Hootenanny 1964 映像 |
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Maria D'Amato : Vocal, Kazoo
Pete Siegel : Lead Vocal, Banjo
Stefan Grossman : Vocal, Guitar
Steve Katz : Vocal, Washboard
Bob Gurland : Vocal, Mouth Trumpet
Fred Weisz : Violin
Danny Lauffer : Jug
David Grissman : Mandolin
Frank Goodkin : 6-String Banjo
John Sebastian : Kazoo
Josh Rifkin : Kazoo
Jack Linkletter : Host
1. Log Cabin Blues [Blind Boy Fuller]
From 1964 ABC Broadcast "Hootenanny", filmed at Fordham University, New York
Aired at Feb 22, 1964 (Episode 22, Season 2)
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イーヴン・ダズン・ジャグ・バンドの映像が存在するという話は以前より知っていたが、長らく目にすることがなかった。音声のない映像の断片のみを観ることはあったけどね。その後オリジナル・メンバーのスティーヴ・カッツ氏がYouTubeに完全版の映像を公開してくれた。うれしい!タイトルは
「The Even Dozen Jug Band At Fordham」とあり、調べるとABC放送の「Hootenanny」という番組からのものであることがわかった。この番組は、ニュー・クリスティー・ミンストレルズを筆頭とした多くのフォーク・アーティストによる全米各地の大学ホールでの演奏を収録したものだったが、ピート・シーガーやジョーン・バエズ等を左翼的として出演させなかったことで物議を醸し、ポップ音楽の台頭もあって2シーズン
(1963年4月から1964年9月まで)で打ち切りとなった。
画像は司会者ジャック・リンクレター(1937-2007)の紹介から始まり、それに被って演奏が始まる。曲はノース・キャロライナ州のブルースマン、ブラインドボーイ・フラーが1935年に録音した「Log
Cabin Blues」。この曲は彼らのレコード E1には収録されていない。背景に「Fordham University」(ニューヨークにある大学で、今の日本では小室圭氏が通学したロースクールとして有名)の看板があるステージで、メンバー全員の白黒画像から始まり、次に右から左へメンバーのクローズアップを見せてくれる。男性陣はチョッキのユニフォーム姿で、紅一点のマリアのみがシャツにスカートいう恰好で目立っている(浮いている?)。クローズアップでまず最初に映るのが、右端でカズーを吹くジョン・セバスチャン(当時ジョン・ベンソンと名乗っていた)とジョシュ・リフキンで、当該YouTubeへのリフキン氏の投稿により確定できた。次はニコニコして体をゆすりながらマンドリンを弾くデビッド・グリスマンで、その髭なしのカワイイ容貌に思わず笑ってしまう。そしてキリッとした顔立ちでワッシュボードを操るスティーブカッツ。ワッシュボードは立てて胸に付けるものと思っていたが、ここでの駅弁販売風の持ち方が面白い。
ファースト・ヴァースが終わり、間奏でハンド・トランペットを吹くボブ・ガーランドが映る。彼とわかるのは、2005年9月25日にニューヨークのワシントン・スクウェアパークで開催された「The
1st Annual Bluegrass Reunion」で、マリアと共演した映像があり、その風貌と演奏姿勢が同じであるため。彼はその後ニューヨーク大学の数学教授となり、2019年に引退したとのこと。ジャズが好きで、プロとしてトランペットを吹いていたこともあるという。ここではなんと、手だけでトランペットのサウンドを出している。息使い、口中、唇のコントロールと、マウスピースの代わりに手を添えるだけで、あの音を出しているのだ!間奏が終わり、バンジョーを持ったピート・シーゲルとギブソン
SJ-200を持ったステファン・グロスマンが一つのマイクに向かって歌う。ピート・シーゲルはバンジョー奏者としてピート・シーガーと共演した他、プロデューサーとしてロイ・ブキャナンやバハマのギタリスト、ジョセフ・スペンス、そしてドク・ワトソンの発掘をした人。特に当時エレクトリック・ギターのみを弾いていたドクにアコースティック・ギターを持たせ、フォークとオールド・タイミー音楽の才能とキャリアを開花させた功績は大。次にソロを取るフィドルのフレッド・ウェイズ(1944-2016)は、デビッド・グリスマンの幼馴染で、彼に最初にギターを教えた人という。後にグリスマンとNew
York Ramblersというブルーグラスのバンドを組んだこともあったが、後年は統合失調症に悩まされ、アーティストとして大成できなかった。彼の背後でギターを弾く男は、風貌から特定したフランク・グッドキン。歌が再開したところでハイライトを浴びながらジャグを吹くダニー・ローファーについての資料は見つからなかった
そして後半、バンドの演奏がブレイクし、そこに切れ込むようにボーカルを入れるのが我らがマリアだ。それが余りに鮮やかなので、オーディエンスからどよめきが起きるのが痛快。歌い終わった後に彼女がカズーを吹くシーンもばっちり写っている。
マリアを捉えた最も初期の映像で、若々しく健康的、そして飾り気のない彼女の容貌・歌声が誠に印象的だ。
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Festival (1967 Film) 映像 |
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Jim Kweskin : Lead Vocal , Guitar
Geoff Muldaur : Washboard
Maria D'Amato : Kazoo
Fritz Richmond : Jug
Mel Lyman : Harmonica
Bill Keith: Banjo
1. Hannah (部分)
From 1964 Newport Folk Festival (Film "Festival" by Murray Lerner)
写真上: 1964年のステージ写真(マリアの服装に注目)
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マーレイ・ラーナー監督の「Festival」1967 は、1963年〜1966年のニューポート・フォーク・フェスティバルを扱った映画だった。多くのアーティストの映像があるものの完奏曲はなく、音楽映画というよりもドキュメンタリーとして製作したものだ。なかでも1965年にボブ・ディランがエレキギターを持って、ポール・バターフィールド・ブルース・バンドをバックに歌い、保守的なフォーク音楽ファンから反発をくらったシーンが収められ、当時の音楽と時代を切り出したことで話題になった。
ジム・クウェスキン・ジャグ・バンドは映画の冒頭、タイトルが表示される前に登場する。1.「Hannah」は、ジム・クウェスキンが1966年に発表したソロアルバム「Relax
Your Mind」に収められた曲で、最初のシーンでマリアがカズーを吹く様がちらっと写る。若々しいジェフの表情も印象的。監督の「カット」という声で、演奏は中断され、その後は主にメル・ライマンを中心としたトークになる。後に教祖になるだけあって、彼のお喋りにはカリスマ性を感じる。その横でジム・クウェスキン、背後でフリッツ・リッチモンドが声をはさむ。マリアとジェフ、最初にちょっとだけ見えたビル・キースは画面の外でなにも話さない。フリッツの話の背後で、ほんのちょっとだけマリアらしい声が聞こえる。
ほんの僅かであるが、若いマリアの姿が拝める映像。なおこの映像は2005年にDVDで発売されたが、音楽的には演奏の一部しかないので、本ディスコグラフィーでは「映像・音源」のコーナーに納めた。
[2024年2月追記]
本記事作成当初、本映像の撮影年を1966年としていましたが、正しくは1964年でした。映像冒頭に写る彼女の服装(ノースリーブの横縞模様のシャツ)が、1964年のニュポート・フォーク・フェスティバルにおける彼らのステージ写真の衣装と一致したのが証拠です。ですので撮影年を修正し、掲載順序を入れ替えました。また本映像の撮影日は、ヴァンガード・レコードから発売されたオムニバス盤「Newport
Folk Festival 1964 Evening Concert Vol.1」1965 E2と同じ日となります。
またジム・クウェスキン・ジャグ・バンドの1964年3月17日の映像「Steve Allen Show」にはマリアの姿がないことから、彼女は1964年3月〜7月の期間中にバンドに加入したことになります。
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Newport Folk Festival 1965 映像 |
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Jim Kweskin : Lead Vocal , Guitar
Geoff Muldaur : Kazoo, Washboard
Maria D'Amato : Vocal, Kazoo
Fritz Richmond : Wash-Tub Bass, Jug
Mel Lyman : Harmonica
Bill Keith: Banjo
1. Sadie Green [Gilbert Wells, Jhonny Dunn]
Newport Folk Festival, Festivall Field, Newport RI, July 24, 1965
写真: フェスティバルのポスター(出演予定が記載)
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1965年7月に行われたニューポート・フォーク・フェスティバルにおける映像を観ることができた。途中カメラが激しくぶれる部分があり、この映像が商業用ではなく、記録目的で撮られたことがわかる。また同フェスティバルの出演予定が記載されたポスターにより、演奏日を7月24日と特定した。
ジム・クウェスキンによるメンバー紹介から始まり、そこで彼はマリアのことを「Maria D'Amato」と旧姓で呼んでいる。最後に自分の名前のところで「I'm
Joan Baez」と冗談を飛ばして、1.「Sadie Green」の演奏を始める。イントロで、ハーモニカを吹くメル・ライマンとバンジョーのビル・キースが大写しになるシーンに続き、マリアとジェフがひとつのマイクに向かってカズーを吹き、その後ジェフはウォッシュボードの演奏に移るが、マリアは引き続きカズーを吹いている。ウォッシュタブ・ベースとジャグを演奏するフリッツ・リッチモンドもバッチリ映っていて、メンバーの有様が大変よくわかる撮影だ。マリアは白いワンピースに頭にスカーフを巻いた格好で、そのたたずまいはとても美しい。ジムがリードボーカルを担当し、エンディングのコーラスで少しだけマリアの声が入る。
レコード「Newport Folk Festival 1964 Evening Concert Vol.1」1965 E2で、「Sadie Green」のライブ演奏を聴くことができるが、ここでは翌年のフェスティバルにおける同曲の演奏を観ることができる。また同年は「Festival
The Newport Folk Festival/1965」1967 E4で、マリアとジェフによるデュエット演奏しか公開されていないので、この映像は貴重。
[2024年2月作成]
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Let's Sing Out (Episode 93) 1966 映像 |
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Jim Kweskin : Lead Vocal (2), Guitar (1, 2, 3)
Geoff Muldaur : Lead Vocal (4), Vocal (2, 3), Washboard (1, 2), Clarinet
(3), Guitar (4)
Maria Muldaur : Lead Vocal (3), Vocal (2, 4) Kazoo (2), Fiddle (3), Tambourine
(1, 2, 4)
Fritz Richmond : Jug (2, 3), Washtub Bass (3, 4)
Bill Keith: Banjo (1, 2, 3)
Oscar Brand: Vocal (1), Host
Bonnie Dobson: Guitar (1)
Len Chandler: Guitar (1)
1. Opening Theme
2. Rag Mama [Blind Boy Fuller]
3. That's When I Come Back To You [Frank Briggs]
4. Chevrolet [Ed & Ronnie Young]
収録: Ontario College Of Art, Ontario, Canada, Feb 22, 1966
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収録から50年以上経ったこの動画を観ることができて、とても幸せです(2019年執筆)。
カナダのシンガー・ソングライター、作家のオスカー・ブランド (1920-2016) が司会を務めたTV番組「Let's Sing Out」は、1963年から1967年まで放送され、サイモン・アンド・ガーファンクル、エリック・アンダーセン、トム・ラッシュ、フィル・オックス等に加えて、特に地元カナダ出身のゴードン・ライトフットやジョニ・ミッチェルが無名時代に出演したことで歴史的な意義がある。特にジョニについては、2017年に演奏シーンを集めた動画DVDが発売され、そこには初期のジョニ・アンダーソン名義で出演しているものもあり、未発表曲満載の逸品になっている。
本画像は撮影に係る資料の表示とカチンコのシーンから始まるので、エアーチェックではなく、放送局で保存されていたマスターテープからで、かつ収録日・場所がはっきりわかるものになっている。白黒画面で劣化のためか少しぼやけた感じであるが、1966年ということで、ハーモニカのメル・ライマンが抜けた後、バイオリンのリチャード・グリ−ンが加入する前のバンドの模様をじっくり拝めることができる。
他のゲストは、ボニー・ドブソン(カナダのシンガー・ソングライターで、多くのシンガーがカバーした「Morning Dew」という曲で有名。現在も現役で活動中で、2013年にロバート・プラントと共演した映像が残っている)、レン・チャンドラー(メッセージ性の強い曲を歌った黒人フォークシンガー)。最初はオスカーが歌う番組のテーマ曲で、ゲストも一緒に演奏・歌っているが、ジムのバンドの連中は軽く合わせている感じ。オスカーの照会の後に始まる 2.「Rag
Mama」は、リズムが跳ねててバンドの演奏力の高さが際立っている。マリアは当時の写真によくあるスカーフを被った姿で、右手でタンブリンを叩きながら神妙な表情でカズーを吹き、間奏ではソロを披露している。曲の後半部分のブレイクで、スタジオ録音「Jag
Band Music」1965 E3では男性二人が合いの手を入れていたが、ここではマリアとジェフが担当している。3.「That's When
I Come Back To You」では、マリアのフィドル演奏を観ることができ、本当に貴重。リードを取るマリアに対しジェフが掛け合いで応じ、オーディエンスがどっと笑う。ジェフはクラリネットを演奏しているが、映像では木管でなく金管に見えるのが不思議。何か異なる種類の楽器かもしれない。ここでも曲の途中で一瞬だけ急速調になったり、しっかりした技術に支えられた遊び心が鮮やか。
続いてボニー、レン、オスカーが各1曲歌い、ジェフのリードによる 4.「Chevrolet」が始まる。古いギブソンのギターを使ったスライドギターとマリアのタンブリン、フリッツのワッシュタブ・ベースのみのシンプルな演奏で、「〇〇を買ってやるから××させろ」という口説きに、マリアが掛け合いで応じる。ここでもユーモラスな内容に聴衆が沸いている。その後はボニーとレンが1曲づつ歌うが、特にウッドベースが加わった後者ではステージ上のマリアによるタンブリンの音がはっきり聞こえる。なお、私が観た映像はレンの演奏が終わったところまでで、通常のテレビ番組にあるエンディング・クレジットの部分はなかった。
当時のジム・クウェスキン・ジャグ・バンドの生き生きとした演奏シーンを捉えたお宝映像!
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Newport Folk Festival 1966 映像 |
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Jim Kweskin : Lead Vocal , Guitar
Geoff Muldaur : Washboard
Maria Muldaur : Vocal, Kazoo
Fritz Richmond : Wash-Tub Bass
Bill Keith: Banjo
1. Blues My Naughty Sweetie Gived To Me [Swanstone, Carvon, Morgan]
Newport Folk Festival, Festivall Field, Newport RI, July 24, 1966
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1966年のニューポート・フォーク・フェスティバルのジム・クウェスキン・ジャグ・バンドの映像。ここではメル・ライマン脱退後の5人による演奏。白黒映像で、マリアは花柄のワンピースを着て、頭をスカーフで覆っている。
1.「Blues My Naughty Sweetie Gived To Me」は、1965年のアルバム「Jug Band Music」E3からのレパートリーで、冒頭からマリアのカズーが活躍する。途中から彼女の姿が画面いっぱいのアップになり、彼女の表情をたっぷり堪能できる。それにしても間奏での彼女のカズー・ソロは圧巻で、ジャス・プレイヤーがとるソロプレイに劣らない出来。
マリアのカズー・プレイが楽しめる逸品。
[2024年2月作成]
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Live From Greenwich Village 1967 or 1968 映像 |
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Jim Kweskin : Lead Vocal (1), Guitar
Geoff Muldaur : Lead Vocal (3), Mandolin (2), Guitar (1,3)
Maria Muldaur : Lead Vocal (2), Tambourine (3)
Fritz Richmond : Jug (2), Washtub Bass (1,3)
Richard Greene : Violin
Bill Keith: Banjo
1. If You're A Viper [R. Howard, H. Malcolm, H. Moren]
2. I Ain't Gonna Marry [Sarah Martin]
3. Downtown Blues [Frank Stokes, Dan Sane]
注)1.はマリア非参加
Live at Bitter End, Greewich Village, New York, circa 1967〜1968
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ジム・クウェスキン・ジャグ・バンド在籍当時のマリアの姿が見られる貴重な映像。ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジにあり、現在に至るまで元気に営業を続けているライブハウス、ビターエンドでのライブ(背景のレンガ造りの壁がステージの特色)を特集したテレビ番組で、リチャード・グリーン加入後なので、収録時期は1967〜1968年。バンド紹介の際にナレーターが、「マリアはその後ソロ歌手として有名になった」と述べており、その事から番組の制作・放送は、撮影後しばらく経った1970年代以降と思われる。まずジム・クウェスキンが「If
You're A Viper」を歌うが、そこにはマリアは参加していない。バンドのグルーブ感、リチャード・グリーンのバイオリンソロが聴きもので、フリッツ・リッチモンドによるウォッシュタブ・ベースの演奏が視覚的に面白い。曲が終わった後に彼女がステージに登場するが、ここでのマリアは直毛の髪を三つ編みにして、昔のハリウッド西部劇に出てくるインディアンの娘のよう。ステージ用の派手な色合いのワンピースを着ている。当時の流行で、下はかなり短めのミニスカートだ。ここでのマリアは本当に若々しく、生き生きしている。彼女は、1967年のアルバム「Garden
Of Joy」に入っていた 2.「I Ain't Gonna Marry」でリードボーカルを取る。ちなみにボブ・ディランの映像作品「No Direction
Home」E127 でジャグバンドについて語るシーンがあり、そこではマリアのインタビューと一緒にこの映像(一部分のみで、何故か白黒)が出てくる。ジェフ・マルダーが歌う
3.「Downtown Blues」では、彼女はその横で踊りながらタンバリンを叩く。途中カメラが踊る彼女の足をクローズアップするので、裸足であることがわかる。身体をくねらせながら踊るので、ジャグバンドの演奏としては少し異様な感があるが、彼女のセックスアピールがバンドの視覚的な売り物になっていたことがよくわかるシーンだ。
番組自体は、いろんなアーティストの映像からなるオムニバスで、若き日のリンダ・ロンシュタット(洗練される前の素朴な表情。プクッとしていて愛らしい)とストーン・ポニー(アンドリュー・ゴールドが在籍)、ソロデビュー前のカーリー・サイモンが歌うサイモン・シスターズ(お姉さんのルーシーとのデュオ)、美しいミリアム・マケバが特に興味深かった。
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Wesleyan University, Middletown, Connecticut 1972 音源 |
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Maria Muldaur : Vocal, Acoustic Guitar (1,2,3,4,5,7), Tambourine (6)
David Nichtern : Electric Guitar
Freebo : Bass
1. Richland Woman Blues [Mississippi John Hurt]
2. Lover Man (Oh Where Can You Be) [Jimmy Davis, Jimmy Sherman, Roger (Ram) Ramirez]
3. My Blues [Maria Muldaur]
4. When I Was A Cowboy [H. Ledbetter]
5. The Day Is Past And Gone [Traditional]
6. Nobody Fault But Mine [Blind Willie Johnson]
7. The Rain Don't Fall On Me [Blind Willie Johnson]
Recorded at Wesleyan University, Middletoen, Connecticut, December 1, 1972
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ミドルタウンはコネチカット州都ハートフォードの南、ニューヘブンの北東にある街で、同地にあるウェズリアン大学でのコンサートのサウンドボード録音。エール大学の1日前ということで、メンバー紹介などの資料はないが、同じメンバーによる、ほぼ同内容のセットだったものと思われる。曲数が3曲少ないが、録音後の編集でカットされたのだろう。素晴らしい音質のサウンドボード録音で、マリアのボーカルとギターがセンター、デビッドのエレキが右、フリーボのベースが左に位置されている。
演奏内容は同じなので、詳細はエール大学の記事を参照してほしい。当時のマリアの愛らしい声が最高で、本稿執筆時の2023年に彼女の現在の歌声を耳にした後で本音源を聴くと、彼女の発言
「あの頃の私の声はフルートだったけど、今はサックスなのよ!」という言葉を思い出す。50年の時を経て熟成し深みを増した声の凄さをまざまざと感じるのだ。容姿もヴィンテージになったけどね!
最後の曲のみエール大学と異なっていて、ブラインド・ウィリー・ジョンソンの 7.「The Rain Don't Fall On Me」をオーディエンスの手拍子と一緒に歌う。この歌は後の1972年にハッピー・トラウム率いる「Mud
Acres」 E17で、「Oh, The Rain」というタイトルで正式録音されている。
ソロ活動開始時の貴重な演奏を素晴らしい音質で楽しめる。
[2023年12月作成]
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Yale University, New Haven, Connecticut 1972 音源 |
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Maria Muldaur : Vocal (1-20), Acoustic Guitar (1,2,3,4,5,6,11,12,13,14,15,16),
Tambourine(9,19), Fiddle (10,20), Harmony Vocal (21, 22,23)
Bonnie Raitt : Vocal (21,22,23) Acoustic Guitar (21,22,23),
David Nichtern : Electric Guitar (1-6,8,9,11-16,18,19,22,23), Acoustic
Guitar (7,10,17,20), Back Vocal (9,19)
Freebo : Bass
Lou Terriciano : Piano (15,16,17,19,20,21,22,23)
Unknown : Flute (22,23)
Unknown : Harmonica
[Early Show]
1. Me And My Chauffeur Blues [Memphis Minnie]
2. Richland Woman Blues [Mississippi John Hurt]
3. Earl's Crab Shack [Phil Marsh, Brian Vorhees]
4. Lover Man (Oh Where Can You Be) [Jimmy Davis, Jimmy Sherman, Roger (Ram) Ramirez]
5. My Blues [Maria Muldaur]
6. When I Was A Cowboy [H. Ledbetter]
7. I Never Did Sing You A Love Song [David Nichtern]
8. The Day Is Past And Gone [Traditional]
9. Nobody Fault But Mine [Blind Willie Johnson]
10. Honey Babe Blues [Clarence Ashley]
[Late Show]
11. Me And My Chauffeur Blues [Memphis Minnie]
12. Richland Woman Blues [Mississippi John Hurt]
13. Earl's Crab Shack [Phil Marsh, Brian Vorhees]
14. Lover Man (Oh Where Can You Be) [Jimmy Davis, Jimmy Sherman, Roger (Ram) Ramirez]
15. My Blues [Maria Muldaur]
16. When I Was A Cowboy [H. Ledbetter]
17. I Never Did Sing You A Love Song [David Nichtern]
18. The Day Is Past And Gone [Traditional]
19. Nobody Fault But Mine [Blind Willie Johnson]
20. Honey Babe Blues [Clarence Ashley]
[From The Late Show Of Bonnie Raitt]
21. Do Right Woman, Do Right Man [Chip Moman, Dan Penn]
22. Baby What You Want Me To Do [Jimmy Reed]
23. I Know [Barbra George]
Recorded at Sprague Hall, Yale University, New Haven, Connecticut, December
2, 1972
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ジェフと別れて自分の道を歩み始めたマリアの、ファーストアルバム製作前の録音と思われる貴重な音源。ファーストアルバムは、「オールドタイム・レイディ」というキャッチフレーズのとおり、プロデュースの過程で作り込まれたイメージで、この音源でのマリアはそういう作為的な雰囲気が全くない、当時の彼女ありのままの姿が出ている。ブルースとトラディショナルを中心としたレパートリーで、音楽への素朴で純粋な取り組み姿勢が素直に出ているのが微笑ましい。このコンサートはボニー・レイットの前座というが、彼女の活動拠点だったボストンやウッドストックの近くとはいえ、ソロアルバムも出していないアーティストに対し、これだけの拍手と声援が飛ぶのはスゴイ事だと思う。曲間の彼女の語りは可愛らしく、魅力に溢れていて、当時の彼女に対する呼称「Hippie
Love Goddess」を偲ばせるものだ。ニュー・ヘブンはニューヨークから電車で1時間30分〜2時間位の所にある町で、全米屈指の名門エール大学がある所。コンサートは大学の構内にあるホールで行われた。
以下の説明は、レイトショーの内容に基づき行います。
レイトショーということで開演時間が遅かったらしく、「今何時?」というせりふから始まる。1970年のジェフ・アンド・マリアのアルバム「Pottery
Pie」 E12に収録されていた 11.「Me And My Chauffeur Blues」は、女性ブルース・シンガー、メンフィス・ミニーによるセクシーなダブルミーニングの歌だ。当時一緒に演奏し始めて間もないデビッド・ニクターンのギター伴奏、ボニー・レイットのバックで売り出し中だったフリーボのフレットレスベースをバックにした演奏。本音源は、彼女がギターを弾きながら歌っていることが面白く、緩めのリズムがリラックスした雰囲気を生み出している。12.
「Richland Woman Blues」およびミシシッピー・ジョン・ハートについてはジム・クウェスキン・ジャグバンドのE5を参照のこと。マリアの歌声は線が細く不安定なんだけど、可憐さ、そして歌心というか表現力で天性の才能を感じさせる。フリーボのベース、デビッド・ニクターンのギターが巧みで、特に間奏のギターソロでは聴衆から大きな拍手が起きたため、マリアが歌いだしを間違えるハプニングもある。「50年代に戻りましょう!」と言って始まる
13.「Earl's Crab Shack」は 、1975年のハッピー・アンド・アーティー・トラウムのアルバム「Hard Times In The
Country」に入っていた曲(そこにはマリアは非参加)で未発表曲。4ビートのジャズ調の歌で、マリアはスキャット・ボーカルを聴かせる。マリアの紹介によると、「Crab
Shack」は街のはずれにある居酒屋のことだそうで、全米各地に同名のシーフード・レストランがある。愛唱歌 14.「Lover Man」は、一流のジャズ歌手に比べるとテクニックや歌唱力は足元にも及ばないけど、彼女の歌には人の心を打つ何かがあると思う。
ここでピアニストのルウ・テリシアーノが紹介されて、演奏に加わる。ボニー(レイット)のレコードを聴いて彼の事を知ったという。彼はボニーの名作「Give
It Up」(1972年 当時綺麗なパープルカラーのジャケットと写真に魅せられて買った思い出があるアルバム)に参加していたが、その後は目立った活動記録を残していない。15.「My
Blues」は珍しい彼女の自作曲(未発表)で、「Kitchen Table Moan」と紹介されたブルース。気だるい感じの演奏で、ピアノソロが生きている。16.「When
I Was A Cowboy」はレッドベリーの曲で、ジム・クウェスキン・ジャグバンドの「Garden Of Joy」E6で演奏していた曲。マリアの少しラリったような声がエキセントリックであるが、それなりに魅力的。17.「I
Never Did Sing You A Love Song」は、マリアのソロデビュー作に収めれていたデビッド・ニクターン作のバラードで、素朴な演奏・歌唱が印象的。18.「The
Day Is Past And Gone」は、ゴスペルソングで、マリアはアカペラで歌う。この曲は後にアレサ・フランクリンがゴスペル音楽特集のアルバムで録音していた。19.「Nobody
Fault But Mine」は、1980年の「Gospel Nights」M7に収録されていた曲で、ここではR&B風の演奏がイカシテいる。ここでバックボーカルの男性の声が聞こえるが、おそらくデビッド・ニクターンだろう(あるいはフリーボかもしれない)。ここで聴けるマリアのタンブリンは、ドライブがかっかていて悪くない。アンコールの拍手がしばらくの間続き、マリアが再登場。1974年の
「Waitress In A Donuts Shop」M3 に収められた20.「Honey Babe Blues」を演奏する。この曲はマリアのフィドルの先生クラレンス・アシュレイ(ドック・ワトソンの親戚)の曲で、彼女のヘタウマなフィドルプレイを存分に楽しむことができる。観客の拍手・歓声の大きさが印象的なエンディングだ。
彼女が一人前のソロアーティストとして華々しいデビューを飾る前の、揺籃期の姿を捉えた貴重な歴史的音源。
[2014年8月追記]
本コンサートのアーリーショウを聴くことができたので、上記一部変更のうえ、以下の通り追記します。
アーリーショウは、1.「Me And My Chauffeur Blues」を始める前に「もっと明るくして。皆を見たいから」というマリアのアナウンスから始まる。ふたつのセットの曲目・曲順は全く同じで、デビッド・ニクターンのギターのオブリガート・間奏ソロが違っている他、レイトショーでのピアニストのゲスト参加が大きな相違点となっている。2.「Richland
Woman Blues」では、レイトショーとのおけるギターソロや、ボーカルのアドリブの違いを楽しみましょう。3.「Earl's Crab Shack」は、マリアの不安定ではあるが魅力たっぷりの声の醍醐味を十分に味わえる。ギターソロはレイトショーのほうが出来がいいみたい。
4.「Lover Man」は緊張のせいか、比較するとボーカルが硬めのような気がする。レイトショーではここからルウ・テリシアーノのピアノが加わるが、アーリーショーは3人での演奏が淡々と続く。5.「My
Blues」はイントロでマリアのギターが少しとちっているが、デビッドのギターが頑張っている。7.「I Never Did Sing You A
Love Song」はデビッドのアコースティック・ギターのみの伴奏。9.「Nobody Fault But Mine」のピアノが無い分、かなり雰囲気が異なった演奏になっている。10.「Honey
Babe Blues」も、マリアが歌っている間はフィドルが入らないので、スカスカした感じのサウンドなんだけど、それなりに味がある。曲が終わった後に、「ボニー・レイットのステージまで5分休憩します」というアナウンスが入る。
珍しいマリアの初期の音源で、しかも異なるセットが聴けたということは、誠に喜ばしいですね!
[2022年1月追記]
マリアはジェフとのコンビを解消した頃で、大評判となった最初のソロアルバムは1973年発表ということで、この頃はソロアーティストとしては知名度が低く、ボニー・レイットの前座としての出演だった。またレパートリーも多くなかったようだ。一方ボニーは1971年に「Bonnie
Raitt」、1972年に「Give It Up」を発売しており、地元ではそこそこの知名度と人気があったと思われる。2回のステージでの重複曲が少なく、曲間の語りも元気一杯で、やる気満々といった感じだ。そのセカンドセットの最後の3曲に、マリアがハーモニー・ボーカルで参加している。
21.「Do Right Woman, Do Right Man」はアレサ・フランクリン(1942〜2018)が1967年「I Never Loved
A Man」(全米9位)のB面として発表し、その後名曲として評価が定着した曲。マリアのハーモニーは、ほぼ即興でやっているようだが、いい感じだ。ボニーのボーカルと間奏のアコギソロがカッコイイ。22.「Baby
What You Want Me To Do」は、ミシシッピー州生まれのブルースマン、ジミー・リード (1925-1976) 1959年のヒット曲(全米37位)。少し気だるい感じのオリジナルも良いが、エルヴィス・プレスリー「'68
Comeback Special」の切れ味抜群のプレイも最高。ここでのマリアのハーモニー・ボーカルは聴きもの。間奏ではデビッドのエレキギターの他、演奏者不明のフルートとハーモニカのソロが入る。大歓声の中演奏される
23.「I Know」は、ボニー2枚目のアルバム「Give It Up」に入っていた曲で、ルイジアナ州生まれのバーバラ・ジョージ (1942-2006)
1961年の作品(全米3位)。間奏ではボニーがスライドギターで頑張っている。ソロデビュー当時の二人の共演を聴けるなんて最高ですね!
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The Tonight Show Starring Johnny Carson 1974 TV映像 |
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Maria Muldaur : Vocal, Tambourine
David Nichtern : Electric Guitar, Back Vocal
Jeff Gutcheon : Piano
John Kahn : Bass
Bobby Mason : Drums, Back Vocal
Unknown : Brass Section
1. Midnight At The Oasis [David Nichtern]
2. The Work Song [Kate McGarrigle]
放送: January 23, 1974 NBC-TV's West Coast Studios in Burbank, California
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ジョニー・カーソン(1925-2005)は、司会者、作家、俳優、コメディアン、音楽家など多くの肩書があるが、彼がホストを務めて1962年から30年間続いたトークショウ「The
Tonight Show Starring Johnny Carson」は国民的な人気を博した番組だった。番組は当初ニューヨークで撮影されたが、1972年以降はカリフォリニアのバーバンクで行われた。マリアはデビュー作「Maria
Muldaur」が発売されて間もない1月23日に出演した。冒頭でジョニーは、「新人のマリア・マルダーで、これが初めてのテレビ出演になります。彼女は明日から日曜日までトルバドゥール(ロスアンゼンルスのナイトクラブ)に出演します」と紹介しており、これがソロ・シンガーとしてのマリア初めてのテレビ映像ということになる。
ここではバンド全体を捉えたアップ映像が多く、メンバーの顔がはっきり分かる。間奏のソロが魅力的なデビッド・ニクターン、椅子に座りながらベースを弾くジョン・カーン(ということは彼は腰でも痛めていたのかな?ということは同年の「Midnight
Special」におけるベース奏者も彼ということか?)、ピアノのジェフ・ガッチョオン、ドラムスのボビーメイソンといった初期のバックバンドの顔ぶれだ。マリアを始め緊張気味のパフォーマンスであるが、これから売り出そうとする気迫と新鮮さんに溢れている。1.「Midnight
At The Oasis」のビルボード・チャートインは2月23日(その後6位まで上昇)なので、本放送時には無名だったということになる。マリアは綺麗なドレスを着て、長い髪に花を挿してタンバリンを叩きながら歌う。2.「The
Work Song」は、ジェフのピアノが頑張り、姿は見えないがブラス・セクションが演奏に加わる。歌いながら要所で手を叩く、マリアの仕草がとてもカッコイイ。
2015年9月、インターネットで観た本映像は、ビデオの再生スピードに問題があるのが明らかで、演奏が速くなってしまっているのが残念。
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Ebbets Field, Denver, CO 1974 ラジオ音源 |
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Maria Muldaur : Vocal, Tambourine, Fiddle (4)
David Nichtern : Electric Guitar, Back Vocal
Jeff Gutcheon : Piano
John Kahn : Bass
Bobby Mason : Drums
1. Me And My Chauffeur Blues [Memphis Minnie]
2. Any Old Time [Jimmie Rogers]
3. Midnight At The Oasis [David Nichtern]
4. My Tennessee Mountain Home [Dolly Parton]
5. Sweet Potatoes [Jeff Gutcheon]
6. Three Dollar Bill [Mac Rebennack]
7. I Never Did Sing You A Love Song [David Nichtern]
8. Walkin' One And Only [Dan Hicks]
9. The Work Song [Kate McGarrigle]
10. Earl's Crab Shack [Phil Marsh, Brian Vorhees]
11. Gerogia On My Mind [Carmichael, Garrell]
12. I'm A Woman [Jerry Leiber, Mike Stoller]
Recorded at Denvor, Colorado, January 30, 1974
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初期のバンドによるラジオ放送音源。音はきれいなんだけど、個々の楽器の音圧が薄いため、音の厚みに欠ける難があるが、貴重な音源であることに変わりはない。エベッツ・フィールドは、コロラド州デンバーの中心地にあった小さな酒場。1973年から4年間にわたり、当地で行われた様々なアーティストによるライブは、地元のFM放送局KCUVによって放送された。
司会者のアナウンスに続き、1.「Me And My Chauffeur Blues」が始まる。マリアは、随所にシャウトとコブシが入り、少し気負いがあるかな?一方バンドはリラックスした雰囲気で、間奏のギターソロもゆったり弾いている。2.「Any
Old Time」では、レコードではライ・クーダーがギターで弾いていたイントロの独奏を、ジェフ・ガッチョンのピアノが担当している。3.「Midnight
At The Oasis」は、デビッド・ニクターンのギターソロが音源毎に毎回異なるので、聴き比べの楽しさがある。4. 「My Tennessee
Mountain Home」で、マリアは「コーラスは一緒に歌いましょう!」とアナウンス。イントロでは彼女のフィドルプレイが楽しめる。コーラス部分のバックボーカルは、デビッドだろう。間奏は、デビッドのギターとジェフのピアノが担当するが、どちらもこの手のカントリー音楽が得意そうだ。ここでギターまたは機材に不調が発生したようで、マリアは「こういう時に演奏する曲」と紹介して、ジェフ・ガッチョンのピアノのみをバックに彼の曲
5.「Sweet Potatoes」を演奏する。この曲は、ジェフ・アンド・マリアの2枚目のアルバムのタイトル曲だ。ここではピアノの音が小さすぎるのが残念。6.「Three
Dollar Bill」はDr. ジョンの曲。
デビッド・ニクターン作曲による 7.「I Never Did Sing You A Love Song」は、洗練されたカントリー・ソングといった感じで、いつ聴いても良い曲ですな。デビッドは、ここではアコースティック・ギターを弾いている。8.「Walkin'
One And Only」は、テンポを少し落として演奏、ジョン・カーンのベースが聴きもの。9.「The Work Song」は、ギターやピアノのプレイがレコードのものとかなり異なる。1950年代のシーフード・レストランにおけるジャズの演奏と紹介された10.
「Earl's Crab Shack」は、未発表の初期のレパートリーで、 詳細は1972年のエール大学の音源を参照のこと。ジャズ風の4ビートのリズムに乗った間奏ソロは前半がピアノ、後半がギターで、マリアのスキャット・ボーカルも入る。エンディングのバックボーカルは男性2人からなるが、デビット以外のもう一人は誰かな?ここでオーディエンスからリクエストが出て、マリアは「普段はやらないんだけど.....」と言い、伴奏陣による簡単な音合わせの後、11.「Gerogia
On My Mind」を演奏する。情感がこもったボーカル、間奏のギター・ピアノのソロ等、よい出来だと思う。最後の曲は 12.「I'm A Woman」。
バックバンドの音をしっかり出すためには、ボリュームを大きくする必要があり、その分マリアのボーカルが強くなるため、ヘッドフォーンによるリスニングには適さないが、しっかりしたステレオ装置で聴くと良い音源。
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Midnight Special 1974 TV映像 |
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Maria Muldaur : Vocal, Tambourine
David Nichtern : Electric Guitar
Unknown : Piano
Unknown : Bass
Unknown : Drums
1. Midnight At The Oasis [David Nichtern]
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ミッドナイト・スペシャルは、バート・シュガーマンのプロデュースにより、1972年から 1981年まで製作されNBCで放送された番組で、プロモーション・フィルムや、口パクによる撮影が多かった当時の音楽番組のなかで、一流アーティストのスタジオでの生演奏を重視した製作姿勢が大いに評価された。マリアは1974年に登場し、ヒット曲の1.「Midnight
At The Oasis」を演奏している。ここでは彼女の姿のクローズアップがほとんどを占め、バックバンドは間奏でギターソロをとるデビッド・ニクターンのみしか判別できない。映像の最初と最後でバンドの遠景が映るが、ベーシストが椅子に座って弾いているのが異様に見える。マリアは1973年の映像よりも落ち着いているように見える。少し太ったかな? 当時の姿が拝める貴重な影像だ。
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Don Kirshuner's Rock Concert 1974 TV映像 |
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Maria Muldaur : Vocal, Tambourine
David Nichtern : Electric Guitar
Jeff Gutcheon : Piano
John Kahn : Bass
Bobby Mason (Probably) : Drums
1. Midnight At The Oasis [David Nichtern]
2. I'm A Woman [Jerry Leiber, Mike Stoller]
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ドン・カーシュナー(1934-2011)は、キャロル・キング、ニール・セダカ、バリー・マンなどの作曲家を擁したアルドン音楽出版社のボスとして多くのヒット曲を生み出し、「黄金の耳を持つ男」と言われた人だ。後にテレビ製作にも進出し、モンキーズやアーチーズをクリエイトしたことも有名。モンキーズはオーディションにより選ばれたメンバーによるテレビ番組のためのグループで、アーチーズはアニメーションのために作られた架空のグループだった。 その彼がホストとなって、ロック・ミュージシャンのライブを放送する専門番組「In
Concert」が1972年に始まった。それは音楽映像をまとめて放送した番組の草分けであり、後のMTVの先駆者としての役割を果たしたといわれる。
これは、ソロデビュー当時の彼女の姿を楽しむことができる貴重な映像。カールした髪の毛に黄色い花をつけ、シャツを胸元で縛ったへそ出しルックで決めた、あの頃のマリアのセクシーなイメージそのままである。右手に持ったタンバリンを腰に当てながら歌う様の洗練度は、ジム・クエスキンの頃と天と地ほどの違いがあり、当時のウエストコースト音楽シーンの歌姫、ヒッピー・ムーブメントの象徴としての存在感に満ちている。そのしなやかな動き、「Waiteress
In A Donut Shop」M3 のジャケットカバーのような、少しラリったような目つきは、当時のカリスマを余すところなく伝えている。
バックバンドについては正確な資料がないが、当時のライブの記録から以下のとおり推察できる。ギターはデビッド・ニクターンで100% 間違いなし。ベースとピアノは、写真と見比べて、ジョン・カーンとジェフ・ガッチオンだと思う。ドラムスははっきりしないが、当時の資料からファッグス(キャロル・キングと縁が深いダニー・クーチ、チャールズ・ラーキーが在籍したバンド)にいたボビー・メイソンと推定される。1.「Midnight
At The Oasis」は難しい曲なので、作者のデビッド・ニクターンが演奏しているとはいえ、なかなか大変そうだ。間奏のギターソロは、スタジオ録音版のエイモス・ギャレットとは全く異なるアプローチで、エイモスには敵わないが、それなりに面白い出来。2.「I'm
A Woman」でのマリアは、レコードよりもコブシを効かせた歌唱だ。ソロデビュー当時のレコードでのマリアの歌は、比較的大人しかったので、ライブでこんなに躍動的だったとは、当時は想像もできなかった。
当時の映像って他にないのかなあ? 将来良質のものが発掘される事を人生の楽しみとしたいですね!
[2015年9月追記]
1974年1月放送の「Late Show」における司会者ジョニー・カーソンの発言より、本番組の放送年を1973年から1974年に変更しました。
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Pilgrimage Theatre, Hollywood, LA [Great American Music Band] 1974 音源 |
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Maria Muldaur : Vocal (6,8,9,10,11), Tambourine (6,9)
David Nichtern : Vocal (8), Acoustic Guitar
Taj Mahal : Vocal (6,10,11), Wood Bass
David Grissman : Mandolin
Richard Greene: Violin
Jerry Garcia : Banjo(1,2,5,6,7,9)
1. Limehouse Blues [Philip Braham, Douglas Furber]]
2. Dawg's Bull [David Grissman]
3. My Plastic Banana Isn't Stupid [Unknown]
4. Swing '42 [Django Reinhardt]
5. Colored Aristocracy [Traditional]
6. Rolling In My Sweet Baby's Arms [Traditional]
7. Dawg's Rag [David Grissman]
8. I'll Be A Gambler If You Deal The Cards [Unknown]
9. Midnight At The Oasis [David Nichtern]
10. Sweet Georgia Brown [Ben Bernie, Maceo Oinkard, Kenneth Casey]
11. Will The Circle Be Unbroken [A. P. Carter]
Recorded at Pilgrimage Theater, Hollywood LA, April 20, 1974
注: 1,2,3,4,5.7は、マリア不参加
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グレイト・アメリカン・ミュージック・バンドは、デビッド・グリスマンがリチャード・グリーンと結成したバンド。その他のメンバーは、ギターが「Midnight
At The Oasis」の作者で、マリアのライブやレコードでギターを弾いていたデビッド・ニクターン、ベースがブルースの巨人タージ・マハール、そしてゲストでジェリー・ガルシアがバンジョーを弾くという、スーパーバンドだったが、短期間で解散し、残念ながら公式アルバムを残さなかった。現在出回っているコンサート音源のなかで、マリアがゲストで歌っているものが本音源だ。
コンサートは、企画者のマッケイブス・ギターショップのスタッフによる紹介から始まる。事前に十分なリハーサルをしなかったためか、音響セッティングに問題があり、ミュージシャン達はサウンド・エンジニアに対し、マイクの音量調整の指示を頻繁に行っている。また曲間におけるメンバーの語りは冗談混じりのくだけたもので、内輪のリラックスした雰囲気に満ちている。レコード製作や売り上げを気にせず、自分達が好きな音楽をやっているという自負からくるものだろう。内容的には、ブルーグラスとジャンゴ・ライハンルト等のスウィング・ジャズを融合させたもので、当時としては画期的な新しい音楽スタイルだった。そしてその成果は、後にデビッド・グリスマン・クインテットによるドウグ音楽に結実する。本音源では、この先進的音楽と、伝統的なブルーグラスやブルースが並存しており、大変面白い内容だ。
スウィング・ジャズのスタンダード 1.「Limehouse Blues」は、バイオリンとマンドリンがメインの演奏で、バンジョーもソロをとるが、デビッド・ニクターンのベースランを効かせたリズムギターが聴きもの。この人は、トニー・ライスのような鮮やかなソロプレイは出来ないが、ブルーグラスとジャンゴの音楽を融合させたスウィンギーかつグルーヴィーなリズムプレイはスゴイ! 2.「Dawg's
Bull」は、後1979年発表のデビッド・グリスマンのアルバム「Hot Dawg」に収録された彼のオリジナルで、その5年も前から、ステージでこの曲を演奏していたということだ。この時期はグリスマンにとって自己の音楽スタイルを確立する実験期、揺籃期だったといえよう。3.「My
Plastic Banana Isn't Stupid」はクレイジーなタイトルに似合わず、まともなフィドル・テューンで、ここではデビッドのギターソロも聴くことができる。
4.「Swing '42」は、ジャンゴ・ラインハルトが1941年9月11日に吹き込んだ曲。ここでは、リチャード・グリーンのバイオリンソロが自由奔放なプレイで物凄い。5.「Colored
Aristocracy」はオーセンティクなフィドル・テューンで、バイオリンはもちろん、ガルシアのバンジョーソロも楽しめる。
ここでマリアが登場。タージ・マハールとデュエットで 6.「Rolling In My Sweet Baby's Arms」を歌う。二人のボーカルのコンビネーションは最高!
ガルシアのバンジョーソロには、ビル・キースのようなメロディクな味わいがある。7.「Dawg's Rag」はインストルメンタルで、後に1977年のアルバム「David
Grissman Quintet」に収録された。8.「I'll Be A Gambler If You Deal The Cards」は、(おそらく)デビッド・ニクターンがリードボーカルを担当し、コーラス部分でマリアがハーモニーを付けるユーモラスなブルーグラス曲。次にデビッド作でマリアが有名になった曲と紹介される 9.「Midnight
At The Oasis」は、ストリング・バンドまたはブルーグラスバンドによるアレンジが意外かつ新鮮。各楽器の名手達によるプレイは素晴らしく、特に、間奏におけるグリスマンのマンドリンソロ、縦横無尽に駆け回るバイオリンのオブリガードが最高! マリアは途中からタンバリンを叩く。ジャムと称して、マリアが今まで歌ったことがないという
10. 「Sweet Georgia Brown」は、まずタージがユーモラスなスキャットボーカルを聴かせ、マリアも乗り乗りでスキャットを披露する。最後は二人が
11.「Will The Circle Be Unbroken」を歌う。
演奏面ではリチャード・グリーンのバイオリン演奏とデビッド・グリスマンのマンドリンが圧倒的で、それにジェリー・ガルシアのセンス良いバンジョーが絡み、それらのプレイをデビッド・ニクターンのアコースティックギターとタージ・マハールのベースがしっかり支えているといった感じだ。こんなに素晴らしいバンドの音源が公式発表されていないなんて、本当にもったいない。多くの人に聴いて欲しい音源。
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Auditorium Theatre, Chicago 1974 ラジオ音源 |
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Maria Muldaur : Vocal, Tambourine
David Nichtern : Electric Guitar
Ellen Kearney : Guitar
Jeff Gutcheon : Piano
John Kahn : Bass
Earl Palmer : Drums
1. Don't You Feel My Leg [L. Barker, J. M.Williams, D. Barker]
2. Nobody Fault But Mine [Blind Willie Johnson]
3. Lover Man (Oh Where Can You Be) [Davis, Sherman, Ramirez]
4. I'm A Woman [Jerry Leiber, Mike Stoller]
Recorded at Auditorium Theatre, Chicago, April 26, 1974
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ロックのライブを放送したラジオ番組「King Biscuit Flower Hour」で1974年7月14日に放送されたが、ステファン・スティルスのライブと二本立てだったので、演奏時間約16分という少なめの音源になっている。デビッド・ニクターンがバンマスを勤めるバンドは、ドラムスが初期のボビー・メイソンからアール・パーマーに代わり、後のバンドでギターとバックコーラスを担当するエレン・カーネイがギターで加わっており(資料には彼女の名前があるが、実際のところ彼女のギターの音はほとんど聞こえない)、この音源が2003年に公式発売されたコンサート音源「Classic
Live !」M2 に収められた1973年と1975年のふたつの音源のちょうど中間に位置することが分かる。
司会者の紹介のあとに始まる 1.「Don't You Feel My Leg」を聴いていると、当日のマリアは気負っていたのか(或いは風邪をひいていたのか?)、いつもよりもコブシが効いていて当時としてはハスキーな声。少し無理しているなという感じでもある。2.
「Nobody Fault But Mine」は地元シカゴのグループ、ステイプル・シンガースのスピリチュアルと紹介される。3.「Lover Man」が紹介されるとオーディエンスから拍手が起こる。間奏におけるデビッド・ニクターンのギターソロはM2に収録された1973年の同曲の演奏とは全く異なる内容のもので、聴き比べの面白さがある。4.
「I'm A Woman」は、アレンジがストレートなR&B風で、マリアのボーカルが気持ち良くシャウトしている。間奏のソロはデビッド・ニクターンとジェフ・ガッチオン。
4曲と音源としては少ないが、M2とともにソロデビュー当時の雰囲気が味わえる。
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Hollywood Bowl, Los Angeles 1974 |
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Maria Muldaur : Vocal, Back Vocal (6), Fiddle (5), Tambourine
Paul Butterfield : Vocal (6), Harmonica (5,6,7,8
Amos Garrett : Electric Guitar
Stephen Bruton : Electric Guitar, Back Vocal
Jeff Gutcheon : Piano
John Kahn : Bass
Billy Mundi : Drums
1. Midnight At The Oasis [David Nichtern]
2. Any Old Time [Jimmie Rogers]
3. Walkin' One And Only [Dan Hicks]
4. Lover Man (Oh Where Can You Be) [Davis, Sherman, Ramirez]
5. My Tennessee Mountain Home [Dolly Parton]
6. Before You Accuse Me [Ellas McDaniel a.k.a. Bo Diddley]
7. Me And My Chauffeur Blues [Memphis Minnie]
8. I Need You (仮題) [Unknown]
9. Brickyard Blues [Allen Toussaint]
10. The Work Song [Kate McGarrigle]
11. I'm A Woman [Jerry Leiber, Mike Stoller]
12. Nobody Fault But Mine [Blind Willie Johnson]
Recorded at Hollywood Bowl, Los Angeles July 21, 1974
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ロサンゼルスの野外コンサート会場、ハリウッドボウルにグレイトフル・デッドの前座として出演した際の音源。当日の模様の写真をインターネットで見ることができるが、背景に写っているのは、当時グレイトフル・デッドが使用していたウォール・オブ・サウンドというPAシステムだ。良い音は小さなスピーカーを多数設置することで得られるという理想に基づくもので、積み上げたスピーカーによる巨大な壁が凄い。採算を度外視したものだったので、結局は長続きしなかった。ここでそのことに言及する理由は、マリア2枚目のアルバム「Waitress
In A Donut Shop」の裏面にある写真の一部は、ここで撮影したもという証拠になるからだ。黄色いシャツを着たマリアが歌う側で、ポール・バターフィールドがハーモニカを吹く写真の背景には、スピーカーの一部が写っている。また上半身裸のジェフ・ガッチョンのポートレイトもここでの撮影であることがわかった。そしてマリアとジョン・カーンが一緒の写真も背景にスピーカーが見えるが、マリアのドレスが異なるので、本コンサートと同時期であるが、別の場所での撮影と思われる。アルバム購入後35年目にして判った事実で、面白いもんですなあ。
音源はかなりの時間をかけたセッティングから始まる。プレイヤーは準備OKのようなんだけど、PAの調整のために待たされているのかな? しびれを切らしたエイモスが、戯れに「Brazil」(ジェフ・アンド・マリアのアルバム「Pottery
Pie」 E12参照)のイントロを弾いたりする。アナウンスに続き、いきなり代表曲の1.「Midnight At The Oasis」が始まる。この時期でのエイモスのリードギターによる本曲のライブは珍しいので、お宝音源と言えるものだ。肝心のギターソロはスタジオ録音での演奏構成をベースにしたものではあるが、かなり自由な崩しを入れてあり、この人のプレイのオリジナリティーが味わえるものだ。リズムギターはテキサスが本拠地のステファン・ブルートン。彼はクリス・クリストファーソンのバンドで長くギターを弾いた他に、ジェフ・マルダー、ボニー・レイット、ウィリー・ネルソンなどの作品に参加、晩年はT-ボーン・バーネットとの仕事が多かったようだが、2009年5月に60歳で亡くなった。
マリアのボーカルは、大観衆を前に少し緊張気味のせいか、この曲の歌にしては少し硬い感じがする。意外な聴きものは、ジョン・カーンのベースラインかな?
2.「Any Old Time」は、ジェフ・ガッチョンのピアノ独奏をバックに歌が始まり、途中からバンドがフィルインする。エイモスはここではトロンボーンを吹き、間奏ではソロも披露している。ハーモニー・ボーカルをつけるのはステファン。急速調のスウィング・チューン
3.「Walkin' One And Only」では、バンドの演奏力がかなり高度であることが分かる。ドラムスのビリー・マンディは、ジェフ・アンド・マリアのアルバムでバックを担当していた人で、フランク・ザッパ、リンダ・ロンシュタットのストーン・ポニー、ピーター・ローワンのアースオペラ、
ボブ・ディランのセッション等に参加。熊のような巨体から力強いビートを叩き出す人だ。ジョン・カーンの4ビートのベースもグルーブ感に溢れた快演。4.「Lover
Man」 は一転してしっとりした演奏。間奏ではエイモスの必殺ソロを聴くことができる。
ここでマリアがバンドメンバーを紹介し、ゲストのポール・バターフィールドが登場する。5.「My Tennessee Mountain Home」は、ポールのハーモニカとマリアのフィドルの合奏によるイントロから始まるのが、いつものプレイと異なり面白い。次にゲストのポールが、ボ・ディドリーのブルース
6.「Before You Accuse Me」を歌う。間奏での2台のギターによるソロの掛け合いは、大変聴き応えがある。7.「Me And My
Chauffeur Blues」は、2台のギターとハーモニカによる、かなりヘヴィーなサウンドになっていて、スタジオ録音 E12でのエイモスのギタープレイの再現が楽しめる。8.「I
Need You (仮題)」は名前が不明のR&B調曲。 9.「Brickyard Blues」でマリアは、「Play something
sweet, play something merrow」と言って歌い始める。ポールのハーモニカのオブリガードが入るのが新鮮。間奏のギターソロはどっちが弾いているのかな?10.「The
Work Song」ではジェフ・ガッチョンのピアノが活躍する。 11.「I'm A Woman」は、(おそらく)ステファンのギターの独奏から始まり、マリアはタンバリンを叩きながら歌う。アンコールはゴスペルソングの
12.「Nobody Fault But Mine」で、ギタリストの一人がフィンガーピッキングでエレキギターを弾いている。ここでもポールのハーモニカソロがゴキゲン!
演奏的には少し荒っぽい感じもするが、その分、マリアとバンドが思いのまま自由にプレイしていることでもあり、各メンバーの技術の高さの裏返しだと思う。ポール・バターフィールドの参加もあり面白い音源。
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Troubador, Los Angeles 1974 ラジオ音源 |
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Maria Muldaur : Vocal, Tambourine
Mundell Lowe : Guitar
Marty Harris : Piano, Electric Piano
John Williams : Bass
Earl Palmer : Drums
Benny Carter : Alto Sax, Arranger, Conductor
Plas Johnson : Tenor Sax
Sahib Shihab : Balitone Sax
Bud Shank : Flute, Clarinet, Horn
Harry 'Sweets' Edison : Trumpet
Snooky Young : Trumpet
J. J. Johnson : Trombone
1. Squeeze Me [Thomas Waller, Clarence Williams]
2. Any Old Time [Jimmie Rogers]
3. Gee Baby, Ain't I Good To You [Don Redman, Andy Razaf]
4. Sweetheart [Ken Burgan]
5. Doazy [Benny Carter]
6. It Don't Mean A Thing (If It Ain't Got That Swing) [Duke Ellington,
Irving Mills]
7. Lover Man (Oh Where Can You Be) [Davis, Sherman, Ramirez]
8. Walkin' One And Only [Dan Hicks]
9. Don't You Feel My Leg [L. Barker, J. M.Williams, D. Barker]
10. I'm A Woman [Jerry Leiber, Mike Stoller]
11. It Ain't The Meat It's The Motion [Henry Glover, Lois Mann]
注)5.はマリア非参加
Recorded at Troubador, Hollywood Los Angels December 22, 1974
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1974年「Waitress In A Donut Shop」 M3を発売したマリアが、同作中3曲のバックを担当したジャズ・ミュージシャン達と、トルバトゥール(キャロル・キング、ジェイムス・テイラー、エルトン・ジョンなどが、デビュー当時に行ったコンサートで有名なハリウッドのナイトクラブ)で行ったライブ。その模様は当時ロックのライブ放送で人気があったラジオ番組「King
Biscuit Flower Hour」で放送された(放送日1975年2月23日)。アレンジャーと指揮を担当するベニー・カーターが、ロスアンジェルス在住のジャズ仲間と組んだバンドは、伝説的なミュージシャンが多く集まった。スタジオ・セッションマンとしても一流の彼らは、譜面があれば何でも即座に演奏できたはずで、見事な演奏を披露している。さらに本音源はライブアルバム製作のために録音したものではないためか、各人が楽しみながら自由奔放に演奏する気概に満ちている。クリアーな録音は素晴らしく、小さな演奏会場におけるライブの高揚感、エキサイティングな雰囲気が見事に捉えられている。自分がコンサート会場にいるかのような臨場感が最高で、「グルーヴィー」という言葉はこの音源のためにあるようなものだ。
バックバンドの顔ぶれがスゴイ!まずはホーンプレイヤーから紹介しよう。ベニー・カーター (1907-2003)は、1920年代のスウィングから1990代のモダンジャズに至るまで長年に渡り、アルトサックス、アレンジ、指揮で活躍したジャズ界の巨人のひとり。彼がM3の録音およびライブを引き受けた理由は知らないが、聴く限り大変誠実な仕事であると思う。そしてバンド・メンバーは、彼の人脈で集められたもののように思える。個人的にはビリー・ホリデイとの録音が印象深いが、そのサックスの音色からも、しなやかで柔軟な精神が感じられる人だ。プラス・ジョンソン(1931-
)は、ジャズ以外にブルースやR&Bもこなす人で、スタジオ・ミュージシャンとしてはヘンリー・マンシーニの「ピンクパンサーのテーマ」が有名。他にライ・クーダー、キャロル・キング、スティーリー・ダンの作品に参加している。サヒブ・シハブ(1925-1989
名前の由来は1940年代にイスラム教に改宗したため)は、フルートやアルトサックスも演奏するが、バリトンサックスに対する評価が高い。セロニアス・モンク、アート・ブレイキー、デイジー・ガレスピー等とのセッションがある。バド・シャンク
(1926-2009)はマルチ奏者で、特にローリンド・アルメイダ、セルジオ・メンデスなどのブラジル音楽での演奏が名高い、洗練されたスタイルのプレイヤー。ハリー・スウィーツ・エディソン(1915-1999)は、カウントベイシー楽団に長く在籍、フランク・シナトラ、ビリー・ホリデイ、エラ・フィッツジェラルドなどの歌伴が得意。スヌーキー・ヤング(1919-2011)は、カウント・ベイシー、ウェス・モンゴメリーに参加。セッションでは1971年のザ・バンドのライブ「Rock
Of Ages」が有名。J.J. ジョンソン(1924-2001)は、トロンボーンの第一人者で、コールマン・ホーキンス、チャーリー・パーカー、デイジー・ガレスピー、マイルス・デイビスとのセッションの他に、無数のリーダーアルバムを残している。アール・パーマー
(1924-2008)はニューオリンズ一番のドラム奏者と言われ、ファッツ・ドミノ、リトル・リチャード、サム・クックからエラ・フィッツジェラルド、サラ・ヴォーン、デューク・エリントンまで何でもやったという伝説的プレイヤーだ。マリアのアルバム「Sweet
Harmony」1976 M4に参加したほか、一時期は彼女のハウスバンドのメンバーだったこともある。ベースのジョン・ウィリアムスは、ビリー・ホリデイ、ルイ・アームストロング、カウント・ベイシー以外に、ビリー・コブハムやランディー・クロフォードという最近の人とも共演している。マーティー・ハリスは当時は若手だった人で、ダイアナ・ロスのバックを8年間勤めたという。現在も主にクラブなどのライブで活躍中。ギタ−のマンデル・ロウ(1922-2017)は、自己名義のアルバムは少ないが、サイドマンとして評価が高かった人で、ベニー・グッドマン、レッド・ノーボ、クリス・コナー、カーメン・マクレー、サラ・ボーンなどのバックを担当、スタジオワークではディキシーやカントリー音楽もこなし、映画やテレビ音楽の仕事も多い。
コンサートに対する期待感のためか、開演前にもかかわらず会場から熱気のようなものが感じられる。冒頭アナウンスの後に始まる ファッツ・ウォーラーの
1. 「Squeeze Me」で、マリアの声の調子が良いことがわかる。可憐声にしなやかさが加わり、伴奏に乗りスウィングする様は高揚感に満ちていて聴いている者までもハイにさせる魔力がある。2.「Any
Old Time」は、ジミー・ロジャースのオリジナルがディキシー調のホーンをバックに録音されたものなので、ここでのバンドのプレイはばっちり合っている。バド・シャンクのクラリネット、J.J.
ジョンソンのトロンボーンのソロを含め、各人のオブリガード・プレイは自由奔放で活き活きしている。3.「Gee Baby, Ain't I Good
To You」では、ビッグバンド・アレンジが素晴らしい。マンデル・ロウのブルージーな伴奏プレイが聴きもの。本コンサート全編でパワフルかつグルーヴィーなリズムを叩き出すアール・パーマーが凄い。当時マリアのハウスバンドのメンバーだったこともあり、彼が彼女の音楽をしっかり理解しているということは、バンド全体の一体感を高める効果があると思う。「ここで働くウェイトレスの皆さんに捧げます」と言って歌う
4.「Sweetheart」は、素晴らしくスウィンギーでスタジオ録音よりも全然良い出来。ここでマリアがバンドの紹介をするが、プレイヤーに対する深い尊敬の念が感じられ、とても気持ちが良いものだ。次に演奏される急速調のインストメンタル・ナンバー
5. 「Doazy」は、ブルースのコード進行でエレキピアノのソロの後に合奏によるテーマのリフとなる。トロンボーン→フルートとソロが続き、エンディングでのアンサンブルでの演奏は圧巻。ビッグバンドの醍醐味を味わうことができる。エリントンが1931年に作曲し翌年録音した
6.「It Don't Mean A Thing (If It Ain't Got That Swing)」は「スイングがなければ意味がない」という邦題で有名なナンバー。マリアのアルバムには未収録なので、この曲を聴くことができるのは、私が知る限り本音源のみという貴重な曲。どうして未録音なのか不思議なくらいの出来だ。ビリー・ホリデイやジャンゴ・ラインハルトがやっていました、と紹介されるマリアの愛唱曲
7.「Lover Man」は一転してじっくり演奏される。マリアの声とソウルの魅力がフルに発揮されており、心に響くものがある。テンポを上げて演奏される間奏も良く、その後にフィーチャーされるプラス・ジョンソンのテナーサックス・ソロも素晴らしい。ダン・ヒックスの8.「Walkin'
One And Only」はスタジオ録音よりもテンポを落とした演奏だが、バンドのグルーヴ感が凄まじい。煽られたマリアも目が覚めるような歌唱を披露する。ちょっとエッチな歌
9.「Don't You Feel My Leg」は皆が楽しみながらプレイしているのが良くわかる。マリアは、10.「I'm A Woman」ではタンバリンを叩きながら歌っているようだ。ここではよりR&Bに近い感じの伴奏で、間奏ソロでサヒブ・シハブのバリトンサックスによるゴキゲンなソロが楽しめる。「菜食主義者のテーマソングです」という紹介がユーモラスな
11.「It Ain't The Meat It's The Motion」では、左右のチャンネルから交互に聞こえてくるホーンセクションの伴奏が最高。途中でバンドメンバーが「It
Ain't The Meat」と歌い、マリアと掛け合いする楽しい場面もあり、オーディエンスも大いに盛り上がる。この後、本音源ではマリアが「Thank
You !」と叫ぶなか、バンドがエンディングのリフを演奏しながらフェイドアウトする。
マリアの一世一代の名唱、ビッグバンドのライブの素晴らしさを味わうことができる逸品。
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Moore Theatre, Seattle 1974 ラジオ音源 |
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Maria Muldaur : Vocal, Tambourine
Amos Garrett : Electric Guitar, Back Vocal
John Girton : Electric Guitar, Clarinet, Sax, Back Vocal
Ellen Kearney: Acoustic Guitar, Back Vocal
Mike Finnegan : Piano, Organ, Vocal (6), Back Vocal
Michael Moore : Bass
Earl Palmer : Drums
1. Brickyard Blues [Allen Toussaint]
2. Sweet Harmony [William "Smokey" Robinson]
3. Midnight At The Oasis [David Nichtern]
4. Walkin' One And Only [Dan Hicks]
5. We Just Couldn't Say Goodbye [Harry Woods]
6. Part Time Love [Clay Hammond]
7. I Can't Stand It [Smokey McAllister]
8. The Work Song [Kate McGarrigle]
9. I'm A Woman [Leiber, Stroller]
10. As An Eagle Stirreth In Her Nest [Rev. W. H. Brewster]
注)6.はマリア非参加
Recorded at Moore Theatre, Seattle WA November 15, 1975
Broadcast on KZOK-FM
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シアトルのダウンタウンにあるムーア・シアターは、1907年にオープンした席数1,419の古い劇場。そこで行われたマリアのコンサートが録音され、地元のFMラジオ局KZOKで放送された音源。以前より存在を知っていたが、当初耳にすることができたものは、曲の半分がカットされたもので、2014年になって、やっと全曲を聴くことができた。音自体は少し荒いかなと思われるが、各楽器やボーカルの音がしっかり分離していて、バンドのアンサンブルの妙を存分に楽しむことができる。バンドメンバーは、以前書いたボトムラインの音源(下述)と同じなので、プロフィールなどはそちらを参照いただきい。両者を比較すると、ボトムラインの場合は、コーラス、特にマイク・フィニガンの声が小さく、マリアのボーカルのみが目立つというバランスの悪さという欠点があったが、本音源では全員の「スウィート・ハーモニー」が堪能できる。さらに重複するする曲も少ないので、十分楽しむことができるぞ!
1.「Brickyard Blues」を聴くと、左右のチャンネルに配された2台のエレキギターの分離がとても良く、エイモス・ギャレットとジョン・ギルトンのプレイをはっきり聞き分けることができるのがうれしい。間奏のギターソロはエイモスだ。彼のギターによる美しいイントロから始まる
2.「Sweet Harmony」は、コーラスの美しさ・楽しさに溢れた曲。エイモスのバリトンもばっちり聞こえるし、エンディングで盛り上がるマイクのアドリブ・ボーカルも聞きもの。
3.「Midnight At The Oasis」は、ボトムラインの音源にはなかったもので、エイモスによるこの時代のライブでのギターソロが聞ける貴重なトラックだ。スタジオ録音における名演奏をベースとしながらも、随所に崩しを入れるあたりはさすが。そして、ここでの演奏の最大の魅力は、ドラムとベースに加えて、2台のギターによるコード・カッティングとファンキーなピアノのリズムが跳ね回るグルーヴ感にある。そしてその乗りは、4.「Walkin'
One And Only」でさらに倍加される。スタジオ録音よりもテンポを上げた凄まじいプレイだ。エレイン・カーネイとマイクのコーラスも素晴らしい。間奏はジョンのギターソロとマイケル・ムーアのベースランだ。5.「We
Just Couldn't Say Goodbye」では、ジョンがクラリネットを吹き、エレインがアコースティック・ギターを弾いている。途中でダブルテンポになる所が鮮やかで、マリア、エレイン、マイクの3人によるコーラスの息もピッタリだ。間奏ソロはジョンのクラリネット。
ここでマリアによるメンバー紹介が入る。アール・パーマーの時には、マリアは最大限の敬意を払い、メンバーはホギー・カーマイケル作「New Orleans」の一節を演奏して反応する。
リトル・ジョニー・テイラー 1963年のヒット曲(全米19位) 6.「Part Time Love」は、マイク・フィニガンのリードボーカルが冴えまくる。間奏のエイモスのギターソロが最高!バリバリのR&B曲
7.「I Can't Stand It」でも、マイクのボーカルがマリアと対等に渡り合う。特にテンポを上げた後半がカッコ良く、ここでのドラムとベースは本当に凄い!オーディエンスのリクエストが飛び、マリアが「OK
!」と応えて始める 8.「The Work Song」は、マイクのピアノプレイが素晴らしい。彼はその後クロスビー・スティルス・アンド・ナッシュのバックを長く努めるが、それだけの事はある。最後の曲と紹介される
9.「I'm A Woman」はリラックスした演奏で、マリアはタンバリンを叩きながら歌う。間奏のエイモスのギターソロが聞きもの。アンコールのゴスペル曲
12.「As An Eagle Stirreth In Her Nest」は、皆で歌っている。
素晴らしいバックバンドとの絆が強く感じられるパフォーマンス。
(注) 下述のボトムラインの音源を先に聞いて書いたため、ここでの記事は、その比較を念頭に置いた内容になっています。
[2021年12月追記]
マイク・フィニガン氏は、2021年8月11日、肝臓がんのため亡くなられました。冥福をお祈りいたします。
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Bottom Line, New York 1976 ラジオ音源 |
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Maria Muldaur : Vocal, Fiddle (5), Tambourine
Amos Garrett : Electric Guitar, Trombone (8,10), Back Vocal
John Girton : Electric Guitar, Clarinet (7,10), Sax (6, 8, 9), Back Vocal
Ellen Kearney: Acoustic Guitar, Back Vocal
Mike Finnegan : Piano, Organ, Vocal (9), Back Vocal
Michael Moore : Bass
Earl Palmer : Drums
Dickey Betts (Guest) : Electirc Guitar (9)
1. I'm A Woman [Leiber, Stroller]
2. Sweet Harmony [William "Smokey" Robinson]
3. My Sisters And Brothers [Charles Johnson]
4. Sad Eyes [Neil Sedaka, Phil Cody]
5. My Tennessee Mountain Home [Dolly Parton]
6. Back By Fall [Wendy Waldman]
7. We Just Couldn't Say Goodbye [Harry Woods]
8. Rockin' Chair [Hoagy Carmichael]
9. Part Time Love [Clay Hammond]
10. My Blues Man [Unknown]
11. I Can't Stand It [Smokey McAllister]
12. As An Eagle Stirreth In Her Nest [Rev. W. H. Brewster]
注)9.はマリア非参加
Recorded at Bottom Line, New York March 23, 1976
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ラジオ番組「King Biscuit Flower Hour」の放送音源で、マリアの故郷であるニューヨーク・グリニッジビレッジにあったライブハウス、ボトムラインで収録された。当時は「Sweet
Harmony」M4の発売前後で、同作のレコーディング・メンバーによる大変豪華なバックバンドを従えたパフォーマンスだ。
最初は代表曲 1.「I'm A Woman」でぴりっと締める。左右に配された2台のエレキギターのコンビネーションが味わい深く、本音源の魅力のひとつになっている。間奏でマリアが「Come
On Amos !」と叫ぶと、左チャンネルのギタリストがソロを始めた。センターのピアノはファンキー、マリアのタンバリンとボーカルのリズムの乗りも抜群だ。レコードと同じくエイモスのギターから始まる
2.「Sweet Harmony」では、バックコーラスがオフになっていて、コーラスのバランスが悪いのが残念。特にエンディングではマイク・フィネガンが歌っているのだが、もともとオフマイクでシャウトしているのかミキシングの段階でカットしたのか、よくわからないが僅かしか聞こえず、マリアとの掛け合いにならず、盛り上がりに欠ける。3.「My
Sisters And Brothers」は、ザ・センセイショナル・ナイチンゲイルスというゴスペル・コーラス・グループが1974年に発表したアルバムに収められていた曲で、ジェリー・ガルシア・バンドも好んで演奏していた。ゴスペルにしては抑えた演奏で、マリアは曲が終わった後、「この曲大好き!」と呟き、その通り何度も録音している。4.「Sad
Eyes」は、エレキピアノのアルペジオが綺麗な演奏。ダン・ヒックス・バンドでのプレイで有名なジョン・ガートンのソロは、極めてエイモス・ギャレット風。5.「My
Tennessee Mountain Home」では、イントロでマリアがドック・ワトソンから習ったと言うフィドル・チューンを披露する。複数の弦を同時に弾く奏法がオールドタイミーな雰囲気にあふれ、マリアのヘタウマ・プレイの真骨頂だ。ここで聞こえるアコースティック・ギターは、バックコーラス担当のエレン・カーネイによるものだ。間奏ソロは、エイモスとマイク。6.「Back
By Fall」で聞こえるサックスは、資料には不明とあるが、ジョン・ガートンであることが判った。彼はギター以外にサックスやクラリネットも演奏できるマルチ・インストメンタリストで、近年もコンサートで様々な楽器でプレイしている。7.「We
Just Couldn't Say Goodbye」では、アップテンポになってからマリアとエレンのダブルボーカルがバッチリ決まっている。ジョンはクラリネットを吹いており、ここでジャンゴ・ラインハルトばりのリズムギターを弾いている人は誰かなとずっと思っていたが、後になって、エレン・カーネイはリズムギター奏者としての評判が高く、デビッド・グリスマンがリチャード・グリーンと結成したグレイト・アメリカン・ストリング・バンドのメンバーだったこともあるという話を知り、納得した次第。
マリアによるバンド紹介の後に演奏される 8.「Rockin' Chair」では、テーマの部分でエイモスはリズム・ギターをエレンに任せ、ジョンのサックスと一緒にトロンボーンを吹いている。間奏ではエイモスの「星屑」ギターソロを楽しめる。ここで特番としてマリアが「The
Theme Song Of Traveling Musicians」と紹介し、マイク・フィネガンが、リトル・ジョニー・テイラー 1963年のヒット曲(全米19位)
9.「Part Time Love」を歌う。当時セルフタイトルのソロアルバム(マリアがバックボーカルでゲスト参加している)の発売前でもあり、その宣伝を兼ねての演奏だ。
キーボード奏者としてジミ・ヘンドリックスのアルバム 「Electric Ladyland」1968 で注目され、ビッグ・ブラザー・アンド・ホールディング・カンパニー、デイブ・メイソン、クロスビー・スティルス・アンド・ナッシュなどのセッションに参加した彼は、ここではブルースをソウルフルに歌っている。彼は現在もブルース界のベテラン・ミュージシャンによるファントム・ブルース・バンドで活躍中。間奏でギターソロを取るのは、オールマン・ブラザース・バンドのディッキー・ベッツだ。デュアン・オールマンとのツイン・リードギターによる傑作ライブ「Live
At Fillmore East」1971で名声を博し、デュアンの死後製作された「Brothers And Sisters」1973からは、彼の作曲による「Ramblin'
Man」が全米2位の大ヒットとなった。さらにソロアルバム「Highway Call」 1974 も出したディッキー・ベッツは当時絶頂期で、ギブソン・レスポールのコクのあるサウンドをフルに出したブルージーなソロは最高!間奏の後にマイクがビリー・ジョエルの「New
York State Of Mind」の一節を歌い、思わずニヤリ。曲が終わると間髪を入れずマリアが、アンサーソングとして「あんたの言う事はよくわかったわ。同情するけど私には
Full Time Loverがいるのよ」とアドリブで歌い、10. 「My Blues Man」を始める。この曲についていろいろ調べたが、作者やオリジナル・アーティストなどの情報を入手することができませんでした(誰か知っている人がいたら教えてください!)。ここでもエイモスとジョンはホーンによる伴奏を付けている。バリバリのR&B曲
11.「I Can't Stand It」では、マイクのシャウトボーカルがフィーチャーされるが、ここでもマリアより音が小さくバランスが悪く、本当に残念。本音源全編に言える事であるが、マイケル・ムーアのベースとアール・パーマーのドラムスによるリズムセクションが強靭この上もなく、ジャズ、ブルース、カントリーなんでもござれという懐の深さがこのバンドの底辺を固めている。特に、この曲のエンディングでのダブルテンポでのプレイは凄まじい。アンコールと思しき
12.「As An Eagle Stirreth In Her Nest」は、ステイプル・シンガースのゴスペル曲で、バックコーラスでは、エイモスの低い声やジョン・ガートンと思われる声も聞こえる。
バックバンドの演奏力の高さが圧倒的な音源。
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Schlitz Beer Radio Jingle 1977 ラジオ音源 |
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Maria Muldaur : Vocal
Amos Garrett : Electric Guitar
Unknown : Other Insrtuments
1. Unknown Title [Unknown]
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1977年は、アルバム的には「Sweey Harmony」1976 M4と「Southern Wind」1978 M5の狭間にあたり、コンサート音源も私が知る限り残っていないことから、マリアはあまり仕事をしなかったのではないかと思われる。そんな中でビールのラジオ広告の音楽を提供したのは、小遣い稼ぎだったのかな?
シュリッツはアメリカ、ウィスコンシン州ミルウォーキーを本拠地とするビールで、1900年代から1970年代まで米国のトップブランドのひとつだった。1970年代半ば、コスト削減のために行った技術革新の失敗に伴う品質低下のためブランドイメージ失墜を招き、1980年代以降は安物銘柄として低迷する。本ラジオ・コマーシャル(「ジングル」は英語で「チリンチリンと鳴る音」以外に、「短いコマーシャル・ソング」の意味がある)は、その最中に制作されたもので、当時はテレビ、ラジオ等でかなりアグレッシブな宣伝を行っていたようだ
本曲は1分間の長い広告で、バンドとストリングスをバックにマリアの歌が流れ、間奏のギターソロで、アナウンサーによる宣伝文句が入る内容。曲・歌詞はオリジナルで、ファースト、セカンド・アルバムに近いサウンド。コマーシャルにしては長めの演奏時間ということで、音楽として十分聴かせる内容になっている。ギターはエイモス・ギャレットしか出せないあの独特な音で、彼のファンにとってもコレクターズ・アイテムになるだろう。ちなみに同年制作された同じブランドの広告で、ザ・テンプテーションズが歌ったものがあり、これも面白い内容だった。
1970年代のマリアの歌声が楽しめるお宝音源。
[2023年5月作成]
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Kubo Kodo, Toranomon, Tokyo 1979 ラジオ音源 |
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Maria Muldaur : Vocal
Rick Vito : Electric Guitar, Back Vocal
Jim Ehinger : Keyboards
Rick Chudacoff : Bass
Peter Bunetta : Drums
Brenda Burns : Back Vocal, Percussion
1. Work Song [Kate McGarrigle]
2. Don't You Feel My Leg [L. Barker, J. M.Williams, D. Barker]
3. Walkin' One And Only [Dan Hicks]
4. Sweet Harmony (Extract) [William "Smokey" Robinson]
5. Cajun Moon [J.J. Cale]
6. (No More) Dancin' In The Street [John Hiatt]
7. As An Eagle Stirreth In Her Nest [Rev. W. H. Brewster]
8. Clean Up Woman [Clarence Reid, Willie Clark]
Recorded at Kubo Kodo, Tranomon, Tokyo March 2, 1979
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「ゴールデン・ライブ・ステージ」は、1974年から1989年頃まで続いたFM東京の番組で、歌謡曲からジャズ、ワールド、ロックまで幅広い分野にわたり、著名アーティストによるコンサート音源を惜しみなく放送することで大変人気があった。司会者の青木誠氏は、渡辺貞夫の番組「マイ・ディア・ライフ」や「モントルー・ジャズ・フェスティバル」の日本での放送を企画したプロデューサー・音楽評論家。この番組で放送された、マリア・マルダー1979年の初来日コンサート(於 虎ノ門久保講堂)の模様を聴くことができた。
マリアの場合 1974〜1977年頃が最盛期で、来日当時は人気が下降し始めた時だったため、コンサートの評価は余り芳しくなく、可哀想に思ったことを覚えている。時期的には、アルバム「Open
Your Eyes」M6 の発売前後で、当初の「オールドタイム・レディ」というイメージを変え、R&B色を強めていた過渡期にあたり、今になって考えると、それは自然な流れだったと思うが、当時は取り残されたように感じたファンも多かったほず。また彼女は年齢的に30歳代中盤となり、容姿に衰えが見え始めた頃でもあった。かく言う私も、彼女の変わり様に戸惑った一人であったが、結局それを受け入れ、現在に至るまで聴き続けてよかったと思っている。バックを務めるミュージシャンについて解説する。ギタリストのリック・ヴィトーは、ジョン・メイオール、トッド・ラングレン、スティーブ・グッドマン、ボニー・レイット、ジャクソン・ブラウンのセッションに参加、1987年にはフリートウッド・マックのメンバーになった事もある。マリアのアルバムには「Open
Your Eyes」M6、 「Meet Me At The Midnight」1994 M15に参加、現在はナッシュヴィルに住んでいるという。キーボードのジム・エンガーは、アル・クーパー、クラレンス・ブラウン等の録音、ステージではボニー・レイット、ボブ・ディラン、タージ・マハール等のバックを務め、1984年のロス五輪の音楽も担当した。ベースのリック・チュダコフとドラムスのピーター・ブネッタは、チームを組んでセッションワークで活躍、後年はプロデューサーとしての仕事が主となった。関わった作品は、スティーブ・グッドマン、ロビー・デュプリー、ドナ・サマー、テンプテイションズ、マイケル・ボルトン、ピーボ・ブライソン、ケニー
G等多数。ちなみにピーター・ブネッタは「Open Your Eyes」M6のクレジットにも名を連ねている。バック・コーラスのブレンダ・バーンズは、マリアの「Gospel
Nights」 1980 M7、「Southland Of The Heart」1998 M17にバック・ボーカルで参加した他、作曲家として彼女に多くの歌を提供している。
強力なバックバンドを従えたマリアの歌唱は快調そのものだ。1.「Work Song」では、男女のバックボーカルが聴こえるが、男のほうはおそらくリック・ヴィトーだろう。定番曲
2.「Don't You Feel My Leg」でのギターソロは余裕たっぷり。3.「Walkin' One And Only」では、リズム・セクションのグルーブ感が最高で、ギターとピアノの間奏ソロも素晴らしく、このバンドのレベルの高さを物語る演奏だ。4.「Sweet
Harmony」は、司会者の解説の背後で流れ、途中でカットされてしまう。5.「Cajun Moon」は、このバックバンドにピッタリの曲で、ギターのミステリアスで繊細な音色がたまらないですね。マリアは、6.「(No
More) Dancin' In The Street」を「Protest Song Against Too Much Disco」と紹介している。ここでの歌い方はボブ・ディラン風で面白い。7.「As
An Eagle Stirreth In Her Nest」では男性コーラスが2人(おそらくリックとジム?)になり、ゴスペルが好きそうなブレンダが頑張っている。アンコールの
8. 「Clean Up Woman」は、メリハリが効いたR&B曲で、バンドの張り切ったプレイ、マリアのシャウト・ボーカルが楽しめる。
マリアの過渡期におけるライブ音源として、貴重なものだと思う。
[2010年9月追記]
実は、当時FM放送を録音する際、家に帰るのが遅れて初めの数曲を録り逃してしまってたのです。その頃は、今と違ってカセットデッキにタイマー機能が付いていなかったのですな。本当にくやしい思いをしました。その後、どんな曲をやったのか不明なまま30年が経ち、その事はずっと心残りになっていましたが、以下3曲であることがわかりました(Oさん、情報提供ありがとうございました)。
1. Midnight At The Oasis (部分)
2. Brickyard Blues
3. My Tennessee Mountain Home
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Bread & Roses Festival, Berkeley, California 1979 ラジオ音源 |
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Maria Muldaur : Vocal, Fiddle (3)
John Girton : Acoustic Guitar
Unknwon : Keyboards
Jim Rothermel : Tenor Sax, Clarinet
Unknown: Harmonica (3)
Unknown : Bass
Unknown : Drums
Banana : Banjo (2)
Freebo : Tuba (2)
1. It Ain't The Meat, It's Motion [Henry Glover, Lois Mann]
2. Any Old Time [Jimmie Rogers]
3. My Tennessee Mountain Home [Dolly Parton]
4. Wheelers And Dealers [David Frishberg]
5. Lover Man [Jimmy Davis, Jimmy Shaerman, Roger Ramirez] (Fade Out)
Recorded at Greek Theater, Berkeley, California October 7, 1979
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ジョーン・バエズの妹ミミ・ファリーナ (1945-2001) が主催したブレッド・アンド・ローゼズ・フェスティバルについては、マリアのトラックを含むオムニバス・ライブ盤
E48, E49が出ている(フェスティバルについてはE48参照)。その中で1979年開催分 E48(「Just Like An Eagle」収録)
と同日のラジオ放送音源を聴くことができた。
NPR (National Public Radio 自らは放送せず、全米のラジオ局に番組を提供する番組制作会社)によるコンサートのライブ中継のエアーチェックで、サウンドボード録音で各楽器の音ははっきり聞こえるあるが、ラジオ放送によるヒスノイズが大きく、音質も少し粗い。また録音テープの問題で、再生スピードが早くなっているのは明らかで、私はテンポを90%に補正して聴いている。
腕達者な人たちをバックに、マリアは生き生きと歌っている。2.「Any Old Time」は、バナナ(恐らくバンジョー、詳細は E48参照)とフリーボ(チューバ、詳細は その他音源 「Stony Plains Records 25th Anniversary Revue 2001」 参照)を招いての演奏。チューバの低音がはっきり聞こえるのがうれしい。3.「My Tennessee Mountain Home」では、誰かがハーモニカを吹いているが、本コンサートに出演したノートン・バッファローと推定されるが、ここでは不明とした。なおイントロでマリアのフィドルを聞くことができる。4.「Wheeles And Dealers」は、「Transblucency」 1986 M11に入っていたジャズ曲で、スタジオ録音に比べてグルーヴ度が各段に上がっった好演。サックスとギターのオブリガード、ソロがイカシていて、曲が終わった後にジム・ロサメルとジョン・ガートンと紹介される(なので、ホーンとギターについては人物の特定ができた)。
5.「Lover Man」はしっとりと歌われるが、曲の途中で「時間が来たので、まもなく放送を終えます」というアナウンスが被り、当放送にかかる関係者への賛辞が述べられてフェイドアウトする。
ライブ盤 「Bread & Roses」 1980 E49と同じ日の演奏が聴ける貴重な音源。
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Bremen, Germany 1979 音源 |
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Maria Muldaur : Vocal, Fiddle, Tambourine
John Girton : Electric Guitar
Rick Schaefer : Keyboards
Jim Rothermel : Tenor Sax, Harmonica
Charles Magarian : Bass
Rick Alegria : Drums
1. Brickyard Blues [Allen Toussaint]
2. Heatrs Of Fire [Partick Henderson, Wornell Jones]
3. It Ain't The Meat It's The Motion [Henry Glover, Lois Mann]
4. My Tennessee Mountain Home [Dolly Parton]
5. Wheelers And Dealers [David Frishberg]
6. Lover Man (Oh Where Can You Be) [Davis, Sherman, Ramirez]
7. That's The Way Love Is [Deadric Malone]
8. Clean Up Woman [Clarence Reid, Willie Clark]
9. My Sisters And Brothers [Charles Johnson]
10. Guide Me Great Jehovah [Traditional]
11. Cajun Moon [J.J. Cale]
Recorded at Uni-Mensa, Bremen, Germany December 1, 1979
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「Uni-Mensa」は学食のことで、ブレーメン大学の学生食堂で行われたコンサートと思われる。まずバックバンドについて述べる。ギターのジョン・ガートンは、1976年からの常連。ジム・ロサメルは、この後マリアのアルバムに多く参加し、彼女のジャズ音楽にとって重要なサポーターとなる。キーボードのリック・シェーファーは、ギター、ハーモニカもこなすマルチプレイヤーで、当時マリアのバンドの音楽監督を5年間務めたという。ここでは派手なソロはとらず、クセのない感じでバックプレイに徹している。現在ベイエリアで、パーティーやイベントのバンド活動をしているそうだ。ベースのチャールズ・マガリアンは、サンタ・エスメラルダのアルバムに参加の記録が残っている。ドラムスのリック・アレグリアは、アスリープ・アット・ザ・ホィール、コマンダー・コティ、マイケル・マクドナルド等との共演実績がある人で、現在も西海岸でバンド活動を続けている。
1.「Brickyard Blues」でマリアは、コブシを効かせてシャウトし、独特の裏声との使い分けのテクニックを駆使してしなやかに歌う。ジムは本音源では主にテナーサックスを吹いているようだ。バックバンドが要所でコーラスを入れている。2.
「Heatrs Of Fire]では、ドライブがかかったボーカルのリズム感が聴きもの。3.「It Ain't The Meat It's The
Motion」は、バックバンドは軽妙なスウィング感を上手く出していて、ピアノの伴奏が頑張り、サックスとギターの掛け合いも洒落ている。 4.「My
Tennessee Mountain Home」では、レコードよりもテンポが速い演奏で、マリアのフィドルが楽しめる。ここでハーモニカを吹いているのはジムだろう。本当に器用な人だ。間奏ではギターやハーモニカがアメリカの愛国歌・民謡のメロディーをいろいろ奏でるのが面白い。5.「Wheelers
And Dealers」は、公式録音が1986年の「Transblucency」なので、その大分前からステージで歌っていたことがわかる。利益を上げるためには、他人、環境、地球のことを省みないビジネスマンを痛烈に批判した歌詞が強烈だ。マリアの歌唱は、声の魅力をフルに生かした好演。愛唱歌
6. 「Lover Man」は、あっさりとした演奏をバックに、彼女なりのエモーションを込めて歌っており、何度聴いても心に染み入ってくる。
7.「That's The Way Love Is」は、きりっとしたR&Bで、マリアは当時としては太い声を出している。8.「Clean
Up Woman」のイントロでは、マリアが「いい男を取られてしまった私の過ちを皆に伝えたい」と語るが、かなり本音じみた感じで、鬼気迫るものがある。
9.「My Sisters And Brothers」は、コーラスとの合唱がバンドの連帯感を伝えている。アカペラによるゴスペル・ソング 10.「Guide
Me Great Jehovah」の後、おそらくアンコールでの演奏と思われる 11.「Cajun Moon」は、ジョンのギターソロが素晴らしく、マリアのスキャットとジムのハーモニカの掛け合いもグルーヴィーだ。
珍しいバックバンドによる音源。
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