版もあり (2011年1月追記参照)


ベルリンジャズ祭は、1964年から始まったイベントで、世界に数あるジャズ・フェスティバルの中でも、歴史・内容面で屈指の権威を誇るものだ。演奏会場は、ベルリン・フィルハーモニーの本拠地であるコンサートホール「Berliner Philharmonie」が使用されるので音響面でも完璧。本音源は、1980年に出演したオレゴンの演奏を、現地FMラジオが放送したもの。当時オレゴンは、1979年のライブ録音を収めたアルバム「In Performance」 1980 O12を発表したばかりなので、演奏の雰囲気は同アルバムのものと同じであるが、ライブアルバムには入っていない曲、特にオレゴンの演奏としては公式発表されていない曲があり、大変興味深い内容だ。

1.「Willow」は、ポール・マキャンドレスがスティーブ・ロドビー(パット・メセニーバンドのベーシストで、後にオレゴンのアルバムのプロデュースを担当)、デビッド・サミュエルズ(ヴァイブ)、ジェイ・クレイトン(ボーカル、後にジェリー・ガルネリのセッション D30でラルフと共演)等と組んで製作したアルバム「Navigator」 1981 (写真上 参照)のB面1曲目に収められていた曲で、オレゴンでの公式録音はない。以前からこの曲を知っていたので、オレゴンによる演奏を初めて聴いたときは感動しました。雰囲気的は「In Performance」O12 に入っているポールの曲「Wanderlust」に似た感じだ。オレゴンの演奏は、スキャット・ボーカルやヴァイブをフィーチャーした「Navigator」での演奏よりもストレートな感じで、本音源のほうが出来が良いと思う。ソロはソプラノ・サックス、ピアノと続く。ラルフ得意の迸るようなプレイを聴くことができる。曲の後半にポールは、ホゥイッスル(縦笛)に持ち替えてソロを取り、再びソプラノ・サックスによるテーマに戻る。その後曲は終わらずに、フリー・インプロヴィゼイションに移行する。ベースがハーモニクスのリフを弾きだしてから、ベース主導による 2.「Will You Miss Me When I'm Here ?」のテーマが始まる。グレンの曲で、これもオレゴンでの公式録音はない。曲名は、演奏終了後のメンバーのアナウンスによるもの。ちなみにグレン・ムーアのソロ作品の資料を調べたが、同名曲の録音は見当たらなかった。ハーモニクスを使用したベースのリフがユニークで、グレンらしいブラックユーモアを感じる佳曲で、どうして未発表で終わったのか謎だ。ここではラルフがトランペットのソロを取るのが大変珍しく(音が低いので、正確にはフリューゲルホーンかもしれない)、かなり達者な演奏を楽しめる。後半は、ポールがバス・クラリネットでソロを取る。

3.「Beneath An Evening Sky」では、コリンがシタールでテーマ・メロディーおよびソロを演奏するのがうれしい(今となってはもう聴くことができない貴重な演奏だ)。オレゴンの公式録音は、1989年の「45th Parallel」 O17と、オーケストラと共演した 2000年の「Oregon In Moscow」O23がある。ラルフのソロ録音での初出は、1979年の「Old Friends, New Friends」 R8なので「新曲」と紹介されている。12弦ギターはテーマ部分のリフとアルペジオのバックに終始し、シタール以外ではオーボエがソロをとる。4.「Vessel」は、1979年のオリジナル録音(「Root In The Sky」O11に収録)のものとサウンド的には同じであるが、ここでは11分を超える熱演となっている。ラルフお得意のR&B風曲調で、バス・クラリネット、ピアノ、ベースの各ソリストが張り切って演奏している。5.「June Bug」は、レコード 「Root In The Sky」 1979 O11とほぼ同じ感じだが、後半にベースのアルコ(弓弾き)が入るのが異なる。ソロはオーボエとギター。

6.「Cloud Dance」は、コリン・ウォルコットが1977年ECMに残した同盟名のアルバムに収められていた曲で、オレゴンの公式録音はない貴重なトラック。スタジオ録音では、コリンがシタールでメロディーを弾き、ジョン・アバークロンビーのエレキギターが大活躍していたが、ここではオーボエがテーマを担当。12弦ギターがアルペジオを交えながらソロを展開する。オーボエのソロ、独奏の後にカリンバ(アフリカン・ピアノ)の演奏が始まり、即興に近い演奏が展開されるが、パターンが「In Performance」1980 O12の「Buzzbox」に酷似しているので、入手した資料には明記されていなかったが、メドレーによる同曲の演奏とした。いったん演奏が途切れて、ギターの独奏になったと思ったら、続けざまに 8.「Waterwheel」が始まった。この曲のみ「In Performance」1980 O12と重複している。やはりコリンのタブラ・ソロはスゴイ!

ということで、オレゴンとして正式なスタジオ録音、ライブ録音のない曲満載のお宝音源。

[2011年1月追記]
上記音源の一部につき、映像を観ることができました!コリン・ウォルコットが演奏する時代のオレゴンの映像はとても少なく、このように彼が演奏する動く姿をたっぷり観れるのは、私にとって初めてで、本当に貴重なものだ。映像の演奏順が音源版を異なっており、編集されているので、どちらがコンサートの正しい曲順か分らないので、ここでは映像版の順番で解説する。

最初にグループ名、メンバーと担当楽器の字幕が出て始まる 「Cloud Dance」では、ラルフの12弦ギターのプレイに注目。ここではギルドのカッタウェイ・タイプのモデルを弾いている。タブラを叩くコリンの姿もたっぷり観ることができる。テーマでイングリッシュ・ホルンを吹いていたポールは、ソロではオーボエに持ち替えている。即興演奏風の「Buzzbox」に移ってゆくが、コリンがカリンバを身体の正面にぶら下げて両手で弾くシーンがすごく、どんな感じで演奏していたのか、これでやっと分りました。途切れなしに演奏される「Waterwheel」は、間奏のコリンのタブラソロが最高!彼のプレイの凄さをビジュアルに味わうことができるなんて..............。「Beneath An Evening Sky」で、コリンがシタールを弾く姿を初めて観て感動と、その後の彼の運命を思って何とも言えない哀しみが心にこみ上げてきた。12弦を弾くラルフは、テーマの伴奏パートを親指だけでピッキングしているのを発見。各奏者のクローズアップ、そしてそれらをダブらせる画面処理技法が使われ、丁寧な撮影と相まって、音楽が醸し出す雰囲気と見事に合っている。「Vessel」は、コリンがジャグを首から身体の正面にぶら下げて、立って弾いているのが面白い。ジャグを右手で叩く位置、左手で押さえる場所を変えて、微妙に異なる音程を出すあたりが手にとるように分る。演奏終了後、メンバーは立ち上がり挨拶するシーンとなり、そこで収録場所と製作スタッフのクレジットが出て終わる。

私が知る限り、コリン・ウォルコットの演奏風景を観ることができる、唯一のプロショット映像であり、演奏も素晴らしい。ただし今回の映像は、品質的にイマイチのものであり、いつか将来良質な画面で観てみたいものだ。


 
Pick-Staiger Concert Hall, Evanston, Illinois (1982) [Oregon] 音源  
 
Paul McCandless : Oboe, Soprano Sax, Bass Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass, Violin
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer, Trumpet 
Collin Walcott: Sitar, Tabla, Percussion, Synthesier

1. Blue Sun [Towner] 12:38
 (Soprano Sax, Bass Clarinet, Piano, Synthesizer, Bass, Sitar, Tabla, Percussion)
2. Free Piece [Oregon]  7:08
 (Oboe, Bass Clarinet, Whistele, Synthesizer, Piano, Bass, Percussion)
3. Tide Pool [Towner]  10:24
 (Oboe, 12-String Guitar, Bass, Tabla, Percussion)
4. Half Past Two [Towner]  10:27
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion) 
5. Free Piece [Oregon]  10:20
 (Oboe, Bass Clarinet, Trumpet, C. Guitar, Synthesizer, Piano, Bass, Percussion)
6. Celeste [Towner]  7:59
 (Soprano Sax, Piano, Bass, Drums)
7. Collin Walcott & Paul McCandless Duo 6:16
 (Whistle, Tabla, Percussion) 
8. Impending Bloom [Moore] 8:26
 (Soprano Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Percussion)
9. Juggler's Etude [Towner]  8:09
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion) 
10. Beside A Brook [Towner]  8:15
 (Oboe, Piano, Synthesizer, Bass, Percussion) 
11. Travel By Night [Walcott]  10:09
 (Bass Clarinet, 12st. Guitar, Sitar, Bass)
12. Free Piece [Oregon]  8:38
 (Oboe, Bass Clarinet, Trumpet, Whistele, Violin, Synthesizer, Piano, Bass, Percussion)
13. Yet To Be [Towner]  10:27
 (Oboe, Piano, Bass, Percussion) 
14. Beneath An Evening Sky [Towner]  5:21
 (Oboe, English Horn, 12st. Guitar, Sitar, Bass, Percussion) 


Recorded November 3 1982, at Pick-Staiger Concert Hall at Northwestern University, Evanston, Illinois


当初音源の資料は「Oregon Radio Concert」のみ。ラジオ司会者が述べた会場名だけが手がかりで、日付や番組名など不明だったが、その後コンサートを観たというリスナーの投稿により詳細が明らかになった。ピック・スタイガー・コンサート・ホールは、イリノイ州ノースウェスタン大学構内にあり、1975建立、収容人員は1,003人。「Ben Sidran's Jazz Alive」というFM番組で、NPR (National Public Radio)系列で放送された。本音源は、ペンシルヴァニア州の放送局にあったオープンリールのテープからカセットにダビングしたものらしい。PAの「ブーン」というノイズが聞こえるなど荒っぽさはあるが、音自体はクリアで厚みがあるため、立体感・臨場感に溢れ、まるでその場で聴いているかのような生々しさ、迫力がある。時期的に ECMからのアルバム「Oregon」1983 O13を録音する少し前にあたり、この時期のライブ音源は数少ないので、貴重な存在。


10.「Beside A Brook」は、透明感に満ちたラルフのピアノ独奏が印象的。バックで流れるシンセサイザーの和音はプリセットによるもの。曲が終わるとポールによるアナウンスが入り、コリンの新曲でドン・チェリー、ナナ・ヴァスコンセロスと組んだグループ「CODONA」で録音されたと紹介され、11.「Travel By Night」が始まる。オレゴンとしては公式録音がなく、ライブで演奏していた期間も短いため音源も少ない曲。シタールの演奏が伝統的なインド音楽のものとは全く異なり、現代音楽的な音を出し、それにラルフの12弦ギターの鋭角的なサウンド、ポールのバスクラリネットが絡んで、ダークな世界を生み出している。

リズムとリフが途切れて、演奏は切れ目なく 12.「Free Piece」に移ってゆく。ラルフはトランペット、グレンはバイオリンと様々な楽器を持ち替えて演奏しているが、トランペットのバックで聞こえるシンセサイザーは誰が演奏しているのかな?他に聞こえる楽器から推測するとコリンが弾いているものと思われる。途中編集で演奏が途切れるのが残念。そして、フリーでアヴァンギャルドな音のなかから、ふっとピアノが聞こえ、クリスタルのようにクリアーな 13.「Yet To Be」のイントロが流れる様はとても鮮やか。この時期の「Yet To Be」の演奏音源は他になく、ポールのオーボエ、グレンのベースソロ、特に後者は指弾き・弓弾きを混ぜたもので、とてもパワフルで素晴らしい。そして最後に登場するラルフのピアノプレイは、数あるこの曲のライブ音源のなかでもベストのひとつと断言できる。

放送音源で、コンサートの一部のみ収録であるが、録音、演奏、曲の珍しさの全てにおいて一流の逸品。

[2017年10月追記]
同じ日の別音源を聞くことができた!オーディエンス録音であるが、ステレオで音質・バランスがとても良く、サウンドボードと比べても遜色ないクォリティー。曲間のカットはあるが、当日の演奏曲のほぼすべてであると推測される。当初放送音源で聴いた10〜13を除いて解説する。

シンセサイザーの独奏から始まる1.「Blue Sun」はゆったりした演奏で、4分経過後頃からテーマに入る。リズムが止んで、そのまま2.「Free Piece」に移り、切れ目なく 3.「Tide Pool」になる。ライブ音源があまりない曲なので新鮮に響く。4.「Half Past Two」はオレゴンでの公式録音がない曲で、リラックスしたプレイが心地よい。5.「Free Piece」は、シンセサイザーのプログラミングによるループをバックに皆で自由な演奏を繰り広げる。ラルフはクラギの弦を爪弾いてカリンバのような音を出している。6.「Celeste」はストレートなプレイ。

7.はコリンとポールの二人による即興演奏で、ラルフは非参加。8.「Impemding Dream」は本音源の目玉。ライブ音源がほとんどない曲で、スタジオ録音「Oregon」 1983 O13での印象はあまり強くなかったが、ここでは躍動的でカラフル、そして生き生きとしたプレイが誠に魅力的。ライブバンドの面目躍如だ。9.「Juggler's Etude」は、4.「Half Past Two」と同じく、ラルフとジョン。アバークロンビーの共演版「Five Years Later」1982 R10に収録されていた曲で、Oregonとしての正式録音がない貴重な音源だ。鉄壁のアンサンブルの中で、恐ろしくテクニカルなフレーズを、さらっと弾くのが凄い。

ライブ音源が少ない1982年の演奏であること、ライブ演奏が少ない曲、オレゴンとしての正式録音がない曲を多く演奏しており、ファンにとって貴重かつ美味しいお宝ものだ。

[2023年8月追記]
アンコール曲 14.「Beneath An Evening Sky」を聴くことができた。オーディエンス録音で、時々一瞬音が切れるのが残念であるが、コリンのシタールを聴けるだけで満足だね! おそらくこれでコンサートで演奏した曲の全てが揃ったものと思われる。

ちなみにポール・マッキャンドレスのサイトの「Past Performances」で、1982年11月3日を「Radio Concert. NPR's Jazz Alive」としているが、これは上述のラジオ放送のことを指している。「NPR」とはNational Public Radio(全米公共ラジオ放送)という非営利団体のことで、自ら放送は行わず、制作した番組を全米の放送局に配給するものだ。

[2017年8月作成]


 
Drumlin's Country Club, Syracuse (1982) [Oregon] 音源 
 


Paul McCandless : Oboe, Soprano Sax, Bass Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass, Violin
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer 
Collin Walcott: Clarinet, Sitar, Tabla, Percussion

1. Blue Sun [Towner] 13:40
 (Soprano Sax, Bass Clarinet, Piano, Synthesizer, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion)
2. Juggler's Etude [Towner]  8:09
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion) 
3. Rainmaker [Towner] 8:03
 (Oboe, Piano, Bass, Percussion, Tabla) 
4. Travel By Night [Walcott]  10:15
 (Oboe, 12st. Guitar, Sitar, Bass)
5. Free Piece [Oregon]  8:35
 (Oboe, Bass Clarinet, Clarinet, Synthesizer, Piano, Bass, Percussion)
6. Beside A Brook [Towner]  7:01
 (Oboe, Piano, Synthesizer, Bass, Percussion) 
7. Dust Devil [McCandless]  8:10
 (Whistle, Tabla)
8. Impending Dream [Moore]  7:32
 (Soprano Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Percussion)
9. Icarus [Towner]  7:20
 (Oboe, Whistle, 12st. Guitar, Bass, Percussion, Tabla) 

Recorded November 12 1982, at Drumlin's Country Club, Syracuse, New York


ドラムリンズは、シュラキューズ大学構内にあるカントリー・クラブで、ゴルフ・コース、テニス・コート、プール、レストラン、宴会場などを備えた会員制クラブだ。本音源は、その宴会場(レストラン?)で行われたコンサートの模様を録音したもの。1.「Blues Sun」は、ラルフがシンセサイザーを使い始めた最も初期のサウンドを楽しめる。ラルフのソロアルバム 1983 R11のタイトル曲で、オレゴンとしての公式録音はない。バスクラリネットのソロが頑張っている。ラルフのクラギの独奏の後、メドレーで2.「Juggler's Etude」に移る。これもオレゴンとしては未発表で、1982年のジョン・アバークロンビーとのデュエット「Five Years Later」1982 R10に入っていた。ラルフの曲の中では、演奏の難しさでベストに入るだろう。途中オーボエのソロにクラギ、クラギのソロにパーカッションといったデュエット・パートがある。3.「Rainmaker」は、以前よりもテンポが速く、ラルフのタッチの強いピアノプレイが真にエキサイティングで魅力的。4.「Travel By Night」も、オレゴンの公式録音にない曲で、コリン・ウォルコットがドン・チェリー、ナナ・ヴァスコンセロスと組んだユニットのアルバム「Codona 3」1983に収録されている。1985年のオレゴンのソロアルバム「Crossing」O14の「Travel By Day」のアンサーソング的な存在。コリンのシタールを中心に、ラルフの12弦がからむ。その後オーボエの独奏を経て、そのまま5.「Free Piece」になる。シンセイザーとオーボエまたはバス・クラリネット、そしてコリンが吹くクラリネットによるフリーなプレイは、シンセサイザーをフィーチャーした分、以前よりも音の幅が広がった感じだ。グレンがバイオリンを弾く部分もある。 6.「Beside A Brook」は、フリーな曲の後での演奏のため、ラルフのピアノの透明感が一層引き立っていて、ポールのオーボソロも良く、スタジオ録音を超える出来。ピアノの背景に聞こえるシンセサイザーは、おそらくプリセットによる演奏だと思われる。

7.「Dust Devil」は、ポールのホイッスルとコリンのタブラのデュエットによる演奏で、ラルフは非参加。ポールが凄まじい速さで吹きまくり、コリンのタブラソロもある。8.「Impending Dream」のライブ音源は珍しく、アルバム「Oregon」1983 O13でのスタジオ録音よりも活き活きとしたプレイが印象的。ラルフのピアノ、シンセサイザーのアタック、コリンのリズムもアグレッシブで、この曲も、本音源のほうが公式録音よりも遥かに良い出来。9.「Icarus」は、いつもとは異なるコードカッティングを取り入れた12弦ギターの伴奏で、ポールがホイッスル・ソロをとるイントロからスタートする。テーマが始まるとお馴染みのアルペジオが出てくる。ポールがオーボエソロをとる間奏部分におけるラルフの伴奏プレイもユニークだ。

本音源は、録音面でグレンのベースがオフ気味なのが残念であるが、珍しい曲・演奏があり、聴く価値は十分ある。



Hamburg (1983) [Oregon] 音源

Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Bass Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer, Trumpet (5,11) 
Collin Walcott: Tabla, Sitar (4,5,12), Percussion

1. Blue Sun [Towner] 9:51
 (Soprano Sax, Bass Clarinet, Piano, Synthesizer, Bass, Tabla, Percussion)
2. Free Piece 1 [Oregon]  6:55
 (English Horn, Piano, Synthesizer, Bass, Percussion) 
3. Along The Way [Towner] 8:56
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion) 
4. Travel By Night [Walcott]  7:41
 (12st. Guitar, Sitar, Bass)
5. Free Piece 2 & Drum Solo [Oregon]  10:49
 (Bass Clarinet, Trumpet, Whitsle, Synthesizer, Piano, Sitar, Bass, Tabla, Percussion)
6. The Rapids [Towner]  8:31
 (Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Percussion) 
7. Waterwheel [Towner]  10:49
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla) 
8. Besides A Brook [McCandless]  7:50 

 (Oboe, Piano, Synthesizer, Bass) 
9. Duet [Moore, Walcott]  10:53 *
 (Bass, Persussion)
10. Free Piece 3 [Oregon]  16:16
 (Bass Clarinet, Soprano Sax, C. Guitar, Synthesizer, Piano, Bass, Tabla, Percussion)
11. The Glide [Towner]  13:14
 (Soprano Sax, Trumpet, Piano, Synthesizer, Bass, Percussion) 
12. Timeless [Abercrombie]  8:23
 (English Horn, Bass Clarinet, 12st. Guitar, Sitar, Bass) 

Recorded June 30 1983, Funkhaus Studio 10, Hamburg, Germany

注) * ラルフ非参加


オレゴンがECMに移籍して初めて発表したアルバム「Oregon」O13や、ラルフのソロアルバム「Blue Sun」R11発売時のラジオ放送用スタジオライブ。前述のオレゴンのアルバムと同じく、フリーピースの演奏が多い。アルバム製作時にラルフの新曲のストックが少なかったためかな、と思っていたのだが、ずっと後になってこの音源をを聴いて、当時バンドがそういう志向だったんだなと納得しました。

オレゴンによる 1.「Blue Sun」は、公式録音がないため貴重な音源。彼らはずっとアコースティック・サウンドを通してきたが、この頃からラルフがシンセサイザーを使い始めており、ラルフは左手でシンセサイザーを、右手でピアノを弾いている。グレンのベースは、ピックアップの性能向上により、厚み・深みのある音で捉えられるようになり、そのアタックの強いサウンドは最高。そしてコリンのタブラ、ポールのソプラノ・サックスのソロが入ると、イヨッ!待ってましたという感じ。休みなく続く 2.「Free Piece 1」は、資料ではアルバムO13に収録された「Beacon」とあったが、雰囲気的にはよく似ているものの、即興演奏なのでここではそういうタイトルにした。シンセをバックにリズム抜きでじっくり演奏される。ポールのホーンとグレンの弓弾きベースによる合奏の後、ラルフのクラシックギターによる独奏となり、霧の中から現れるかのように、次第に3.「Along The Way」のテーマ・メロディーに移ってゆく。コリンのシンバルワークの繊細さが味わえる一品。4.「Travel By Night」もオレゴンの公式録音にない曲で、コリン・ウォルコットがドン・チェリー、ナナ・ヴァスコンセロスと組んだユニットのアルバム「Codona 3」1983に収録されている。1985年のオレゴンのソロアルバム「Crossing」O14の「Travel By Day」と良く似ており、タイトルからも姉妹曲といえる。コリンのシタールを中心とした演奏。ベースとシタール、バスクラリネット、シンセサイザーによる 5.「Free Piece 2」(資料では「There Was No Moon That Night」と記載)」は即興性が強い演奏。ここではメンバーは様々な楽器を持ち替えて演奏する。ラルフのトランペットの場合、背景にシンセが聞こえるので、片手で吹いているのかな?途中からコリンのパーカッション・ソロになり、タブラを中心に多くの楽器を使うので。変化に富んだ音で、彼独特のリズム感覚もあって飽きさせることがない。ピアノが登場して 6.「The Rapids」に移行する。メンバーは代わる代わる休憩を取りながら演奏しているとは思うが、ぶっ続けで演奏する気力が凄い。ここでもラルフは、背景を担当するシンセを弾きながらピアノでメロディーを奏でている。ピアノとサックスの透明感溢れるサウンドが素晴らしい。ここでやっと演奏が終わり、初めてオーディエンスの拍手が入る。7.「Waterwheel」はオレゴンの愛奏曲で、コリンのタブラプレイを存分に堪能できる。

8.「Besides A Brook」は、少しストイックな感じの曲で、イントロのラルフのピアノ独奏が美しい。途中からシンセの伴奏が背景に加わり、さらにオーボエとベースが加わる。ピアノは両手で弾いているので、シンセはループににているのかな?あるいはパーカッションが聞こえないので、コリンが弾いているかも? 9.「Duet」はグレンとコリンによるインタープレイ。グレン独特のユーモラスかつダークな世界に満ちていて、随所に飛び出すリフのメロディー、それに応えるコリンのリズムが楽しい。1985年の「Crossing」O14に初収録される「Pepe Linque」の原型ともいえる部分もある。途中ベースのボディを擦るような音を出し、オーディエンスの笑いを誘っている。特にエンディングで聴かれるベースのリフはファンキーで最高!10.「Free Piece 3」(資料では「Skyline」と記載)」は、シンセサイザーを中心とした伴奏に、バスクラリネットがダークな世界を醸し出す即興演奏。そこへ突然ピアノのソロが切れ込むように入ってきて、さっと光が差したかのように明るくなり、ホウィッスルがソロを取る。次に展開されるクラギとベースはメロディックなプレイだ。最後はタブラをバックとしたソプラノサックスのソロと独奏。そこにシンセサイザのイントロが入り、11.「The Glide」が始まる。時間をかけてじっくり演奏され、サックス、ピアノ、ベースともに素晴らしい内容のソロで、ラルフのトランペット演奏も聴ける。気力・実力ともにこの曲のベストプレイだと思う。アンコールに応えて演奏れる12.「Timeless」は12弦ギターの澄みきった音が耳に残る・

演奏楽器にシンセサイザーを導入した初期の音源で、即興演奏の部分が多いが、聴き応えがある。


 
Wiesen Jazz Festival (1983) [Oregon] 音源 
 
Paul McCandless : Oboe, Soprano Sax, Bass Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer, Trumpet (5,9) 
Collin Walcott: Tabla, Sitar (3,4), Percussion

1. Blue Sun (Fade In - Improvisation) [Towner] 9:40
 (Whistle, Bass Clarinet, 12st. Guitar, C. Guitar, Piano, Synthesizer, Bass, Tabla, Percussion)
2. Half Past Two [Towner]  12:32
 (Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion) 
3. Beneath An Evening Sky [Towner] 8:00
 (Oboe, 12st. Guitar, Sitar, Bass) 
4. Free Piece [Oregon]  6:16
 (Oboe, 12st. Guitar, Piano, Synthesizer, Sitar, Bass, Percussion)
5. The Glide [Towner]  9:13
 (Soprano Sax, Trumpet, Piano, Synthesizer, Bass, Percussion)
6. Untitled [Towner]  5:56
 (C. Guitar, Tabla) 
7. Gospel Song [P. McCandless]  5:07 *
 (Bass Clarinet, Bass) 
8. Rapids [Towner]  8:06 

 (Soprano Sax, Whistle, Piano, Synthesizer, Bass, Percussion) 
9. Fall 77 [G. Moore]  7:23
 (Bass Clarinet, Trumpet, Bass, Persussion)

Recorded July 17 1983, Jazzfest Wiesen, Austria

注) * ラルフ非参加

 

ヴィーゼンは、ハンガリー国境近くのブルゲンラント州(Burgenland)にある人口3000人の小さな村で、苺栽培が主な産業という。この村は、1976年から毎年開催しているジャズ・フェスティバルでも有名で、8000人収容できる屋外ステージで、豊かな自然に囲まれて音楽を楽しむことができるそうだ。オレゴンは1983年のフェスティバルに参加。本音源は、その模様をFMラジオ曲が放送したもの。私が聴いた音源は、音が少しこもった感じで、音質的にはまあまあといった感じ。

音源は演奏の途中から始まるが、コード進行からすぐに 1.「Blue Sun」のインプロヴィゼイションであることがわかる。シンセサイザーを前面に出したプレイで、ラルフが12弦ギターでソロを取る際も鳴っているので、ループをセットしたものと思われる。途中から入るタブラがとても早いテンポのリズムを刻み、バスクラ、クラギの独奏になり、メドレーで2.「Half Past Two」に移って行く。この曲はラルフとジョン・アバークロンビーのデュオ作「Five Years Later」1982 R10に収められており、オレゴンとして正式録音はない。ライブ演奏としても珍しい曲だ。そういう意味で、グレンのベースソロが大変新鮮。コリンのタブラ、パーカッションソロは、今聴くとトリロク・グルトゥとの個性の違いがはっきり分る。

3.「Beneath An Evening Sky」では、テーマのメロディの最初のところで、コリンのシタールがとちっているのが面白い。インプロヴィゼイションの演奏は次第にバラバラになり、そのまま 4.「Free Piece」になる。各人がいろんな楽器を持ち替えて、自由に音を出し合っている。そのうちにラルフのピアノ独奏となり、5.「The Glide」が始まる。テーマでピアノとシンセシザーを同時に弾いたラルフが、シンセサイザーのループをセットしてピアノでソロを弾く。ただし途中で、シンセを止め、ピアノトリオの乗りになってゆく。ポールのソプラノ・サックスソロの後にテーマに戻るが、最後はピアノは聞こえなくなり、その代わりにラルフはトランペットを吹いているようだ。次の曲は、「まだタイトルがない」と紹介される。ラルフのギターとコリンのタブラによるデュエットで、シンプルなリフを中心とした演奏。後半のラルフのギタープレイから、後1986年のゲイルー・バートンとの共演作「Slide Show」 R12に収録された「Donkey Jumboree」の原曲のような気がする。7.「Gospel Song」は、残りの二人ポールとグレンによる演奏で、オレゴンのアルバム「Firends」1977で発表された曲。

8.「Rapids」は、シンセサイザーが大々的にフィーチャーされ、スタジオ録音よりも遥かにエキサイティングなプレイとなっている。グレンの曲 9.「Fall 77」でもシンセイザーが目立っていて、この頃のオレゴンのシンセサイザーを使い始めたサウンドの特徴がよく出ている。それにしてもグレンのベースのしなるような強靭なリズム感が凄い。

珍しい曲が聴ける音源。コリン・ウォルコットの元気な演奏を聴けるだけでも十分いいね!


 
Freiburg With Junge Deutsche Philhamonie (1983) [Oregon] 音源  
 
Paul McCandless : Oboe, Bass Clarinet
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano
Collin Walcott: Sitar, Tabla, Karimba, Marimba, Percussion
Junge Deutsche Philhamonie : Orchestra

1. Unknown Title [Probabuly Paul McCandless] 5:11
 (Oboe, Bass Clarinet, 12st. Guitar, Bass, Percussion, Orchestra)
2. All The Mornings Bringl [Paul McCandless]  10:05
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion, Orchestra) 
3. Longing, So Long [Walcott] 16:46
 (Oboe, 12st. Guitar, Sitar, Bass, Tabla, Karimba, Percussion, Orchestra) 
4. Free Piece [Probably Ralph Towner] 12:41
 (Oboe, Bass Clarinet, C. Guitar, Piano, Bass, Marimba, Percussion, Orchestra)
5. Icarus [Towner]  5:06
 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Tabla, Percussion, Orchestra)

Recorded: October 1 1983, at Freiburg, Germany


Junge Deutche Philhamonieは、1974年若手ミュージシャンにより結成されたオーケストラで、本拠地はフランクフルト。団員の年齢は18〜28歳であるが、演奏に対する評価は高く、後に有名オーケストラに加入して活躍する人も多いという。本音源は、オレゴンとオーケストラとの共演を録音したもので、コリン・ウォルコット在籍時のものとしては、私が知る限り唯一の音源として大変貴重なものだ。

最初の曲はタイトル不明であるが、資料にある通り、雰囲気的にもポールの作曲と思われる。リズムはなく、コリンが時折シンバルなどを入れるのみ。ストラヴィンスキーなどの近代音楽的な曲想で、オーケストラをバックにポールのバス・クラリネット、オーボエがソロイストとして活躍する。左チャンネルからラルフの12弦ギターのソロが流れてくるが、音が小さくて遠くで鳴っているような感じ。本音源は、オケと打楽器の音はしっかり捉えられているが、ギターの音が小さく、グレンのベース音はほとんど聞こえないのは残念だ。メンバー紹介のあとで演奏される 2.「All The Mornings Bring」は、ポール・ウィンター・コンソートの「Icarus」1972 D7参照、ポール・マッキャンドレスの同名タイトルのソロアルバム1979に収録された古いレパートリー。本音源のずっと後に製作されるアルバム「Oregon In Moscow」2000 O23にも収められた。公式録音と本音源におけるオーケストラのアレンジはほとんど同じで、彼らがグループ結成当初からオケとの共演用スコアを書き貯めていったことがわかる。ここではラルフがクラシック・ギターでソロをとり、コリンによるタブラの独奏もある。本音源の中では、最も交響曲的な出来栄えとなっている。オレゴンのアルバム「Roots In The Sky」1979 O11に入っていたコリンの曲 3.「Longing, So Long」のオーケストラ・アレンジは意外な選曲だ。ここでもモダンなストリングス、ブラスのアレンジで、それにコリンのタブラがリズムを付けてゆくのがスリリング。ラルフは12弦でアルペジオを奏でているはずなんだけど、オケの音にかき消されtしまい。ハーモニクス位しか聞こえない。ただしテーマの後に演奏される即興演奏風のパートで、コリンのカリンバのバックで演奏される12弦の音は聴きとり可能なレベルだ。最後はストリングスとブラスが少し前衛っぽい音を出し、コリンのシタールがフィーチャーされて終わる。

4.「Free Piece」の場合、オーケストラが完全な即興を行うことはもちろん不可能なので、「Oregon In Moscow」2000 O23の解説にあるのと同様、ラルフが書いたいくつかのパターンのスコアに基づき、オーケストラが演奏したのだろう。本音源と公式録音で使用されたスコアには一部同じものがあるようだ。ラルフのクラギ、ピアノ、コリンのマリンバ、パーカッション、ポールのオーボエが主になって即興演奏を展開し、それにオケが絡む。最後は名曲 5.「Icarus」で、これも前述の公式録音とほとんど同じアレンジだ。ここでもラルフの12弦の音は小さく、その分曲の魅力が減少しているが、当時のオーケストラとのライブを聴けるだけでも有難いので、辛抱辛抱。曲が終わった後のオーディエンスの拍手・声援は凄まじく、アンコールを求めて、いつまでも止まない様もしっかり録音されている。

2000年に発表された「Oregon In Moscow」O23のルーツとして、コリン・ウォルコットがメンバーの頃の共演という意味で、ファンにとって素晴らしいお宝音源となった。


  
Inter Media Arts Center, Huntington, New York (1983) [Oregon] 音源   



Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Bass Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass, Piano
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer, Trumpet 
Collin Walcott: Tabla, Sitar, Percussion, Drums, Clarinet

[1st Show Set 1]
1. The Rapids [Towner] 9:42
 (Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Percussion)
2. Juggler's Etude [Towner] 10:43
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla) 
3. The Second Queen Of Sydney [McCandless]  11:55
 
(Oboe, 12st. Guitar, Synthesizer, Bass, Percussion) 
4. Free Piece [Oregon] 7:13
 (Oboe, Bass Clarinet, Clarinet, Trumpet, Piano, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion)
5. Impending Dream [Walcott] 8:31
 (Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion)

[Set 2]
6. Timeless [Jhon Abercrombie] 11:06 
 (English Horn, Bass Clarinet, 12st. Guitar, Sitar, Synthesizer, Bass)
7. Improvisation [Oregon] 6:02
 (Whistle, Bass Clarinet, Trumpet, Piano, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion)
8. Yet To Be [Towner] 9:07
 (Oboe, Piano, Bass, Percussion, Tabla)
9. Waterwheel [Towner] 13:44
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla)

[2nd Show Set 1]
10. Opening [Oregon] 15:48
 (Oboe, Bass Clarinet, Whistle, 12st. Guitar, C. Guitar, Piano, Synthesizer, Bass, Percussion, Tabla)
11. June Bug [Towner] 9:17
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion, Tabla)
12. Queen Of Sydney [McCandless]  11:09
 
(Oboe, Whistle, Piano, Synthesizer, Bass, Percussion) 
13. Free Piece [Oregon] 9:07
 (Soprano Sax, Bass Clarinet, Whistle, Trumpet, Sitar, Piano, Synthesizer, Bass, Percussion)
14. The Glide [Towner] 10:50
 (Soprano Sax, Trumpet, Synthesizer, Piano, Bass, Drums)

[Set 2]
15. Half Past Two [Towner] 10:10
 (Soprano Sax, 12st. Guitar, Bass, Tabla, Percussion)
16. Improvisation [Oregon] 10:48
 (Whistle, 12st. Guitar, Piano, Synthesizer, Bass, Tabla)
17. Blue Sun [Towner] 8:45
 (Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Percussion)
18. Ghost Beads [Towner] 7:29
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla) 


Recorded: IMAC (Inter Media Arts Center), Huntington, NY、October 30, 1983

 

IMACは、ニューヨーク・マンハッタン南東に広がるロングアイランドのハンチントンという町にあるコンサート会場 (2009年クローズ)で、ここでのオレゴンの音源は他に1986年11月29日のものがある。本音源は同じ日に行われた二つのコンサート4セット分(おそらくコンサートの全貌)を録音したもので、3時間超にわたる熱演を楽しむことができる。「ブーン」というPAノイズが目立つのが惜しいけど、モノラルながら音質自体は悪くなく、各楽器が暖かい音で捉えられているため、長く聴いていても疲れない。さらに演奏が素晴らしく、聴いていると引き込まれてしまい、雑音が気にならなくなる。2, 15, 17などラルフのソロアルバムに収録され、オレゴンとしての正式録音がない曲を多く演っているのもうれしい。

3.でグレンが「The Second Queen Of Sydney」と曲名紹介しているのは、いつもの「Queen Of Sydney」と異なり、シンセサイザーのループがなく、ラルフがピアノでなく12弦ギターを弾いていて、しかもテーマのメロディも異なるためと思われる。この「The Second」版が聴ける音源は私が知る限りここだけで、12弦ギターのプレイが聴きものの貴重音源だ。12弦ギターのソロが終わった後、コード進行らしきものがなくなって、即興演奏による 4.「Free Piece」に移ってゆく。バス・クラリネット以外に聞こえる木管楽器の音は、コリンが吹くクラリネットのようだ。中盤からラルフのトランペットが入る。ここでのアヴァンギャルドなピアノはグレンが弾いているのだろう。そしてコリンがサンバ調のリズムを叩き出し、5.「Impending Dream」になる。躍動感あふれるプレイで、「Oregon」1983 O13のスタジオ録音よりも遥かに出来が良いと思う。「12〜17分の休憩です」というアナウンスでファースト・セットが終わる。

セカンド・セットの最初の曲 6.「Timeless」の12弦ギター独奏によるイントロの中に、当時まだ曲になっていなかった「If」のイントロの断片が含まれている。今は亡きコリンのシタールとラルフの12弦の演奏を聴けるなんて幸せな気分。シタールの音が少しオフなのが残念。バス・クラリネットによるエンディング・テーマが終わった後、即興演奏になりピアノとホイッスルがメインのインプロヴィゼイションになる。トランペットの音が聞こえるので、ピアノを弾いているのはグレンだ。ラルフがミュートしたクラギを弾き始め、ホイッスルが「Donkey Jambolee」のメロディーを奏でたのにはビックリ。1986年のゲイリー・バートンとの共演盤「Slide Show」R12に正式録音が収められたこの曲につき、短い断片ではあるが、オレゴンでの演奏を聴くことができるのはここだけだ。シンバルを多用したコリンの独奏が続き、霧が晴れるかのように 8.「Yet To Be」のピアノ・イントロが現れる様はスリリング。熱演にオーディエンスも大きな拍手で応えている。ラルフのアナウンスの後に演奏される 9.「Waterwheel」は、チューニング時のPAの雑音がかなり目立ち、資料によると演奏部分は(恐らく同じコンサートの)別音源に差し替えたそうで、他の曲と比べて音色が異なっているようだ(資料によると17,18も同様)。

2回目のステージの曲目にダブリがないのが凄い(「Queen Of Sydney」も実質的に異なる曲だしね)。まずはコンサートの始めに演奏されるインプロヴィゼイション 1.「Opening」から。後半クラシック・ギターが現れて、2「June Bug」に移る。コリンのアナウンスが入った後の2.「Queen Of Sydney」は、シンセイザーのプログラミング・ループとピアノによるいつものバージョン。ただし何故か出だしのループを一旦止めてやり直している。エンディングでポールがホイッスルに持ち替えて、5.「Free Piece」に続く。ここでもピアノはグレン。シタールのフリーなプレイ、はちゃめちゃなピアノ、ホーンによる獣の叫び声のような音が面白い。そして切れ目なく 14.「The Glide」へ。ここでは、エンディング・テーマでシンセサイザーによるループのセットしたうえで、ラルフがトランペットを吹いているのが珍しい。というのは、シンセサイザーでは出せない楽器独特の「音はずし」が聞こえるからだ。

セカンドセットは12弦ギターとベースソロがゴキゲンな15.「Half Past Two」から。タブラ独奏後の
16.「Improvisation」は、12弦ギター(またはシンセサイザー)のリフのループとタブラをバックにホイッスルがソロをとる。そしてピアノの不協和音による独奏を経て、シンセサイザーとピアノのイントロによる17.「Blue Sun」になる。ラルフのソロアルバム 1983 R11のスタジオ録音に比べて躍動感溢れる演奏だ。最後は18.「Ghost Beads」。

「ブーン」というPAノイズが目立つ難点はあるが、最高の演奏を3時間以上にわたり存分に楽しむことができる。

[2023年11月作成]



Troy, New York (1984) [Oregon] 音源 


 




Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Bass Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer 
Collin Walcott: Tabla, Sitar, Percussion, Drums

1. Blue Sun [Towner] 8:38
 (Oboe, Soprano Sax, Bass Clarinet, Piano, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion, Tabla)
2. Improvisation [Oregon] 8:35
 (Soprano Sax, Whistle, Piano, Synthesizer, C. Guitar, Bass, Drums, Percussion, Tabla)
3. Juggler's Etude [Towner] 7:53
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion, Tabla) 
4. Half Past Two [Towner] 9:46
 (Soprano Sax, 12st. Guitar, Bass, Tabla, Percussion)
5. Free Piece [Oregon]  8:02
 
(Whistle, Bass Clarinet, Sitar, Synthesizer, Piano, Bass, Percussion) 
6. The Glide [Towner] 9:08

 (Soprano Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Drums)
7. Beneath An Evening Skyt [Towner]  7:36
 (Oboe, Engrish Horn, Sitar, 12st. Guitar, Bass) 
8. June Bug [Towner] 9:03

 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion, Tabla) 
9. Witchi Tai To [Jim Pepper] 8:04 
 (Oboe, 12st. Guitar, Synthesizer, Piano, Bass, Percussion) 
10. Free Piece [Oregon]  6:58
 (Bass Clarinet, Whistle, Sitar, Synthesizer, Piano, Percussion) 
11. Yet To Be [Towner] 9:40
 (Oboe, Piano, Bass, Percussion, Tabla)
12. Waterwheel [Towner] 8:32
 (Oboe, Soprano Sax, C. Guitar, Bass, Tabla)

Recorded October 5 1984 at Troy Saving Bank Music Hall, Troy, New York


トロイは、ニューヨーク州のオールバニの近く、ハドソン川沿いにある町で、会場のTroy Saving Bank Music Hallは、Troy Saving Bankがあった古いビルをコンサート会場に改装したもの。本音源は、最後にDJらしきコメントが入るためFM放送用の音源と思われるが、これだけ長時間の演奏を放送したとは思えないので、マスターテープではないかと推測される。音質が素晴らしく、1か月後に交通事故で亡くなるコリン・ウォルコットを含む素晴らしい演奏をたっぷり聴けるなんて最高!

音源は音合わせから始まり(当時はチューニング・マシーンの性能が良くなかったので、ステージで時間をかけて音を合せていた)、1.「Blue Sun」が始まる。当時使い始めたシンセサイザーが大きくフィーチャーされ、パーカッション、ベースなどが絡むリズミカルな演奏。そのまま 2.「Improvisation」に移る。ピアノとシンセのユニゾンと掛け合いが暫く続いた後、ソプラノ・サックスが加わり、ますますカラフルになった後、リズムが止んでフリーフォームの様相を呈す。そしてクラシック・ギターの独奏となってメドレーで 3.「Juggler's Etude」になる。ここで曲を紹介するポールのアナウンスが入り、4.「Half Past Two」が演奏される。各人のソロが素晴らしく、ポールの知的で自由、ラルフの抑制が効いたプレイの後、コリンが独奏でタブラとハイハットを叩くのがハイライト。ここまでで、オレゴンとして公式に録音されなかったラルフの作品、それもとりわけ名曲と言えるものを3曲も続けて、コリン・ウォルコットのオレゴンで聴けるなんて、法悦の境地に達してしまう。演奏はポールのホイッスル、バスクラ、グレンの弓弾きベース、ラルフのシンセ、コリンのシタールによる 5.「Free Piece」に移る。そのうちラルフのピアノ独奏となり、それが序奏となって 6.「The Glide」が始まる。当時のオレゴンの中では最も正統ジャズらしい演奏で、そういう面でコリンのオーソドックスなジャズ・ドラミングを楽しめる数少ない音源である。

チューニングの後に始まる 7.「Beneath An Evening Sky」は、コリンのシタールをたっぷり聴くことができる。ラルフの12弦のアルペジオ、ポールのオーボエが加わり盛り上がって、最後はポールがテーマを奏でて厳かに終わる。ラルフのアナウンスの後の 8.「June Bug」は、録音の良さのため、各楽器の繊細な響きがしっかり伝わってくる。特にグレンのうねりのあるベース音が心地良い。定番曲の9.「Witch Tai To」は、かなり落ち着いた演奏で、エンディングのテーマのシンセサイザーがオーカストラのようで、そのまま瞑想的な感じの10.「Free Piece」になる。ここではコリンのシタール・ソロを聴けるのがうれしい。ラルフのピアノ独奏になって、そのまま 11.「Yet To Be」が始まるが、静と動のメリハリが効いた見事なプレイだ。コリンがいろんな打楽器を使い分けて、変化に富んだリズムを叩きだしている。ここでアンコールの手拍子がかなり長く入り、グレンがアナウンスを入れ、最後の曲12.「Waterwheel」が演奏される。ここでは間奏部分のバックの演奏がいつもと異なっていて、ロック曲のようなリフが続くのが面白い。テーマではオーボエを吹いていたポールも、よりアタックの強いソプラノ・サックスに持ち替えてソロをとっている。演奏時間の関係か、ここではこの曲ではお馴染みのタブラソロはない。

素晴らしい録音、演奏、珍しい曲、故コリン・ウォルコットがメンバーだったころの音源ということで、何もかも完璧な音源。

[2015年7月作成]


Szeged, Hungary (1984) [Oregon] 音源

Paul McCandless : Oboe, Soprano Sax, Bass Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer, Trumpet 
Collin Walcott: Tabla, Sitar, Percussion

1. Improvisation [Oregon] 14:00
 (Oboe, Whistle, Piano, Synthesizer, 12s. Guitar, Bass, Drums, Percussion, Tabla)
2. Yellow Bell [Towner]  8:10
 (Oboe, Piano, Bass, Percussion) 
3. The Glide [Towner] 9:16
 (Soprano Sax, Trumpet, Synthesizer, Piano, Bass, Drums) 
4. Waterwheel [Towner] 14:02
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla)
5. Bayonne [McCandless]  10:05
 (Soparano Sax, C. Guitar, Bass, Tabla)
6. Free Piece [Oregon]  9:35
 (Soparano Sax, Bass Clarinet, Clarinet, Sitar, Synthesizer, Bass, Percussion) 
7. Travel By Night [Walcott]  7:21
 (Sitar, 12st. Guitar, Bass) 
8. Looking Glass Man [Towner] 5:24

 (Soparano Sax, Piano, Bass) 
9. Witchi Tai To [Jim Pepper] 13:08 
 (Oboe, 12st. Guitar, Sitar, Synthesizer, Bass, Percussion) 
10. Free Piece [Oregon]  9:39
 (Whistle, Bass Clarinet, Clarinet, Percussion) 
11. KT Kangaloo [Towner]  8:22
 (Soprano Sax, Bass Clarinet, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion) 
12. Silence Of A Candle [Towner] 6:56

 (English Horn, Sitar, Piano, Bass) 

Recorded October 15 1984 at Szeged, Hungary

注: 10 はラルフ非参加


セゲドはハンガリーの首都ブタペストから南東に約200キロ、ユーゴスラビアやルーマニアとの国境近くにある町。本音源の収録日は10月15日で、コリン・ウォルコットが11月8日東ドイツのマグデブルグで交通事故死する約1ヶ月前の演奏だ。資料によるとバンドは、この後スイスやイタリアでコンサートを行うが、私が知る限り、残っているコリン生前最後の最後の音源は、イタリア・パドヴァでのものとなる。

1.「Improvisation」は、シンセとベースによる静かなイントロから始まり、時折コリンのドラムスの音が切り込む。ピアノとオーボエが入って「Blue Sun」のような雰囲気となり、リズムが加わってコレクティブ・インロヴィゼイションの様相を呈す。ラルフが12弦を演奏するが、残念ながら録音がオフ気味。タブラとベースの対話の後、ホウィッスルとピアノ主導の演奏となる。メドレーで 2.「Yellow Bell」に移る。さきほど、楽器のバランスに難ありと言ったが、全体的には大変良いサウンドボード録音での演奏が楽しめる。3.「The Glide」は洗練されたプレイで、シンセのループをバックにラルフのピアノソロが華麗。途中シンセを止めてプレイする部分があり、ベースとソプラノ・サックスがソロを取る。エンディングのテーマではシンセのループが復活し、ラルフはそれに合わせてトランペットを吹いている。バンドの好演に対し、オーディエンスは大きな拍手と歓声で応えている。4.「Waterwheel」はクラギの独奏から始まる。コリンのタブラがステレオ・チャンネルの左右に動く箇所があり、本音源がミキシング処理されていることがわかる。次はアルバム未収録曲(当時)5.「Bayonne」で、本音源の23年後の「1000 Kilometers」O27で初めて公式録音された。ポールの作風らしいクラシカルなメロディーが印象に残る曲であるが、O27のバージョンに比べると地味な感じの演奏だ。ここではコリンがハイハットを含むドラムスを叩いている。

6.「Free Piece」は、メンバーが次々と楽器を持ち替えて演奏する。途中のバスクラリネットのソロの部分はかなりハードなフリージャズになっている。シタールが登場して演奏は 7.「Travel By Night」になる。コリンのプレイはもう聴けないんだなと思うとなんとも言えない気持ちになる。8. 「Looking Glass Man」は、コリンを除く3人によるプレイであるが、ピアノやソプラノ・サックスのソロはそれなりに激しい演奏。9.「Witchi Tai To」での各人のソロは大変エモーショナルで、とりわけコリンのシタールのソロが心に滲みる情感に溢れている。後半はコリンがドラムスでいつもよりも力強いリズムを叩き出し、レゲエっぽい乗りでオーボエのソロが展開されるのが面白い。10. 「Free Piece」はコリンとポールの二人によるデュエット。ハイハットのシンバルを使用した早いリズムが今までにない感じだ。アンコールの11.「KT Kangaloo」は、ラルフのシンセサイザーが前面に出た演奏で、特にコリンがこれまでにない激しいタッチでドラムスを叩いているのに驚く。もし彼がこのまま生きていたら、こんな感じでスタイルを変えていったのかも知れないなと思ってしまう。ただしバスドラの音は聞こえないので、彼は片膝をついての姿勢で、もう一方の足を使ってハイハットを演奏していたものと思われる。ベースのぶっ飛びソロ、リフを弾きながらソロの切れ込みを入れるラルフのシンセなど、大変アグレッシブなプレイだ。一転して12.「Silence Of A Candle」は、しっとりと演奏される。ここではコリンのシタール・ソロが何か別れを告げているように聴こえて、悲しくなる。

コリン・ウォルコットとしては、ドラムスを使用したハードが演奏が多く、彼の死後に起きたオレゴンのサウンドの変化は、単にリズム楽器奏者がトリロク・グルトゥに変わっただけではなく、バンドそのものが志向していたことがわかる音源。


  
Sala dei Giganti, Padova (1984) [Oregon] 音源 
 


Paul McCandless : Oboe, Soprano Sax, Bass Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass, Piano, Flute
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer, Trumpet 
Collin Walcott: Tabla, Sitar, Percussion

[1st Set]
1. Queen Of Sydney [McCandless]  9:35
 
(Oboe, Flute, Synthesizer, Piano, Bass, Percussion) 
2. Improvisation [Oregon] 10:13
 
(Soprano Sax, Whistle, Piano, Synthesizer, Bass, Tabla, Percussion)
3. Juggler's Etude [Towner] 8:54
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion) 
4. Rainmaker [Towner] 7:48
 (Oboe, Soprano Sax, Piano, Bass, Percussion) 
5. Free Piece [Oregon]  10:53
 (Bass Clarinet, 12st. Guitar, Piano, Synthesizer, Sitar, Bass, Percussion) 
6. Kronach Waltz [Moore] 4:41
 (Bass Clarinet, Trumpet, Piano, Drums)

7. Fall '77 [Moore] 9:37

 (Bass Clarinet, Trumpet, Piano, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion) 

[2nd Set]

8. Waterwheel [Towner] 9:36
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla)
9. Half Past Two [Towner]  18:57
 (Soprano Sax, 12st. Guitar, Bass, Tabla, Percussion) 
10. Free Piece [Oregon]  5:52
 (Oboe, Whistle, Flute, 12st. Guitar, Synthesizer, Tabla, Percussion) 
11. Aurora [Towner] 8:34

 (Oboe, Flute, Piano, Bass, Tabla, Drums, Percussion) 
12. Beneath An Evening Sky [Towner] 6:26
 (Engrish Horn, 12st Guitar, Sitar, Bass) 

Recorded November 2 1984, Sala dei Giganti, Padova, Italy

 

コリン・ウォルコットは、1984年11月8日交通事故により39歳の生涯を終えた。オレゴンのヨーロッパツアーの最中、ベルリンから西へ100キロほどにある東ドイツ(当時はドイツ統一の前だった)のマグデブルグで、メンバーが乗ったバスが停車中の車に追突、その際前部にいたコリンは、バンドの友人でロードマネージャーだったジョー・ハーティングとともに死亡、他のメンバーは後部座席にいたために無事だったという。アルバム「Crossing」 O15の録音を終えたばかりだった。本音源は、その6日前にイタリアで行われたコンサートの模様を収録したもので、私が知る限り、彼が残した最後の録音となった。そういう意味で、聴く毎に人間の運命の残酷さ・儚さに思いをめぐらせてしまう。

パドヴァは、ヴェネチアから列車で30分の内陸にある町で、古くから文化と経済の中心地として栄えた。そのため多くの中世の建造物や美術品が残っている。会場の「Sala dei Giganti」は「巨人の間」という意味で、パドヴァ大学(コペルニクスやガリレオが教壇に立ったという由緒ある所)の構内にある古いホール。そこには壁一面に大きな人物像が描かれ、各種のイベントやコンサートの会場となっている。そのような場所での演奏のせいか、オレゴンのプレイがいつになく厳かな感じに聞こえる。

1.「Queen Of Sydney」は、ニューアルバム「Crossing」からの新曲で、コンピューター・プログラムにリフをバックに演奏される。この頃は、間奏でラルフがピアノソロを弾く間も、コンピューターによるリフが流れ続けている。途中でリフが止んで別の曲調になり、2.「mprovisation」に移ってゆく。ここではタブラのリズムが入り、シンセサイザーが大きくフィーチャーされ、ソプラノサックスとピアノが自由な境地でソロを展開する。ポールは後半でホイッスルに持ち替え、ラルフのシンセサイザーと掛け合い、そのまま切れ目なく 3.「Juggler's Etude」に入る。これは、ラルフとジョン・アバークロンビーのデュエット・アルバム「Five Years Later」1984 R10に収められた曲で、オレゴンによる正式録音はない。完璧な演奏で、急速テンポの難しいテーマを見事にこなしている。ここでコリンがアナウンスを入れ、コンサート開始の遅れを詫びている。片言のイタリア語を入れた彼の言葉を聴き、彼の1週間後の運命に思いをめぐらすと、何とも言えない気持ちになってしまう。4.「Rainmaker」は、オリジナルに比べてかなり早いテンポで演奏される。洗練された感じで、ラルフのピアノ演奏が鋭さを増し、ポールはよりアタックの強いソプラノサックスに持ち替えてソロを展開する。5.「Free Piece」は、12弦ギターとシタールのデュオから始まり、グレンの弓弾きのベースとポールのバス・クラリネットが加わり、ケルト音楽のようなワンコードによるシンプルなリフが続く。リズムが止むと、お互いに音を掛け合うような、よりフリーな演奏になり、ラルフはシンセサイザーを弾く。ポールによるバスクラの独奏の後、ピアノが入り、そのまま 6.「Kronach Waltz」が始まる。ピアノはグレンが弾いているようで、ラルフはここではトランペットを吹いている。曲のあとでポールが、「この曲には未だ名前がついていない」と紹介している。休憩の前の曲として演奏される7.「Fall '77」は、グレンのベース音の録音が素晴らしく、この曲の魅力が余すことなく捉えられている。ここでラルフはトランペットとシンセサイザー、ピアノを交互に演奏しているようだ。グレンの必殺リフをバックに演奏されるポールのバスクラソロが聴きもの。

セカンドセットは 8.「Waterwheel」から。ソロはラルフのギターのみで、ここではいつもと異なり、コリンのタブラソロは入らない。9.「Half Past Two」も 3.と同じく 「Five Years Later」1984 R10がオリジナルの曲で、オレゴンとしての正式録音がない貴重な音源。ここではコリンのタブラによる独奏がハイライトであるが、ラルフの12弦ギターの切れ味も最高の名演だ。12弦ギターの独奏の後、切れ目なくシンセサイザーやホイッスル、フルートによる即興演奏になる。そして11.「Aurora」に移ってゆく。ここでフルートを吹いているのはグレンだ。テーマにおけるポールのオーボエとのアンサンブルが美しく、ラルフのピアノソロ、エンディングの盛り上がりも素晴らしい。数あるこの曲のライブ演奏のなかでも最高の出来といえよう。12.「Beneath An Evening Sky」が、オレゴンにおけるコリンの最後のプレイ、シタール演奏の音源となってしまった、という意味で祈りの気持ちなしには聞けないトラックだ。

コリン生前最後の音源であるのみでなく、演奏・録音ともに最高の珠玉の名演だ!


Colin Walcott Tribute Concert (1985) [Various Artists] 映像  
 
Paul McCandless : Oboe, Soprano Sax, Tenor Sax, Bass Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer 
Trilok Grutu : Tabla, Percussion

1. Waterwheel [Towner] 9:42
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla)
2. Pepe Linque [Moore]  10:19 (Fade In)
 (Soprano Sax, Bass Clarinet, Piano, Bass, Drums) 


Ralph Towner : Classical Guitar
John Abercrombie : Electric Guitar

3. Ralph's Piano Waltz [Abercrombie]  6:59
 (C. Guitar, E. Guitar) 

Recorded May 12 1985 at Irving Plaza, New York


1984年11月8日コリン・ウォルコットは、ヨーロッパツアーの最中、ベルリンから西へ100キロほどにある東ドイツ(当時はドイツ統一の前だった)のマグデブルグで、交通事故により39歳の生涯を終えた。メンバーが乗ったバスが停車中の車に追突、その際前部にいたコリンは、バンドの友人でロードマネージャーだったジョー・ハーティングとともに死亡、他のメンバーは後部座席にいたために無事だったという。その後バンドは解散状態となったが、メンバーで話し合った結果、生前コリンが「もし自分の身に何かあった場合の後継者」と言っていたインド人のパーカッション奏者トリロク・グルトゥをメンバーとして、再スタートを切ることとなった。1985年5月12日に行われた、コリン・ウォルコット追悼コンサートが、4人による最初の公式演奏となったが、当時はトリロクは「スペシャル・ゲスト」として紹介され、まだ正式なメンバーにはなっていないようだ。

カメラによる撮影は手振れはないが、アマチュアっぽく、記録映画のような趣がある。会場のアーヴィング・プラザは、マンハッタンのイースト15丁目にある収容人員1,200人のコンサートホール。1.「Waterwheel」は、ラルフとポールの姿が写り、ステージ向かって右のグレンの姿は一部のみ、トリロクが画面の外になっている。導入部の途中でカットが入りテーマ部分の演奏の後、ギターでソロを弾くラルフのクローズアップ・ショットが入る。タブラの独奏部分では、トリロクの両手でタブラを叩く様をたっぷり観ることができるのがうれしい。エンディングのテーマでは、シンバルやタムタムを使用したパワフルなリズムを楽しむこともできる。2.「Pepe Linque」は、間奏のピアノソロの途中からフェイドインする。ラルフは、会場の機材の関係で電子ピアノを弾いている。ここでは、変則チューニングでベースを弾きまくるグレン(この頃はまだ若々しいね!)の運指が見えるのが面白い。ここでもトリロクは、パンチが効いたドラムスを叩いている。

ラルフとジョン・アバークロンビーのデュエットは、アバークロンビーの作曲による 3.「Ralph's Piano Waltz」だ。椅子に座って目を閉じながら演奏するジョンのギターを立てる独特の持ち方を観てとれる。それにしてもジョンのソロは、イマジネイションが泉のごとく沸き出でるかのようで圧倒的。映像ではこの後に「Beneath An Evening Sky」を演奏しているようだが、私は未見だ。

当日はナナ・ヴァスコンセロス、ゲイトウェイ・トリオ、ドン・チェリー、パット・メセニー、メレディス・モンクなどコリンと縁があった豪華がゲストが出演するが、最後に登場するジム・ペッパーがフィナーレで「Witchi Tai To」を演奏するのがハイライト。ステージには数多くのアーティストがひしめいているが、ラルフの姿は見えない。ジムによるアメリカ・インディアンのスピリットを体現したかのような、呪文のような掛け声とパーカッションの音が、スピリチュアルなムードに満ちている。


 
Jonathan Swift's, Cambridge, Boston (1985) [Oregon] 音源  
 
Paul McCandless : Oboe, Soprano Sax, Tenor Sax, Bass Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass, Violin, Flute
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer 
Trilok Grutu : Tabla, Drums, Percussion

[1st Set]
1. Improvisation [Oregon]  18:20
 (Oboe, Soprano Sax, 12st. Guitar, Synthesizer, Piano, Bass, Persussion)
2. June Bug [Towner] 11:18
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion)
3. Yellow Bell [Towner]  9:16
 
(Oboe, Piano, Bass, Percussion) 
4. Half Past Two [Towner]  13:40
 (Soprano Sax, 12st. Guitar, Bass, Tabla, Percussion) 
5. Free Piece [Oregon]  13:17
 (Whistle, Soprano Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Drums, Percussion)
6. Interstate [Towner] 16:04
 (Oboe, Piano, Synthesizer, Bass, Drums) 
7. Recuerdos [Francisco Tarrega, Arr. Towner] (Cut) 8:28
 (C. Guitar, Bass)
8. Pepe Linque [Moore] 10:11
 (Bass Clarinet, Soprano Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Drums) 

[2nd Set]
9. Innocente [Towner] 12:40
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion) 
10. Queen Of Sydney [McCandless]  10:19
 (Oboe, Flute, Synthesizer, Piano, Bass, Percussion) 
11. Witch Tai To [Jim Pepper]  14:12
 (English Horn, Tenor Sax, 12st. Guitar, Piano, Synthesizer, Bass, Tabla)
12. The Glide [Towner] 11:35
 (Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums)
13. Beneath An Evening Sky [Towner]  5:37
 (English Horn, 12st. Guitar, Bass)
14. The Rapids [Towner] 11:26
 (Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Percussion, Drums, Tabla) 

[Encore]
15. Waterwheel [Towner]  9:28
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion)

Recorded July 15 1985 at Jonathan Swift's, Cambridge, Boston

 

ジョナサン・スウィフツは、ボストンのケンブリッジにあったナイトクラブで、ロックやジャズのライブをやっていたが、だいぶ以前に閉店になったようだ。本音源は音質的には問題ないけど、ベースがオフ(全然聞こえないわけではないが、アンサンブルの中に埋もれている)だったり、シンバルやタブラの繊細な音が聞こえず、ポールのホーンの音は薄っぺらい感じで、反対にラルフが演奏するギターやキーボードの音が目立っているなど、楽器のバランスに難がある。また音の強弱の差が激し過ぎて、聴いている間ボリュームのつまみを何度も変える必要がある。それでもトリロク・グルトゥが一緒に演奏するようになって間もない頃の演奏がたっぷり収録されているので、捨てがたいものがある。

「Opening」とも言われる冒頭の1.「Improvisation」は、シンセサイザーの小さな音から始まり、途中からリズムが入り12弦ギターとシンセとを中心としたリフが展開、最後はリズムが止みフリーな演奏となり、メドレーで 2.「June Bug」になる。ベースとタブラの音がオフなので、ラルフのクラギの音だけが目立っている。3.「Yellow Bell」でのベースソロの音量は小さめではあるが、集中すれば何とか聞こえる。曲後のグレンによるアナウンスで、トリロクのことを「Special Guest」として紹介している。続く3曲はメドレーで、40分を超える長時間のプレイだ。4.「Half Past Two」は、ラルフの12弦ギターの切れ味が凄い。ギターの音量が大きく、伴奏でも前面に出るため、いつもと異なる感じで聴ける。12弦とタブラの掛け合いでは、ラルフがギターのボディを叩く場面がある。5.「Free Piece」はカリビアン風のサウンドが面白い。6.「Interstate」もラルフのピアノ・プレイが目立っていて、アンサンブルの妙が楽しめないのが残念。7.「Recuerdos」は、オレゴンのライブ演奏では珍しいレパートリーで、「Our First Record」 O1に収められていたタルレガの「アルハンブラ宮殿の思い出」のメロディーをブラジル風にアレンジしたもの。クラギとベースのデュオが楽しめるが、途中でカットになるのが残念。8.「Pepe Linque」は、曲が出来上がってから間もない初期の演奏と思われ、ベースによるイントロの独奏はなく、いきなりリフからスタートする。

セカンドセットは、淡々とした感じの 9.「Innocente」から始まる。グレンのベースやトリロクのタブラは、ソロを取る際、小さめながらもしっかり聞こえる。シンセのプログラミングによるリフが印象的な 10.「Queen Of Sydney」は、後年の演奏では、ラルフのピアノソロの部分でリフが止まるが、本音源のような初期のバージョンでは始終鳴っている。グレンによるフルート演奏も聴きもの。13.「Witchi Tai To」は、ラルフはいろんな楽器で演奏するが、やはり本音源の前半のような12弦ギターが一番いいですね。後半ではシンセサイザーによる重厚なサウンドが耳に残る。ポールは、ここでは珍しくテナーサックスを吹いている。即興演奏をはさんでメドレーで繋がってゆく 12.「The Glide」のテーマ部分は、シンセによる演奏が目立っており、晩年のピアノのみのプレイと雰囲気がかなり異なっている。13.「Beneath An Evening Sky」は、比較的さっぱりした演奏。ここでツアーの予定がアナウンスされ、シカゴやニューヨークのボトムラインの名前が出る。14.「The Rapids」は、かなり早いテンポでの演奏。アンコールは、15.「Waterwheel」。

音質面で難があると言ったが、音量を大きくして集中して聴けば大丈夫なレベル。ただし音量の調整が必要。トリロク加入直後のオレゴンの演奏をたっぷり聴くことができる。


Bottom Line, New York (1985) [Oregon] 音源

Paul McCandless : Oboe, Soprano Sax, Tenor Sax, Bass Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass, Violin, Flute
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer 
Trilok Grutu : Tabla, Drums, Percussion

[Aug 17]
1. June Bug [Towner] 8:31
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla)
2. Queen Of Sydney [McCandless]  10:19
 (Oboe, Flute, Synthesizer, Piano, Bass, Percussion) 
3. Pepe Linque [Moore] 7:32
 (Bass Clarinet, Soprano Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Drums) 
4. Improvisation [Oregon]  12:25
 (Tenor Sax, Whistle, Violin, Synthesizer, Piano, Bass, Drums, Persussion)
5. Beneath An Evening Sky [Towner]  5:14
 (English Horn, 12st. Guitar, Bass)
6. Yet To Be [Towner]  9:03
 (Oboe, Piano, Bass, Drums, Percussion) 
7. Nardis [M. Davis]  6:57
 (C. Guitar, Bass) 
8. Waterwheel [Towner] 9:56

 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla) 
9. Icarus [Towner] 4:41 
 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Tabla, Percussion) 

Recorded August 17 1985 at Bottom Line New York

[Aug 18, 1st Set]
10. Improvisation [Oregon] 10:10
 (Soprano Sax, Whistle, Piano, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion)
11. The Rapids [Towner] 7:42
 (Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Percussion, Drums, Tabla) 
12. Innocente [Towner] 10:07
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla) 
13. Witch Tai To [Jim Pepper]  8:54
 (Tenor Sax, 12st. Guitar, Piano, Synthesizer, Bass, Tabla)
14. Free Piece [Oregon]  4:54
 (Oboe, Bass Clarinet, Synthesizer, Bass, Percussion)
15. Nimbus [Towner]  8:01
 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Drums, Percussion) 
16. Semi-Proscrastination [Moore]  5:14
 (Bass, Tabla) 
17. Interstate [Towner] 9:24

 (Oboe, Piano, Synthesizer, Bass, Drums) 
18. Waterwheel [Towner] 8:16
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla)

[Aug 18, 2nd Set]
19. Improvisation [Oregon] 11:02
 (Oboe, Whistle, 12st.. Guitar, Synthesizer, Piano, Bass, Drums, Percussion)
20. The Juggler's Etude [Towner]  8:43
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla, Drums) 
21. Yellow Bell [Towner]  9:51
 (Oboe, Piano, Bass, Drums) 
22. Half Past Two [Towner]  11:11
 (Sopranor Sax, 12st. Guitar, Bass, Tabla, Persussion)
23. Free Piece [Oregon] 3:45.
 (Bass Clarinet, Flute, Synthesizer, Bass, Percussions)
24. Pepe Linque [Moore] 7:32
 (Bass Clarinet, Soprano Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Drums) 
25. Beneath An Evening Sky [Towner]  5:14
 (English Horn, 12st. Guitar, Bass) 
26. Yet To Be [Towner]  9:03

 (Oboe, Piano, Bass, Drums, Percussion) 
27. Icarus [Towner] 4:41 
 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Tabla, Percussion) 

Recorded August 18 1985 at Bottom Line New York


ニューヨークのグリニッジビレッジにある名門ライブハウス、ボトムラインでのコンサート音源。1984年11月8日の交通事故でコリン・ウォルコットを亡くしたオレゴンは、しばらくの間活動を休止したが、1985年5月12日、ニューヨークで開催されたコリンのメモリアルコンサートで、トリロク・グルトゥを迎えて演奏活動を再開した。本音源は、その3ヶ月後の録音で、トリロクは「Special Guest」と紹介されており、彼がグループの正式メンバーになるのは、1986年になってからという。

1〜9 は、8月17日の録音。1.「June Bug」は、「Root In The Sky」 1979 O11 のオリジナル録音に比べて、かなり早いテンポで演奏される。細かなリズムを刻むタブラ、終盤のオーボエと弓弾きのベースの絡みが特徴的。2.「Queen Of Sydney」では、事前のプログラミングあるいはループ処理によってセットされたシンセシザーのリフが延々と繰り返され、曲の背景を作る。オーボエとフルートがテーマを担当し、ラルフはもう1台のシンセサイザーとピアノを弾く。フリーな感じのインプロヴィゼイションの後に登場するピアノソロは、硬質な美しさがある。3.「Pepe Linque」では、グレンはお馴染みのリフを、テンポを落として悠々と弾く。時たま、お決まりのラインを外れて弾くフレーズのひらめきが素晴らしく、ライブ演奏ならではの醍醐味が味わえる。トリロクのドラムスがパワフルで、ラルフのピアノ、シンセサイザー、ポールのソプラノ・サックスによるソロも頑張っていて、グループの一体感が感じられる好演。4.「Improvisation」は、ホイッスルのような音のシンセサイザーとバイオリンによる少しユーモラスなデュエットから始まる。途中サックスが入り、かなり騒がしいニュージャズ風となる。そしてホイッスルまたはサックス、ベース、シンセサイザー、ドラムスによるインタープレイになり、最後はシンセをバックにベースがゆったりとソロをとる。そのまま5.「Beneath An Evening Sky」に移ってゆくが、ここではトリロクは加わらず、トリオによるおとなしい演奏となっている。6.「Yet To Be」は、躍動感あふれるトリロクのリズムが叩き出す疾走感が最高で、それに煽られたラルフが強靭なピアノソロを展開する。最初のテーマ演奏部分で、ポールのオーボエが出だしを間違えているのが面白い。少々荒っぽいが聴き応え満点。ラルフとグレンのデュエットによる 7.「Nardis」は珍しい。ラルフがこの曲を演奏した音源は多く存在するが、ここではグレンによる乗りの良いベースプレイのおかげで、大変リズミカルな演奏となった。8.「Waterwheel」では、トリロクのタブラが大活躍。凄いプレイだが、テンポが速く、リズムが強すぎて、オリジナルの詩的なムードは影を潜めてしまった。アンコールの 9.「Icarus」は、神妙な演奏だ。ここでもトリロクによるパーカッションのカラフルなサウンドが曲に新風を与えている。

10〜18 は、翌日8月18日の録音。10.「Improvisation」は、ワンコードによるアップテンポのコレクティブ・インプロヴィゼイション。メドレーで 11.「The Rapids」に移って行く。テンポが速く、ラルフはシンセサイザーを大胆に使用している。「Very new piece」と紹介された 12.「Innocente」は、シンセなしの透明感あふれる演奏で、そのストイックでピュアな感じが良い。13.「Witchi Tai To」は、12弦とベースのデュエットから始まる。ポールが珍しくテナーサックスでソロをとり、最後はラルフがオーケストラ風のシンセを入れている。14.「Free Piece」に続き、切れ目なしに始まる15.「Nimbus」は、オレゴンでの正式録音がないので、ライブでの演奏は貴重。16.「Semi-Proscrastination」はグレン独特のベースリフをフィーチャーした曲で、後に発表されたグレンと歌手ナンシー・キングの共演盤「Impending Dream」1991に収録された。途中タブラのソロも入る。17.「Interstate」は、本音源のハイライト。トリロクのシンバル・ワーク、そして随所に切り込むハイハット、タムタムのグルーヴ感が尋常でない凄さで、それに煽られて他のメンバーも素晴らしいプレイを展開する。その疾走感は例えようもなく、「Friends」 O7 1977に収められたスタジオ録音版の100倍良い出来。オレゴンの音源のなかで、最もエキサイティングなパフォーマンスだ!18.「Waterwheel」は前日の音源があり、比べてみると面白い。

19〜27は、この音源を最初に聴いてから10年以上も経った後に耳にすることができた。その曲目から、前日17日の音源はセカンド・セットだったと推定でき、1日で曲がかなり入れ替わっていたことがわかる。スペシャル・ゲストのトリロクは、一緒に演奏するようになってから日が浅いのに、これだけ多くの曲をマスターしていたことになり驚異的。彼が叩き出すリズムが全編を支配している。20.「The Juggler'a Etude」、22「Half Past Two」のように、ラルフのアルバム「Five Years Later」 1982 R10に収められたが、オレゴンでの公式録音がない貴重な曲があるのもうれしい。曲間のメンバーとオーディエンスとのやり取りのなかで、しばしば笑いが起き、ソロ・曲終了時には大きな拍手・声援が起きるなど、和気あいあいとした雰囲気が最高。26.「Yet To Be」で、ラルフのソロが聴けるって、本当に幸せだね〜

スペシャル・ゲストとして溌剌とプレイするグルトゥの躍動感が本当にスゴイ。

[2011年12月]
8月18日の音源を聞くことができましたので、書き直しました。


[2014年3月]
16.「Semi-Proscrastination」の曲名がわかりましたので、修正しました。

[2022年11月]
18日のセカンド・セットを聴くことができましたので、追記しました。


 
Inter Media Arts Center, Huntington, New York (1986) [Oregon] 音源  


 

Paul McCandless : Oboe, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass, Flute
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer, Trumpet 
Trilok Grutu : Tabla, Drums, Percussion

[First Set]
1. Innocente [Towner] 10:39
 (Oboe, 12st. Guitar, Synthesizer, Bass, Tabla, Percussion)
2. Opening (Improvisation) [Oregon] 11:15
 (Whistle, Bass Clarinet, Piano, Synthesizer, Bass, Tabla, Percussion)
3. Ecotopia [Towner]  7:27
 (Sopranino Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Drums, Percussion) 
4. Waterwheel [Towner] 11:04
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion) 
5. King Font [Towner]  7:34
 (Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums)
6. Leather Cats [Moore]  10:57 
 
(Soprano Sax, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion) 

[Second Set]

7. June Bug [Towner] 11:04
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla)
8. Yellow Bell [Towner]  7:54
 
(Oboe, Piano, Bass, Percussion) 
9. Nimbus [Towner]  8:26
 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Drums, Percussion) 
10. Free Piece [Oregon]  12:30
 (Soprano Sax, Whistle, Trumpet, Flute, C. Guitar, Piano, Synthesizer, Bass, Percussion) 
11. The Rapids [Towner]  8:55

 (Soprano Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Drums, Percussion)
12. Witch-Tai-Too [Jim Pepper]  8:14
 (English Horn, Oboe?, Guitar, Bass, Tabla, Percussion) 

Recorded November 29, 1986 at Intermedia Arts Center (IMAC), Huntington, New York

 

IMACは、ニューヨーク・マンハッタン南東に広がるロングアイランドのハンチントンという町にあるコンサート会場であるが、2009年にクローズしたとのこと。ふたつのセット(おそらくコンサートの全貌)を収録した本音源は、ダイナミックレンジが広いサウンドボード録音で、特にパーカッションとベースの音がクリアに捉えられている。それぞれの楽器で最も美しい音を出す人たちの本領をたっぷり味わうことができる。

当時のオレゴンは、ラルフがシンセサイザーを多用していた頃で、1.「Innocente」はシンセサイザーのソロから始まる。ラルフが12弦ギターを弾き始めた後もシンセの音が聞こえるので、プログラミングされていのだろう。2.「Opening」は、シンセとエフェクトを効かせたベースを中心とする、風が吹く荒野を思わせるフリーピース的な演奏から始まるが、途中でリズムが入りコレクティブ・インプロヴィゼイションになり、シンセソロが大活躍する。最後はシンセとベースによるアヴァンギャルドなサウンドになり、ほぼ切れ目なく 3.「Ecotopia」に移ってゆく。ここでのラルフの演奏はシンセが全面に出ていて、左手によるピアノの伴奏はほとんど聞こえない。プログラミングによるシンセのリフとトリロクのパワフルなドラムが支配する曲で、ポールのソプラノ(正確にはより高い音が出るソプラニーノ)サックスと、ラルフのシンセサイザー・ソロはガッツが入っている。ここでメンバー紹介が入るが、本コンサートでは珍しくグレンが嗄れ声でアナウンス役を担当している。4.「Waterwheel」は、テンポの早い力強い演奏で、トリロクのタブラソロが聴きもの。ジャズっぽい 5.「King Font」は大変リラックスしたプレイが楽しめる。ベースソロから入る 6.「Leather Cats」は、シンセサイザーを多用したハードな演奏。

セカンドセット最初の曲 7.「June Bug」は、早いテンポで飛ばす。ここでのオーボエのソロにおけるグレンのベースは控えめで、いつもと雰囲気が異なる。エンディングもオーボエと弓弾きのベースが絡む面白い部分がある。クールな 8.「Yellow Bell」に続く 9.「Nimbus」のラルフの12弦ギターの独奏は、いつ聴いても物凄い。パフォーマンス毎に微妙な違いがあり、とてもスリリングだ。10.「Free Piece」はアイデアに富んだパフォーマンスで、ブクブクと泡立つ水の音、ゴングを叩きながら水に沈めて音程を変えたり、口を鳴らすマウス・パーカッション、バード・ホイッスルなど万華鏡のようなパーカッションプレイが圧巻。ここでは、ラルフはトランペット、グレンがフルートを吹いているように聴こえたが、いろんな楽器は入り乱れているので、それらはラルフのシンセの音かもしれない。メドレーで続く11.「The Rapids」も飛ぶように早いテンポで、トリロクのドラムスの強靭なリズムもあって疾走感がある。最後の曲 12.「Withch Tai To」では、グレンのベースソロの音の美しさに惚れ込んでしまう。ポールはここでは、オーボエでソロをとっているようだ。コンサートの常連である本曲は、各メンバーが様々な楽器を手に演奏するという、自由な精神にあふれた感じが心に伝わってくる名演。

録音良し、演奏良し、曲数たっぷりのお勧め音源。


  
Freizeit-und Bildungs Zentrum Burgerpark, Braunschweig, Germany (1987) [Oregon] 音源   
 
Paul McCandless : Oboe, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer 
Trilok Grutu : Tabla, Drums, Percussion

1. Improvisation (Opening) [Oregon] 13:26
 (Bass Clarinet, Synthesizer, C. Guitar, Bass, Percussion)

2. Redial [Towner]  6:49
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla) 
3. Vessel [Towner]  14:00
 
(B. Clarinet, Piano, Synthesizer, Bass, Percussion)
4. Half Past Two [Towner]  12:23
 
(Soprano Sax, 12st. Guitar, Bass, Tabla, Drums, Percussion)
5. Free Piece [Oregon] 6:52
 (Whistle, Synthesizer, Bass, Percussion) 
6. Ecotopia [Towner]  6:34

 (Sopranino Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Drums, Percussion) 
7. Icarus [Towner] 7:52
 (Whistle, Oboe, 12st. Guitar, Bass, Tabla) 
8. King Font [Towner] 7:59
 (Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums) 
9. Fall '77 [Moore] 13:31
 (Bass Clarinet, Piano, Synthesizer, Bass, Drums)
10. Waterwheel [Towner] 11:13
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion))
11. Free Piece [Oregon] 2:07 (Fade In)
 
(Oboe, Synthesizer, Piano, Bass, Percussion) 
12. Yet To Be [Towner] 7:16
 
(Oboe, Soprano Sax, Piano, Bass, Drums, Percussion) 
13. Witch-Tai-Too [Jim Pepper]  9:44

 (Soprano Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Tabla, Percussion) 

Recorded Mar 6, 1987 at Freizeit-und Bildungs Zentrum Burgerpark,
Braunschweig, Germany


会場名を訳すと「余暇と教養センター」で、ドイツ中北部の町ブラウンシュヴァイク(人口25万人)の公園内にあるイベント会場でのコンサートのオーディエンス音源。ほとんどモノラルで、曲間にはカットが入り、タブラの繊細な響きなど聴きにくい難はあるが、各楽器のプレイはそれなりに聞こえ、音楽として楽しむことは十分にできるレベルだ。

当時のオレゴンは、ラルフがシンセサイザーを多用していた頃で、冒頭の1.「Improvisation」からシンセとサウウンドエフェクトを効かせた弓弾きベース、バス・クラリネット、パーカッションによる幽玄なイントロがそれっぽい。途中からトリロクがリズムを刻み始め、カラフルなコレクティブ・インプロヴィゼイションの様相を呈す。彼らのコンサート音源を多く耳にするうちに、これらのフリーピース、インプロヴィゼイションを聴いてスリルを味わうことが大いなる楽しみとなったが、毎回何が起きるのか、どこに行くのかわからない演奏を繰り広げるのは大変な技量だと思う。そのうちリズムが止み、クラシックギターが入った後に切れ目なく 2.「Redial」に移る。ラルフのギターソロ、グレンのベースソロに切れ味があり、聴き応えがあるプレイだ。3.「Vessel」は、トリロクが入った音源は珍しいと思う。オリジナルよりテンポが速い演奏で、ここでもシンセサイザーが活躍している。ポールのバス・クラリネット・ソロがアグレッシブだ。4.「Half Past Two」は、オレゴンでの公式録音はなく、ジョン・アバークロンビーとのデュオ作「Five Years Later」1982 R10に入っていた曲。このアルバムは長く廃盤になっていたため、知名度が高くない曲であるが、ラルフの作曲能力の素晴らしさが発揮された曲だと思う。12弦ギターのソロがクールでカッコイイ。後半のソプラノ・サックス・ソロになると、トリロクはドラムを叩き、断然ヘビーなサウンドになる。

5.「Free Piece」は、ホイッスルとシンセーの絡みから始まり、グレンの演奏中にオーディエンスから笑い声が起きるなど、この手の曲としてはリラックスしたプレイ。途中で耳慣れたシンセの和音が挿入され、メドレーで 6.「Ecotopia」になる。トリロクのドラムス・プレイが物凄い。7.「Icarus」は、ラルフの12弦の独奏とポールのホイッスル・ソロがイントロ。8.「King Font」は、本音源の中では最もジャズっぽい演奏。ラルフのシンセサイザーは、テーマのメロディーのみで、あとはピアノに専念している。グレンの曲 9.「Fall '77」の独特な雰囲気は、コンサート中の口直しのような位置付け。ベースの執拗なリフのバックで鳴り続けるトリロクのシンバル・ワークが強靭で、その中をラルフのシンセとポールのバスクラが泳ぎ回る。10.「Waterwheel」のハイライトはトリロクのタブラ独奏で、その超人的なプレイには恐れ入るばかり。

12.「Yet To Be」の序曲である 11.「Free Piece」の録音は演奏の途中から始まる。途中効果音としての笑い声まで入る自由な演奏が面白い。12.「Yet To Be」は、トリロクが叩きだす疾走感溢れるリズムが素晴らしい。それも曲中一定でなく、各プレイヤーのソロの場面で乗りが自在に変幻するのだ。ポールはテーマではオーボエを吹くが、ソロではソプラノ・サックスに持ち替えている。グレンの弓弾きソロもユニーク。13.「Witch Tai To」は、オーケストラを思わせるシンセサイザーの音色から始まる。ピアノが簡単にテーマを演奏したすぐ後、ソプラノ・サックス・ソロが入る。いつになく力が抜けたリラックスしたプレイで、その雰囲気は続くピアノ、ベースのソロに引き継がれる。最後もシンセサイザーがメインのテーマ演奏で終わる。

同時期の他の音源と比べると、かなり異なる曲目になっており、当時の彼らのレパートリーの多さがわかる。

[2015年7月作成]


University Of Koln, Cologne, Germany (1987) [Oregon] 音源  
 
Paul McCandless : Oboe, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass, Piano
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer 
Trilok Grutu : Tabla, Drums, Percussion

1. Improvisation (Opening) [Oregon] 13:00
 (Soprano Sax, Synthesizer, C. Guitar, Bass, Percussion, Tabla)

2. June Bug [Towner]  9:57
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion) 
3. King Font [Towner] 7:47
 (Soprano Sax, Piano, Synthesizer,Bass, Drums) 
4. Innocente [Towner] 10:00
 
(Oboe, 12st. Guitar, Synthesizer, Bass, Percussion
)

5. Free Piece [Oregon] 6:55
 (Whistle, Synthesizer, Piano, Bass, Percussion) 
6. Ecotopia [Towner]  6:53

 (Sopranino Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Percussion) 
7. Les Douzilles [Towner] 13:54
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion) 
8. Leather Cats [Moore]  11:35 
 (Soprano Sax, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion) 
9. Timeless [John Abercrombie]  10:26
 (Bass Clarinet, 12st. Guitar, Bass, Drums)
10. Yet To Be [Towner] 7:05
 
(Oboe, Piano, Bass, Drums)
11. Free Piece [Oregon] 8:00
 
(Whistle, Synthesizer, Piano, Bass, Percussion) 
12. Icarus [Towner] 4:50 
 
(Oboe, 12st. Guitar, Bass, Tabla, Percussion) 
13. Yellow Bell [Towner]  6:51

 (Oboe, Piano, Bass, Percussion) 

Recorded Mar 9, 1987 at University Of Koln, Cologne, Germany


ドイツのケルン大学でのコンサート音源。大聖堂で有名な町で、大学名は「Koln」だが、都市名は「Cologne」と綴るのが面白いですね。オーディエンス録音で深めのリバーブがかかっているが、各楽器の音はクリアーで、ダイナミックレンジも大きく、それなりに生々しいサウンド。オーディエンスの拍手も大きく、あたかもコンサート会場にいるかのような雰囲気がある。

「Opening」と称される冒頭のインプロヴィゼイションは、シンセサイザーを多用した演奏。ラルフのギターの背後でシンセが聞こえるので、ポールがシンセ・ホーンを吹いているものと思われる。最初はフリーピースで、6分後あたりからリズムが入り、そのまま急速調の 2.「June Bug」につながる。3.「King Font」は、ラルフによる短いピアノの独奏から始まる。4.「Innocente」は、シンセサイザーのイントロの音が残ったまま、ラルフが12弦ギターでテーマを奏でる。早いテンポによる演奏で、12弦の力強いプレイが堪能できる。5.「Free Piece」は、ポールのホイッスルから入り、ここではピアノとシンセサイザーが同時に聴こえ、その間ベースが鳴っていないので、グレンがピアノを弾いている可能性が高い。途中でラルフのシンセが次の曲を意識したコードを弾き、ドラムスが加わった後、メドレーで6.「Ecotopia」に移ってゆく。ダイナミックなドラムスのプレイが自由な感じで、ライブの醍醐味が味わえる。

7.「Les Douzilles」は、トリロクのタブラソロが聴きもの。この音源は、タブラの音につき、繊細さよりも力強さが強調された録音となっており、そういう意味で彼のプレイもいつもと異なる色合いとなっていて、その違いが曲そのものの雰囲気に大きな影響を与えている。8.「Leather Cats」についても、トリロクのパワフルで切れ味鋭いドラムスが印象的で、聴きごたえ満点。9.「Timeless」は、12弦ギターによる長いソロの後に、ベース、バス・クラリネットに回される。リズムセクションが、いつになくリズミカルで、各プレイヤーのソロもその分異色の演奏となっている点が面白い。10.「Yet To Be」は、これ以上は無理と思われるような速いテンポでのプレイで、トリロクの疾走感溢れるドラムス、シンバルワーク、そしてグレンのベースソロがぶっ飛んでいて最高。11.「Free Piece」は、とてもエキセントリックな演奏。人の声を思わせるようなシンセサイザーがユーモラスで、オーディエンスの笑いを誘っている。途中からはドラムスとシンセによるハードでダイナミックなプレイもあり、オレゴンの即興演奏のなかではベストの水準と思う。12弦ギターになってからは、静かになり、そのまま 12.「Icarus」へ突入する。アンコールと思われる13.「Yellow Bell」も、スタジオ録音よりもかなり早いテンポで沿層されている。

オーディエンス録音なりの良さが出た音源だと思う。


Freiburg Art Festival, Germany (1987) [Oregon] 音源



Paul McCandless : Oboe, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass Clarinet, Whistle
Glen Moore : Bass
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer 
Trilok Grutu : Tabla, Drums, Percussion

1. Yet To Be [Towner] 7:25
 (Oboe, Piano, Bass, Drums)

2. Ecotopia [Towner]  7:36
 (Sopranino Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Percussion) 
3. Waterwheel [Towner] 10:49
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion) 
4. Icarus [Towner]  6:21
 (Oboe, 12st. Guitar, Bass, Persussion)
5. The Rapids [Towner]  8:38
 (Soprano Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Drums, Percussion)
6. Witch-Tai-To [Jim Pepper]  8:50
 (Sopranino Sax, 12st. Guitar, Piano, Synthesizer, Bass, Tabla, Percussion) 
7. Free Piece [Oregon]  4:18
 (Sopranino Sax, Bass Clarinet, Whistle, Synthesizer, Violin, Bass, Percussion) 
8. Leather Cats [Moore]  4:13 

 (Soprano Sax, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion) 

Recorded June 28 1987 at TV Studio, Freiburg ,Germany


フライブルグはドイツ南部のライン川上流、スイス国境近くの都市で、本音源は同地のジャズフェスティバルに出演した時のもの。1.「Yet To Be」の公式録音は、1975年の「In Concert」O5と 1997年の「Northeast Passage」O21があり、本音源はそれらの中間点にあたる時期にあたり、タウナーのエキサイティングなピアノプレイを聴くことができるのが有難い。2.「Ecotopia」は、シンセサイザーのプログラムセットをバックに、タウナーとマッキャンドレスがソロをとる。トリロク・グルトゥのドラムスがとてもパワフルだ。映像を観るとわかるが、当夜の屋外ステージは大変暑かったようで、ミュージシャンにとって厳しい状況だったものと思われ、本音源は全体的にミストーンが多く、特に3.「Waterwheel」では、テーマおよびソロのパートで、ポールのオーボエが何時になく酷いミスを犯している。この曲では、トリロクのタブラソロが聴きものだ。4.「Icarus」は、曲の途中で編集処理がされており、ポールおよびラルフのソロのパートがカットされ、テーマの部分とソロが終わった後のオーディエンスの拍手の部分がつなぎ会わされた結果、不自然な感じになっているのが残念。 5.「The Rapids」は、オリジナル録音の「Oregon」 1983 O13では、コリン・ウォルコットがパーカッションを担当していたので、本音源でのトリロクのプレイと比較すると面白い。この曲や2.「Ecotopia」ではラルフのシンセサイザーが大活躍、立ちながら左手でピアノを、右手でシンセを弾いている。また片手でシェイカーを振りながらのトリロクのドラムソロも凄い。

6.「Witchi-Tai-Too」では、ラルフの12弦ギターのプレイが素晴らしい。グレンのベースソロの間、ラルフはギターを置いてピアノを演奏し始める。ゴスペルを思わせるスピリチュアルなプレイは大変聴き応えのあるものだ。ソプラノ・サックスのソロとテーマの後、途切れずに即興演奏に入ってゆく。8.「Leather Cats」は、グレンお得意のベースのリフが効いた曲で、ここでもラルフのシンセサイザーが大活躍。

ラルフがシンセサイザーを多く弾いていた頃の演奏。前述のとおり、ミストーンなど粗っぽい部分もあるが、それでも十分楽しめる内容だと思う。本音源については、1987年にProscerium Entertainment という会社から公式発売された「Live At The 1987 Arts Festival In Freiburg」O16で映像を観ることができる。



    
Caravan Of Dreams, Fort Worth TX (1987) [Oregon]
 

Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass Clarinet, Whistle
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer 
Glen Moore : Bass
Trilok Grutu : Tabla, Drums, Percussion, Voice

1. Beneath An Evening Sky [Towner] 4:47
 (English Horn, 12st. Guitar, Bass, Tabla, Percussion)
2. Redial [Towner] 9:04
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion)
3. Leather Cats [Moore] 10:06
 (Soprano Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Drums, Percussion) 
4. Twice Around The Sun [Towner]  11:56
 
(Soprano Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Drums, Percussion, Voice) 

5. Zephyr [Towner]  5:16
 
(Oboe, C.Guitar) 

6. Witch-Tai-To [Jim Pepper]  10:52
 (English Horn, Sopranino Sax, 12st. Guitar, Piano, Synthesizer, Bass, Tabla, Percussion) 
7. Improvisation [Oregon]  10:38 
 (Sopranino Sax, Bass Clarinet, Whistle, Synthesizer, Piano, Bass, Percussion, Voice) 
8. King Font [Towner]  7:26
 (Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums) 
9. Fall 77 [Moore]  11:31 
 (Bass Clarinet, Synthesizer, Piano, Bass, Drums) 

10. Icarus [Towner]  2:34 (extract) 
 (12st. Guitar, Bass, Tabla) 


Recorded December 11 1987 at Caravan Of Dreams, Fort Worth, Texas
 

キャラバン・オブ・ドリームズは、テキサス州フォートワースにあったスタジオ、212名収容のシアター、屋上庭園からなる施設で、1983年オープン。ジャズを中心とするコンサートがメインだったが2001年に廃業した。現在はレストランになっていて、シアターではコメディーを上演しているそうだ。本音源は、地元のFM放送曲がオレゴンのコンサートを生放送したもので、曲間にアナウンスが入り、コンサートの様子を実況の他、「今は11時55分です」等と時刻を伝えている。そのため、本音源は当日の放送の全貌をとらえたものではなく、抜粋であると思われる。私が聞いた音源は、音の厚みに欠ける気がするが、音質的には綺麗な音なので、十分楽しめる。

1.「Beneath An Evening Sky」は、最初は打楽器なしで始まり、イングリッシュホルン・ソロの途中からトリロクのドラムスが加わる。彼の参加により俄然躍動的になって、この曲としてはかなり激しい演奏となる。その後リズムが止んで再び静かなプレイに戻るという構成で、動静の対比が鮮やかだ。2.「Redial」は、クラギとパーカッションのみによるイントロが長めの演奏。3.「Leather Cats」は、トリロクがの打楽器がカラフルかつ変幻自在で、ベースのリフが中心の曲に自由な雰囲気を吹き込んでいる。ここで演奏が中断し、アナウンサーがサウンドシステムに問題がありチェックしている旨を伝える。その間の時間稼ぎらしく、ラルフのアルバム「Diary」1974 R2 に収められた「Icarus」が流れる。4.「Twice Around The Sun」は、イントロが始まっているのにDJは喋り続けている。ライブ音源が少ないため、少し残念。シンセサイザーを大々的にフィーチャーした曲で、スタジオ録音よりテンポが速く、ドラムス、シンバルワークの躍動感が素晴らしい。間奏のベースソロ、終盤のドラムソロも最高。

5.「Zephir」は、「ラルフがギター教則本のために書いた」と紹介されるが、1985年に出版された「
Master Classes Inprovisation and Performance Techniques for Classical and Acoustic Guitar」G1のこと。オーボエとクラギだけで厳かに演奏される。ここでDJが、ステージでマイクの調整をしている旨をアナウンスする。6.「Witch-Tai-To」はテンポの速い軽快なプレイで、ラルフの12弦ギターの切れ味が抜群。7.「Improvisation」は、トリロクのパーカッションによるリズムをバックにホイッスルとピアノがソロをとる。特にラルフのモーダルなピアノが印象に残る。ソプラノサックスに続くピアノの独奏の後、メドレーで8.「King Font」となる。セット最後の曲と紹介される 9.「Fall 77」は、ベースのリフをテーマとした曲であるが、バスクラリネット・ソロの際にバックを務めるベースとピアノのユニゾンによるリフ、ハイハット、シンバルによるトリロクのリズムが強烈で、物凄い演奏となっている。アンコールと思われる 10.「Icarus」は、残念ながら間奏の12弦ギターとタブラによる演奏のみの断片。

生放送で、曲毎にDJのアナウンスが入ったり、曲によってはイントロに語りが被ったりするが、それを除けば当時のバンドの演奏の素晴らしさを存分に楽しめる。


Corrboro North Carolina (1989) [Oregon] 音源   
 

Paul McCandless : Oboe, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass Clarinet, Whistle
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer 
Glen Moore : Bass
Trilok Grutu : Tabla, Drums, Percussion

1. June Bug [Towner] 8:18
 (Oboe, Piano, Bass, Drums)
2. Improvisation [Oregon] 10:49
 (Bass Clarinet, Whistle, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion) 
3. Ecotopia [Towner]  7:12
 
(Sopranino Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Drums) 

4. Witch-Tai-To [Jim Pepper]  8:09
 
(English Horn, 12st. Guitar, Bass, Tabla) 

5. King Font [Towner]  6:14
 (Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums) 
6. Free Piece [Oregon]  4:30 
 
(Oboe, Classic Guitar, Synthesizer, Bass, Percussion) 
6. Leather Cats [Moore]  11:12 

 
(Soprano Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Drums) 
7. Les Douzilles [Towner]  11:14
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion)
8. Hand In Hand [Towner]  6:30
 
(Bass Clarinet, 12st. Guitar, Synthesizer, Piano, Bass, Percussion) 
9. Yet To Be [Towner]  7:02
 
(Oboe, Soprano Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Drums)
10. Improvisation [Oregon] 11:29

 
(Sopranino Sax, Bass Clarinet, Whistle, Synthesizer, Bass, Percussion, Voice) 
11. Nimbus [Towner]  8:01
 (Oboe, Sopranino Sax, 12st. Guitar, Bass, Persussion)
12. Celeste [Towner]  7:40
 (Soprano Sax, Piano, Bass, Drums)

Recorded April 4 1989 at Performing Arts Center, Corrboro, North Carolina


1曲目が終わった後、ポールがアナウンスで「これが春のツアーの最初のコンサート」と言っている。特にトリロクは、公演の30分前にハンブルグから駆けつけたばかりだそうだ。そんな状況でありながら、ここでの演奏の切れ味は最高で、元気一杯のパフォーマンスを楽しむことができる。会場のパフォーミング・アーツ・センターは、ノースキャロライナ州立大学があるチャペル・ヒル近くのコルボロという小さな町にあり、本音源はWUNCという地元のFM放送のために録音されたものという。そのためか、録音が素晴らしく、特に各楽器のバランスが最高で、ギター、ピアノ、管楽器、ベース、打楽器のすべてが豊かな音で捉えられている。

2.「Improvisation」は、最初はフリーピース風に即興演奏から始まり、途中からリズムが入ってアグレッシブなインプロヴィゼイションとなる。途中シンセでガムランのような音を出しているのが面白い。ピアノ独奏の後、メドレーで3.「Ecotopia」になる。ここでのテーマ演奏におけるシンセサイザーの音色は、いつもと違っていて、グロッケンシュピール(鉄琴)のような音が混ざってるのがユニーク(あるいは録音が良いので、ここまではっきり聴こえるためか?)。本音源では、全般的にラルフがシンセサイザーを多用している。4.「Witch Tai To」では、ラルフの12弦ギターの切れ味が素晴らしい。ここではポールはソロをとらず、トリロクのタブラの独奏が入っている。5.「King Font」は、ジャズっぽいクールな演奏が続き、最後にわっと盛り上がる。「Leather Cats」の最初の4分半は即興演奏なので、「Free Piece」とした。ここでもラルフがシンセでいろんな音を出しており、カラフルな出来栄えとなっている。

休憩を挟んだ後半は、クラシック・ギターが活躍する7.「Les Douzilles」で、ギターの繊細なタッチ、弦の震え、響きが生々しくとらえられている。9.「Yet To Be」は、トリロクの疾走するようなシンバルワークが聴きもので、テーマではオーボエを吹いていたポールは、ソロではソプラノ・サックスに持ち替える。ラルフはシンセサイザーでソロを取るにが珍しい。10.「Improvisation」の後半はカリブ海風ジャズの雰囲気となり、トリロクがお得意の早口によるヴォイス・パーカッションを披露する。11.「Nimbus」は、オレゴンでの正式録音がない曲で、ラルフがヤン・ガルバレクと組んだ「Solstice」1975 R4に収められた名曲。彼の12弦ギターの凄さを素晴らしい録音で楽しむことができる。ベース、ソプラニーノ・サックスのソロも最高!12.「Celeste」は、ピアノによる美しい曲で、ラルフのソロアルバム「Old Friends, New Friends」1979 R8、オレゴンの「Troika」1994 O19に収録されていた曲。ポールとラルフのソロが心に染み入る快演で、終盤ではダブルテンポになり、ラルフが情念が迸るようにピアノを弾きまくるのが圧巻。

演奏・録音ともに素晴らしい。


 
Town Hall, New York (1989) [Oregon] 音源   
 
Paul McCandless : Oboe, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass Clarinet, Whistle
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer 
Glen Moore : Bass
Trilok Grutu : Tabla, Drums, Percussion
Nancy King : Vocal (9,10)

1. Pagent (Fade In) [Towner] 5:25
 (Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums)
2. Hand In Hand [Towner]  7:59
 (Bass Clarinet, 12st. Guitar, Synthesizer, Piano, Bass, Percussion) 
3. Free Piece [Oregon] 9:53
 (Bass Clarinet, Oboe, Whistle, Synthesizer, Bass, Percussion, Voice) 
4. June Bug [Towner]  11:27
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion, Tabla) 
5. King Font [Towner]  8:28
 (Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums)
6. Zephir [Towner]  5:44
 (Oboe, C. Guitar、Bass) 
7. Ecotopia [Towner]  7:51
 (Sopranino Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums) 
8. Waterwheel [Towner]  11:05
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla) 
9. Cheek To Cheek [Irving Berlin] 8:12
 
(Vocal, Bass) 
10. Chihuahua Dreams [Samantha & Glen Moore] 7:37  
 (Vocal, 12st. Guitar, Bass, Drums) 
11. Bombay Vice [Trilok Grutu]  4:46
 (Soprano Sax, Synthesizer, Bass, Drums)
12. Free Piece [Oregon] 5:02  
 (Bass Clarinet, Whistle, Synthesizer, Piano, Percussion) 
13. Yet To Be [Towner]  6:30
 (Oboe, Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums)
14. Witch-Tai-To [Jim Pepper]  8:42
 (English Horn, Sopranino Sax, 12st. Guitar, Bass, Drums, Tabla)

Recorded April 15 1989 at Town Hall, New York, NY 

注: 9.はラルフ非参加

 
タウンホールは、マンハッタンの43丁目、6番街とブロードウェイの間にある小さなホール(1921年オープン、約1,500席)で、クラシックの他に、スウィング、ビバップ・ジャズの歴史的なコンサートが開かれた場所として有名だ。アルバム「45th Parallel」1989年 O17の発売月についての記録は見つからなかったが、本コンサートは、その発売直後に行われたものと思われる。オーディエンス録音であるが、音質は大変良く、バランス的にはトリロクの打楽器の音が少し大きめではあるが、その分迫力があるサウンドとなっている。

1.「Pagent」は最初のテーマの途中からフェイドインする。ライブ音源が少ない曲なので残念だけど、シンセサイザーがプログラミング、実際のプレイの両方で派手に使われていて、トリロク・グルトゥのドラムスも大変パワフルで、スタジオ録音よりテンポが速く、飛ぶような演奏。オレゴンとしてはかなり過激な演奏だ。
2.「Hand In Hand」は、一転してクールな雰囲気で、バス・クラリネット、ベース、ピアノ、シンセサイザー、パーカッションのアンサンブルがポイントの曲。間奏でラルフが12弦ギターでソロを取る際は、プログラミングされたシンセサイザーがバックに流れる。3.「Free Piece」は、トリロクが使用する様々なパーカッションとラルフのシンセサイザーが中心となったカラフルなパフォーマンス。トリロクと思われるヴォイスも聴こえる。途中からパーカッションとシンセが激しいリズムを刻みだし、ベースとホイッスルがメロディーを奏でて、俄然賑やかになる。そしてパーカッションの短い独奏の後、ほぼ切れ目なく3.「June Bug」に続く。ここでは間奏でのトリロクの超人的なタブラソロ、アルコ奏法によるグレンのベースソロが聴きもの。5.「King Font」は、ソプラノ・サックスとピアノによるオーセンティックなジャズ・チューン。テーマではシンセサイザーがサックスとユニゾンで旋律を奏で、トルロクのドラムスもアグレッシブだ。6.「Zephir」は、いつもはオーボエとクラシックギターによるデュオのはずなんだけど、ここではギターの低音弦とは異なるベース音がかすかに聞こえる。7.「Ecotopia」は、シンセサイザーを多用していた当時のオレゴンを象徴する曲で、プログラミングによるシンセを背景に、ピアノとドラムスが激しいリズムを付け、ソプラニーノとシンセが力強いソロを入れる。8.「Waterwheel」は、やはりトリロクのタブラソロが一番の聴きもの。

ここでゲストのナンシー・キングが登場。彼女はオレゴン州生まれで、学生時代にラルフ・タウナー、グレン・ムーアの音楽仲間だったそうで、グレン・ムーアと2枚の共演作を残している白人シンガー。自己名義の作品が数枚ある。9.「Cheek To Cheek」は、アーヴィング・バーリン 1935年の作品で、映画「Top Hat」でフレッド・アステアが、ジンジャー・ロジャースに向けて歌ったラブソング。その後多くの人がカバーするスタンダード曲となった。ナンシーは、ベースのみの伴奏で自由に歌う。彼女のスキャットの後に展開されるグレンのベースソロが奇妙奇天烈で出色の出来。10.「Chihuahua Dreams」は、ナンシーのボーカル入りで 「45th Parallel」O18に収められていた曲で、この曲のライブが聴けるのは、私が知る限りこの音源のみ。オリジナルに増してドライブがかかり、より鋭くアグレッシブな演奏だ。間奏のラルフの12弦ギターのソロが尖がっていて最高。同じアルバムに収録されたトリロクの作品「Bombay Vice」のライブ演奏も珍しく、ここでは彼のパワフルなドラムス演奏が楽しめる。12.「Free Piece」は、途中まではバスクラ、ホイッスル、シンセ、パーカッション等による演奏で、約4分後からラルフによるピアノの独奏となり、そのまま13.「Yet To Be」に突入する。ポールはテーマではオーボエを吹いているが、ソロではよりアタックの強いソプラノ・サックスに持ち替えている。グレンのベースソロに続くラルフのソロがシンセサイザーで行われるのが、当時のオレゴンの演奏っぽい。ここでのトリロクのドラムス、特にシンバル・ワークの疾走感は、生理的な快感を覚えるほど凄いものだ。14.「Witch-Tai-To」は、12弦ギター、ベース、タブラ、ソプラニーノ・サックスの順番でソロが回る。

珍しいゲスト、珍しい曲が楽しめる音源。


Theatre Of Living Arts, Philadelphia (1989) [Oregon] 音源  






 
 
Paul McCandless : Oboe, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass Clarinet, Whistle
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer 
Glen Moore : Bass
Trilok Grutu : Tabla, Drums, Percussion

1. June Bug [Towner] 12:59
 (Oboe, Piano, Bass, Drums)
2. Hand In Hand [Towner]  6:31
 (Bass Clarinet, 12st. Guitar, Synthesizer, Piano, Bass, Percussion) 
3. Improvisation [Oregon] 11:05
 (Soprano Sax, Bass Clarinet, Whistle, Synthesizer, Bass, Percussion, Voice) 
4. Ecotopia [Towner]  7:32
 
(Sopranino Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Drums) 
5. Zephir [Towner]  5:34
 (Oboe, C. Guitar)
6. Bombay Vice [Grutu]  8:02
 (Soprano Sax, Synthesizer, Bass, Drums) 
7. Witch-Tai-To [Jim Pepper]  8:18
 
(Sopranino Sax, 12st. Guitar, Bass, Tabla, Drums, Percussion) 
8. King Font [Towner]  8:52
 (Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums) 
9. Free Piece [Oregon] 7:08

 
(Sopranino Sax, Bass Clarinet, Whistle, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion, Voice) 
10. Pagent [Towner] 6:59
 
(Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums)
11. The Silence Of A Candle [Towner] 6:09
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla)

Recorded April 19 1989 at Theatre Of Living Arts, Philadelphia, PA


フィラデルフィアにあるシアター・オブ・リヴィング・アーツは、もともと映画館だったが1990年代前半にコンサート会場に改装されたもので、収容人員約千人。写真を観ると、内装が古風でムードがある。各楽器の音質やバランス等は申し分なく、サウンドボード録音と思われるが、私が聴いた音源はモノラルだった。それでも音に十分な厚みがあるため、平面的な感じもなく、十分に楽しめる。

1.「June Bug」は、トリロク・グルトゥの繊細なパーカッション、タブラの音が余すところなく捉えられており、演奏・音質合わせて素晴らしい出来。2.「Hand In Hand」も、電気的なシンセサイザーと生音の12弦ギターとの対比が鮮やか。12弦ギターがソロを取る間、バスクラとベースが伴奏するが、その和声が巧み。プログラミングによるシンセサイザーの和音が鳴っているはずであるが、音量を小さめにしてあるので、ほとんど目立たない。3.「Improvisation」は、最初はシンセサイザーをメインとしたフリーピース風でスタート。トリロクが水を張ったバケツにゴングを入れて、叩きながら音程を変えたり、ブクブクという泡が弾ける音を拾っているのが面白い。彼の「ワオー、イエー」というヴォイスも入る。途中で、パーカッションとベースによるリズムが入り、ホイッスルによるインプロヴィゼイションに発展してゆく。そしてリズムが止み、シンセの独奏が次の曲の序曲となって、4.「Ecotopia」につながってゆく。変拍子でのトリロクのパワフルなドラミングが凄い。ポールが「ラルフがギター教則本(G1のこと)のアルペジオの練習のために書いた」と紹介する 5.「Zephir」は、オーボエとクラギのデュエット。

トリロクの曲6.「Bombay Vice」は、ライブ音源が少ないので有難い。ウェザーリポートを思わせるハイハットの激しい裏打ちをしながら、タムタム、スネアーを叩きまくるプレイは圧倒的。一転してシンバルワークに変わる場面のスリリングなこと!煽られたように展開されるポールのソプラニーノ、ラルフのシンセサイザーのソロも切れ味抜群で、スタジオ録音よりも遥かに活き活きとした好演だ。常連曲 7.「Witch Tai To」では、各プレイヤーのイマジナティブな演奏が楽しめるが、グレンのベースソロはとりわけ独創的だ。タブラの細かな響きも素晴らしい。8.「King Font」は、本音源のなかでは最もオーセンティックなジャズ・チューン。即興演奏による 9.「Free Piece」とメドレーで演奏される 10.「Pagent」も 6.「Bombay Vice」と同じくライブ音源が少ない曲で、本音源のハイライトだ。プログラミングと思われるシンセサイザーのとても速く細かな演奏に、躍動感溢れるドラムが絡む様は最高。間奏のベース、ピアノソロも透明感一杯で素晴らしい。

コンサートのうち、おそらく最初のセットをまるごと録音したものと思われ、オレゴンが1989年に発表したアルバム「45th Parallel」O17からの曲が多く演奏されている。トリロクの凄さを思い知る一品。

[2022年5月追記]
アンコールで演奏された 11.「The Silence Of A Candle」を聴くことができた。トリロクがメンバーの時期での演奏は珍しい。ラルフはクラシック・ギターを弾いている。


 
Israel Festival, Bonyenei HaUma, Jerusalem, Israel (1989) [Oregon] 音源  
 
Paul McCandless : Oboe, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass Clarinet, Whistle
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer 
Glen Moore : Bass
Trilok Grutu : Tabla, Drums, Percussion, Voice

1. June Bug [Towner] 11:26
 (Oboe, Piano, Bass, Drums)
2. King Font [Towner]  6:45
 
(Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums) 
3. Improvisation [Oregon] 12:41
 
(Sopranino Sax, Bass Clarinet, Whistle, Synthesizer, Piano, Bass, Drums, Percussion, Voice)
4. Pagent [Towner] 7:01
 
(Sopranino Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums)
5. Hand In Hand [Towner]  6:57

 (Bass Clarinet, 12st. Guitar, Synthesizer, Piano, Bass, Percussion) 
6. Aurora [Towner] 6:26
 (Oboe, Piano, Bass, Tabla, Drums, Percussion)
7. Waterwheel [Towner]  12:01
 
(Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla)
8. Ecotopia [Towner]  7:34

 
(Sopranino Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Drums) 
9. Zephir [Towner]  6:36
 (Oboe, C. Guitar)
10. Nimbus [Towner]  8:49
 
(Sopranino Sax, 12st. Guitar, Bass, Drums) 
11. Celeste (Fade Out) [Towner]  6:15
 (Soprano Sax, Piano, Bass, Drums) 

Recorded May 20, 1989 at Binyenei HaUma, Jerusalem, Israel

 

会場の「Binyenei HaUma」の英語名は、「International Convention Centre」で、1万人を収容する大きなホール。本音源はイスラエルで放送されたFM番組を録音したものと思われ、時々曲間にヘブライ語のアナウンスが入る。オーディエンスの拍手はステレオになっている。音のバランスが良く、特にギター、キーボードとホーンが前面に出ているが、ブーンというPA音が大きめなのと、ほんの僅か歪んだエッジのあるサウンドとなっている。その結果、他の音源と異なる雰囲気になり、透明感では劣るが、ロックのような迫力ある音となっており、それなりに面白いのだ。特にポール・マッキャンドレスのホーンの説得力が増しているような気がする。

1.「June Bug」は、とても速いテンポでのプレイ。トリロク・グルトゥのタブラソロは、エコーが深めにかかっているが、繊細さとダイナミックさが程良く調和した音になっており、大変聴き応えがある。2.「King Font」は、ピアノとソプラノの音にパンチがある。ポールのソロがいつもよりグルーヴィーな感じがするのは気のせいかな? グレンのベースがしっかり聞こえ、ラルフのピアノソロでの絡みが面白い。エンディングではシンセサイザーが前面に出てくる。「イスラエル訪問は初めて」というポールのアナウンスの後に、ヘブライ語のアナウンスが入り、3.「Improvisation」が始まる。シンセサイザーを中心に、エフェクトを聴かせたベース、バス・クラリネット、パーカッションによるフリーなプレイがしばらく続き、トリロクの「ワオ、ワオ」というヴォイスも入る。ホイッスルとシンセサイザーの掛け合いからリズムが入り、コレクティブ・インプロヴィゼイションの様相を呈す。リズムが止み少しの間を置いて、プログラミングされたものと思われる急速調のシンセサイザーのイントロが始まり、4.「Pagent」になる。とてもダイナミックな演奏で、ソプラニーノ・サックスのソロが凄い。ラルフのシンセサイザーが大活躍、その対比としてグレンのベースソロのバックで弾かれるピアノの響きが新鮮。ライブ演奏が少ない、この曲の最高のプレイが聞かれる本音源は貴重。5.「Hand In Hand」は、ベース、バスクラ、プログラミングによるシンセ、ピアノ、12弦ギターのアンサンブルがハイライト。この時期での 6.「Aurora」のライブは珍しいが、テーマ演奏の途中で編集によるカットが入り、ピアノソロに飛んでしまうのが残念。

7.「Waterwheel」もトリロクのタブラの魅力がしっかり捉えられた録音。音の歯切れが良いため、ラルフのクラギとの絡みが誠にスリリング。8.「Ecotopia」は、フリーピースのメドレーだったり冒頭にシンセの独奏が付くのが普通なんだけど。ここでは曲紹介の後、いきなりイントロのシンセが入る。9.「Zephir」はオーボエとクラギのデュオによる静かな曲。本音源ではシンセサイザーが大々的にフューチャーされているため、こういう演奏を聴くとホッとするね。ポールの曲紹介とヘブライ語のアナウンスの後に始まる 10.「Nimbus」は、オレゴンとしての公式録音がない曲で、ラルフがヤン・ガルバレクと組んだ「Solstice」1975 R4に収められている。冒頭の約4分にわたるラルフの独奏が凄まじく、文句なしで彼の12弦ギター演奏の頂点と断言できるものだ。楽器が放つ音の厚み・豊かさを余すことなく捉えた録音も秀逸。バンドがフィルインしてアンサンブルに切り替わる場面が完璧で、弓弾きベースとソプラノ・サックスのソロ、バックで支えるラルフの12弦とトリロクのドラムスの全てが素晴らしい!最後にテーマに戻る際の切れ味も限りなくスリリング。ポールが本ステージにグレンの息子がいることを紹介し、ラルフが娘のために書いたと話して演奏される11.「Celeste」は、ラルフのピアノのグレンのベースが際立っており、テープ切れのためにエンディング部分で切れてしまうのが本当に残念。

PA音など粗っぽい音ではあるが、各楽器の音の厚みがしっかり捉えられているため、迫力に満ちた音となっており、各プレイヤーの調子も良いようで、ガッツが入ったパフォーマンスが満喫できる。お勧め!!

[2015年11月作成]


 
Beit She'an Roman Amphitheater, Israel (1989) [Oregon] 音源   
 


Paul McCandless : Oboe, Soprano Sax, Sopranino Sax, English Horn, Bass Clarinet, Whistle
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer 
Glen Moore : Bass
Trilok Grutu : Tabla, Drums, Percussion

1. The Silence Of A Candle [Towner] 5:50
 (English Horn, Piano, Bass, Drums)
2. Opening [Oregon]  11:13
 
(Bass Clarinet, Soprano Sax, Whistle, Synthesizer, Piano, Bass, Percussion) 
3. Pagent [Towner] 5:46
 
(Sopranino Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Drums)
4. Beneath An Evening Sky [Towner] 5:12
 
(Oboe, 12th Guitar, Bass, Drums)
5. Pepe Linque [Moore]  5:51

 (Bass Clarinet, Soprano Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Tabla) 
6. Les Douzilles [Towner] 10:46
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla, Percussion)
7. King Font [Towner]  5:16
 
(Soprano Sax, Piano, Bass, Drums)
8. Witch-Tai-To [Jim Pepper]  8:25
 (English Horn, Sopranino Sax, 12th. Guitar, Bass, Tabla, Percussion)
9. Free Piece [Oregonr]  5:45
 
(Oboe, Synthesizer, Bass, Percussion) 
10. Leather Cats (Fade Out) [Towner] 2:42
 (Soprano Sax, Synthesize, Bass, Drums) 

Recorded May 21, 1989 at Beit She'an Roman Amphitheater, Beit She'an, Israel

 

ベト・シェアンは、イスラエル・エルサレムの北東、ヨルダンとの国境近くにある小さな町で、古代ローマの広大な遺跡がある所。本音源はそこにある保存状態の良い円形劇場跡でのサウンドボード録音で、前日のBinyenei HaUmaでのコンサートと同じく、イスラエル・フェスティバルのイベントのひとつとして行われたもの。FM放送音源というが、モノラルでPA機材から発生したと思われる雑音が大きく、楽器の音も大きくなると歪み気味という難がある。ただし問題ない時の各楽器の音自体はクリアーなので、それなりに楽しんで鑑賞できる。

1.「The Sound Of A Candle」は冒頭にあるが、次の曲が 2.「Opening」であることを考慮すると、実際のコンサートではそうでなかったと思われる(恐らく最後?)。2.「Opening」の前半は特定のリズム、リフのない即興演奏。途中からパーカッションのリズムに乗った躍動感溢れるインプロヴィゼイションになる。切れ目なく始まる 3.「Pagent」はスタジオ録音よりもテンポが速く、切れ味鋭く素晴らしい演奏。ポールのアナウンスの後は 4.「Beneath An Evening Sky」。6.「Les Douzilles」が始まった少し後、音質が極度に悪くなるが、しばらくすると元に戻る。トリロクのタブラソロが終わると、オーディエンスから大きんな拍手が起きる。7.「King Font」の後にポールのアナウンスが入り、「Les Douzilles」を「ラルフがスイスに1週間籠って出来た曲」と紹介している。8.「Witch-Tai-Yo」の後グレンが曲紹介のアナウンス。グレンのベース独奏を経て10.「Leather Cats」になるが、最初のテーマ演奏が終わったところで、残念ながらフェイドアウト。

録音に問題はあるが、楽器の音自体はクリアーで、演奏の質も良い。

本稿執筆時の2023年12月はイスラエルとハマスとの紛争の最中でした。いろいろ複雑な事情が絡み合っていて、善悪がはっきりしない混沌とした状態が続いている事に心が痛みます。いつか同地で平和な心でコンサートができる日が戻ってくることを祈ります。

[2023年12月作成]


St. Johannis Church, Hamburg (1989) [Oregon] 音源
 


Paul McCandless : Oboe, Soprano Sax, Sopranino Sax, Bass Clarinet, Whistle
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer 
Glen Moore : Bass
Trilok Grutu : Tabla, Drums, Percussion

1. June Bug [Towner] 12:47
 (Oboe, Piano, Bass, Drums)
2. Hand In Hand [Towner]  6:36
 (Bass Clarinet, 12st. Guitar, Synthesizer, Piano, Bass, Percussion) 
3. Improvisation [Oregon] 11:02
 (Soprano Sax, Whistle, Synthesizer, Bass, Percussion) 
4. Ecotopia [Towner]  7:45
 
(Sopranino Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Drums) 
5. Zephir [Towner]  5:31
 (Oboe, C. Guitar)
6. King Font [Towner]  7:57
 (Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums) 
7. Redial [Towner]  9:22
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Percussion, Tabla) 
8. Witch-Tai-To [Jim Pepper]  8:00
 
(Sopranino Sax, 12st. Guitar, Bass, Tabla, Drums, Percussion) 
9. Free Piece [Oregon] 7:37
 
(Sopranino Sax, Bass Clarinet, Whistle, Synthesizer, Bass, Drums, Percussion, Voice) 
10. Leather Cats [Moore]  12:17 

 (Soprano Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Drums) 
11. Icarus [Towner]  9:05
 (Oboe, Whistle, 12st. Guitar, Bass, Persussion, Tabla)

Recorded October 15 1989 at St. Johanniskirche, Harvestehude Turmweg, Hamburg

 

ハンブルグの聖ヨハネ教会は、Harvestehude という静かな地区にあり、堂内の音響効果が良いためクラシックやジャズのコンサート・録音が行われている。本音源は、FMラジオ放送のために録音されたものと思われ、メンバーの熱演に加えて、素晴らしい録音により、大変聴き応えがある出来となっている。

1.「Jun Bug」を聴き、会場の音響効果による自然なリバーブが効いた、まろやかでふくよかな音に惚れ惚れする。特にグレンのベース音、トリロクのパーカッションの音に深みがあり、各楽器のバランスも絶妙で素晴らしい。メンバーにとっても、美しく神聖で静かな教会での演奏は、ジャズ・フェスティバルなどオープンでザワザワした場所でのプレイに比べてより集中できるようで、各人の演奏のクリエイティビティーが上がっているように感じられる。2.「Hand In Hand」のラルフのシンセイザーの音も、より温かみのある感じがして、ピアノや12弦ギターのアコースティックな音との対比がより一層鮮やかになっている。3.「Improvisation」は、トリロクによる早いリズムをバックに、ポールがソプラノサックスで長いソロをとる。ラルフはシンセシザーで背景作りを担当。演奏は切れ目なく 4.「Ecotopia」に移ってゆく。

クラシック・ギターとオーボエによる静かなデュエット 5.「Zephir」の後、最もジャズっぽい感じの 6.「King Font」でのピアノプレイは、ラルフの明確なタッチもあり透明感にあふれている。8.「Witchi-Tai-To」では、ラルフはピアノを弾かず、最初から最後まで12弦
ギターで通しているそのまま 9.「Free Piece」となり、トリロクのヴォイスを含むカラフルなパーカッション、バス・クラリネットとベースとの対話などを経て、グレンが10「Leather Cats」のイントロを弾き出す。エンディングではトリロクのパワフルなドラミングが楽しめる。アンコールでの演奏と思われる 11.「Icarus」は、12弦ギターとホイッスルによるイントロから始まる。途中で静かになり、トリロクが抑制が効いた感じのタブラのソロをとり、12弦ギターとオーボエがフィルインする部分は、オーケストラのような構成美に満ちており、12弦ギターの繊細なアルペジオが完璧に捉えられている意味でも、本曲の数あるライブ演奏のなかでも出色の出来であると思う。

素晴らしい演奏に、素晴らしい録音、う〜ん.........文句無し!


New Morning Jazz Club, Paris (1989) [Oregon] 映像


Paul McCandless : Oboe, English Horn, Soprano Sax, Sopranino Sax
Ralph Towner : Classical Guitar, 12-String Guitar, Piano, Synthesizer 
Glen Moore : Bass
Trilok Grutu : Tabla, Drums, Percussion

1. Ecotopia [Towner]  6:40
 (Soprano Sax, Sopranino Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Drums) 
2. Celeste [Towner]  6:41
 (Soprano Sax, Piano, Bass, Drums) 
3. Leather Cats [Moore]  11:56 
 (Soprano Sax, Synthesizer, Piano, Bass, Drums, Percussion)  
4. King Font [Towner]  7:05
 
(Soprano Sax, Piano, Synthesizer, Bass, Drums) 
5. Waterwheel [Towner]  12:03
 (Oboe, C. Guitar, Bass, Tabla)
6. Nimbus [Towner]  8:48
 (Sopranino Sax, 12st. Guitar, Bass, Drums) 
7. Witch-Tai-To [Jim Pepper]  7:56
 
(English Horn, Oboe, 12st. Guitar, Bass, Tabla, Drums) 

Recorded October 20, 1989, New Morning Jazz Club, Paris


ニューモーニング・ジャズ・クラブは、パリ10区の東駅近くにある収容人数約500人のナイトクラブで、1981年より営業。オレゴンの公演は、1989年11月「Capitale Jazz Live」というテレビ番組で放送されたらしい。4人は楽器や機材に囲まれながら狭いステージで演奏している。私が観た映像は、画質・音質ともにまあまあだったが、他で観れない曲があるので貴重。

いきなり 1.「Ecotopia」が始まるが、曲後のポールのアナウンスで、コンサートの始めに演奏する「Opening」と呼ばれるインプロヴィゼイションとのメドレーであったことがわかる。立膝スタイルで演奏するトリロクのドラムスがパワフルで凄い。この格好なので、通常の奏者のように足でバスドラを叩くことは無理なんだけど、ハイハットは立てていない足を使って操っているようだ。ポールは、テーマではソプラノ・サックスを、ソロではより小さく高い音が出るソプラニーノを吹いている。ラルフは、シンセサイザーをピアノの上に2段で設置、曲を通して全編に流れる音はプリセットだ(別の映像で、コードが変わる都度、それを指定するキーを叩いているものがあったが、ここではやっていないので、コード進行も含めたプログラミングと思われる)。シンセソロの躍動的なプレイをじっくり見せてくれる。2.「Celeste」は、ラルフによるタッチの強いピアノ演奏が楽しめる。スタジオ録音が静かで清楚であったのに対し、ここではエンディングがダブルテンポになって疾走感のあるプレイで盛り上がる。特にオレゴンでの録音はドラムなしのトリオによる「Troika」1994 O19(初出はラルフのソロ 「Old Friends, New Friends」1979 R8) なので、トリロクのドラムが入ったバージョンとしても貴重なものだ。オーディエンスの拍手が編集でカットされ、ほぼ切れ目なく 3.「Leather Cats」が始まる。トリロクはいろんな種類のパーカッションで対応しており、水を張ったバケツにゴングや鈴を出し入れして音程を変えながら叩いている。ラルフは、当時シンセサイザーを多用していた時期で、上下2段のシンセとピアノを立ちながら弾き分けていて、その模様を捉えた仰瞰ショットが面白い。4.「King Font」は、オレゴンのレパートリーのなかでも最もオーセンティックな感じのジャズテューン。資料には「Mariella」とあるが、間違い。5.「Waterwheel」は、ラルフのギタープレイを下から撮影したアングルが少し異様。トリロクのタブラのソロでは、指の動きが速すぎて映像が着いてゆけない様がありあり。グレンの弓弾きベースソロも見ごたえ十分だ。

本映像のハイライトは文句なしで 6.「Nimbus」だろう。ラルフが12弦ギターでこの曲を弾く映像は他にないと思われ、左手の運指がバッチリ写っている。12弦ギターは、通常の6弦に共鳴弦を追加したものであるが、ここでのラルフのプレイを注意深く見ていると、一部の弦については同じ音程に調弦されていないことがわかる。ラルフ本人から聞いた話として、この曲のチューニングは C#C#F#G#C#D#F#G#A#BD#D# という資料を読んだことがあるが、実際試していないので、本当のところは判らない。とにかくこんなチューニングで素晴らしい曲を作るなんて、天才ですね〜。ラルフの独奏の後に切り込んでくるバンドの演奏もシャープで、ベース、ソプラニーノ・サックスのソロも最高だ。7.「Witch Tai To」は、ラルフの12弦ギターの切れ味のよいプレイをバックにポールがイングリッシュ・ホルン、オーボエをスピリチュアルに吹きまくる。

いつか、良質の映像で観てみたいもんですな!