R14 The Black Balloon (1979) Transatlantic Records TRA3550 


R11 The Black Ballonn



R11a The Black Balloon






John Renbourn :Guitar
Tony Roberts :Flute
Stuart Gordon :Taboras

David Lord :Engineer
W.Heath Robinson :Illustration 

[Side A]
1. The Moon Shines Bright
2. The English Dance  R13 R17 R19 R20 R25 V1 V2 V5 V7 V8 V9 K1 K3 K5
3. Bourree I & II [Nicolas Vallet] 
4. a The Mist Covered Mountains Of Home R17 R20 R24 V5 V7 K1 K2 K3
  b The Orphan    R13 R17 R24 V5 K1 K2 K3
  c The Tarboulton 

[Side B]
5. The Pelican [Renbourn]
6. The Black Balloon [Renbourn]

〔楽譜掲載〕1 G4 G6 G8 F3、 2 G4 G6 G8 K1 K3 F4、 3 G4 G6 G8 F4、 4ab K1 K3 F4
        4c 5 G6、 3 4 abc 5(シャナーキー発売のCDに添付)、 6 G10

全曲インストルメンタル

写真上 : 英国オリジナル盤ジャケット・デザイン
写真2番目 : 米国オリジナル盤ジャケット・デザイン
写真3番目 : 米国Shanachie盤ジャケット・デザイン
写真4番目 : 英国Castle盤ジャケット・デザイン
写真5番目 : ジャケットデザインのバリエーション
「Hermit」R9の路線を継承したソロ・アルバム。三日月に錨をかけようとする気球乗りを描いた表紙のイラストが傑作であったが、アメリカ盤はイギリス盤と異なり、同じ作者であるが別のイラストが使用された。後にシャナーキーよりCD化されたが、表紙がレンボーンの演奏風景の写真となった。今回はレンボーンのギターの他、お馴染みのパートナー、トニー・ロバーツ(フルート)、スチュアート・ゴードン(パーカッション)が参加している。A面は中世音楽への指向をより深く掘り下げたもの、B面は彼独特のノスタルジックであると同時にモダンなオリジナルという円熟の作品。

A面は中世の音楽を彼なりにアレンジしたもの。1.「The Moon Shines Bright」はルネッサンスよりも少し後のイギリスで流行したキャロル(祝歌)で、厳かで上品なメロディーと対位法による旋律が印象的。2.「The English Dance」は13世紀のダンス・テューンで、オリジナルは主旋律のみ。レンボーンはアレンジの際に音を加えて、素晴らしいギターソロにした。本曲は中世の古典アレンジの傑作として高い評価を得て、レンボーンのステージ演奏のハイライト曲となり、CD、ビデオ等で多くの演奏が発表されている。今では耳タコの曲だけど、当時初めて聴いた時はとても新鮮な感じだったなあ〜! 3.「Bourree I & II」はダンス音楽を編曲した当時のリュート曲集から取材したもので、本作のなかではストレートなアレンジで地味な出来。4. a「The Mist Covered Mountains Of Home」は高音弦のドローン(開放弦のピッキング)と3・4・5弦の低音部によるメロディーのピッキングという彼独特のスタイルが生み出したマイナー調の傑作アレンジ。一方メドレーで演奏される b「The Orphan」は低音弦をベースとして高音弦でメロディーを展開するもので、その対比が面白い。このメドレーは、ステージではソロ演奏されるが、ここではトニー・ロバーツのフルートとレンボーン自身のエレキ・ギターのオーバーダビングがフューチャーされる。 c「The Tarboulton」はスチュアート・ゴードンのパーカッションが加わって、アップテンポのダンス曲が展開される。

B面はレンボーンのオリジナル作品で、2曲共じっくり聴かせてくれる。5.「The Pelican」はハーモニクスの多用と高音のドローンによるイントロのモダンな雰囲気と、リュートのような優雅なテーマが融合した素晴らしい曲で、途中から加わるエレキギターによるハーモニーのオーバー・ダビングも良い。テーマのギター演奏は彼が1970年代にあたためてきたパターンで、当時未発表(後年「Lost Sessions」R8 や、「Rare Performances」V7 におけるテレビ映像等それら原型が発表された)であったものの集大成である。7分にわたる長い演奏であるが、反復されるテーマと途中のバリエイションのゆったりとした流れは時間感覚が麻痺するような快感を覚えるほどである。6.「The Black Balloon」はギターソロによるモダンな古典音楽といえるテーマから、自身のアコギのオーバーダビング、トニー・ロバーツのフルート、そしてエレキ・ギターのオーバーダビングという風に厚みを増し、テーマを数々のバリエイションに展開させてゆく。ここでのトニー・ロバーツのフルートは縦横無尽の活躍で、本作のカラーを決定付ける大変素晴らしい名演。この人の力量と奥の深さには本当に感服する。最後はギター1本によるテーマに戻って静かに終わる、12分近くに及ぶ名曲・名演。5.はのちにシャナーキー発売のCDに添付されたタブ譜に掲載され、メルベイ出版からも別冊として発売 G6 されたが、6.のタブ譜は残念ながら発表されていない。

本作は地味な雰囲気ながらも、いぶし銀のような味のある格調高い作品となった。オリジナル・ジャケットの裏表紙の写真で彼が持っているギターはイギリスのギター製作家ゼマイティス(2002年没)の作品。「The Enchanted Garden」1980 R16での写真と同じモデルで、大きなD型のサウンド・ホールが異様。ゼマイティスはメタルトップ、シェルトップなど高級手工エレキギターで有名な人だが、アコースティック・ギターも少なめながらも作っていた。特にサウンドホールが月の形で、星のインレイがちりばめられ、夜色の紫にペイントされたボディーが個性的なドノヴァンのギターが印象的で、日本だけで発売された彼のライブアルバム「Live In Japan Spring Tour 1973」には、ジャケット写真とともに、弾き語りによるその音がしっかり録音されている。その他ではジョージ・ハリソンがハート型のサウンドホールのモデルを持っている写真も見たことがある。ゼマイティスのアコースティック・ギターは時々日本でも見かけるが、廉価なモデルでさえも大変な高値で取引されている。ジョンのモデルはかなりハイグレードに見えるので、今も持っていればひと財産というところだろう。


 
 
R15 Under The Volcano (1979)  Kicking Mule Records SNKF161 


R12 Under The Volcano


R12a Under The Volcano
[John Renbourn And Stefan Grossman]

John Renbourn: Guitar (Solo 6)
Stefan Grossman: Guitar (Solo 2)

Nic Kinsey: Engineer
Ed Denson, Dan Forte: Liner Notes
Terry Eden: Design, Artwork
Guido Harari: Photo

[Side A]
1. Idaho Potato [Renbourn, Grossman]
2. a Sheebeg And Sheemor [O'Carolan]
  b Drunken Wagoner
3. Under The Volcano [Renbourn, Grossman, except d = Trad.]
  a Resurrection Of Blind Joe Death
  b Four For The Roses
  c Montagu's Pact
  d The Right Of Man
4. Bonaparte's Retreat  R20 Q16
   Billy In The Lowgrounds  R20 Q16

[Side B]
5. Swedish Jig
6. Water Gypsy [Renbourn]
7. All Things Parallel Must Converge [Renbourn, Grossman, Baker]  R18
8. The Blarney Pilgrim  R24 R25 R27 V5 V8 K3
9. Mississippi Blues No.3  R20 V3

〔楽譜掲載〕1 3 7 8 9 G7、 5 G7 F6、 6 F2
キッキング・ミュール別売りタブ譜(全曲、 左下写真参照)

再発CDには、「Bonaparte's Retreat」を除くすべての収録曲のタブ譜がPDFファイルとしてディスクに収納

全曲インスルメンタル
2はレンボーン非参加


グロスマンとレンボーンのデュエットの2作目。前作とサウンドががらりと変わり、アイリッシュ、ケルト音楽の色がかなり濃い。当時の流行であり、本作の企画・作曲のブレインとしてダック・ベイカーの存在が感じられる。1.「Idaho Potato」はタブ譜集では「Irish Potato」とあった様に、現代的なサウンドながらもアイリッシュ音楽の影がある作品。二人のプレイは前作に増して融合度が高く、強力なコンビネーションである。両者のアコースティック・ギターの他、両人の持ち味を生かしたエレキ・ギターがオーバーダビングされている。レンボーンのすがすがしい音色のハーモニー、間奏でのグロスマンのアーシーで歪みをきかせたソロ等である。2.はグロスマンのソロでレンボーンは非参加。3.「Under The Volcano」は組曲で4つの曲から構成される。a b c d の後にc b a という風に最初のテーマに戻ってゆく複雑な構成で、ほとんど切れ目のない演奏。最初の aはクラシックなムードの穏やかなテーマでレンボーンのエレキギターのオーバーダビングが美しい。次にインテンポとなりより強い調子の bが提示される。アコースティックのリズムをバックに、ミュートロン効果をきかせたグロスマンのエレキギターやレンボーンのエレキギターが活躍する。 cはグロスマンの色が出た曲で、ブリッジ的な役目を果し、フィドル・テューンのスタンダードである dに移ってゆく。その後は前述の通り逆をたどり、最初のテーマに戻って終わる。全部で10分を超える大作。4.「Bonaparte's Retreat/Billy In The Lowgrounds」は明るく楽しいフィドル・テューンで前曲の緊張感を解放してくれる。グロスマンはフラットピックでブルーグラス調の早弾きを披露する。

B面の最初の曲5.「Swedish Jig」はフィドル・テューンの正当派的アレンジで、後年シャナーキーから発売されたオムニバス盤「Music Of Ireland」1988 に同一録音が収録された。6.「Water Gypsy」は本作唯一のレンボーンのソロで、ファンキーで軽い感じのジャズ・テューン。彼が後に発表する曲「Cherry」R22参照 に似た感じ。7.「All Things Parallel Must Converge」はケルト的でありながら、非常に現代的な雰囲気のオリジナルで、中間の部分はダック・ベイカーによる作曲。8.「The Blarney Pilgrim」はオーセンティックなフィドル・テューン。最後の曲9.「Mississippi Blues No.3」はグロスマンのファンにはお馴染みの曲で、教則レコードの名作「How To Play Blues Guitar」(1967年発売、オーロラ・ブロックとの共同製作)に収められていたウィリー・ブラウン作のデルタブルース。レンボーンのハーモニーとソロを付けた本バージョンは「No.3」となっている。ちなみにグロスマンが1969年に発表したソロアルバム「The Gramercy Park Sheik」、および本作の後に発売された「Live In Concert」 1984 R20における同曲は「No.2」になっている。最初のパートから、ブギーのリズムに移ってゆくところがかっこいい。

本作は全体的には地味なサウンドであるが、味わいの深い作品となった。この手に音楽に慣れていなかった私にとって、最初はかなり違和感があったのが正直な感想であるが、時が経ってアイリッシュ、ケルト音楽やフィドル・テューンに慣れ親しむにつれて、本作品に対する印象が次第に変わっていったことを覚えている。そういう意味でも時代を先取りした作品だったのであろう。ちなみに本作の頃からキッキング・ミュール・レコードはレコード・ジャケットの中にタブ譜を無料で同封することを止め、その代わりに別途注文により実費で送付するシステムに切り替えた。ただしその分本作のタブ譜はきちんと製本され、スタンダード・ノーテーションやイラスト等もついた豪華なものになった。


 
R16 THE ENCHANTED GARDEN (1980) Transatlantic Records TRA356





[John Renbourn Group]

John Renbourn: Guitar, Vocal
Jacqui McShee: Vocal
Tony Roberts: Flute, Recorder, Whistle, Swalamandala, Sopranino etc
John Molineux: Dulcimer, Mandolin, Fiddle, Bowed Psaltery, Whistle etc
Keshav Sathe: Tabla, Finger Symbals
Glen Tommy: Snare Drum (4)

[Side A]
1. a Pavane 'Belle, Que Tiens Ma Vie'  R18 V1
  b Tourdion *  R18 V1
2. The Truth From Above
3. Le Tambourin * [J. Ph. Rameau] 
4. The Plains Of Waterloo R18 V9

[Side B]
5. The Maid On The Shore  R12 Q15 V1
6. Douce Dame Jolie [Guillaume De Machaut]  R18 V1
7. A Bold Young Farmer
8. Sidi Brahim * [Renbourn, Roberts, Sathe]  R12 R18 R19

David Lord: Engineer

7.はレンボーン非参加
曲の詳細解説付き


写真上 : オリジナル盤ジャケットデザイン
写真下 : アメリカ盤再発盤ジャケットデザイン


ジョン・レンボーン・グループの2枚目は、フィドルのスー・ドレハイムが抜け、フランス人マルチ楽器奏者ジョン・モリニューが加入した。彼はフランスにおけるケルト文化の地域であるブルターニュ地方出身のため、バンドのサウンドに一層のケルト色をもたらし、トラッド、中世音楽、インド音楽、現代音楽の融合をストイックに目指した世界となった。1. a「Pavane 'Belle, Que Tiens Ma Vie'」はフランス語で歌われる。1588年フランスで出版された楽譜集からの曲で、最初はタブラのみをバックに4人のコーラス、次にアンサンブルとジャッキーのボーカル、さらに4人のコーラスとアンサンブルの合奏となる。パバーヌは一連のダンスのうち一番初めに行われる荘重な踊りで、メロディーも厳めしい。使用楽器の「Psaltery(プサリテリウム)」はギリシア・ローマ時代を起源として14-15 世紀に流行した楽器で、平たい共鳴箱に多数の弦を張りかきならすもの。1. b「Tourdion」は一連のダンスの最後にくるもので複雑なステップの踊り。a b 共に元々は主旋律だけのものに対位旋律をアレンジして加えてある。2.「The Truth From Above」はイギリス・ヒアフォードシャーに伝わる伝統的なキャロル(祝歌)で、4人のアカペラ・ボーカルのうち、特にジャッキーとジョン・モリニューのボーカルが目立っている。

3.「Le Tambourin」は5弦ダルシマーと DGDGB♭D の変則チューニングによるギターとレコーダー、そしてタブラによるインストルメンタル。ダルシマーとギターによるメロディーの掛け合い、後半からはレコーダーが加わる速いテンポの曲。タブラのリズムが心地良く、少しビビリ気味のギターがシタールのような効果をあげている。4.「The Plains Of Waterloo」はいかにもレンボーンらしい変則チーニング DADEADのギターソロから始まる、美しいメロディーを持つトラッド。ワーテルローの戦いから変わり果てた姿で帰ってきた恋人の悲劇を歌ったもので、当時大変流行ったもの。ギターの他に軍隊のマーチを思わせるスネア・ドラムとフルート、フィドルが加わりジャッキーが切々と歌う。本曲は当アルバムのなかで最もペンタングルの曲に近いサウンド。

5.「The Maid On The Shore」はジョンがペギー・シーガーから聞いたという歌で、船に乗った若い娘に対し、船長が財産を差し出して求愛するが、娘は断って自由を選ぶというバラッド。ジョンが以前製作した業者向けのレコード「The Guitar Of John Renbourn」1977 Q15では、インストメンタル・バージョンを聞くことが出来る。ギターのチューニングは EG#C#F#BE。ジャッキーのボーカルとトニーのフルートが素晴らしい。6.「Douce Dame Jolie」はジョン・モノリューのボーカルによる1349年のフランスの古い曲。彼の加入のせいか、本作はフランスの曲が多い。これも対位旋律を加えてフォーク・ソングのようにアレンジしてあり、4弦のダルシマーとレコーダーがメインの演奏。7.「A Bold Young Farmer」はジャッキーの無伴奏ソロ。ジャッキーが妊娠して捨てられた若い女性の悲嘆を淡々と歌う。

最後の曲 8.「Sidi Brahim」はSwalamandalaというインドの楽器とタブラによるインド的なバックに8分にわたって繰り広げられる目が眩むような魅惑のインストルメンタル。タブラがきざむ急速テンポをバックにトニーのフルートがテーマを演奏、次にジョンがFBCGCFというチューニングでインプロヴィゼイションを展開、インド風のスケールから始まっていつの間にかブルース的な音使いになり、「Bert & John」T1 に入っていた「East Wind」の断片がでてきたりして、とてもスリリング。そしてトニーのフルートによるインド的音階を駆使したインプロヴィゼイションは正に至高の名人芸。その圧倒的な音使いに加えて、各コーラスの終わりに Swalamandala がハープのようにインド風和音を奏でると、もうエクスタシーの世界。とにかくこの曲は傑作。

全体的に地味であるが、非常に純粋な音に満ちた作品。表紙の絵は中世の細密画(ミニアチュール)で、裏面には各メンバーの写真と、ジョンによる各曲の解説が載っている。ここでの解説は曲の出所や背景等を詳述したの非常にアカデミックなもの。裏表紙の各メンバーのスナップ写真で、ジョンが持っているギターは「The Black Balloon」R11 のものと同じゼマイティスだ。


 
R17 So Early In The Spring (1980) Columbia YX-7258-ND 

 
 
John Renbourn: Guitar,Vocal


[Side A]
1. So Early In The Spring  R13 R19 R20 T3
2. Lindsay [Archie Fisher]  R19 R20 R24 R25 V1 V5 V9 K3
3. a The Mist-Covered Mountain Of Home *  R14 R20 R24 V5 V7 K1 K2 K3
  b The Orphan *  R13 R14 R47 V5 K1 K2 K3
4. To Glastonbury [Renbourn]  R8 R12 Q15
5. The English Dance *  R13 R14 R19 R20 R25 V1 V2 V5 V7 V8 V9 K3 K5
6. The Bank Of Sweet Primroses R13

[Side B]
7. Blues Run The Game [Jackson C Frank]  R1 R3 R29 Q10 Q17
8. Great Dreams From Heaven [Joseph Spence]  R18 R20 R22 R24 R27 R29 Q32 V3 V5 V8 V9 K2
9. Peacock Rag *  R13
10. If You Haven't Any Hay [Skip James]
11. The Young Man That Wouldn't Hoe Corn  R29 V7
12. Buckets Of Rain [Bob Dylan] R29

Masao Hayashi : Engineer
Takeshi Kobayashi: Liner Notes
Kenji Sugiyama: Artwork
UNI Photos: Photo
Nippon Columbia: Production


〔楽譜掲載〕2 K3、 3 K1 K3 G6 F4、 4 G3、 5 K1 K3 G4 G6 G8 F4、 8 K2

録音: March 7, 8 ,1979


ジョン・レンボーンの来日時に、当時のトランスアトランティックの発売元であるコロンビア・レコードが制作した作品で、日本のみで発売された。「アコースティック・ギター初めてのデジタル録音」が当時のキャッチフレーズ。なるほど当時のフィンガースタイル・レコードのなかではクリアーな音。本作は副題が「ジョン・レンボーン・フェイバリッツ」という通り、当時のステージ用レパートリー中心の選曲となっている。そのため数曲につき、他の作品に未収録のものや面白いカバー作品があり、ファンを喜ばせてくれた。ただ本作にはインスト曲が少ない(彼のステージは歌ものが多い)ため、彼のギターのみを目当ての人にとっては、ちょっと物足りないかもしれない。

1.「So Early In The Spring」は動きが速く切れ味鋭いスリーフィンガー・ピッキングが活躍するトラッド。バート・ヤンシュ率いる後期ペンタングルもカバー。2.「Lindsay」はアーチー・フィッシャーの曲で、歌詞のスコットランド訛りがきつく、英国人でもあまり理解できないそうだ。伴奏のギターに味があり何度聴いても飽きない曲。3.「a The Mist-Covered Mountain Of Home b The Orphan」は彼によるケルト音楽アレンジの代表作のひとつで、高音の開放弦をドローン・サウンドとし、低音弦でメロディーを綴る彼独特のスタイルの最も効果的なケースといえよう。後半はシンプルなフィドル・チューンのアレンジ。4.「To Glastonbury」は1970年代前半の作曲で、1996年に本曲を含む当時の録音が「Lost Sessions」R7としてめでたく発掘されたが、それまではこのバージョンが唯一の公式発表だった。5.「The English Dance」はステージで必ず演奏されるインストルメンタルで、レンボーンのギター演奏のハイライトとなる作品。そのため数多くの作品に収録されていて。ファンには耳タコの状態。ちょっとビビリ気味のサウンドがいい効果をあげている。6.「The Bank Of Sweet Primroses」 は、本作が初登場の作品で、イギリス南西部のトラッド・ソング。なつかしさを覚える美しいメロディーの曲。

B面1曲目7.「Blues Run The Game」はジャクソン・C・フランクの作品(この曲のエピソードについてはQ10を参照)。バート・ヤンシュの愛奏曲でもあるが、ジョンは動きの速いスリーフィンガーで彼のスタイルを出している。8.「Great Dreams From Heaven」はバハマのギタリスト、ジョセフ・スペンスによるドロップ・D・チューニングによる賛美歌のカリプソ的アレンジで、ジョンの演奏としては本作が初録音。当時はライ・クーダーの演奏(「Into The Purple Valley」1972 に収録されたインストルメンタル)で非常に有名だったので、当時のファンはジョンがこの曲をカバーしたことでビックリしたものだ。ライのバージョンよりテンポが速く、リラックスしたボーカル付きで良い雰囲気を出している。9.「Peacock Rag」はアメリカのフィドル・テューンでこの曲が聴けるのは本作と、ずっと後の2018年に発売された「Live In Kyoto」 R13のみ。ちょっと面白い旋律のテンポの速いラグタイム・ギターで、エンディングで少しとちっていて、フムという声が聞ける。でも日本公演でも同じトチリをしていたので、確信犯と思われる。彼から習ったダック・ベイカーが、モリー・アンドリュースとの共作盤「American Traditional」1993 でカバーした。10.「If You Haven't Any Hay」はブルースの巨人スキップ・ジェイムスがピアノで弾き語ったスタンダードで、マリア・マルダーのカバーが良かったですね。レンボーンも得意のブルース・パターンを駆使して頑張っています。11.「The Young Man That Wouldn't Hoe Corn」はアメリカのトラッド・ソングで、一部「Chuck Old Hen」のメロディーが顔をだす。バンジョーのフレイリング奏法的なギターが楽しめる。最後の曲12.「Buckets Of Rain」はなんとボブ・ディランの曲のカバー。1975年の傑作「Blood On The Tracks」に収録された、生きることの大変さをしみじみと歌った名曲で、ベッド・ミドラーもディラン本人をゲストにカバーしていた。ディランのオリジナル自体が変則チューニング使用による弾き語りで、レンボーンはそれをかなり忠実にコピーしたものだが、さすがにギター演奏はレンボーンのほうがはるかにうまい。なお本作の使用ギターはお馴染みのギルド D55。

本作は知る人ぞ知る稀少盤だったが、1996年ヴィヴィッドからCD化された。さらに2006年2月には同レーベルから紙ジャケット使用で再発された。


 
R18BBC Live In Concert (1998)Strange Fruit SFRSCD 076 

 

[John Renbourn Group]

John Renbourn: Guitar, Vocal
Stefan Grossman: Guitar (1)
Jacqui MaCShee: Vocal
Keshav Sathe: Tabla
Tony Roberts: Flute, Whistle, Vocal
John Molyneux: Fiddle, Dulcimer, Vocal


1. All Things That Rise Must Converge [Renbourn, Grossman, Baker]  R15
2. Belle Qui Tiems Ma Vie [Arbeau]  R16 V1
3. Tourdion   R16 V1
4. Douce Dame Jolie [Machoaut]  R16 V1
5. Great Dreams From Heaven   R17 R20 R22 R24 R27 R29 Q32 V3 V5 V8 V9 K2
6. Plains Of Waterloo  R16 V9
7. Sidi Brahim  R12 R16 R19
8. Trees They Do Grow High  R5 R19 R27 T3 T3 T10 T16

[楽譜掲載] 5. K2


 
当時BBC放送音源がCDリリースされ、話題を呼んでいた。その最たるものはビートルズとレッド・ツエッペリンかな。以前ペンタングル、バート・ヤンシュと発売されたのでレンボーンはどうかなと思っていたら、やはり出ました。ジョン・レンボーン・グループで、しかもジョン・モリニュー在籍の演奏なので、過去発売のLP「Live In America」R18、ビデオの「John Renbourn Group In Concert」V1と同じ布陣だなと思って少しがっかりしたのだが、実際ふたをあけてみると、曲の重複が少なく(特にR18と)BBC放送おなじみの録音の良さもあって、意外に面白い作品だった。

1.「All Things That Rise Must Converge」のみステファン・グロスマンとのデュエット演奏。1978年7月26日ロンドンのパリ・シアターで収録されたもの。この曲はいままでどのライブ盤、ビデオにも収録されていない珍しいもの。曲想からダック・ベイカーの存在を強く感じる、ケルトとジャズが融合した独特の雰囲気の曲。デュエットもの音源から1曲選ばれて本作に収録されただけあって、グロスマンの力強い伴奏に乗って、レンボーンが伸び伸びリードギターをプレイする出色の出来であると思う。なお途中の伴奏でバート・ヤンシュが得意とするパターンが出てくるのが面白い。

2.以降はジョン・レンボーン・グループの演奏で、1980年5月21日同場所での録音。ビデオでおなじみの演奏が3曲続くが、やはりビデオよりもCDのほうが音質は良く、より音楽に専念できることよくわかる。フランス語で歌われる2.「Belle Qui Tiems Ma Vie」に続きダルシマーがメインの3.「Tourdion」が切れ目なく演奏されるが、フルートやギターの演奏も躍動感があっていい感じ。CDのジャケットでは、次の曲として「Trees They Do Grow High」とあるが、これは間違い。ジョン・モノリューがリードボーカル取る4.「Douce Dame Jolie」が、より一層ケルト的な雰囲気を持って迫ってくる。5. 「Great Dreams From Heaven」はレンボーンのソロ演奏でCD・ビデオに数多く収録されている曲であるが、ここでは珍しいグループによる演奏。彼のボーカル、間奏のバックで自由自在に動き回るフルートとフィドルはこのグループの演奏水準の高さを如実に示していて最高の出来。6.「Plains Of Waterloo」のジャッキーのボーカルはやっぱりいいなあ!

7.「Sidi Brahim」はコンサートのハイライトを飾る長時間のインストルメンタルで、解説書の演奏時間3分15秒は曲表示ミスによる間違いで、9分55秒が正解。ジョンのギター・ソロはもうひとつのライブ録音 R19のものとあまり変わらないが、やはりすごいのはトニー・ロバーツの圧巻インプロヴィゼイションだ。この曲のコンサートテイクがふたつあるだけで私は幸せです。最後の曲は昔からおなじみの曲だが、ジャッキーのボーカルに大切なところだけレンボーンのボーカルかぶさるところがよいのだ。

ということで、ギター・マニアのなかでは、ジョン・レンボーン・グループの演奏に対する評判はいまいちかもしれないが、十分に買う価値があると思う。


 
R19 Live In America (1982) Flying Fish FC27103 
 

 [John Renbourn Group]

John Renbourn: Guitar, Vocal
Jacqui McShee: Vocal
Tony Roberts: Flute, Krumhorn, Vocal,Northumbrian Small Pipes
John Molineux: Dulcimer, Mandolin, Fiddle, Vocal
Keshav Sathe: Tabla

Eric Von Schmidt: Art Work & Design
Ken Roseman : Liner Notes

[Side A]                
1. Lindsay [Archie Fisher]  R17 R20 R24 R25 V1 V5 V9 K3
2. Ye Mariners All  V1
3. English Dance *  R13 R14 R17 R20 R25 V1 V2 V5 V7 V8 V9 K1 K3 K5
4. The Cruel Mother  R27 V1 V9
5. Breton Dances * [Siberil]  V1

[Side B]                          
6. The Tree They Grow High  R5 R18 R27 T3 T3 T10 T16
7. Farewell Nancy  V1
8. Van Dieman's Land
9. High Germany  T7

[Side C]
10. Sidi Brahim * [Renbourn, Roberts, Sathe]  R12 R16 R18
11. a The Month Of May Is Past *
   b Night Orgles * [Abjean, Arbras]

[Side D]
12. John Dory  V1
13. So Early In The Spring  R13 R17 R20 T3
14. Fair Flower V1
15. John Barleycorn Is Dead  R10 R12 R13 V1

〔楽譜掲載〕 1 K3、 3 K1 K3 G4 G6 G8 F4

注) 4, 7, 11はレンボーン非参加
録音: The Great American Music Hall San Francisco (1981.4.16)
    McCabe's Concert Hall Santa Monica (1981.4.17)


フィドルのスー・ドレハイムが抜けて、フランスのブリターニュー地方のマルチ楽器奏者、ジョン・モノリューが参加した後期ジョン・レンボーン・グループのアメリカ公演の2枚組ライブ盤。同グループのスタジオ録音盤 R10, R16 収録曲からは各1曲づつしか含まれておらず、多くのレパートリーが初録音である。ただしシャナーキーから発売された同グループのビデオ V1は本作と同一時期に収録されたものなので、かなりの曲が重複している。本作での観客の反応は熱狂的で、そのためか演奏に十分気合が入っており、録音も大変良く、アンサンブルの醍醐味を存分に楽しめる。

レンボーンのソロの定番曲でもある1.「Lindsay」はジャッキーのハーモニー・ボーカルも加わり、賑やかな演奏。酒飲みの歌という2.「Ye Mariners All」は4人によるアカペラ・コーラス。3.「English Dance」は本作唯一のジョンによるソロで、そのためか通常よりもテンポが速く、とても気合が入った演奏。4.「The Cruel Mother」はジャッキーによる無伴奏ソロ。5.「Breton Dances」のブレトンとはフランスのブリターニュのことで、その苦難の歴史と独立心旺盛な民族意識のためフランスのアイルランドといわれ、トラッドの宝庫。ちなみにこの地からはダン・アーブラスという素晴らしいシンガー/ギタリストを輩出している。タブラの躍動感あるリズムをバックにダルシマーが大活躍。ペンタングルでお馴染みの 6.「The Tree They Grow High」はジャッキーのリード・ボーカルとジョンのコーラスというシンプルでストレートな演奏。7.「Farewell Nancy」はジョン・モノリューのダルシマーの弾き語りソロ。8.「Van Dieman's Land」はジョンのボーカルによるトラッドで「John Barleycorn」に似たメロディー。トニーのフルートが良い出来。ちなみに本曲は他の作品未収録。9.はジョン・モノリューとジャッキーのリードボーカルで、ペンタングルの「Solomon's Seal」1972 T7 に収められているバージョンとかなり異なり、「Basket Of Light」 1969 T4 収録の「The Cuckoo」により近い。

10.「Sidi Brahim」はエキゾチックなスケールを使用したギター、フルート、タブラによるインタープレイ。ギターのリードソロはオリエンタルなアルペジオのプレイの後、「Bert & John」1966 T1収録の「East Wind」のギターパターンの引用、そしてバート・ヤンシュ的なブルース・リックから彼独自のブルースへと変化する。中近東の音階とブルースとの融合が見事。次にトニー・ロバーツのソロに移る。ひらひらと舞うような彼のソロは圧倒的としか言いようがない。タブラのソロの後にテーマに戻るあたりの切れ味も見事な、11分の大熱演。11.はフェイズシフターをかけたエレキ・ダルシマーのソロ。12.「John Dory」 は輪唱形式で歌われる。13.「So Early In The Spring」は R17で聴かれた鮮やかなスリーフィンガーのギターにぴったり寄り添うフルートが素晴らしい。この辺では観客も盛り上がっていて拍手や掛け声にも熱が入っている。14.「Fair Flower」はジャッキーのリードボーカルによる、すがすがしいトラッド。最後の15.「John Barleycorn Is Dead」はお馴染みの曲で、刈られて砕かれて命を落とすが、最後にビールとして再生する大麦のことを擬人法で歌うトラッドの傑作。4人による厚みのあるコーラスが素晴らしい。

フォーク・シンガーとしても有名なエリック・フォン・シュミットによるカントリー・アート調の表紙のイラスト(同グループのビデオ V1 の表紙写真を題材としたメンバーの似顔絵) が最高の出来。


 
R20 Live In Concert (1984) Shanachie 95001 
 



[John Renbourn & Stefan Grossman]

John Renbourn : Guitar & Vocal
Stefan Grossman : Guitar & Vocal


〔Side A〕
1. Looper's Corner * [Grossman]  R11 V2 V4
2. The Shoes Of The Fisherman's Wife Are Some Jive Ass Slippers * [C.Mingus] R11 V2
3. Twelve Sticks [Rev. Gary Davis]
4. Cocaine Blues [Rev. Gary Davis]
5. Pretty Girl Milking A Cow [Traditional Arr. Duck Baker]
6. Tight Rope [Stefan Grossman]

〔Side B〕
7. Make Believe Stunt [Rev. Gary Davis]
8. a Sheebeg An Sheemore [Tradtional Arr. Stefan Grossman, Duck Baker]
  b Drunken Wagoner [Tradtional Arr. Stefan Grossman, Duck Baker]
9. The Assassination Of John Fahey [Stefan Grossmsn]
10. a Cincinatti Flow Rag [Rev. Gary Davis]
   b New York City Rag
11. Hot Dogs [Stefan Grossmsn]

〔Side C〕
12. a Judy * [Renbourn]  R1 R3 V2 K1 K2
   b Angie * [D.Graham]  R1 R13 V2 K2
13. Lindsey [A. Fisher]  R17 R19 R24 R25 V1 V5 V9 K3
14. a Lament For Owen Roe O'Neil *  R9 R13 R24 R27 V5 V7 K3
   b Mist Covered Mountains Of Home *  R14 R17 R24 V5 V7 K1 K2 K3
15. So Early In The Spring  R13 R17 R19 T3
16. The English Dance * R13 R14 R17 R19 R25 V1 V2 V5 V7 V8 V9 K1 K3 K5
17. Great Dreams From Heaven [J. Spence]  R17 R18 R22 R24 R27 R29 Q32 V3 V5 V8 V9 K2
18. Sweet Potato* [Jones, Cropper, Dunn]  R5 R12 R24 V3 V5 V7 K1 K2

[Side D]
19. a Bonaparte's Retreat *  R15 Q16
   b Billy In The Lowgrounds *  R15 Q16
20. Goodbye Porkpie Hat * [C. Mingus]  T1 T3 T17 V2
21. Candyman [Rev.Gary Davis]  R1 R3 R13 V2
22. Midnight On The Water *
23. Spirit Levels * [Grossman, Renbourn]  R11 Q15 Q16 V2 V3 V4
24. Mississippi Blues No.2 *  R15 V3

Nic Kinsey : Remix Engineer


〔楽譜掲載〕1,13,15 G7、 3a K1 K2 G2 G3 F1、 3b 8 K2、 4 K3、 5a G4 F3 F5、 5b K1 K3 G6 F4、 7 K1 K3 G4 G6 F4、 8 K2、 9 K1 K2、 12 G1 G2

録音場所: オレゴン州ポートランド(アメリカ)、シドニー(オーストラリア)

注)3〜11曲はステファンのソロ演奏

写真上: オリジナル盤表紙
写真下: 2010年再発盤 本作(CD2枚)+ V2(DVD)のセット

 

シャナーキー・レーベルから発売されたライブ盤。表紙の写真ではジョンは東海キャッツアイのCE2000(おそらく初来日の際に東海楽器からもらったもの)を持っている。裏写真は以前の作品 R11の表紙写真と同じ時に撮られたもので、グロスマン所有のプレイリー・ステート(シカゴのラーソン兄弟が製作したアーチドトップをサン・フランシスコのギター修理家ジョン・ランドバークがフラットトップにコンバートしたもの)を持っている。本作での使用ギターは不明。サウンド的には生に近い音で、ビデオ盤 V2 よりは良い音。LP2枚組ということでコンサートの模様がタップリと収録されている。

司会者の紹介に続いておこる拍手は数百人の規模。グロスマンの司会により進行してゆく。1.「Looper's Corner」はオリジナルよりテンポが早め。レンボーンのソロもオリジナル録音とは全く異なり、快調な出だし。グロスマンが2.のチャールス・ミンガスの曲名を紹介すると観客からどっと笑い声がおきる。変なタイトルであることは分かるけど、日本人にはなにが面白いのか良くわからない。静かなテーマからグロスマンの激しいリード・ソロが続き、またテーマに戻る。本作はなかなか良い録音で臨場感のある音場が再現されている。ここでレンボーンは退場し、グロスマンがソロでお馴染みの曲を9曲披露する。

レコードC面はレンボーンのソロでスタート、ファンにはお馴染みの曲が続く。全体的にスタジオ録音よりテンポが速い。観客は静まりかえってジョンの演奏に集中。ジョンのボーカルは、ほどほどにラフで飄々としていて良い感じ。17.「Great Dreams From Heaven」の途中の部分はインプロヴィゼイションのパートがあり、いつもと異なる演奏が聴ける。18.「Sweet Potato」は意外に淡白な演奏。D面からステファンとのデュエットに戻る。20.「Goodbye Porkpie Hat」はバート・ヤンシュとのデュエットの名盤 T1 以来久しぶりの録音。グロスマンが頑張っていて自分の個性をしっかり出しているのはさすが。間奏部分のリフは新しいパターンで、その結果ジョンのリードソロもオリジナルと全く異なるものになっている。適度な緊張感が良い。21.「Candyman」はジョンとステファンの裏声との掛け合いのボーカル。22.「Midnight On The Water」は本作で唯一、他の作品未収録のもので、ゴスペル調のメロディーが印象的な曲。23.「Spirit Levels」はステファンのリズムがアグレッシブで二人のギタープレイのインタープレイも冴えをみせる。アンコールの24.「Mississippi Blues No.2」はアラン・ロマックスによるデルタ・ブルースの発掘について、ステファンのコメントの後に演奏される彼のブルースの代表曲。タブ譜付きのレコード「How To Play Blues Guitar」におけるオーロラ・ブロックとのデュエットがオリジナルになるため、ここではNo.2というわけだ。レンボーンによるリードギターの絡みがとても良い。グロスマンによるブルースの変遷の語りを入れながら、ブルースに始まり、ブギウギ、B.B.キング調の泣きのソロが入りゴキゲンな演奏。全体的に余裕綽々の演奏で二人のベテラン・ミュージシャンの貫祿を感じさせる作品。

ちなみに本作はCD化の際には1枚に収めるため、一部の曲がカットされたが、2010年ステファン・グロスマン・ギター・ワークショップより、CD2枚+DVD(V2と同内容)のセットで発売されたものは全曲収録されている。


R21 The Nine Maidens (1985) Flying Fish FF378
 

John Renbourn: Guitar, Cittern (5), Drums (4), Recorder (6)
Remy Froissart: High-string Guitar (2)
Toby Pedley: Recorders (4,6)
Tony Roberts: Northumbrian Pipes, Sopranino Recorder (5)
Jeff Merrell: Fiddle (5)
Joe Tancock: Bodhran (5)
Ben Burrow: Congas (6)
Jules Diggle: Tambourine (6)


[Side A]
1. New Nothynge [Renbourn]  R4 Q13 K1
2. The Fish In The Well [Renbourn]  R9
3. Pavan d'Aragon
4. Variations On My Lady Carey's Dompe

[Side B]
5. Circle Dance  K5
6. The Nine Maidens
  a. Clarsach
  b. The Nine Maidens
  c. The Fiddler

James Wier: Photo
John Renbourn: Producer

〔楽譜掲載〕 1. K1 G1 G2 G10 F3,  6. G5,  3. G10,  5. K5

 

オリジナル作品によるソロアルバムとしては、前作「Black Balloon」1979 R14から 6年ぶりに発表されたもの。その後は1998年の「Traveller’s Prayer」R26まで、フルアルバムとしての新作はなかったため、次作まで10年以上もお休みということになる。当時レンボーンはイギリスのダーリントン大学で正式に音楽を学んでいた頃で、その成果が本作に遺憾なく発揮されている。本作には、各曲のルーツや背景についての詳細な解説がついており、アカデミックな雰囲気が漂っている。ただしその分とっつきにくくなった感じもするけど………。

1.「New Nothynge」は「Another Monday」1966 R4収録の初期傑作曲の再録音。オリジナルはギターソロだったが、後にデュエット・パートが書き加えられ、ペンタングルのコンサートでバートとのデュエットで演奏されたという。また1977年にはジョン・ジェイムスのソロアルバム「Descriptive Guitar Instrumentals」Q13 に二人のデュエット・バージョンが収録された。本作はそれに続くもので、今回は新たにスローなイントロの部分が追加されている。さらにハーモニー・パートのギターはフランクリンの OMモデルにシーモア・ダンカンのサウンドホール・ピックアップを付けたもので、柔らかなエレキギターの様な音。このアレンジは何度聴いても惚れ惚れとする素晴らしいもの。2.「The Fish In The Well」は「Hermit」1976 R9 の「The Princess And The Pudding」を焼き直したもの。今回はレミー・フロサールというギタリストのハイ・ストリング・ギターとのデュエットで、フランス・パリで録音された。3.「Pavan d'Aragon」は昔スペインでヴィウエラ(リュートの前身でギターの先祖とも言われる) という楽器で演奏されていた曲が題材とのこと。曲自体は地味で瞑想的な感じ。4.「Variations On My Lady Carey's Dompe」はギターとレコーダーのアンサンブルにレンボーン自身による太鼓や、途中からエレキギターがオーバーダビングされている。同じ旋律が延々と繰り返されるダンス・チューンで16世紀のころの作品。

5.「Circle Dance」はサレタレロという中世のダンス・テューンをベースとしたもので、アップテンポでシンプルなメロディーが執拗に反復され催眠術的な効果がある。前半はギターとフィドルがメインで、後半からお馴染みトニー・ロバーツによるパイプとレコーダーが加わり大いに盛り上がる。ちなみに本曲のギターのパートが、後年の教則ビデオテープ K5 に「Saltarrello II」というタイトルで収録された。6.は3つのパートからなるメドレー。「Nine Maidens」とは、イギリス各地に見られる古代遺跡ストーン・ヘンジ(環状列石)のことで、その名の由来は、魔術を駆使する9人の処女の伝説や、黒魔術でダンスを踊って石にさせられた乙女の話等の諸説がある。 a「Clarsach」のパートは彼のギター一本による、非常に厳粛な雰囲気の曲。 b「The Nine Maidens」はアップテンポになり、フィドル・テューンの様な演奏で、かなり複雑な演奏。そのうちにパーカッションが加わり、レコーダーのオーバーダビングも入って、かなり賑やかになる。最後のc「The Fiddler」はギターとコンガによる演奏で、これもアイリッシュ・フィドル・テューン的な感じの曲。

ジャケットは白地に、夕日に映えるストーンヘンジの写真を配したシンプルで美しいもので、後に発表された楽譜集 G5 も同じデザインであった。裏面の写真でジョンが持っているのは愛用のフランクリンOMモデル。


R22 The Three Kingdoms (1986)  Shanachie 95006
 





[John Renbourn & Stefan Grossman]

John Renbourn: Guitar (Solo 5, 11)
Stefan Grossman : Guitar (Solo 3, 7)

John Paul Jones: Producer

[Side A]           
1. The Three Kingdoms [Grossman, Renbourn]  
2. 'Round About Midnight [T. Monk]  V7        
3. Dollar Town [Grossman]
4. Catwalk  [Renbourn]             
5. Cherry  [D. Brand]  V5 V7 K3 K4          

[Side B]
6. Rites Of Passage [Grossman, Renbourn]
7. a Kiera's Dream [Grossman]
  b Parson's Mud [Grossman]         
8. Keeper Of The Vine [Grossman, Renbourn]
9. Minuet In D Minor (From The Anna Magdalena Notebook) [Renbourn]
10. Farewell To Mr. Mingus [Grossman]
11. a Abide With Me  R24 Q32 V3 V5 V8 V9 K2
   b Old Gloryland [Renbourn]  R17 R18 R20 R24 R27 R29 Q32 V3 V5 V8 V9 K2

〔楽譜掲載〕 5 K4 F7、 11 K2
再発CDには、全曲を掲載した46ページのタブ譜ブックレットがPDFファイルとしてディスクに収納


すべてインストルメンタル

写真上: オリジナル・レコード
写真下: 再発CD 


 

グロスマンとレンボーン最後の共演盤。元レッド・ツエッペリンのベーシスト、ジョン・ポール・ジョーンズのプロデュースということで発表当時話題になった。当時二人は近所付き合いがあったようで、本作品と前後してジョン・ポール・ジョーンズが製作したサントラ作品「Scream For Help」1985 Q18 にレンボーンが1曲参加している。過去2作と比較すると、本作は完璧主義のポリシーできっちり作られたという印象。非常にクールでスマートな感じで、その分以前の作品にあった人なつっこさに欠ける。

1.「The Three Kingdoms」は2台のギターのからみが絶妙で、完成度の高い作品。すこしダークな雰囲気がいい感じ。レンボーンのリード・ギターの音色がきれいだし、グロスマンの伴奏部分の音作りも考え抜かれたもの。2.「'Round About Midnight」はジャズ・ピアノの巨人セロニアス・モンクの名作に挑戦。本曲はダック・ベイカー、セス・オーステン、中川イサトのカバーがあるが、ここはレンボーン主導のアレンジ。基本部分をグロスマンが弾き、レンボーンはハーモニーとリードを担当。原曲の持つ限りない奥深さと真夜中の寂寥が見事に表現されている。レンボーンのソロも出色の出来。3.はグロスマンのソロ演奏。4.「Catwalk」はレンボーンの作曲でジャズ・ブルース調の曲。中川イサト氏の作品と曲想がとても似ている。ふたりのギターのコンビネーションは完璧。それにしてもクールな演奏。5.「Cherry」はレンボーンのソロで、南アフリカのジャズ・ピアニストであるダラー・ブランドの曲。彼はアフリカン・ジャズを指向した人で、その民族的な音楽は強烈な個性があった。レンボーンのアレンジはドロップド・D・チューニングによるもので、ハワイアン・スラックキー・ギターのアイデアが取り込まれており、アフリカとハワイの融合というワールド・ミュージック的な面白さがある。本曲はスタジオ録音としてきっちり作ってあるが、間奏部分はステージに於てはフリーな即興演奏になる。

B面最初の曲6.「Rites Of Passage」はグロスマン主導の曲のように思える。前作の「Idaho Potato」に似た感じの作品。7.はグロスマンの単独演奏によるフィドル・テューン。8.「Keeper Of The Vine」は英国の薫りがする曲。レンボーンのエレキギターのオーバーダビングが加わる。テーマの部分はブリティッシュ的な哀愁あるメロディー。9.「Minuet In D Minor」はレンボーンの曲とあるが、完全にバッハ調のバロック音楽。リバーブをきかせた繊細なサウンドはいかにも古典的。10.「Farewell To Mr. Mingus」はグロスマン作曲のチャーリー・ミンガスに捧げたリクイエム。「Goodbye Porkpie Hat」や「Theme From Fisherman's Wives……」等のミンガスの曲をカバーしてきたこともあって、亡くなったミンガスに対する追悼の意が心に迫る秀作。最後 11.はレンボーンの単独演奏による賛美歌メドレー。「Old Gloryland」は「Great Dreams From Heaven」のインストルメンタル・バージョン。ステージでは後者のタイトルで歌付きで演奏される。作曲者はレンボーンとなっているが、バハマのギタリスト、ジョセフ・スペンスの演奏スタイルがベースとなっている。他のバージョンよりもリズムを抑え目にしてしっとりと弾いているのが印象的。とは言え、間奏部分でブルージーなフレーズが飛びだし、やはりレンボーンという感じ。

オリジナル・レコード・ジャケットの裏面の写真でジョンが持っているギターはニューヨークのルシアー、ラルフ・ブラウンによるOMスタイルモデル。シャナーキーから再発されたCD盤のジャケット裏面の写真は、レコードのものとは異なり、ビデオ V2 の表紙と同じ写真が使われていて、そこでジョンが持っているギターは日本のアリア製のエレコード。


 
R23 John Renbourn's Ship Of Fools (1988)  Flying Fish  FF466
 

John Renbourn: Guitar, Cittern (3,6) ,Vocal
Maggie Boyle: Flute, Whitsle, Bodhran, Vocal
Tony Roberts: Flute, Alto Flute, Recorder, Northumbrian Pipes, Racket, Clarinet, Bass Clarinet, Soplano Sax, Vocal
Steve Tilston: Guitar, Mandolin, Arpeggione, Vocal
Mitch Greenhill: Percussion (6), Cabasa (9)
Scott Breadman : Hand Drum, Triangle (9)
Michael Tempo : Talking Drum (9)

Mitch Greenhill: Producer
Ian Dent : Engineer
Eric Von Schmidt : Cover Design

[Side A]  
1. Searching For Lambs
2. Sandwood Down To Kyle [Dave Goulder]  R24 V5 V9 K3
3. Bogey's Bonnie Belle
4. Lark In The Clear Air * 
5. The Maritinmass Wind [Renbourn]  R24 R25 R26 R27 V5 V8 V9 K3

[Side B]  
6. a Cobbler's Jig *
  b Maltese Brawle *
7. I Live Not Where I Love
8. The Verdant Braes Of Screen
9. Ship Of Fools [Renbourn, Tilston, Boyle, Roberts]
10. Traveller's Prayer [Renbourn]  R26


[楽譜掲載〕 2 K3、 5 K2,F7 
4.はレンボーン不参加

 

「Ship of Fools」というのがグループの名前で、「John Renbourn's 」は「ジョン・レンボーンの」という意味だ。メンバーは長年のパートナーであるトニー・ロバーツ、ブリティッシュ・フォーク中堅のコンビ、マギー・ボイルとスティーブ・ティルストン夫婦の4人。ジョンは、以前スティーブのアルバム「Songs From The Dress Rehearsal」(1976 Q12、長らく廃盤となっていたが 2005年に再発)に1曲ゲスト参加したことがある。また彼は、バート・ヤンシュがインタビューで好きなギタリストとしてあげていた人で、スティーブがプロデュースしたマギー・ボイルのソロアルバム「Reaching Out」1987 ではバートが2曲ゲスト参加している。さらに二人は、バートのソロ・アルバム「Ornament Tree」1990 に全面参加、そして「When The Circus Comes To Town 」1994ではマギーがバックボーカルで参加しており、さらに1996年10月には3人で来日する等、バートやジョンとの親交が深い人々。今回は多くの曲でパーカッションが入っていないこと、マギー・ボイルがフルートやホィッスルの名手でもあり、様々な楽器を持ち替えてマルチふりを遺憾なく発揮するトニー・ロバーツと合わせて、厚みのあるサウンドを展開、室内楽のような品のある作品となった。ただし以前のジョン・レンボーン・グループと異なって現代的なアレンジが施されており、スティーブ・ティルストンのカラーがかなり反映されているようだ。

1.「Searching For Lambs」 からロックやポピュラー等の現代風リズムが聴ける。マギーのボーカルはジャッキー・マクシーの様な、透き通ったとても気持ちの良い歌声の持ち主。少し器用さに欠けるが、知的でしなやかな精神と豊かな音楽性が感じられる。またマギーとトニーによるダブル・リード楽器のアンサンブルが新鮮な響きを与えている。2.「Sandwood Down To Kyle」はジョンのソロ・ステージのレパートリーであるが、ここではディレイをきかせて厚みを持たせた彼のボーカルが通常と異なる感じ。マギーのホィッスルが遠くで聞こえる。3.「Bogey's Bonnie Belle」はスティーブがメイン・ボーカルを担当、マギーがハーモニーを付ける。スティーブはフラットピックでギターを弾き、ジョンはシターンを弾いている。4.「Lark In The Clear Air」はマギーとトニーのフルート2台の共演で、ジョンは不参加。バート・ヤンシュ率いるペンタングルが「Think Of Tomorrow」1991で、この曲の歌付きバージョンをカバーしている。5.「The Maritinmass Wind」はジョンのオリジナルで、マギーのボーカルが入っているが、もとはスコットランドのトラッドで、ギターのパートは後に「South Wind」というインスト曲に改作される。ここではギターが精一杯目立っており、使用ギターはその音色から間違いなくフランクリンだろう。

B面最初の曲6.はアップテンポ、マイナー調のダンス・テューンで、a b切れ目なく続く。スティーブはマンドリン、ジョンはシターンを担当。プロデューサーもパーカッションで参加、トニーとマギーのダブル・リード楽器の多重録音で厚みを持たせている。7.「I Live Not Where I Love」はスティーブのナイロン弦ギターがマギーの伴奏を担当し、途中からジョンのリードギターが加わる。8.「The Verdant Braes Of Screen」はスティーブのしっかりしたボーカル、マギーのハーモニーがぴったりで、安定したフラットピックのギターも良い。タイトル曲の9.「Ship Of Fools」はスティーブのリズムギターが現代的なリズムを刻み、マギーとトニーのダブル・フルートが活躍する。途中からジョンのリード・ギター、パーカッションが加わり、大いに盛り上がる。本作は残念ながら歌詞が添付されておらず、何を歌っているのか良く分からないのだが、本曲の1節のみジャケット裏面に掲載されている。最後10.「Traveller's Prayer」はレンボーンのオリジナルによる宗教的雰囲気に満ちた静粛なアカペラで本作の幕を閉じる。ちなみに本作のジャケットのイラストは、R19 と同じエリック・フォン・シュミットによるもの。

 
R24 Live In Italy (2006)  Castle CMRCD1326 
 


John Renbourn: Guitar, Vocal (1, 3, 5, 7)

1. Lord Franklin   T5 T10 V5 V7 K2
2. a South Wind * R23 R25 R26 R27 V5 V8 V9 K3
  b Blarney Pilgrim * R15 R25 R27 V5 V8 K3
3. Sandwood Down To Kyle  R23 V5 V9 K3
4. Little Niles *  R25 R27 R28 Q25 V5 V7 K4
5. a Abide With Me R22 Q32 V3 V5 V8 V9 K2
  b Great Dreams From Heaven   R17 R18 R20 R22 R27 R29 Q32 V3 V5 V8 V9 K2
6. a Lament For Owen Roe O'Neill *  R9 R13 R20 R27 V5 V7 K3
  b Mist Covered Mountain Of Home *  R14 R17 R20 V5 V7 K1 K2 K3
  c The Orphan *  R13 R14 R17 V5 K1 K2 K3
7. Lindsay   R17 R19 R20 R25 V1 V5 V9 K3
8. Sweet Potato  R5 R12 R20 V3 V5 V7 K1 K2

おそらく80年代後半 ローマ「The Folk Studio」にて録音

[楽譜掲載〕 1.G1 K2、 2. K3 F7,

 

久しぶりの新譜かなと思ったが、キャッスル・レーベルによる復刻ものでした。1998年イタリア国内で短期間出回ったもので、もともとは収録場所であるローマの「The Folk Studio」について特集したフォーク雑誌に添付されたものだったらしい。テベレ川を渡ったローマ市街南部のトラステベレは下町情緒溢れる地区で、ローマ観光から少しはずれるものの、サンタマリア・イン・トラスレベレ教会の他、穴場的レストランがたくさんある所だ。もともとはストリップ・バーだった所で、場所の雰囲気やマスター・客層の良さで、レンボーンお好みの場所だったそうだ。自然なエコーがかかった音像で、小さなクラブの空間が醸し出す親密な感じと、録音されている事を意識しない伸び伸びした演奏を楽しむことができる。

最新の録音でないこと(曲目と演奏の感じから、ライブ音源がかなりある80年代後期のものと推定される)、耳にタコができそうな、お馴染みのステージ曲ばかりだったので、「またかぁ」と思ってしまったのだが、実際聞いてみると、当時の他のライブ音源よりずっと出来が良く、一気に聴き込んでしまった。曲によっては1992年のビデオ作品 V5のように、かなりエフェクトがかかったギター・サウンドもあるが、曲によって音色がまちまちなので、同じ日でエフェクターを調整したものかもしれないし、異なる収録日の演奏を集めたものかもしれない。

1. 3. 5. 7.のボーカルのエコーは気持ちよく臨場感があり、目をつぶって聴いているとジョンが目の前にいるかのようだ。2.はエフェクターを深めにかけた音で、V5のサウンドに近い。3.「Sandwood Down To Kyle」は収録時間を気にせずじっくり弾いている。4.「Little Niles」もリラックスと緊張がバランス良く入り混じり、いい出来だと思う。おなじみの5.「Great Dreams From Heaven」、8.「Sweet Potato」では間奏部分で、乗っている時に発せられるうなり声が聞こえる。なおCDでは、5の曲名はb、6.の曲名も b しか表示されていないが、実際は上記の通りメドレーで演奏されている。お得意曲7.「Lindsay」、テクニックのショーケースである 8.での演奏は、肩がはらない自然体の演奏でリスナーを癒してくれる。

レンボーンのソロ・コンサートのライブ音源としては、意外ながらビデオを除く初めてのCD・レコード作品。推測するに1回のコンサートの半分しか収められていないが、当時の発表音源としてはベストの出来であると思う。