C74 Nearness Of You (2001) [Michael Brecker] Verve |
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James Taylor: Vocal
Michael Brecker: Tenor Sax
Pat Metheny: Guitar
Herbie Hancock: Piano
Charlie Haden: Bass
Jack DeJohnette: Drums
Pat Metheny: Producer
1. Don't Let Me Be Lonely Tonight [James Taylor] A4 A15 B16 C67 E1 E5
E8 E25
2. The Nearness Of You [Hoagy Carmichael, Ned Wahington] A23
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副題「The Ballad Book」。ジョン・コルトレーンの名作「Ballads」1962年の向こうを張って、現在考える限り最高のミュージシャンを集め、満を持して製作されたアルバムだ。それにしても豪華な人達が集まったもので、各楽器の第一人者が勢揃いしている。円熟という面から見た演奏面では文句のつけようがない。
JTは以前からマイケル・ブレッカー(MB)のサックスソロをフューチャーした曲を録音しており、その代表作は「One Man Dog」 A4 1972に入っていた1.だった。今までに何千回も聞いたと思うが、いまだに飽きがこない稀有な曲だ。その中でも終盤に挿入される彼のサックスソロは名演と呼ぶにふさわしい出来で、ポピュラー音楽史上の歌伴のベストの1曲だろう。その
1. 「Don't Let Me Be Lonely Tonight」は約30年ぶりの再演。オリジナルではすぐに終わってしまったソロは、今回はたっぷりとフィーチャーされている。バックの演奏は控えめだ。2.「The
Nearness Of You」は、これまで機会ある毎にスタンダード曲を歌ってきたJTの総決算のような出来で、ヴォイス・トレーニングの結果だろうか、見事な歌唱だ。もともとノン・ビブラートのフォーク・スタイルでデビューし、シンガー・アンド・ソングライターの歌唱スタイルの旗手となったJTが、本曲では見事にコントロールされたビブラート唱法を披露している。円熟というか、長い時の経過を感じて、この曲を聞く都度、感慨無量の気分になる。
MBのソロはいずれも隙のない音作りで、この人の類まれなセンスを感じる。
マイケル・ブレッカー氏は2007年1月白血病のため亡くなりました。ご冥福をお祈りします。
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C75 Whole New You (2001) [Shawn Colvin] SME |
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Shawn Colvin: Vocal
James Taylor: Harmony Vocal
John Leventhal: Guitar, Bass, Keyboards, Percussion, Horn Arrangement
Shawn Pelton: Drums
Joe Bonadio: Drum Fills, Percussion
Marc Cohn, Kenny White: Back Vocal
Tony Kadlek: Flugelhorn
Larry Farrell: Trombone
John Leventhal: Producer
1. Bonefields [Shawn Colvin, John Leventhal]
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若手女性シンガーと書こうと思ったら、1956年生まれなのでびっくりした。メジャーからの初ソロアルバムが1989年だから、かなり遅咲きの人なんですね。1997年のヒット曲「Sunny
Comes Home」(全米7位)がグラミー賞のRecord Of The Yearに輝いてから、押しも押されぬトップシンガーの仲間入りをしたと言える。本作は7枚目のアルバムで、オリジナル作品集としては4年半ぶりだ。その間に離婚、再婚そして出産を経験し、新しい出発を期しているのが本作のタイトルからうかがえる。といっても初々しさは相変わらずで、聴いていて気持ちがいい。デビュー以来のパートナーであるジョン・リヴェンサルが、作曲、プロデュース、そして多くの楽器演奏を担当しており、その仕事には才能が感じられる。彼はその他、ロザンナ・キャッシュ、パティー・ラーキン、ミシェル・ブランチ、スティーブ・フォーバート、そして本曲でバック・ボーカルを担当しているマーク・コーン(C54参照)などの作品に参加している。
彼女はJTの「Hourgrass」A16 1997年にバックボーカルとして参加していて、本作 1.「Bonefields」はそのお返しだろう。アコースティック・ギターをフィーチャーしたフォーク系の曲が多い中、この曲のアレンジは非常に現代的だ。ショーンのボーカルはつぶやくように、それでいて軽やかにメロディーを紡いでゆく。コーラスの部分で、JTの声がかぶさり、盛り上がりを見せる。派手さはないけど、とてもいい曲だと思う。
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C76 Lookout For Hope (2002) [Jerry Douglas] Sugar Hill |
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Jerry Douglas: Dobro, Lap Steel
Ron Block: Guitar
Barry Bales: Bass
Stuart Duncan: Fiddle
James Taylor: Vocal
Jerry Douglas: Producer
1. The Suit [Hugh Prestwood]
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1955年オハイオ州生まれのジェリー・ダグラス(JD)は、父の影響で8歳からドブロを弾き始める。今や世界ナンバーワンのドブロ奏者として、他の追随を全く許さない存在だ。野球場の弁当売りのような演奏スタイル(失礼!)、スライドバー使用による演奏上の制約で、非常に保守的なイメージが強い楽器なんだけど、彼はそんなイメージをふっ飛ばし、ドブロの名手として、ニューグラス、ジャズ、ロック、トラッドなどのあらゆるジャンルの音楽に挑戦している。
JTの付き合いは1989〜1990年のツアーからのようで、レコーディングではマーク・オコナーの「On The Mark」1989 C49のセッションが最初、その後JTの「New
Moon Shine」 1991 A14、エリック・クラプトンが主催した「Crossroad Guitar Festival」2004 E11
で共演している。
これまで彼は膨大なセッションワークに参加した他、10枚ほどのソロアルバムを発表している。本作は2002年の作品で、彼がプロデューサーを勤めるマーラ・オコンネル(C61参照)とJTがボーカルで参加した2曲を除き、インストルメンタルだ。オールマン・ブラザースの「Eat
A Peach」1972に収録されていた「Little Martha」は、デュアン・オールマンとディッキー・ベッツの2本のアコギによるインストルメンタルの名作だったが、JDはドブロで挑戦、彼一人で演奏する最初の1コーラスが素晴らしい。録音の良さもあり、楽器の持つ音色の豊かさがフルに表現されている。
JTがヴォーカルをとる 1.「The Suit」は、カントリー界の作曲家ヒュー・プレストウッドの作品。歌詞がないので、何を歌っているが正確には分からないが、「背広を着る」ということのフォーマルな意味合いを歌っているものと思われる。いつもながらJTの誠実な歌には惚れ惚れする。この曲があるかないかで、本作のイメージが全く異なるほどのインパクトがある。
[2011年2月追記]
インターネットで歌詞を読むことができました。いつもは農作業に従事する男が、フォーマルな場に出るためにスーツを買って着た時の感慨を描いたものでした。
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C77 Famous Among The Barn (2003) [The Ben Taylor Band] Iris |
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Ben Taylor: Vocal, Guitar
James Taylor: Back Vocal
Joel Shearer: Guitar
Chris Chaney: Bass
Zac Rae: Keyboards, Guitar
Larry Ciancia: Drums
1. I Am The Sun [Ben Taylor, Larry Ciancia, Joel Sherer, Chris Chaney,
Zac Rae]
2. No More Running Away [Ben Taylor, Bobby Icon]
3. Just Like Everyone Else
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JTの長男ベン・テイラーのデビュー作。彼は1977年生まれだから26才の作品だ。本当は1997年頃にWork Groupというレーベルで「Green
Dragon, Name A Fox」を録音したが、レコード会社の破綻によりお蔵入りになってしまった不幸な出来事があった(現在はエピックが版権を持っているという)。その後映画のサウンドトラックで、「I
Will」(ビートルズの「White Album」に入っていたポールの曲のカバー)を録音したり、母親のカーリーのアルバムやCMにゲスト参加していたが、マイナー・レーベルとは言え、アルバム発売は6年越しの悲願達成というわけだ。
声質は叔父さんのリヴィングストン・テイラーに似ていて、ソフトで繊細だ。本作のゲストは、JTの他にカーリー・サイモンがバックボーカルで参加している。曲毎のクレジットが表示されておらず、バックボーカルが控えめにミックスされていること、二人の声がとてもよく似ているため、どの曲にJTが参加しているかを判別するのは難しい。ここではCDをじっくり聞き込んで、JTの声が入っていると推測される3曲を選んだ。
1.「I Am The Sun」はバンドメンバーによる共作。音作りも今風で、本作のなかでも最も印象的な曲だ。コーラス部分の厚みあるコーラスにはJT入りとにらんだ。2.「No
More Running Away」のコーラス部分では、右チャンネルでよりJTらしい声が聞こえる。そして左に聞こえるのは、女性の声に聞こえるのだが、そうするとカーリー・サイモンか!! もしそうだとすると、息子のアルバムに23年ぶりの共演が実現したということになる。歌詞がジェイムスとカーリーそしてベンの家族の人生を歌っているかのようで、意味深だ。
3.「Just Like Everyone Else」は、スライド・ギター、アコースティック・ギターがフィーチャーされ、より父親に近いサウンドの曲だ。ここでもコーラスの歌声がJTのものと思われる。
曲作りに才能が感じられるが、派手には売れないようで、地道な活動を続けている。
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C78 Beautiful Road (2003) [Kate Taylor] Front Door |
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Kate Taykor: Vocal
James Taylor: Vocal, Acoustic Guitar (2)
Arlen Roth: Guitar (1)
Mindy Jostyn: Violin, Guitar (1)
Levon Helm: Mandolin (1)
Charlie Witham: Foot (1)
Tony Garnier: Bass (2)
Charlie Witham And Tony Garnier: Producer
1. Auld Lang Syne [Traditional, Charlie Witham (Lyrical Adaptation)] A18
2. I Will Fly [Charlie Witham(Lyrics), Charlie Witham, Arlen Roth, Tony
Garnier (Music)]
写真上: アルバムの表紙写真
写真下: 「Auld Lang Syne」CDシングルの表紙写真。
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ケイト・テイラーは、1979年の「It's In There... And It's Got To Come Out」以来ソロアルバムを発表せず、マサチューセッツ州マーサ・ヴィンヤード島のゲイヘッドで著作、家族の世話や地元コミュニティーの活動に専念しながら、地道な音楽活動を続けていたようだ。1994年発売のオムニバス・アルバムへの参加は別として、レコーディング面の本格的な復活は、アルバムに先駆けて1999年に自主レーベルより先行リリースされたCDシングル
1.「Auld Lang Syne」だった。
1.「Auld Lang Syne」はご存知「蛍の光」。スコットランド民謡で「Old Long Ago」の意味で、意訳すると「Times Gone
By」となる。ロバート・バーンズ(1759-1796)の原詩に、ケイトの夫で本作のプロデューサーでもあるチャーリー・ウィザムが手を加えている。1年の終わりに歌われる歌で、ビビアン・リー、ロバートテイラー主演の悲しくも香り高い名画「哀愁」
1940でこの曲が流れる1シーンがとても印象に残っている。アレンジはJTによるもので、バイオリンとギター、アップライトベースによるシンプルな編成で、大変豊かなサウンドを生み出している。何といってもJTのアコギが最高!ケイトのボーカルも素晴らしく、何度聴いても心に滲みる名演だ。その後JTが「Christmas
Album」 2004 A18 でこの曲を取り上げたが、私は本作のヴァージョンのほうがずっと好きだ。
その後夫のチャーリーが病気になり2001年に亡くなったため、アルバム製作が遅延し、2003年にやっと発売となった。2.「I Will Fly」は、参加ミュージシャンの一人、アーレン・ロス(テレキャスターの名手と言われ、数々のセッションワークや教則本・ビデオで有名)の奥さんと娘の事故死をベースに、その後病気のため余命短いことを悟った作者本人の心境がこめられたもので、悲痛ながらも鎮魂の思いが伝わってく佳曲。アコギ2台によるカントリー調のシンプルな伴奏で、ケイトが淡々と歌い、コーラスの部分でJTのボーカルが輪唱風に加わる。ベースおよびプロデューサーのトニー・ガルニエはボブ・ディランのツアーバンドのバンマスをした人。またアコギおよびバイオリンを担当しているミンディー・ジョスティンは、ローラ・ニーロ、カーリー・サイモンなどのセッションに参加した他、自身で数枚のソロアルバムを出した女性シンガーだったが、2005年に他界した。途中で聞こえるマンドリンは、ザ・バンドのレヴォン・ヘルム。JT参加曲以外でも、タイトル曲の「Beautiful
Road」など良い出来の曲、アレックス・テイラーに捧げるブルース曲、お得意のR&B調の曲がたくさん入っており、小粒ながらもお勧め盤だ。それにしても彼女の歌声は、年をとるにつれて深みが出てきたようで、何度聴いても魂が癒される。
添付されたジャケットのアートワークが大変素晴らしく、亡くなったアレックスを含むテイラー兄弟全員がそろった写真、夫や参加ミュージシャンとのスナップショットおよび、表紙の貝細工(地元ゲイヘッドに伝わる古い工芸を彼女達が復活させたもの)などから、彼女の本作に対する思いがひしひしと伝わってくる。そして何よりも素晴らしいのは彼女自身の写真で、年老いながらも美しい身なりと表情、人間味に溢れた微笑が、彼女が歩んできた豊かな人生を雄弁に物語っている。
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C79 Map Of The World (2003) [Kate Markowitz] Compass |
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Kate Markowitz: Vocal
James Taylor: Back Vocal
David Lasley, Arnold McCuller: Back Vocal (1)
Pat Buchanan: Guitar, High-String Guitar (2)
Mike Severs: Electric Guitar (1), Acoustic Guitar (2)
Tony Harrell: Keyboards
Alison Prestwood: Bass
Greg Morrow: Drums, Prgramming (1)
Luis Conte: Percussion (1)
Alison Prestwood, Kate Markowitz: Producer
1. Lay Away [R. Isley, O. Isley, R. Isley]
2. I'll Remember You [Kate Markowitz, Donny Markowitz]
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1990年からJTバンドでバックボーカルを担当しているケイト・マーコウィッツはロスアンゼルス育ち。父親は、テレビ番組のテーマ音楽を多数手がけたRichard
Markowitz (1926-1994)で、代表作はアンジェラ・ランズベリー主演の推理ドラマ・シリーズ「Murder She Wrote」。早くからスタジオおよびコンサートのバックシンガーとして活躍、1990年にリー・リトナー(ギタリスト)のバックで、日本で行われたアース・デイ・コンサートに参加。そこでJTと知り合い、後日バンドに誘われたとのことで、同年のテルライド・ブルーグラス・フェスティバル(B20
E6)が、デビューだったそうだ。実はその前に公演旅行でフランスに行った際、現地でバカルディ(ラム・ベースのカクテル)のCMの仕事を引き受けて歌ったところ評判となり、Kate
Yanai の名前で「Summer Dreaming (The Bacardi Song) 」というタイトルのシングル盤を製作、それがドイツで7週間1位という大ヒットを記録したという出来事があった。トロピカルなラテン・サウンドをバックに、憂いを秘めた彼女のボーカルがしっくり溶け合った佳曲だ。ソロアーティストとしての契約の話もあったが、柳の下のドジョウを狙う会社側の売り出しイメージと彼女のやりたい音楽が合わず、音楽ビジネスに失望した彼女はセッションシンガーの仕事に戻ったという。JTの他にショーン・コルヴィン、k
d ラングなど多くのレコーディングおよびツアーに参加している。そんな彼女が製作した初めてのソロアルバムが本作で、本当に自分がやりたかった音楽を心行くままに創り上げたという感じの作品だ。
全体的にショーン・コルヴィンのようなモダンな雰囲気で、とても丁寧に製作されている。13曲中9曲に作者として彼女の名前がクレジットされ、ソングライターとしての手腕も光っている。他人の曲では、トッド・ラングレンの名曲「Can
We Still Be Friends ?」がカバーされている他、アイズレー・ブラザース1972年のヒット(全米54位)を取り上げたのが 1.「Lay
Away」だ。少しリズムボックスっぽいドラムスとJTバンドでお馴染みのルイス・コンティのパーカッションを中心としたミドルテンポのリズムをバックに、洗練されたソウル・ミュージックが展開される。感情を抑えた彼女の歌が効果的で、バックボーカルはJTバンドの仲間、アーノルド・マックラーとデビッド・ラズレーが加わっている。ケイトのボーカルに反応してJTが単独で答えたり、アドリブをとるところが随所にあり、聴いていて本当に楽しいトラックだ。2.「I'll
Remember You」は、ニュー・フォーク調のサウンドで、アコギとピアノ、アコーディオンのアコースティックなサウンドには癒し効果がある。ここではバックボーカルは控えめにフィーチャーされるが、エンディングの「I'll
remember you」というパートではJTの声が前面に出てくるので、それなりのインパクトがある。プロデューサーのアリソン・プレストウッドは、ナッシュビルで活躍する女流ベーシストで、自身でソロアルバムも発表しているパット・ブキャナン(ギター)、ドラムスのグレッグ・モローとバンドを組み、多くのライブ、スタジオ録音に参加している。ちなみにパットとグレッグは、JTとディキシー・チックスが共演したテレビスペシャル「Crossroads」2002(「その他映像」参照)でバックを担当している。他のトラックについても、ナッシュヴィルのスタジオ・ミュージシャンをバックとしたトラックが大半を占めており、ショーン・コルヴィン、ラス・カンケル、マイケル・ランドウ、アンドレア・ゾーン、ドリアン・ホーレイなどの仕事仲間が一部の曲に参加している。
最後の曲「Who Needs The Spring ?」は、すでに亡くなった両親が作曲・作詞した未発表曲で、ピアノのみをバックにじっくりと歌い上げており、彼女の思いがこもった素晴らしい歌唱だ。実は上記の
Yanai という名前は彼女が10歳の時に亡くなった母親の旧姓で、彼女のファーストネームはHaruといい、その名からも想像されるとおり、イギリス人と日本人のハーフだったことが判った。軍隊を除隊したリチャード・マーコウィッツは、パリでジャズを志す。そこで画家だったHaruと出会い、恋に落ちたという。その後ロスアンゼルスに戻り音楽活動を続け、1950年代に製作されたハリウッド映画で、夫婦で音楽を担当した記録も残っている。ジャケット内に収められたカップルの写真に見られる東洋系の女性、そしてその横にコラージュされた日本切手の意味は、彼女のアイデンティティーを暗示したものだった。ちなみに本作に収録された自己作品のパブリッシャーをHaru
Musicと命名したこと、「For my parents... hope you can hear this」という彼女のコメントのなかにも、本作に対する万感の思いが込められているようだ。
以上の事を調べてゆくうちに、この作品が益々好きになりました。自分のために作った誠実さに溢れ、地味ながらも良い味をもったアルバムだと思います。
[2011年6月追記]
ケイトさんのセッションワークで素敵な映像を見つけました。セルジオ・メンデスの 1984年10月3日昭和女子大学人見記念講堂でのライブで、バリー・マンとシンシア・ウェイル作の名曲「Never
Gonna Let You Go」を、ケイト・ヤナイの名でジョー・ピズーロ(Joe Pizzulo)と一緒に歌っているのです!オリジナル録音(1983年
全米4位)での女性ボーカルはレザ・ミラー(Leza Miller)でしたが、コンサートでのケイトのボーカルもガッツがあって最高!JTのバンドに加わる前のセッション・ボーカリストとしての活動ぶりがうかがえる貴重な映像であり、ケイト・ファン必見です。
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C80 Livin', Lovin', Losin' (2003) [Various Artists] Universal |
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James Taylor, Alison Krauss: Vocal
Carl Jackson: Acoustic Guitar, Gut String Guitar
Mike Johnson: Steel Guitar
Catherine Marx: Piano
Kevin Grantt: Bass
Tony Cresman: Drums
Carl Jackson: Producer
Carl Jackson, Kathy Louvin: Executive Producer
1. How's The World Treating You [Chet Atkins, Boudleaux Bryant] E16
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1940〜1950年代に活躍したカントリー界の男性デュオ、ローヴィン・ブラザーズ (The Louvin Brothers) は、1924年生まれのアイラ、1927年生まれのチャーリーの兄弟からなる。初期はゴスペルばかり歌わされていたが、レコード会社を説得して吹き込んだラブ・ソングが大当たり。その後は音楽の幅を広げて、カントリー音楽界で多くの歌をヒットさせた。1963年にグループを解消しソロとなったが、アイラは1965年交通事故で死亡、チャーリーは2011年に病没した。彼らの音楽は当時プレスリーやジョニー・キャッシュのお気に入りで、今でも多くの人に愛されている。本作はブルーグラス・ミュージシャンのカール・ジャクソンと、チャーリー・ローヴィンの娘キャシーにより製作されたトリビュート盤で、エミールウ・ハリス、リンダ・ロンシュタット、ドリー・パートン、グレン・キャンベル、マーティー・ステュアート、ヴィンス・ギル、カール・ジャクソンなど、カントリー、ブルーグラス音楽の大物がずらりと並んでいる。
JTはアリソン・クラウスと共演、1.「How's The World Treating You」を歌っている。JTがチャーリー、アリソンがアイラのパートを歌っている。この曲の作者は、カントリー・ギターの父チェット・アトキンスと、エヴァリー・ブラザースの代表曲を書いたボルドー・ブライアントだ。アリソン・クラウスは1971年生まれで、小さい頃から天才少女としてカントリー、ブルーグラス音楽界で活躍、デビュー作品は1987年、そして1995年のソロアルバムがベストセラーとなり、スーパースターの仲間入りをした。C72にもゲスト出演している。失恋の痛手を歌うこの曲に、二人は誠実な態度で臨み、素晴らしいデュエット曲に仕上げ、2003年度グラミー賞ベスト・カントリー・デュエット賞を受賞した。なお本曲のPRビデオもあり、モーテルの一室で歌う二人の姿が映されている。
その他の曲についても、古臭さがなく良い出来のものが多い。曲の持つシンプルで普遍的な良さ、丁寧で愛情のこもったプロデュースと、演奏し歌うアーティストの存在感がしっかりかみ合った結果といえる。カントリーになじみのない人にもお勧め。
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C81 Genius Loves Company (2004) [Ray Charles] EMI |
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Ray Charles, James Taylor: Vocal
Michael Landau, Irv Kramer: Guitar
Randy Waldman: Keyboards
Tom Fowler: Bass
Ray Brinker: Drums
Charlie Davis, Walt Fowler: Trumpet
David Boruff, Bob Shepard: Sax
Brandon Fields: Baritone Sax
Bruce Fowler, Bob McChesney: Ttombone
John Burk, Terry Howard, Herbert Walt: Producer
1. Sweet Potato Pie [James Taylor] A13 E5
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レイ・チャールズのデュエット集で、彼の遺作となった。ノラ・ジョーンズ、ダイアナ・クラール、エルトン・ジョン、ナタリー・コール、ボニー・レイット、ウィリー・ネルソン、BB
キングなど馴染み深い豪華なアーティストが参加。死後の2ヶ月後に発売されたために、2004年のグラミー賞で、「Album Of The Year」「Best
Pop Album」など8部門を受賞した話題作となった。
レイ・チャールズ(1930-2004)については説明不要だろう。ソウルの父として「What I'd Say」「Unchain My Heart」、黒人でありながらカントリーに挑戦し「Gerogia
On My Mind」「I Can't Stop Loving You」などの傑作を発表、多くのミュージシャンのアイドルとなり尊敬を集めた人だった。盲目となり、親を失った少年時代、麻薬に溺れた時期など苦労も多かったようだが、総じて本人には幸せな人生だったのだろうか? などと思いを馳せながら本作を聴いてしまう。
JTは2曲目1.「Sweet Potato Pie」で登場、ただ今絶好調のノラ・ジョーンズの後なので少々不利な出番だが、さすかに余裕と貫禄で乗り切っている。1998年のソロアルバム「Never
Die Young」に入っていた小気味の良いR&Bで、この曲をレイ・チャールズが歌うとどんな感じになるかなあ、と思うような曲なので順当な選曲か? ブラスセクションがフィーチャーされ、オリジナルよりもアーシーなアレンジだ。本作のバックバンドのベーシスト、トム・ファウラーが、JTバンドでトランペットを担当しているウォルト・ファウラー(片手でペットを吹きながら、もう一方の手でシンセサイザーを弾くユニークな人)のお兄さんという縁で実現したという。JTにとってレイ・チャールズは若い頃からのアイドルの一人であり、いまだに愛聴しているそうなので、喜んで引き受けたのだろう。「Never
Die Young」のバージョンを知るJTファンにとっては大変楽しいプレゼントとなったが、一般の人はどうかな? 録音当時レイの体調が良くなかったことは、彼のボーカルを聴くと明らかで、カントリー調の曲や昔から歌ってきたレパートリーでは、リラックスした枯れた雰囲気でそれなりの味が出ているのだが、本曲のような新しい曲では、正直言ってヨレヨレに近い状態で、痛々しい感じもする。ファンの間で賛否両論なのもむべなるかな。まあひとつのメモリアルとして、尊敬の念をもって聴くのが妥当だと思います。
他の曲では、マイケル・マクドナルドと歌う、キャロル・キング60年代のR&B調ポップの傑作「Hey Girl」が抜群の出来だ。モダンなアレンジが素晴らしく、何度きいても惚れ惚れする。キャロル本人が、このアレンジで歌って欲しいな! BB
キングとの「Sinner's Prayer With」も定番のブルースでググっとくる。元気な頃に撮影したという、ノーマン・シーフのジャケット写真が素晴らしい。
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