Rock In Rio 2001

James Taylor : Acoustic Guitar, Vocal
Bob Mann : Electric Guitar
Clifford Carter : Keyboards
Jimmy Johnson : Bass 
Russ Kunkel : Drums, Percussion
Luis Conte : Percussion
Arnold McCuller, Kate Markowitz : Back Vocal


1. Carolina In My Mind (Fade In)
2. Everyday [Norman Petty, Charles Hardin]  
3. Mighty Storm [Traditonal]
4. Line 'Em Up  
5. Jump Up Behind Me
6. Mexico
7. Only A Dream In Rio [James Taylor, Brazilian Translation J. Maraniss] 
8. You've Got A Friend [Carole King]
9. (I've Got To) Thinkin' 'Bout That [Danny Kortchmar, James Taylor] 
10. Up On The Roof [Gerry Goffin, Carole King]
11. Country Road
12. Shower The People  
13. Your Smiling Face  
14. Fire And Rain  
15. How Sweet It Is (To Be Loved By You) [Holland, Dozier, Holland]
16. Not Fade Away [Buddy Holly, Norman Petty]


2001年1月12日 リオ・デ・ジャネイロにて収録


ロック・イン・リオは1985年、1991年に続き3度目の開催で、JTは1985年に続く出演。コンサートの模様はブラジルのテレビにより放送され、その映像を観ることができた。初回のコンサート当時、彼は公私ともにトラブルが続き、自分の不幸を嘆いていたが、ブラジルでの大歓迎と30万人を前に行ったコンサートの感動から、人生観が変わったという。その後は、酒やクスリへの依存を絶ち、健康維持に心がけ、1985年に「That's Why I'm Here」から始まる人生の再生に繋がってゆく。1985年のコンサートは、何処か張り詰めた雰囲気のなか、精神が高揚してゆく様を伺うことができたが、今回2001年のコンサートは、いつものバックバンドを従えて、大変リラックスしたムードに終始しているのが印象的だ。

番組は 1.「Carolina In My Mind」の演奏の途中から始まる。巨大な野外ステージで、見渡す限り人の海だ。ここでのバックバンドは、お馴染みのメンバーであるが、コーラス隊のみがいつもの4人編成ではなく、海外ツアー用の2人になっていることだ。デビッド・ラズリーとヴァレリー・カーターがいない分、他のコンサート音源、映像と若干異なったサウンドになっており、それが本映像の特徴といえる。リイス・コンティのパーカッションが強調された 2. 「Everyday」に続き、トラディショナルの 3.「Mighty Storm」が演奏される(曲の詳細については「Live At The Beacon Theater」 E8を参照してください)。5.「Jump Up Behind Me」でボブ・マンは、ギターを置きシェイカーを振る。 6.「Mexico」では、アーノルドがギロ、ケイティがマラカスを持ってパーカッション大会となる。エンディングのコーラスでは、レイ・チャールズの「Hit The Road Jack」の一節が飛び出す。7.「Only A Dream In Rio」につき、JTは「最初のロック・イン・リオで生まれた曲です」と紹介する。8.「You've Got A Friend」は現地で人気があるようで、オーディエンスは大騒ぎだ。続く3曲はお馴染みではあるが、ここでのラス・カンケルのプレイを聴いていると、バンドにおけるドラム奏者の重要性がよくわかる。彼のリズム感覚が曲の地色を作り、それはカルロス・ヴェガ、スティーブ・ガッドと全く異なることが実感できる。 それがライブ録音を聴く醍醐味のひとつであると思う。12.「Shower The People」のエンディングはいつも通りアーノルドが担当、15.「How Sweet It Is」の演奏は、バンド、コーラス隊とも大変リラックスした雰囲気だ。アンコールで演奏される 16.「Not Fade Away」については、「Live At The Beacon Theater」 E8を参照。アーノルドはクレバス、ケイティーはマラカスを演奏する。ボブ・マンのスライドギターが冴えまくっている。
 
観る限りにおいて、編集箇所は見当たらず、フェスティバルでの各アーティストの持ち時間から推測するに、おそらく当日のJTのステージのほぼすべてを収録しているものと思われる。


AOL@Sessions 2002

James Taylor : A. Guitar, Vocal
Bashili Johnson : Percussion
Larry Goldings : Keyboards

1. On The 4th Of July
2. Country Road
3. Baby Baffalo
4. Secret O' Life

2002年6月19日収録


新作「October Road」宣伝のためのプロモ演奏を録画したもの。これらの演奏は、同年9月14日にカリフォルニア州サンタモニカのラジオ局KCRWでインタビューを交えて放送(「その他断片」の部「2000年代」参照)された他に、映像は後にAOL@Sessionsとしてインターネット上で公開され、アメリカ国内のみで観ることができた。

スタジオにおける機材のセッティングとウォームアップから始まる。JTは愛用のオルソンに弦を張りながら、ラリー・ゴールディングが弾くオルガンのコードに合わせて口笛を吹く。ラリーのコード進行およびJTの口笛のメロディーから「It's Growing」であることがわかる。この曲は、本作では残念ながらカットされたが、後の9月14日に放送されたKCRW(FMラジオ)曲の放送で、他の曲と一緒にオンエアーされた。バシリ・ジョンソンはガラスを隔てた部屋に、ハモンド・オルガンの前に座ったラリー・ゴールディングスはJTの近くに位置し、3人ともヘッドフォンを耳にしている。スタジオの物音のなかでJTが「4th Of Julyをやろう」と言って、1.が始まる。最初はJTのギターの弾き語りで、途中からパーカッションとオルガンがフィルインする。大変リラックスした雰囲気で、「October Road」に係るテレビやラジオでのこの曲の演奏の中で出色の出来。主にコード中心のプレイに専念するラリーのプレイがとても良く、「オルガンの達人」と呼ぶに相応しい。2.「Country Road」は、パーカッションとオルガンのプレイが過去の演奏のサウンドと大きく異なり、新鮮な感じがする好演。バシリは、木製の箱のようなものを叩いている。3.「Baby Baffalo」では、JTはイントロで、「It's just a.... I'ts like just a .......」と言いながらギターを弾いている。靄がかかったようなミステリアスな雰囲気が良く出ている。4.「Secret O' Life」では、ラリーはローランド製の電子ピアノの前に席を移し、イントロのリハーサルでJTが口笛でアドリブを吹いている。ここでは豊富な奥行きのある和音を散りばめるラリーのピアノ伴奏がハイライトだ。

スタジオにいるスタッフと一緒にリハーサルを見ている気分になれるゴキゲンな映像だ。


Rosemont Theatre 2002 
James Taylor : Acoustic Guitar, Vocal
Bob Mann : Electric Guitar, Mandolin (11)
Clifford Carter : Keyboards
Jimmy Johnson : Bass 
Russ Kunkel : Drums, Percussion
Luis Conti : Percussion
Walt Fowler : Trumpet, Frugelhorn, Synthesizer
Lou Marini : Alto Sax, Tenor Sax, Soprano Sax, ute (4,13), Whistle (11)
Arnold McCuller, David Lasley, Valerie Carter, Kate Markowitz : Back Vocal (1,2,3,5,6,7,8,10,12,13,15,17,19,20,21,22)

1. Everyday [Norman Petty, Charles Hardin] 
2. That's Why I'm Here
 
3. Up On The Roof [Gerry Goffin, Carole King]
4. On The 4th Of July
5. Line 'Em Up
6. Mexico
7. Shower The People
8. Traffic Jam
9. You Can Close Your Eyes
10. Don't Let Me Be Lonely Tonight  
11. Millworker  
12. Shed A Little Light
13. Fire And Rain 
14. You've Got A Friend [Carole King] 
15. Your Smiling Face
16. How Sweet It Is (To Be Loved By You) [Holland, Dozier, Holland]
17. Sweet Baby James


録画: Rosemont Theatre, Chicgo, August 4, 2001
放送: NHK BS2 January 17,2002

注) 赤字: 「Pullover」に収録されていない曲
   青字: 「Pullover」に収録されているものと異なる演奏の曲


2001年の夏から秋にかけて行われたツアーのうち、シカゴのローズモント・シアターの公演を録画したもので、NHK衛星放送の「ワールド・スーパー・ライブ」というタイトルで2002年1月17日に放送された。番組最後のクレジットで、製作スタッフとしてNHK所属と思われる日本人が含まれていたこと、当時のホームページの記事などから推測するに、この映像は日本のみで放送されたものと思われる。その後同年11月に「Pullover」 E10が公式発売され、そのソースは本作と同じシカゴ公演のものを使用していているが、収録曲の一部が「Pullover」には含まれていなかったり、演奏自体が別(「Pullover」は8月4日と5日の2日間の公演を編集したものと思われる)の曲があったり、全く同じ演奏であっても、同時撮影した複数のカメラの編集が全く異なるものになっていて、映像作品としては別テイクとみなされる内容であることで、「Pullover」のアウトテイク集、別バージョンとしての意味合いがあり、大変興味深い映像となった。以上の事実をまとめると、NHKのスタッフが複数のカメラで撮影されたソースを編集したものが、日本でのテレビ放送版としての本作であり、米国のチームが全く別の編集により製作したものが、全世界公式発売版としての「Pullover」という位置付けということになる。

「Pullover」E10 との相違点を中心に述べることにしよう。番組はE10にはないJTとのインタビューから始まる。バンドによるイントロのシーンが少し写り、JTが舞台に登場するシーンや、演奏シーンが異なるように見えるのであるが、カメラの編集のせいであって、よく観るとE10と同じ演奏であることがわかる。本作品全体についての傾向として、バンドメンバーによる演奏は、アドリブが少なく手堅いものであること、各メンバーの演奏技術の高さから別バージョンでもほぼ同じように聴こえる。
1.「Everyday」 2. 「That's Why I'm Here」ともそんな感じの演奏だ。 3.「Up On The Roof」はE10には収録されていない曲。曲ごとに表示される字幕による解説がチラチラしてうるさく感じるが、不特定多数の視聴者に対する放送であることを考えると、仕方がないだろう。 インタビューのシーンの後始まる 4.「On The 4th Of July」はE10と同じ演奏であるが、カット割りが異なるので、見ていて新鮮な感じがして大変面白い。5.「Line 'Em Up」はE10にない曲で、クリフォード・カーターのオルガンが光っている。ここでインタビューが挿入され、6.「Mexico」となるが、E10のイントロにおけるルイス・コンテのパーカッション・ソロはカットされている。間奏部分のアーノルド・マックラーとケイト・マーコウィッツのダンスのシーンなど、撮影カメラの編集は全く異なるものだ。7.「Shower The People」も本作のみの収録で、ここではいつもと異なり、JTのアコギ1本でなく、バンドの伴奏付きであることが珍しい。エンディングにおけるアーノルドのボーカルソロは相変わらず素晴らしく、聴衆はスタンディング・オーヴェイションで応えている。E10では終盤に登場する 8.「Traffic Jam」や 9.「You Can Close Your Eyes」がここでは中盤に登場するが、E10 「Pullover」の構成のほうが自然な感じがするので、本作では編集したものと推測される。前者は異なる演奏(演奏自体はとても良く似ていて、バンドやJTのジャスチャーで違いが分かる)、後者は同じ演奏だ。

E10にはない 10.「Don't Let Me Be Lonely Tonight」が収められているのは大変うれしい。エンディングのソロをルウ・マリニのサックスが担当するのも貴重なバージョンだ。 11.「Millworker」は、JTの曲の紹介内容が異なる。E10で言及していた地元シカゴに縁があるスタッズ・ターケルのことと、ジミー・ジョンソンの紹介が本作にはなく、編集でカットされたものとも思えないので、E10と異なる演奏と判断したが、演奏自体はあまり変わらない。 12.「Shed A Little Light」、13.「Fire And Rain」、14.「You've Got A Friend」と、E10と同じバージョンが続くが、前述のとおりカメラのカット割りは全く異なっている。ここでJTのインタビューと、E10では最後のクレジットの部分に出てくる公演終了後に会場の外で、ファンが「You've Got A Friend」を歌い、JTと握手をするシーンが入る。 ラストの3曲 15.「Your Smiling Face」、16.「How Sweet It Is」、17.「Sweet Baby James」は、16.と17.の間にインタビューが挿入されるが、E10と同じ演奏。ただしここでもカメラの編集は全く異なり、E10における16.終了後にJTが行うルウ・マリニ紹介のアナウンスが、実は編集により挿入されたものであることが分かる。  

編集の丁寧さ、時折写されるオーディエンスや会場のシーンなど、きめ細かさでは、より時間とお金をかけて製作したと思われるE8「Pullover」のほうが勝っているような気がするが、同じ演奏でも、異なるカメラ・アングルからJTやバンドの動きや表情を観ることができ、ファンとしては大変面白いアイテムといえよう。5.「Jump Up Behind Me」では、ギターを置いたボブ・マンがシェイカーを担当し、ラス・カンケルは、カホーンという木の箱を叩く。クリフォード・カーターは、ピアニカの吹き口のようなものを咥えて、シンセサイザーから口笛のような感じの音を出している。今回のコンサートで彼は、ピアノ、エレキピアノ、シンセサイザーなどの様々な音をすべて1台のキーボードから出しており、かつてキーボード奏者は、上下・左右・前後にセットされた鍵盤に囲まれて、宇宙船の操縦席のような感じで演奏していた風景を思い起こすと、短期間で本当に凄い技術革新を遂げたものだと思う。


Crossroads (With Dixie Chicks)  2002 

James Taylor : Lead Vocals (1,3,4,7,8), Back Vocals (2,5,6), A. Guitar (2,4,6,7)

[Dixie Chicks]
Natarie Maines : Lead Vocals (2,4,5,6,7), Back Vocals (7,8) A. Guitar (3)
Martie Seidel : Violin, Back Vocal
Emily Erwin : Banjo (3,4,8), Electric Banjo (1), Doblo (5), A. Guitar (2), Back Vocal

[Band]
Pat Buchanan : E. Guitar
Bryan Sutton : A. Guitar
Matt Rollings : Keyboards
Lloyd Maines: Steel Guitar, A. Guitar
Adam Steffey : Mandolin
John Mock: Percussion, Penny Whistle, A. Guitar
Glenn Fukunaga : A. Bass (2,5)
Jimmy Johnson : E. Bass (1,3,4,6,8)
Greg Morrow : Drums

1. Some Days You Gotta Dance [Troy Johnson, Marshall Morgan]
2. Sweet Baby James
3. Wide Open Spaces [Susan Gibson]
4. October Road
5. A Home [Maia Sharp, Randy Sharp]
6. Shower The People (部分のみ)
7. Carolina In My Mind
8. Ready To Run [Martie Seidel, Marcus Hummon]


2002年7月31日収録 at The Grand Ole Opry, Nashiville, Tennessee
2002年10月18日放送 CMT (Country Music Television Inc.)


「Crossroads」は、カントリー音楽を専門とするCMT(Country Music Television Inc.)が制作したコンサートシリーズで、カントリー音楽のアーティストが異なるジャンルのミュージシャンと共演する内容が売り物。ホームページによると、今までにエルビス・コステロ、エルトン・ジョン、スティーブン・タイラー(エアロスミス)、ライオネル・リッチー、ボニー・レイット、ボン・ジョビなどが出演している。JTの共演者となったディキシー・チックス(グループ名はリトル・フィートの名曲「Dixie Chicken」にちなんだものらしいが、「Chicks」は「可愛子ちゃん」という意味もある)は、1989年に結成された女性グループで、個人のパーティーでの演奏から始めて評判を取っていたという。彼等が大きく飛躍したのは、オリジナルメンバーのマーティー・シーデル(フィドル)とエミリー・アーウィン(バンジョ−)が、カリスマ性を持つ若いリードシンガー、ナタリー・メインズ(スティールギター奏者ロイド・メインズの娘)を迎えてからで、1998年に大手レコード会社から発表したアルバム「Wide Open Spaces」は大評判となり、カントリー音楽界での大スターの地位を獲得した。本作はその人気の中で制作されたもので、確かにこの番組における彼女達の姿は大変魅力的。全米フィドルコンテストで3位になったことがあるというマーティのバイオリン、バンド演奏のなかに埋もれず、しっかり音を聴かせるエミリーのバンジョー、ドブロ、そして情感・存在感溢れるナタリーのヴォイスなど、見かけはアイドル風でありながら、高い演奏力と音楽性を誇る彼等の自信に満ちた姿を楽しむことができる。

番組はインタビューを交えながら進行する。 1.「
Some Days You Gotta Dance」はディキシー・チックスのアルバム「Fly」1999年に収録されていた曲で、JTは楽しそうにリードボーカルを担当し、女性陣はコーラスに専念する。エミリーはソリッドバックのエレクトリック・バンジョーを演奏し、マーティーはフィドルを演奏。そしてナタリーが「私は若い頃、JTバンドのバックボーカリストになるのが夢だったけど、その夢を超えちゃった。だって彼が私のバックで歌ってくれるのよ!」とうれしそうに語り、2.「Sweet Baby James」を歌いだす。今度はJTがバックボーカルを担当し、控えめな態度で若い女性達を盛り立てる。 3.「Wide Open Spaces」は彼女達の代表作といえる曲で、カントリー・チャートではトップの座を獲得、全米チャートでは41位まで上昇した曲(1998年発売の同タイトルのアルバムに収録)。この曲もJTが歌い、ギターを弾くナタリーも含め女性は楽器を弾きながら、寄り添うようにコーラスをつける。曲間に挿入されるインタビューで、彼女達が如何にJTの音楽を愛していたかが繰り返し語られ、JTは少しはにかみながら応じている。4.「October Road」はJTとナタリーがボーカルをシェアしている。マーティーのフィドルがいい味を出している。特筆すべきはバックバンドの演奏で、カントリー音楽界の腕利きミュージシャンの勢ぞろいという豪華なものだ。 5.「A Home」は2002年の「Home」からの曲で、ナタリーの陰影に富む表現力が素晴らしい。JTは他の女性二人とコーラスを担当している。6.「Shower The People」は、楽屋でのコーラスの練習シーンから始まり、そのままステージにおけるエンディングにつながる。最後の部分だけが収録されているのは残念だけど、巧妙で自然な感じの編集が劇的効果をあげているので、許すとするか。通常のステージではアーノルド・マックラーが担当しているエンディングにおけるリードボーカルのパートをナタリーが歌い、そのスケールの大きい情感溢れる歌声は天性の才能を感じさせるものがある。ステージ上での観客との質疑応答のあと、一人の女性のリクエストに応えてJTが 7.「Carolina In My Mind」を歌いだす。女性3人のコーラスはふくよかで、数あるこの曲のライブのバージョンのなかでもベストの出来だ。JTがソロで歌っている時も、ナタリーはオフマイクで歌詞を口ずさんでおり、歌に対する愛情がひしひしと伝わってくるシーンだ。最後の曲 8「Ready To Run」は何処かで聴いたことがあるなと思っていたら、ジュリア・ロバーツ、リチャード・ギア主演の映画「Runaway Bride」(1999 邦題:プリティー・ブライド)でフィーチャーされていた曲だった。ここでもJTが張り切って歌い、エンディングのマーティー(この曲の作者でもある)による派手なフィドルのソロとコーラスは躍動感に溢れている。

本作以後もディキシー・チックスの人気は上昇を続けたが、2003年のイラク戦争の最中、ナタリーがコンサートでブッシュ大統領に対する批判発言を行い、その後もメディアで発言を続けたために、保守的なカントリー音楽界、放送局の排斥運動に会ってCDやコンサートの売り上げに影響が出てしまうが、めげずに頑張り自分達の主張を押し通す。2004年には「Vote For Change」のコンサートシリーズにJTと一緒に参加し大評判をとった。一時期は音楽家生命が危ぶまれたが、この事件をきっかけに、カントリー音楽にとどまらない幅広い新しいファン層を獲得、2006年の新作「Taking The Long Way」は全米アルバムチャートの1位になるなど、人気を集めた。

[2022年10月追記]
収録日・場所につき追記しました。


Vote For Change (Sundance Channel TV) 2004   

James Taylor : Lead Vocals (1,2,4,5), Back Vocals (3), A. Guitar (1,2,3,4)

[Dixie Chicks]
Natarie Maines : Lead Vocals (3), Back Vocals (4,5)
Martie Seidel : Violin (3,5), Back Vocal (3,4,5)
Emily Erwin : Banjo (5), Doblo (3), Back Vocal (3,4,5)

[Band]
David Grissom : E. Guitar
Keith Sewell : A. Guitar
John Deaderick : Keyboards
Brent Truitt : Mandolin
Jimmy Johnson : E. Bass 
John Gardner : Drums



1. Secret O' Life
2. Never Die Young
3. Sweet Baby James
4. Shower The People
5. Some Days You Gotta Dance [Troy Johnson, Marshall Morgan]



収録: 2004年10月11日 ワシントンDC MCI Center


民主党を支持(または反ブッシュ)のミュージシャン達が、MoreOn. Org.主催のコンサートシリーズに参加、ブルース・スプリングスティーン、ボニー・レイット、デイブ・マシューズ・バンド、ジャクソン・ブラウン、ジョン・メレンキャンプ、パールジャム、R.E.M. 等がいくつかのグループに分かれて、2004年の10月全米各地で公演を行った。JTは以前「Crossroads」で共演したディキシー・チックスと組んで、10/1 ピッツバーグ、10/2 クリーブランド、10/3 デトロイト、 10/5 アイオワ、10/6 セントルイス、 10/8 タンパ・ベイを回り、最後は10月11日にワシントンのMCI Centerで他のグループとの合同コンサートに出演、その模様がサンダンス・チャンネルで放送されたもの。このTV局は、その名前からピンとくる人もいると思うが、俳優で映画監督でもあるロバート・レッドフォードがショウタイム、ユニバーサル・スタジオと合弁で設立したケーブル・チャンネルだ。ちなみにサンダンスとは彼の代表作「明日に向かって撃て!」 (原題「Butch Cassidy And The Sundance Kid」 1969年)の役名から由来するもので、新進映画人を対象としたサンダンス映画祭との関係も深く、通常は独立系の監督作品、短編やドキュメンタリーを放送している。一連のコンサートおよび当該テレビ放映は大評判となったが、大統領選挙において共和党のブッシュを覆す事はできなかった。今回の選挙はブッシュ大統領にとっては決して追い風ではなかったはずだが、対抗する民主党候補(ケリー氏)にカリスマ性が不足していたからでもあると思う。個人的にも最近のアメリカは独善的な態度が過ぎ、他国、異文化に対する配慮に欠けているような気がするので、憂慮すべき事態であると思うのだが........。

番組において、JTのシーンは、ピッツバーグのコンサートの楽屋裏でのインタビューから始まる。そしてワシントンのコンサートの模様となり、気軽な感じで1.「Secret O' Life」を歌いだす。彼の横顔のクローズアップが老人顔になっているのにハッと驚いてしまう。曲後のJTのコメントが素晴らしいので、原文のまま引用します。「I hate it when they say you shouldn’t change horses in mid-stream. The horse can’t swim and it’s in way over its head and that horse shouldn’t have crossed the stream in the first place, and there’s a good democratic mule right there. So change that horse. Change it.」 2.「Never Die Young」はマンドリンが入っている珍しいバージョンとなっている。ライブなので、エンディングは「Never Let Them Fall」と締めくくられる。その後ディキシー・チックスが呼ばれて登場。聴衆の大声援、自信に満ちた態度から、2年前の「Crossroads」の頃と比較して、彼女達が格段にビッグになった事がわかる。3.「Sweet Baby James」は、今回はドブロを抱えて登場したエミリーの演奏がいい味を出している。それ以外は2年前とほぼ同じ内容だ。そしてJTの素晴らしいコメントWe started the tour on the eve of the first debate and I’ve been asked ‘What advice do you have for undecided voters?’ You take a look at the two candidates; you study ‘em real close… and YOU CHOOSE THE SMART ONE. You choose the smart one.」。 「Crossroads」ではエンディングのみだった4.「Shower The People」が今度は全編収録されたので歓喜して見入ってしまう。JTのリードボーカルの途中で時たま入るナタリー・メインズのサイド・ボーカル、コーラス部分の4人の合唱が素晴らしく、そして前回と同じくエンディングにおけるナタリーのリードは最高ですね! そしてこれも前回と同様、ディキシーの曲 5.「
Some Days You Gotta Dance」をJTが歌う。

JTが退場した後に、ディキシー・チックスのステージとなり、ナタリーのコメント。「After ‘the incident’, people asked me if I wanted to take back what I’d said. I thought, well, no, because after that, Bush would just call me a flip-flopperもともとブッシュ批判発言で大変な物議を醸した人たちなので、今回のコンサートでも筋金入りですね。「Truth No.2」そしてボブディランの曲「Mississippi」は大変に力が入ったボーカルで、この人達がこんなにビッグになった事がよく判るパフォーマンスだ。今回の映像では、3人のなかでエミリーが特に美しい。ナタリーは少し太りすぎかな?

バックバンドは、ディキシーチックスのライブアルバム「Top Of The World Tour: Live」2003 で彼等のバックを担当していた人達に、JTバンドの常任ベーシスト、ジミー・ジョンソンが加わったのもの。デビッド・グリソンは、ロベン・フォード、バディ・ガイ、ジョン・メレンキャンプ、等幅広い分野のセッションに参加、自身名義のソロアルバムも発表している。キース・ソウウェルはリッキー・スキャッグスやライル・ラボット、ジョン・デッドリックはエミールー・ハリス、ジェリーダグラスのセッションに参加。ブレント・トルーイットはアリソン・クラスス、ドリー・パートン、アンドレア・ゾーンの作品に、ジョン・ガードナーはロリー・ブロック、ウィリー・ネルソン、ジェリーダグラスの作品に名前を見つけることができる。

[2009年7月追記]
バックバンドの情報を入手しましたので、訂正・追記しました。


Sessions @aol  2005   

James Taylor : Acoustic Guitar, Vocal
Michael Landou : Electric Guitar
Larry Goldings : Keyboards (1,2,3,5)
Jimmy Johnson : Bass (1,2,3,5) 
Steve Gadd : Drums (1,2,3,5)
Luis Conti : Percussion (1,2,35)
Walt Fowler : Trumpet, Synthesizer (2,3)
Lou Marini : Sax (2,3)
Arnold McCuller : Back Vocal (2,3)
Kate Markowitz : Back Vocal (2,3)
Andrea Zonn : Back Vocal (2,3), Violin (4,5)



1. Fire And Rain  
2. Mexico  
3. Summertime Blues [Jerry Capehart, Eddie Cochran]
4. Sweet Baby James
5. The Water Is Wide [Traditional]

2005年春頃収録、2005年6月よりインターネット上で公開


2005年6月から始まった「"Summer's Here" Tour」のためのリハーサルを収録したもので、2005年春頃の収録。同年6月より米国のAOL Music のホームページから配信された。最近同HPのヴィデオ映像は、北米地域のみアクセス可能という制限がかかっていて、日本から観ることができなくなってしまったが、自分のPCの地域設定を米国に変更すると可能になるという噂を聞いたことがある。納屋のような建物の中での日中リハーサルで、外に見える木々の緑が大変鮮やか。JTとバンドは皆カジュアルな服装で、椅子に座ったりして、大変リラックスした演奏。スティーブ・ガッド、アンドレア・ゾーンという新しいメンバーを迎えたバンドは、サウンドもルックスも大変新鮮だ。

おなじみの 1.「Fire And Rain」は淡々と演奏されるが、マイケル・ランドウのギターがペダル・スティールギターのようなエフェクトを付けている。でも何と言っても印象的なのは、スティーブ・ガッドのドラムスで、エンディングのプレイの叩き方は、ラス・カンケルやカルロス・ヴェガのものと基本的には変わらないが、リズムの乗りが異なっていて、バンドにおけるドラマーの存在の大きさを思い知らされる1曲だ。2. 「Mexico」のサルサ調アレンジも従来に増してワイルドで、ルイス・コンテとのリズムの共演がエキサイティング。ブラスセクション、サンタナを思わせるギターソロも楽しい。ここでのコーラスはいままでの4声でなく、女性2名、男性1名の3声編成なので、全く異なるサウンドに聴こえ、それなりに素晴らしい出来。1979年の「In Concert」 E1 以来久しぶりに耳にする 3.「Summertime Blues」は、余裕やっぷりで名手揃いのバンドの演奏が光る逸品。4.「Sweet Baby James」は、アンドレア・ゾーンのバイオリンと、マイケル・ランドウのペダル・スティールギター・エフェクトの伴奏付きの演奏。5.「The Water Is Wide」のバイオリンも最高。アンドレアのプレイはさらっとしているが心に沁みる。彼女は、カントリー音楽の本場ナッシュビルを活動拠点とし、ヴィンス・ギルやアリソン・クラウスのバックを務めながら、自身シンガー、フィドル・プレイヤーとしてソロアルバム「Life Goes On」 2003を発表している人だ。


QVC Live Sessions   2008   

James Taylor : Acoustic Guitar, Vocal
Michael Landou : Electric Guitar
Jeff Bebko : Keyboards
Jimmy Johnson : Bass  
Steve Gadd : Drums
Luis Conti : Percussion
Walt Fowler : Trumpet, Synthesizer 
Lou Marini : Sax
Arnold McCuller : Back Vocal
David Lasley : Back Vocal
Kate Markowitz : Back Vocal )
Andrea Zonn : Back Vocal , Violin


Jackie Gonzales: Host

[17:00]
1. It's Growing [Wlliam Robinson Jr., Warren Moore]
2. Whichita Lineman [Jimmy Webb]
3. You've Got A Friend [Carole King]
4. (I'm A) Road Runner {Edward Holland Jr., Lamont Dozier, Brian Holland]
5. Some Days You Gotta Dance [Troy Johnson, Marchall Morgan]

[21:30]
6. Some Days You Gotta Dance [Troy Johnson, Marchall Morgan]
7. On Broadway [Jerry Leber, Mike Stoller, Cynthia Weil, Barry Mann]
8. Carolina In My Mind
9. Hound Dog [Jerry Leber, Mike Stoller]
10. Summertime Blues [Eddie Cichran, Jerry Capehart]

収録・放送: 2008年9月12日 恐らく QVC Studio, West Chester, Pennsylvania



QVCは、24時間テレビショッピングを放送する専門チャンネル。Qは Quality、Vは Value、CはConvenienceを意味するとのこと。2008年9月12日、JTは9月30日発売のアルバム「Covers」 A20のプロモーションのため、QVCの番組に出演した。約13年後の2021年6月、その時にミキシングを担当していた技術者がYouTubeに投稿した映像を観ることができた。

バンド(Band Of Legend)は、A20と同じメンバー(キーボードはラリー・ゴールディングスでなく、ジェフ・ベブコ)。ホストはジャッキー・ゴンザレスという女性で、曲間のJTへのインタビューと 「Covers」の宣伝、電話による注文の催促を担当。彼女は、2002年にQVCの司会で有名になり、その後テレビやラジオのパーソナリティーとしても活躍中。その語り口とチャキチャキした明るい態度は、視聴者に電話注文を促す宣伝を行っても、あまり気にならない位さわやかな感じだ。彼女の語りから、番組は 17:00と 21:30の2回に分けて各30分放送されたこと、前半の語りの中で「注文が4,500件来ています」と言っているので、少なくても前半は生放送だったことがわかる。21:30からの後半については、ルウ・マリニのシャツがオレンジから黄色に変わった以外は皆同じ服を来てるので、少し休憩した後に録画したものかもしれない。

スタジオに少人数のオーディエンスを招いたライブで、バンドの連中はカジュアルな服を着ていて、名手揃いだけあって生放送でもリラックスした雰囲気で演奏している。画面の下三分の一にQVCのロゴ、CDタイトルと価格、発送日(CD発売日の9月30日)、注文先の電話番号が終始大きく表示されているのは、番組の性質上やむを得ないね。ジャッキーが曲間の語りで何度も強調していたのは、QVCで購入すると、特典として4曲のアウトテイク(「Get A Job」、「In The Midnight Hour」、「Knock On Wood」、「Oh, What A Beautiful Morning」)と、アルバム製作風景 (Behind The Scene Footage) がエンハンス仕様で付いているという点だった。アウトテイクについては、その後ファンの要望が高まったため、2009年4月7日に「Other Cover」 A21として追加発売された。また「Behind The Scene」については、YouTubeに数回に分けて投稿された。

演奏曲は、3.「You've Got A Friend」、8.「Carolina In My Mind」を除き、すべてA20から。マイケル・ランドウのギタープレイが冴えていて、4 (ギブソンSG), 7, 10 (ストラトキャスター)を除き、テレキャスターのピキピキした音で弾きまくっている。4.「(I'm A) Road Runner」ではスライドギターを、特に 5, 6.「Some Days You Gotta Dance」でのギターソロが凄い。5, 6ではソロの内容が全く異なっていて、前者では、ソロの最中にギターの低音弦のペグ(糸巻)に手を伸ばして、チューニングを変える事でトワンギーな音を出すという離れ技を披露している。それに対し、キーボードのジェフ・ベブコはラリー・ゴールディングスの代役のせいか、ここでは 9.「Hound Dog」のオルガン・ソロを除き、大人しめなプレイに終始している。
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テレビショッピングの宣伝用なので、画面と曲間の語りに執拗な注文依頼が入るが、それなりに面白く、十分に楽しめる内容だ。

[2022年5月作成]