R25 Wheel Of Fortune(1993)  Flying Fish FF70626


[John Renbourn And Robin Williamson]

John Renbourn : Guitar, Vocal
Robin Williamson: Celtic Harp, Guitar, Whistle, Vocal

1. a South Wind *  R23 R24 R26 R27 V5 V8 V9 K3
  b Blarney Pilgrim *  R15 R24 R26 R27 V5 V8 K3
2. a The Curragh Of Kildare
  b Milliner's Daughter *
3. a Bunyan's Hymn *  R26 V5 V8 V9 K3
  b I Saw Three Ships *  R26 Q20 V5 V8 V9 K3
  c The English Dance *  R13 R14 R17 R19 R20 V1 V2 V5 V7 V8 V9 K1 K3 K5
4. The Lights Of Sweet St. Anne's [Williamson]
5. The Snows  R26 T7 T17 V8
6. Finn And The Old Man's House
7. Matt Highland
8. Little Niles * [Randy Weston]  R24 R27 R28 Q25 V5 V7 K4
9. The Rocks Of Bawn
10. Lindsay  [Archie Fisher]  R17 R19 R20 R24 V1 V5 V9 K3
11. Port Patrick *
12. Wheel Of Fortune

〔楽譜掲載〕1 K3 F7、 3ab 10 K3、 3c K1 K3 G4 G6 G8 F4、 8 K4 F7

注) 6,9はジョン・レンボーンは不参加

録音 Old Town School Of Fauk Music, Chicago,Illiois May 7,1993
John Burroughs School, St.Louis,Missouri May 6,1993
Pres House, Madison, Wisconsin (8) May 4,1993


元インクレディブル・ストリング・バンドのロビン・ウィリアムソン (1943- ) とのデュエットの実況録音。インクレディブル・ストリング・バンドは、ペンタングルとほぼ同時期に活躍したフォーク・グループで、サイケデリックな歌詞とサウンドが特色であった。ロビンは無名の頃にグラスゴーでバート・ヤンシュと同居した事もあり、昔からいろいろ関係があるようだ。同グループ解散後は自己のバンドを組んだりしていたが、最近はスコットランドの音楽を探究、昔の伝説の語りをしたり、演劇の音楽に携わっているという。ジョンにとってはフルアルバムとしては 5年振りで、当時はレコードとCDの切り替えにより、彼の作品が店頭に並ばなくなった時期でもあり、ファンにとって久しぶりの便りであった。

1a 「South Wind」は前作 R23の「The Maritinmas Wind」のギター・パートを改作したもの。ロビンのギターに寄り添うロビンのケルティック・ハープの音が良い。そのナイロン弦の優しい音は、もううっとりする程。 b「Blarney Pilgrim」はフィドル・テューンで、今度はロビンがホィッスルを演奏する。2.はロビンの主導による曲で、 a「The Curragh Of Kildare」は「A Rare Conundrum」1977でバート・ヤンシュが歌っていた曲。ロビンのボーカルはコブシのきいた少しクセのある声だが、そのしなやかさが持ち味。ロビンの司会で、彼らのグループ名を「Impenetrable Stringtangle」にしようかと考えているという冗談に観客がどっと笑った後、ジョンがお馴染みの得意曲 3.をソロ演奏する。年季の入った演奏で、以前よりも余裕があり、風格を感じる好演。4.「The Lights Of Sweet St. Anne's」はフラットピックのギターの弾き語りによるロビンのボーカルで、ジョンは控えめなリード・ギターを担当。5.「The Snows」は過去にペンタングルが「Soloman's Seal」1972 T7でバートのボーカルで演奏した曲(アン・ブリッグスの録音もある)。ジョンのボーカルは年をとるにつれて声が低く豊かになり円熟してきたようだ。

6.はジョン非参加。ロビンのハープの弾き語りにより、昔の伝承話が8分にわたり鮮やかに披露される。その淀みのない語りが素晴らしい。7.「Matt Highland」はジョンの弾き語りでロビンはハープで伴奏。この曲は他の作品では聴けないもの。8.「Little Niles」はレンボーンお馴染みのジャズ・アレンジの傑作曲で、この曲だけ別の場所での録音で、いくつかの録音から出来のよいものを選んだからであろう。9.はロビンのギターの弾き語りでジョンは不参加。10.「Lindsay」はジョンのステージの定番曲で、ここではロビンのギターとのデュエットが良い出来。11「Port Patrick」はハープがメインのインストルメンタルで、ジョンは控えめにハーモニーをつける。ロビンの司会の後、最後の曲12.「Wheel Of Fortune」が演奏される。CDの解説の下部に歌詞の1節が掲載されている。「回れ幸運の輪よ。回ってこちらを向いておくれ。人生は先の見えないもの。誰も予測できないのだ」という示唆に富んだ内容で、トラッドの持つ底知れない深みがあるもの。ロビンのボーカルにジョンがリード・ギターを付け簡単なソロもとる佳曲。

ジャケット裏面の写真でロビンはハープを、ジョンはギターを持って写っている。そのギターはフランクリンのジャンボ・カッタウェイ・モデル。ただし本作でジョンがこのギターを使っているかは不明。二人の奏でる楽器の円熟した音色と枯れたボーカルは、リスナーの疲れた心を優しく解きほぐしてくれる。聞き込むほどに味が出てくる作品。


 
R26 Traveller's Prayer (1998) Shanachie 78018 
 
R22 Traveller's Prayer
John Renbourn: Guitar,Vocal
Connor Byrne: Flute
Maire Breathnach: Fiddle
Joe McKenna: Uilleann Pipes, Whistle
Dick Lee: Clarinets, Recorder
Bill Kemp: Percussion
Nick Turner: Percussion (10)
Gerry Cullen, Phil Callery, Fran McPhail (The Voice Squad), Mairead Ni Dhomhnail: Vocals


1. Bunyan’s Hymn (Monks Gate)  R25 V5 V8 V9 K3
2. When The Wind Begins To Sing  R25 T7 T17 V8 
3. Wexford Lullaby   
4. a I Saw Three Ships  R25 Q20 V5 V8 V9 K3
  b Newgate Hornpipe   
5. a Planxty Llanthony
  b Loftus Jones [Carolan]   
6. Fagottanz
7. At The Break Of Day  Q32 V9  
8. Travellers’ Prayer R23 
9. a South Wind  R23 R24 R25 R27 V5 V8 V9 K3
  b Feathered Nest
10. Estampie

〔楽譜掲載〕 1 4a K3、 9a K3 F7

 

本当に久しぶりのソロアルバム。スタジオ録音のフルアルバムとしては、前作がグループ名義の「Ship Of Fools」1988 R23。ソロアルバムでは「The Nine Maidens」1985 R21以来だから、10年以上も待たされたことになる。ライブ盤・ゲスト参加盤やビデオ等は時々発売されていたけど、巨匠として周囲の尊敬を集め、時々コンサートを行い、大学で講座を持っているという。この悠悠自適な生活で満足しているようだし、年もとってシンドイだろうから、もうソロアルバムは作らないのかなとあきらめていたところだった。やはりギターソロではなく、アンサンブル主体の作品だったけど、円熟というか、なんとも枯れ切った感じがすごい。

ここ10年の音楽界の変化はすさまじく、ケルト音楽がワールド・ミュージック・ブームのなかでもてはやされ、チーフタンズのようにロック・フェスティバルに出演したり、有名ロックミュージシャンと共演するアーティストや、よりオーセンティックで純粋な音楽を探求する音楽家達も脚光を浴びるようになった。ソロギターの世界でもケルト音楽を奏でるギタリストを大勢輩出し、まさに黄金時代だ。そのなかで本作は非常に地味な感じがする。レンボーンの解説によると、アイルランドとイングランドの音楽を混ぜ合わせたものを造ったとのことであるが、自然で心地よく、作為的・野心的な面はまったく感じない。ミュージック・マガジン誌での批評は「いまいち」だったが、純粋なケルト音楽あるいは大胆なフュージョンを望む人には、本作は中途半端に聞こえることだろう。でも初期のブルースと中世音楽、ペンタングル時代のジャズとトラッドの融合を愛してきた私にとっては、これほど上品でまろやかな音楽はないと断言できる。まさに21年ものウィスキーがもつような琥珀色の輝きがあるのだ。

1.「Bunyan’s Hymn」はギターソロでおなじみの曲。歴史の教科書に出てきたバニアン作「天路歴程」の詩がついたイングランドの聖歌であるが、彼のアレンジは歌なし。いつもよりゆったりとしたテンポで始まり、途中からディック・リーのクラリネットとレコーダー(オーバーダビング)が加わり、厳かな雰囲気となる。2.「When The Wind Begins To Sing」もアン・ブリッグス、アーチー・フィッシャー、バート・ヤンシュでおなじみの曲(別名「Snow」)だが、レンボーンのカバーは比較的新しく、1993年の「Wheel Of Fortune」R25 で彼の弾き語りが楽しめる。本作のアレンジは「The Lady And Unicorn」1970 R6 収録の「My Johnny Was A Shoemaker」に近く、チェロやフルートとのアンサンブルが楽しめるが、昔よりも淡々とした演奏だ。リードギターのオーバーダビングはピックアップを使用してエレキ・ギター的な音に加工されている。3.「Wexford Lullaby」はアカペラで、レンボーンは歌っていないようだ。彼によるとメンバーは「息を呑むような組み合わせ」。出だしの女性はジョーン・バエズを強くしたような声で非常に魅力がある。途中から男性ヴォイスが加わる深みのある4声合唱だ。

4a「I Saw Three Ships」もおなじみの曲。オープンGチューニングの魅力にあふれたアレンジで、パーカッションとレコーダーが彩りを添える。4b「Newgate Hornpipe」は同じチューニングでパーカッションのみをバックに演奏される、明るく軽快なダンス・チューン。ギター・ソロ期待のファンにとってはたまらない、目もさめるようなプレイだ。次曲はギター2台のオーバーダビングによる演奏。5a「Planxty Llanthony」はウェールス南部にある修道院の宿の歓待に対する彼自作の返礼歌(プランクシティ)。5b「Loftus Jones」はオカロランの曲で、最もクラシックらしいサウンド。6.「Fagottanz」はダブリン交響楽団によるアンサンブル。7.「At The Break Of Day」はなじみのあるメロディー。8「Travellers’ Prayer」も3.と同じくアカペラ。R23のバージョンよりもずっと出来がよい。厳かな合唱の後、おなじみの9a「South Wind」を聴くとほっとする。以前の演奏と比較すると、その円熟味が良くわかる。9b 「Feathered Nest」はバグパイプの曲のアレンジ。そして本作は10.「Estampie」の静かなダンス曲で終わる。本作はグラミー賞にノミネートされたが、惜しくも受賞は逃した。はたして次作はいつになるのかな?使用ギターはフランクリンOM (10.のみマーチンD62)。

[2011年追記]
次作の発表は、何と13年後でした!


R29 Joint Control (2016) [With Wizz Jones] Riverboat TUGLP1095 



John Renbourn: Guitar, Vocal (2, 4, 7, 14, 17)
Wizz Jones: Guitar (4, 7, 17以外), Vocal (3, 5, 6, 8, 9, 11, 12, 14, 15, 16)

[CD Version]

1. Hey Hey [William Broonzy] *
2. Buckets Of Rain [Bob Dylan] R17
3. Glory Of Love [Billy Hill]
4. Getting There [Mose Allison]
5. National Seven [Alan Turnbridge] R1 R3
6. Mountain Rain [Archie Fisher] Q28
7. Great Dreams From Heaven [Joseph Spence] R17 R18 R20 R22 R24 R27 Q32 V3 V5 V8 V9 K2
8. Strolling Down The Highway [Bert Jansch]
9. In Stormy Weather [Al Jones] Q27
10. Balham Moon [Wizz Jones] *
11. Blues Runs The Game [Jackson Carey Frank] R1 R3 R17 Q10 Q17
12. Fresh As A Sweet Sunday Morning [Bert Jansch]
13. Joint Control [Bert Jansch] *


[2LP Record Version]

Side A
・ Hey Hey
・ Buckets Of Rain
・ Glory Of Love
・ Getting There
14. Cocaine [Gary Davis] R1

Side B
・ National Seven
・ Mountain Rain
・ Strolling Down The Highway
15. Bad Influence [R. Clay, M. Vannice]

Side C
・ Great Dream From Hevaen
・ Balham Moon
・ Blues Runs The Game
16. Love Has No Pride [Eric Kaz, Libby Titus]

Side D
・ Fresh As A Sweet Sunday Morning
・ In Stormy Weather
・ Joint Control
17. The Lazy Farmer (The Young Man Who Wouldn't Hoe Corn) [Trad. arr. John Renbourn] R17 V7

注 青字は、LP盤のみに収録されたボーナス・トラック
   *は、インストルメンタル

Recorded shortly before John Renbourn's death in March 2015


ジョンの遺作。彼は2015年3月26日心臓発作のため急死したが、その前日まで、ほぼ出来上がっていた本作の編集作業に従事していたそうだ。ウィズ・ジョーンズとの親交はかなり昔からあり、録音上の記録でもウィズのアルバム「Right Now」1972 Q9、「Wizz & Simeon Jones」1993 Q22、「Lucky The Man」2001 Q28がある。そして2011年頃より二人で頻繁にコンサートを行うようになった。2011年の初期ライブ映像がある(「その他音源・映像」参照)。そこでのジョンは、ウィズの演奏にヘッドアレンジでリードギターを付けたといった感じのシンプルなもので、デュオのレパートリーも少なく、ソロでの演奏場面も多かった。それから約3年経ち、本作におけるギタープレイは、弾き込みにより精緻となり、さらにレコーディングということで、しっかり考えられたものになっている。またジョンの曲にウィズがギターを付けるものもあり、二人のコラボレーションの成熟した様を見せてくれる。演奏形態は、ウィズのフィンガースタイル・ギターにジョンがエレアコっぽい音でリードギターを付けるのが基本。

ライブ録音のプロデュースには、@ 過去の記録としてのもの、A オーディエンスの拍手・反応を取り入れて臨場感を重視するもの、B ライブによる生き生きとした音楽を求めるものがあると思うが、本作はBだ。録音日につき「彼の死の少し前」とのみ表記されていて、日付や場所についての明記がないことで、複数のライブ音源からベストと思われるものを選び、オーディエンスの拍手や反応などは抑えめに編集されている。またスタジオ録音と思われるトラックもあり、音楽そのものを聴かせようという明確なポリシーが感じられる。

1.「Hey Hey」はフォーク・ブルースの巨人ビッグ・ビル・ブルーンジー (1903-1958) 1952年の作品で、本人による弾き語り動画を観たが、物凄いギタープレイだった。1992年エリック・クラプトンが「Unplugged」でカバーして有名になった曲で、ウィズのカバーは「Huldenburg Blues」2011に収録。本作では歌なしでの演奏で、他のトラックと異なりジョンのギターがエレアコでない生音であり、明らかにスタジオ録音(他にもスタジオ録音があると思われるが、明記されていないので不明)。両者のギターはきっちりアレンジされたもので、二人の共演の完成形と言える出来。2.「Buckets Of Rain」は、ジョンが主体の曲であるが、ウィズもしっかり弾いている。3. 「Glory Of Love」は、1936年のスウィング・ジャズ(ウィリー・ブライアント楽団)がオリジナルで、1951年アメリカのR&Bグループ、ザ・ファイブ・キイズがスローなアレンジで ヒットさせた。さらに1957年ビッグ・ビル・ブルーンジーが軽快なフィンガーピッキング・ギターの弾き語りでカバーしており、ウィズはそれに基づきアルバム 「The Legendary Me」1970 で歌っていて、ビッグ・ビルからの影響の大きさがわかる。エンディングでは二人の笑いが入るなど楽しい雰囲気だ。

4.「Getting There」は、ジャズ・ピアニスト、シンガーのモーズ・アリソン (1927-2016) 1997年の作品(「Jazz Profile」収録)で、晩年のジョンがコンサートで演奏していた曲。理知的でシニカルな歌詞とブルージーなメロディーによる印象的な弾き語り(ウィズは非参加)。5.「National Seven」は、ウィズの初期に曲を提供していたアラン・ターンブリッジの作品でウィズの代表曲(ピート・スタンレーとの共同名義アルバム「Sixteen Tons Of Bluegrass」1966が初出)。6. 「Mountain Rain」はスコットランドのシンガー、アーチー・フィッシャー (1939- ) の作品(「Orfeo」1970 収録)で、ウィズは「Lucky The Man」2001 Q28でカバーし、そこにはジョンも参加していた。 7.「Great Dreams From Heaven」は、初期とはかなり異なる、より自由な感じでのジョンの弾き語り(ウィズは非参加)。

本作ではバート・ヤンシュの作品を3曲演っていて、最初の 8.「Strolling Down The Highway」は、バートと一緒に弾いた録音がないこの曲におけるジョンのリードギター(素晴らしい出来!)が聴けるのはうれしい。9.「In Stormy Weather」は、イギリスのシンガー・ソングライター、アル・ジョーンズ (1945-2008) の作品で、彼のアルバム「Swimming Pool」1998 Q27に収められた同曲にジョンが参加している。ここでのウィズの伴奏ギター・プレイとジョンのリーダギターは、オリジナルとはかなり異なっている。インストルメンタル曲 10.「Balham Moon」の「Balham」とは、ロンドン南の地域の名前で、ウィズ唯一のオリジナル。解説によると、ジョンが本作への収録を主張し、命名もしたという。

ジャクソン C. フランク (1943-1999) の 11.「Blues Runs The Game」は、バートおよびジョンの愛奏曲で、ウィズも「Lucky The Man」 2001 で吹き込んでいる。ウィズが弾き語るが、ジョンによるこの曲のリードギターを聴くのは初めてという意味で、美味しいトラック。12.「Fresh As A Sweet Sunday Morning」は、バートの「L.A. Turnaround」1974 がオリジナルで、ジョンのリードギターがとてもいい感じ。最後の曲13.「Joint Control」 は、バート初期のインストルメンタルだが、正式録音が残されなかった曲で、ずっと後の1998年の発掘盤「Young Man's Blues」S1、2001年再発の「Bert Jansch」S2のボーナス・トラックに、音質の悪い1960年代前半の私家録音が収められた。ここでの演奏が初めての正式録音で、1.と同じくジョンのギターは生音。アルバム・タイトルにしたことも合わせて、2011年に亡くなったバートへのオマージュとなっている。

CDはこれでお終いとなるが、遅れて2017年に発売された2枚組LPレコード(限定盤)には、ボーナストラックとして4曲が追加された。一般的にCDのほうがLPに入っていない曲を追加するのが普通なんだけど、ここではその反対。遅れて出たので、結局CD・LP両方買うことになってしまった.....。しかも4曲の入れ方も変則的で、アルバムの最後でなく、レコードのA面からD面に各最後の曲として入れ、しかも上記曲目リストからわかるように、B面からは曲順も異なっていることだ。ライブを楽しむのでなく、音楽を聴くのが目的のアルバムなので、曲順についてはどうでもいいのかもしれないが、ちょっと意図不明?

14.「Cocaine」は、フォーク・ブルースのレヴァランド・ゲイリー・デイビス (1986-1972)の作品で、一般には「Cocaine Blues」と呼ばれ、エリック・クラプトンがカバーした J.J. ケールの「Cocaine」とは別の曲。1958年ジャック・エリオットの録音で有名になり、デイブ・ヴァン・ロンク、トム・ラッシュなど多くのフォーク・ミュージシャンがカバーしている。ボブ・ディラン1961年の私的録音は「Minnesota Hotel Tape」としてブードレッグで広く出回り、ずっと後に正式発売されたのは有名な話。ゲイリー・デイビスを師と仰ぐステファン・グロスマンも演っていて、ジョンとのライブ「Live In Concert」 1984 R20 (そこではジョンは非参加)に入っている。ウィズによるカバーは1973年のEP盤「Winter Song」 (後に「When I Leave Berlin」1974 再発盤のボーナス・トラックとして収録)。ジョンのバージョンは、2015年に発売された発掘盤 「The Attic Tapes」R1で1960年代前半の録音を聴くことができる(もっともジョンの演奏はハーモニカのみ)。ここでもウィズの弾き語りとジョンのリードギターかなと思ったが、サード・ヴァースでジョンが歌い出したので、ビックリ。二人が歌うトラックはこれだけなのだ。15.「Bad Influence」は、ブルースシンガーのロバート・クレイ(1953- ) の作品で、1983年の同名タイトルのアルバムが初出。16.「Love Has No Pride」は、シンガー・ソングライター、エリック・カズ (1946- ) とリビー・タイタス (1947- ) の共作で、リンダ・ロンシュタット「Don't Cry Now」1973の録音が一番有名だが、個人的にはボニー・レイットの「Give It Up」1972 (薄紫色の美しいジャケット・カバーの大好きなアルバム)が決定版。なお作者による録音は、後1976年 「American Flyer」(エリック・カズ所属のグループ)、1977年「Libby Titus」。淡々としたプレイで、本アルバムの中では現代的なソング・ライティングの香りが漂う異色の作品。17.「The Lazy Farmer (The Young Man Who Wouldn't Hoe Corn)」は、ジョンのライブ用レパートリーのひとつで、1980年の日本録音「So Early In The Spring」 R17に収められている。ジョンのソロで、マウンテン・バンジョー風のギターが聴ける。
 
もうジョンの演奏・歌を聴けないのは寂しい。けど、生前の体調の良し悪しは別として、亡くなる前日まで現役でいられた事は、彼にとっては幸せだったかもしれないね.......。

[2023年1月作成]