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Jones Beach Theatre, Wantagh, New Yotk 1990 |
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James Taylor: Vocal, Acoustic Guitar
Michael Landou : Electric Guitar
Don Grolnick : Piano, Keyboards
Clifford Carter : Sythesizer, Keyboards
Jimmy Johnson : Bass
Carlos Vega : Drums
Valerie Carter, David Lasley, Kate Markowitz, Philip Ballou : Back Vocal
1. Secret O' Life
2. You Can Close Your Eyes
3. Traffic Jam
4. Sweet Potato Pie
5. Baby Boom Baby
6. Riding On The Railroad
7. Machine Gun Kelly [Danny Korchmer]
8. Everyday
9. Sun On The Moon
10. Like Everyone She Knows
11. Hour That The Morning Comes
12. Handyman [Otis Blackwell, Jimmy Jones]
13. Carolina In My Mind
14. Country Road
15. Only One
16. Sweet Baby James
17. That's Why I'm Here
18. Don't Let Me Be Lonely Tonight
19. Never Die Young
20. Fire And Rain
21. Only A Dream In Rio
22. Millworker
23. Up On The Roof [Gerry Goffin, Carole King]
24. Mexico
25. Your Smiling Face
26. Shower The People
27. How Sweet It Is (To Be Loved By You) [Holland, Dozier, Holland]
28. You've Got A Friend [Carole King]
29. Steamroller (Cut)
収録: 1990年8月10日 Jones Beach Wantagh, New York
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1990年JTはコンサートツアーをやらなかった。1991年9月に発売されたアルバム「New Moon Shine」のための曲作りや製作のためと推測される。その年に行われた数少ないコンサートのひとつは、6月24日のテルーライド・ブルーグラス・フェスティバルで、そこでは1989年と同じマーク・オコナー、ジェリー・ダグラス、エドガー・メイヤーといったブルーグラスのニュージシャンがバックを担当、コーラス隊にヴァレリー・カーターとケイト・マーコウィッツが初めて加入したものだった。その1ヶ月半後の8月10日に行われた本コンサートは、ベースのジミー・ジョンソン、ギターのマイケル・ランドウ、キーボードのクリフォード・カーターが参加しており、その後長らくJTバンドの常連になる人達の最も初期の演奏ということになる。彼らは前述の「New
Moon Shine」の録音セッションのメンバーであり、新アルバム製作およびその後のコンサートツアーのために結成された新バンドのリハーサルの成果、バンドの一体感を試すためのコンサートと推測できる。会場のジョーンズ・ビーチ・シアターは、ニューヨークの東郊外に位置するロングアイランドの海辺の公園内にある
1952年建設の野外円形劇場。
遠くの席からのオーディエンス・ショットで、ズームアップにしてJTの上半身が画面に入る感じ。ピントも完全ではなく、アップの際のJTの表情がかすかに分る程度。撮影中カメラは固定されているが、被写体を変えるために手で動かす時はぶれる。当時のビデオの性能の限界のため、光量不足で画面は暗く、白黒に近い映像となっている。一方音のほうは、モノラルであるが各楽器がバランス良く聞こえ、ベースの音は小さめであるが、ここぞという箇所はしっかり聞こえるので、音の厚みには欠けるが、それなりに聴きやすいとおもう。
ドン・グロルニックとの2人の演奏による 1.「Secret O' Life」に続き、2曲目に2.「You Can Close Your Eyes」を持ってきている。通常は最後を飾る曲なんだけど、この頃のJTは何故か最初で歌ってしまう。4.「Sweet Potato Pie」で、JTはギターを置いて歌う。ここでのマイケル・ランドウのギタープレイは、オリジナル録音のボブ・マンとは異なり、よりハードにロックしている感じ。コーラス隊の感じがいつもと違うなと思っていたが、JTによるメンバー紹介でその原因が分った。いつものアーノルド・マックラーの代わりにフィリップ・バルー(1950-2005)が歌っているためだ。彼は1970年代の中盤にアーノルドと Revelationというコーラスグループを結成していた人で、ルーサー・バンドロス、ジョージ・ベンソン、ビリー・ジョエル、ジョン・ホール、カーリー・サイモンなどの作品に参加、「New Moon Shine」 1991 A14 にも1曲だけ参加している。彼の声は、常連のアーノルド・マックラーよりもかなり高いため、ファルセットのデビット・ラズリーと合わせて、4人によるコーラスがより女性的に響くのが面白い。JTは、ドン・グロルニックの紹介のところで、彼のジャズアルバム「Weaver Of Dreams」1990の宣伝をしている。以下特筆すべき点のみ述べる。9.「Sun On The Moon」では、コーラス隊の声質の違いがはっきり分る。12「Handyman」のイントロはマイケルが一人で弾いている(いままではJTのアコギとエレキギター2台による演奏だった)。 10.「Like Everyone She Knows」は、「New Moon Shine」 A14に収録される曲なので、本コンサートの時点では未発表だ。18.「Don't Let Me Be Lonely Tonight」では、いつもながらドン・グロニックのエレキピアノ・ソロが最高。 22.「Millworker」のイントロは、クリフォード・カーターのシンセサイザーが活躍。
本音源のハイライトは、26.「Shower The People」で、エンディングのソロボーカルは予想通りフィリップ・バルーが歌いだしたが、途中からデビッド・ラズリーが引き継いで歌うのだ!以前彼のホームページで、「どうしてJTのコンサートでソロで歌わないのか」というファンの質問に対し、彼は本曲で歌うことがあったと答えているが、本音源で初めて観る(聴く)ことができた。それにしても、ファルセット・ヴォイスでシャウトするなんて凄いね〜。
テープに不備があったようで、27.「How Sweet It Is」は途中から始まり、29.「Steamroller」は、エレキギター・ソロの前でカットされてしまう。このしばらく後に行われたタングルウッドでのコンサートのセットリストから、本音源には入っていないが最後の曲として「That
Lonesome Road」をアカペラで歌ったものと推定される。
珍しいメンバーによる歌唱を楽しめる音源。
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Una Serata Con James Taylor (In Milano) 1993 |
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James Taylor : Vocal, A. Guitar
1. Something In The Way She Moves
2. Country Road
3. Only A Dream In Rio [James Taylor, Brazilian Translation J. Maraniss]
4. Secret O' Life
5. Blossom
6. Carolina In My Mind
7. Instrumental
8. Sweet Baby James
9. Shower The People
収録 1993年 Capolinea di Milano Jazz Club and Restaurant, Milano, Italy
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ミラノのテレビ TV3に出演、少人数のオーディエンスを招いた場所で弾き語りのライブを行ったもの。冒頭のタイトルは「Sweet Baby James
Una Serata Con James Taylor (JTと過ごす晩)」。本映像の出所・時期については、いろんな資料が存在するが、まず国については司会者がイタリア語で喋っているので、ブラジルとする資料は誤り。また収録時期について1996年とするものがあるが、彼の風貌・服装(グレーのシャツ)がドイツのバーデン・バーデンで出演したテレビ映像「Ohne
Filter Extra」(本ページ以下参照)の雰囲気とほぼ同じため、1993年が正しい。
ドラムスやヴァイブが置かれた音楽室のようなステージ。椅子にすわりながらのプレイなので、いつもよりもテンポが遅く、ゆったりしているように感じる。本映像におけるギター演奏は内臓ピックアップからの録音で、大変生々しく、細やかなタッチやニュアンスが手にとるようにわかる。弾き語りの定番
1.「Something In The Way She Moves」に続く 2.「Country Road」は、初期を除いて通常はバンドで演奏されるので、めっけものだ。曲間で、司会者によるオーディエンスへのインタビューが挿入されるが、何を話しているのか判らない。3.「Only
A Dream In Rio」では、曲の生い立ちについてのJTのコメントがあるが、ここではイタリア語の吹き替えがかぶせられているので、残念ながら彼の英語を聞き取ることはできない。それでもこの曲の弾き語りバージョンは大変珍しく、お宝映像といえるものだ。その後は弾き語りの常連曲が続くが、本映像では曲の間に手癖でギターをちょろちょろ弾くシーンが多く、コンサートでの緊張感とは異なるアットホームでくつろいだ雰囲気がある。7.「Instrumental」は、ビデオ作品「Squibnocket」1993年
E7にも挿入されていた短いギター演奏で、1991年のソロアルバム「New Moonshine」 A14に収められていた「Like Everyone
She Knows」のイントロ部分である。
8.「Sweet Baby James」の後に、司会者(Ezio Guaitamacchi イタリアのロック・ミュージシャンらしい)によるJTへのインタビューがあるが、これも全編イタリア語の翻訳がかぶせてある。ここでありがたいのは、インタビューの合間に挿入されるJTのプロモビデオで、「Copperline」、「Never
Die Young」、「(I've Got To) Stop Thinkin' 'Bout That」、「Everyday」、「Only One」がノーカットかつ良い画質で見ることができた。特に「(I've
Got To) Stop Thinkin' 'Bout That」は他では観れないものだ。
最後にライブハウスのシーンに戻り、アンコール的な感じで、「Short Version」として、9.「Shower The People」が演奏される。これもバンド付きや、コーラスを録音したテープと一緒に演奏される事が多い曲なので、本映像のような一人だけでのプレイは珍しいものである。エンディングのアドリブボーカルも自分でしっかり歌っており、さらっとしたプレイではあるが、それなりに聴き応えがある。
当時の弾き語りの有様を捉えた映像として、また普通は一人でやらない曲を演奏している意味で、価値があるものだ。
[2024年10月追記]
同じコンサートの撮影で異なる編集の映像を観ることができた。資料には「James Taylor: Italy TV 1993」とあるが、上記の番組のために撮影した映像を再編集したもの。司会者Ezio
Guaitamacchiのコメントと彼がオーディエンスに行ったインタビューやJTのプロモ・ビデオはカットされ、約90分から40分に縮小されている。また曲順が大きく異なり、今回の映像は以下のとおり。
1. Something In The Way She Moves
2. Blossom
3. Instrumental
4. Secret O' Life
5. Country Road
6. Instrumental (3と同じ映像)
7. Carolina In My Mind
8. Only A Dream In Rio [James Taylor, Brazilian Translation J. Maraniss]
9. Instrumental (3と同じ映像)
10. Sweet Baby James
11. Shower The People
曲順に関しては、もとの番組自体が編集されていたのでコンサートにおける本当の曲順は不明。また曲間に挿入されるJTのインタビューは、新たに女性アナウンサーによるイタリア語の質問が付けられ、それに対するJTの英語の回答に翻訳の被せ音声がなくなったかわりにイタリア語の字幕が入っている。「Instrumental」の同じ映像が何回も入るのは、実際の放送ではコマーシャルが入っていて、番組に戻る際の導入として使われたものと思われる。また最後にエンディング・クレジットがしっかり入るので、本映像は実際の放送用として編集されたものであることがわかる。
会場の様子やオーディエンスのショットまでもカットされた(エンディングでちょっとだけ写る)のは残念だけど、異国人には耳障りなイタリア語のお喋りがカットされ、JTの演奏に重点を置いた映像なので十分見応えがある。
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Ohne Filter Extra 1993 |
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James Taylor : Vocal, A. Guitar
1. Something In The Way She Moves
2. Country Road
3. Secret O' Life
4. Carolina In My Mind
5. Sweet Baby James
6. You Can Close Your Eyes
収録: 1993年10月5日 ドイツ、バーデン・バーデンにて
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1986年に続くドイツの音楽番組への出演。前回はバンドと一緒に演奏していたが、今回はギター1本による弾き語りのステージだ。ここで演奏している6曲は、いずれも弾き語り用としてお馴染みのレパートリーであり、最近のワンマンバンド・ツアー(実際はラリー・ゴールディングスとの二人による演奏が多いが)のように、意外な曲の弾き語りアレンジといったサプライズはない。小さなスタジオにおける撮影で、観客は立ち見。司会者のフリッツ・イグナーによる紹介のあと、Tシャツ姿に眼鏡といったラフな格好で、語りも少なく淡々と進行する。ソロなのでボーカルもギターもとても丁寧な演奏だ。初期を除く弾き語りスタイルでのまとまったパフォーマンス映像・音源という意味では珍しいものだが、サウンド的な目新しさはない。
[2024年1月追記]
2023年JTのYouTubeチャンネルで、良質の動画が公開されました。解説によるとOhne Filter は、ドイツのテレビ局SWF(注:バーデン・ヴュルテンベルク州にある)で1983年から2001年まで続いた音楽番組で、45分間のスタジオにおける公開ライブ番組。収録は1993年10月5日だったが、初めての放送は1994年8月11日とのことです。正確な日付がわかりましたので、その旨追記しました。
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Evening At Pops 1993 |
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James Taylor : Vocal, A. Guitar
Bob Mann : E. Guitar
Don Grolnick : Keyboards
Jimmy Johnson : Bass
Carlos Vega : Drums
John Williams : Conductor for Boston Pops Orchestra, Host
Stanley Silverman : Orchestra Arragement
1. Secret O' Life
2. Carolina In My Mind
3. The Water Is Wide [Traditional]
4. The Way You Look Tonight [Dorothy Fields, Jerome Kern]
5. Copperline [Reynolds Price, James Taylor]
6. Don't Let Me Be Lonely Tonight
7. Steamroller
収録 1993年7月16日 Boston Symphony Hall, Boston
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ボストン・ポップス・オーケストラは1885年にボストン・シンフォニー・オーケストラのサブセクションとして結成された。1930年から約50年にわたり指揮者を勤めたアーサー・フィドラーは、ビートルズなどのポピュラー音楽にも積極的に取り組むなど、よりライトで一般向けの音楽を志向し、世界でも最も有名なオーケストラに育て上げた。その後を継いで1979年から1995年まで常任指揮者に就任したジョン・ウィリアムスは、スターウォーズやインディー・ジョーンズ・シリーズの音楽を担当した人。PBS(Public
Broadcasting System)製作の「Evening At Pops」は、このオーケストラの知名度を高めることに大きく貢献した番組で、大衆に親しみやすい曲を演奏する他、ポピュラー音楽界から豪華なゲストを招いての共演が売り物だった。
番組はジョン・ウィリアムスの司会から始まり、まずクラシックのスッペの曲と、ドビッシーの「亜麻色の髪の乙女」が演奏される。それから彼の「素晴らしいワインが年を経るとともに味が良くなるようだ」という紹介で、黒ずくめのシックな服装でJTが登場する。1.「Secret O' Life」は、JTのギターとドン・グロルニックのピアノだけの演奏。2.「Carolina In My Mind」からバンドとオーケストラが加わる。JTの地元でもあり、聴衆は大喝采を送る。3.「The Water Is Wide」でバイオリン・ソロを担当するのは、ソリストのタマラ・スミルノヴァ(Tamara Smirnova)。ロシア人である彼女のクールな横顔と鋭い目付きが大変印象的だ。トラッドの底深い味わいとクラシカルなアレンジが良くマッチしてとても良い出来だと思う。4.「The Way You Look Tonight」はオーケストラのアレンジがふくよかで、大変豪華なムードとなった。 「On Sunny Side Of The Street」、「I Can't Give You Anything But Love」などの名作を残した作詞家のドロシー・フィールズ(1905-1974)と、「Show Boat」、「アニーよ銃を取れ」などのミュージカルの音楽を担当し、「Ol' Man River」、「Smoke Gets In Your Eyes」、「All The Things You Are」、「Fine Romance」など多くの名曲を残したジェローム・カーン(1885-1945)の作品で、フレッド・アステアとジンジャー・ロジャース主演のミュージカル映画「Swing Time」 1936でアステアが歌い、その後ビング・クロスビー、フランク・シナトラ、ビリー・ホリデイなどあらゆるジャズ・シンガー、およびジャズ・ミュージシャンが取り上げた大名曲だ。JTはギターを置き、真剣な表情で歌う。巧みなヴィブラートを効かせたボーカル・テクニックにびっくり! あれっ? JTはノンヴィブラートじゃなかったけ? きちんとヴォイス・トレーニングをやっているのでしょうね。曲とオーケストラ演奏の素晴らしさにも増して、JTの歌唱には説得力があり、大感動してしまう。5.「Copperline」を始める前にJTが、「この曲を父に捧げます。Hi Dad !」とアナウンスし、客席にいる父アイクの姿が映る。よく観るとその隣には弟のリブが座っている。「Copperline」はバンドのみの演奏だ。曲後に口笛を吹くアイクの姿が映る。続く6.「Don't Let Me Be Lonely Tonight」は絶品ですね。オーケストラとバンドの演奏が溶け合い、この曲の持つゴージャスな魅力が最大限に発揮されており、ドン・グロルニックのピアノソロも最高だ。途中挿入される聴衆の澄んだ瞳が印象に残る。 7「Steamroller」は、スタンリー・シルバーマン(JTの「Hourglass」1997年 A16 やポール・サイモンのアルバムのアレンジを担当した人)によるアレンジのオーケストラ演奏から始まる。途中まで何の曲かさっぱり分からず、JTがブルースを歌いはじめると、意表を突かれた聴衆はどっと笑い歓声を上げる。セコンド・ヴァースからバンドがフィルイン、ドン・グロルニックとボブ・マンがソロを取る。オーケストラの繊細さとバンドのブルース演奏が奇妙にバランスするクリエイティブなアレンジで、曲が終わった後、聴衆はスタンディング・オーヴェイションで応えている。
JTが退場した後は、ディズニーの映画「アラジン」とマンボ音楽が演奏され、プログラムは終了する。最後に流れるテロップを見ていたら、「Special
Thank To」のところで、Boston Symphony Orchestra のスタッフの表示があり、その中に「Director Of Public
Relation And Marketing」としてCaroline Smedvig の名前があった。JTはこの企画で彼女と知り合い、長い交際の後に2001年結婚することになる。この作品は、JTにとって過去のマンネリを断ち切り、1995年から始まるシンフォニック・ツアーのような新しい事に挑戦するきっかけとなったのみならず、最良の伴侶との出会い、そしてクラシックの音楽家達との親交の機会を得たことで、大変意義のあるイベントであったといえよう。
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Acoustica 1994 |
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James Taylor : Vocal, A. Guitar
Don Grolnick : Keyboards
Jimmy Johnson : Bass
Carlos Vega : Drums
1. Sweet Baby James
2. Secret O' Life
3. Riding On The Railroad
4. Something In The Way She Moves
5. Song For You
6. Steamroller
7. Frozen Man
8. Country Road
9. Carolina In My Mind
10. You've Got A Friend [Carole King]
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アメリカでブームを起こした「アンプラグド」のイタリア版と思われる番組は、最初にアンプからはずされてぶらぶらするジャックのクローズアップから始まる。冒頭に「Song
For You」と「Only A Dream In Rio」のサウンドチェックのシーンが挿入され、女性アナウンサーによるイタリア語の紹介が延々と続き、「Best
Live」のジャケット写真が写る。小さなスタジオでのライブで、JTは後ろ髪を長くして、眼鏡をかけている。この頃の彼はかなり痩せていて骨ばった顔をしていた。
本作はドン・グロルニックのピアノが目立っていて、おなじみの2. 「Secret O' Life」や 3.「Riding On The Railroad」で彼のプレイを楽しめる。カメラをぶら下げたクルーがステージをうろうろ歩き回り、各ミュージシャンに接近して様々なアングルから撮影するため、彼らの超クローズアップのシーンが多くあるユニークな映像となった。司会のおしゃべりはイントロのみで、途中のJTのスピーチも少なめで進行してゆく。ジャズ・ブルース調の6.「Steamroller」では、リードギター不在の分、ドンのピアノソロが何時になく饒舌。7.「Frozen
Man」ではカルロス・ヴェガが右手でマラカス、左手でハイハットを叩くという器用な演奏を見せる。8.「Country Road」のイントロにおけるベースソロでは、横からとらえた楽器の超クローズアップが写り、弦が震える様がはっきり写っていて生々しい。これだけ舐めるように撮影されると演奏しにくいだろうな〜。エンディングのドラムスとギターだけでJTが歌う様がカッコイイ。9.「Carolina
In My Mind」でのドンのピアノが美しい。10.「You've Got A Friend」は始まると、聴衆から拍手が起こり、JTは汗だくになりながら歌う。コンサートのシーンが終わった後、ほんのちょっとだけピーター・アッシャーが写る。
イギリスでのTV番組「Loudon & Co」で、JTが「英語を話す国に帰ってきてほっとするね」と話していることから、正確な撮影日は不明ながら、順番としては本作を前に置くことにした。
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Loudon & Co (The Old Fruitmarket, Glasgow) 1994 |
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James Taylor : Vocal, A. Guitar
Iris Dement : Harmony Vocal (8)
Don Grolnick : Keyboards
Jimmy Johnson : Bass
Carlos Vega : Drums
1. Sweet Baby James
2. Something In The Way She Moves
3. Long Ago And Far Away
4. Copperline [Reynolds Price, James Taylor]
5. Slap Leather
6. Frozen Man
7. Don't Let Me Be Lonely Tonight
8. Fire And Rain
9. Country Road
10. You've Got A Friend [Carole King]
11. You Can Close Your Eyes
Loudon Weinwright III : Host
収録 1994年 3月 The Old Fruitmarket, Glasgow, Scotland
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BBCスコットランドが、フォーク歌手のロウドン・ウェインライト3世をホストに製作したテレビ番組。グラスゴーにある古い果物市場をイベントホールに改装したものと思われる「Old
Fruit Market」で収録された。構内は業者の看板が残され、クラシックな雰囲気が漂っている。ロウドン・ウェインライト3世は、ライフマガジンのライター、エディターの息子として1947年に生まれ、ニューヨーク郊外に育った。1960年代後半からフォークシンガーとしてデビューし、1973年には「Dead
Skunk」というヒット曲(全米16位)を放っている。ユーモアと風刺を得意とし、そのレコードとステージはカルト的人気を誇る。1985年よりイギリス・ロンドンに活動拠点を移し、現在に至っている。番組は「Hi
! Folks」という彼の掛け声から始まり、ボブ・ディランを風刺したトーキングブルースやカントリー・ソングのパロディー曲を演奏する。続いてOM-45を抱えたアイリス・デメントが登場し、2曲ほど自作曲を歌う。ジョニ・ミッチェルやロレッタ・リンの影響を受けた素朴なカントリー・フォークのスタイルだ。彼女は1961年生まれで、敬虔なキリスト教徒の家族のなかで、ゴスペル音楽に親しんで育ったそうだ。レコード・デビューは1991年と遅めで、90年代の後半と2000年代前半は作品が途絶えていたが、2005年にゴスペル色の濃い復帰作を発表している。
JTは眼鏡をかけ大学教授のよう。1. 「Sweet Baby James」はジミー・ジョンソンのベースをバックに演奏。曲間の語りで、自分の祖先がスコットランドにいたことを明かし、聴衆の喝采を浴びる。そういえば007シリーズその他多くの映画に出演した名優ショーン・コネリーもスコットランド出身だったな。そういえば顔つき、頭髪の状態など似ているね。
本作のバックバンドは、コーラス隊・リードギターなしの簡易版で、他の映像とは異なるシンプルな演奏が味わえる。8.「Fire And Rain」は観客のリクエストに即応した演奏。ここでの最も貴重な映像は、アイリス・デメントとのデュエットによる 9.「You Can Close Your Eyes」だろう。彼女のハーモニー・ヴォイスと感性はこの曲にピッタリで、いろんなアーティストとのデュエット・バージョンがあるなかでもベストだと思う。再アンコールで
10. 「You Got A Frined」を紹介するにあたり、ロスアンゼルスのクラブでキャロル・キングと一緒に演奏した時、JTがこの曲を聴き、とてもいい曲だと言ったら、彼女が「じゃあ貴方にあげるわ」と答えたというエピソードを披露している。JTのボーカルに合わせて聴衆が一緒に歌っているのがわかり、とてもいい雰囲気だ。
少し暗めで、緑と青が強調された落ち着いたライティングの中で、下から撮影したギター演奏のクローズアップなど、魅力的なショットも多い。
[2021年追記]
2020年12月末、Lehman Producationという会社が本映像のアーカイブを Youtubeに公開した。通しではなく、曲毎に独立した映像ではあるが、画面下部にタイムコードが表示されているので、その時間から曲順を割り出すことができた。記載情報から撮影時期が3月であることが判り、また当時放送されなかった曲(2〜6)もあるので、変更・追記した。ここでの画質はまあまあであるが、音質はとてもよい。
[2021年5月追記]
上記追記後、しばらく経ってからLehman Producationから 5.「Slap Leather」が追加公開されました。また同社が公開する映像に表示されるタイムコードから、上記曲順を修正しました。なお同社から公開されていない 9.「Country
Road」、10.「You've Got A Friend」の2曲は、タイムコードがないので、他の曲の表示から合理的に割り出せる場所にはめ込みました。
[2023年12月追記]
2023年にJTのYouTubeチャンネルから、以下の曲がアップされました。そこにはLehman Productionの動画投稿から抜けていた2曲が含まれていたので、これで全部の曲がYouTubeで観れることになりました。画質・音質が良く、タイムコードの表示のない画像を観れるなんて最高ですね。全部アップしてほしかった、というのは欲張りかな?
1. Sweet Baby James
8. Fire And Rain
9. Country Road
10. You've Got A Friend 11. You Can Close Your Eyes
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VH1 Storytellers 1997 |
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James Taylor: Acoustic Guitar, Vocal
Clifford Carter: Keyboards
Jimmy Johnson: Bass
Carlos Vega: Drums, Percussion
0. Fire And Rain (Incomplete)
1. Calorina In My Mind
2. Sweet Baby James
3. Jump Up Behind Me
4. Mexico
5. Mona
6. Enough To Be On Your Way
7. Little More Time With You
8. Steamroller Blues
9. Copperline [Reynolds Price, James Taylor]
10. Frozen Man
11. Riding On A Railroad
12. Hangnail
13. Fire And Rain
14. Another Day
15. Line 'Em Up
16. Valentine's Day
17. Mud Slide Slim
収録: 1997年5月31日
放送: VH1 1997年6月1日 (1〜7)、1998年4月26日 (8〜16)
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VH1はMTVと同じ系列の音楽専門ケーブルTV局で、MTVが最新のヒット曲やダンス、ヒップポップ中心なのに対し、VH1は70〜80年代の音楽、特に80年代の昔懐かしいミュージックビデオを中心に放送している。本作は同局が製作した企画シリーズ番組で、一流アーティストによる少人数のスタジオライブであるが、演奏よりも曲・歌に焦点が当てられているのが特色。曲間の語りが多く、アーティストは曲作りの思いやエピソードなどを語り歌う。JTは、97年5月に発売されたソロアルバム「Houglass」の宣伝のために出演したもので、リードギター、ブラスセクション、コーラス隊なしというシンプルは編成をバックにじっくりと歌う。愛用のオルソン・ギターのマイクセッティングがいつもと異なり、普通のシェイプのマイクをサウンドホール周辺に取り付けている。生ギターのアコースティックな音にこだわったためだろう。本作においては、JTのアコギとクリフォード・カーターのキーボードがメインの構成となっており、特に品の良いピアノの音が耳に残る。97年6月1日に初回分が、翌年4月26日に続編が放送されたが、演奏者の服装から同日に収録されてものであることは明らかだ。小さめのスタジオにカーテン、ランプ、ソファ、カーペットを配し、少人数のオーディエンスに囲まれるセッティングで、居間で友人達を相手にしたプライベート・パフォーマンスのような雰囲気だ。
番組は「Fire And Rain」の途中から始まるが、続編でフルバージョンが観れるので心配無用。アーティストの歌う表情を捉える意図か、正面からの超アップのショットが多く、ひるまずに歌う様は貫禄十分。「かつては炎と雨を見たけど、最近はないね」という語りには実感がこもっている。1.「Calorina
In My Mind」の歌の前後で、イギリス滞在とアップルでの録音の思い出、ホームシックになった事が語られる。この曲はイギリスとスペインのフォーメンテラー島で書いたとのこと。当時島でキャロラインという女性に出会い、フェリーに乗り遅れたが金がなかったので野宿した思い出に触れ、「彼女は今どうしているかわからない。今日ここにいるかもね」と言って皆を笑わせる。2.「Sweet
Baby James」は、兄のアレックスの子供のために作った子守唄で、マサチューセッツ州でのハイウェイドライブ中に作曲したとのこと。作曲日を1969年12月1日と明言している。この曲がスタンダードとなった現在、このエピソードはいろんな番組で繰り返し語られている。3.5.6.11.13.14.は新作からの演奏。
「Jump Up Behind Me」では、カルロス・ヴェガが「カホーン」という名前の木製の箱型打楽器に座って演奏している。クリフォード・カーターのヒラヒラと舞うようなシンセサイザーの音が軽やか。「Gorila」録音中に休暇で訪れたが、体調を崩して部屋に籠っていた際に作ったという
4.「Mexico」は、いつもと異なる小編成の演奏が面白い。ちなみにこの音源は、2000年に発売された「VH1 Storyteller」というオムニバスCD
(B34)に収録された。「That's Why I'm Here」 1985 A12に収録されていた 5.「Mona」は、演奏前にJTの長い語りがある。アレックスとJTによる馬と豚のどっちが理知的かという論争がきっかけで、プレゼントされたフットボールのような子豚が700ポンドの大豚に成長したこと。食べることへの執念と、最後は猫イラズを食べて死んでしまったことを語る。JTの話しっぷりにはペーソスとユーモアがあり、大変味わい深いものがある。もともとステージでの話が苦手だったJTの成長、近年彼の新たな魅力となっっている、独特の雰囲気の話術の醍醐味が味わえる一時だ。6.「Enough
To Be On Your Way」は兄アレックスの死に際して作った曲で、曲作りの過程で主人公をアリスという女性に変えたという。6.「Little
More Time With You」は一転して明るい感じだ。ニューヨークのグリニッジビレッジにあったライブハウス「Night Owl」の思い出を語り
7.「Steamroller Blues」を歌う。ここではニューオリンズ調のアップテンポで演奏され、曲中でクレジットが表示されて1時間の番組が終了する。
約1年後に放送された続編は 9.「Copperline」から始まる。ほんの少しだけイントロがカットされているが、気にならない。ここでのクリフォードのピアノプレイは大変透き通った小川の流れのように綺麗だ。極地の凍土に100年前埋葬された水夫が発見されたというナショナル・ジェオグラフィック誌の記事から取材したという
10.「Frozen Man」。 11.「Riding On A Railroad」を歌い終わった時、昔の事を思い出したのか、JTは何時になく高揚してハイな気分になっている。その勢いで「Houglass」のヒドントラック
12.「Hangnail」に突入する。仕草、表情、歌いずれもユーモアたっぷりだ。13.「Fire And Rain」は雰囲気を変えて淡々とした演奏。ダークなラブソングという
14.「Another Day」と、ニクソンのホワイトハウス退去時や、統一教会の集団結婚式で人々が並ぶシーンを見て書いた 15.「Line 'Em
Up」と、新作からの演奏が続く。愛と憎しみの戦いのイメージをギャングの抗争事件に重ねた 16.「Valentine's Day」では、JTはギターを置いて歌う。クリフォードのピアノとJTの歌からは馥郁たるスタンダード・ソングの香りが漂い、ああ素晴らしい.....。最後に懐かしい
17.「Mud Slide Slim」をさらっと演奏。クレジットが出て番組は終わる。
普段ステージで演奏しない曲もやっているお宝もの。
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Live By Request 1997 (A&E TV) |
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James Taylor : Acoustic Guitar, Vocal
Bob Mann : Electric Guitar, Percussion
Clifford Carter : Keyboards
Jimmy Johnson : Bass
Carlos Vega : Drums, Percussion
Arnold McCuller, David Lasley, Valerie Carter, Kate Markowitz : Back Vocal
Kevin Nealon : Host
1. Something In The Way She Moves
2. Your Smiling Face
3. Walking Man
4. Copperline [Reynolds Price, James Taylor]
5. Jump Up Behind Me
6. Shower The People
7. Secret O' Life
8. Little More Time With You
9. Frozen Man
10. Carolina In My Mind
11. You've Got A Friend [Carole King]
12. Shed A Little Light
13. Fire And Rain
14. Sweet Baby James
15. Anana
収録: 1997年6月25日 Sony Music Studio, New York
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A&E (Art And Entertainment) 製作のTVシリーズ「Live By Request」は、有名アーティストを招き、視聴者からのリクエストを受けてその場で演奏するという趣向の生放送番組だ。kd
ラング、ブロンディ、シカゴ、ケニー・ロジャース、エルヴィス・コステロ、ホール・アンド・オーツ、ビー・ジーズ、エルトン・ジョン、トニー・ベネット等が出演している。我らがJTは、アルバム「Hourglass」発売のプロモーションとして6月25日に出演した。アルバム宣伝のための全米ツアーに備えたリハーサルが終わった所だったらしく、本人およびバンドは元気いっぱいだ。生放送かつ、リクエストされた曲を即座に演奏するということで、大変かなと思われたが、全米屈指の腕利きミュージシャンを揃えた最強のバンドだけあって、余裕綽綽でこなしているのはさすがだ。司会者は、サタデイ・ナイト・ライブへの出演で有名なコメディアンのケヴィン・ニーロンで、ジョークをちりばめたバラエティー番組のホストの様なスタイル。スタジオに数百人のファンを招き、電話とEメールでリクエストを受け付けながら番組が進行する。番組自体はその後何回も再放送されたようで、私が観た映像では「Encore
Presentation」とか、リクエスト用の電話番号が画面に表示された際には、「Recorded Earlier」というテロップが表示された。
イントロとしてまず1.「Something In The Way She Moves」が演奏される。最初はJTの弾き語りで、途中からコーラスとバンドが加わる。ボブ・マンのペダル・スティール・ギター奏法の伴奏が巧みだ。次に電話主の名前と地名が紹介され、JTに対し直接リクエストをする。それに対するJTの反応が面白く、PoliteでWarmでありながらShyでDarkな感じ(ニュアンス的にわざと英語で表現しました)で、JTの人間性がよく出ていると思う。リクエストを受けて、すぐにギターのカポをセット、バンドに目配せをしておもむろに演奏を始めるあたりは、手馴れた感じでカッコイイ。クレーンを使用したカメラワークで変化に富んだアングルからの撮影が楽しめる。2.「Your
Smiling Face」では、途中の転調でJTがカポのポジションを変えるシーンがしっかり写っている。3.「Walking Man」はスタジオにいる若いカップルによるリクエストに応えたもの。JTは「This
is a song about fall of a year」と語って演奏を開始する。ここまでくると、本人およびバンドの演奏もかなりリラックスしており、生放送でもこれだけできるなんて、凄い底力だ。4.「Copperline」も、電話のリクエストを受けてすぐに演奏に入る。その手際があまりにも鮮やかなので、つい「本当かな?
ヤラセっぽいなあ」と疑ってしまう。クリフォード・カーターのシンセサイザー、ボブ・マンのギターの伴奏が素晴らしい。
司会のケヴィンによる「初めてのギターは何だったの?」という質問に対し、JTは「合板でできた安いヤツだった。兄貴がペンキで青く塗っちゃったんだよ!ネックもボディー内部もね!」と答えている。環境保護運動への参加の話題の後、イギリスの友人からのリクエストということで、背景のスクリーンにスティングが登場。彼のリクエストによる
5.「Jump Up Behind Me」(スタジオ録音ではスティングがバックコーラスに参加していた)は、カルロス・ヴェガがカホーンという木の箱を座りながら叩き、ケイト・マコーウィッツがシェイカーを、ボブ・マンがトライアングルを演奏している。クリフォード・カーターは、吹き口を咥えて、ピアニカのように演奏するシンセサイザーで軽快なメロディーを奏でる。
でもこの曲で最もカッコイイのは、ジミー・ジョンソンで、そのベースラインのグルーヴが最高。6. 「Shower The People」のエンディングでは、おなじみアーノルド・マックラーのボーカルソロが入り、オーディエンスはスタンディング・オーヴェイションで声援を送る。
次に繋がった電話は、息子のベン・テイラーからで、「車を貸して」という内輪の会話の後、7.「Secret O' Life」が演奏される。ここでは珍しく、JTとリズムセクションの呼吸が会わず、JTは何度も後ろを振り返って合わせようとしている。8.「Little
More Time With You」は新作からの演奏。この曲が終わりCMブレイクに入る前に、「Steamroller Blues」のニューオリンズ風バージョンのイントロがちょっとだけ演奏される。
9.「Frozen Man」は、カントリー・シンガーのガース・ブルックスの電話によるリクエストで、クリフォード・カーターのピアノソロによるイントロが短いながらも清澄な響きで印象的。10.
「Carolina In My Mind」は、いつもより深めのエコーがかかったボーカルだ。スタジオ・オーディエンスからのリクエスト 11.「You've
Got A Friend」の後、デビュー時におけるビートルズのアップル・レコードとの契約のエピソードが語られ、JTはギターを置いてコーラス隊と一緒に
12.「Shed A Little Light」を歌う。ここでコーラス隊とバンドの紹介が入り、Eメールのリクエストにより、13.「Fire And
Rain」となる。2時間にわたる番組が大詰めに近づき、 14.「Sweet Baby James」の演奏が終わった後、観客は皆立ち上がって拍手する。アンコールとしてJT自身のリクエストで、新作より15.「Anana」が披露され、エンディングでJTが退場して番組が終わる。
もし電話の一人が、「Knocking 'Round The Zoo」をリクエストし、JTが「ううん、出来ないよ!」なんて答えると面白かったと思うが、当日演奏された曲は、どれも無難な定番曲だ。そういう意味で予定調和的な進行で、わざとらしい感じがつきまとう。この番組の本当の醍醐味は、生放送で観てリアルタイム・ライブのスリルを味わうもので、再放送や保存映像でみると魅力が半滅するのは止むを得ないだろう。今は亡きカルロス・ヴェガ(1998年4月没)の、JTバンドでの演奏シーンを捉えた最後の映像のひとつであると思われる。
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Night Express (With Elio e le Storie Tese) 1997 |
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James Taylor : Vocal. Acoustic Guitar
Fiorella Mannoia : Vocal (4)
Sally Taylor : Vocal (7), Back Vocal
Stefano 'Elio' Belisari : Back Vocal
Paolo 'Feiez' Panugada : Back Vocal, Harmonica, Alto Sax, Percussion
Davide Cesareo Civaschi: Electric Guitar
Sergio 'Rocko Tanica' Conforti : Keyboards
Nicola 'Faso' Fasani : Bass
Hermn Christian Meyer : Drums
Naco : Percussion
1. Stand And Fight
2. Enough To Be On Your Way
3. Never Die Young
4. You've Got A Friend
5. How Sweet It Is
6. Line 'Em Up
7. You Can Close Your Eyes
8. Shower The People
9. Steamroller Blues
10. Mexico
1997年10月9日イタリア ミラノにて収録
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イタリアのミラノにあるテレビ局のスタジオライブに出演したもの。スタジオはたくさんの人で埋まり、大変な熱気。女性の司会者、ゲストのコメンテイターなど皆大変なお喋りで、番組を観終わった後も早口のイタリア語がわんわん耳に残っているほどだ。JTは珍しく自分のバンドではなく、地元イタリアのグループ、エリオ・エ・レ・ストーリエ・テーゼをバックに演奏している(彼等についてはJTがボーカリストとしてゲスト参加した
C64をご参照ください)。また当時22〜23才だった愛娘サリー・テイラーが参加しているのが、この映像を特別なものにした。その後も彼女が出演した映像や音源はあるが、これだけまとまったものはないと思う。健康で素直そうだが、母親譲りの芯の強さも秘めた姿がまことに印象的だ。
女性司会者による長いお喋りの後、透明セルロイド縁のメガネをかけたJTが登場、1. 「Stand And Fight」を演奏する。バンドの演奏がいつもと異なるので、聴いていてサウンドの違いがとても面白い。間奏はエリオ、サリーと並んで立っているフェイツによるハーモニカだ。女性アナウンサーやゲストのイタリア語のお喋りに際し、JTは意味が分からず、ポカンとして少し居心地悪そうにしている様が微笑ましい。3.「Never
Die Young」のギターソロなどオリジナルに似せて弾いているが、全体的にバンドの演奏は良くまとまっていて、演奏水準の高さがわかる。4.「You've
Got A Friend」でゲスト歌手フィオレーナ・マンノーリヤが呼ばれてステージに登場する。1969年にレコードデビュー、サンレモ音楽祭にも入賞し、多くのアルバムを発表している。歌姫というか「ディーバ」の雰囲気を持った美人シンガーだ。彼女とのデュエットで歌われる貴重な映像。観客の熱狂も凄い。5.「How
Sweet It Is」ではフェイツがサックスソロを披露、乗り乗りの雰囲気で大いに盛り上がる。7. 「You Can Close Your Eyes」はサリー・テイラーとのデュエットだ! 父親の顔を見ながら歌うサリーの表情とそれを見守るJTの温かい情愛が伝わる演奏で、サリーの歌は未熟なんだけどいいんだよな〜。8.
「Shower The People」のバックコーラス隊はいつもと違う人たちなので、新鮮な感じで聴けるのであるが、恒例のエンディングのアドリブボーカルなしでさらっと終わってしまい、ちょっと残念。9.
「Steamroller Blues」ではサックスとピアノソロ、そしてエレキギターの自由でハードなプレイが大変良く、観客の興奮は最高潮だ。イントロではJTのギターがリヒャルト・シュトラウスの「ツァラトウストラはかく語りき」(映画「地獄の黙示録」で使用され有名になった)のメロディーを奏でているのが面白い。グループのボーカリストでリーダーでもあるエリオは、今回はバックボーカルに専念して大人しいが、JTによるメンバー紹介で彼の名前が告げられると、場内は熱狂して「エリオ、エリオ」というシュプレヒコールが沸き起こるのがスゴイ。イタリアのオーディエンスって熱いね〜。そして最後の曲10.「Mexico」の演奏中に番組のクレジットが出て終わる。
最初に言ったとおり、収録時間のかなりの部分がイタリア語のお喋りという番組であるが、珍しいメンバー、ゲストによる演奏なので、観る価値は十分にあると思う。
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Friedrichstadt Plast, Berlin 1999 |
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James Taylor : Vocal, Acoustic Guitar, Hamonica
Bob Mann : Guitar, Back Vocal
Clifford Carter: Keyboards, Back Vocal
Jimmy Johnson : Bass
Rus Kunkel: Drums, Percussion
Arnold McCuller : Back Vocal
1. Everyday [Norman Petty, Charles Hardin]
2. Mighty Storm [Traditional]
3. Line 'Em Up
4. Carolina In My Mind
5. Anywhere Like Heaven
6. Jump Up Behind Me
7. You've Got A Friend [Carole King]
8. Brother Trucker
9. Don't Let Me Be Lonely Tonight
10. Shower The People
11. Steamroller
12. Me And My Guitar
13. Walking Man
14. Up On The Roof [Gerry Goffin, Carole King]
15. Never Die Young
16. Mexico
17. Country Road
18. Fire And Rain
19. Your Smiling Face
1999年5月17日 Friedrichstadt Plast, Berlin にて収録
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オーディエンス・ショットによる映像。当時の機材による撮影のせいか、ピントの甘い画質で音質もあまり良くない。カメラは固定されているようだが、時々動かす際に手振れが起きたり、(おそらく)カメラを隠すために、演奏中でも画面が真っ暗になったりする。大半がJTのクローズアップであるが、ズームアップしたりアングルを変えるので、単調さはない。ステージは赤・青・緑のライティングで染められ、色彩的には綺麗だ。音質面は各楽器やボーカルの音が混じり合った感じで、クリアーさに欠ける。それでもジミー・ジョンソンのベースはオフ気味ではあるが、要所ではしっかり聞こえるので、ファンが楽しく鑑賞するには問題ないレベルだろう。
1999年ヨーロッパ・ツアー、ベルリン劇場街にある大きなシアターでのコンサートで、コーラスがアーノルド一人という、海外ツアー用のバックバンド編成による演奏だ。同時期に録音された他の音源から、本映像にはコンサート最初の曲「Sweet
Baby James」が収められてないものと推定される。1. 「Everyday」は撮影を始めたばかりらしく、カメラの手振れが激しい。JTのクローズアップと背後のクリフォード・カーターの姿ばかりの映像で、クリフォードはグランドピアノではなく、小型の電子ピアノを弾いている。2. 「Mighty Storm」でカメラが動き、ハーモニー・ボーカルを歌うアーノルド・マックラーとベースのジミー・ジョンソンが映る。ボブ・マンのギター・ソロが入るが、全く見えない。3.「Line
'Em Up」になると、カメラが固定され、画面が落ち着く。淡々とした演奏が続き、6.「Jump Up Behind Me」では、クリフォードがシンセサイザーの部品を口に加えて、ピアニカのような音を出しているのが見える。ここで、彼が時折バックボーカルに加わっていることもわかる。エンディングでは、アーノルドが一人で歌っている。7.「You've
Got A Friend」の途中で、カメラを隠したらしく、画面が突然真っ暗になる。9.「Don't Let Me Be Lonely Tonight」は、エンディングでのクリフォードのエレキピアノ・ソロが繊細でいいですね。10.「Shower
The People」になって、カメラのズームが引いて、初めてラス・カンケルとボブ・マンを含むステージ全景が映り、ここでのバックコーラスはクリフォードとボブが加わっているのがわかる。エンディングはお馴染みアーノルドのソロとなるが、彼が歌う間、他のメンバーが「shower
the people」というリフを歌わないので、いつもと異なる感じで面白い。11.「Steamroller」は、JTによるブルースハープソロから始まり、ボブ・マンがギターソロを披露する。
セカンドセットの12.「Me And My Guitar」は、ライブでの演奏が珍しい曲。クリフォードは、13.「Walking Man」でもバックボーカルを入れている。16.「Mexico」は、JTのアコギの前に、サルサ調の長いイントロが入る。17.「Country
Road」は、JTと向き合ったジミーによるベースが奏でるイントロが入り、後半でのドラムスのブレイクがないアレンジによるもの。19.「Your
Smiling Face」が終わって、バンドが退場し、アンコールの拍手のところで、残念ながら映像は終わってしまう。同時期に録音された他の音源から、この後でカバー曲の「Not
Fade Away」、「How Sweet It Is」、「You Can Close Your Eyes」などが演奏されたものと推測される。
オーディエンス撮影で、画質・音質ともにイマイチで、カットされた曲もあるが、一人コーラスのバックバンドでのライブ映像ということで、熱心なファンであれば、それなりに楽しんで観ることができるだろう。
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Nice Jazz Festival, Nice 1999 |
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James Taylor : Vocal, Acoustic Guitar, Hamonica
Bob Mann : Guitar, Back Vocal
Clifford Carter: Keyboards, Back Vocal
Jimmy Johnson : Bass
Rus Kunkel: Drums, Percussion
Arnold McCuller : Back Vocal
1. You've Got A Friend [Carole King]
2. Up On The Roof [Gerry Goffin, Carole King]
3. Shower The People
4. Not Fade Away
5. Walking Man
6. Never Die Young
7. Handy Man
8. Country Road
9. Fire And Rain
10. Your Smiling Face
11. Steamroller
12. How Sweet it Is (To Be Loved By You)
13. Secret O' Life
1999年7月16日 The Arena Of Cimiez, Nice, France にて収録
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以前は「Handy Man」と「How Sweet it Is (To Be Loved By You)」のみ観ることができたが、2020年にザイコポリスという映像制作会社により、コンサートの映像が公開された。1999年夏のヨーロッパツアーの際の出演で、フルセットの音源で有名なスイスのモントルー・ジャズフェスティバル(「その他音源」の部参照)が7月15日なので、本コンサートはその翌日に行われたことになる。JTがコンサートでよく行うリアクションで、2.「Un
On The Roof」が終わったところで、観客からのリクエストに応えて、床に置いてあるセットリストのボードを取り上げて、「それはここでやるから後でね!」というシーンがあり、一瞬映るボードから読み取れる演奏曲は以下の通り。
@ Carolina In My Mind
A Every Day
B Line 'Em Up
C Mighty Storm
D Mexico
E Jump Up Behind Me
F You've Got A Friend
G Up On The Roof
H Showner The People
I Not Fade Away
J Walking Man
K Never Die Young
L Handy Man
M Country Road
N Fire & Rain
O Your Smiling Face
P Steamroller Blues
Q How Sweet it Is (To Be Loved By You)
R Knock On Wood
S Secret O' Life
ということで、本映像は始めの6曲を除いた、ほぼノーカット収録ということ、それらは前述のモントルー・ジャズフェスティバルと概ね同じ曲目・曲順ということが判った。1948年から始まり、ヨーロッパで最も古く格調高いとされるニース・ジャズフェスティバルは、1994年からロック、ワールドミュージックなど幅広い音楽も対象とするようになり、シミエ(ニース北の丘陵地帯)にある、紀元2世紀古代ローマ時代に作られた円形劇場の遺跡が会場だった(ただし2011年以降は市内のマッセナ広場に変更された)。本映像は1999年のもので、ステージの背後に遺跡の一部である石組みが見え、燦燦と陽が降り注ぐ会場が、日が暮れて暗くなってゆく様が美しく撮られている。
本映像は、デイライトの屋外演奏であることに加えて、コーラス隊がアーノルド・マックラーのみのコンパクトな編成であることが特色。ヨーロッパツアーということで、予算上の制約からそうなったのかな?その代替として、ボブ・マンとクリフォード・カーターが演奏しながらバックボーカルを付けるシーンを観ることができるのが貴重。映像での最初の曲 1.「You've Got A Friend」は、コンサートの3分1が経過した時点のもので、白昼での演奏風景が新鮮。2.「On The Roof」では、JTの顔に汗が光っているのが印象的。クリフォードのピアノは、汎用性がある小型電子ピアノ、ボブのギターはフェンダー・ストラトキャスターだ。3.「Shower The People」を聴いていると、映像のクリアーさのみならず音質の素晴らしさが判る。コーラスパートで、クリフォードとボブがコーラスに加わる様が微笑ましい。そしてエンディングはお馴染みアーノルドの独壇場となり、最後に皆の合唱が入り終わる。JTはアーノルドを紹介する際に、彼がソロアルバムを発表したことをフランス語を交えて話している。4.「Not Fade Away」は、JTとアーノルドのハーモニー、ボブのスライドギターが聴きもの。5.「Walking Man」では、すっかり髪がなくなり野球帽を被ったラス・カンケルのアップが映り、ボブによるトレモロアームを使ったギタープレイを観ることができる。6.「Never Die Young」では、コーラス部分におけるアーノルドとの二人ボーカルがいつもと異なる感じでユニーク。7.「Handy Man」では、エンディングのコーラスにクリフォードが加わっている。ここでJTはギターを替え(チューニングが異なるため)、ジミーを紹介してアコギとベースによる8.「Country Road」のイントロを弾き始める。途中でバンドがフィルインする部分は、はっとする美しさに溢れ、素晴らしいロック・チューンに仕上がっている。曲間の静けさの中で蝉の声が聞こえる。チューニングをレギュラーに戻してから始める 9.「Fire And Rain」のあたりでは、日が翳って照明の光が強調されている。淡々とした雰囲気から一転、躍動的な 10.「Your Smilig Face」の対比が鮮やか。曲の途中の転調でギターのカポの位置を変えるお馴染みのシーンもしっかり映っている。
ここでバンドは退場してアンコールに入る。再登場したJTは手にハーモニカを持ち、11.「Steamroller」のイントロで達者なブルースハープを聞かせてくれる。ここではボブのギターソロが最高!12.「How
Sweet It 、Is」は、高揚感とリラックスの同居という余裕たっぷりの演奏が楽しい。ここでメンバーがステージに並びオーディエンスに挨拶して退場する。アンコールで再登場して、最後に13.「Secret
O' Life」がさらっと歌われるが、セットリストにある「Knock On Wood」は演奏されなかったか、編集でカットされたかのいずれか(観る限りカットの痕跡は見つからないけど....)。すっかり夜になった景色でコンサートは終わる。
JTの日中・野外のステージを捉えた珍しい映像。
[2020年12月作成]
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