iHeartRadio Icons 2015  (映像)    


 

James Taylor : Vocal, Acoustic Guitar

Jim Kerr : Host

1. Today, Today, Today           Record + Guitar
2. Something In The Way She Moves   Record + Guitar
3. Angels Of Fenway             Promo Video
4. You Can Close Your Eyes        Vocal & Guitar
5. Making "Before The World"       Video + Guitar
  Clip Of "Snow Time", "Before This World", "You And I", "Unknown Ending"
6. Handy Man               Record
7. Montana                Vocal + Guitar + Pre-Recording
8. You've Got A Friend          Record + Guitar
9. Shower The People           Vocal + Guitar + Pre-Recording


2015年6月22日、iHeartRadio Theater, New York, NY

  

iHeartRadioは、アメリカを本居地とするインターネット・サービスで、アプリをダウンロードすることにより米国各地のラジオ放送を聴いたり、音楽配信サービスを受けることができる。日本でも利用可能とのことであるが、私は試してないのでよくわからない。同社が企画するイベントのひとつ「iHeart Icons」は、アーティストをスタジオに招いて、インタビュー・会話と音楽試聴を行うもの。JTは2015年6月15日に発売されたアルバム「Before This World」 A22のプロモーションとして登場、その模様がネットに公開された。

観客がいるスタジオで、約1時間10分の収録。ホストのジム・カーによる紹介の後、JTがステージに登場。オーディエンスはスタンディング・オーベイションで応える。 1.「Today, Today, Today」は、レコーディング・トラックであるが、面白いのは、途中からJTがギターを持って合わせて弾いていることだ。その結果、いつもとは微妙に異なる音になっていて、大変面白い。JTは本当にギターが好きなんだね〜

本作は先にメロディーを書いて、ベイシックトラックを録音してから、ロングアイランド・ニューポートの友人のアパートを借りて、すべてを遮断して籠って歌詞を仕上げたとのこと。最初に人々の耳に止まった曲として、2.「Something In The Way She Moves」を上げて、ジョージ・ハリソンがこの曲を聴いて「Something」を書いたという有名なエピソードを語るが、作曲のアイデアを得るのはこんな感じで、フェアで問題はなく、むしろ光栄と語っている。ここでかかるレコーディングは、1976年の「Greatest Hits」の再録音だ。ここでもJTは楽しそうにギターを弾いている。子供(ヘンリーとルーファス)の話の後、3.「Angels Of Fenway」の話になり、JTは「(ヤンキースの)ニューヨークでこの曲をかけるには気が引けるけど」と語り、オーディエンスを笑わせる。ここでもプロモーションビデオが流され、ボストン・レッドソックスとニューヨーク・ヤンキースの試合の映像と、JTの演奏風景が写し出される。レッドソックスが2004年ワールドシリーズでリーグ優勝を果たし、バンビーノ(レッドソックスからヤンキースにトレードされたベース・ルース)の呪いを説いた話と、8月にフェンウェイ球場でコンサートをする話をしている。

メキシコのホテルで書いたという 4.「You Can Close Your Eyes」は、完全な弾き語り。JTは声の調子はイマイチのようで、歌声は少しかすれ気味。次に「Before This World」のメイキング映像が流れ、録音風景、奥さんのキム、ケイト・マーコウィッツ、ヨー・ヨ・ーマなどが出てくる。ビデオが終わった後、ステージのシーンに戻り、チェロをメインとしたストリングスのレコーディングが流れ、それにJTがギターを付けている。「You And I」の一部のように思えるが、実際のレコーディングにはないメロディーで、いろいろ探したが、該当が見つからなかった。ほんの短時間であるが、とても美しい演奏だ。

スティングのレコーディングへの参加、レコーディングに際しては、ミュージシャンに演奏の細かな指図をしていない事、以前のレコーディングで、スタジオの時間が余ったので、その場で「Hady Man」をアレンジしラス・カンケルの奥さんのリア(ママキャスの妹)のバックボーカルを加えて録音したら、ジミー・ジョーンズのオリジナルと全く異なる出来になり、ヒットしたことを語っている。ここではJTはギターを弾こうとしたが、止めてレコーディングに聴き入っている。レコーディングなんだけど、会場で流すことにより、リバーブがかかりライブな感じになって、音質が大変良い点もあり、一味違う音になっているのが興味深い。曲の後、昔の曲のカバーすることに対する思い入れを語っている。

自宅の敷地にあるスタジオ「Barn」の話の後、スキーに行った際に借りた友人のキャビンで書いたという 7.「Montana」を歌う。ここでは予め録音された伴奏をバックに、JTが弾き語っている。ここでの演奏は素晴らしい。8.「You've Got A Friend」の録音が流れる際も、途中からギターを手にとり、カポを付けて弾き始める。JTがその場で弾いている音がはっきり聞こえるので、本当に最高!スタジオの余った時間でキャロルの新曲を録音したところ、あまりに良い出来になり、彼女の好意によりシングルヒットしたこと、ジョニ・ミッチェルがコーラスを歌ってくれたエピソードを語り、コンサートのセットリストを作る際に考えていることを語った後、最後に歌われる 9.「Shower The People」は、「One Man Band」 2007 E14の際に作ったというバックトラックに合わせて弾き語れる。JTの声はガラガラで少し辛そうに歌っている。のでエンディングは、いつもより抑えた歌い方になっていて、それはそれで面白い。

レコーディングにJTがギターを合わせたり。予め録音されたバックに合わせて弾き語るといった、変わったパフォーマンスが楽しめる逸品。

[2022年10月作成]


 
Fenway Park   2015 (映像)   
 
James Taylor: Vocal, A. Guitar, E. Guitar (0, 15)
Michael Landou : Electric Guitar
Larry Goldings : Keyboards, Accordion
Jimmy Johnson : Bass
Steve Gadd : Drums
Luis Conte : Percussion
Walt Fowler : Trumpet, Flugelhorn, Additional Keyboards
Lou Marini Jr. : Alto Sax, Tenor Sax, Clarinet, Flute
Arnold McCuller, Kate Markowitz : Back Vocal
Andrea Zonn : Back Vocal, Violin
Kim Taylor, Henry Taylor : Back Vocal (13, 14, 19, 21)

Bonnie Raitt : Vocal (0, 20), Back Vocal (21), E. Guitar (0, 20)
Mike Finnigan : Keyboards (0)
George Marinelli : Guitar (0)
James "Hutch" Hutchinson: Bass (0)
Ricky Fataar : Drums (0)


0. Things Called Love [John Hiatt]

1. Wandering  
2. Secret O' Life
3. Me And My Guitar
4. Montana
5. Today Today Today
6. Country Road
7. Copperline
8. Carolina In My Mind
9. You've Got A Friend [Carole King]
10. Your Smiling Face  
11. Fire And Rain
12. Up On The Roof [Carole King]
13. Shower The People

14. Angels Of Fenway
15. Steamroller
16. Don't Let Me Be Lonely Tonight
17. Sweet Baby James
18. Mexico  
19. How Sweet It Is (To Be Loved By You) [Holland, Dozier, Holland]
20. Knock On Wood [Eddie Floyd, Steve Cropper]
21. Shed A Little Light
22. You And I Again

収録: 2015年8月6日、Fenway Park, Boston, Massachusetts
ストリーミング配信: 2020年7月4日

 

ボストンにあるフェンウェイ・パークは、レッドソックスが本拠地にしているMLBの野球場。地元民の球場とレッドソックスに対する愛着は相当なもので、1912年に建てられた建物は市民の反対により新球場への建て替えがされず、席の増築や改修を重ねながら使われており、米国で最も古いMLB野球場となっている。この球場は音楽公演会場として使われる頻度は少なく、ここで演奏することはミュージシャンにとってステータスとなっている。マサチューセッツ州を住処とするJTは、大のレッドソックス・ファンで、当球場の始球式にしばしば参加してアメリカ国家を歌っている。ここでコンサートを開くことは、彼の長年の夢だったようで、コンサート中「信じられない! 私の音楽キャリアの中でも最高の経験」とコメントしている。事前・事後のプロモーションにも力が入っていて、会場セッティングやリハーサル風景等、当時 2種類の映像(バックで「Angels Of Fenway」と「(I've Got To) Stop Thinkin' 'Bout That」が各流れる)がYouTubeに公開された。コンサート直後、オーディエンス・ショットによる映像が出回ったが、そのほとんどが遠景、またはステージ上の巨大スクリーンを撮影したもので、良質なものはあまりなかった。

その後2020年になって、コロナ禍により6月21日同地、および 7月4日タングルウッドで開催予定だったJTのコンサートがキャンセルされたが、それに対するファンへのお詫び・サービスとして、7月4日に 2015年のコンサートのフル映像がJTのYouTube, Facebookでストリーミング配信された。そしてその直前には、ラリー・ゴールディングが弾く「Take Me To The Ball Game」のオルガン演奏による音楽付きで、ステージセッティング、観客入場風景のプロモ映像も公開されている。その際には、コロナ禍で苦しむ人々を助けるRed Sox Foundation と、コンサートが開けなくなったため苦境に陥ったクルー達を救済するCrew Nation への支援と寄付の呼びかけが添えられた。時差のためストリーミングの時間が日本の深夜になったため、私は観ることができなかったが、後日2.〜4.を除く映像とフル音源を観聞きすることができた。

ステージに登場したJTは、長椅子に座り 1.「Wandering」の弾き語りから始める。途中から入る伴奏やバックコーラスは控え目(私が観た映像は、この曲の途中から 4.「Montana」までがカットされていた)。代わりに聴いた音源によると、1.は切れ目なく 2.「Secret O' Life」に移ってゆき、その後キーボードのラリー・ゴールディングスの紹介が入る。 3.「Me And My Guitar」の後では、間奏で切れ味抜群のソロを披露したマイケル・ランドウを紹介。ニューアルバム(「Before This World」 2015 A22)から新曲として、モンタナ州のスキー場で友人から借りたキャビンで書いたという 4.「Montana」、始まりの歌であり、1968年にビートルズから見出された幸運な経験に関連する歌として 5.「Today, Today, Today」を歌う。ここでフィドルを弾いたアンドレア・ゾーンとスティーブ・ガッドを紹介。ギターを持ち替えて(チューニングが異なる = ドロップドDのため)、自然を教会とみなした曲と言って、 6.「Country Road」を始める。テレキャスターを持ったマイケルが、ピックと指弾き、弦を弾く位置を自在に使い分けて、短いながらもコクのある素晴らしいソロを展開。エンディングは、お馴染みJTとスティーブのドラムの掛け合いだ。ステージのビック・スクリーン用の撮影と思えるが、数台のカメラによる撮影の編集が最高で、DVDとして販売するに十分なクォリティーがある。8.「Carolina In My Mind」では、1968年のアップル・レコードでのデビューアルバム録音、同じスタジオで行われていたビートルズの「White Album」録音に立ち会った経験が語られる。9.「You've Got A Friend」では、キャロル・キングに捧げるとして、「彼女の歌うのを聴いて、すぐにギターにアレンジした。完璧な曲だ」と語っている。

ここでJTは立ち上がって、ジミー・ジョンソンを紹介して、ブラスセクションがフィーチャーされる 10.「Your Smiling Face」を演奏。再び椅子にすわり、11.「Fire And Rain」を淡々と歌う、マイケルはストラトキャスターでペダル・スティール・ギターのような音を出している。後半のスティーブによるハイハットの特徴ある叩きに注目。12.「Up On The Roof」では、歌の内容から、JTは観覧席上部のオーディエンスに捧げると言っている。コーラス隊の二人(ケイトとアーノルド)と、妻キム、息子ヘンリーが紹介されて、13.「Shower The People」が歌われる。JTは帽子をレッドソックスの昔の野球帽に替え、間違いなく今夜のハイライトである 14.「Angels Of Fenway」で、「ここで歌うために書いたんだ。2004年にバンビーノの呪い(ベーブ・ルースをヤンキースにトレードしたためにレッドソックスがワールドシリーズで勝てなくなったという言い伝え)を覆した事だ」と語る。 「Damm Yankees」という歌詞の部分で観客から歓声が起き、ブリッジの部分では息子のヘンリーがソロを撮る。本稿執筆時の2021年から観ると、当時の彼は少年の面影を残している。ちなみに双子のもう一人、ルーファスは音楽以外の分野に興味を示しているそうだ。オーディエンスによる長い拍手と「レッドソックス」というシュプレヒコールの後、JTは水色のテレキャスターに持ち替えて、ブラスセクション(ルウとウォルト)を紹介して15.「Steamroller」を始める。ここではラリーはオルガンを弾いている。間奏のソロは、トランペット、オルガン、エレキギターの順番。一転してソフト・アンド・メロウな 16.「Don't Let Me Be Lonely Tonight」では、エンディングのルウ・マリニのテナーサックスソロが聴きもの。17.「Sweet Baby James」の後、パーカッションのルイス・コンティが紹介され、彼のソロをフィーチャーした 18. 「Mexico」に入る。アメリアッチ風のブラスセクションの演奏部分では、その時だけ二人はテンガロン・ハットを被っている。コーラス隊のケイトとアーノルドが歌いながら社交ダンスを踊っているのも楽しい。

コンサートはフィナーレに入り、 19.「How Sweet It Is」でJTは、アドリブで「フェンウェイ・パーク」という言葉を随所に入れている。ルウはここではアルトサックスでソロを入れる。ここでボニー・レイットが登場、エディー・フロイド 1966年のヒット(全米28位)、20.「Knock On Wood」を二人で歌う。出演者が並んで挨拶をした後、すぐにアンコール 21.「Shed A Little Light」に入る。キムとヘンリー、ボニーを加えた6人によるコーラスが強力だ。この後JTが「もう1曲」とサインして、オーディエンスにお礼の挨拶を述べた後、ひとつの人生より長い愛の歌と紹介して最後の曲 22.「You And I Again」を歌う。ルウのクラリネット、フルート(本当に器用な人だ)、アンドレアのバイオリン、ラリーのピアノのクラシカルな響きが素晴らしい。最後のクレジットでは、スタジオ録音の「Angels Of Fenway」がバックに流れる。

なお当日のコンサートは、JTの前にボニー・レイットのステージがあり、彼女は13曲歌っている。そこでの最後の曲、0.「Things Called Love」でJTが登場し、一緒に歌っている。この曲は作者のジョン・ハイアットがアルバム「Bring The Family」 1987に収録した曲で、ボニーのカバーは1989年のベストセラー・アルバム「Nick Of Time」で聴くことができる。この曲は、上記の公式ストリーミングには含まれなかったが、オーディエンス・ショットによる動画で観ることができた。ここでバックを担当しているのは彼女のバンドで、キーボードのマイク・フィニガンは、マリア・マルダーやクロスビー・スティルス・アンド・ナッシュの伴奏でお馴染みの人、ジョージ・マニエリ、ジェームス・ハッチソン、リッキー・ファターもボニーのバンドの常連であり、腕利きのセッションマンでもある人達だ。特にギターのジョージ・マニエリは、2003年のJTのヨーロッパ・ツアーにマイケルの代役として参加している(その他音源「BBC Radio2」 2003参照)。JTはハーモニーを付ける他にセカンド・ヴァースを歌っている。ボニーはお得意のスライドギター・ソロを見せてくれる

周到に準備された、厳かな雰囲気のパフォーマンスだ。

[2021年11月作成]


 
Guitar Center Sessions  2015 (映像)    
 
James Taylor: Vocal, A. Guitar
Michael Landou : Electric Guitar
Larry Goldings : Keyboards
Jimmy Johnson : Bass
Steve Gadd : Drums
Walt Fowler : Trumpet (8), Additional Keyboards
Arnold McCuller, Kate Markowitz : Back Vocal
Andrea Zonn : Back Vocal, Violin (2,6)

Nic Harcouts : Host, Interviewer

1. Fire And Rain
2. Today, Today
3. Carolina In My Mind
4. Shower The People
5. Something In The Way She Moves
6. Country Road
7. Angel Of Fenway

[Outtake]
8. How Sweet It Is (To Be Loved By You) [Holland, Dozier, Holland]


収録: 2015年9月24日 Guitar Center, Hollywood, Los Angels, California

 

ギター・センターは、ロスアンジェルスにある楽器店で、ギター、ドラムス、キーボード、各種音楽備品・書籍なども扱い、音楽教室も開催している。同店が店の宣伝を兼ねて製作し、衛星テレビ局 DirecTVで放送している番組が「Guitar Session」だ。JTは2015年9月、新アルバム「Before This World」 2015 A22の宣伝のため、同番組に出演した。記録によると、翌日9月25日には、同地にて開催されたグラミー・ミュージアムを支援するコンサートに、ラリー・ゴールディングと出演している(「その他断片 2010年〜2015年」参照)。コンサートは、同センター内のヴィンテージ・ルームというショールームで行われ、多くのギターが吊るされた壁を背景に、バンドメンバーはカジュアルな服装で、時には椅子に座りながらリラックスした雰囲気で演奏している。バックは、いつものツアーバンドからパーカッションのルイス・コンテとサックスのルウ・マリニが抜けたメンバー。

番組は、地元で活躍する音楽関係の司会者、プロデューサー、ジャーナリストのリック・ハーコーツが司会とインタビュアーを担当し、演奏とは別に撮影されたJTとのインタビューを交えて進行する。1.「Fire And Rain」(画質・音質は良い)の後、ニックが「Living Legend」であることについて質問すると、JTは 「自分は音楽、レコードを作りツアーをする音楽家で、誰かと競争したり、勝とうとする気持ちはない」と答えている。以後演奏曲とそれに続くインタビュー内容。2. 「Today, Today」、新曲につき、過去に作った曲のテーマを繰り返している、ドラッグ中毒になった時期もあったが、回復してその後の曲作りには影響しなかった。演奏風景の撮影で、JTとマイケルのギター、ジミーのベースギターの演奏の撮影が非常に巧みであることに気が付く。ギター・センターだけあって、楽器に対する思い入れが強く込められていると思われ、好きな人にとってはとても美味しい撮影。3.「Carolina In My Mind」、若い頃は両親の離婚などで、精神的に不安定だったこと、ニューヨークでダニー・クーチ等とバンドを組んだが、薬中毒がひどくなってバンドが解散し、父の助けでキャロライナに戻ったこと。4.「Shower The People」回復後ロンドンに渡りデモテープを作成。ダニーが知り合いのピーター・アッシャー(以前ダニーがピーター・アンド・ゴードンのバックを担当していた関係)に紹介し、オーディションの結果アップル・レコードを契約できたこと。

5.「Something In The Way She Moves」の後は、アラン・クレインがアップルに関与したため、契約が解消され、ピーターとロスアンジェルスに移って「Sweet Baby James」を製作して成功した、背景には戦後のベビー・ブーマーにより当時のアメリカの文化が変わりつつあった。6.「Country Road」ではエンディングにおけるスティーブ・ガッドのドラムスはいつもより抑えめ。曲の後に、昔あったアーティストとレコード会社との密接な関係は、今の音楽業界にはなく、ツアーを続けることと、アルバム毎に会社と単発契約することでやっている。7.「Angel Of Fenway」のブリッジ部分で、レコーディングでは息子のヘンリー・テイラーが歌っていたパートは、ケイトとアンドレアの二人が歌う。最後に生きざまとして、音楽に焦点を当てること、アートとビジネスの兼ね合いを上手くつけることが大事と語っている。

番組はこれで終わりとなるが、別配信で、 8.「How Sweet It Is (To Be Loved By You)」が公開されている。ルウ・マリニがいないので、間奏ソロはラリーのオルガンとマイケルのエレキギターソロが入る。また当該番組のメイキング映像も公開されていて、そこには以下の曲順によるセットリストが一瞬写る。

@ Something In The Way She Moves
A Today, Today
B Carolina In My Mind
C Country Road
D Angels Of Fenway
E Shed A Little Light
F How Sweet It Is
G Shower The People
H Fire And Rain

以上より、F 「How Sweet It Is」は公開されたアウトテイク、E「Shed A Little Light」は未公開であることがわかった。

楽器店の狭いショールームのなかで行われた、プライベートな雰囲気が漂うライブ。

[2022年12月作成]


Austin City Limits   2015 (映像)   
 
James Taylor: Vocal, A. Guitar, E. Guitar (7)
Michael Landou : Electric Guitar
Larry Goldings : Keyboards, Accordion (3, 14)
Jimmy Johnson : Bass
Steve Gadd : Drums
Luis Conte : Percussion
Walt Fowler : Trumpet, Additional Keyboards
Lou Marini Jr. : Alto Sax, Tenor Sax
Arnold McCuller, Kate Markowitz : Back Vocal
Andrea Zonn : Back Vocal, Violin (2, 4)

Shawn Colvin : Harmony Vocal (10)

1. Me And My Guitar
2. Today Today Today
3. Wandering  
4. Country Road
5. Angels Of Fenway
6. You've Got A Friend [Carole King] 
7. Steamroller
8. Carolina in My Mind
9. Mexico  
10. You Can Close Your Eyes (With Shawn Colvin)
11. Your Smiling Face  
12. How Sweet It Is (To Be Loved By You) [Holland, Dozier, Holland]

その他、プロモーション等、テレビまたはインターネットで公開された映像
13. (Making) How Sweet It Is (To Be Loved By You) [Holland, Dozier, Holland]  
14. Copperline [Reynolds Price, James Taylor] 
15. Sweet Baby James  


収録: 2015年10月1日、Moody Theatre, Austin, Texas
放送: 2015年11月14日 PBS

 

オースチンはテキサス州中部にある都市で、「Live Music Capital Of The World」を公式スローガンとするほど音楽が盛んで、全米のケーブルTVネットワークでるPBSで放送される「Austin City Limits」はその象徴的存在。1974年以来、この手の音楽番組として全米最長の歴史を誇る番組だ。ムーディ・シアターは、オースティンのダウンタウンにあり、本番組のライブ収録のために建設された(収録人員 2750人)。JTは初めての出演で、10月1日に収録された1時間40分のステージが1時間に編集され、11月14日に放送された。資料によると当日にセットリストは以下の通りで、番組では未放送曲がある他に、実際の演奏順とは異なる曲がかなりあるが、巧みに編集されているので、言われないと気が付かないだろう。

@ Wandering  (曲順異なる)
A Me and My Guitar
B Copperline (番組未放送であるが、別個に公開)
C Today Today Today
D Line 'Em Up  (番組未放送)
E Country Road
F Shed a Little Light  (番組未放送)
G Angels of Fenway
H Everyday  (番組未放送)
I Carolina in My Mind  (曲順異なる)
J Steamroller
K You've Got a Friend  (曲順異なる)
L Sweet Baby James  (番組未放送であるが、別個に公開)
M How Sweet It Is (To Be Loved by You)   (曲順異なる)
N You and I Again  (番組未放送)
[Encore]
O You Can Close Your Eyes (With Shawn Colvin)  (曲順異なる)
P Mexico  (曲順異なる)
Q Your Smiling Face   (曲順異なる)

2015年のJTのコンサートツアー(3〜4月 ヨーロッパ、7〜8月全米)の模様を彷彿させる内容で、新作「Befor The World」 2015 A22からは、2曲演奏している。円熟そのものといった感じで、挑戦的な姿勢はないが、気心が知れたバンド仲間との絆が感じられるパフォーマンスだ。

2.「Today Today Today」はニューアルバムから、アンドレアのバイオリンをフィーチャーしたカントリー風の曲だ。3.「Wandering」は、ラリーが小型のアコーディオンを弾いている。「最初で最後の野球の歌」と紹介される、ボストン・レッド・ソックスを歌った5. 「Angels Of Fenway」は素晴らしい曲。スタジオ録音では、息子のヘンリーが歌ったブリッジは、ここでは女性シンガー二人が担当、その背後に試合の効果音が流れる。6.「You've Got A Friend」のエンディングのアドリブで、JTは「Everyone Here In Austin Tonight」と歌いオーディエンスの喝采を浴びる。7.「Steamroller」で、JTは水色ボディのテレキャスターに持ち替え、3フレットにカポを付けて弾いている。間奏は弱音機を付けたウォルトのトランペットと、ラリーのオルガン(ピアノの上にセットしたハンディなもの)、そしてマイケルのストラトキャスター・ソロ(ピックと指弾きの使い分け)だ。

9.「Mexico」のエンディングはサルサ調になりルイスが大活躍。10.「You Can Close Your Eyes」では、地元のシンガー、ショーン・コルヴィンが登場、ハーモニー・ボーカルを担当する。彼女はJTの「Hourglass」1997 A16に、一方JTが彼女のアルバム「Whole New You」2001 C75にゲスト参加するなど、以前よりJTと親交が深い人。久しぶりに姿を観たが、かなりふくよかになっているのが印象的。12.「How Sweet It Is (To Be Loved By You)」は、間奏のルウ・マリニのアルトサックス・ソロが最高にグルーヴィーだ。最後のクレジットではリハーサルの風景を観ることができる。

番組本編以外に、予告・プロモーションとして、13.「How Sweet It Is (To Be Loved By You)」 のメイキング映像を観ることができた。一部のシーンは、本編最後のクレジットで流れるものと同じであるが、リハーサルでの音出しも楽しめる。ルウのサックス・ソロの後は巧みな編集によって、いつの間にか本番ステージ 12の映像に繋がるのが面白い。14.「Copperline」、 15.「Sweet Baby James」もプロモーション映像として観ることができた。

年老いながらも元気な、JT2015年の姿が楽しめる。

[2016年7月作成]

   
All For The Halls, Los Angeles 2016  
 

Jemes Taylor: Vocal (2,3,5,7,8,9), Harmony Vocal (4), Acoustic Guitar
Vince Gill: Vocal (4), Hamony Vocal (5,7,9)
Joe Walsh: Electric Guitar (8)

1. A World Without Merle Haggard [Vince Gill]
2. Today,Today,Today
3. Something In The Way She Moves
4. Bartender's Blues
5. You Can Close Your Eyes
6. Whenever You Comes Around [Vince Gill]
7. You've Got A Friend [Carole King]
8. Steamroller
9. Sweet Baby James

収録: Novo (Formerly Clun Nokia), Los Angles, September 27, 2016

 

「All For The Halls」は、2009年にヴィンス・ギルが始めた、ザ・カントリー・ミュージック・ホール・オブ・フェイム・アンド・ミュージアムとその音楽教育プログラムのための資金調達イベントだ。2016年彼は、JT, イーグルスのジョー・ウォルシュ、カントリー音楽のクリス・ステイプルトン、キャセイ・ムスグレイブスを招いて、ロスアンジェルスのダウンタウンにある収容人員約2千人のクラブでコンサートを開催した。

ステージ上にギターを抱えた4人(左からジョー、クリス、キャセイ、JT、ヴィンス)が長椅子に腰掛け、事前に決められたシナリオ、セットリストなしに語り、弾き語る。1台のみのカメラは完全に固定され、同じアングルでズームアップもないが、音声は良好。語りが面白そうで、映像にはないが記事によると、例えば「人生初のコンサートは」という話題では、JTはピーター・ポール・アンド・マリー、ヴィンスはチェット・アトキンス、クリスはボンジョビ(音が大きすぎて途中で退場)、キャセイはアスリープ・アット・ザ・ホィールかリーアン・ライムズのいずれか、ジョーはマーヴィン・ゲイとラヴィン・スプーンフルといった具合で、各アーティストの世代と個性が浮き出ていて面白い。まずヴィンスが約半年前に亡くなったカントリー・シンガーのマール・ハガードに捧げる 1.「A World Without Merle Haggard」を歌う。その際、右端のヴィンスの横に座っているJTが微かであるがギターを弾いている。その後JTが最新作「Before This World」 2015 A22から、 2.「Today, Today, Today」を歌う。その後キャセイ、クリス、ジョーが歌い、JTがファンにはお馴染みのアップルでのオーディションのエピソード(「私はメタンフェタミン(通称ヒロポン)を飲んだチワワのように神経質になった」等)を披露した後に、 3.「Something In The Way She Moves」を歌う。そしてヴィンスがJTの 4.「Bartender's Blues」を歌い、JTがハーモニー・ボーカルをつける。これは本映像一番のお宝ものだ(資料によっては、3.と4.の順番が逆のものもある)。

ジョー、クリス、キャセイの歌の後、JTは、あまり良い思い出がないという映画「Two Lane Black-top」の撮影中に、当時ガールフレンドだったジョニ・ミッチェルのために書いたと語り、 5.「You Can Close Your Eyes」を歌う。ヴィンスはもう我慢できないといった感じで、微かかつ少しであるが、ハーモニーボーカルを入れる。ヴィンスが奥さんのエイミー・グラントに捧げた 6.「Whenever You Come Around」でもJTは微かにギターを弾いている。そしてコンサートの2日前に亡くなった友人のアーノルド・パーマー(ゴルフ選手)へというヴィンスのリクエストに応じて、 7.「You've Got A Friend」が歌われる。ここでもヴィンスが控え目にハーモニーを付けている。キャセイ、クリス、ジョーの歌の後、「ジョーと何回か演っている」(2004年Crossroad Guitar Festival E11参照)と言って 8.「Steamroller」を歌い、ステージ左端にいたジョーは椅子から立ち上がり、JTの側に近寄ってリードギターを弾く。そしていよいよフィナーレとなり、大歓声の中、「もう一度JTの曲を」ということで 9.「Sweet Baby James」が歌われ、ここでもヴィンスがハーモニーを入れている。

身内の人に対して歌っているかのような、自然でリラックスした雰囲気に溢れたコンサート。

[2021年11月作成]


 
Prudential Center, Newark, New Jersy 2017   
 









James Taylor: Vocal, Acoutic Guitar, Electric Guitar (0, 9)
Bonnie Raitt: Vocal (0, 19), Harmony Vocal (21), Slide Guitar (0,19)
Michael Landou: Electric Guitar
Larry Goldings: Piano, Keyboards
Jimmy Johnson: Bass
Steve Gadd: Drums
Louis Conte: Percussion
Walt Fowler: Trumpet, Frugelhorn, Keyboards
Lou Marini Jr.: Alto Sax, Tenor Sax, Flute (5), Clarinet (11)
Arnold McCuller, Kate Markowitz : Back Vocal
Andrea Zonn : Back Vocal, Violin

George Marinelli: Electric Guitar (0)
Mike Finnigan: Keyboards (0)
James Hutchison: Bass (0)
Ricky Fataan: Drums (0)

0. Thing Called Love [John Hiatt]

1. Carolina In My Mind
2. Country Road
3. Sunny Skies
4. Never Die Young
5. First Of May
6. Montana
7. Mexico
8. October Road
9. Steamroller
10. Don't Let Me Be Lonely Tonight
11. Jump Up Behind Me
12. Something In The Way She Moves
13. Sweet Baby James
14. Fire And Rain
15. Shed A Little Light
16. Shower The People
17. Your Smiling Face
18. How Sweet It Is (To Be Loved By You) [Holland, Dozier, Holland]

Encore
19. Johnny B. Goode [Chuck Berry]
20. You've Got A Friend [Carole King]
21. You Can Close Your Eyes

収録: Prudential Center, Newark, New Jersy, July 6, 2017

 

ニュージャージー州ニューアークは、マンハッタンからハドソン川を隔てた西にある都市で、ニューアーク・リバティー国際空港があるので旅行者にはお馴染みの場所。2007年開業のプルーデンシャル・センターは、アイスホッケーやバスケットの試合およびコンサート会場(収容人数約2万人)。本動画は、2017年7月6日〜8月11日に全米17都市で行われたボニー・レイットとのツアー初日のオーディエンスショット。各曲独立した動画として投稿され、セットリストの資料では、5.と6.の間に「Handy Man」が演奏されたとあるが、当該ツアーの他会場のセットリストを観ると曲順がほぼ同じであることに加えて、同曲を演ったものがひとつもないので、資料のほうが誤りかもしれない。ということで、ここでは「ほぼ全曲観ることができる」とした。撮影のほとんどがJTのクローズアップで、ステージ全景が写るのは1.が始まる前の会場スクリーンの動画のみ。バックバンドの姿は、メンバーがソロを取るときや紹介された時にカメラが動いて写る時だけ。ということでカメラワークは単調であるが、会場の最前列に近いところで撮影されたため画像は鮮明で、多少の手振れがあるが許容できる範囲。ただし時々スローモーションになったりフリーズする場面があるのは残念。それとJTの背面で展開されるスクリーン動画(画面のほんの一部しか見えない)の光に目がチカチカするかな。音質面では、リバーブが深めで実際会場で聴いているような感じだ。いろいろ文句を言ったが、クリアーな画質と当日の演奏曲のほとんど全てが揃っているというメリットも大きい。

最初にボニー・レイットのセットがあり、ラストの曲でJTが登場して一緒に歌う。0.「Thing Called Love」はジョン・ハイアットの作品で、オリジナルは「Bring The Family」 1987、ボニーのカバーは「Nick Of Time」 1989に収録された。バンドは、長年ボニーのバックを務めた人達で、ギターのジョージ・マイネリは、JT2003年春のヨーロッパ・ツアーに参加したことがある。キーボードのマイケル・フィニガン(2021年没)は、マリア・マルダーやクロスビー・スティルス・アンド・ナッシュのセッションに参加していた人。リッキー・ファタールは、ビーチボーイズや、ザ・ルートルズ(ビートルズのパロディ・バンド)にいた人。ハッチ・ハッチンソンは、ミーターズ、ネヴィル・ブラザースを経て1982年よりボニーのバックを務めながら、数多くのセッションに参加している。

イントロダクションとして、会場スクリーンにJTおよび関係者の発言、JTの演奏風景等のコラージュが写り、JTがステージに登場して 1.「Carolina In My Mind」を始める。スティーブ・ガッド、アンドレア・ゾーン紹介のあと、二人によるアイリシュ・フィドル・チューン(曲目不明が演奏され、続いて 2.「Country Road」が演奏される。4.「Never Die Young」のギターソロで写るマイケル・ランドウは、髪の毛が大分薄くなっている。5.「Fisrt Of May」は、ブラジル音楽風の間奏のスキャット・アレンジが切れ味良く、ルウ・マリニがフルートソロを披露する。11.「Jump Up Behind Me」の紹介でJTは、「子供の頃ニューヨークでバンドが解散してトラブルになった時、父に電話したんだ。そしたらすぐ駆けつけてくれて、僕を家に連れ帰ってくれたんだ」と話している。ここではルウがクラリネットを演奏。10.「Don't Let Me Be Lonely Tonight」はテナー・サックス、18.「How Sweet It Is」ではアルト・サックス・ソロをするなど、本当にいろんな楽器を操る人だ。

アンコールでボニーが登場。JTと一緒に19.「Johnny B. Goode」を演る。間奏で見せるスライドギター・ソロがかっこいい。そして最後の 21.「You Can Close Your Eyes」は二人でしっとりと歌う。

カメラワークや音質など、いろいろ問題はあるが、ボニーレイットとの2017年全米ツアーのほぼ全貌を観ることができる。

[2023年2月作成]


Terme Di Caracalla, Rome, Italy 2018  


 
 
James Taylor: Vocal, Acoutic Guitar, Electric Guitar (7)
Bonnie Raitt: Vocal (18), Harmony Vocal (19), Slide Guitar (18)
Michael Landou: Electric Guitar
Kevin Hays: Piano, Accordion (12), Keyboards
Jimmy Johnson: Bass
Steve Gadd: Drums
Michito Sanchez: Percussion
Walt Fowler: Trumpet, Frugel Horn, Keyboards
Lou Marini Jr.: Alto Sax, Tenor Sax, Flute (5)
Arnold McCuller, Kate Markowitz : Back Vocal
Andrea Zonn : Back Vocal, Violin


1. Carolina In My Mind
2. Country Road
3. Sunny Skies
4. Walking Man
5. Fisrt Of May
6. Up On The Roof [Carole King]
7. Steamroller
8. Don't Let Me Be Lonely Tonight
9. Handy Man [Otis Blackwell, Jimmy Jones]
10. Mexico
11. Something In The Way She Moves
12. Sweet Baby James
13. Fire And Rain
14. Shed A Little Light
15. Your Smiling Face
16. Shower The People
17. How Sweet It Is (To Be Loved By You) [Holland, Dozier, Holland]

Encore
18. Johnny B. Goode [Chuck Berry]
19. You've Got A Friend [Carole King]
20. You Can Close Your Eyes

収録: Terme Di Caracalla, Rome, Italy, July 23, 2018


カラカラ浴場は、ローマ帝国第22代皇帝カラカラ帝が西暦200年代に造営した浴場で、ローマ市街の南端」にある。体育施設や図書館もある総合的なレジャー施設として誰でも格安の料金で入れたので多くの人で賑わったというが、その後退廃して6世紀に異教徒の侵入により破壊された。世界遺産として登録されている現在、広場は遺跡を背景とした野外コンサートの舞台として使用され、特に7月〜8月に開催されるオペラは有名だ。

当会場はポップ、ロックのコンサートが開催されることもあり、JTは2018年7月23日に出演した。1台のカメラによる撮影で、スタンド等で固定されているため、手振れがない安定した映像になっている。舞台中央の後ろから撮影されたもので、様々な色にライティングされた遺跡を背景としたムード溢れるステージ全景の他、カメラを左右に動かして各出演者のズームアップを行っているので、単調さはない。ただしピントの合わせ方やカメラの動かし方がぎこちないので、プロショットではないだろう。ただ、画質もよく、隠し撮りにしては大変良く撮れている。それとセットリストと照らし合わせた限り、当日の演奏曲がすべて収録されているのもよい。ただし曲間はカットされている。

本コンサートで特筆すべき点としては、バンドのメンバーでいつもと異なる人がいることだ。まずラリー・ゴールディングスの代役としてキーボードを担当するケヴィン・ヘイズ(1968- )は、コネチカット州育ちのジャズ・ピアニストで、多くの有名プレイヤーと共演し、多くのアルバムを発表している。また彼は、スティーヴ・ガッド・バンドの常連の一人でもある。キーボード奏者が異なるため、バンド演奏の根底をなす和声が微妙に異なっており、その差分を楽しむことができる。そしてルイス・コンティの代役であるパーカッションのマチート・サンチェス。ニュージャージー生まれのキューバ系アメリカ人で、現在ロスアンゼルスを本拠地とする売れっ子セッションマンだ。

写真でよく見る遺跡をバックにしたステージにJTとバンドが登場し、1.「Carolina In My Mind」が始まる。音質は良いが、時々バリバリという風の音が入る。アンドレア・ゾーンのドレスも風で揺れているな。カメラは全景からズームしてJTのクローズアップになったりする。背景の遺跡は青、紫、赤にライティングされ美しい。カットが入り、2.「Country Road」は前奏のアンドレアのフィドル・テューンの途中から始まる。3.「Sunny Skies」はピアノの音使いがいつもと違い、よりジャズ的なサウンドになっていて、ユニークな仕上がりになっている。終了後にJTはケヴィン・ヘイズを紹介する。5.「Fisrt Of May」は、オリジナルはブラジル音楽風のアレンジだったが、スティーヴ・ガッドが叩き出すグルーヴ感が凄い。ここではエンディングがサルサ風の色付けがされていて、ミチートのコンガが躍動する中、ルウ・マリニのフルートとウォルト・ファウアーのフルーゲルホーンがソロをとる。7. 「Steamroller」でJTは水色のテレキャスターを弾いており、その音色が最高!ソロは弱音器をつけたウォルトのトランペット、ケヴィンのピアノ(これは聴きもの)、ピックを使わない指弾きによるマイケルのギターと続く。8.「Don't Let Me Be Lonely Tonight」のエンディングでは、ルウが渋いテナーサックス・ソロを入れる。9.「Handy Man」では、出番がないブラス・セクションの二人が同じ振り付けで踊る楽しい様が映し出される。10.「Mexico」では、テンガロン・ハットを被ってロボットの振り付けでアメリアッチを吹く二人が珍妙!エンディングのサルサ調ではマチートのパワフルなティンパニ・プレイが炸裂。11.「Something In The Way She Moves」は一転して静かな演奏になる。12.「Sweet Baby James」では、ケヴィンがアコーディオン、マイケルのギターがペダル・スティールのような音色を聴かせてくれる。本当に何でも出来る人だ。13.「Fire And Rain」は、スティーブ・ガッドがオリジナルにはないスネアのドラミングを入れている。14.「Shed A Little Light」で、JTはギターを置き、前面に出てきたコーラス隊と一緒に歌う。15.「Your Smiling Face」では、コーラス隊は退場し休憩。ウォルトがキーボードの前に座り、右手でトランペットを吹きながら左手でキーボードを弾く様が見える。エンディングの転調毎にカポの位置を引き上げてゆくJT見れるのは、映像鑑賞の醍醐味だ。16.「Shower The People」のエンディングでは、少し派手なシャツを着たアーノルド・マックラーが伸びと響きのある声でソロをとり、喝采を浴びる。17.「How Sweet It Is (To Be Loved By You)」はカットのため、イントロの途中から始まる。間奏ではアルトサックスを持ったルウがステージ前面に出てソロを吹く。

ここでバンドが退場してアンコールとなる。バンドと一緒にボニー・レイットが登場し、JTがチャック・ベリーへのオマージュと言って 18.「Johnny B. Goode」を二人で歌う。チャックのブギー調とは違ったアレンジで面白い。間奏は、マイケルのソロに続きボニーがお得意のスライド・ギターを披露する。バンドは並んで挨拶するが、すぐに位置について19.「You've Got A Friend」を演奏、観客が一緒に歌っているのが聞こえて、とてもいい感じ。最後の 20.「You Can Close Your Eyes」はJTとボニーのデュエットとコーラス隊による歌唱。ボニーのハーモニーボーカルのメロディーは、他のシンガーの同曲のものと微妙に異なっているのが興味深い。それにしても、イタリアでのコンサートなのにスペシャル・ゲストのボニーの参加が2曲だけなんて、贅沢だなと思ったが、調べてみると、ボニーはコンサートツアー中で、たまたま同時期にイタリアにいたためらしい。

ボニーのゲスト出演、いつもと異なるピアニストとパーカッション奏者によるフルステージを良質の音質・映像で楽しむ事ができる。

[2021年11月作成]


VetsAid, Tacoma Dome, Takoma, Washington, 2018 

 

James Taylor: Vocal, Back Vocal (6), A. Guitar
Ringo Starr: Vocal (6)

Joe Walsh: E. Guitar (5)
Chirs Holt: A. Guitar, E. Guitar (6)
Stewart Smith: E. Guitar
Milo Deering : Pedal Steel Guitar (5,6)
Mike Thompson: Piano
Will Hollis: Keyboards
Jimmy Johnson : Bass
Lance Morrison: Bass (6)
Scott Crago: Drums
Tom Evans: Sax (5)

Erica Swindell, Lara Johnston, Lilly Elise: Back Vocal (1,2,5)
HAIM, Chris Stapleton And His Band: Back Vocal (6)


1. Carolina In My Mind 
2. Native Son
3. Sweet Baby James
4. Fire And Rain
5. Steamroller

6. With A Little Help [Lennon, MaCartney]

録音: 2018年11月1日 Tacoma Dome, Tacoma, Washington  


オハイオ州出身のジョー・ウォルシュ(1947- )は、1969年にジェームス・ギャングでデビューした後、1975年にイーグルスに加入、そこでドン・フェルダーと繰り広げた「Hotel Carifornia」のツイン・リードギターは歴史上最高のギターソロといわれるほどの成功を収めた。その後はソロ活動をしていたが、1994年にイーグルスが復活し、今も元気に活動を続けている。彼の父親はアメリカ空軍所属の軍人だったが、1949年彼が幼い頃に飛行機事故で亡くなり、義父に育てられたという。そんな彼は、戦争から帰還した兵士およびその家族の肉体的・精神的な苦難・障害を救済するため、2017年VetsAidという非営利団体を設立し、コンサート開催で得た利益を関係団体に寄付する活動を始めた。JTは、HAIM (3姉妹によるロックグループ)、カントリー音楽のクリス・ステイプルトン、イーグルスのドン・ヘンリーとともに、2018年第2回目のコンサートに出演、ワシントン州タコマで開催された5時間にわたるコンサートは、約1万7千人の観客を集めて、その収益約70万ドルが関係団体に寄付された。

ここではイーグルス、ドン・ヘンリーのバックバンドが、ハウスバンドとして伴奏を担当している。ただしべースのみ、JTバンドからジミー・ジョンソンを連れてきている。これはJTが他のバンドと共演する際によくあるケースで、自身の音楽のグルーヴ、ギタープレイとの相性を考えてのことだろう。バック・ボーカルを務める3人の女性は、その容貌から、向かって左からエリカ・スウィンドル、ララ・ジョンストン、リリー・エリーセと推定した。ちなみにララ・ジョンストンは、元ドゥービー・ブラザースのトム・ジョンストンの娘だ。

JTは、HAIM, クリス・ステイプルトンの後に登場、最初の曲は、1.「Carolina In My Mind」。コンサート開催後しばらくはオーディエンス映像のみ観ることができたが、2021年に1, 2, 5につき、JTのYouTubeアカウントからプロショットが公開された。3人の女性によるバックコーラスがいつもと異なるので、とても面白い。2.「Native Son」は、触れたくない戦争(ベトナム戦争)から帰還した軍人が打ち捨てられ無視される様を描いた歌で、1991年の「New Moon Shine」A14に収録されていた曲。普段演奏されない曲が、ここで取り上げられたのは、コンサートの趣旨に合うものだったからだろう。スチュアート・スミスの間奏ギターソロが素晴らしい。3. 「Sweet Baby James」はこの曲を書くに至った経緯(ジェイムスと名付けられた兄アレックスの息子のために書いた等)を述べた後に歌われる。ここではテキサス州を本拠地として活躍するマルチ奏者マイロ・ディアリングがペダル・スティール・ギターを弾いている。4.「Fire And Rain」でも、JTとバンドの伴奏の息はぴったり合っている。この後JTが主催者のジョー・ウォルシュを招き入れ、 5.「Steamroller」が始まる。間奏ソロはトム・エバンスのテナーサックス、マイク・トンプソンのピアノと続き、最後はジョーのギターが締める。彼とJTの共演は2004年のクロスロード・ギター・フェスティバル E11以来だ。

その後ドン・ヘンリーとジョー・ウォルシュのステージが続き、フィナーレでリンゴ・スターが登場し、HAIM, Chris Stapleton Bandも加わり、大歓声の中 6.「With A Little Help」を歌う。JTはドン・ヘンリーとひとつのマイクに向かってコーラスを付ける。会場全体が歌っているようで、楽しく賑やかなパフォーマンスだ。ジョーの間奏ギターソロも最高!

いつもと異なるバックバンド、バックコーラスによるJTの歌が楽しめる逸品。


iHeartRadio Icons 2020  (映像)     

James Taylor : Vocal, Acoustic Guitar
John Pizzarelli : Guitar, Classic Guitar
Larry Goldings : Piano, Oregan, Synthesizer, Accordion, Melodica
Chad Wackerman : Drums

Arnold McCullar : Back Vocal
Dorian Hooley : Back Vocal
Kate Markowitz : Back Vocal

Jim Kerr : Host

1. Caroline In My Mind
2. Almost Being In Love [Alan Jay Lerner, Fredericl Loewe]   
3. Teach Me Tonight [Sammy Cahn, Gene De Paul]
4. How Sweet It Is (To Be Loved By You) [Holland, Dozier, Holland]
5. You Can Close Your Eyes  
  
6. Something In The Way She Moves
7. My Blue Heaven [George A. Whiting, Walter Donaldson]
8. It's Only A Paper Moon [Yip Harburg, Billy Rose, Harold Arlen]
9. Mexico
10. Shower The People


2020年2月27日、iHeartRadio Theater, New York, NY

  

iHeartRadioは、アメリカを本居地とするインターネット・サービスで、アプリをダウンロードすることにより米国各地のラジオ放送を聴いたり、音楽配信サービスを受けることができる。日本でも利用可能とのことであるが、私は試してないのでよくわからない。同社が企画するイベントのひとつ「iHeart Icons」は、アーティストをスタジオに招いて、インタビュー・会話と音楽試聴を行うもの。JTはアルバム「American Standard」 A23の発売記念として、発売日2020年2月28日の前日に生配信ラジオ番組に出演、その後動画がネットに公開された。

観客がいるスタジオで、ホストのジム・カーによる紹介の後JTがステージに登場。「お馴染みの曲から」と、1. 「Caroline In My Mind」を始める。録音・PAの具合からかもしれないが、JTの声に艶がなく調子が悪そうだ。コーラス隊は、アンドレア・ゾーンが不在で、代わりにドリアン・ホーレイが歌っている。いつもは男性1名、女性2名だけど、今回は男性2名、女性1名ということで、かなり違って聴こえる。2.「Almost Being In Love」は、1947年のミュージカル「Brigadoon」のために書かれた曲で、映画では1954年にジーン・ケリーが歌った他に、ナット・キング・コールのバージョンも有名。JTはダイナ・ワシントンが歌ったと語るが、ギターのジョン・ピザレリに訂正され、3.との混同を認め、「生放送だからね!彼(ジョン)がいかに価値があるかわかるだろう」と言って皆を笑わせる。ちなみにJTは、1994年5月放送のTV番組「The Tonight Show」でこの曲を歌っている。間奏でラリー・ゴールディングスのメロディカ・ソロ(昔私は「ピアニカ」と呼んでいたが、それは登録商標で、米国では「メロディカ」と言われているようだ)が流れる。コーラス隊の紹介の後、「これこそがダイナ・ワシントンの歌です」と言って、3.「Teach Me Tonight」(オリジナルは1954年)を歌う。次にバンドを紹介。ジャズ・ギタリストのジョン・ピザレリ(JTは「ピッツァレリ」と発音している)はJTのファンで、自己のアルバムで「Don't Let Me Be Lonely Tonight」をカバーしている。「October Road」2002 A17が初めての参加で、ニューアルバムではサウンド作りの要になっている人。曲によりジャズのアーチドトップ・ギターとクラシック・ギターを使い分けている。ドラムスのチャッド・ワッカーマンは、アラン・ホールズワース、フランク・ザッパ等の録音に参加した人。4.「How Sweet It Is (To Be Loved By You)」を聴くと、バンドのサウンドがいつもとかなり異なることに気が付く。ジョンがジャズギターのコードカッティング・スタイルで弾いていることが最大の相違点。ドラムの乗り、バックコーラスの声も異なるので、それらの違いを楽しむ事ができる。次に 5.「You Can Close Your Eyes」を演奏するが、ラジオによる発信はここで終わりということで、いつもはエンディングで演る曲を持ってきたわけだ。

しばらく間をおいて、「ラジオ発信は終わったけど続けようか」と言って、6.「Something In The Way She Moves」を歌う。 7. 「My Blue Heaven」は、1928年のジーン・オースティンが初ヒットで、日本ではエノケンで大ヒットした。ここでのジョンの4ビート・カッティングは最高にカッコイイ。ラリーはアコーディオンで間奏ソロ。8.「It's Only A Paper Moon」は1933年ポール・ホワイトマン楽団でヒットした。個人的には1973年の映画「Paper Moon」(ライアン・オニール、テイタム・オニール主演、ピーター・ボグダノビッチ監督)とナット・キング・コールでお馴染みの歌。JTは1992年の映画のサウンドトラック「A League Of Their Own」B22でこの曲を歌っている。ラリーがシンセサイザーを使って面白い音を出している。9.「Mexico」も、いつものバンドとかなり異なるサウンド。ここでもラリーがシンセサイザーでマリンバの音を奏でている。本映像全体に言えることで、ジョンはソロを一切とらず、コードを刻むことに徹している。最後の曲と聞き、オーディエンスが「えー」と反応するなか、 10.「Shower The People」を歌い、司会のジョン・カーが締めて終わる。

「American Standard」A23から4曲を演奏。ユニークなメンバーの伴奏により、いつもとは異なるサウンドが楽しめる。


[2023年2月作成]

 
Canadian Tire Center, Ottawa (With Jackson Browne) 2022  (映像)    
 

[Jackson Browne]
Jackson Browne : Vocal, Acoustic Guitar, Electric Guitar
James Taylor : Vocal (5), Back Vocal (6), Acoustic Guitar (5,6)
Greg Leisz : Electric Guitar, Lap Steel Guitar
Jason Crosby : Keybords
Walt Fowler: Frugel Horn (5)
Bob Glaub : Bass
Mauricio Lewak : Drums
Alethea Mills : Back Vocal
Tiffany Cross : Back Vocal

1. Somebody Baby
2. The Barricades Of Heaven
3. Down Hill From Everywhere
4. Untill Justice Is Real
5. The Pretender
6. Running On Empty

注: 1〜4はJT非参加です

[James Taylor]
James Taylor: Vocal, Acoutic Guitar, Electric Guitar (11)
Jackson Browne : Vocal (18), Back Vocal (19,20)
Michael Landou: Electric Guitar
Larry Goldings: Piano, Accordion (12), Keyboards
Jimmy Johnson: Bass
Steve Gadd: Drums
Michito Sanchez: Percussion
Walt Fowler: Trumpet, Frugel Horn, Keyboards
Arnold McCuller, Dorian Holley, Kate Markowitz : Back Vocal
Andrea Zonn : Back Vocal, Violin

7. Country Road
8. That's Why I'm Here
9. Mexico
10. You Make It Easy
11. Steamroller

12. Sweet Baby James
13. Fire And Rain
14. Carolina In My Mind
15. Shower The People
16. How Sweet It Is (To Be Loved By You) [Holland, Dozier, Holland] 

17. Shed A Little Light
18. Take It Easy [Glenn Frey, Jackson Browne]
19. You've Got A Friend [Carole King]
20. You Can Close Your Eyes

21. Copperline (Extract)

2022年4月27日、Canadian Tire Center, Ottawa ON, Canada

YouTubeに投稿された約112分の動画。ステージに向かって左横からのオーディエンス・ショットで、かなり遠くからの撮影のため、ズームアップによりピントは甘めになっているが、それを除けば音質・画質はとても良い。またカメラが三脚などで固定され、その範囲内で動いているので、手振れがなく大変見やすい。コンサートの全貌ではなく、一部の曲がカットされているが、開始前の会場風景もあり、臨場感溢れる大変良い映像と思う。ただ唯一の問題点は、会場・日付の資料がついていないことだった。

そこで会場・日付の特定のため、以下の検証を行った結果、本映像はカナダ・オタワにある Canadian Tire Center における 2022年4月27日のコンサートを撮影したものと断定した (実際の確認作業は下記のようにスマートではなく、いろいろ紆余曲折がありましたが........)。なお Canadian Tire Centerは、アイス・ホッケーの試合をメインとする会場だ。

1.JTバンドのメンバーに彼の息子ヘンリー・テイラーがいない 
JTとジャクソンによるコンサー・トツアーは、2021年7〜8月, 10〜12月と 2022年4〜5月の3部からなるが、2021年はヘンリーが同行していたため、彼がいないコンサートということで2022年である可能性が高い。

2. 投稿者の他の動画の傾向
投稿者のチャンネルから他の動画を観ると、カナダでのイベントを撮影したものが多かった。2022年のツアーはカナダ各地をまわったものだったので、この映像はカナダで撮られた可能性大。

3. JTバンドのコーラス隊の服装 
映像では、アーノルドが黒の服に白いつばのない帽子、ドリアンは白いつば付き帽子、アンドレアはオールブラックのドレス、ケイトは黒いブラウスにジーンズっぽいパンツ。YouTubeに投稿された当時のコンサート動画を観て、同じ服装のものがないかを探したところ、4月27日オタワにおける「You Can Close Your Eyes」の動画で同じ服装のものがあり、両者を見比べて演奏終了後のメンバーの仕草が同じであることを確認した。

4. 会場の構造 
会場 (Canadian Tire Center)の内部構造と、動画に写った会場内の風景の一致を確認。


第1部はジャクソン・ブラウンのステージ。バックバンドは2021年のツアーと同じ顔触れのようだ。このなかではラップ・スティール・ギター、ギターのグレッグ・リーズ、ベースのボブ・グラウブがセッションマンとして特に有名。本映像での曲目は実際の演奏曲の約半分で、「The Pretender」1976 から「Downhill From Everywhere」2021 までのアルバムからの選曲。代表曲 5.「The Pretender」でギターを持ったJTが登場し、セカンド・ヴァースのリードとコーラスでのバックボーカルを担当する。またウォルト・ファウアーが登場して、フリューゲル・ホーンで演奏に加わっている。6.「Running On Empty」は、JTは後ろに下がり、ギターとバックボーカルに専念している。

JTの第2部は、イントロダクションとしてステージ上のスクリーンにファンのコメントやカバー演奏の風景が流れ、次にバイオリンを持ったアンドレアがスポットライトを浴び、ドラムスの伴奏でアイリッシュ・フィドル・チューンを弾く。そして切れ目なく 7.「Country Road」のイントロに移る。次の曲は「Copperline」のはずだけど、ここではカットされて動画の最後にちょっとだけ観ることができる。9.「Mexico」は、何故かサックスのルウ・マリーニが不在で、ウォルト・ファウアーのトランペットだけになっている。カナダ・ツアーの他の日の映像をチェックしてみたが、そこにはルウがいるので、ここでは何らかの都合または体調不良により欠席したのだろう。 10.「You Make It Easy」の後は 11.「Steamroller」になるが、その前の「Up On The Roof」、およびその後の「Easy As Rollin' Off A Log」 がカットされているものと思われる(本コンサートのセットリストがないので、他の日の曲目から推測したものです)。

カメラは演奏者を写すために時々左右にふれる他、遠景に戻したり、ズームアップしたりするので、単調さは感じられない。12.「Sweet Baby James」で、ラリー・ゴールディングスはアコーディオンを弾いている。16「How Sweet It Is」のオルガンに続く間奏ソロは、いつもはサックスなんだけどルウがいないため、マイケルがギターで入れるのが面白い。17「Shed A Little Light」でホーンが2本あるように聞こえるのは、ウォルトが片手でトランペットを吹きながら、もう片っぽの手でキーボード(シンセサイザー)を弾いているため。 18.「Take It Easy」 はジャクソン・ブラウンとイーグルスのグレン・フレイの共作で、前者はアルバム「For Everyman」 1973、後者は「Eagles」 (ファースト・アルバム) 1972に収められた。JTはセカンド・ヴァースとコーラスでのハーモニーを担当。 ジャクソンはそのままステージに残ってコーラス隊に加わり、19「You've Got A Friend」、20「You Can Close Your Eyes」をバックで歌っている。

カットされた曲がありコンサートの全貌を伝えるものではないが、画質・音質が良く、臨場感あふれる映像が楽しめる。

[2023年12月作成]